JP3593565B2 - 植物の胚特異的遺伝子および該遺伝子のプロモータ、並びにそれらの利用 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物の胚特異的遺伝子および該遺伝子のプロモータ、並びにそれらの利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
植物の種子は穀物や食品原料として利用されていることは言うまでもないが、それ自身が種苗産業における主たる商品として生産・販売されており、その品質や特性を制御し改良することの重要性は論を待たない。今後、ゲノム研究に代表される分子生物学研究の成果に基づき、種子形質の分子育種の重要性はますます大きくなるものと考えられる。遺伝子組換えによる種子形質の人為的改変によって農業生産技術の高度化をはかる上で、導入遺伝子を効率的かつ種子組織特異的に発現させる技術は重要である。
【0003】
これまで胚および胚乳等の種子組織の形成に伴って特異的に発現する遺伝子が単離されるとともにその発現制御を司るプロモータについても数多くの報告があり、その作用機作を詳細に解析した例も多い。しかしながら、それらは種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子に代表される種子発育の比較的後期に発現が誘導される遺伝子に関するものである。胚発生の極初期から種子胚特異的に任意の遺伝子発現を誘導できるプロモータは分子育種の観点から利用価値の高い素材であるが、発生極初期の胚組織は極めて小さくかつ花器官の内部に埋没しており母体側の栄養組織と分離することが困難であることから、これまで解析が進んでいなかった。
【0004】
また、近年、胚発生過程、特に受精卵から球状胚を経て心臓型胚に至り頂端分裂組織が形成されるまでの胚発生の初期段階においては、葉や根等の栄養器官における遺伝子発現制御機構とは異なるメカニズムが存在することが明らかになりつつある。例えば、硝酸イオンによって一意的に誘導されると考えられていた硝酸還元酵素の発現が胚発生過程においては硝酸イオンの有無に関わらず発生ステージ特異的に活性化されることが明らかになっている(Fukuoka H, Ogawa T, Minami H, Yano H, Ohkawa Y (1996) L. Plant Physiol. 111:39−47)。また、植物の遺伝子操作の多くの場面で広く利用され、植物の全ての組織で構成的発現を誘導すると考えられてきたカリフラワーモザイクウイルス由来のCaMV 35Sプロモータが、胚発生の極初期では全く活性をもたないことが報告されている(Custers JBM Snepvangers SCHJ. Jansen H J. Zhang L. van Lookeren Campagne M M. (1999) Protoplasma. 208: 257−264.)。このように、従来の遺伝子発現制御技術では、胚発生初期に胚組織特異的に任意の導入遺伝子の発現制御を行うことは困難である。これを可能とする技術は、単細胞不定胚誘導系を利用した遺伝子操作技術およびアポミクシスの人為的誘導技術の開発等、高等植物の生殖メカニズムを利用して品種育成および種苗生産技術の効率化・高度化を図る上で極めて有用であると考えられる。しかし、そのような目的に利用可能なプロモータに関する報告は皆無であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、植物において、胚特異的かつ胚発生の極初期段階から発現する遺伝子、並びに、該遺伝子のプロモータであって、胚特異的かつ胚発生の極初期段階から任意の遺伝子を誘導可能なプロモータを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った。まず、ナタネの未熟花粉培養法(Keller WA, Fan Z, Pechan P, Long N, Grainger J (1987) In Proc. 7th Intl. Rapeseed Congress. Poznan, Poland, pp 152−157.; Fukuoka H, Ogawa T, Minami H, Yano H, Ohkawa Y (1996) L. Plant Physiol. 111:39−47)を用い、小胞子胚発生を誘導した細胞と通常の花粉形成を継続する細胞との間で遺伝子発現を網羅的に解析した。具体的には、ディファレンシャルディスプレー法(Ito, T, Sakaki, Y. (1996) Methods Mol. Genet. 8, 229−245, 1996.)を用いて、高温処理による胚発生誘導に伴って強く発現が誘導される遺伝子を検出し、そのクローニングを行った。クローニングした遺伝子の発現の時期・器官特異性を、ノーザンブロッティング法およびRT−PCR法によって解析したところ、該遺伝子は胚発生の極初期から胚組織特異的に発現が強く誘導され、単離直後の花粉、葉、カルス等においては検出限界以下であることが明らかとなった。次に、この遺伝子の発現制御部位と考えられる上流領域を、ナタネゲノムDNAを鋳型として逆PCR法によってクローニングした。クローニングしたDNA断片がプロモータ活性を有するか否かは、レポーター遺伝子を用いた遺伝子組換え植物作製実験によって検討した。その結果、該DNA断片はナタネ花粉胚発生およびアラビドプシス(シロイヌナズナ)接合子胚発生のどちらの過程においても、胚発生極初期から胚組織特異的に外来遺伝子の発現を強く誘導する性質を持つことが明らかとなった。
【0007】
また、該DNA断片の塩基配列情報を用い、公開されている遺伝子データベースに対してBLASTアルゴリズムを用いた相同性検索を行ったところ、高い相同性を持つ既知の塩基配列は検索されなかった。そこで、上記遺伝子のcDNA配列より推定されるアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列を、シロイヌナズナの全ゲノムシークエンス情報より検索し、該アミノ酸配列をコードすると推定されている領域の上流域をPCR法を用いてクローニングした。クローニングしたDNA断片がプロモータ活性を有するか否かは、レポーター遺伝子を用いた遺伝子組換え植物作製実験によって検討した。その結果、ナタネからクローニングされたDNA断片と同様に、初期胚特異的な遺伝子発現誘導パターンを示すことが明らかになった。このことは、上記遺伝子を利用することで、種の違う植物からも、同様の特性を持つプロモータ活性を有するDNAを得ることが可能であることを示している。以上の結果から、該プロモータ活性を有するDNAは、植物の胚発生誘導に伴い、極初期から胚組織特異的な遺伝子発現をもたらす作用があることが示された。
【0008】
