JP3602439B2 - 最適な設計の音波洗浄装置を最適な運転パラメーターで用いる、改良された気相流動床重合方法 - Google Patents

最適な設計の音波洗浄装置を最適な運転パラメーターで用いる、改良された気相流動床重合方法 Download PDF

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Description

【0001】
(発明の分野)
本発明は、オレフィン及び/又はジオレフィン重合体の重合に関する。特に本発明は、これら重合体を重合する間に生じるファウリング及び/又はシート形成を排除又は削減するための、1個以上の音波洗浄装置の使用に関する。
【0002】
(発明の背景)
重合体製造法のうち、最も経済的で最も一般的に用いられているものの一つが気相重合である。オレフィン及び/又はジオレフィン重合に用いられている従来の気相流動床反応器は、流動稠密相床(すなわち反応気体と重合体(樹脂)粒子との混合物)と稠密相面(床面)上のフリーボードを含んでいる。フリーボードは主に気体及び少量の粒子、特に微粒子(微紛)を含んでいる。稠密相床は、通常は反応器の円筒部分に保持されている。この円筒部分の上には、より大きな直径のいわゆる拡張部分があり、そこでは反応器から反応系の他の部分に運び出される微紛の量を削減する目的で、気体速度の低減が行われる。拡張部分は先細になる円錐部分を介して円筒部分に連結している。フリーボードは通常、拡張部分に位置している。床面が円筒部分の最頂部より低い場合には、円筒部分の上部もフリーボードの一部となる。
【0003】
反応器運転の際に、フリーボードに存在する微紛は、反応器を離れる気体によって運び出されるか又は落ちて稠密相に戻る。しかし、ある量の微紛は反応器系(特にフリーボード部)の内壁に付着し、いわゆるシート(すなわち塊状に集まった、溶解した又は半溶解した樹脂及び触媒粒子の層)を形成する恐れがある。シートは、重合体生成物の特性にマイナスに作用する。シートが重くなると壁から落ちて生成物排出系を塞ぐか又は分配板の機能を妨げる。シートの小片は多量の樹脂粒子と共に排出され、プラスチック容器やフィルムといった最終製品のゲル化レベルを上げてしまい、生成物の品質に問題を与える。シート形成及び微紛蓄積は、まとめて「固体粒子蓄積」と称される。
【0004】
シート形成が反応系並びに最終重合生成物に影響を与えるのを防ぐために、通常は反応器を定期的に停止させて壁の洗浄が行われる。反応器が停止している間、運転時間の大きなロスとなり、更に洗浄に経費もかかる。従って、反応器フリーボードの内壁及び反応系の他の部分を連続的に洗浄する方法があれば、時間と経費を節約することができる。
【0005】
米国特許第5,461,123号には、音波を用いた反応器壁への粒子蓄積の回避が開示されている。その発明によると、音波を反応器に適用して壁に付着した粒子を剥離させる。剥離した粒子は次いで重力又は抵抗力によって壁から除去される。
【0006】
しかし、音波の効能は、例えば音波ノズルの数、音波ノズルの位置、音波ノズルの方向、音圧レベル、音波周波数、音波運転モード(持続時間及びインターバル)、音波管の長さ、音波管の直径、音波管の挿入長さ等の、幾つかのパラメーターに依存することがわかっている。こうした設計及び運転パラメーターで適当なものを選ぶことが、反応器フリーボードの最適な保護を達成するのに必要であり、さもなくば音波の効果はわずかしかあるいは全く得られない。
【0007】
最適な設計の音波洗浄装置を最適な運転パラメーターで用いる、改良された気相ポリオレフィン重合方法の提供が望まれる。本発明の目的は、音波洗浄装置の設計及び運転パラメーターを最適化する方法を提供することにある。
【0008】
(発明の概要)
本発明によると、(a)少なくとも1個のαオレフィン及び任意にジエンを、又は(b)1個以上のジオレフィンを重合化する方法であって、
(1)約5〜40Hzの音波を発生し;(2)約100〜200dBの標準音圧レベルを有し;(3)保護される反応器の内表面において最小音圧レベル約100〜200dBを達成し;並びに(4)1個以上の音波ノズルを通じて音波が反応器系に導入されるが、各音波ノズルは、下記面積分式
【数2】
Figure 0003602439
