JP3596334B2 - 吸着処理剤の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水分の存在下で被処理ガス中の被吸着成分と反応して該被吸着成分を吸着する吸着性物質と、該吸着性物質を担持し、上記反応時に吸着性物質に水分を供給する吸水性物質とを含有する吸着処理剤の製造方法に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車等の車両室内には、燃料やオイル等の分解ガス、タバコに由来する燃焼生成物、内装用ボード類や車内装備の接合等に用いられる接着剤や断熱用発泡樹脂等から揮散する有機化合物等の悪臭又は無臭有毒な気体成分が存在している。また、住居内においても、タバコに由来する燃焼生成物はもとより、シックハウスが問題になっているように断熱材や合板材の接着剤から揮散する有害気体成分が存在している。このような気体成分中には、通常、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、ベンズアルデヒド等のカルボニル基含有化合物が含まれている。
【0003】
上記悪臭又は無臭有毒な気体成分を除去する方法としては、活性炭等の物理的吸着剤を利用する吸着処理方法がよく用いられているが、この方法では、特に上記カルボニル基含有化合物に対する吸着除去能力が不十分となる。
【0004】
そこで、本発明者らは、レゾルシン等のように水分の存在下でカルボニル基含有化合物等の被吸着成分と反応して該被吸着成分を吸着する吸着性物質と、ゼオライト等のようにこの吸着性物質を担持しかつ上記反応時に吸着性物質に水分を供給する吸水性物質とを含有した新規な化学的吸着剤を見出した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記化学的吸着剤は、結合剤を用いて造粒することにより粒状体を形成すれば取り扱い性が向上する。このような粒状体を形成する場合、先ず、上記のように被吸着成分の吸着に関して直接的に関連性のある吸着性物質と吸水性物質とを混合して吸水性物質に吸着性物質を担持させ、その後にその混合物と結合剤とを混合して造粒する方法を採るのが一般的である。
【0006】
しかし、上記の方法では、吸水性物質に担持された吸着性物質の外側に結合剤の層が形成されて、多量の吸着性物質が結合剤により覆われるため、吸着性物質の被吸着成分に対する反応性が悪化し、このため、吸着剤の吸着能力の低下を招く虞れがある。
【0007】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記のような吸着処理剤を造粒により製造する場合に、その製造方法を見直すことによって、吸着性物質の被吸着成分に対する反応性を良好に維持して、吸着処理剤の吸着能力が結合剤により低下するのを抑制しようとすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、この発明では、吸着性物質と、吸水性物質同士を結合する結合剤とを混合し、その後、この混合物と吸水性物質とを混合して造粒するようにした。
【0009】
具体的には、請求項1の発明では、水分の存在下で被処理ガス中の被吸着成分と反応して該被吸着成分を吸着する、一価フェノール、多価フェノール及びこれらの誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる吸着性物質と、該吸着性物質を担持し、上記反応時に吸着性物質に水分を供給するH型かつZSM5型ゼオライトとを含有する吸着処理剤の製造方法を対象とする。
【0010】
そして、上記吸着性物質と、上記ゼオライト同士を結合する結合剤とを、該吸着性物質の重量がゼオライトの重量に対して0.1〜20%となりかつ結合剤の重量がゼオライトの重量に対して1.3〜3%となるように混合し、その後、上記混合物とゼオライトとを混合して造粒するようにする。
【0011】
このことにより、吸着性物質と結合剤とが略均一に混合された状態で結合剤の層がH型かつZSM5型ゼオライト(吸水性物質)の周囲に形成されるので、多量の吸着性物質が、結合剤により覆われずに部分的に露出した状態で上記ゼオライトに担持される。この結果、吸着性物質と被吸着成分との反応が良好に行われ、吸着処理剤の吸着能力が結合剤により低下するのを抑制することができる。
【0012】
また、吸着性物質の重量は、ゼオライトの重量に対して0.1%よりも小さいと、被処理ガス中の被吸着成分を吸着する能力が十分でなくなる一方、20%よりも大きいと、吸着性物質の使用量の割には吸着能力が向上しなくなると共に、造粒性が悪化するので、0.1〜20%に設定することで、造粒性を良好に維持しつつ、最少量の吸着性物質により十分な吸着能力を確保することができる。
【0013】
さらに、結合剤の重量は、ゼオライトの重量に対して1.3%よりも小さいと、粒状体を形成しても僅かな力で破砕されてしまう一方、3%よりも大きいと、結合剤により覆われる吸着性物質の量が多くなり過ぎると共に、結合剤の水溶液を調製する場合に系の粘度が上昇し過ぎて造粒作業が困難になるので、1.3〜3%に設定することで、造粒性と吸着処理剤の吸着能力との向上化を図ることができる。
【0014】
また、吸着性物質が、一価フェノール、多価フェノール及びこれらの誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなるので、アルデヒド類やケトン類のようなカルボニル基含有化合物を確実に吸着することができると共に、アミン系やアンモニア系のようなアルデヒド類を吸着可能な化合物とは異なり、吸着性物質自体が臭気を発したり腐食性の高いイオンを生成したりすることはなく、しかも、昇華性を有していないので、何の問題もなく吸着処理剤に使用することができる。
【0015】
さらに、吸水性物質がH型かつZSM5型ゼオライトであるので、吸着性物質の被吸着 成分(特にカルボニル基含有化合物)に対する反応性を高めることができる。
【0016】
よって、造粒性と、特にカルボニル基含有化合物に対する吸着性能とを向上させる上で最適な方法が得られる。
【0017】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、吸着性物質は、レゾルシンであるものとする。このことで、カルボニル基含有化合物に対する捕捉効果をさらに高めることができる。
