JP3603111B2 - 透過型x線ビームモニター方法およびモニター装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、シンクロトロン放射光などのX線ビームの位置や形状や強度を測定する透過型のX線ビームモニター方法およびモニター装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
X線ビームの位置をモニターする従来技術としては、例えば、「放射光」第2巻第4号(1989年11月)第43〜49頁に示されているように、次のようなものがある。
▲1▼蛍光板モニター
X線ビームの端に蛍光板を挿入し、光っている部分を鉛ガラス越しにTVカメラで観察したり、画像処理を行なったりする。
▲2▼分割型電離箱モニター
電離箱の陰極側が対角線に沿って三角形に2分割されており、X線が電極間を通過するときに出るイオン電流を上下の分割陰極間で独立に測定する。増幅および電圧変換後、電極間の差をとり、ビーム位置として検出する。
▲3▼スリット型モニター
X線ビームがスリットの上下(あるいは左右)の2枚の刃に当たったときに放出される光電子を電流値として測定する。ビームの大きさ等を変更するためにスリット幅を変えると継続的な測定が困難になる。
▲4▼2分割光電子型モニター
真空チャンバー中に1対の直角三角形の読み出し電極を設置し、ビーム端を2〜3mm切って、電流を計測する。
【0003】
また、X線ビームの形状をモニターできる従来装置としては、蛍光板を用いる方法や、「応用物理」第62巻第7号(1993年)第720〜721頁に示されているようなX線カメラがある。
【0004】
さらに、超高真空中で利用できるX線ビームの強度モニターとしては、”X−ray Absorption”第476〜477頁に示されているように、金属メッシュや金属箔からの光電流を計測する方法などが知られている。
【0005】
このような従来の装置や方法は、X線ビームの全部あるいは一部を切りとって測定していたり、電離箱モニターのようにガスを使っているものである。
【0006】
X線ビームの全部を測定に使う場合には、ビームの利用とモニターを同時に行なうことはできない。また、2枚の対向した電極を用いて、X線ビームの一部を切りとって測定する場合には、径の小さなビームの測定が困難であるという問題がある。
【0007】
電離箱モニターの場合には、真空中に置かれた試料の直前や直後での測定ができないといった問題もあった。さらに、金属メッシュや金属箔からの光電流の計測では、ビームの位置や形状の測定ができなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、X線ビームのモニターと利用が同時にでき、また、ビームの断面形状にも影響を及ぼすことなく、小径のビームもモニターすることができる透過型X線ビームモニター方法およびモニター装置を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、透過型X線ビームモニター方法において、X線透過性の基板の表側および裏側にX線を吸収して電子を放出する光電効果を有する光電膜を同一でない範囲に設けたモニター板を用い、該モニター板にX線を入射させ、該モニター板から放出される電子の電流をモニター板の表裏を区別して測定することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明は、透過型X線ビームモニター装置において、X線透過性の基板の表側および裏側にX線を吸収して電子を放出する光電効果を有する光電膜を同一でない範囲に設けたモニター板と、該モニター板の表裏から放出される電子の電流を別々に検出する検出器を有することを特徴とするものである。
【0011】
入射されるX線の吸収および散乱がほとんど無視できる程度に前記基板および前記光電膜の厚さを薄くしたこと、前記光電膜の光電効果に伴って発生する光電子、オージェ電子、2次電子のうちのほとんどが透過できない程度に前記基板を厚くしたことも特徴とするものである。
【0012】
また、前記基板としてベリリウム箔,グラファィト薄板,アルミ泊等、軽金属薄板を用いること、前記基板として、カーボン,アルミ等のコーティングなどによる表面導電化処理が施された有機物フィルムあるいはダイヤモンド,水晶,サファイヤ,窒化硼素,窒化アルミ,窒化珪素等の無機物薄板を用いたことも特徴とするものである。
