JP3592931B2 - 左右見当調整装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は枚葉印刷機の版胴軸端に設けられ、版胴を軸方向へ移動設定する左右見当調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的な枚葉印刷機は、給紙装置、複数組の印刷装置、排紙装置及び該排紙装置部に設けたシート積重装置等にて構成している。
図3は、印刷装置の概略図である。シート10は、図示しない給紙装置から1枚ずつ送り出され、次工程の印刷装置Pを経由する途上で、所定の印刷が施される。次いで、シート10は最終工程のシート積重装置へ移送され、排紙テーブル上において積重された後、所定枚数の束として外部へ搬出される。
【0003】
印刷装置Pは、図3に示すようにインキ壺1、呼び出しローラ2、互いに並設した複数個のインキローラ3群、インキ着けローラ4、刷版9を巻着した版胴5、ゴム胴6及び圧胴7等にて構成している。
インキ壺1に供給されているインキ8は、インキ壺1を形成するブレードとインキ元ローラ1aの隙間を通って、インキ元ローラ1aの外周面に付着し、回転転送された後、インキ元ローラ1aへ接離する呼び出しローラ2を介して、インキローラ3へ転移される。そして、最下流のインキ着ローラ4から版胴5へ巻着させた刷版9表面へ供給される。次いで、インキは刷版9からゴム胴6へ転移され、ゴム胴6と圧胴7の中間を走行するシート(枚葉紙)10へ転写することによって印刷が施される。
【0004】
通常、複数台の印刷装置Pを並設し、順次これらを経由することによって、複数色の多色印刷ができる。複数色の印刷を施すためには、各版胴5から対応する各ゴム胴6上へ転写した絵柄を、給送されてくるシート10面に対し、正確に合致させることが必要となる。
また、ゴム胴6の外周面に対する版胴5の印圧が重要で、この印圧が版胴5の軸方向全域にわたって均一に設定されることが必要である。
【0005】
絵柄のずれは、刷版9の加工精度及び版胴5への取付位置精度等、種々の要因にて発生する。このため、絵柄のずれを修正する必要があり、版胴5の軸受部には、軸調整機構を組み込んでいる。
図4〜図8は、軸調整機構を示す。図に示すように軸調整機構は、版胴5の一端軸を偏心軸受11bを介してフレーム12へ軸支させている。また、版胴5の他端軸を偏心軸受13、及びこれを抱持する偏心軸受11aを介して、フレーム12に軸支させている。よって、偏心軸受11(11a,11b),13を共に円周方向へ回転させれば、軸支した版胴5の軸芯位置を移動することができる。
【0006】
図4に示す版胴5の軸方向両端に設けた偏心軸受け11a,11bは、並設したゴム胴7に対し接離すべく機能するもので、又版胴5の軸方向一端にのみ設けた偏心軸受13は、他側端偏心軸受11bを中心にゴム胴7との接点において、略接線方向へ軸を揺動させるいわゆるコッキング調整を行うように機能している。加えて、上記版胴5の一軸端には、左右見当調整装置Rを備えており、版胴5を軸方向へ移動できる。
【0007】
左右見当調整装置Rは、図9に示すように印刷装置Pの側壁フレーム12へ、支柱14を介してブラケット15を設け、ブラケット15の最外端部へモータ16を固設したブレート17を取り付けている。
モータ16の軸端は、減速機(ハーモニックドライブ)18を介して、シャフト19の後端に連結した。シャフト19は、前端にネジ軸Sを設け、シャフト本体部は一対のラジアルベアリング20a,20bにより、ブラケット15に支持した。ラジアルベリアリング20a,20b間のシャフト19に形成したフランジ部Fは、一対のスラストベアリング21a,21bを介してブラケット15に支持されている。
【0008】
なお、シャフト19のフランジ部Fを挟んだ一対のスラストベアリング21a,21bは、ベアリング押さえ22によりブラケット15へ確実に保持され、シャフト19の軸方向への移動が極力小さくなるよう調整(設定)している。
一方、フレーム12へ軸支する版胴5の軸端は、ベアリング23を介して偏心軸受け13に支持され、これは更に偏心軸受11aにより支持されている。ベアリング23の内輪は、ナット24を介して版胴5の軸側へ固定され、又、ベアリング23の外輪はベアリング押さえ25を介して、偏心軸受13側へ確実に固定されている。