遺伝子組換え技術を高等植物を利用した新品種育成・物質生産等に用いる場合、導入した遺伝子の発現を植物の目的とする組織特異的、あるいは発育の時期特異的に制御することは重要な技術である。本発明におけるプロモータ活性を有するDNAは、植物の種子が形成される際、その胚に特異的に、かつ胚発生の極初期段階から任意の遺伝子の発現を強く誘導する。そのため、各種代謝系酵素遺伝子の発現誘導による有用物質の胚組織における産生・蓄積技術、胚致死をもたらすような遺伝子の強制発現による種子の不活化、ホルモン合成系関連遺伝子等、形態形成関連遺伝子の胚組織での発現誘導による種子胚の形態改変等に利用できるものと期待される。
【0009】
さらに、本発明におけるプロモータ活性を有するDNAを、遺伝子組換え操作時の選抜マーカー遺伝子の発現制御に用いることにより、単細胞からの不定胚誘導系を利用した形質転換技術において、抗生物質耐性等の選抜マーカー遺伝子を不定胚形成の初期段階から発現させることができるものと期待される。
【0010】
また、胚組織に特異的に任意の遺伝子発現が誘導されるため、胚以外の組織に対する導入遺伝子の影響を軽減することができるものと期待される。例えば種子胚以外の葉、根、果肉等を可食部とする農作物においては、収穫物において蓄積していないことが望ましい選抜マーカー遺伝子産物の産生を防止することができる。その他、高等植物における遺伝子工学系の産業分野において、胚組織に特異的に導入遺伝子を発現させることが必要とされる際に広汎に利用可能である。
【0011】
即ち、本発明は、植物において、胚特異的かつ胚発生の極初期段階から発現する遺伝子、並びに、該遺伝子のプロモータであって、胚特異的かつ胚発生の極初期段階から任意の遺伝子を誘導可能なプロモータに関し、より具体的には、
〔1〕 植物の胚発生特異的に発現する、以下の(a)〜(c)のいずれかに記載の天然由来のDNA、
(a)配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、
(b)配列番号:6に記載のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、
(c)配列番号:5に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA、
〔2〕 〔1〕に記載のDNAの人工的な改変体、
〔3〕 〔1〕または〔2〕に記載のDNAによりコードされるタンパク質、
〔4〕 以下の(a)〜(c)のいずれかに記載のプロモータ活性を有するDNA、
(a)〔3〕に記載のタンパク質をコードする遺伝子の発現制御に関与するDNA、
(b)配列番号:7、8または9のいずれかに記載の塩基配列を含むDNA、
(c)配列番号:7、8または9のいずれかに記載の塩基配列において1または複数の塩基が置換、欠失、付加、および/または挿入された塩基配列を含むDNA、
〔5〕 〔1〕、〔2〕または〔4〕のいずれかに記載のDNAを含むベクター、
〔6〕 〔1〕、〔2〕もしくは〔4〕のいずれかに記載のDNA、または〔5〕に記載のベクターを保持する形質転換植物細胞、
〔7〕 〔6〕に記載の形質転換植物細胞を有する形質転換植物体、
〔8〕 〔7〕に記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体、
〔9〕 〔7〕または〔8〕に記載の形質転換植物体の繁殖材料、
〔10〕 〔7〕または〔8〕に記載の形質転換植物体の製造方法であって、〔1〕、〔2〕もしくは〔4〕のいずれかに記載のDNA、または〔5〕に記載のベクターを植物細胞に導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む方法、
〔11〕 被験化合物について、〔4〕に記載のDNAのプロモータ活性を調節するか否かを評価する方法であって、
(a)〔4〕に記載のDNAとレポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞または細胞抽出液と、被験化合物を接触させる工程、
(b)該レポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程、
を含み、被験化合物が該レポーター遺伝子の発現レベルを変化させた場合に、被験化合物が〔4〕に記載のDNAのプロモータ活性を調節すると判定される方法、
〔12〕 以下の工程(a)および(b)を含む、〔4〕に記載のDNAのプロモータ活性を調節する化合物のスクリーニング方法、
(a)〔11〕に記載の評価方法により、被験化合物について、〔4〕に記載のDNAのプロモータ活性を調節するか否かを評価する工程、
(b)被験化合物から、〔4〕に記載のDNAのプロモータ活性を調節すると評価された化合物を選択する工程、を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、植物の胚発生極初期から活性を持ち、かつ、胚組織に特異的に発現するタンパク質をコードする遺伝子をクローニングした。該遺伝子DNAの塩基配列を配列番号:5に、該DNAによってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:6に記載する。さらに本発明者らは、該遺伝子を利用して、該遺伝子の発現制御に関与する、プロモータ活性を有するDNAを単離することに成功した。
【0013】
本発明は、植物の胚発生特異的に発現するタンパク質をコードするDNA(BES1(Brassica Embryogenesis Specific gene 1)遺伝子)を提供する。本発明の上記DNAは、プロモータ活性を有する胚特異的遺伝子の発現制御に関与するDNAの取得(単離)に利用することができる。本発明の好ましい態様においてはまず、本発明のDNAもしくはその一部をプローブとして、または、本発明のDNAに特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマーとして、所望の植物から上記DNAと高い相同性を有するDNAの単離を行う。当業者においては、この単離の工程を周知の方法に従って行うことができる。このように本発明の上記DNAを利用して取得されるDNAは、胚組織特異的に発現するものと考えられることから、取得される上記DNAには、胚特異的遺伝子の発現制御に関与する領域(プロモータ)が含まれることが期待される。該DNAに発現制御領域が含まれない場合であっても、該DNAが位置するゲノムDNAの近傍には、発現制御DNA領域が存在するものと考えられる。該発現制御DNA領域は、当業者においては本発明の上記DNAを利用することにより、一般的に周知の方法により取得することが可能である。さらに本発明のDNAは、植物の胚発生特異的に発現することから、植物の胚発生初期段階のマーカーとして使用することも可能である。