【0018】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、結合剤は、ポリビニルアルコールであるものとする。このことにより、少量の結合剤で強度の優れた粒状体が得られる。
【0019】
【発明の実施の形態】
先ず、本発明の実施形態に係る製造方法により製造された吸着処理剤について説明すると、この吸着処理剤は、図1に模式的に示すように、水分の存在下で被処理ガス中の被吸着成分と反応して該被吸着成分を吸着する吸着性物質1と、該吸着性物質1を担持し、上記反応時に吸着性物質1に水分を供給する吸水性物質2とを含有している。
【0020】
上記吸水性物質2は、吸着性物質1に対して非反応性でかつ被処理ガス中の水分を吸収する性質を有するものであって、水分存在下で行われる吸着性物質1と被吸着成分との化学反応の場として用いられ、その吸水性によって空気中の水分を吸収するので、反応媒体となる水分を外部から補わなくても反応を効率良く行わせることが可能である。また、上記吸水性物質2は、上記吸着性物質1を担持する吸水性担持材であり、このことで、取り扱い易くなると共に、反応場の提供の観点からも好ましい形態となる。
【0021】
上記吸水性物質2は、ゼオライトであり、このゼオライトは、イオンタイプによってNa型とH型(プロトン型)とに分類されるが、上記吸着性物質1と被吸着成分(特にカルボニル基含有化合物)との反応性を高くできるという観点から、H型ゼオライトとする。また、ゼオライトは、結晶構造によってA型(平均細孔径:約2.5×10-10m)、ZSM5型(同5.5×10-10m)、Y型(同6×10-10m)、X型(同10×10-10m)等に分類されるが、上記と同じ観点から、ZSM5型ゼオライトとする。このH型かつZSM5型ゼオライトは、吸水性物質2として最適なものである。
【0022】
上記吸着性物質1としては、水分の存在下で吸着能力を発揮する化合物である、一価フェノール、多価フェノール及びこれらの誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を用いる。この化合物は、被処理ガス中の被吸着成分が、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、ベンズアルデヒド等のカルボニル基含有化合物である場合に、そのカルボニル基に対して付加反応性を示す活性水素を有するものであり、化学反応によってカルボニル基含有化合物を吸着除去することができる。具体的には、ヒドロキシ安息香酸、オイゲノール、3,5−,2,5−,3,4−キシレノール等の一価フェノール、レゾルシン、ビスフェノールA、カテコール等の二価フェノール、ピロガロール、プルプリン、ナリンギン等の三価フェノール、ルチン等の四価フェノール等が挙げられる。
【0023】
上記のようにカルボニル基に対して付加反応性を示す吸着性物質1により、カルボニル基含有化合物に対して高レベルの吸着処理効率が得られると共に、一旦吸着処理した後は、反応物が吸水性物質2中に取り込まれるため、被吸着成分が単独で放出されることはない。また、この吸着反応は水分の存在下で進行するため、空気中の水分によって吸着性能が阻害されることもない。しかも、アミン系やアンモニア系のようなアルデヒド類を吸着可能な化合物とは異なり、吸着性物質1自体が臭気を発したり腐食性の高いイオンを生成したりすることはなく、また、昇華性を有していないので、実用上何の問題もない。つまり、アルデヒド類を吸着するアミン系やアンモニア系の化合物は臭気、腐食、昇華性等の問題を有しているので、実用的には上記フェノール系の化合物の方が適している。
【0024】
上記吸着性物質1のうち多価フェノールに属するレゾルシンは、カルボニル基含有化合物に対して非常に優れた反応性を示すことから、吸着性物質1として最適なものである。特にレゾルシンと共に、蓚酸等の弱酸性物質や、炭酸ナトリウム等の弱塩基性物質を併用すると、アルデヒド等に対する捕捉効果が一段と高められ、より一層優れた吸着処理効果を発揮する。これは、上記弱酸性物質や弱塩基性物質がレゾルシンとアルデヒド等(特にホルムアルデヒド)との反応の触媒として作用するためと考えられ、この効果は、レゾルシン以外の一価フェノールや多価フェノールを吸着性物質1として使用する際にも有効に発揮される。尚、本発明では、吸着性物質1がH型ゼオライト(固体酸性物質)であるので、弱酸性物質や弱塩基性物質を添加しなくても吸着効果を高めることができ、水分を吸収したときにこれらの弱酸性物質や弱塩基性物質に由来して生じる酸やアルカリによって、この吸着処理剤を備えた吸着処理装置や付帯機器等の酸腐食やアルカリ腐食が生じるという問題を解消することができる。
【0025】
上記吸着性物質1と吸水性物質2との重量比は、吸着性物質1の重量を吸水性物質2の重量に対して0.1〜20%に設定する。これは、吸着性物質1の重量が吸水性物質2の重量に対して0.1%よりも小さいと、吸着能力が十分に発揮されない一方、20%よりも大きいと、吸着性物質1の使用量の割には吸着能力が向上しないからである。また、吸着性物質1を多く加え過ぎると、後述の如く造粒する場合に造粒性が悪化する傾向が見られるからである。この重量比の好ましい上限値は10%である。一方、好ましい下限値は、吸着性能の観点から5%である。
【0026】
上記吸着処理剤は、上記吸水性物質2同士を結合する結合剤3を用いて造粒することにより粒状体に形成されている。このことで、取り扱い性が良くなり、しかも、通気性部材間に挟持してフィルタ部材等に用いる場合に、その通気性部材の目が粗くても通気孔から抜け落ちることはない。
【0027】
次に、上記吸着処理剤の製造方法について説明する。先ず、上記吸着性物質1と結合剤3とを混合する。この結合剤3としては、水可溶性、親水性及び水分透過性を有するものが適しており、例えばポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等が挙げられるが、このうち、比較的少ない使用量でも強度の優れた粒状体が得られるという観点からポリビニルアルコールが最適である。
【0028】
上記結合剤3として水可溶性、親水性及び水分透過性を有するものを使用する場合には、吸着性物質1と混合するときに、この結合剤3を溶解させた水溶液を調製することが望ましい。こうすれば、造粒作業を容易にしつつ、吸水性物質2同士の結合性を向上させることができる。そして、上記吸着性物質1が水溶性物質からなる場合には、その吸着性物質1をも上記水溶液に溶解させる。このようにすれば、造粒作業がより一層容易になると共に、吸水性物質2の吸着性物質1に対する担持性を向上させることができる。上記レゾルシンを含むフェノール系化合物の大部分はこの水溶性物質に該当し、この点からもフェノール系化合物は適している。
