JP3598360B2 - 磁性細線の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は磁性金属或いは磁性合金よりなる細線を製造する磁性細線の製造方法に関する。詳しくは基板の種類及び温度を規定することにより短時間で広範囲にわたって磁性細線を形成することを可能とする磁性細線の製造方法に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、金属材料及び磁性材料よりなる薄膜をスパッタリング法,真空蒸着法或いは分子線エピタキシー法(以下、MBE法と称する。)等の薄膜形成手段により成膜する手法が実用化されている。特に磁性材料薄膜は、磁気記録媒体や磁気ヘッドに応用されている。
【0003】
また、近年では、上記薄膜の形成の研究が更に進み、磁性材料を原子レベルのオーダーで人工的に積層させた人工格子膜の研究も進められている。このような人工格子膜においては、その構造に起因する新しい物理現象やそれを利用した新材料,新製品の研究についても報告されており、例えば積層構造から誘起される垂直磁気異方性を利用した磁気記録媒体や巨大磁気抵抗を応用した磁気センサー等が報告されている。
【0004】
なお、上記のような人工格子膜を形成する基板としては、ガラス基板や酸化マグネシウム,マイカ等の基板が挙げられ、特にMBE法によりエピタキシャル成長させて人工格子膜を形成する場合には、基板として人工格子膜構成材料に対して濡れ性の良好なものを用いることが好ましいとされており、このような基板を使用すれば良好な積層構造が形成される。上記濡れ性は、格子定数の整合性や化学的な結合力等に依存するものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
さらに、最近では、膜厚方向にのみ変調構造を有する一次人工格子膜の他に、これを発展させて平面内の一方向にも変調を取り入れた二次元人工格子膜構造、三次元人工格子膜構造、縞状細線構造、ドット構造等のより複雑な構造を有する人工格子膜や細線の開発に期待が寄せられている。
【0006】
そして、このような種々の次元で変調された微細構造を有する磁性材料を使用した人工格子膜や細線等においては、その構造から派生する新しい物理現象を利用した新材料の創製や微細な構造を作製する技術を応用して微小な素子及びデバイスの開発を行うことも期待されている。
【0007】
しかしながら、人工格子膜や細線を上記のような微小な素子及びデバイスとするべく、nmオーダーで構造を制御することは現状では不可能である。すなわち、人工格子膜や細線を製造する方法として検討されている集束させたイオンビームを用いた加工方法、電子線リソグラフィーを用いた加工方法、イオンビーム励起またはレーザービーム励起化学気相析出(CVD)を用いた加工方法によってはnmオーダーで構造を制御する事は不可能である。また、最近では、走査トンネル顕微鏡(STM)を使用してnmオーダーで微細加工する方法が挙げられているが、この方法では短時間で広範囲にわたって加工を行うことが困難であり、生産性が良好ではなく、これを補う他の技術が必要となる。
【0008】
そこで本発明は従来の実情に鑑みて提案されたものであり、短時間で広範囲にわたって微細な磁性細線を形成する磁性細線の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために本発明者等は鋭意検討した結果、MBE法を使用して人工格子膜を形成する際の人工格子膜構成材料に対する基板の濡れ性の度合いを利用して細線を形成することが可能であることを見い出した。従来より、高配向性グラファイト(以下、HOPGと称する。)を基板として使用した場合、例えば金等の金属に対する上記基板の濡れ性が良好ではなく、この基板上に人工格子膜を形成しようとすると、原子ステップ上に核成長し易く、膜が形成され難いことが知られていた。そこで本発明者等は、濡れ性の良好でないHOPGよりなる基板を使用してこの上に磁性材料をMBE法により被着させれば、磁性材料がHOPGの原子ステップ上に選択的に被着することから短時間に広範囲にわたって磁性細線が形成されることを見い出した。
【0010】
また、本発明者等がさらに検討を重ねた結果、HOPGよりなる基板の温度を200℃以上とすれば、磁性材料が原子ステップ上に被着し易くなり、磁性細線が良好に形成されることを見い出した。
【0011】
すなわち本発明の磁性細線の製造方法は、高配向性グラファイトよりなる基板の温度を200℃以上とし、上記高配向性グラファイト基板上に分子線エピタキシー法により磁性金属或いは磁性合金を被着させることを特徴とするものである。
【0012】
このとき、基板の温度が200℃未満であると磁性金属或いは磁性合金が高配向性グラファイト基板の原子ステップ上に被着し難くなり、磁性細線の形成が難しくなる。