【0014】
本発明の上記DNAとしては、好ましくは配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAを挙げることができる。また、一般的なハイブリダイゼーション技術(Southern EM: J Mol Biol 98: 503, 1975)またはPCR技術(Saiki RK, et al: Science 230: 1350, 1985、Saiki RK, et al: Science 239: 487, 1988)によって単離可能な、配列番号:5に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズするDNAもまた、本発明のDNAに含まれる。すなわち、配列番号:5に記載の塩基配列からなるDNAもしくはその一部をプローブとして、また配列番号:5に記載の塩基配列からなるDNAに特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマーとして、他の植物から配列番号:5に記載の塩基配列からなるDNAと高い相同性を有するDNAを単離することは、当業者にとって通常行い得ることである。
【0015】
このようなDNAを単離するためには、好ましくはストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーション反応を行う。本発明においてストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、6M 尿素、0.4% SDS、0.5×SSCの条件またはこれと同等のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を指す。よりストリンジェンシーの高い条件、例えば、6M 尿素、0.4% SDS、0.1×SSCの条件下では、より相同性の高いDNAを単離できることが期待される。こうして単離されたDNAは、アミノ酸レベルにおいて、配列番号:6に記載のアミノ酸配列と高い相同性を有すると考えられる。高い相同性とは、アミノ酸配列全体で少なくとも50%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列の同一性を指す。
【0016】
アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、カーリンおよびアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sei. USA 87:2264−2268, 1990、Karlin S & Altschul SF: Proc Natl Acad Sci USA 90: 5873, 1993)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF, et al: J Mol Biol 215: 403, 1990)。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。
【0017】
また、本発明は、上記の植物の胚発生特異的に発現するタンパク質(例えば、配列番号:6)と構造的に類似しているタンパク質をコードするDNAも提供する。このようなDNAとしては、該タンパク質において1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAが挙げられる。このようなDNAもまた、本発明のプロモータ活性を有するDNAの単離に利用される。
【0018】
上記の植物の胚発生特異的に発現するタンパク質と構造的に類似しているタンパク質をコードするDNAを調製するために、当業者によく知られた方法としては、上記ハイブリダイゼーション技術またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術が挙げられる。また、自然界においても、塩基配列の変異によりコードするタンパク質のアミノ酸配列が変異することは起こり得る。変異がタンパク質中のアミノ酸の変異を伴わないこと(縮重変異)があるが、このような縮重変異DNAも本発明に含まれる。
【0019】
また、本発明は、上記の植物の胚発生特異的に発現するタンパク質をコードするDNAの人工的な改変体を提供する。該改変体とは、上記DNAにおいて、1または複数の塩基が、人工的に、置換、欠失、付加、および/または挿入された塩基配列からなるDNAを意味する。このような改変体としては、例えば、活性が改変されたタンパク質を調製するために塩基が置換等されたDNAやタンパク質の精製と容易にするためにHisタグやGSTタグが付加されたDNA等が例示できる。該改変体の調製方法としては、特に制限はなく、例えば、通常の遺伝子組み換え技術を用いて組み換え体を作製する方法、さらに、本発明の植物の胚発生特異的に発現するタンパク質をコードするDNAに対し、site−directed mutagenesis法(Kramer W & Fritz H−J: Methods Enzymol 154: 350, 1987)により変異を導入する方法等が挙げられる。このような改変体は、後述する形質転換植物体の作製の他、本発明の植物の胚発生特異的に発現するタンパク質をコードするDNA、または、本発明のプロモータ活性を有するDNAの単離に利用できる。
【0020】
本発明のDNAには、ゲノムDNA、cDNA、および化学合成DNAが含まれる。ゲノムDNAおよびcDNAの調製は、当業者にとって常套手段を利用して行うことが可能である。ゲノムDNAは、例えば、上記の植物の胚発生特異的に発現する遺伝子を有する植物からゲノムDNAを抽出し、ゲノミックライブラリー(ベクターとしては、プラスミド、ファージ、コスミド、BAC、PAC等が利用できる)を作製し、これを展開して、該タンパク質をコードするDNAを基に調製したプローブを用いてコロニーハイブリダイゼーション、あるいはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより調製することが可能である。また、上記の植物の胚発生特異的に発現するタンパク質をコードするDNAに特異的なプライマーを作成し、これを利用したPCRを行うことによって調製することも可能である。また、cDNAは、例えば、該タンパク質をコードする遺伝子を有する植物から抽出したmRNAを基にcDNAを合成し、これをλZAP等のベクターに挿入してcDNAライブラリーを作製し、上記と同様にコロニーハイブリダイゼーション、あるいはプラークハイブリダイゼーション、またはPCRを行うことにより調製することが可能である。
【0021】
さらに、本発明は、上記DNAによりコードされるタンパク質を提供する。
【0022】