【0009】
見当調整装置Rは、ベアリング23を介して版胴5の軸を支持させた偏心軸受13に、円板状ブラケット31を取り付け、円板状ブラケット31をブラケット28と、偏心軸受13を抱持した偏心軸受11aの端面を介して挟み込みように構成している。ブラケット28の中心に形成したメネジは、シャフト19の前端に設けたネジ軸Sと螺合させている。
なお、円板状ブラケット31の外周面とブラケット28の内周面には、円周方向全域にわたって所定の隙間“X”を設け、回転中心が変動しないブラケット28に対し偏心軸受13の半径方向へのずれ、つまりコッキング調整に伴う相対的ずれ等が許容できるように構成してある。ブラケット31を相対的に移動させるには、図8に示す“W”寸法を、ブラケット28側の凹部の深さが、ブラケット31側の厚さより大きくする必要があり、最小限に設定した隙間を設けている。
【0010】
上記構成のもとモータ16を駆動させると、減速機18を介して、シャフト19を任意の方向へ回転させることができ、シャフト19の前端に設けたネジ軸Sに連結したブラケット28を、軸方向へ移動できる。次いで、ブラケット28と偏心軸受11aで把持した円板状ブラケット31を介して固定した偏心軸受13を移動させ、偏心軸受13に取り付けたベアリング23を介して軸支させた版胴5の軸を、一体的に軸方向へ移動させる。
こうして、版胴5の軸はベアリング23を介し、偏心軸受13と一体的に軸方向へ移動し、かつ偏心軸受13に対し回転のみが任意にできるように作動する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従来の左右見当調整装置Rでは、次のような問題点があった。
左右見当調整装置Rは、円板状ブラケット31をブラケット28と偏心軸受11aにて挟持する連結部で、ブラケット31の両面が摺接する構造となっており、それらの摺接面への摺動を許容する逃げ、すなわち図8に示す“W”寸法部に上記した隙間を設ける必要があった。
このため、モータ16の回転に伴うシャフト19のネジ軸Sの送り量(ブラケット28の移動量)と、版胴5の軸移動量(円板状ブラケット31の移動量)の間に、逃げ(隙間)に略相当する寸法の誤差が発生する。シート(枚葉紙)の横幅方向における左右見当合わせに要求される見当精度は、0.01〜0.02mmであるのに対し、隙間分だけ動きに遅れがあり、精度が低下する大きな要因となっていた。
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、モータによる制御量と版胴の軸方向の実移動量との誤差を、極力少なくすることのできる左右見当調整装置を提案することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、枚葉印刷機の印圧調整およびコッキング調整機構を有する版胴に設備する左右(枚葉紙横幅方向)見当調整装置に関するもので、モータを介して前端にネジ軸を有するシャフトを回動させ、該ネジ軸に係合させたブラケットAを移動し、該ブラケットAに連結する偏心軸受へ軸支させた版胴軸を移動させるよう構成した見当調整装置において、偏心軸受にブラケットB(連結用ブラケット)を固設し、該ブラケットBを一対のスラストころがりベアリングにて両側から挟み込み、ブラケットAに対するブラケットBの軸方向への移動を規制すると共に、上記ブラケットAに対するブラケットB半径方向への移動を許容すべく構成した。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。なお、従来例で説明した枚葉印刷機の印刷装置部とは、図9に示す左右見当装置の構成においてのみ異なる。よって、左右見当調整装置について詳細に説明する。
図1に示すように、左右見当調整装置Rは版胴の一端軸に設けている。調整装置Rは、印刷装置Pの側壁を形成するフレーム12へ2本の支柱14を介して、ブラケット15を設け、ブラケット15の最外端部へモータ16を固設したプレート17を取り付けた。
【0014】