【0013】
なお、上記本発明の磁性細線の製造方法においては、磁性金属がFe,Co,Niのうちの少なくとも一種類以上であることが好ましい。
【0014】
【作用】
本発明の磁性細線の製造方法においては、高配向性グラファイトよりなる基板の温度を200℃以上とし、上記高配向性グラファイト基板上に分子線エピタキシー法により磁性金属或いは磁性合金を被着させるため、磁性金属或いは磁性合金に対して濡れ性の良好でない高配向性グラファイト基板の原子ステップ上に磁性金属或いは磁性合金が選択的に被着し、その部分で結晶成長が行われ、短時間で広範囲にわたって微細な磁性細線が形成される。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例について実験結果に基づいて説明する。
【0016】
実験例1
先ず、HOPG基板を600℃で加熱しながら該基板上に磁性金属であるNiをMBE法により10分間にわたって被着させた。なお、Niの蒸発温度は1400℃とした。基板の表面状態を原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果を図1及び図2に模式的に示す。
【0017】
図1及び図2から、基板上には幅数十nm程度の微細なNiよりなる磁性細線が形成されていることが確認された。これは、HOPG基板の原子ステップ上にのみ選択的にNiが被着してこの部分に結晶成長が起こったためと考えられる。さらに、このことから基板表面のカッティング方位を制御したり、イオンビームや電子線で基板上に局所的に傷をつけることにより原子ステップの位置を定めれば、任意の構造をもつ磁性細線の作製が可能であることは十分に考えられる。
【0018】
また、比較のために、HOPG基板の温度を室温としてNiを蒸発温度1400℃でMBE法により10分間被着させたところ、基板表面には、30nm程度の大きさの結晶粒が全面にわたって島状に形成されていた。
【0019】
さらに、HOPG基板の温度を変化させ、それぞれにNiを蒸発温度1400℃でMBE法により10分間被着させたところ、基板の温度が200℃よりも低いと、完全な細線が形成されないことがわかった。例えば基板の温度を150℃としてNiをMBE法により10分間被着させた場合、基板表面には不完全な細線が形成された。
【0020】
さらに、比較のために、基板としてHOPG基板の代わりに酸化マグネシウム(以下、MgOと称する。)基板を使用して上記基板を600℃で加熱しながら該基板上にNiをMBE法により10分間にわたって被着させた。なお、Niの蒸発温度は1400℃とした。上記基板表面を原子間力顕微鏡により観察したところ、MgO基板表面にはNiよりなる薄膜が全面にわたって形成されていた。
【0021】
これは、上記MgO基板はNiと格子定数が近く、Niに対して濡れ性が非常に良好であり、上記基板上においてエピタキシャル成長が起こり、平坦なNiよりなる薄膜が形成されたためと考えられる。
【0022】
さらにまた、比較のために、基板としてはHOPG基板を使用し、スパッタリング法やEB蒸着法を使用し、基板温度を600℃としてNiを被着させた。そして、上記基板表面を観察したところ、磁性細線は形成されていなかった。
【0023】
従って、これらの結果から、HOPGよりなる基板の温度を200℃以上とし、上記HOPG基板上にMBE法により磁性金属を被着させれば、磁性金属に対して濡れ性の良好でないHOPG基板の原子ステップ上に磁性金属が選択的に被着し、その部分で結晶成長が行われ、短時間で広範囲にわたって微細な磁性細線が形成されることが確認された。
【0024】
なお、上記MBE法においては、スパッタリング法やEB蒸着法等に比べて成膜速度が1桁以上遅いため、加熱した基板上において準熱平衡状態が実現されて、磁性金属と基板のぬれの効果が顕著となり、磁性細線の形成が容易となる。
【0025】
実験例2
また、HOPG基板の温度を600℃とし、Niの蒸発温度を1400℃として、上記基板上にNiをMBE法により被着させる被着時間を変更してNiの被着を行ってみた。上記被着時間と形成される磁性細線の幅の関係を図3に示す。なお、図3中横軸は被着時間を示し、縦軸は磁性細線の幅を示す。図3の結果から、形成される磁性細線の幅は被着時間と略比例関係にあることがわかった。すなわち、被着時間を2分程度に短時間とすれば、従来の加工技術では到底形成不可能であった幅10nm程度のNiよりなる磁性細線の製造が可能であることが確認された。
【0026】
実験例3
さらに、Niの代わりにFe,Co等の強磁性の磁性金属を使用して、HOPG基板を600℃で加熱しながら該基板上に各金属を蒸発温度1400℃としてMBE法により10分間にわたって被着させたところ、いずれも再現性良好に磁性細線を形成することができた。
【0027】