【0029】
上記結合剤3の重量は、吸水性物質2の重量に対して1.3〜3%に設定する。これは、結合剤3の重量が吸水性物質2の重量に対して1.3%よりも小さいと、造粒して粒状体を形成しても僅かな力で破砕されてしまう一方、3%よりも大きいと、結合剤3により覆われる吸着性物質1の量が多くなり過ぎて吸着能力が低下するからである。また、結合剤3の水溶液を調製する場合に、結合剤3の重量が吸水性物質2の重量に対して3%を越えると、系の粘度が上昇すると共に粘着性を帯びて、造粒作業が困難になるためである。
【0030】
次いで、上記吸着性物質1と結合剤3との混合物と吸水性物質2とを混合して造粒することにより粒状体を形成する。この造粒手段としては、押出成形や高速混合造粒等の公知の手段を用いることができる。そして、上述の如く吸着性物質1と結合剤3との混合物の水溶液を調製した場合には、図2に示すように、容器5内に粉状の吸水性物質2を入れて攪拌翼6により攪拌しながら、その上から上記混合物の水溶液を所定時間毎に一定量ずつ垂らせばよい。こうするだけで簡単に粒状体を形成することができる。
【0031】
上記のように吸着性物質1と結合剤3とを混合した後、この混合物と吸水性物質2とを混合して造粒することにより、吸着処理剤の吸着能力が結合剤3により低下するのを抑制することができる。すなわち、通常は、吸着性物質1と吸水性物質2とを混合して吸水性物質2に吸着性物質1を担持させ、その後、その混合物と結合剤3とを混合して造粒する方法を採る。しかし、この方法では、図3に模式的に示すように、吸水性物質2に担持された吸着性物質1の外側に結合剤3の層が形成されて、多量の吸着性物質1が結合剤3により覆われるため、吸着性物質1と被吸着成分との反応が結合剤3により阻害される。これに対し、この実施形態の方法では、吸着性物質1と結合剤3とが略均一に混合された状態で結合剤3の層が吸水性物質2の周囲に形成されるので、吸水性物質2同士を結合している部分では吸着性物質1が結合剤3により覆われるものの、多量の吸着性物質1が、結合剤3により覆われずに部分的に露出した状態で吸水性物質2に担持される。したがって、吸着性物質1の被吸着成分に対する反応性が良好に維持される。
【0032】
上記吸着処理剤の粒状体中には水が残存していてもよく、水が残存していなくても、吸水性物質2が空気中の湿分を吸収することによって補われるため、水分の補給の必要はない。但し、吸着処理の初期段階から高レベルの吸着能力を発揮させるには、当初から適量の水分を吸水性物質2に吸収させておくようにすることが望ましい。
【0033】
上記造粒により形成した粒状体の大きさは、用途に応じて適宜に設定され、特に限定はされないが、吸着処理効率に影響する粒状体の表面積、通気抵抗、取り扱い性等の観点から、平均粒径を0.1〜1mmに設定することが好ましい。尚、上記造粒方法により得られる粒状体の平均粒径が1mmよりも大きい場合には、粉砕して篩い分けを行えば、容易に上記範囲のものが得られる。
【0034】
上記粒状体を用いると、取り扱い性が向上し、例えば吸着処理剤を2つの通気性部材間に設けてフィルタ部材を形成する場合でも、その通気性部材の通気孔から抜け落ちるような不具合もない。また、結合剤3の重量を、吸水性物質2の重量に対して1.3〜8%に設定することで、良好な吸着性能が得られると共に、吸着処理剤を通気性部材間に挟持してから、加圧により例えば波形状に形成する場合であっても、その吸着処理剤が破砕してしまうようなことはない。
【0035】
上記吸着処理剤は、上記のようにフィルタ部材を形成することで車両や家庭用の空調装置、空気清浄装置、脱臭装置等に使用することができ、また、室内天井部や壁部等に敷設したり容器に入れたりして室内の空気清浄を行うようにすることができる。そして、吸着処理剤の吸着性物質1をレゾルシン等のフェノール系化合物とし、吸水性物質2をH型かつZSM5型ゼオライトとすれば、アルデヒド等のカルボニル基含有化合物を効果的に吸着除去することができる。
【0036】
【実施例】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0037】
先ず、本発明の吸着処理剤がアセトアルデヒドをどの程度吸着除去し得るかを以下の実施例1〜3で示す。但し、以下の吸着剤A〜F及びHは、本発明のものとは異なり、吸水性物質をH型かつZSM5型ゼオライトとはしていない。
【0038】
(実施例1)
図4に示すように、吸着処理剤14を内容量1000ccのフラスコ71内に入れ、このフラスコ71内にアセトアルデヒドを注射器72を用いて1000ppmとなるように注入して密閉した。このとき、上記吸着処理剤14は、以下の方法で調製した吸着剤A〜Dを用いた。そして、20〜30℃下で1時間放置した後、アセトアルデヒドの除去率を調べた。
【0039】
〔吸着剤の調製〕
吸着剤A:吸着性物質としてのオイゲノール1gを、吸水性物質としてのシリカゲル(平均粒径0.05〜0.2mm)10gと共に粉砕混合して、粒径5〜50μmの粉末状吸着剤Aを調製した。
【0040】
吸着剤B:吸着性物質としての3,5−キシレノール1gを、上記シリカゲル10gと共に粉砕混合して、粒径5〜50μmの粉末状吸着剤Bを調製した。
【0041】
吸着剤C:吸着性物質としてのレゾルシン1gを、上記シリカゲル10gと共に粉砕混合して、粒径5〜50μmの粉末状吸着剤Cを調製した。
【0042】
吸着剤D:吸着性物質としてのピロガロール1gを、上記シリカゲル10gと共に粉砕混合して、粒径5〜50μmの粉末状吸着剤Dを調製した。
【0043】
上記吸着剤A〜Dのアセトアルデヒド除去率(重量%)の結果を表1に示す。このことより、いずれの吸着剤A〜Dもアセトアルデヒドに対して優れた吸着性能を有していることが判る。
【0044】
【表1】
【0045】
(実施例2)
上記実施例1の吸着剤Cと同様に、レゾルシンを吸着性物質として用いて下記の方法により吸着剤E〜Hを調製し、上記実施例1と同様にしてアセトアルデヒドの除去率を調べた。
【0046】
〔吸着剤の調製〕
吸着剤E:レゾルシン1gを、蓚酸0.2g及び上記シリカゲル10gと共に粉砕混合して、粒径5〜50μmの粉末状吸着剤Eを調製した。
【0047】
吸着剤F:レゾルシン1gを、炭酸ナトリウム0.2g及び上記シリカゲル10gと共に粉砕混合した後、打錠して同じサイズの吸着剤F(錠剤)を調製した。