モータ16の軸端は、減速機18を介してシャフト19の後端に連結している。シャフト19は、前端にネジ軸Sを設け、シャフト本体部には一対のラジアルベアリング20a,20bにより、ブラケット15へ支持させた。シャフト19に形成したフランジ部Fは、ラジアルベアリング20a,20bの間に配設し、一対のスラストベアリング21a,21bを介してブラケット15に支持した。
【0015】
なお、フランジ部Fを挟んだ一対のスラストベアリング21a,21bは、ベアリング押さえ22によりブラケット15に確実に保持され、シャフト19の軸方向への移動が極力小さくなるよう調整(設定)した。
一方、フレーム12へ軸支する版胴5の軸端は、ベアリング23を介して偏心軸受13に支持し、更に偏心軸受11aに支持した。ベアリング23の内輪は、ナット24を介して版胴5の軸に固定し、又、ベアリング23の外輪はベアリング押さえ25を介して、偏心軸受13側へ確実に固定した。
図2に示すように調整装置Rは、偏心軸受13の側面にブラケット26を取り付け、このブラケット26の内側へ突設した部分Gを、ブラケット28とベアリング押さえ27に取り付けたスラストころがりベアリング30a,30bを介して、挟み込むように構成した。なお、スラストころがりベアリング30a,30bは、スラスト玉軸受、円筒ころ軸受、針状ころ軸受及び円錐ころ軸受等を使用することが可能である。
【0016】
なお、ブラケット28、スラストベアリング30a、ブラケット26の突起部G及びスラストベアリング30bの接触部間は、ベアリング押さえ27の押付け状態の調整によって予圧をかけ、それらの隙間をゼロに設定してある。ブラケット28の中心に形成したメネジは、シャフト19の前端に設けたネジ軸Sと螺合させた。
ブラケット28には、これの回転を規制すると共に、軸方向への移動を案内するガイドピン29を設けている。ブラケット26の内側(シャフトSの軸心方向)へ突設した突起Gの内径部、及びこの突起Gの付け根両端部分には、円周方向全域にわたって隙間を設けており、回転中心の変動しないブラケット28に対し、偏心軸受13の半径方向へのずれ、すなわちコッキング調整に伴う相対的ずれが許容できる。
【0017】
上記構成のもと、左右見当調整用モータ16を駆動させると、減速機18を介してシャフト19が任意の方向へ回転する。シャフト19が回転すると、その前端のネジにより連結したブラケット28を、軸方向へ往復動させることができる。次いで、ブラケット28、スラストベアリング30a,30bを介してブラケット26へ固設した偏心軸受13を移動させ、偏心軸受13へ取り付けたベアリング23を介して軸支させた版胴5の軸を、一体的に軸方向へ移動させることができる。すなわち、版胴5の軸はベアリング23を介し偏心軸受13と一体的に軸方向へ移動し、かつ偏心軸受13に対し回転のみが任意にできる。そして、版胴5両軸端の偏心軸受11a,11bを適宜に回動することによって、該版胴5とゴム胴6の軸間距離が変更でき、版胴5とゴム胴6、ニップ圧の調整設定が可能となる。また、軸片側端に設けた偏心軸受13の回動によってゴム胴6との接線方向へ版胴5の軸心を変更(移動)、つまりコッキング調整設定が可能となる。
【0018】
上記機能に加えて、本発明の左右見当調整装置Rは、モータ16の駆動によって前端にネジを形成したシャフト19を回動させ、ネジに螺合させたブラケット28を移動し、ブラケット28から順次連結させた偏心軸受13、ベアリング23、版胴5の軸を軸方向へ移動する装置において、ブラケット28と偏心軸受13へ固設したブラケット26の連結部に、スラストころがりベアリング30a,30bを組み込み、軸方向における相対的隙間をゼロにし、かつ軸心移動を可能に構成してある。
【0019】
本調整装置Rは、スラストころがりベアリング30a,30bを組み込んだことにより、回転抵抗(トルク)の軽減が可能になる。このため、軸方向における隙間を従来のすべり機構は、必要であったのに対し、本調整装置Rはゼロに設定できるようになった。したがって、モータ16の回転に伴うシャフト19のネジ部の送り量と、版胴5の軸移動量を正確に対応(合致)させることができる。その結果、シート(枚葉紙)の横幅方向における左右見当合わせの精度が大幅に向上する。