(ここでWは反応器内表面の異なる部分に応じて約1.0〜5.0の値を取る重み関数であり;SPLは音圧レベルであり;dSは面積分の面素である)によって計算される値の±約60%内におさまる垂直位置と、値の±約60°内におさまる方位角とになるように配置されている音波発生装置を少なくとも1個備えた気相反応器中で少なくとも1個の重合触媒の存在下に重合することを包含する方法が提供される。反応器系の内表面における固体粒子蓄積は音波によって回避又は除去することができる。
【0009】
重合体及びモノマー 本発明の方法によって生成することのできる重合体の例としては、炭素数2〜18のαオレフィンのホモポリマー及び共重合体;ポリ塩化ビニル、エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM);ポリイソプレン;ポリスチレン;ポリブタジエン;スチレンと共重合したブタジエン重合体;イソプレンと共重合したブタジエン重合体;アクリロニトリルとのブタジエン重合体;イソプレンと共重合したイソブチレン重合体;エチレンブテンゴム及びエチレンブテンジエンゴム;ポリクロロプレン;ノルボルネンのホモポリマー及び炭素数2〜18のαオレフィン1個以上との共重合体;および炭素数2〜18のαオレフィン1個以上とジエンとのターポリマー等が挙げられる。
【0010】
本発明の方法に用いることのできるモノマーの例としては、エチレン、プロピレン等の炭素数2〜18のαオレフィン1個以上、及び任意に、ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、オクタジエン(例えば1−メチル−1,6−オクタジエン及び7−メチル−1,6−オクタジエン等のメチルオクタジエン等)、ノルボルナジエン及びエチリデンノルボルネン等のジエン(Brady他、米国特許第5,317,036号に示唆のものなど)少なくとも1個;イソプレン、スチレン、ブタジエン、イソブチレン、クロロプレン、アクリロニトリル、環状オレフィン(例えばノルボルネン)等の容易に凝縮できるモノマー(米国特許第5,453,471号に示唆のものなど)、が挙げられる。
【0011】
重合方法 本発明の方法は、スラリー、溶液、バルクの攪拌床及び流動床重合と組合せて用いることができる。こうした反応器中における稠密相(気体−固体稠密相、スラリー相、又は溶液相を含む)面の上にある内表面は、本発明の音波発生装置によって粒子蓄積から保護することができる。特に液体が稠密相に存在する場合には、稠密相面の下にある内表面でさえも部分的に又は完全に保護することができる。
【0012】
好ましくは、本発明の方法は(機械的に攪拌及び/又は気体流動化される)流動床重合に用いられ、中でも気相を利用する重合が最も好ましい。本発明は、流動又は気相重合反応の種類によって制限されるものでは無く、単独の反応器においてもあるいは2個以上の反応器が連結している複数反応器においても実施することができる。公知の一般的な気相重合法に加え、いわゆる「誘導凝縮式」を含む「凝縮式」重合や、気相重合の「液体モノマー」運転などを適用することもできる。
【0013】
樹脂を生成する従来の流動床方法は、1個以上のモノマーを含む気体流を、重合触媒が存在する反応条件下で、連続的に流動床反応器に通過させることによって実施される。生成物を反応器から引き出す。未反応のモノマーを含む気体流を反応器から連続的に引き出して、補給モノマーを加えて反応器に戻し再生利用する。従来の気相重合は、例えば米国特許第3,922,322号、第4,035,560号及び第4,994,534号に開示されている。
【0014】
凝縮式重合は、米国特許第4,543,399号、第4,588,790号、第4,994,534号、第5,352,749号及び第5,462,999号に開示されている。凝縮式方法はより高い冷却能力を達成するために、従ってより高い反応器生産性を達成するために用いられる。こうした重合においては、再生流またはその部分は流動床重合法において露点より低い温度に冷却することができ、よって再生流の全て又は一部を凝縮することができる。再生流は反応器に戻る。再生流の露点は、反応/再生系の運転圧力を増加させる及び/又は凝縮性液体のパーセントを増加させる及び再生流中の非凝縮性気体のパーセントを減少させることによって、上昇させることができる。凝縮性液体は触媒、反応物及び重合体生成物に対して不活性であってもよい。あるいは凝集性液体はモノマー及びコモノマーを含んでもよい。凝集性液体は系の中のいかなる地点においても反応/再生利用系に導入することができる。凝集性液体は、飽和又は不飽和炭化水素を含む。