【0048】
吸着剤G:レゾルシン1gを、H型かつZSM5型ゼオライト(ケイバン比:SiO2 /Al2O3(モル比)=80、粒径5〜10μm)10gと共に攪拌混合した後、打錠して同じサイズの吸着剤G(錠剤)を調製した。
【0049】
吸着剤H:レゾルシン1gを、Na型ゼオライト(平均粒径5〜10μm)10gと共に攪拌混合した後、打錠して同じサイズの吸着剤H(錠剤)を調製した。
【0050】
上記吸着剤E〜Hのアセトアルデヒド除去率の結果を表2に示す(尚、上記実施例の吸着剤Cについても併せて示す)。このことより、レゾルシンと共に少量の弱酸性物質や弱塩基性物質を添加すると、アセトアルデヒドに対する吸着性能をより一層高くすることができ、特に弱酸性物質を添加すればその効果は顕著となることが判る。また、これら弱酸性物質や弱塩基性物質を添加すると、吸水時に酸やアルカリ劣化を招く虞れがあるが、H型ゼオライトを使用すれば、これら弱酸性物質や弱塩基性物質を添加しなくても吸着効果を高めることができ、酸やアルカリ劣化の問題を確実に解消することができる。
【0051】
【表2】
【0052】
(実施例3)
多価フェノールとしてカテコール、プルプリン、ナリンギン及びルチンをそれぞれ1g用意し、これを、各々、上記H型かつZSM5型ゼオライト10gと共に攪拌混合した後、打錠して同じサイズの吸着剤I〜L(錠剤)を調製した。そして、上記実施例1と同様にしてアセトアルデヒドの除去率を調べた。
【0053】
上記吸着剤I〜Lのアセトアルデヒド除去率の結果を表3に示す。このことより、このいずれの吸着剤I〜Lについてもアセトアルデヒドに対して優れた吸着性能を有していることが判る。
【0054】
【表3】
【0055】
(実施例4)
次いで、結合剤を用いて造粒する場合にその結合剤の添加量が吸着性能にどのように影響するかを調べた。すなわち、レゾルシン1gとH型かつZSM5型ゼオライト(吸着剤Gと同じもの)10gとを用いて吸着剤M〜Qを調製した。このとき、結合剤としてポリビニルアルコールを添加して造粒し、そのときの添加量を5段階に変化させた。つまり、ポリビニルアルコールの重量を、ゼオライトの重量に対して1.7%(吸着剤M)、2%(吸着剤N)、2.5%(吸着剤O)、3%(吸着剤P)、5%(吸着剤Q)とした。この吸着剤Qは、本発明のものとは異なる。そして、上記実施例1と同様にしてアセトアルデヒドの除去率を調べた。但し、この実施例4では、アセトアルデヒド除去率を5分毎に30分経過するまで調べた。
【0056】
この結果を、図5に示す(尚、比較のために、活性炭の場合の結果を併せて示す)。このことより、ポリビニルアルコールの添加量が多くなると、吸着能力が経時的に低下する割合が多くなり、吸着能力の観点からは、ポリビニルアルコールの添加量が少ない方が良好であることが判る。特に3%以下であれば、全く問題はない。
【0057】
(実施例5)
次に、上記実施例4の吸着剤P(ポリビニルアルコールの重量をゼオライトの重量に対して3%に設定したもの)を、以下の(イ)〜(ハ)の3種類の方法により造粒して製造した。
【0058】
(イ) レゾルシンとポリビニルアルコールとの混合物の水溶液を調製し、この水溶液を、攪拌翼により攪拌されている粉状のゼオライトの上から垂らして粒状体を形成する。
【0059】
(ロ) ポリビニルアルコールの水溶液を調製し、この水溶液を、攪拌翼により攪拌されている粉状のゼオライトの上から垂らして粒状体を形成する。その後、この粒状体をレゾルシンの水溶液中に浸漬してレゾルシンをゼオライトに担持させる。
【0060】
(ハ) レゾルシンとゼオライトとを粉状状態で混合し、この混合物を攪拌翼により攪拌しながらその上からポリビニルアルコールの水溶液を垂らして粒状体を形成する。
【0061】
上記(イ)〜(ハ)の方法により製造した3種類の吸着剤(0.2g)を細いガラス管内にそれぞれ入れ、アセトアルデヒド濃度が10ppmとなるように調製した空気を上流側から流速0.6m/sで流し、下流側でアセトアルデヒド濃度を経時的に測定することでアセトアルデヒドの除去率を調べた。
【0062】
この結果を図6に示す。このことより、最初にレゾルシンとポリビニルアルコールとを混合し、その後にこの混合物とゼオライトとを混合する(イ)の方法が、吸着処理剤のアセトアルデヒド除去率を向上させる点で最も良いことが判る。これは、(イ)の方法では、アセトアルデヒドを吸着するレゾルシンの殆どがポリビニルアルコールによって覆われないからであると考えられる。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の吸着処理剤の製造方法によると、一価フェノール、多価フェノール及びこれらの誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる吸着性物質と、H型かつZSM5型ゼオライト同士を結合する結合剤とを混合し、その後、この混合物と上記ゼオライトとを混合して造粒するようにしたことにより、吸着性物質が結合剤により覆われるのを抑制することができ、吸着処理剤の吸着能力が結合剤により低下するのを抑制することができる。また、特にカルボニル基含有化合物に対する吸着性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る製造方法により製造された吸着処理剤を模式的に示す説明図である。
【図2】容器内に粉状の吸水性物質を入れて攪拌翼により攪拌している状態を示す概略説明図である。
【図3】吸着性物質と吸水性物質とを混合した後、この混合物と結合剤とを混合して造粒する方法により製造された吸着処理剤を模式的に示す説明図である。
【図4】実施例1〜4の試験の要領を示す概略説明図である。
【図5】実施例4の試験の結果を示すグラフである。
【図6】実施例5の試験の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 吸着性物質
2 吸水性物質
3 結合剤
【発明の属する技術分野】
