JP3597223B2 - アミノスルホン酸−n,n−二酢酸とそのアルカリ金属塩の製造法およびそれらを含む生分解性キレート剤 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、アミノスルホン酸からアミノスルホン酸−N,N−二酢酸およびそのアルカリ金属塩を製造する方法に関し、さらに詳しくは、2−アミノエタンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、2−アミノベンゼンスルホン酸および2−アミノ−2−カルボキシエタンスルホン酸などのアミノスルホン酸に、青酸とホルムアルデヒド、または、グリコロニトリルを反応させることにより、アミノスルホン酸−N,N−二酢酸およびそのアルカリ金属塩を製造する方法に関するものである。
【0002】
アミノスルホン酸−N,N−二酢酸およびそのアルカリ金属塩は、生分解性キレート剤として洗剤組成物、洗剤ビルダー、重金属封鎖剤、過酸化水素安定剤などに広く用いられる。
【0003】
【従来の技術】
アミノスルホン酸−N,N−二酢酸およびそのアルカリ金属塩を製造する方法は、従来から種々知られている。例えば、2−アミノエタンスルホン酸(慣用名タウリン)に二分子のクロル酢酸を付加して2−アミノエタンスルホン酸−N,N−二酢酸を合成する方法(Helv. Chim. Acta. 1949年 32 巻 1175 ページ) 、(L)−2−アミノ−2−カルボキシエタンスルホン酸(慣用名(L)−システイン酸)に二分子のクロル酢酸を付加して(L)−2−アミノ−2−カルボキシエタンスルホン酸−N,N−二酢酸を合成する方法 (米国特許明細書第3683014 号) 、および2−アミノベンゼンスルホン酸に二分子のクロル酢酸を付加して2−アミノベンゼンスルホン酸−N,N−二酢酸を合成する方法(Helv. Chim. Acta. 1947年 40 巻 4312 ページ) などがある。
【0004】
しかしながら、2−アミノエタンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、2−アミノベンゼンスルホン酸および2−アミノ−2−カルボキシエタンスルホン酸などのアミノスルホン酸にクロル酢酸を用いる従来技術は、アミノスルホン酸−N,N−二酢酸の製造のために相応しい原料を選んでいるとは言い難い。すなわち、クロル酢酸は、反応条件のアルカリ性において不安定な原料であり、グリコール酸への副生を避けるため、pHの厳密な制御のもと極めて序々に反応液に滴下されなければならない。また、反応生成物中には、用いたクロル酢酸と当量の塩化ナトリウムの他、グリコ−ル酸などの副生が避けられない。そのため、従来技術では、反応の長時間化を避けられないばかりでなく、付加反応工程および精製工程において煩雑な操作が伴うため、目的とするアミノスルホン酸−N,N−二酢酸の収率と純度の点で重大な問題が残っていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術の問題点を解決すべくなされたもので、アミノスルホン酸−N,N−二酢酸とそのアルカリ金属塩の効率的な製造法を提供することを目的としており、具体的には、工業プロセス的に有利な原料を用いた効率的な工程で、生分解性およびキレート力に優れたアミノスルホン酸−N,N−二酢酸およびそのアルカリ金属塩を高収率、高純度で取得する製造方法の提供を課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前期目的を達成すべく鋭意研究の結果、2−アミノエタンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、2−アミノベンゼンスルホン酸および2−アミノ−2−カルボキシエタンスルホン酸などの工業的に入手可能なアミノスルホン酸を原料とし、青酸とホルムアルデヒド、または、グリコロニトリルを反応させることにより、目的とするアミノスルホン酸−N,N−二酢酸およびそのアルカリ金属塩が、効率的な工程によって、高収率、高純度で得られることを見いだした。