【0015】
重合法の凝集性液体自体に加えて、重合に不活性な他の凝集性液体を「誘導」凝集式運転に導入することができる。好適な凝集性液の例としては、2〜8個の炭素原子を含む液体飽和炭化水素(例えばエタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン及び他の飽和C炭化水素、n−ヘプタン、n−オクタン、及び他の飽和C及びC炭化水素及びそれらの混合物)が挙げられる。凝集性液体は、オレフィン、αオレフィン、ジオレフィン、少なくとも1個のαオレフィンを含むジオレフィン、及びそれらの混合物などの重合性凝集性コモノマーを含む。凝集式重合においては、流動床に入る液体が迅速に分散し蒸発するのが望ましい。
【0016】
液体モノマー式重合は米国特許第5,453,471号;米国特許出願第08/510,375号;PCT95/09826(US)及びPCT95/09827(US)に開示されている。液体モノマー式で運転する場合には、床に存在する液体モノマーが床に存在する固体粒子状物体[生成される重合体又は不活性粒子状材料(例えばカーボンブラック、シリカ、粘土、タルク及びそれらの混合物)]の上又は内に吸着されるとすれば、自由液体モノマーが実質的に存在しない限りは、液体が重合体床全体にわたって存在することができる。液体モノマー式を利用することによって、従来のポリオレフィン生成の温度よりもずっと高い凝集温度を有するモノマーを用いて気相反応器内で重合体を生成することが可能になる。一般に、液体モノマー式方法は、成長しつつある重合体粒子の床を含む重合領域を有する、攪拌床又は気体流動床反応容器内で実施される。この方法は、1個以上のモノマー流と、任意に1個以上の不活性気体と又は液体とを、重合領域内に連続的に導入し;連続的又は断続的に重合領域に重合触媒を導入し;連続的又は断続的に重合体生成物を重合領域から引き出し;領域から未反応の気体を連続的に引き出し;そして領域内の温度を、領域内に存在する少なくとも1個のモノマーの露点より低く保ちつつ、気体を圧縮及び冷却することを包含する。気−液流に存在するモノマーが1種だけであれば、不活性気体も少なくとも1種存在する。通常、領域内の温度及び領域を通過する気体速度は、固体粒子状物質の上に又は中に吸着されなかった液体が重合領域には実質的に存在しないように設定される。
【0017】
通常、流動床重合方法は、約10〜1000psi、好ましくは約200〜600psiの圧力下、約10〜150℃、好ましくは約40〜125℃の温度下で行われる。重合方法を実施する間の表面上の気体速度は約0.7〜3.5フィート/秒、好ましくは約1.0〜2.7フィート/秒である。
【0018】
触媒 本発明の重合方法に、あらゆる種類の重合触媒を用いることができる。触媒は単独で用いてもよいし、望ましい場合には組合せて用いてもよい。触媒は可溶性であっても、不溶性であってもよく、担持されていてもいなくてもよい。充填剤、液体、溶液、スラリー/懸濁液又は分散液と共にあるいはそれらを用いずに噴霧乾燥したプレポリマーであってもよい。これらの触媒は当分野で公知の共触媒及び助触媒と共に用いられる。一般にこれらはアルキルアルミニウム、アルキルアルミニウムハロゲン化物、アルキルアルミニウム水素化物、及びアルミノキサンである。好ましい触媒の例としては、
A.チタニウムに基づく触媒(例えば米国特許第4,376,062号及び第4,379,758号参照)等のチーグラー・ナッタ触媒。チーグラー・ナッタ触媒は当分野においてよく知られており、一般に有機アルミニウム共触媒と共に用いられるマグネシウム/チタン/電子供与体複合体である。
B.クロムに基づく触媒(米国特許第3,709,853号;第3,709,954号;及び第4,077,904号参照)。
C.オキシ塩化バナジウム及びアセチルアセトナトバナジウムなどのバナジウムに基づく触媒(米国特許第5,317,036号参照)。
