JP3591121B2 - 生体磁気計測装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被検体内の生体活動電流源に伴って発生する微小磁界を計測し、その計測データに基づいて前記被検体内の生体活動電流源を求める生体磁気計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の超伝導デバイス技術の発展に伴い、SQUID(Superconducting QUantum Interference Device )と呼ばれる高感度な磁束計を利用した生体磁気計測装置が、医療診断装置の一つとして実用化されつつあり、脳機能の解明や循環器疾患の診断に役立つものと期待されている。
【0003】
この生体磁気計測装置では、計測した磁場データに基づき、例えば、最小自乗法や最小ノルム法等によって、磁束計を基準とした座標系における生体活動電流源の位置、向き、大きさなどの推定がなされる(Jukka Sarvas ”Basic mathemtical and electromagnetic concepts of the biomagnetic inverse problem” , Phys. Med. Biol., 1987, vol.32, No.1, 11−22, Printed by the UK )。
【0004】
一方、推定された生体活動電流源から得られる生体内の脳磁図と、磁気共鳴断層撮影装置(MRI装置)で得られるMRI画像やX線CT装置で得られるX線断層画像などの医用画像と併用することにより、生体内の患部等の物理的位置を特定することが可能となるため、磁束計を基準とした座標系における生体活動電流源の位置情報と、医用画像との位置関係を正確に把握することが重要である。
このため、鼻根部や両耳下などの頭部表面の明確な位置にPROBE POSITION INDICATOR とよばれる磁場発生源を配置し、それによって生体活動電流源と被検体との位置関係を求める以下のような手法
(1) S.Ahlfors, et al, ”MAGNETOMETER POSITION INDICATOR FOR MULTI CHANNL MEG”, Advances in Biomagnetism, Edited by S.J.Williamson et al, Plenum Press, New York 693−696, 1989
(2)Neuromag−122 Preliminary Technical Data, August 1991
(3) 「生体磁気測定を行うための装置及び方法」(特開平1−503603号)
(4) 「生体磁場測定装置の位置検出装置」(特公平5−55126 号)
が提案されている。
【0005】
これらの手法では、被検体の体表面に貼り付けられた3つ或いはそれ以上の発振コイルの内、まず1つ目の発振コイルに直流電流を与え、その発振コイルから生じた磁場を互いにその位置関係が既知の複数の磁束計によって検出し、発振コイルに与えた電流の強さと各磁束計で検出した磁場の強さ、及び各磁束計間の位置関係から磁束計群に対する上記1つ目の発振コイルの位置を求め、この操作を2つ目以降の発振コイルにも順次適用することで、発振コイルすべての位置を求め、磁束計群に対する被検体の位置を決定するものである。
また、各発振コイルに異なる周波数の正弦波電流を同時に流すことにより生じた磁場を各磁束計で検出し、検出された磁場を周波数解析することで各発振コイルにより生じた磁場を個別に求め、磁束計群に対する被検体の位置を特定する手法も提案されている(特願平7−22385号)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の手法では、被検体の位置特定に際して、各発振コイルに供給される電流量が特に規定されておらず、通常ではそれぞれの発振コイルに供給される電流量は一定量であったため、磁束計から離れた位置に配設された発振コイルほど検出される磁場強度が小さくなり、S/N比(計測磁場強度/ノイズ磁場強度)の良好な検出信号が得られなかった。かかる場合、各発振コイル毎にその位置推定誤差が異なることとなり、被検体の位置特定精度を悪化させる要因となっていた。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために創案されたもので、磁束計に対する被検体の相対的な位置関係をより正確に特定できる生体磁気計測装置の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、被検体内の生体活動電流源に伴って発生する微小磁界を計測し、その計測データに基づいて前記被検体内の生体活動電流源を求める生体磁気計測装置であって、
前記被検体に付着される複数の発振コイルと、この複数の発振コイルのそれぞれに電流を供給する電流供給手段と、供給された電流によって前記複数の発振コイルから生じた磁場を検出する磁束計と、この磁束計で検出した磁場を各発振コイル毎の磁場に弁別する磁場弁別手段と、各発振コイル毎に弁別された磁場に基づき前記磁束計に対する各発振コイルの相対位置を算出する磁場解析手段と、を備え、
前記電流供給手段は、前記磁束計で検出される磁場に基づき、前記磁場解析手段で算出される各発振コイル毎の位置推定誤差が略同一となるよう各発振コイルに対して所定電流を供給することを特徴とする。
【0009】