また本発明は、上記タンパク質をコードする遺伝子の発現制御に関与する、プロモータ活性を有するDNAを提供する。本発明においては、該プロモータ活性を有するDNAを植物に導入することにより、任意の遺伝子について、胚発生の極初期から後期まで胚組織特異的に転写活性化を行うことが可能である。
【0023】
上記プロモータ活性を有するDNAは、例えば、本発明の植物の胚発生特異的に発現するタンパク質をコードするDNAを利用して単離することができる。この単離方法としては、例えば上記のハイブリダイゼーション技術やPCR技術によって、本発明の植物の胚発生特異的に発現するタンパク質をコードするDNAをクローニングした後に、PCR法等で該DNAの上流領域を単離する方法等を挙げることができる。単離された上流領域がプロモータ活性を有するか否かは、当業者においてはレポーター遺伝子を用いた周知のレポーターアッセイ等により検討することが可能である。該レポーター遺伝子としては、その発現が検出可能なものであれば特に制限されず、例えば、当業者において一般的に使用されるCAT遺伝子、lacZ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、β−グルクロニダーゼ遺伝子(GUS)およびGFP遺伝子等を挙げることができる。また、本発明の上記遺伝子をレポーターとして、該遺伝子の発現を検討することにより、該遺伝子の上流領域がプロモータ活性を有するか否かを検討することも可能である。
【0024】
レポーター遺伝子の発現レベルは、該レポーター遺伝子の種類に応じて、当業者に公知の方法により測定することができる。例えば、レポーター遺伝子がCAT遺伝子である場合には、該遺伝子産物によるクロラムフェニコールのアセチル化を検出することによって、レポーター遺伝子の発現レベルを測定することができる。レポーター遺伝子がlacZ遺伝子である場合には、該遺伝子発現産物の触媒作用による色素化合物の発色を検出することにより、また、ルシフェラーゼ遺伝子である場合には、該遺伝子発現産物の触媒作用による蛍光化合物の蛍光を検出することにより、また、β−グルクロニダーゼ遺伝子(GUS)である場合には、該遺伝子発現産物の触媒作用によるGlucuron(ICN社)の発光や5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−グルクロニド(X−Gluc)の発色を検出することにより、さらに、GFP遺伝子である場合には、GFPタンパク質による蛍光を検出することにより、レポーター遺伝子の発現レベルを測定することができる。
【0025】
また、本発明の上記遺伝子をレポーターとする場合、該遺伝子の発現レベルの測定は、当業者に公知の方法によって行うことができる。例えば、本発明のDNA断片から発現する遺伝子のmRNAを定法に従って抽出し、このmRNAを鋳型としたノーザンハイブリダイゼーション法、またはRT−PCR法を実施することによって該遺伝子の転写レベルの測定を行うことができる。さらに、DNAアレイ技術を用いて、該遺伝子の転写レベルを測定することも可能である。また、該遺伝子からコードされるタンパク質を含む画分を定法に従って回収し、本発明のタンパク質の発現をSDS−PAGE等の電気泳動法で検出することにより、遺伝子の翻訳レベルの測定を行うこともできる。さらに、該遺伝子からコードされるタンパク質に対する抗体を用いて、ウェスタンブロッティング法を実施し、該タンパク質の発現を検出することにより、遺伝子の翻訳レベルの測定を行うことも可能である。該遺伝子からコードされるタンパク質の検出に用いる抗体としては、検出可能な抗体であれば、特に制限はないが、例えばモノクローナル抗体、またはポリクローナル抗体の両方を利用することができる。該抗体は、当業者に公知の方法により調製することが可能である。ポリクローナル抗体であれば、例えば、次のようにして取得することができる。本発明のタンパク質、あるいはGSTとの融合タンパク質として大腸菌等の微生物において発現させたリコンビナントタンパク質、またはその部分ペプチドをウサギ等の小動物に免疫し血清を得る。これを、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、本発明のタンパク質や合成ペプチドをカップリングしたアフィニティーカラム等により精製することにより調製する。また、モノクローナル抗体であれば、例えば、本発明のタンパク質またはその部分ペプチドをマウス等の小動物に免疫を行い、同マウスより脾臓を摘出し、これをすりつぶして細胞を分離し、該細胞とマウスミエローマ細胞とをポリエチレングリコール等の試薬を用いて融合させ、これによりできた融合細胞(ハイブリドーマ)の中から、本発明のタンパク質に結合する抗体を産生するクローンを選択する。次いで、得られたハイブリドーマをマウス腹腔内に移植し、同マウスより腹水を回収し、得られたモノクローナル抗体を、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、本発明のタンパク質や合成ペプチドをカップリングしたアフィニティーカラム等により精製することで、調製することが可能である。
【0026】
本発明のプロモータ活性を有するDNAとして具体的には、配列番号:7、8または9のいずれかに記載の塩基配列を含むDNAを例示することができる。また、配列番号:7、8または9のいずれかに記載の塩基配列を含むDNAと構造的に類似しており、かつ、配列番号:7、8または9のいずれかに記載の塩基配列を含むDNAと同等あるいは改善されたプロモータ活性能を持つDNAも、本発明の「プロモータ活性を有するDNA」に含まれる。このようなDNAとしては、例えば、配列番号:7、8または9のいずれかに記載の塩基配列において1または複数の塩基が置換、欠失、付加、および/または挿入された塩基配列を含むDNAが例示できる。該DNAは、上記ハイブリダイゼーション技術やポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術、site−directed mutagenesis法等の方法により調製することが可能である。
【0027】
また本発明は、本発明のDNA、および本発明のタンパク質をコードする遺伝子の発現制御に関与するプロモータ活性を有するDNAを含むベクター、並びに、本発明のDNAまたは上記ベクターを保持する形質転換植物細胞、該形質転換植物細胞を有する形質転換植物体、該形質転換植物体の子孫またはクローンである形質転換植物体、および該形質転換植物体の繁殖材料を提供する。
【0028】
さらに、本発明は、上記の形質転換植物体の製造方法であって、本発明のタンパク質をコードするDNA、もしくは本発明のタンパク質をコードする遺伝子の発現制御に関与するプロモータ活性を有するDNA、または、該DNAを含むベクターを植物の細胞に導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む方法を提供する。