【0007】
また、そのようにして得られたアミノスルホン酸−N,N−二酢酸およびそのアルカリ金属塩が生分解性に優れるキレート剤であることなどを見いだし、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明における第一の発明は、アミノスルホン酸に、青酸とホルムアルデヒド、または、グリコロニトリルをアルカリ金属水酸化物の非存在下に反応させ、次いで、鉱酸で酸析結晶化することを特徴とするアミノスルホン酸−N,N−二酢酸の製造方法を要旨とする。
【0009】
第二の発明は、アミノスルホン酸に、青酸とホルムアルデヒド、または、グリコロニトリルをアルカリ金属水酸化物の非存在下に反応させ、次いで、アルカリ金属水酸化物で加水分解することを特徴とするアミノスルホン酸−N,N−二酢酸のアルカリ金属塩の製造方法を要旨とする。
【0010】
第三の発明は、アミノスルホン酸に、青酸とホルムアルデヒド、または、グリコロニトリルをアルカリ金属水酸化物の非存在下に反応させ、次いで、アルカリ金属水酸化物で加水分解し、さらに、鉱酸で酸析結晶化することを特徴とするアミノスルホン酸−N,N−二酢酸の製造方法を要旨とする。
【0011】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の方法は、アミノスルホン酸に、青酸とホルムアルデヒド、または、グリコロニトリルをアルカリ金属水酸化物の存在下で反応させながら加水分解を行なってアミノスルホン酸−N,N−二酢酸のアルカリ金属塩を得るカルボキシメチル化工程からなる。
【0013】
または、アミノスルホン酸に、青酸とホルムアルデヒド、または、グリコロニトリルを反応させるシアノメチル化工程と、得られたN,N−ビスシアノメチルアミノスルホン酸の反応液を、鉱酸またはアルカリ金属水酸化物により段階的に加水分解してアミノスルホン酸−N,N−二酢酸またはそれらのアルカリ金属塩を得る加水分解工程からなる。更に、カルボキシメチル化工程または加水分解工程により得られたアミノスルホン酸−N,N−二酢酸のアルカリ金属塩を、鉱酸で処理して、アミノスルホン酸−N,N−二酢酸の結晶を得る酸析結晶化工程からなる。
【0014】
本発明における原料であるアミノスルホン酸は、分子中に少なくとも1個以上のアミノ基および1個以上のスルホン酸基を持つものであれば、いかなる化合物でも用いられるが、2−アミノエタンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、2−アミノベンゼンスルホン酸および2−アミノ−2−カルボキシエタンスルホン酸などのモノアミノモノスルホン酸が、目的とするアミノスルホン酸−N,N−二酢酸のキレート力および生分解性の見地から特に好ましい。
【0015】
これらのアミノスルホン酸は、工業的に入手できる純度70%以上、好ましくは85%以上の固体が一般に用いられるが、その製造途中で得られるアルカリ金属塩またはそのアルカリ金属塩水溶液を直接用いることもできる。純度の低いアミノスルホン酸アルカリ金属塩の水溶液を用いる場合は、不純物としてのアンモニア濃度が3%以下であることが望ましい。特に、カルボキシメチル化工程またはシアノメチル化工程においてアンモニアが高濃度で存在すると、発ガン性の報告されているニトリロ三酢酸の副生増加につながるので留意すべきである。
【0016】
また、2−アミノ−2−カルボキシエタンスルホン酸は、D−体、L−体、D,L−体のいずれの光学異性体を用いることもできるが、目的とする2−アミノ−2−カルボキシエタンスルホン酸−N,N−二酢酸の生分解性の見地から原料に(L)−2−アミノ−2−カルボキシエタンスルホン酸を選択することが、特に好ましい。
【0017】