【0013】
また、前記光電膜として銀,金,銅等の金属膜を用いたことも特徴とするものであり、前記光電膜の厚さを2nm〜100nmとすること、あるいは、前記光電膜の厚さを10nm〜50nmとすることができる。
【0014】
【作用】
モニター板として入射X線ビームが透過できるものを用いるため、ビームのモニターを行なうとともに、ビームの利用が同時にできる。また、モニター板を用いたことにより、ビームの断面形状も変化しない。さらに、ビームを構成するすべてのX線光子がモニター板に入射するため、どんなに小さな径のビームもモニターすることができる。
【0015】
モニター板の表側と裏側の同一でない範囲に設けた光電膜から放出される電子を表裏を区別して検出することによって、2種類のビーム強度信号を同時に得ることができ、信号を演算処理するなどしてビームの位置や形状の情報に変換することができる。
【0016】
光電膜は、基板上にコーティングするなどによって形成することができ、厚い光電物質を用いる必要がなく、モニター板による入射X線の吸収および散乱を必要最小限に抑えることができる。
【0017】
物質中の電子の飛程は、X線のそれよりもずっと短いため、X線は透過するが、光電効果にともなって発生する光電子、オージェ電子、2次電子のうちのほとんどが透過できないほどモニター板を厚くすることができ、モニター板の表側付近で発生した電子と裏側付近で発生した電子のそれぞれを区別して検出することができる。
【0018】
基板上の全面ではなく一部に、特定の形状を持たせて、光電膜をコーティングすることにより、表面と裏面からの2種類のビーム強度信号に、特定の意味を持たせることができる。
【0019】
ベリリウム箔,グラファィト薄板,アルミ箔等、軽金属薄板は、一般にX線を良く透過するので基板の材料として適している。
【0020】
有機物フィルム、あるいは、ダイヤモンド,水晶,サファイヤ,窒化硼素,窒化アルミ,窒化珪素等の無機物薄板なども、一般にX線を良く透過するので基板に用いることができるが、絶縁体であるので、表面がむき出しであると、X線照射による電子放出等で帯電し、光電膜から放出された電子を吸収するなどの妨害をするため、カーボン,アルミ等のコーティングなどによる表面導電化処理を施して、帯電を防止するのがよい。
【0021】
光電膜としては、光電効果の顕著な物質であれば何でもよいわけであるが、銀,金,銅等の金属膜は、導電性でしかも安定であるため、優れている。しかし、X線の透過度や光電効果は、X線のエネルギーに依存するため、基板および光電膜の材料については、測定しようとするX線のエネルギー範囲によって、適当な物質を使い分けることが効果的である。
【0022】
光電膜の厚さは、薄すぎると放出電子電流が微弱になって測定が困難になる。また、厚すぎても光電膜の深いところで発生した電子が光電膜の外まで脱出できないので無駄であり、そればかりでなく、2次X線である蛍光X線の発生がバックグラウンドとなり、放出電子電流測定のS/Nを悪くする。したがって、光電膜の材料や測定しようとするX線のエネルギー範囲にもよるが、光電膜の厚さとしては、2nm〜100nm、好ましくは、10nm〜50nmが、一般的な目安である。
【0023】
【実施例】
図1は、本発明の透過型X線ビームモニター装置の一実施例の概略構成図である。図中、1はX線ビーム、2はモニター板、3は基板、4,5は光電膜、6a.6bは2次電子増倍管、7a,7bは電極、8a,8bはエレクトロメータである。モニター板2は、基板3の両面に光電膜4,5がコーティングされている。光電膜4は表側に、光電膜5は裏側に設けられており、この実施例では、X線ビーム1の入射方向を水平方向とすれば、基板3のほぼ中央の垂直線を境にして、入射方向からみて、左側の表側に光電膜4が、右側の裏側に光電膜5が設けられている。それぞれの光電膜4,5を見込む2次電子増倍管6a,6bが表側,裏側に配置されている。電極7a,7bは、2次電子増倍管6a,6bから真空中に出力される電子を吸収する。エレクトロメータ8a,8bは、微小な電流値が測定できるものであり、他の測定手段でもよいことはもちろんである。
【0024】
X線ビーム1は、モニター板2を表側から裏側に透過している。入射したX線ビーム1が透過するモニター板の表面あるいは裏面から放出された微弱な電子電流は、それぞれの面を見込む表側と裏側の2次電子増倍管6a,6bに入射される。