【0029】
本発明のDNAまたは該DNAを含むベクターの植物細胞への導入は、当業者においては、公知の方法、例えばアグロバクテリウム法、電気穿孔法(エレクトロポーレーション法)、パーティクルガン法等により実施することができる。
【0030】
上記アグロバクテリウム法を用いる場合、例えばNagelらの方法(Microbiol. Lett. 67: 325, 1990)が用いられる。この方法によれば、組み換えベクターをアグロバクテリウム細菌中に形質転換して、次いで形質転換されたアグロバクテリウムを、リーフディスク法等の公知の方法により植物細胞に導入する。また、上記ベクターは、例えば植物体に導入した後、該DNAが植物体中で発現するように、発現プロモータを含む。一般に、該プロモータの下流には本発明のDNAが位置し、さらに該DNAの下流にはターミネーターが位置する。この目的に用いられる組み換えベクターは、植物への導入方法、または植物の種類に応じて、当業者によって適宜選択される。上記プロモータとして、例えばカリフラワーモザイクウイルス由来のCaMV35S、トウモロコシのユビキチンプロモータ(特開平2−79983号公報)等を挙げることができる。
【0031】
また、上記ターミネーターは、カリフラワーモザイクウイルス由来のターミネーター、あるいはノパリン合成酵素遺伝子由来のターミネーター等を例示することができるが、植物体中で機能するプロモータやターミネーターであれば、これらに限定されない。
【0032】
また、本発明のDNAまたは該DNAを含むベクターを導入する植物は、外植片であってもよく、これらの植物から培養細胞を調製し、得られた培養細胞に導入してもよい。本発明の「植物細胞」は、例えば葉、根、茎、花および種子中の胚盤等の植物細胞、カルス、懸濁培養細胞等が挙げられる。
【0033】
また、本発明のDNAまたは該DNAを含むベクターの導入により形質転換した植物細胞を効率的に選択するために、上記組み換えベクターは、適当な選抜マーカー遺伝子を含む、もしくは選抜マーカー遺伝子を含むプラスミドベクターと共に植物細胞へ導入するのが好ましい。この目的に使用する選抜マーカー遺伝子は、例えば抗生物質ハイグロマイシンに耐性であるハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子、カナマイシンまたはゲンタマイシンに耐性であるネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、および除草剤ホスフィノスリシンに耐性であるアセチルトランスフェラーゼ遺伝子等が挙げられる。
【0034】
組み換えベクターを導入した植物細胞は、導入された選抜マーカー遺伝子の種類に従って適当な選抜用薬剤を含む公知の選抜用培地に置床し培養する。これにより形質転換された植物培養細胞を得ることができる。
【0035】
次いで、本発明のDNAまたは該DNAを含むベクターを導入した形質転換細胞から植物体を再生する。植物体の再生は植物細胞の種類に応じて当業者に公知の方法で行うことが可能である。本発明において使用可能なベクターは、特に制限されず、例えば実施例で使用したpBI121等を適宜改変して使用することができる。また、本発明のベクターを、例えばアグロバクテリウムに導入して、カルスまたは幼植物に感染させることにより、形質転換植物を作製する事が可能であり、さらに、そのような形質転換植物に由来する種子を得る事が可能である。本発明のDNAまたは該DNAを含むベクターを植物に導入する形質転換法はアグロバクテリウムによるバイナリーベクター法に限定されるものではなく、パーティクルガン法、電気穿孔法等の方法を用いることも可能である。
【0036】
形質転換細胞から再生させた植物体は、次いで順化用培地で培養する。その後、順化した再生植物体を、通常の栽培条件で栽培する。
【0037】
なお、このように再生され、かつ栽培した形質転換植物体中の導入された外来DNAの存在は、公知のPCR法やサザンハイブリダイゼーション法によって、または植物体中の核酸の塩基配列を解析することによって確認することができる。この場合、形質転換植物体からの核酸の抽出は、公知のJ.Sambrookらの方法(Molecular Cloning, 第2版, Cold SpringHarbor laboratory Press, 1989)に準じて実施することができる。
【0038】
再生させた植物体中に存在する外来遺伝子を、PCR法を用いて解析する場合には、上記のように再生植物体から抽出した核酸を鋳型として増幅反応を行う。また、該核酸がDNAである場合には、該DNAの塩基配列に従って適当に選択された塩基配列をもつ合成したオリゴヌクレオチドをプライマーとして用い、これらを混合させた反応液中おいて増幅反応を行うこともできる。増幅反応においては、DNAの変性、アニーリング、伸張反応を数十回繰り返すと、本発明のDNAを含むDNA断片の増幅生成物を得ることができる。増幅生成物を含む反応液を例えばアガロース電気泳動にかけると、増幅された各種のDNA断片が分画されて、そのDNA断片が本発明のDNAに対応することを確認することが可能である。
【0039】
一旦、染色体内に本発明のDNAが導入された形質転換植物体が得られれば、該植物体から有性生殖または無性生殖により子孫を得ることが可能である。また、該植物体やその子孫あるいはクローンから繁殖材料(例えば種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルス、プロトプラスト等)を得て、それらを基に該植物体を量産することも可能である。
【0040】
さらに本発明は、被験化合物について、本発明のプロモータ活性を有するDNAのプロモータ活性を調節するか否かを評価する方法を提供する。本発明の評価方法に用いられる被検化合物としては、特に制限はなく、例えば、天然化合物、有機化合物、無機化合物、タンパク質、ペプチド等の単一化合物、並びに、化合物ライブラリー、遺伝子ライブラリーの発現産物、細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物、原核細胞抽出物、真核単細胞抽出物もしくは動物細胞抽出物等を挙げることができる。
【0041】
この方法においては、まず、本発明のプロモータ活性を有するDNAとレポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞または細胞抽出液と、被験化合物を接触させる。
【0042】