D.メタロセン触媒及び他の単一部位(single−site)触媒又は単一部位様触媒(米国特許第4,530,914号;第4,665,047号;第4,752,597号;第5,218,071号;第5,272,236号;第5,278,272号;第5,317,036号;及び第5,527,752号参照)。
E.トリハロゲン化アルミニウム等の陽イオン性金属ハロゲン化物。
F.ブチルリチウム等の陰イオン性開始剤。
G.コバルト触媒及びそれらの混合物(米国特許第4,472,559号及び第4,182,814号参照)。
H.ニッケル触媒及びそれらの混合物(米国特許第4,155,880号及び第4,102,817号)。
I.稀土類金属触媒、すなわち周期表の原子番号57〜103の金属を含む触媒(例えばセリウム、ランタン、プラセオジム、ガドリニウム及びネオジムの化合物)
が挙げられるが、これは例証を目的とするものであって制限するためのものではない。特に有用なのがカルボン酸塩、アルコラート、アセチルアセトナト、ハロゲン化物(例えばニ塩化ネオジムのエーテル及びアルコール複合体)、及びそうした金属(ネオジムなど)のアリル誘導体である。ネオジム化合物、特にネオデカン酸、オクタン酸、及びバーサテート(versatate)ネオジム、並びにn−アルキルネオジムが最も好ましい稀土類金属触媒である。稀土類触媒は特に好ましく、ブタジエン、スチレン又はイソプレンなどを用いる重合に用いられる。
【0019】
本発明の方法に好適な触媒の例としては、稀土類金属触媒、チタン触媒、クロム触媒、ニッケル触媒、バナジウム触媒及びメタロセン/単一部位/単一部位様触媒が挙げられる。
【0020】
不活性粒子状材料 本発明の重合方法は、不活性粒子等の他の添加物を含有することができる。不活性粒子は、粘着性重合体を生成する方法(米国特許第4,994,534号参照)や上に列挙した容易に凝集できるモノマーから得られる重合体を生成する方法に用いられる例えばカーボンブラック、シリカ、粘土及びタルクを含んでもよい。不活性粒子状材料の使用は、モノマーの一つとしてジエンを用いる気相重合において、あるいはジオレフィンが唯一のモノマーである場合に、特に好ましい。不活性粒子状材料のうち、カーボンブラック、シリカ、及びそれらの混合物が好ましく、そのうちカーボンブラックが最も好ましい。不活性粒子状材料は、最終重合体生成物の重量を基準として約0.3〜80重量%、好ましくは約5〜75重量%、最も好ましくは約5〜50重量%の量で気相重合に用いる。
【0021】
音波及び音波発生装置 本発明において、音波は1個以上の音波発生装置(ここでは音波洗浄装置とも称する)によって発生される。音波発生装置は、少なくとも1個の振動発生ユニット;振動ユニットに連結して望ましい周波数で音波を発生させ伝搬させる少なくとも1個の音波管;及び反応器に音波を導入する、音波管末端に位置する少なくとも1個の音波ノズルを含む。振動発生ユニットは通常、可聴周波数と同じ周波数で往復する少なくとも1個のピストンを含む1個以上のチャンバを含む。このピストンは気体、電気又は他の手段によって駆動される。振動発生ユニットはコクム−ソニックスAB社(スウェーデン)から入手可能である。音波は、壁表面で固体粒子蓄積が起きないように様々な位置に配置された音波ノズルを介して反応系に導入される。好ましい位置は、反応器フリーボード、熱交換器、再生利用ライン、分配板の下、パージビン、及び/又はバッグハウスである。
【0022】
音波洗浄装置が望ましい効果を達成するためには、寸法等の様々なデザインや運転パラメーターを選択してそれらの最適な範囲を決定する必要がある。本発明に最適な範囲や最適な形態を詳述したこれらのパラメーターとは、(1)音発生装置の標準音圧レベル、(2)洗浄される表面全体の最小音圧レベル、(3)音波の周波数、(4)音波管の長さ、(5)音波の持続時間とインターバル、(6)音波ノズルの数、(7)音波ノズルの位置と方向、(8)音波管の挿入長さと直径、及び(9)音波管の形態、である。本発明における音波の周波数は可聴及び不可聴の範囲に渡る。
【0023】