さらにまた、磁性金属の代わりに磁性合金を使用しても、磁性細線を形成することが可能である。なお、上記磁性合金としては、Cu2 MnAl(ホイスラー合金)やGd,Tb,Dy等の希土類金属を含む合金等が挙げられる。
【0028】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明の磁性細線の製造方法においては、高配向性グラファイトよりなる基板の温度を200℃以上とし、上記高配向性グラファイト基板上に分子線エピタキシー法により磁性金属或いは磁性合金を被着させるため、磁性金属或いは磁性合金に対して濡れ性の良好でない高配向性グラファイト基板の原子ステップ上に磁性金属或いは磁性合金が選択的に被着し、その部分で結晶成長が行われ、短時間で広範囲にわたって微細な磁性細線が形成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】Niを被着させた基板表面の一例を示す模式図である。
【図2】Niを被着させた基板表面の一例を拡大して示す模式図である。
【図3】被着時間と磁性細線の幅の関係を示す特性図である。
【産業上の利用分野】
本発明は磁性金属或いは磁性合金よりなる細線を製造する磁性細線の製造方法に関する。詳しくは基板の種類及び温度を規定することにより短時間で広範囲にわたって磁性細線を形成することを可能とする磁性細線の製造方法に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、金属材料及び磁性材料よりなる薄膜をスパッタリング法,真空蒸着法或いは分子線エピタキシー法(以下、MBE法と称する。)等の薄膜形成手段により成膜する手法が実用化されている。特に磁性材料薄膜は、磁気記録媒体や磁気ヘッドに応用されている。
【0003】
また、近年では、上記薄膜の形成の研究が更に進み、磁性材料を原子レベルのオーダーで人工的に積層させた人工格子膜の研究も進められている。このような人工格子膜においては、その構造に起因する新しい物理現象やそれを利用した新材料,新製品の研究についても報告されており、例えば積層構造から誘起される垂直磁気異方性を利用した磁気記録媒体や巨大磁気抵抗を応用した磁気センサー等が報告されている。
【0004】
なお、上記のような人工格子膜を形成する基板としては、ガラス基板や酸化マグネシウム,マイカ等の基板が挙げられ、特にMBE法によりエピタキシャル成長させて人工格子膜を形成する場合には、基板として人工格子膜構成材料に対して濡れ性の良好なものを用いることが好ましいとされており、このような基板を使用すれば良好な積層構造が形成される。上記濡れ性は、格子定数の整合性や化学的な結合力等に依存するものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
さらに、最近では、膜厚方向にのみ変調構造を有する一次人工格子膜の他に、これを発展させて平面内の一方向にも変調を取り入れた二次元人工格子膜構造、三次元人工格子膜構造、縞状細線構造、ドット構造等のより複雑な構造を有する人工格子膜や細線の開発に期待が寄せられている。
【0006】
そして、このような種々の次元で変調された微細構造を有する磁性材料を使用した人工格子膜や細線等においては、その構造から派生する新しい物理現象を利用した新材料の創製や微細な構造を作製する技術を応用して微小な素子及びデバイスの開発を行うことも期待されている。
【0007】
しかしながら、人工格子膜や細線を上記のような微小な素子及びデバイスとするべく、nmオーダーで構造を制御することは現状では不可能である。すなわち、人工格子膜や細線を製造する方法として検討されている集束させたイオンビームを用いた加工方法、電子線リソグラフィーを用いた加工方法、イオンビーム励起またはレーザービーム励起化学気相析出(CVD)を用いた加工方法によってはnmオーダーで構造を制御する事は不可能である。また、最近では、走査トンネル顕微鏡(STM)を使用してnmオーダーで微細加工する方法が挙げられているが、この方法では短時間で広範囲にわたって加工を行うことが困難であり、生産性が良好ではなく、これを補う他の技術が必要となる。
【0008】
そこで本発明は従来の実情に鑑みて提案されたものであり、短時間で広範囲にわたって微細な磁性細線を形成する磁性細線の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために本発明者等は鋭意検討した結果、MBE法を使用して人工格子膜を形成する際の人工格子膜構成材料に対する基板の濡れ性の度合いを利用して細線を形成することが可能であることを見い出した。従来より、高配向性グラファイト(以下、HOPGと称する。)を基板として使用した場合、例えば金等の金属に対する上記基板の濡れ性が良好ではなく、この基板上に人工格子膜を形成しようとすると、原子ステップ上に核成長し易く、膜が形成され難いことが知られていた。そこで本発明者等は、濡れ性の良好でないHOPGよりなる基板を使用してこの上に磁性材料をMBE法により被着させれば、磁性材料がHOPGの原子ステップ上に選択的に被着することから短時間に広範囲にわたって磁性細線が形成されることを見い出した。