本発明において、「機能的に結合した」とは、本発明のプロモータ活性を有するDNAに転写因子が結合することにより、レポーター遺伝子の発現が誘導されるように、本発明のプロモータ活性を有するDNAとレポーター遺伝子とが結合していることをいう。従って、レポーター遺伝子が他の遺伝子と結合しており、他の遺伝子産物との融合タンパク質を形成する場合であっても、本発明のプロモータ活性を有するDNAに転写因子が結合することによって、該融合タンパク質の発現が誘導されるものであれば、上記「機能的に結合した」の意に含まれる。本方法に用いるレポーター遺伝子としては、前出の遺伝子を使用することが可能である。
【0043】
本方法における「本発明のプロモータ活性を有するDNAとレポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞」として、例えば、上記DNAを含むベクターを導入した細胞を挙げることができる。該ベクターは、当業者に周知の方法により作製することができる。ベクターの細胞への導入は、一般的な方法、例えば、リン酸カルシウム沈殿法、電気パルス穿孔法、リポフェタミン法、マイクロインジェクション法等によって実施することができる。
【0044】
また、「本発明のプロモータ活性を有するDNAとレポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞」には、染色体に該構造が挿入された細胞も含まれる。染色体へのDNA構造の挿入は、当業者に一般的に用いられる方法、例えば、相同組み換えを利用した遺伝子導入法により行うことができる。用いられる「細胞」は、例えば、ナタネ、シロイヌナズナ等に由来する細胞が挙げられるが、その由来は特に制限されない。
【0045】
本方法における「本発明のプロモータ活性を有するDNAとレポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞抽出液」とは、例えば、市販の試験管内転写翻訳キットに含まれる細胞抽出液に、本発明のプロモータ活性を有するDNAとレポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を有するDNAを添加したものを挙げることができる。
【0046】
本方法における「接触」は、本発明のプロモータ活性を有するDNAとレポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞の培養液に被験化合物を添加する、または該DNAを含む上記の市販された細胞抽出液に被験化合物を添加することにより行うことができる。被験化合物がタンパク質の場合には、例えば、該タンパク質をコードするDNAを含むベクターを、該細胞へ導入する、または該ベクターを該細胞抽出液に添加することで行うことも可能である。
【0047】
本方法においては、次いで、該レポーター遺伝子の発現レベルを測定する。レポーター遺伝子の発現レベルは、該レポーター遺伝子の種類に応じて、前記の方法により測定することができる。
【0048】
本方法においては、被験化合物の非存在下において測定した場合と比較して、被験化合物がレポーター遺伝子の発現レベルを変化させた場合に、被験化合物が本発明のDNAのプロモータ活性を調節したと判定される。
【0049】
さらに、本発明においては、上記評価方法を利用して、複数の被験化合物について、本発明のDNAのプロモータ活性を調節するか否かを評価し、プロモータ活性を調節する化合物を選択することにより、効率的にプロモータ活性を調節する化合物をスクリーニングすることができる。本発明は、このようなプロモータ活性を調節する化合物のスクリーニング方法も提供する。
【0050】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0051】
[実施例1] 胚発生特異的遺伝子のクローニング
植物の胚発生は外界から隔てられた花組織の深部で進行し、受精卵および極初期の受精胚を人為的に単離することは一般的に困難である。そこで、単細胞から同調的かつ高頻度に胚発生を誘導できる実験系として、ナタネ(Brassica napus)の未熟花粉培養法を用いる。この培養法は、開花前の蕾より単核期後期の未熟花粉を取り出し、これを人工培養する(Keller WA, Fan Z, Pechan P, Long N, Grainger J (1987) In Proc. 7th Intl. Rapeseed Congress. Poznan, Poland, pp 152−157.; Fukuoka H, Ogawa T, Minami H, Yano H, Ohkawa Y (1996) L. Plant Physiol. 111:39−47)。この操作によって単核の未熟花粉は、成熟花粉形成の経路から逸脱し、胚発生を開始する。この手法を用い、小胞子胚発生を誘導した細胞と通常の花粉形成を継続する細胞との間で遺伝子発現を網羅的に解析し、胚発生誘導に伴って強く発現が誘導される遺伝子を検出し、そのクローニングと構造解明を行った。
【0052】
ここで用いたナタネ未熟花粉培養法においては、培養開始後24ないし96時間の間、32℃の高温処理を与えることが胚形成の誘導のために必須である。一方、20℃の培養温度条件下では未熟花粉は自然条件下と同様に成熟花粉を形成し、胚発生は観察されない。すなわち、この32℃の温度条件が未熟花粉の発生運命を成熟花粉形成から胚発生へと変更する引き金の役割を果たしており、遺伝子発現の総合的パターンも胚発生を開始し進行させるためのものへと大きく変化していくものと考えられる。そこで、この高温処理に呼応して発現が誘導される遺伝子を以下のようにして単離した。
【0053】
単離した未熟花粉は32℃、2日間(以下サンプル232)、または20℃、2日間(サンプル220)暗黒下で培養し、それぞれから全RNAを定法に基づいて抽出した。その2種類のRNAサンプルについて、それぞれ3種類の1本鎖DNAプライマー(5’− GTTTTTTTTTTTTTTTA −3’(配列番号:1)、5’− GTTTTTTTTTTTTTTTC −3’(配列番号:2)、5’− GTTTTTTTTTTTTTTTG −3’(配列番号:3)、以下それぞれGT15A、GT15C、GT15G、また、これら3つを総称してGTプライマーと呼ぶ)を用いて第1鎖cDNAを合成した。この操作により、サンプル220+GT15A、サンプル220+GT15C、サンプル220+GT15G、サンプル232+GT15A、サンプル232+GT15C、サンプル232+GT15G、の合計6種類のcDNA混合物を得た。これらのcDNA混合物を鋳型とし、12merの任意プライマー(和光純薬製)と個々のGTプライマー(cDNA合成に用いたものと同じ配列のもの)とを用い、それぞれ別々にPCR反応によってcDNAを増幅した。その際、GT15A、GT15C、GT15Gは蛍光色素FITCで5’末端を標識したものを用いた。この操作によって、1種類の任意プライマーおよび1種類のGTプライマーの組み合わせについて、サンプル220およびサンプル232より2種類の増幅産物が得られた。