音圧レベル 音波発生装置によって導入される音エネルギーは、反応器系の内表面から重合体粒子、微粒子、シート又は他の粒子を除去できるものでなければならない。標準音圧レベル(SSPL)と呼ばれるパラメーターをここで用いて音波発生装置のエネルギーレベルを測定する。SSPLは、反射音波による干渉が存在しない条件下で、音源(例えば音波ノズル)から1m離れた位置で測定された音圧レベル(SPL)として定義される。本発明に用いられる音波発生装置のSSPLは好ましくは約100〜200デシベル(dB)であり、最も好ましくは約140〜170dBである。
【0024】
最小音圧レベル 洗浄される反応器系の内表面(例えば反応器フリーボード部の表面)は、十分なエネルギーの音波によって粒子蓄積から保護することができる。洗浄される表面の様々な位置におけるSPLは通常、音波ノズルからの距離が異なる等の理由から、異なっている。従って、洗浄される表面全体の最小音圧レベル(mSPL)は、固体粒子蓄積を回避する音波効果の測定指標となる。本発明においては、反応器系における洗浄される表面全体の最小SPLは好ましくは約100〜200dB、最も好ましくは約120〜170dBである。
【0025】
音波の周波数 本発明で用いる音波は、反応器系の内表面から重合体粒子、微紛、シート又は他の粒子を除去するのに好適な周波数のものである。周波数が高すぎると、反応器壁に付着した粒子が剥離しにくくなる。周波数が低すぎると、音波を発生するのに用いられる音波管は長くなり測定可能な程の音エネルギーの損失が生じる。本発明に用いられる音波の周波数は、不可聴の超低音波(一般に20Hz未満)から可聴の音波(一般に20Hz以上)に渡るものを用いることができる。周波数は好ましくは約5〜40Hz、最も好ましくは約10〜25Hzである。
【0026】
音波管の長さ及び直径 適当な音波管の長さ及び直径をとることによって、十分な音エネルギーが反応器に確実に伝えられる。好ましくは、音波管の長さは音波長の約1/8〜3/8であり、最も好ましくは約3/16〜5/16である。音波管の直径が小さすぎると、音エネルギーの一部は音波管内の壁に反射して消失する。音波管の直径が大きすぎると、製造時及び運転時に困難が生じる。本発明に用いる音波管の内径は、好ましくは約2〜12インチであり、最も好ましくは約3〜10インチである。
【0027】
音波持続時間及びインターバル 音波の持続時間及びインターバルは、音波洗浄装置の性能を決定する指標である。持続時間とは、装置が音波を発生している時間であり、インターバルとは音波装置の連続する2回の起動の間の時間である。インターバルが長いと反応器の壁における固体粒子蓄積が進行し、音波による壁の洗浄が困難になる。インターバルが短いと十分な洗浄効果が得られない。本発明においては、音波洗浄装置の好ましいインターバルは、約0(すなわち連続運転)〜4時間、最も好ましくは3分〜1時間である。本発明に用いられる最適な持続時間は、好ましくは約5秒〜連続運転、最も好ましくは約10〜60秒である。
【0028】
音波ノズルの数 音波ノズルの最適な個数は洗浄される面の形成する空間の全体積に依存する。例えば反応器フリーボードについては、本発明で用いられるノズル数に対するフリーボード体積の割合(単位:立法フィート)は、好ましくは約7000未満:1、最も好ましくは約5000未満:1である。一般に市販されている反応器については、1〜10個の音波発生装置を反応器系の異なる位置(反応器のフリーボード部分、熱交換器、再生利用ライン、分配板の下、パージビン、及びバッグハウスなど)に導入することができる。
【0029】
ノズルの位置と方向 音波ノズルの位置を最適にすることによって、保護される内表面上における音波エネルギーの分配を最適なものにすることができる。最適な位置は、下記の面積分式によって数学的に決定することができる。
【数3】
Figure 0003602439
(ここでSPLは音圧レベルであり;dSは面積分の面素であり;Wはカバーされる各比表面積の相対的重要度を決定する重み関数である)。音波は床に数フィート突入したのち床によって吸収される又は消散させられるので、床に覆われた又は床の下に隠された表面が音波によって十分に保護されるということはないことが理解される。一般に、蓄積の起こりやすい領域については1.5〜5のWが選択され、他の領域については1.0〜1.5のWが選択される。本発明においては、各ノズルの垂直位置は式(1)で計算される値の±約60%内におさまるのが好ましく、±約40%におさまるのが最も好ましい。各ノズルの方位角は式(1)で計算される値の±約60°内におさまるのが好ましく、±約30°におさまるのが最も好ましい。
