JP3601025B2 - 歯冠の製造方法及びその製造に用いるトレ−パタ−ン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯科用インプラントの歯冠の製造方法及びその製造の際に用いるトレ−パタ−ンに関する。
【0002】
【従来の技術】
本願発明者は、歯科用インプラントの製造方法として、顎骨に植立したフィクスチャ−の上部に断面非円形を有する孔を形成し、この孔に対応した断面非円形の軸部を有する補綴物を歯科用金属で鋳造し、補綴物の軸部をフィクスチャ−の孔に接合剤を介して嵌合することにより、補綴物をフィクスチャ−に一体的に結合するという方法を創作した(特許第2896997号)。
【0003】
この方法は、フィクスチャ−と補綴物(歯冠)を接合剤で一体的に結合するものであるから、結合がしっかりしていて丈夫であり、結合状態を長く維持することができる等の特長を有している。
【0004】
しかし、その後に新たな需要が生じた。それは、上記補綴物が破損した場合に、補綴物をフィクスチャ−から外して補修したり新たな補綴物と交換したりする必要が生じたことであり、また、寝たきりの病人や老人等の場合において、一時的に補綴物を外しておき歯をみがき易くすると共に細菌の繁殖を防止するという必要が生じたことである。
【0005】
更に、上記補綴物を製作する場合に印象材を用いて印象を採得しているが、その際に、一般に印象用カッコトレ−を用いて印象材を対象物に当て手で軽く押えこれを歯で噛んで保持しておき、印象材がある程度の硬さに硬まったときに印象材を外しているために、印象材を軽く噛み過ぎて押えが十分でなかったり、噛んでいる最中に噛み加減が分からず強く噛んだり弱く噛んだりしてその噛み具合に変化を与えたりするので、印象材と採得対象物の間にわずかなクリアランスが生じ正確な印象を採ることができなかった。
【0006】
このためにフィクスチャ−と歯冠を結合する際に、嵌合部の心がずれていて嵌合できなかったり、嵌合部にクリアランスが生じガタついたりすることがあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の需要に応えると共に、フィクスチャ−と歯冠の結合を正確に行うようにし、しかも作業性がよく、作り易く、かつ経済的に作ることができる歯冠の製造方法及びその方法を利便に行うことができるトレ−パタ−ンを提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、鋳造の際に加熱により焼却可能に形成されたトレ−パタ−ンを用い、トレ−パタ−ンは外周部にこれに付設する印象材に対し相対的な移動を阻止する面を有し、このトレ−パタ−ンをフィクスチャ−に仮止めした状態で印象を採り、印象材を付設したトレ−パタ−ンの下にフィクスチャ−アナログを用いて仮座を形成し、この仮座に仮止めしたトレ−パタ−ンにワックスアップし、ワックスアップしたトレ−パタ−ンを鋳型内で焼却し、焼却して形成される空洞部に歯科用金属を注入し歯冠を鋳造するようにしたものである。
【0009】
また、上記仮座にトレ−パタ−ンを仮止めしてワックスアップする際に、トレ−パタ−ンを前歯用歯冠の母体となるように切除しこれにワックスアップしたものを模型として鋳造してカスタムアバットメントを形成し、このカスタムアバットメントを台座に仮止めしてワックスアップし、ワックスアップした部分を模型として歯科用金属で鋳造して前歯用の歯冠を形成するようにしたものである。
【0010】
更に、上記トレ−パタ−ンを用いて簡便にかつ能率良く経済的に歯冠を得るようにしたものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
フィクスチャ−(1)は、図1に示すように歯肉(2)内の顎骨(3)に植立され、このフィクスチャ−(1)の上部に、後記のトレ−パタ−ン(4)の軸部(5)を嵌合するための孔部(6)が形成されている。
【0012】
トレ−パタ−ン(4)は、鋳造の際に加熱によって焼却可能である材料で形成されており、例えばアクリル樹脂やポリプロピレン、ポリメチルメタクリレ−ト(PMMA)等のメタクリル樹脂、AS樹脂、ポリエチレン(LDPE)等のプラスチック材やろう材等の材料が用いられる。
【0013】