【0025】
入口に電子補集用のバイアス電圧V1 のかかった表側と裏側の2次電子増倍管6a,6bは、それぞれ放出電子電流を集め、出口に印加された高電圧V2 による加速と壁面との衝突による2次電子発生を繰り返して増幅される。増幅された出力電流は、出口の電位V1 +V2 よりも高電位(V3 >V1 +V2 )に保たれた電極7a,7bに流れ込み、エレクトロメータ8a,8bで測定される。
【0026】
エレクトロメータ8a,8bによる測定電流値をIFL,IRRとすると、
I=IFL+IRR
なる電流値Iからビームの強度を測定することができる。また、下記の演算結果Iより、ビームの左右への変位を測定することができる。
I=(IFL−IRR)/(IFL+IRR)
【0027】
この場合、基板3の厚さを、表側で発生した電子が裏側から放出されたり、裏側で発生した電子が表側から放出されたりすることが無視できるように、電子の飛程よりも厚くする。それにより、表側と裏側から放出される電子は、確実に分離して検出することができる。
【0028】
モニター板2の表側付近で発生した電子と裏側付近で発生した電子の区別を一層明確にするためには、ベリリウム箔や有機物フィルム等、X線の吸収や散乱のほとんどない基板を用いて、その表面と裏面に銀などのX線を吸収して電子を放出する光電効果の顕著な物質を薄くコーティングするとよい。
【0029】
上述した実施例では、入射X線ビーム1の左右方向の位置を検出できるものである。このモニター板2をその平面内で90度回転させることにより、上下方向の位置を検出することができる。上述した実施例のモニター板と、これを90度回転させたモニター板とを組み合わせることにより、左右方向および上下方向の位置、すなわち、入射X線ビーム1に直角な平面内での2次元的な位置を検出することができ、入射X線ビームあるいはモニター板を2次元的に振らせることにより、ビームの断面形状を推測することは、十分とはいえないが、ある程度は可能である。
【0030】
図2は、本発明の透過型X線ビームモニター装置に用いられるモニター板の他の実施例の斜視図である。図中、2はモニター板、3は基板、9,10は光電膜である。光電膜9は、小径の点状のものであり、基板3の表側にコーティングされている。光電膜10は、基板3の裏側の全面にコーティングされている。光電膜9,10からそれぞれ放出される電子は、上述の実施例と同様に、別々の検出手段、例えば、2次電子増倍管で検出される。入射X線ビームあるいはモニター板を入射方向に垂直な面内で2次元走査して、両光電膜から放出された電子を検出することにより、ビームの形状測定と全強度測定を同時に行なうことが可能である。測定するビームの大きさにもよるが、光電膜9として、例えば、直径が1μm程度の大きさのものを用いることにより、精度よく、ビームプロファイルの検出ができる。
【0031】
なお、2次電子増倍管等による検出電流は、微小電流計を用いることに限られず、パルス計数回路等、適宜の方法で測定される。測定値をマイクロコンピュータにより処理することによって、ビーム強度、ビーム位置、ビーム形状等を、より迅速に検出することが可能である。
【0032】
光電膜の形状は、上述した実施例に限られるものではない。その形状や位置関係を適当に選ぶことによりX線ビームの強度だけではなく、位置や形状等を測定することができる。
【0033】
なお、超高真空中で測定を行なう場合には、ベリリウム箔や銀コーティングなどガス放出のない材料を選ぶのがよい。
【0034】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、X線ビームモニターが透過型であるため、ビームのモニターとビームの利用を同時に行なうことが可能であり、また、ビームの断面形状にも影響を与えることもない。また、どんなに小さな径のビームもモニターでき、さらに、ビームの吸収による熱負荷も小さいという効果がある。さらに、ビームの強度だけでなく、位置や形状の測定も可能であり、超高真空中でも使用できるという利点がある。
【0035】
したがって、シンクロトロン放射光用ビームラインのX線ビームモニターとして利用すると効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の透過型X線ビームモニター装置の一実施例の概略構成図である。