【0030】
最適なノズル位置を決定したのち、ノズルの方向を決定して、洗浄される面全体を直接的な音波伝搬によってカバーする。領域が直接的伝搬によってカバーされていない場合には、その領域に達している音波の殆どは反射波で構成されている。反射波は重ね合わせ効果によってより高い周波数を有するので、表面洗浄には効果的でない。本発明は、音波によって最も効率よく洗浄される表面が、音波ノズルにおいて節点を有する円錐形空間内に位置することを開示する。本発明の好ましい態様にあっては、音波ノズルの方向を最適化することによって、音波ノズルにおいて節点を有し円錐角が約270°より小さい円錐形空間少なくとも1個によって、洗浄される表面をカバーする。約180°より小さい円錐角が最も好ましい。
【0031】
反応器への音波管の挿入 音波管が反応器に挿入される場合には、音波管の外表面が固体蓄積の場所となる可能性があり、更に反射効果が起こって音波洗浄装置の性能が阻害される可能性もある。本発明で用いる音波管の最適な挿入の長さは、好ましくは約0(反応器内表面と同一平面)〜6フィートであり、最も好ましくは約0〜2フィートである。
【0032】
音波管の形態 適当な形態の音波管を用いることによって、効果的で安全な運転が確実になる。音波管に多くの屈曲部(くの字状の屈曲)がある場合、音波の損失並びに望まれないほど激しいパイプの振動が起こりうる。本発明においては、1本の音波管における屈曲の数は約6以下、好ましくは約3以下、最も好ましくは長半径の屈曲が3以下、短半径の屈曲が0である。
本明細書で述べた全ての特許はここに参照して説明に代えるものとする
以下の実施例によって本発明を更に例証する。
【0033】
(実施例)
下記の実施例は全て、図1に示す形状のニ気相流動床重合反応器において行われる商業規模の運転に関する。これら実施例の詳細な運転条件及び結果は表1、2及び3に示す。
【0034】
実施例1〜2、5〜10及び12では、ポリエチレン製造用気相流動床反応器の内壁に蓄積した固体粒子を除去する音波の効果を調べた。生成物のゲル化レベルに対する効果もこれらの実施例により調べた。実施例10及び12はエチレン/プロピレン/ジエンゴム製造用気相流動床反応器に音波を適用した場合について調べた。各試験(約1〜3ヶ月の運転)の後に反応器を開けて固体粒子蓄積を調べた。ポリエチレン反応器についてはゲル化レベルを4〜6時間ごとに測定した。平均的なゲル化レベルのデータを表1に示す。
【0035】
実施例1 (比較) 音波洗浄装置の非存在下に重合を行った。運転期間の後、反応器フリーボード表面の殆どの部分で約1インチ厚の樹脂粒子蓄積/層が観察された。生成物のゲル化レベルは著しかった。
【0036】
実施例2 (最良な実施形態) 4個の音波発生装置を設置して望ましい音波を反応器フリーボードに導入したことを除いては、実施例1と同様に重合を行った。設計及び運転パラメーターは全て最適な範囲から選択した。最適化の結果、反応器フリーボードの内表面はきれいで(粒子の蓄積は無く)、生成物の品質も良好であった(ゲル化が無かった)。
【0039】
実施例5 本実施例は、音波持続時間の機能を調べることを企図する。音波持続時間を5秒としたことを除いては、実施例2と同様の設計及び運転パラメーターを用いた。反応器を開けて観察したところ固体粒子蓄積がフリーボード表面全体に見られたが、蓄積層の厚み(約1/4〜1/2インチ)は実施例1の場合に比べて薄かった。生成物の品質も僅かに向上した。これは5秒の持続時間では十分に音波洗浄装置を活用できていないことを意味する。このように短い運転時間では、音波による振動は付着した粒子を剥離するのに十分ではない。
【0040】
実施例6 本実施例は音波インターバルが与える効果を調べることを企図する。インターバルを65分に延長したことを除いては、実施例2と同様の設計及び運転パラメーターを用いた。このように長いインターバルの間に過度の粒子蓄積が起こり、音波によって除去するのは困難にであった。反応器を開けた観察結果と、生成物のゲル化レベルは、実施例5と同様であった。
【0041】