カルボキシメチル化工程あるいは、シアノメチル化工程における各化合物の混合モル比は、原料として選ばれるいずれかのアミノスルホン酸に対し、青酸とホルムアルデヒドをそれぞれ、2.0〜3.0倍モル量の範囲で、好ましくは、2.0〜2.5倍モル量の範囲で使用するのがよい。青酸とホルムアルデヒドに代えてグリコロニトリルを用いる場合も全く同様であり、2.0〜3.0倍モル量の範囲で、好ましくは、2.0〜2.5倍モル量の範囲で使用するのがよい。
【0018】
カルボキシメチル化工程あるいはシアノメチル化工程において用いられる青酸は、青酸を反応液に導入する方法、シアン化アルカリ金属塩を用いる方法、反応槽に用意されたアルカリ金属水酸化物水溶液中に青酸を導入しシアン化アルカリ金属塩として捕捉して用いる方法などによって種々の形態で使用できる。青酸をシアン化アルカリ金属塩の形態として利用する際、用いるアルカリ金属の種類としては、Li、NaまたはK、好ましくはNaまたはK、更に好ましくはNaが選ばれる。
【0019】
カルボキシメチル化工程あるいはシアノメチル化工程において用いられるホルムアルデヒドは、ガス状品、水溶液品、あるいは固体品のパラホルムアルデヒドなど種々の形態のものが用いられるが、工業的には、10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%、更に好ましくは35〜40重量%の水溶液品を使用するのがよい。
【0020】
カルボキシメチル化工程あるいはシアノメチル化工程において、青酸とホルムアルデヒドの代わりに用いられるグリコロニトリルは、通常、アルカリ金属水酸化物等のアルカリ触媒存在下あるいは非存在下の水溶液中で、青酸とホルムアルデヒドを混合することによって得られるが、予め調製された10〜70重量%、好ましくは30〜60重量%の水溶液として使用することも可能である。
【0021】
カルボキシメチル化工程において用いられるアルカリ金属水酸化物は、青酸とホルムアルデヒド、または、グリコロニトリルに対して総計3.0〜5.5倍モル量の範囲で、好ましくは、3.0〜4.0倍モル量の範囲で使用するのがよい。用いるアルカリ金属水酸化物は、Li、NaまたはKの水酸化物、好ましくはNaまたはKの水酸化物、更に好ましくはNaの水酸化物から選ばれ、純度80%以上の固体品、あるいは濃度10〜60重量%の水溶液が用いられる。
【0022】
カルボキシメチル化工程における反応温度は、40〜120℃、好ましくは60〜100℃の範囲で実施するのがよい。
【0023】
カルボキシメチル化工程における各化合物の混合順序には特に制約はないが、いずれの混合順序によっても、反応に供したアミノスルホン酸に対し、最終的に約2倍モル量に相当するアンモニアが発生する。アンモニアの発生を適切な速度に調節することは、目的物であるアミノスルホン酸−N,N−二酢酸を高純度高収率で得るために重要であり、通常、アミノスルホン酸、アルカリ金属水酸化物、青酸とホルマリンの混合物、あるいはグリコロニトリルのいずれかの添加速度を調節することによって達成される。空気、窒素ガス、不活性ガス等の導入、あるいは連続蒸留などを実施することにより反応混合物中のアンモニアを除去することも有効な手段である。
【0024】
目的とするアミノスルホン酸−N,N−二酢酸を特に高純度で取得したい場合は、カルボキシメチル化工程の代わりにシアノメチル化工程と加水分解工程とを段階的に行うことが有利である。原料のアミノスルホン酸に2−アミノ−2−カルボキシエタンスルホン酸を選択し、2−アミノ−2−カルボキシエタンスルホン酸−N,N−二酢酸を高純度で取得する場合は、シアノメチル化工程と加水分解工程とを段階的に行うことが、特に有利である。シアノメチル化工程は、アルカリ金属水酸化物の非存在下で行う以外、カルボキシメチル化工程と同様に実施される。
【0025】
シアノメチル化工程においては、結晶性の高いN,N−ビスシアノメチルアミノスルホン酸が合成中間体として得られるが、一旦単離してから次の加水分解工程に用いても、あるいは単離せず連続的に加水分解工程を行ってもよい。