本発明は、水分の存在下で被処理ガス中の被吸着成分と反応して該被吸着成分を吸着する吸着性物質と、該吸着性物質を担持し、上記反応時に吸着性物質に水分を供給する吸水性物質とを含有する吸着処理剤の製造方法に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車等の車両室内には、燃料やオイル等の分解ガス、タバコに由来する燃焼生成物、内装用ボード類や車内装備の接合等に用いられる接着剤や断熱用発泡樹脂等から揮散する有機化合物等の悪臭又は無臭有毒な気体成分が存在している。また、住居内においても、タバコに由来する燃焼生成物はもとより、シックハウスが問題になっているように断熱材や合板材の接着剤から揮散する有害気体成分が存在している。このような気体成分中には、通常、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、ベンズアルデヒド等のカルボニル基含有化合物が含まれている。
【0003】
上記悪臭又は無臭有毒な気体成分を除去する方法としては、活性炭等の物理的吸着剤を利用する吸着処理方法がよく用いられているが、この方法では、特に上記カルボニル基含有化合物に対する吸着除去能力が不十分となる。
【0004】
そこで、本発明者らは、レゾルシン等のように水分の存在下でカルボニル基含有化合物等の被吸着成分と反応して該被吸着成分を吸着する吸着性物質と、ゼオライト等のようにこの吸着性物質を担持しかつ上記反応時に吸着性物質に水分を供給する吸水性物質とを含有した新規な化学的吸着剤を見出した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記化学的吸着剤は、結合剤を用いて造粒することにより粒状体を形成すれば取り扱い性が向上する。このような粒状体を形成する場合、先ず、上記のように被吸着成分の吸着に関して直接的に関連性のある吸着性物質と吸水性物質とを混合して吸水性物質に吸着性物質を担持させ、その後にその混合物と結合剤とを混合して造粒する方法を採るのが一般的である。
【0006】
しかし、上記の方法では、吸水性物質に担持された吸着性物質の外側に結合剤の層が形成されて、多量の吸着性物質が結合剤により覆われるため、吸着性物質の被吸着成分に対する反応性が悪化し、このため、吸着剤の吸着能力の低下を招く虞れがある。
【0007】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記のような吸着処理剤を造粒により製造する場合に、その製造方法を見直すことによって、吸着性物質の被吸着成分に対する反応性を良好に維持して、吸着処理剤の吸着能力が結合剤により低下するのを抑制しようとすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、この発明では、吸着性物質と、吸水性物質同士を結合する結合剤とを混合し、その後、この混合物と吸水性物質とを混合して造粒するようにした。
【0009】
具体的には、請求項1の発明では、水分の存在下で被処理ガス中の被吸着成分と反応して該被吸着成分を吸着する、一価フェノール、多価フェノール及びこれらの誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる吸着性物質と、該吸着性物質を担持し、上記反応時に吸着性物質に水分を供給するH型かつZSM5型ゼオライトとを含有する吸着処理剤の製造方法を対象とする。
【0010】
そして、上記吸着性物質と、上記ゼオライト同士を結合する結合剤とを、該吸着性物質の重量がゼオライトの重量に対して0.1〜20%となりかつ結合剤の重量がゼオライトの重量に対して1.3〜3%となるように混合し、その後、上記混合物とゼオライトとを混合して造粒するようにする。
【0011】
このことにより、吸着性物質と結合剤とが略均一に混合された状態で結合剤の層がH型かつZSM5型ゼオライト(吸水性物質)の周囲に形成されるので、多量の吸着性物質が、結合剤により覆われずに部分的に露出した状態で上記ゼオライトに担持される。この結果、吸着性物質と被吸着成分との反応が良好に行われ、吸着処理剤の吸着能力が結合剤により低下するのを抑制することができる。
【0012】
また、吸着性物質の重量は、ゼオライトの重量に対して0.1%よりも小さいと、被処理ガス中の被吸着成分を吸着する能力が十分でなくなる一方、20%よりも大きいと、吸着性物質の使用量の割には吸着能力が向上しなくなると共に、造粒性が悪化するので、0.1〜20%に設定することで、造粒性を良好に維持しつつ、最少量の吸着性物質により十分な吸着能力を確保することができる。
【0013】
さらに、結合剤の重量は、ゼオライトの重量に対して1.3%よりも小さいと、粒状体を形成しても僅かな力で破砕されてしまう一方、3%よりも大きいと、結合剤により覆われる吸着性物質の量が多くなり過ぎると共に、結合剤の水溶液を調製する場合に系の粘度が上昇し過ぎて造粒作業が困難になるので、1.3〜3%に設定することで、造粒性と吸着処理剤の吸着能力との向上化を図ることができる。
【0014】
また、吸着性物質が、一価フェノール、多価フェノール及びこれらの誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなるので、アルデヒド類やケトン類のようなカルボニル基含有化合物を確実に吸着することができると共に、アミン系やアンモニア系のようなアルデヒド類を吸着可能な化合物とは異なり、吸着性物質自体が臭気を発したり腐食性の高いイオンを生成したりすることはなく、しかも、昇華性を有していないので、何の問題もなく吸着処理剤に使用することができる。
【0015】
さらに、吸水性物質がH型かつZSM5型ゼオライトであるので、吸着性物質の被吸着 成分(特にカルボニル基含有化合物)に対する反応性を高めることができる。
【0016】
よって、造粒性と、特にカルボニル基含有化合物に対する吸着性能とを向上させる上で最適な方法が得られる。
【0017】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、吸着性物質は、レゾルシンであるものとする。このことで、カルボニル基含有化合物に対する捕捉効果をさらに高めることができる。
【0018】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、結合剤は、ポリビニルアルコールであるものとする。このことにより、少量の結合剤で強度の優れた粒状体が得られる。
【0019】
【発明の実施の形態】
先ず、本発明の実施形態に係る製造方法により製造された吸着処理剤について説明すると、この吸着処理剤は、図1に模式的に示すように、水分の存在下で被処理ガス中の被吸着成分と反応して該被吸着成分を吸着する吸着性物質1と、該吸着性物質1を担持し、上記反応時に吸着性物質1に水分を供給する吸水性物質2とを含有している。
【0020】