実施例7 (比較) 本実施例は音波の周波数が与える影響を調べることを企図する。音波の周波数を45Hzに上げたことを除いては、実施例2と同様の設計及び運転パラメーターを用いた。反応器を開けた観察結果と、生成物のゲル化レベルは、実施例5及び6と同様であった。粒子蓄積除去について、高周波数の音波はあまり効果を有さないことが判明した。
【0042】
実施例8 本実施例は音波管の形態が与える効果を調べることを企図する。各音波管が5個の屈曲を有することを除いては、実施例2と同様の設計及び運転パラメーターを用いた。フリーボード中に弱いSSPL及び弱い最小SPLが得られた。加えて、運転の再に過度のパイプ振動が観察された。一般に過度のパイプ振動は安全上の理由から望まれない。反応器を開けて観察したところ、粒子蓄積の薄層(1/4〜1/2インチ)がフリーボード表面の特定の領域のみに見られ、ゲル化レベルは実施例5〜7の場合に比べて良好であったが、実施例2の結果よりは劣っていた。この結果は、音波管の屈曲数を減らす必要があることを意味している。屈曲部における音エネルギー損失のメカニズムは小さな直径の音波管における損失と同様であるが、主要な振動とは反対方向の、屈曲が原因で起こる反射振動によるパイプ振動がさらに加わっている。
【0043】
実施例9 本実施例では、音波ノズル位置、方向、個数及び音波管挿入の様々な形態を用いた。これらの値を変えたことを除いては、実施例2と同様の設計及び運転パラメーターを用いた。反応器ドームの上部は音波ノズルの最も効果的な空間(すなわち音波ノズルにおいて節点を有する円錐形空間)ではカバーされなかった。反応器を開けて観察したところ、ドーム部の上部に粒子蓄積が見られた。もろい粉末状樹脂粒子の薄層(約1/8〜1/4インチ)が反応器に挿入した音波管の外表面の殆どの部分に見られた。
本実施例は、管を深く挿入しないことの重要性、及び音波ノズルの円錐形効果空間少なくとも1個によって洗浄する表面全体を覆う必要性があることを例証している。生成物ゲル化レベルは実施例8の結果と同様であった。試験の間にさらに観察を行ったところ、反応器ドームにおいて測定した音波の周波数は、反応器に適用した元の周波数の数倍高いという興味深い結果が得られた。この望ましくない高周波数は、音波による直接的なカバーが弱く、また反応器表面の音波反射による実効波重ね合わせが起こるためだと思われる。
実施例1及び5〜9の、粒子蓄積を試料として回収した。これらの蓄積材料、並びに正常な重合樹脂生成物にスパイクを刺して試験を行った。これらの試験結果によって、蓄積した材料が生成物中のゲル化を引き起こすことが確認された。
【0044】
実施例10 (最良な実施形態) 本実施例は、EPDMゴム製造用の気相流動床反応器における音波洗浄装置の適用を例証する。カーボンブラック粒子を定期的に反応器に添加し、静電気活性レベルを制御して粘着性重合体が凝集するのを防いだ。実施例10で用いた音波洗浄装置の設計及び運転パラメーターは最適な範囲から選択した。一定期間の反応器運転の後、反応器フリーボード部の内表面には粒子蓄積は観察されなかった。
【0046】
実施例12 (比較) 音波ノズルの位置を最適化しなかったことを除いては、実施例10と同様の反応条件を用いた。その結果、反応器の上部の直接音波伝搬によるカバーは貧弱で、粒子蓄積が反応器ドームに見られた。
【0047】
Figure 0003602439
【0048】
【表2】
Figure 0003602439
【0049】
【表3】
Figure 0003602439
Figure 0003602439

【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実施例で用いられる典型的な気相流動床反応器を図解する。図1において、反応器(1)は分配板(2)、主に稠密相床(4)又はその一部を保持する円筒部(3)、先細りの円錐形をした拡張部(5)及び半球(6)を含んでいる。稠密相床面(7)の上の空間はフリーボード(8)である。実施例中の反応器の寸法はD=14.5フィート、D=23フィート、H=50フィート、H=20.4フィートである。
【図2】図2は音波発生装置とその反応器壁における界面の概略図である。図2において、1=振動発生ユニット;2=音波管;3=反応器の外壁;4=反応器の内壁;及び5=音波ノズルである。