【図2】本発明の透過型X線ビームモニター装置に用いられるモニター板の他の実施例の斜視図である。
【符号の説明】
1…X線ビーム、2…モニター板、3…基板、4,5…光電膜、6a.6b…2次電子増倍管、7a,7b…電極、8a,8b…エレクトロメータ、9,10…光電膜。
【産業上の利用分野】
本発明は、シンクロトロン放射光などのX線ビームの位置や形状や強度を測定する透過型のX線ビームモニター方法およびモニター装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
X線ビームの位置をモニターする従来技術としては、例えば、「放射光」第2巻第4号(1989年11月)第43〜49頁に示されているように、次のようなものがある。
▲1▼蛍光板モニター
X線ビームの端に蛍光板を挿入し、光っている部分を鉛ガラス越しにTVカメラで観察したり、画像処理を行なったりする。
▲2▼分割型電離箱モニター
電離箱の陰極側が対角線に沿って三角形に2分割されており、X線が電極間を通過するときに出るイオン電流を上下の分割陰極間で独立に測定する。増幅および電圧変換後、電極間の差をとり、ビーム位置として検出する。
▲3▼スリット型モニター
X線ビームがスリットの上下(あるいは左右)の2枚の刃に当たったときに放出される光電子を電流値として測定する。ビームの大きさ等を変更するためにスリット幅を変えると継続的な測定が困難になる。
▲4▼2分割光電子型モニター
真空チャンバー中に1対の直角三角形の読み出し電極を設置し、ビーム端を2〜3mm切って、電流を計測する。
【0003】
また、X線ビームの形状をモニターできる従来装置としては、蛍光板を用いる方法や、「応用物理」第62巻第7号(1993年)第720〜721頁に示されているようなX線カメラがある。
【0004】
さらに、超高真空中で利用できるX線ビームの強度モニターとしては、”X−ray Absorption”第476〜477頁に示されているように、金属メッシュや金属箔からの光電流を計測する方法などが知られている。
【0005】
このような従来の装置や方法は、X線ビームの全部あるいは一部を切りとって測定していたり、電離箱モニターのようにガスを使っているものである。
【0006】
X線ビームの全部を測定に使う場合には、ビームの利用とモニターを同時に行なうことはできない。また、2枚の対向した電極を用いて、X線ビームの一部を切りとって測定する場合には、径の小さなビームの測定が困難であるという問題がある。
【0007】
電離箱モニターの場合には、真空中に置かれた試料の直前や直後での測定ができないといった問題もあった。さらに、金属メッシュや金属箔からの光電流の計測では、ビームの位置や形状の測定ができなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、X線ビームのモニターと利用が同時にでき、また、ビームの断面形状にも影響を及ぼすことなく、小径のビームもモニターすることができる透過型X線ビームモニター方法およびモニター装置を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、透過型X線ビームモニター方法において、X線透過性の基板の表側および裏側にX線を吸収して電子を放出する光電効果を有する光電膜を同一でない範囲に設けたモニター板を用い、該モニター板にX線を入射させ、該モニター板から放出される電子の電流をモニター板の表裏を区別して測定することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明は、透過型X線ビームモニター装置において、X線透過性の基板の表側および裏側にX線を吸収して電子を放出する光電効果を有する光電膜を同一でない範囲に設けたモニター板と、該モニター板の表裏から放出される電子の電流を別々に検出する検出器を有することを特徴とするものである。
【0011】
入射されるX線の吸収および散乱がほとんど無視できる程度に前記基板および前記光電膜の厚さを薄くしたこと、前記光電膜の光電効果に伴って発生する光電子、オージェ電子、2次電子のうちのほとんどが透過できない程度に前記基板を厚くしたことも特徴とするものである。
【0012】