【0026】
加水分解工程は、シアノメチル化工程において得られるN,N−ビスシアノメチルアミノスルホン酸の水溶液に、アルカリ金属水酸化物あるいは酸を作用させることによって達成される。
【0027】
加水分解工程において用いるアルカリ金属水酸化物は、カルボキシメチル化工程と同じく、Li、NaまたはKの水酸化物、好ましくはNaまたはKの水酸化物、更に好ましくはNaの水酸化物から選ばれる。N,N−ビスシアノメチルアミノスルホン酸を一旦単離する場合は、原料に選択したアミノスルホン酸に対し3.0〜4.0倍モル量用いるのがよく、シアノメチル化工程から連続的に行う場合は、3.0〜5.0倍モル量、好ましくは、3.0〜4.0倍モル量用いるのがよい。
【0028】
アルカリ金属水酸化物による加水分解工程は、40〜120℃、好ましくは60〜100℃の範囲で実施するのがよい。原料に選択したアミノスルホン酸に対し約2倍モル量に相当するアンモニアが最終的に発生するまで、0.5〜8.5時間、好ましくは0.5〜3.5時間で実施するのがよい。
【0029】
酸による加水分解工程は、硫酸、塩酸、硝酸または塩酸、好ましくは硫酸または塩酸、更に好ましくは硫酸を使用するのがよい。酸加水分解は、pH0.5〜2.5、好ましくはpH0.5〜1.5の範囲で実施することが望ましい。反応温度は、60〜120℃、好ましくは80〜100℃の範囲がよく、また、反応時間は、1〜20時間、好ましくは2〜14時間で実施するのがよい。
【0030】
カルボキシメチル化工程あるいはアルカリ金属水酸化物による加水分解工程の後、所望の場合は、反応混合物を蒸発乾固あるいはスプレ−乾燥等の手段で結晶化することにより、目的とするアミノスルホン酸−N,N−二酢酸をアルカリ金属塩として単離することができる。
【0031】
アミノスルホン酸−N,N−二酢酸の結晶を取得する場合は、加水分解工程の反応液を酸析結晶化する。酸析結晶化工程で用いる酸は、硫酸、塩酸、硝酸または塩酸、好ましくは硫酸または塩酸、更に好ましくは硫酸がよい。目的とするアミノスルホン酸−N,N−二酢酸を高純度、高収率で得るには、反応混合物へ酸を添加している時の温度を5〜90℃、好ましくは15〜50℃の範囲に、pHを0.5〜3.5、好ましくは1.5〜2.5の範囲に調節することが望ましい。得られるアミノスルホン酸−N,N−二酢酸の結晶は、通常、結晶表面に付着した微量の母液を少量の水を用いて洗浄する以外、再結晶化を行わなくても充分高純度である。
【0032】
また、このようにして得られたアミノスルホン酸−N,N−二酢酸を所定量のアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アンモニア、有機アミンなどの塩基で、中和または部分中和することにより、所望の塩を製造することができる。
【0033】
従来、強酸基であるスルホン酸は、弱酸基であるカルボン酸よりもカチオン類に対する錯体形成力が微弱であるとの理由から、アミノスルホン酸−N,N−二酢酸のキレート力は、相当するアミノカルボン酸−N,N−二酢酸よりも劣るものと考えられていた。例えば、J.Am. Chem. Soc. 1955 年 77 巻 5512 ページには、アミノメタンスルホン酸−N,N−二酢酸の銅イオンに対する錯体形成力が、その構造類縁体であるニトリロ三酢酸よりも劣る趣旨の内容が記載されている。しかし、驚くべきことに、本発明の方法により合成された2−アミノエタンスルホン酸−N,N−二酢酸、アミノメタンスルホン酸−N,N−二酢酸、2−アミノベンゼンスルホン酸−N,N−二酢酸、(L)−2−アミノ−2−カルボキシエタンスルホン酸−N,N−二酢酸などのカルシウムイオン捕捉能を測定し、これらの構造類縁体であるβ−アラニン−N,N−二酢酸、アントラニル−N,N−二酢酸、アスパラギン酸−N,N−二酢酸、ニトリロ三酢酸などと比較したところ、一連のアミノスルホン酸−N,N−二酢酸のキレート力は、アミノカルボン酸−N,N−二酢酸に遜色ないことが示された。