【0010】
また、本発明者等がさらに検討を重ねた結果、HOPGよりなる基板の温度を200℃以上とすれば、磁性材料が原子ステップ上に被着し易くなり、磁性細線が良好に形成されることを見い出した。
【0011】
すなわち本発明の磁性細線の製造方法は、高配向性グラファイトよりなる基板の温度を200℃以上とし、上記高配向性グラファイト基板上に分子線エピタキシー法により磁性金属或いは磁性合金を被着させることを特徴とするものである。
【0012】
このとき、基板の温度が200℃未満であると磁性金属或いは磁性合金が高配向性グラファイト基板の原子ステップ上に被着し難くなり、磁性細線の形成が難しくなる。
【0013】
なお、上記本発明の磁性細線の製造方法においては、磁性金属がFe,Co,Niのうちの少なくとも一種類以上であることが好ましい。
【0014】
【作用】
本発明の磁性細線の製造方法においては、高配向性グラファイトよりなる基板の温度を200℃以上とし、上記高配向性グラファイト基板上に分子線エピタキシー法により磁性金属或いは磁性合金を被着させるため、磁性金属或いは磁性合金に対して濡れ性の良好でない高配向性グラファイト基板の原子ステップ上に磁性金属或いは磁性合金が選択的に被着し、その部分で結晶成長が行われ、短時間で広範囲にわたって微細な磁性細線が形成される。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例について実験結果に基づいて説明する。
【0016】
実験例1
先ず、HOPG基板を600℃で加熱しながら該基板上に磁性金属であるNiをMBE法により10分間にわたって被着させた。なお、Niの蒸発温度は1400℃とした。基板の表面状態を原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果を図1及び図2に模式的に示す。
【0017】
図1及び図2から、基板上には幅数十nm程度の微細なNiよりなる磁性細線が形成されていることが確認された。これは、HOPG基板の原子ステップ上にのみ選択的にNiが被着してこの部分に結晶成長が起こったためと考えられる。さらに、このことから基板表面のカッティング方位を制御したり、イオンビームや電子線で基板上に局所的に傷をつけることにより原子ステップの位置を定めれば、任意の構造をもつ磁性細線の作製が可能であることは十分に考えられる。
【0018】
また、比較のために、HOPG基板の温度を室温としてNiを蒸発温度1400℃でMBE法により10分間被着させたところ、基板表面には、30nm程度の大きさの結晶粒が全面にわたって島状に形成されていた。
【0019】
さらに、HOPG基板の温度を変化させ、それぞれにNiを蒸発温度1400℃でMBE法により10分間被着させたところ、基板の温度が200℃よりも低いと、完全な細線が形成されないことがわかった。例えば基板の温度を150℃としてNiをMBE法により10分間被着させた場合、基板表面には不完全な細線が形成された。
【0020】
さらに、比較のために、基板としてHOPG基板の代わりに酸化マグネシウム(以下、MgOと称する。)基板を使用して上記基板を600℃で加熱しながら該基板上にNiをMBE法により10分間にわたって被着させた。なお、Niの蒸発温度は1400℃とした。上記基板表面を原子間力顕微鏡により観察したところ、MgO基板表面にはNiよりなる薄膜が全面にわたって形成されていた。
【0021】
これは、上記MgO基板はNiと格子定数が近く、Niに対して濡れ性が非常に良好であり、上記基板上においてエピタキシャル成長が起こり、平坦なNiよりなる薄膜が形成されたためと考えられる。
【0022】
さらにまた、比較のために、基板としてはHOPG基板を使用し、スパッタリング法やEB蒸着法を使用し、基板温度を600℃としてNiを被着させた。そして、上記基板表面を観察したところ、磁性細線は形成されていなかった。
【0023】
従って、これらの結果から、HOPGよりなる基板の温度を200℃以上とし、上記HOPG基板上にMBE法により磁性金属を被着させれば、磁性金属に対して濡れ性の良好でないHOPG基板の原子ステップ上に磁性金属が選択的に被着し、その部分で結晶成長が行われ、短時間で広範囲にわたって微細な磁性細線が形成されることが確認された。
【0024】
なお、上記MBE法においては、スパッタリング法やEB蒸着法等に比べて成膜速度が1桁以上遅いため、加熱した基板上において準熱平衡状態が実現されて、磁性金属と基板のぬれの効果が顕著となり、磁性細線の形成が容易となる。
【0025】
実験例2