【0054】
この2種類の増幅産物を電気泳動法によって分子量の違いに基づいて分離し、その分離像を蛍光画像解析装置によって検出し、サンプル220とサンプル232との間で比較した。双方のサンプルに共通して発現している遺伝子に対応するcDNAは、2サンプル間で共通に観察されるが、胚発生特異的に発現する遺伝子に由来するcDNAはサンプル232においてのみ認められた。このようにして特異的に発現する遺伝子を検出する手法は一般にディファレンシャルディスプレー法と呼ばれるものであり、本実施例では(Ito, T, Sakaki, Y. (1996) Methods Mol. Genet. 8, 229−245, 1996.)の方法に従った。
【0055】
この手法を用い、高温処理を行った細胞のみに存在するmRNA分子によるバンドを電気泳動ゲル上で複数種類検出した。そのうちの1つであるBES1はGT15Aと任意プライマー(5’− GCCTGCCTCACG −3’(配列番号:4))を用いた反応産物から見いだされた。その増幅DNA産物を泳動ゲルから抽出・精製し、クローニングベクター(pGEM−T、プロメガ社)に挿入してクローン化し、その塩基配列を決定した。さらに、その塩基配列を元にライフテック・オリエンタル社の5’RACEシステムを用いて全長のcDNAを単離し、前述のpGEM−Tベクターに挿入してクローニングし、その全塩基配列を決定した。そのcDNAの塩基配列を配列番号:5に、その塩基配列を元に推定されるアミノ酸配列を配列番号:6にそれぞれ示す。ノーザンブロッティング法およびRT−PCR法によって該遺伝子の発現の時期・器官特異性を解析したところ、図1および図2に示されたとおり、BES1遺伝子の転写産物は胚発生の極初期から胚組織特異的に発現が強く誘導され、単離直後の花粉、葉、カルス等においては検出限界以下であることが明らかとなった。
【0056】
[実施例2] 胚発生時特異的遺伝子の発現制御部位のクローニング
このBES1の発現制御部位と考えられるBES1の翻訳領域の上流領域をナタネゲノムDNAを鋳型として逆PCR法によってクローニングした。ナタネゲノムDNAを制限酵素BamHIおよびEcoRIで2重消化し、両端をT4 DNAポリメラーゼによって平滑化したのち、T4 DNAリガーゼによって自己環状化した。これを鋳型として、BES1 cDNAの配列より設計した2種類の逆PCRプライマーを用いてPCRを行い、さらにその増幅産物の塩基配列データよりBES1遺伝子の翻訳開始点上流2179bpをPCR法によってクローン化した。その全塩基配列を決定し、既知のDNA配列データベースに対してBLASTアルゴリズムを用いて相同性検索を行ったところ、得られた2179bpのうち5’側約1.1kbpの部分は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の既知遺伝子のタンパク質コード領域と非常に高い相同性を示したため、この領域はBES1の転写制御領域ではないものと判断し、この5’側の領域を除く3’側1035bpをBES1の転写制御領域としてクローン化した。その塩基配列を配列番号:7に示し、このDNA断片を以下PBES1と記載する。なお、本発明におけるDNAおよびアミノ酸配列データおよびこれを利用した相同性検索は、インターネットを介して公開されている米国NCBI(National Center for Biothchnology Information)の運営するコンピュータシステム上のプログラムおよび当該システム上で公開されている遺伝子データベースによった。
【0057】
[実施例3] 遺伝子発現制御パターンの特異性の検討
PBES1のプロモータとしての活性はレポーター遺伝子を用いた遺伝子組換え植物作製実験によって検討した。用いたベクターは、植物形質転換遺伝子ベクターとして一般的に用いられるpBI121である。このベクターは、レポーター遺伝子としてカリフラワーモザイクウイルス由来のCaMV−35Sプロモータに制御されるβ−グルクロニダーゼ遺伝子(GUS)をもつ。本実験においては、このCaMV−35Sプロモータを取り除き、そこにPBES1を挿入して作製した改変ベクターを用いた。このベクターをアグロバクテリウムを介したバイナリーベクター法によってナタネおよびシロイヌナズナに形質転換した。その形質転換植物におけるGUSの発現誘導パターンを指標としてPBES1の持つプロモータとしての遺伝子発現誘導能およびその時期・組織特異性を5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−グルクロニド(X−Gluc)を基質として組織化学的に活性染色して検出した。その結果、該DNA断片PBES1はナタネ花粉胚発生およびシロイヌナズナ接合子胚発生のどちらの過程においても、胚発生極初期から胚組織特異的に外来遺伝子の発現を強く誘導する性質を持つことを明らかにした(図3−1、2、3および5を参照)。また、図3−4に示すように、葉、根、等の栄養組織における活性は検出されなかった。以上の結果から、該プロモータ配列は植物の胚発生誘導に伴い、極初期から胚組織特異的な遺伝子発現をもたらす作用があることが示された。その時間的、空間的な制御は極めて厳密なものであり、その特異性は極めて高いものであることは明瞭である。
【0058】
このような胚特異的発現制御を司る領域を特定する目的で、PBES1を5’側から削った欠失断片を用いて形質転換植物による同様の解析を行った。形質転換体の未熟種子(開花後4日目)から粗タンパクを抽出し、Glucuron(ICN社)を基質とした発光強度を指標として、GUS活性をフォトンカウンティングによって定量的に測定した。その結果、図4に示すように、PBES1の3’側から297塩基と400塩基の間の長さ104bpの領域に当該プロモータの胚特異的な発現制御に重要な働きを持つ配列が存在することが明らかになった。この領域の塩基配列を配列番号:8に示す。
【0059】
[実施例4] 他の植物種からの類似プロモータのクローニング