【0034】
また、これら一連のアミノスルホン酸−N,N−二酢酸の生分解性を測定し、これらの構造類縁体であるアミノカルボン酸−N,N−二酢酸と比較したところ、分子構造中にスルホン酸基が導入されると生分解性が向上する傾向が認められた。
【0035】
すなわち、本発明の方法により合成された2−アミノエタンスルホン酸−N,N−二酢酸、アミノメタンスルホン酸−N,N−二酢酸、2−アミノベンゼンスルホン酸−N,N−二酢酸および(L)−2−アミノ−2−カルボキシエタンスルホン酸−N,N−二酢酸と、そのアルカリ金属塩は、生分解性キレート剤として使用することができる。
【0036】
【実施例】
次に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
攪拌装置、自動温度制御装置、滴下装置、青酸導入装置および蒸留装置を付した反応器に、2−アミノエタンスルホン酸1.20kg(9.6モル)、40重量%水酸化ナトリウム水溶液3.03kg(30.3モル)次いで37重量%ホルムアルデヒト水溶液1.87kg(23.1モル)を混合した。この混合液に青酸0.56kg(20.7モル)を密閉条件下にて、50〜90℃の範囲で反応温度を序々に昇温させながら、3時間かけて滴下した。この間、アンモニア25重量%の凝縮水0.98kgを留去した後、更に3時間かけて反応混合物を熟成し、アンモニア7.3重量%の凝縮水1.48kgを留去した。アンモニアの発生が終了したのを確認した後、反応液に水4.17kgを加えて希釈し、50℃まで放冷した。
次に、この反応液に98%硫酸1.52kg(15.2モル)を1.5時間で滴下し、この間温度は80℃に昇温した。反応液を再び33℃までに放冷し、析出した2−アミノエタンスルホン酸−N,N−二酢酸の結晶を吸引濾過にて単離し,更に10℃の水0.25kgで二回洗浄した。
送風乾燥後の2−アミノエタンスルホン酸−N,N−二酢酸(2.10kg,8.7モル、収率91%)を得た。得られた2−アミノエタンスルホン酸−N,N−二酢酸は、均一な白色結晶(分解点107〜110℃)であり、純度99%以上であった。
【0037】
実施例2
40重量%水酸化ナトリウム水溶液3.03kgの代わりに水1.81kgを用い、また、青酸の滴下および反応混合物の熟成をアンモニアを留去せずに50〜70℃の反応温度範囲下で行った以外、実施例1と同様の操作を実施した。
次に、この反応液を5℃まで冷却し、析出したN,N−ビスシアノメチル−2−アミノエタンスルホン酸の湿結晶1.71kgを吸引濾過にて単離した。単離したN,N−ビスシアノメチル−2−アミノエタンスルホン酸を40重量%水酸化ナトリウム水溶液2.88kg(28.1モル)に懸濁した後、反応温度を序々に105℃まで昇温した後、3時間でアンモニア15重量%の凝縮水1.60kgを留去した。アンモニアの発生が終了したのを確認した後、反応槽に残ったスラリ−をスプレ−ドライ方式により120℃で乾燥粉末化し、2−アミノエタンスルホン酸−N,N−二酢酸の三ナトリウム塩を得た(2.82kg、9.2モル、収率95%)。得られた2−アミノエタンスルホン酸−N,N−二酢酸の三ナトリウム塩は、均一な白色結晶であり、純度99%以上であった。
【0038】
実施例3〜5
2−アミノエタンスルホン酸1.20kg(9.6モル)の代わりに、2−アミノベンゼンスルホン酸1.66kg(9.6モル)、(L)−2−アミノ−2−カルボキシエタンスルホン酸1.62kg(9.6モル)、あるいはアミノメタンスルホン酸1.07kg(9.6モル)を反応に用いた以外、実施例1と同様の操作を実施した。結果を表1に示す。
【0039】
実施例6〜8