また、HOPG基板の温度を600℃とし、Niの蒸発温度を1400℃として、上記基板上にNiをMBE法により被着させる被着時間を変更してNiの被着を行ってみた。上記被着時間と形成される磁性細線の幅の関係を図3に示す。なお、図3中横軸は被着時間を示し、縦軸は磁性細線の幅を示す。図3の結果から、形成される磁性細線の幅は被着時間と略比例関係にあることがわかった。すなわち、被着時間を2分程度に短時間とすれば、従来の加工技術では到底形成不可能であった幅10nm程度のNiよりなる磁性細線の製造が可能であることが確認された。
【0026】
実験例3
さらに、Niの代わりにFe,Co等の強磁性の磁性金属を使用して、HOPG基板を600℃で加熱しながら該基板上に各金属を蒸発温度1400℃としてMBE法により10分間にわたって被着させたところ、いずれも再現性良好に磁性細線を形成することができた。
【0027】
さらにまた、磁性金属の代わりに磁性合金を使用しても、磁性細線を形成することが可能である。なお、上記磁性合金としては、Cu2 MnAl(ホイスラー合金)やGd,Tb,Dy等の希土類金属を含む合金等が挙げられる。
【0028】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明の磁性細線の製造方法においては、高配向性グラファイトよりなる基板の温度を200℃以上とし、上記高配向性グラファイト基板上に分子線エピタキシー法により磁性金属或いは磁性合金を被着させるため、磁性金属或いは磁性合金に対して濡れ性の良好でない高配向性グラファイト基板の原子ステップ上に磁性金属或いは磁性合金が選択的に被着し、その部分で結晶成長が行われ、短時間で広範囲にわたって微細な磁性細線が形成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】Niを被着させた基板表面の一例を示す模式図である。
【図2】Niを被着させた基板表面の一例を拡大して示す模式図である。
【図3】被着時間と磁性細線の幅の関係を示す特性図である。
Claims (2)
- 高配向性グラファイトよりなる基板の温度を200℃以上とし、上記高配向性グラファイト基板上に分子線エピタキシー法により磁性金属或いは磁性合金を被着させることを特徴とする磁性細線の製造方法。
- 磁性金属がFe,Co,Niのうちの少なくとも一種類以上であることを特徴とする請求項1記載の磁性細線の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP13959095A JP3598360B2 (ja) | 1995-06-06 | 1995-06-06 | 磁性細線の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP13959095A JP3598360B2 (ja) | 1995-06-06 | 1995-06-06 | 磁性細線の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08333194A JPH08333194A (ja) | 1996-12-17 |
JP3598360B2 true JP3598360B2 (ja) | 2004-12-08 |
Family
ID=15248818
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP13959095A Expired - Lifetime JP3598360B2 (ja) | 1995-06-06 | 1995-06-06 | 磁性細線の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3598360B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR102383837B1 (ko) * | 2016-05-26 | 2022-04-07 | 로비 조젠슨 | 3a족 질화물 성장 시스템 및 방법 |
-
1995
- 1995-06-06 JP JP13959095A patent/JP3598360B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH08333194A (ja) | 1996-12-17 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
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TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
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