上記軸部(5)及び孔部(6)は、断面が三角形、四角形、五角形、六角形、(図示の場合)等の多角形や楕円等の非円形に形成されていて、軸部を孔部に嵌合した際にトレ−パタ−ンの回転を阻止するようになっている。
【0014】
また、この例では、フィクスチャ−(1)に孔部(6)を設け、トレ−パタ−ン(4)に軸部(5)を設けているが、これらの位置関係は逆にしてもよい。
【0015】
上記のように形成したフィクスチャ−(1)の孔部(6)に、トレ−パタ−ン(4)の軸部(5)を嵌合し、トレ−パタ−ンのほぼ軸心に形成されているビス挿通用の孔(7)に、図3に示す印象用ビス(8)を挿入し、そのネジ部(9)を上記フィクスチャ−(1)に形成したネジ孔(10)に係合して仮止めする。
【0016】
この場合、トレ−パタ−ンのビス挿通用の孔(7)に段部(11)を設け、この段部に上記印象用ビスに形成した段部(12)を係合することにより、トレ−パタ−ン(4)をフィクスチャ−(1)にしっかりと固定している。
【0017】
なお、印象用ビス(8)の上部には、断面多角形の凹部(13)が形成されていてビスが締め付け易くなっている。
【0018】
フィクスチャ−(1)にトレ−パタ−ン(4)を仮止めした後、図4に示すようにトレ−パタ−ンの周囲に印象材(14)を付設して印象を採得する。
【0019】
図2に示すように、トレ−パタ−ン(4)の外周部には、溝(15)と平面部(16)が設けられており、これによって印象を採る際にトレ−パタ−ンと印象材の間の相対的な移動(軸方向の動き及び回転)を阻止している。
なお、上記溝(15)を断続的な周溝とした場合は、上記平面部(16)を省略することができ、又この移動阻止手段としてその他適宜の手段を用いることができる。
【0020】
印象材(14)の外周には、カッコトレ−(17)が用いられており、この場合カッコトレ−に上記印象用ビスの凹部(8)を外出させるための孔(18)が形成されている。
【0021】
印象を採った後に、印象用ビス(8)を外し、印象材を付けた状態でトレ−パタ−ン(4)をフィクスチャ−(1)から取り出す(図5)。
【0022】
取り出したトレ−パタ−ン(4)の軸部(5)を、図6に示すフィクスチャ−アナログ(19)の上部に形成した孔部(20)に嵌合させる。
なお、フィクスチャ−アナログの孔部(20)は、上記フィクスチャ−(1)に設けた孔部(6)と同様の形状になっている。
【0023】
図7に示すように、トレ−パタ−ン(4)をフィクスチャ−アナログ(19)に上記印象用ビス(8)を用いて仮止めし、このフィクスチャ−アナログの周囲を石膏、石灰、白亜等の支持体(21)で固めて仮座(22)を形成する(図8)。
【0024】
この場合、フィクスチャ−アナログ(19)の外周部に、溝(23)や平面部(24)を形成しているので、フィクスチャ−アナログ(19)と支持体(21)間の相対的な移動が阻止される。
なお、フィクスチャ−アナログは別途設けた他のフィクスチャ−で代用することができる。
【0025】
仮座(22)を形成した後、トレ−パタ−ン(4)より印象材(14)を取り除き、印象用ビス(8)を外し、そのビス挿通用の孔(7)に図9に示す歯冠用ビス(25)挿入してトレ−パタ−ン(4)を仮止めする。
【0026】
歯冠用ビス(25)には、フィクスチャ−アナログに形成されたネジ孔(26)に係合するネジ部(27)と、上記印象用ビス(8)と同様に形成された段部(28)及び凹部(29)が設けられている。
【0027】
なお、印象用ビス(8)と歯冠用ビス(25)は、適当な長さに形成することによって共用することができる。
【0028】
仮座に仮止めしたトレ−パタ−ン(4)の外周部に、ろう材等で歯冠状にワックスアップ(30)する(図10)。
【0029】
ワックスアップした後、歯冠用ビスを外してトレ−パタ−ン(4)を仮座(22)から取り出す(図11)。
【0030】
図12に示すように、ワックスアップしたトレ−パタ−ンを鋳型(31)に埋設し、これを加熱してトレ−パタ−ンとワックスアップした部分を焼却し、焼却によって形成される空洞部に湯口(32)より溶融した白金加金合金、銀パラジウム合金、ゴバルトクロム合金等の歯科用金属を注入して鋳造し、歯冠体(33)を作る(図13)。