上記吸水性物質2は、吸着性物質1に対して非反応性でかつ被処理ガス中の水分を吸収する性質を有するものであって、水分存在下で行われる吸着性物質1と被吸着成分との化学反応の場として用いられ、その吸水性によって空気中の水分を吸収するので、反応媒体となる水分を外部から補わなくても反応を効率良く行わせることが可能である。また、上記吸水性物質2は、上記吸着性物質1を担持する吸水性担持材であり、このことで、取り扱い易くなると共に、反応場の提供の観点からも好ましい形態となる。
【0021】
上記吸水性物質2は、ゼオライトであり、このゼオライトは、イオンタイプによってNa型とH型(プロトン型)とに分類されるが、上記吸着性物質1と被吸着成分(特にカルボニル基含有化合物)との反応性を高くできるという観点から、H型ゼオライトとする。また、ゼオライトは、結晶構造によってA型(平均細孔径:約2.5×10-10m)、ZSM5型(同5.5×10-10m)、Y型(同6×10-10m)、X型(同10×10-10m)等に分類されるが、上記と同じ観点から、ZSM5型ゼオライトとする。このH型かつZSM5型ゼオライトは、吸水性物質2として最適なものである。
【0022】
上記吸着性物質1としては、水分の存在下で吸着能力を発揮する化合物である、一価フェノール、多価フェノール及びこれらの誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を用いる。この化合物は、被処理ガス中の被吸着成分が、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、ベンズアルデヒド等のカルボニル基含有化合物である場合に、そのカルボニル基に対して付加反応性を示す活性水素を有するものであり、化学反応によってカルボニル基含有化合物を吸着除去することができる。具体的には、ヒドロキシ安息香酸、オイゲノール、3,5−,2,5−,3,4−キシレノール等の一価フェノール、レゾルシン、ビスフェノールA、カテコール等の二価フェノール、ピロガロール、プルプリン、ナリンギン等の三価フェノール、ルチン等の四価フェノール等が挙げられる。
【0023】
上記のようにカルボニル基に対して付加反応性を示す吸着性物質1により、カルボニル基含有化合物に対して高レベルの吸着処理効率が得られると共に、一旦吸着処理した後は、反応物が吸水性物質2中に取り込まれるため、被吸着成分が単独で放出されることはない。また、この吸着反応は水分の存在下で進行するため、空気中の水分によって吸着性能が阻害されることもない。しかも、アミン系やアンモニア系のようなアルデヒド類を吸着可能な化合物とは異なり、吸着性物質1自体が臭気を発したり腐食性の高いイオンを生成したりすることはなく、また、昇華性を有していないので、実用上何の問題もない。つまり、アルデヒド類を吸着するアミン系やアンモニア系の化合物は臭気、腐食、昇華性等の問題を有しているので、実用的には上記フェノール系の化合物の方が適している。
【0024】
上記吸着性物質1のうち多価フェノールに属するレゾルシンは、カルボニル基含有化合物に対して非常に優れた反応性を示すことから、吸着性物質1として最適なものである。特にレゾルシンと共に、蓚酸等の弱酸性物質や、炭酸ナトリウム等の弱塩基性物質を併用すると、アルデヒド等に対する捕捉効果が一段と高められ、より一層優れた吸着処理効果を発揮する。これは、上記弱酸性物質や弱塩基性物質がレゾルシンとアルデヒド等(特にホルムアルデヒド)との反応の触媒として作用するためと考えられ、この効果は、レゾルシン以外の一価フェノールや多価フェノールを吸着性物質1として使用する際にも有効に発揮される。尚、本発明では、吸着性物質1がH型ゼオライト(固体酸性物質)であるので、弱酸性物質や弱塩基性物質を添加しなくても吸着効果を高めることができ、水分を吸収したときにこれらの弱酸性物質や弱塩基性物質に由来して生じる酸やアルカリによって、この吸着処理剤を備えた吸着処理装置や付帯機器等の酸腐食やアルカリ腐食が生じるという問題を解消することができる。
【0025】
上記吸着性物質1と吸水性物質2との重量比は、吸着性物質1の重量を吸水性物質2の重量に対して0.1〜20%に設定する。これは、吸着性物質1の重量が吸水性物質2の重量に対して0.1%よりも小さいと、吸着能力が十分に発揮されない一方、20%よりも大きいと、吸着性物質1の使用量の割には吸着能力が向上しないからである。また、吸着性物質1を多く加え過ぎると、後述の如く造粒する場合に造粒性が悪化する傾向が見られるからである。この重量比の好ましい上限値は10%である。一方、好ましい下限値は、吸着性能の観点から5%である。
【0026】
上記吸着処理剤は、上記吸水性物質2同士を結合する結合剤3を用いて造粒することにより粒状体に形成されている。このことで、取り扱い性が良くなり、しかも、通気性部材間に挟持してフィルタ部材等に用いる場合に、その通気性部材の目が粗くても通気孔から抜け落ちることはない。
【0027】
次に、上記吸着処理剤の製造方法について説明する。先ず、上記吸着性物質1と結合剤3とを混合する。この結合剤3としては、水可溶性、親水性及び水分透過性を有するものが適しており、例えばポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等が挙げられるが、このうち、比較的少ない使用量でも強度の優れた粒状体が得られるという観点からポリビニルアルコールが最適である。
【0028】
上記結合剤3として水可溶性、親水性及び水分透過性を有するものを使用する場合には、吸着性物質1と混合するときに、この結合剤3を溶解させた水溶液を調製することが望ましい。こうすれば、造粒作業を容易にしつつ、吸水性物質2同士の結合性を向上させることができる。そして、上記吸着性物質1が水溶性物質からなる場合には、その吸着性物質1をも上記水溶液に溶解させる。このようにすれば、造粒作業がより一層容易になると共に、吸水性物質2の吸着性物質1に対する担持性を向上させることができる。上記レゾルシンを含むフェノール系化合物の大部分はこの水溶性物質に該当し、この点からもフェノール系化合物は適している。
【0029】
上記結合剤3の重量は、吸水性物質2の重量に対して1.3〜3%に設定する。これは、結合剤3の重量が吸水性物質2の重量に対して1.3%よりも小さいと、造粒して粒状体を形成しても僅かな力で破砕されてしまう一方、3%よりも大きいと、結合剤3により覆われる吸着性物質1の量が多くなり過ぎて吸着能力が低下するからである。また、結合剤3の水溶液を調製する場合に、結合剤3の重量が吸水性物質2の重量に対して3%を越えると、系の粘度が上昇すると共に粘着性を帯びて、造粒作業が困難になるためである。