また、前記基板としてベリリウム箔,グラファィト薄板,アルミ泊等、軽金属薄板を用いること、前記基板として、カーボン,アルミ等のコーティングなどによる表面導電化処理が施された有機物フィルムあるいはダイヤモンド,水晶,サファイヤ,窒化硼素,窒化アルミ,窒化珪素等の無機物薄板を用いたことも特徴とするものである。
【0013】
また、前記光電膜として銀,金,銅等の金属膜を用いたことも特徴とするものであり、前記光電膜の厚さを2nm〜100nmとすること、あるいは、前記光電膜の厚さを10nm〜50nmとすることができる。
【0014】
【作用】
モニター板として入射X線ビームが透過できるものを用いるため、ビームのモニターを行なうとともに、ビームの利用が同時にできる。また、モニター板を用いたことにより、ビームの断面形状も変化しない。さらに、ビームを構成するすべてのX線光子がモニター板に入射するため、どんなに小さな径のビームもモニターすることができる。
【0015】
モニター板の表側と裏側の同一でない範囲に設けた光電膜から放出される電子を表裏を区別して検出することによって、2種類のビーム強度信号を同時に得ることができ、信号を演算処理するなどしてビームの位置や形状の情報に変換することができる。
【0016】
光電膜は、基板上にコーティングするなどによって形成することができ、厚い光電物質を用いる必要がなく、モニター板による入射X線の吸収および散乱を必要最小限に抑えることができる。
【0017】
物質中の電子の飛程は、X線のそれよりもずっと短いため、X線は透過するが、光電効果にともなって発生する光電子、オージェ電子、2次電子のうちのほとんどが透過できないほどモニター板を厚くすることができ、モニター板の表側付近で発生した電子と裏側付近で発生した電子のそれぞれを区別して検出することができる。
【0018】
基板上の全面ではなく一部に、特定の形状を持たせて、光電膜をコーティングすることにより、表面と裏面からの2種類のビーム強度信号に、特定の意味を持たせることができる。
【0019】
ベリリウム箔,グラファィト薄板,アルミ箔等、軽金属薄板は、一般にX線を良く透過するので基板の材料として適している。
【0020】
有機物フィルム、あるいは、ダイヤモンド,水晶,サファイヤ,窒化硼素,窒化アルミ,窒化珪素等の無機物薄板なども、一般にX線を良く透過するので基板に用いることができるが、絶縁体であるので、表面がむき出しであると、X線照射による電子放出等で帯電し、光電膜から放出された電子を吸収するなどの妨害をするため、カーボン,アルミ等のコーティングなどによる表面導電化処理を施して、帯電を防止するのがよい。
【0021】
光電膜としては、光電効果の顕著な物質であれば何でもよいわけであるが、銀,金,銅等の金属膜は、導電性でしかも安定であるため、優れている。しかし、X線の透過度や光電効果は、X線のエネルギーに依存するため、基板および光電膜の材料については、測定しようとするX線のエネルギー範囲によって、適当な物質を使い分けることが効果的である。
【0022】
光電膜の厚さは、薄すぎると放出電子電流が微弱になって測定が困難になる。また、厚すぎても光電膜の深いところで発生した電子が光電膜の外まで脱出できないので無駄であり、そればかりでなく、2次X線である蛍光X線の発生がバックグラウンドとなり、放出電子電流測定のS/Nを悪くする。したがって、光電膜の材料や測定しようとするX線のエネルギー範囲にもよるが、光電膜の厚さとしては、2nm〜100nm、好ましくは、10nm〜50nmが、一般的な目安である。
【0023】
【実施例】
図1は、本発明の透過型X線ビームモニター装置の一実施例の概略構成図である。図中、1はX線ビーム、2はモニター板、3は基板、4,5は光電膜、6a.6bは2次電子増倍管、7a,7bは電極、8a,8bはエレクトロメータである。モニター板2は、基板3の両面に光電膜4,5がコーティングされている。光電膜4は表側に、光電膜5は裏側に設けられており、この実施例では、X線ビーム1の入射方向を水平方向とすれば、基板3のほぼ中央の垂直線を境にして、入射方向からみて、左側の表側に光電膜4が、右側の裏側に光電膜5が設けられている。それぞれの光電膜4,5を見込む2次電子増倍管6a,6bが表側,裏側に配置されている。電極7a,7bは、2次電子増倍管6a,6bから真空中に出力される電子を吸収する。エレクトロメータ8a,8bは、微小な電流値が測定できるものであり、他の測定手段でもよいことはもちろんである。
【0024】