なお、歯冠体(33)は上記トレ−パタ−ンと同様の軸部(5)と、ビス挿通用の孔(7)と、段部(11)を備えている。
【0031】
歯冠体(33)の表面を研磨し、これにポ−セレン焼き付け等の仕上げ加工を施して歯冠(34)を形成する。
【0032】
図14に示すように、歯冠(34)の軸部(5)を接合材を介し、または介さずにフィクスチャ−の孔部(6)に挿入し、歯冠の孔部(7)に通した歯冠用ビス(25)を用いて歯冠をフィクスチャ−(1)に固定する。
この場合、歯冠用ビスの上方に形成された空間にレジン等の充填材(35)が挿入されている。
【0033】
次に、前歯用の歯冠を作る場合について図15〜図19を用いて示す。
図1〜図8に示す方法によって形成した仮座(22)のフィクスチャ−アナログ(19)にトレ−パタ−ン(4)を嵌合し、これを歯冠用ビス(25)で仮止めする。
【0034】
図15に示すように、トレ−パタ−ン(4)の上部を、前歯用歯冠の基部となるように切除(36)し、そのトレ−パタ−ンの外周部に前歯用歯冠の母体となるようワックスアップ(37)する。
【0035】
ワックスアップしたトレ−パタ−ンを仮座(22)から取り外し、これを模型として図12に示す鋳造方法と同様の方法を用いて鋳造しカスタムアバットメント(38)を形成する(図16)。
なお、カスタムアバットメント(38)は上記トレ−パタ−ンと同様の軸部(5)と、ビス挿通用の孔(7)と、段部(11)を備えている。
【0036】
図17に示すように、カスタムアバットメント(38)の軸部(5)を仮座のフィクスチャ−アナログ(19)の孔部(6)に嵌合し、カスタムアバットメントをフィクスチャ−アナログに歯冠用ビス(25)で仮止めし、そのカスタムアバットメントの外周部に前歯用歯冠状にワックスアップ(39)する。
【0037】
ワックスアップしたカスタムアバットメントを仮座(22)から取り外し、これを模型として再び図12に示す鋳造方法と同様の方法を用いて鋳造し、前歯用の歯冠体(40)を作る(図18)。
【0038】
その歯冠体の表面を研磨し、これに仕上げ加工を施して前歯用の歯冠(41)を形成する。
【0039】
歯冠(41)は、図19に示すように、フィクスチャ−(1)に固定したカスタムアバットメント(38)の外周にセメント等の接合剤を用いて合着される。
【0040】
【発明の効果】
本発明は、上記のようにフィクスチャ−にトレ−パタ−ンを仮止めした状態で印象を採ると共に、そのトレ−パタ−ンを仮座のフィクスチャ−アナログに仮止めした状態でワックスアップしているから、印象の採得の際やワックスアップの際にトレ−パタ−ンが軸方向や回転方向に動いたり前後左右に傾いたりすることがなく、これによって印象やワックスアップを正確に行うことができ、鋳造された歯冠とフィクスチャ−の間に心ずれが生じて歯冠が嵌入しにくかったり、嵌合部にガタが生じたり、歯の噛合いが悪くなったりすることがなく、歯冠をフィクスチャ−にぴったりと嵌合させることができ、良好な歯の噛合い状態を得ることができる。
【0041】
また、トレ−パタ−ンの上部を前歯用として切除したものを模型としてカスタムアバットメントを鋳造し、このカスタムアバットメントを用いて歯冠体を鋳造することにより精度の高い前歯用の歯冠を簡便に得ることができる。
【0042】
更に、上記構造のトレ−パタ−ンを用いて効率よく、かつ経済的に作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】顎骨にフィクスチャ−を植立させた状態を示す断面図である。
【図2】トレ−パタ−ンの拡大正面図である。
【図3】印象用ビスの拡大正面図である。
【図4】印象を採得する場合を示す断面図である。
【図5】印象を採得した後の印象材部分の断面図である。
【図6】フィクスチャ−アナログの拡大正面図である。
【図7】仮座を形成する場合を示す断面図である。
【図8】仮座の断面図である。
【図9】歯冠用ビスの拡大正面図である。
【図10】ワックスアップをする場合を示す断面図である。
【図11】ワックスアップした鋳造模型の拡大断面図である。
【図12】鋳造する場合を示す拡大断面図である。
【図13】歯冠体の拡大正面図である。
【図14】歯冠をフィクスチャ−に取り付けた状態を示す断面図である。
【図15】トレ−パタ−ンの上部を切除し、これにワックスアップした場合を示す断面図である。