【0020】
【発明の効果】
本発明は、モータを介して一端にネジ軸を有するシャフトを回動させ、該ネジ軸に係合させたブラケットを移動し、該ブラケットに連結する偏心軸受へ軸支させた版胴を移動させるようにした左右見当調整装置において、上記ブラケットと偏心軸受の上記連結部の構造として、偏心軸受に連結用ブラケットを固設し、該連結用ブラケットの一部を一対のスラストベアリングにて両側から挟み込むようにしたので、ブラケットに対する連結用ブラケットの軸方向への移動を規制すると共に、ブラケットに対する連結用ブラケットの径方向への移動を許容する。また、スラストベアリングは、連結用ブラケットの回転抵抗の軽減を可能にする。このため、連結用ブラケットに対応する従来のブラケットでは、軸方向における隙間を設け、すべり機構が必要であったのに対し、それをゼロに設定することができるようになった。したがって、モータの回転に伴うシャフトのネジ部の送り量と、版胴の軸移動量を正確に対応させることができる。このため、シートの横幅方向における見当合わせの精度の大幅な向上が図れるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による左右見当調整装置の断面図である。
【図2】図1の左右見当調整装置の要部拡大図である。
【図3】従来の枚葉印刷機に設けられている印刷装置部の概略構成図である。
【図4】従来の枚葉印刷装置に設けられている版胴軸受部の概略構成図である。
【図5】図3におけるX−X線方向の断面図である。
【図6】図3の版胴軸受部の機能を説明するための側面図である。
【図7】図3の版胴軸受部の機能を説明するための平面図である。
【図8】図3の版胴軸受部の機能を説明するための展開図である。
【図9】従来例による左右見当調整装置の断面図である。
【符号の説明】
1 インキ壺
2 呼び出しローラ
3 インキローラ
4 インキ着ローラ
5 版胴
6 ゴム胴
7 圧胴
8 インキ
9 刷版
10 シート(枚葉紙)
11a,11b,13 偏心軸受
12 フレーム
14 支柱
15,26,28 ブラケット
16 モニタ
17 プレート
18 減速機
19 シャフト
20a,20b ラジアルベアリング
21a,21b スラストベアリング
22,26,27 ベアリング押さえ
23 ベアリング
24 ナット
29 ガイドピン
30a,30b スラストころがりベアリング
P 印刷装置
R 左右見当調整装置
G ブラケットの突起部
S ネジ軸
F フランジ部

Claims (2)

  1. 枚葉印刷機の印圧調整およびコッキング調整機構を有する版胴に設けられ、枚葉紙横幅方向の位置調整装置であって、一端にネジ軸を連結し他端にモータを連結するシャフトをモータにより回動させて、該ネジ軸に係合させた移動用ブラケットを版胴の軸方向に移動させると共に、該移動用ブラケットに連結する偏心軸受へ軸支させた版胴を移動させるようにした左右見当調整装置において、
    上記移動用ブラケットと上記偏心軸受けとの連結部構造として、上記偏心軸受けに連結用ブラケットを固設し、該連結用ブラケットに形成した突設部を移動用ブラケットに形成した凹部に配置し、一対のスラストベアリングにて上記突設部を上記ネジ軸方向の両側から挟み込みこんで上記移動用ブラケットと連結用ブラケットとを連結し、かつ該突設部に対し上記偏心軸受けの半径方向のずれを許容し、
    上記移動用ブラケットに対する連結用ブラケットの上記ネジ軸方向への移動を規制すると共に、上記移動用ブラケットに対する連結用ブラケットの径方向への移動を許容するようにしたことを特徴とする左右見当調整装置。
  2. 上記シャフトが固定部としての支持ブラケットに設けられ、該支持ブラケットの移動用ブラケット側には、上記移動用ブラケットの回動を規制すると共に、該移動用ブラケットの上記軸方向への移動を案内するガイドピンが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の左右見当調整装置。
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