【0030】
次いで、上記吸着性物質1と結合剤3との混合物と吸水性物質2とを混合して造粒することにより粒状体を形成する。この造粒手段としては、押出成形や高速混合造粒等の公知の手段を用いることができる。そして、上述の如く吸着性物質1と結合剤3との混合物の水溶液を調製した場合には、図2に示すように、容器5内に粉状の吸水性物質2を入れて攪拌翼6により攪拌しながら、その上から上記混合物の水溶液を所定時間毎に一定量ずつ垂らせばよい。こうするだけで簡単に粒状体を形成することができる。
【0031】
上記のように吸着性物質1と結合剤3とを混合した後、この混合物と吸水性物質2とを混合して造粒することにより、吸着処理剤の吸着能力が結合剤3により低下するのを抑制することができる。すなわち、通常は、吸着性物質1と吸水性物質2とを混合して吸水性物質2に吸着性物質1を担持させ、その後、その混合物と結合剤3とを混合して造粒する方法を採る。しかし、この方法では、図3に模式的に示すように、吸水性物質2に担持された吸着性物質1の外側に結合剤3の層が形成されて、多量の吸着性物質1が結合剤3により覆われるため、吸着性物質1と被吸着成分との反応が結合剤3により阻害される。これに対し、この実施形態の方法では、吸着性物質1と結合剤3とが略均一に混合された状態で結合剤3の層が吸水性物質2の周囲に形成されるので、吸水性物質2同士を結合している部分では吸着性物質1が結合剤3により覆われるものの、多量の吸着性物質1が、結合剤3により覆われずに部分的に露出した状態で吸水性物質2に担持される。したがって、吸着性物質1の被吸着成分に対する反応性が良好に維持される。
【0032】
上記吸着処理剤の粒状体中には水が残存していてもよく、水が残存していなくても、吸水性物質2が空気中の湿分を吸収することによって補われるため、水分の補給の必要はない。但し、吸着処理の初期段階から高レベルの吸着能力を発揮させるには、当初から適量の水分を吸水性物質2に吸収させておくようにすることが望ましい。
【0033】
上記造粒により形成した粒状体の大きさは、用途に応じて適宜に設定され、特に限定はされないが、吸着処理効率に影響する粒状体の表面積、通気抵抗、取り扱い性等の観点から、平均粒径を0.1〜1mmに設定することが好ましい。尚、上記造粒方法により得られる粒状体の平均粒径が1mmよりも大きい場合には、粉砕して篩い分けを行えば、容易に上記範囲のものが得られる。
【0034】
上記粒状体を用いると、取り扱い性が向上し、例えば吸着処理剤を2つの通気性部材間に設けてフィルタ部材を形成する場合でも、その通気性部材の通気孔から抜け落ちるような不具合もない。また、結合剤3の重量を、吸水性物質2の重量に対して1.3〜8%に設定することで、良好な吸着性能が得られると共に、吸着処理剤を通気性部材間に挟持してから、加圧により例えば波形状に形成する場合であっても、その吸着処理剤が破砕してしまうようなことはない。
【0035】
上記吸着処理剤は、上記のようにフィルタ部材を形成することで車両や家庭用の空調装置、空気清浄装置、脱臭装置等に使用することができ、また、室内天井部や壁部等に敷設したり容器に入れたりして室内の空気清浄を行うようにすることができる。そして、吸着処理剤の吸着性物質1をレゾルシン等のフェノール系化合物とし、吸水性物質2をH型かつZSM5型ゼオライトとすれば、アルデヒド等のカルボニル基含有化合物を効果的に吸着除去することができる。
【0036】
【実施例】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0037】
先ず、本発明の吸着処理剤がアセトアルデヒドをどの程度吸着除去し得るかを以下の実施例1〜3で示す。但し、以下の吸着剤A〜F及びHは、本発明のものとは異なり、吸水性物質をH型かつZSM5型ゼオライトとはしていない。
【0038】
(実施例1)
図4に示すように、吸着処理剤14を内容量1000ccのフラスコ71内に入れ、このフラスコ71内にアセトアルデヒドを注射器72を用いて1000ppmとなるように注入して密閉した。このとき、上記吸着処理剤14は、以下の方法で調製した吸着剤A〜Dを用いた。そして、20〜30℃下で1時間放置した後、アセトアルデヒドの除去率を調べた。
【0039】
〔吸着剤の調製〕
吸着剤A:吸着性物質としてのオイゲノール1gを、吸水性物質としてのシリカゲル(平均粒径0.05〜0.2mm)10gと共に粉砕混合して、粒径5〜50μmの粉末状吸着剤Aを調製した。
【0040】
吸着剤B:吸着性物質としての3,5−キシレノール1gを、上記シリカゲル10gと共に粉砕混合して、粒径5〜50μmの粉末状吸着剤Bを調製した。
【0041】
吸着剤C:吸着性物質としてのレゾルシン1gを、上記シリカゲル10gと共に粉砕混合して、粒径5〜50μmの粉末状吸着剤Cを調製した。
【0042】
吸着剤D:吸着性物質としてのピロガロール1gを、上記シリカゲル10gと共に粉砕混合して、粒径5〜50μmの粉末状吸着剤Dを調製した。
【0043】
上記吸着剤A〜Dのアセトアルデヒド除去率(重量%)の結果を表1に示す。このことより、いずれの吸着剤A〜Dもアセトアルデヒドに対して優れた吸着性能を有していることが判る。
【0044】
【表1】
【0045】
(実施例2)
上記実施例1の吸着剤Cと同様に、レゾルシンを吸着性物質として用いて下記の方法により吸着剤E〜Hを調製し、上記実施例1と同様にしてアセトアルデヒドの除去率を調べた。
【0046】
〔吸着剤の調製〕
吸着剤E:レゾルシン1gを、蓚酸0.2g及び上記シリカゲル10gと共に粉砕混合して、粒径5〜50μmの粉末状吸着剤Eを調製した。
【0047】
吸着剤F:レゾルシン1gを、炭酸ナトリウム0.2g及び上記シリカゲル10gと共に粉砕混合した後、打錠して同じサイズの吸着剤F(錠剤)を調製した。
【0048】
吸着剤G:レゾルシン1gを、H型かつZSM5型ゼオライト(ケイバン比:SiO2 /Al2O3(モル比)=80、粒径5〜10μm)10gと共に攪拌混合した後、打錠して同じサイズの吸着剤G(錠剤)を調製した。
【0049】
吸着剤H:レゾルシン1gを、Na型ゼオライト(平均粒径5〜10μm)10gと共に攪拌混合した後、打錠して同じサイズの吸着剤H(錠剤)を調製した。
【0050】