【図16】カスタムアバットメントの拡大正面図である。
【図17】カスタムアバットメントにワックスアップした場合を示す断面図である。
【図18】前歯用の歯冠体の拡大断面図である。
【図19】フィクスチャ−に固定したカスタムアバットメントに前歯用の歯冠を取り付けた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 フィクスチャ− 4 トレ−パタ−ン 5 軸部 6 孔部 7ビス挿通用の孔 8 印象用ビス 14 印象材 15 溝 16 平面部 19 フィクスチャ−アナログ 22 仮座 25 歯冠用ビス 30,37,39 ワックスアップ 34,41 歯冠 38 カスタムアバットメント
Claims (3)
- 顎骨に植立されるフィクスチャ−の上部に形成した断面非円形の孔部または軸部に嵌合し得るよう断面非円形の軸部または孔部を有する軸状のトレ−パタ−ンを用い、トレ−パタ−ンは、加熱によって焼却可能であり、その外周部に印象材との相対的移動を阻止する移動阻止面を有すると共にほぼ軸心にビス挿通用の孔を有し、上記トレ−パタ−ンの軸部または孔部を上記フィクスチャ−の孔部または軸部に嵌合し、トレ−パタ−ンをフィクスチャ−にビスで仮止めし、トレ−パタ−ンの外周部に印象材を付設して印象をとり、印象材を付設した状態でトレ−パタ−ンをフィクスチャ−より取り外し、トレ−パタ−ンの下に仮座を形成し、仮座は上記フィクスチャ−と同様の孔部または軸部を有すると共に外周面に移動阻止面を有するフィクスチャ−アナログを用い、このフィクスチャ−アナログの孔部または軸部にトレ−パタ−ンの軸部または孔部を嵌合してこれをビスで仮止めし、上記フィクスチャ−アナログの外周部を石膏等の支持体で固め、上記トレ−パタ−ンに付設した印象材を取り除いてトレ−パタ−ンの外周部に歯冠状にワックスアップし、ワックスアップしたトレ−パタ−ンを仮座より取り外して鋳型内で焼却し、焼却により形成された空洞部に歯科用金属を注入して鋳造することを特徴とする歯冠の製造方法。
- 顎骨に植立されるフィクスチャ−の上部に形成した断面非円形の孔部または軸部に嵌合し得るよう断面非円形の軸部または孔部を有する軸状のトレ−パタ−ンを用い、トレ−パタ−ンは加熱によって焼却可能であり、その外周部に印象材との相対的移動を阻止する移動阻止面を有すると共にほぼ軸心にビス挿通用の孔を有し、上記トレ−パタ−ンの軸部または孔部を上記フィクスチャ−の孔部または軸部に嵌合し、トレ−パタ−ンをフィクスチャ−にビスで仮止めし、トレ−パタ−ンの外周部に印象材を付設して印象をとり、印象材を付設した状態でトレ−パタ−ンをフィクスチャ−より取り外し、トレ−パタ−ンの下に仮座を形成し、仮座は上記フィクスチャ−と同様の孔部または軸部を有すると共に外周面に移動阻止面を有するフィクスチャ−アナログを用い、このフィクスチャ−アナログの孔部または軸部にトレ−パタ−ンの軸部または孔部を嵌合してこれをビスで仮止めし、上記フィクスチャ−アナログの外周部を石膏等の支持体で固め、上記トレ−パタ−ンに付設した印象材を取り除いて前歯用歯冠の基部となり得るようトレ−パタ−ンの上部を切除し、その外周部に前歯用歯冠の母体となるようワックスアップし、ワックスアップしたトレ−パタ−ンを仮座より取り外して鋳型内で焼却し、焼却により形成された空洞部に歯科用金属を注入し鋳造してカスタムアバットメントを形成し、カスタムアバットメントを上記台座のフィクスチャ−アナログに嵌合してこれをビスで仮止めし、カスタムアバットメントの外周部に前歯の歯冠状にワックスアップし、ワックスアップした部分を仮座より取り外しこれを鋳型内で焼却し、焼却により形成された空洞部に歯科用金属を注入して鋳造することを特徴とする歯冠の製造方法。
- 顎骨に植立されるフィクスチャ−の上部に形成した断面非円形の孔部または軸部に嵌合し得るようそれぞれ対応した断面非円形の軸部または孔部を有する軸状のトレ−パタ−ンであって、このトレ−パタ−ンは加熱によって焼却可能であり、その外周部に印象材との相対的移動を阻止する移動阻止面を有すると共に、ほぼ軸心にビス挿通用の孔を有する歯冠製造用のトレ−パタ−ン。
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