X線ビーム1は、モニター板2を表側から裏側に透過している。入射したX線ビーム1が透過するモニター板の表面あるいは裏面から放出された微弱な電子電流は、それぞれの面を見込む表側と裏側の2次電子増倍管6a,6bに入射される。
【0025】
入口に電子補集用のバイアス電圧V1 のかかった表側と裏側の2次電子増倍管6a,6bは、それぞれ放出電子電流を集め、出口に印加された高電圧V2 による加速と壁面との衝突による2次電子発生を繰り返して増幅される。増幅された出力電流は、出口の電位V1 +V2 よりも高電位(V3 >V1 +V2 )に保たれた電極7a,7bに流れ込み、エレクトロメータ8a,8bで測定される。
【0026】
エレクトロメータ8a,8bによる測定電流値をIFL,IRRとすると、
I=IFL+IRR
なる電流値Iからビームの強度を測定することができる。また、下記の演算結果Iより、ビームの左右への変位を測定することができる。
I=(IFL−IRR)/(IFL+IRR)
【0027】
この場合、基板3の厚さを、表側で発生した電子が裏側から放出されたり、裏側で発生した電子が表側から放出されたりすることが無視できるように、電子の飛程よりも厚くする。それにより、表側と裏側から放出される電子は、確実に分離して検出することができる。
【0028】
モニター板2の表側付近で発生した電子と裏側付近で発生した電子の区別を一層明確にするためには、ベリリウム箔や有機物フィルム等、X線の吸収や散乱のほとんどない基板を用いて、その表面と裏面に銀などのX線を吸収して電子を放出する光電効果の顕著な物質を薄くコーティングするとよい。
【0029】
上述した実施例では、入射X線ビーム1の左右方向の位置を検出できるものである。このモニター板2をその平面内で90度回転させることにより、上下方向の位置を検出することができる。上述した実施例のモニター板と、これを90度回転させたモニター板とを組み合わせることにより、左右方向および上下方向の位置、すなわち、入射X線ビーム1に直角な平面内での2次元的な位置を検出することができ、入射X線ビームあるいはモニター板を2次元的に振らせることにより、ビームの断面形状を推測することは、十分とはいえないが、ある程度は可能である。
【0030】
図2は、本発明の透過型X線ビームモニター装置に用いられるモニター板の他の実施例の斜視図である。図中、2はモニター板、3は基板、9,10は光電膜である。光電膜9は、小径の点状のものであり、基板3の表側にコーティングされている。光電膜10は、基板3の裏側の全面にコーティングされている。光電膜9,10からそれぞれ放出される電子は、上述の実施例と同様に、別々の検出手段、例えば、2次電子増倍管で検出される。入射X線ビームあるいはモニター板を入射方向に垂直な面内で2次元走査して、両光電膜から放出された電子を検出することにより、ビームの形状測定と全強度測定を同時に行なうことが可能である。測定するビームの大きさにもよるが、光電膜9として、例えば、直径が1μm程度の大きさのものを用いることにより、精度よく、ビームプロファイルの検出ができる。
【0031】
なお、2次電子増倍管等による検出電流は、微小電流計を用いることに限られず、パルス計数回路等、適宜の方法で測定される。測定値をマイクロコンピュータにより処理することによって、ビーム強度、ビーム位置、ビーム形状等を、より迅速に検出することが可能である。
【0032】
光電膜の形状は、上述した実施例に限られるものではない。その形状や位置関係を適当に選ぶことによりX線ビームの強度だけではなく、位置や形状等を測定することができる。
【0033】
なお、超高真空中で測定を行なう場合には、ベリリウム箔や銀コーティングなどガス放出のない材料を選ぶのがよい。
【0034】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、X線ビームモニターが透過型であるため、ビームのモニターとビームの利用を同時に行なうことが可能であり、また、ビームの断面形状にも影響を与えることもない。また、どんなに小さな径のビームもモニターでき、さらに、ビームの吸収による熱負荷も小さいという効果がある。さらに、ビームの強度だけでなく、位置や形状の測定も可能であり、超高真空中でも使用できるという利点がある。
【0035】