PBES1の塩基配列情報を用い、公開されている遺伝子データベースに対してBLASTアルゴリズムを用いた相同性検索を行ったが、高い相同性を持つ既知の塩基配列は検索されなかった。しかし、先に単離したBES1遺伝子のcDNA配列より推定されるアミノ酸配列(配列番号:6)は、シロイヌナズナの全ゲノムシークエンス情報より推定される推定タンパク質F20O9.30(GenBankアクセッション番号: T04605)と高い相同性を示すことがBLASTアルゴリズムを用いたデータベース検索によって明らかとなった。そこで、F20O9.30遺伝子の座乗しているシロイヌナズナのゲノム配列をデータベースより取得し(GenBankアクセッション番号: AL021749)、F20O9.30をコードすると推定されている領域の上流域421bpをPCR法を用いてクローニングした。その塩基配列を配列番号:9に示し、以下PAtBES1とする。PAtBES1をGUSの上流につなぎ、バイナリーベクター法を用いてシロイヌナズナに導入し、同様の形質転換実験を行った。その結果、図3−6に示すように、PAtBES1もPBES1と同様に初期胚特異的な遺伝子発現誘導パターンを示すことが明らかになった。このことは、BES1タンパクのアミノ酸配列情報を利用して、種の違う植物からも同様の特性を持つプロモータ配列を得ることが可能であることを示している。
【0060】
【発明の効果】
遺伝子組換え技術を高等植物を利用した新品種育成・物質生産等に用いる場合、導入した遺伝子の発現を植物の目的とする組織特異的、あるいは発育の時期特異的に制御することは重要な技術である。本発明におけるプロモータ活性を有するDNAは、植物の種子が形成される際、その胚に特異的に、かつ胚発生の極初期段階から任意の遺伝子の発現を強く誘導する。そのため、各種代謝系酵素遺伝子の発現誘導による有用物質の胚組織における産生・蓄積技術、胚致死をもたらすような遺伝子の強制発現による種子の不活化、ホルモン合成系関連遺伝子等、形態形成関連遺伝子の胚組織での発現誘導による種子胚の形態改変等に利用可能である。
【0061】
さらに、本発明におけるプロモータ活性を有するDNAを、遺伝子組換え操作時の選抜マーカー遺伝子の発現制御に用いることにより、単細胞からの不定胚誘導系を利用した形質転換技術において、抗生物質耐性等の選抜マーカー遺伝子を不定胚形成の初期段階から発現させることが可能となる。
【0062】
また、胚組織に特異的に任意の遺伝子発現が誘導されるため、胚以外の組織に対する導入遺伝子の影響を軽減することが可能となる。例えば種子胚以外の葉、根、果肉等を可食部とする農作物においては、収穫物において蓄積していないことが望ましい選抜マーカー遺伝子産物の産生を防止することができる。その他、高等植物における遺伝子工学系の産業分野において、胚組織に特異的に導入遺伝子を発現させることが必要とされる際に広汎に利用可能である。
【0063】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】RT−PCR法により検出されたナタネBES1転写産物を示す写真である。1〜12は、それぞれ、単離直後の未熟花粉、20℃2日間培養後の未熟花粉、32℃4日間培養後の未熟花粉、32℃4日間培養後の未熟花粉、数細胞期胚、球状胚、心臓型/魚雷型胚、子葉胚、完熟種子、葉、カルス(培養温度20℃)、カルス(培養温度32℃)から調製したサンプルを示す。
【図2】ノーザンハイブリダイゼーション法により検出されたナタネBES1転写産物を示す写真である。1〜7は、それぞれ、単離直後の未熟花粉、20℃2日間培養後の未熟花粉、32℃2日間培養後の未熟花粉、32℃4日間培養後の未熟花粉、球状胚、心臓型/魚雷型胚、葉から調製したサンプルを示す。
【図3】遺伝子組換え実験により検出されたプロモータの遺伝子発現制御パターンを示す写真である。全てのサンプルはX−Glucを基質として組織化学的に活性染色した。黒色の部位がGUSの活性を示している。1〜6は、それぞれ、PBES1::GUSを導入した形質転換ナタネより単離した花粉胚の培養4日目、同8日目、同14日目、PBES1::GUSを導入したシロイヌナズナ形質転換体の実生(播種後7日目)、同形質転換体の未熟胚(開花4日後)、PAtBES1::GUSを導入したシロイヌナズナ形質転換体の未熟胚(開花4日後)の写真である。
【図4】PBES1を5’側から削った7種類の断片および該断片のプロモータ活性(GUSの活性)を示す図である。
Claims (11)
- 植物の胚発生特異的に発現する、以下の(a)〜(c)のいずれかに記載のDNA。
(a)配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
(b)配列番号:6に記載のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
(c)配列番号:5に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。 - 請求項1に記載のDNAによりコードされるタンパク質。
- 以下の(a)または(b)のいずれかに記載の胚発生特異的プロモータ活性を有するDNA。
(a)配列番号:7、8または9のいずれかに記載の塩基配列からなるDNA。
(b)配列番号:7、8または9のいずれかに記載の塩基配列において1または複数の塩基が置換、欠失、付加、および/または挿入された塩基配列からなるDNA。 - 請求項1または3に記載のDNAを含むベクター。
- 請求項1もしくは3に記載のDNA、または請求項4に記載のベクターを保持する形質転換植物細胞。
- 請求項5に記載の形質転換植物細胞を有する形質転換植物体。
- 請求項6に記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体。
- 請求項6または7に記載の形質転換植物体の繁殖材料。
- 請求項6または7に記載の形質転換植物体の製造方法であって、請求項1もしくは3に記載のDNA、または請求項4に記載のベクターを植物細胞に導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む方法。
- 被験化合物について、請求項3に記載のDNAの胚発生特異的プロモータ活性を調節するか否かを評価する方法であって、
(a)請求項3に記載のDNAとレポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞または細胞抽出液と、被験化合物を接触させる工程、
(b)該レポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程、
を含み、被験化合物が該レポーター遺伝子の発現レベルを変化させた場合に、被験化合物が請求項3に記載のDNAの胚発生特異的プロモータ活性を調節すると判定される方法。 - 以下の工程(a)および(b)を含む、請求項3に記載のDNAの胚発生特異的プロモータ活性を調節する化合物のスクリーニング方法。
(a)請求項10に記載の評価方法により、被験化合物について、請求項3に記載のDNAの胚発生特異的プロモータ活性を調節するか否かを評価する工程。
(b)被験化合物から、請求項3に記載のDNAの胚発生特異的プロモータ活性を調節すると評価された化合物を選択する工程。
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