2−アミノエタンスルホン酸1.20kg(9.6モル)の代わりに、2−アミノベンゼンスルホン酸1.66kg(9.6モル)、(L)−2−アミノ−2−カルボキシエタンスルホン酸1.62kg(9.6モル)あるいはアミノメタンスルホン酸1.07kg(9.6モル)を反応に用いた以外、実施例2と同様の操作を実施した。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
実施例9〜12
実施例1、3、4、および5で合成した化合物のカルシウムイオン捕捉能を、J.Am. Oil.Chem. Soc., 1970年、48巻、682 ページ記載の方法に準じて測定した。結果を表2に示す。
【0042】
比較例1〜4
試験化合物に、β−アラニン−N,N−二酢酸、アントラニル−N,N−二酢酸、(L)−アスパラギン酸−N,N−二酢酸、およびニトリロ三酢酸を用いた以外、実施例9〜12と同様に,カルシウムイオン捕捉能を測定した。結果を表2に示す。
【0043】
【表2】
1) 単位:[CaCO 3 mg/g] 、(pH9.5)
【0044】
実施例1、3、4、および5で合成した化合物の生分解性試験を、OECDテストガイドライン301C修正MITI試験(I)に準じて下記条件で行った。結果を表3に示す。
(試験条件)
試験サンプル濃度:30mg/l
活性汚泥: 日東化学横浜事業場内活性汚泥
活性汚泥濃度: 100 mg/l
試験温度: 25±1 ℃
試験期間: 28日間
【0045】
比較例5〜8
試験化合物に、β−アラニン−N,N−二酢酸、アントラニル−N,N−二酢酸、(L)−アスパラギン酸−N,N−二酢酸、およびニトリロ三酢酸を用いた以外、実施例13〜16と同様に,生分解性を測定した。結果を表3に示す。
【0046】
【表3】
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、2−アミノエタンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、2−アミノベンゼンスルホン酸、2−アミノ−2−カルボキシエタンスルホン酸などの工業的に入手可能な原料に、青酸とホルマリン、または、グリコロニトリルを反応させることにより、高収率、高純度で、アミノスルホン酸−N,N−二酢酸およびそのアルカリ金属塩を得ることができる。また、本発明は次のような利点もある。
(1)得られるアミノスルホン酸−N,N−二酢酸およびそのアルカリ金属塩は、カルシウムイオン捕捉能および生分解性にすぐれており、生分解性キレート剤として利用することができる。
(2)反応が、高収率、高選択率で進むため不純物の生成がほとんどなく、煩雑な生成工程なしに高純度の目的物を得ることができる。
(3)工程中にアンモニア以外の副生物は、ほとんどなく、目的物の約2倍モル量生成するアンモニアは、高純度、高収率で効率的に回収され、工業原料として他に利用することが出来る。
Claims (3)
- アミノスルホン酸に、青酸とホルムアルデヒド、または、グリコロニトリルをアルカリ金属水酸化物の非存在下に反応させ、次いで、鉱酸で酸析結晶化することを特徴とするアミノスルホン酸−N,N−二酢酸の製造方法。
- アミノスルホン酸に、青酸とホルムアルデヒド、または、グリコロニトリルをアルカリ金属水酸化物の非存在下に反応させ、次いで、アルカリ金属水酸化物で加水分解することを特徴とするアミノスルホン酸−N,N−二酢酸のアルカリ金属塩の製造方法。
- アミノスルホン酸に、青酸とホルムアルデヒド、または、グリコロニトリルをアルカリ金属水酸化物の非存在下に反応させ、次いで、アルカリ金属水酸化物で加水分解し、さらに、鉱酸で酸析結晶化することを特徴とするアミノスルホン酸−N,N−二酢酸の製造方法。
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JPH0827097A (ja) | 1996-01-30 |
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