Claims (11)

  1. (a)少なくとも1個のαオレフィン及び任意にジエンを、又は(b)1個以上のジオレフィンを重合化する方法であって、
    (1)5〜40Hzの音波を発生し;(2)100〜200dBの標準音圧レベルを有し;(3)保護される反応器の内表面において最小音圧レベル100〜200dBを達成し;並びに(4)1個以上の音波ノズルを通じて音波が反応器系に導入されるが、各音波ノズルは、下記面積分式
    Figure 0003602439
    (ここでWfは反応器内表面の異なる部分に応じて1.0〜5.0の値を取る重み関数であり;SPLは音圧レベルであり;dSは面積分の面素である)によって計算される値の±60%内におさまる垂直位置と、値の±60°内におさまる方位角とになるように配置されている音波発生装置を少なくとも1個備えた気相反応器中で少なくとも1個の重合触媒の存在下に重合することを包含する方法。
  2. 1〜10個の該音波発生装置が、反応器フリーボード部、1個以上の熱交換器、再生利用ライン、分配板の下、パージビン、及びバッグハウスからなる群より選ばれる1個以上の反応系の場所に設置されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 該音波発生装置が、(1)少なくとも1個の振動発生ユニット、(2)振動ユニットに連結した少なくとも1個の音波管、及び(3)音波管末端に位置する少なくとも1個の音波ノズルを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
  4. 保護される反応器の内表面が、音波ノズルにおいて節点を有し円錐角が約270°より小さい円錐形空間少なくとも1個によってカバーされることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 音波管の長さが音波長の1/8〜3/8であり;そして各音波管における屈曲の数が6未満であることを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
  6. 音波管の内径が2〜12インチであり;そして各音波管の反応器への挿入の長さが反応器内表面と同一平面〜6フィートであることを特徴とする、請求項3〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 音波ノズル数に対するフリーボード体積の割合が、ノズル1個に対して7000立法フィート未満であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 音波の持続時間が5秒〜連続であり、音波のインターバルが0〜4時間であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 生成される重合体が、
    (a)炭素数2〜18のαオレフィンのホモポリマー及び共重合体;
    (b)エチレンプロピレンジエンターポリマー;
    (c)ポリブタジエン;
    (d)ポリイソプレン;
    (e)ポリスチレン;
    (f)ポリクロロプレン;
    (g)スチレン又はイソプレンと共重合したブタジエン重合体;
    (h)アクリロニトリルと共重合したブタジエン重合体;
    (i)イソプレンと共重合したイソブチレン重合体;及び
    (j)エチレンブテンゴム及びエチレンブテンジエンゴム
    からなる群より選ばれることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
  10. カーボンブラック、シリカ、粘土、タルク及びそれらの混合物からなる群より選ばれてなる不活性粒子状材料を用いることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
  11. 音波ノズル数に対するフリーボード体積の割合が、ノズル1個に対して5000立法フィート未満であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
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