したがって、シンクロトロン放射光用ビームラインのX線ビームモニターとして利用すると効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の透過型X線ビームモニター装置の一実施例の概略構成図である。
【図2】本発明の透過型X線ビームモニター装置に用いられるモニター板の他の実施例の斜視図である。
【符号の説明】
1…X線ビーム、2…モニター板、3…基板、4,5…光電膜、6a.6b…2次電子増倍管、7a,7b…電極、8a,8b…エレクトロメータ、9,10…光電膜。
Claims (13)
- X線を吸収して電子を放出する光電効果を有する光電膜を、X線透過性の基板の表側および裏側であって、前記基板に対して直交する方向からみたとき相互に重ならない範囲に設けたモニター板を用い、前記モニター板にX線を透過させ、前記光電膜から放出される電子の収量をモニター板の表裏を区別して測定することを特徴とする透過型X線ビームモニター方法。
- X線を吸収して電子を放出する光電効果を有する光電膜を、X線透過性の基板の表側および裏側であって、異なる大きさで前記基板に対して直行する方向からみたときお互いに重なる範囲に設けたモニター板を用い、前記モニター板にX線を透過させ、前記光電膜から放出される電子の収量をモニター板の表裏を区別して測定することを特徴とする透過型X線ビームモニター方法。
- 入射されるX線の吸収および散乱が無視できる程度に前記基板および前記光電膜の厚さを薄くしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の透過型X線ビームモニター方法。
- 前記光電膜の光電効果に伴って発生する光電子、オージェ電子、2次電子が透過できない程度に前記基板を厚くしたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の透過型X線ビームモニター方法。
- 前記基板としてベリリウム箔,グラファィト薄板,アルミ箔、軽金属薄板を用いることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の透過型X線ビームモニター方法。
- 前記基板として、カーボン,アルミのコーティングなどによる表面導電化処理が施された有機物フィルムあるいはダイヤモンド,水晶,サファイヤ,窒化硼素,窒化アルミ,窒化珪素の無機物薄板を用いたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の透過型X線ビームモニター方法。
- 前記光電膜として銀,金,銅の金属膜を用いたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の透過型X線ビームモニター方法。
- X線透過性の基板の表側および裏側にX線を吸収して電子を放出する光電効果を有する光電膜を前記基板に対して直交する方向からみたとき前記両光電膜が相互に重ならない範囲に設けたモニター板と、X線が透過することにより該モニター板の表裏から放出される電子の電流を別々に検出する検出器を有することを特徴とする透過型X線ビームモニター装置。
- 入射されるX線の吸収および散乱が無視できる程度に前記基板および前記光電膜の厚さを薄くしたことを特徴とする請求項8に記載の透過型X線ビームモニター装置。
- 前記光電膜の光電効果に伴って発生する光電子、オージェ電子、2次電子が透過できない程度に前記基板を厚くしたことを特徴とする請求項8または9に記載の透過型X線ビームモニター装置。
- 前記基板としてベリリウム箔,グラファィト薄板,アルミ箔、軽金属薄板を用いることを特徴とする請求項8ないし10のいずれか1項に記載の透過型X線ビームモニター装置。
- 前記基板として、カーボン,アルミのコーティングなどによる表面導電化処理が施された有機物フィルムあるいはダイヤモンド,水晶,サファイヤ,窒化硼素,窒化アルミ,窒化珪素の無機物薄板を用いたことを特徴とする請求項8ないし10のいずれか1項に記載の透過型X線ビームモニター装置。
- 前記光電膜として銀,金,銅の金属膜を用いたことを特徴とする請求項8ないし12のいずれか1項に記載の透過型X線ビームモニター装置。
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-
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