上記吸着剤E〜Hのアセトアルデヒド除去率の結果を表2に示す(尚、上記実施例の吸着剤Cについても併せて示す)。このことより、レゾルシンと共に少量の弱酸性物質や弱塩基性物質を添加すると、アセトアルデヒドに対する吸着性能をより一層高くすることができ、特に弱酸性物質を添加すればその効果は顕著となることが判る。また、これら弱酸性物質や弱塩基性物質を添加すると、吸水時に酸やアルカリ劣化を招く虞れがあるが、H型ゼオライトを使用すれば、これら弱酸性物質や弱塩基性物質を添加しなくても吸着効果を高めることができ、酸やアルカリ劣化の問題を確実に解消することができる。
【0051】
【表2】
【0052】
(実施例3)
多価フェノールとしてカテコール、プルプリン、ナリンギン及びルチンをそれぞれ1g用意し、これを、各々、上記H型かつZSM5型ゼオライト10gと共に攪拌混合した後、打錠して同じサイズの吸着剤I〜L(錠剤)を調製した。そして、上記実施例1と同様にしてアセトアルデヒドの除去率を調べた。
【0053】
上記吸着剤I〜Lのアセトアルデヒド除去率の結果を表3に示す。このことより、このいずれの吸着剤I〜Lについてもアセトアルデヒドに対して優れた吸着性能を有していることが判る。
【0054】
【表3】
【0055】
(実施例4)
次いで、結合剤を用いて造粒する場合にその結合剤の添加量が吸着性能にどのように影響するかを調べた。すなわち、レゾルシン1gとH型かつZSM5型ゼオライト(吸着剤Gと同じもの)10gとを用いて吸着剤M〜Qを調製した。このとき、結合剤としてポリビニルアルコールを添加して造粒し、そのときの添加量を5段階に変化させた。つまり、ポリビニルアルコールの重量を、ゼオライトの重量に対して1.7%(吸着剤M)、2%(吸着剤N)、2.5%(吸着剤O)、3%(吸着剤P)、5%(吸着剤Q)とした。この吸着剤Qは、本発明のものとは異なる。そして、上記実施例1と同様にしてアセトアルデヒドの除去率を調べた。但し、この実施例4では、アセトアルデヒド除去率を5分毎に30分経過するまで調べた。
【0056】
この結果を、図5に示す(尚、比較のために、活性炭の場合の結果を併せて示す)。このことより、ポリビニルアルコールの添加量が多くなると、吸着能力が経時的に低下する割合が多くなり、吸着能力の観点からは、ポリビニルアルコールの添加量が少ない方が良好であることが判る。特に3%以下であれば、全く問題はない。
【0057】
(実施例5)
次に、上記実施例4の吸着剤P(ポリビニルアルコールの重量をゼオライトの重量に対して3%に設定したもの)を、以下の(イ)〜(ハ)の3種類の方法により造粒して製造した。
【0058】
(イ) レゾルシンとポリビニルアルコールとの混合物の水溶液を調製し、この水溶液を、攪拌翼により攪拌されている粉状のゼオライトの上から垂らして粒状体を形成する。
【0059】
(ロ) ポリビニルアルコールの水溶液を調製し、この水溶液を、攪拌翼により攪拌されている粉状のゼオライトの上から垂らして粒状体を形成する。その後、この粒状体をレゾルシンの水溶液中に浸漬してレゾルシンをゼオライトに担持させる。
【0060】
(ハ) レゾルシンとゼオライトとを粉状状態で混合し、この混合物を攪拌翼により攪拌しながらその上からポリビニルアルコールの水溶液を垂らして粒状体を形成する。
【0061】
上記(イ)〜(ハ)の方法により製造した3種類の吸着剤(0.2g)を細いガラス管内にそれぞれ入れ、アセトアルデヒド濃度が10ppmとなるように調製した空気を上流側から流速0.6m/sで流し、下流側でアセトアルデヒド濃度を経時的に測定することでアセトアルデヒドの除去率を調べた。
【0062】
この結果を図6に示す。このことより、最初にレゾルシンとポリビニルアルコールとを混合し、その後にこの混合物とゼオライトとを混合する(イ)の方法が、吸着処理剤のアセトアルデヒド除去率を向上させる点で最も良いことが判る。これは、(イ)の方法では、アセトアルデヒドを吸着するレゾルシンの殆どがポリビニルアルコールによって覆われないからであると考えられる。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の吸着処理剤の製造方法によると、一価フェノール、多価フェノール及びこれらの誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる吸着性物質と、H型かつZSM5型ゼオライト同士を結合する結合剤とを混合し、その後、この混合物と上記ゼオライトとを混合して造粒するようにしたことにより、吸着性物質が結合剤により覆われるのを抑制することができ、吸着処理剤の吸着能力が結合剤により低下するのを抑制することができる。また、特にカルボニル基含有化合物に対する吸着性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る製造方法により製造された吸着処理剤を模式的に示す説明図である。
【図2】容器内に粉状の吸水性物質を入れて攪拌翼により攪拌している状態を示す概略説明図である。
【図3】吸着性物質と吸水性物質とを混合した後、この混合物と結合剤とを混合して造粒する方法により製造された吸着処理剤を模式的に示す説明図である。
【図4】実施例1〜4の試験の要領を示す概略説明図である。
【図5】実施例4の試験の結果を示すグラフである。
【図6】実施例5の試験の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 吸着性物質
2 吸水性物質
3 結合剤
Claims (3)
- 水分の存在下で被処理ガス中の被吸着成分と反応して該被吸着成分を吸着する、一価フェノール、多価フェノール及びこれらの誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる吸着性物質と、該吸着性物質を担持し、上記反応時に吸着性物質に水分を供給するH型かつZSM5型ゼオライトとを含有する吸着処理剤の製造方法であって、
上記吸着性物質と、上記ゼオライト同士を結合する結合剤とを、該吸着性物質の重量がゼオライトの重量に対して0.1〜20%となりかつ結合剤の重量がゼオライトの重量に対して1.3〜3%となるように混合し、
その後、上記混合物とゼオライトとを混合して造粒することを特徴とする吸着処理剤の製造方法。 - 請求項1記載の吸着処理剤の製造方法において、
吸着性物質は、レゾルシンであることを特徴とする吸着処理剤の製造方法。 - 請求項2記載の吸着処理剤の製造方法において、
結合剤は、ポリビニルアルコールであることを特徴とする吸着処理剤の製造方法。
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