なお、前記電流供給手段は、発振コイルC1〜Cnに供給される電流の総量をIs、各発振コイルCi(i=1,2, ...n)それぞれに同一電流I/nが供給されたときの各発振コイルCi(i=1,2, ...n)毎に磁束計S1〜Smで検出された磁場データの平均値をBi(i=1,2,...n) とした場合に、各発振コイルCi(i=1,2, ...n)それぞれに下の所定電流Ii を供給することで前記位置推定誤差を略同一とする。
【0010】
Ii ={1/√Bi 3 }/{Σj=1,n (1/√Bj 3 )}×Is
さらに、前記電流供給手段は、前記複数の発振コイルのそれぞれに周波数の異なる前記所定強度の交流電流を出力すると共に、前記磁場弁別手段は、この磁束計で検出した磁場を周波数解析することで、各発振コイル毎の磁場に弁別するよう構成されていることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施例を図1〜図10に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施例である生体磁気計測装置の概略構成図である。同図において、センサユニット1は、ピックアップコイルとSQUIDからなる複数の高感度な磁束計S1〜Smが、デュアの中に冷媒とともに収納されて構成されており、生体活動電流源の検出に際して、被検体Mの頭部に近接配備される。
【0012】
発振コイルC1〜Cnは、鼻根部、両耳下等、被検体Mを特定する上で特徴となる部分に付着されるもので、それぞれ、例えば、図2(a) のようにセラミック板など絶縁体で形成された基板31に金属を印刷してコイル部32を形成したコイルCや、図2(b) のようにボビン33に金属ワイヤ34を巻いて形成したコイルC’が使用される。
【0013】
電流供給ユニット11は、上記各発振コイルC1〜Cn個々に周波数の異なる交流電流を、磁束計S1〜Smで計測される各発振コイルC1〜Cn毎に生じた磁場強度が略同一となるよう所定量で、かつ同時に供給するものである。そして、図3に示されるように、電流供給ユニット11は、n個の交流電流源AC1 〜ACn 、これらの交流電流源AC1 〜ACn に接続された増幅アンプAMP1〜AMPn、及びかかる増幅アンプAMP1〜AMPnの電流出力端子out−1 〜out−n により構成され、この電流出力端子out−1 〜out−n は、発振コイルC1〜Cnそれぞれに対応させて接続される。
【0014】
ここで、交流電流源AC1 〜ACn それぞれの発振周波数と、増幅アンプAMP1〜 AMPnそれぞれの増幅度は、コンピュータ6内の収集制御部5により個別に設定され、交流電流源AC1 〜ACn それぞれのオンオフ制御も収集制御部5によって行われる。
【0015】
データ収集ユニット2は、磁束計S1〜Smで計測された各発振コイルC1〜Cnから生じる交流磁場データをA/D変換してコンピュータ6の磁場弁別部3に出力する。
【0016】
コンピュータ6は、計測された磁場データの解析及び電流供給ユニット11等の動作制御を主に行うもので、大きく磁場弁別部3、磁場源解析部4、及び収集制御部5からなる。
【0017】
磁場弁別部3は、データ収集ユニット2から出力された磁場データの周波数解析を行うことにより、磁束計S1〜Sm毎に、各発振コイルC1〜Cnそれぞれに起因する磁場強度を個別に算出する。
【0018】
磁場源解析部4は、磁場弁別部3により算出された磁場強度から、磁束計S1〜Smに対する各発振コイルC1〜Cnそれぞれの相対位置を算出する。そして、得られた各発振コイルC1〜Cnの相対位置は、画像記憶部7から読み出したMRI画像上の鼻根部、両耳下等、被検体Mの特定点に対応づけられ、後に計測される生体活動電流源に関する情報は、ここで対応づけられた位置関係をもとにMRI画像上に重ねてモニタ9に表示されると共に、必要に応じてMOD(光磁気ディスク)などの外部メモリ8に保存され、或いはプリンタ10に出力される。
【0019】
収集制御部5は、電流供給ユニット11に対する電流供給制御の他に、生体活動電流源の計測時に、被検体Mへの光、音、電気刺激を与える刺激装置12に対する刺激発生指示のための制御を行う。
【0020】
次に、本実施例の作用をコンピュータ6の動作を示す図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0021】
まず、被検体頭部の所定の特徴的部位に配設した発振コイルC1〜Cnの磁束計S1〜Smに対する相対位置を求める(S1)。
【0022】
具体的には、図5のフローチャートに示されるように、被検者の頭部を図1のセンサユニット1における磁束計S1〜Smに近接させて固定し(S11)、収集制御部5から、電流供給ユニット11に対して、n個の発振コイルC1〜Cnへ異なる周波数f1〜fnで、流量(交流電流の実効値又は振幅)が同じ交流電流を同時に出力するための指示、すなわち、図3におけるそれぞれの交流電流源AC1 〜ACn 及び増幅アンプAMP1〜AMPnに対する発振周波数及び増幅度の設定指示がなされると共に、交流電流源AC1 〜ACn に対する電流出力指示がなされ、それにより各発振コイルC1〜Cnから生じた磁場が磁束計S1〜Smによって検出される(S12)。
【0023】
ここで、回路の制約上、各発振コイルC1〜Cnに供給される電流量の総和は、一般に、許容電流値Imax を超えることができないので、各発振コイルC1〜Cnそれぞれに供給される電流量は、Imax /nとすることができる。
【0024】
なお、ここで設定される周波数fi(i=1 〜n)は、データ収集ユニット11におけるA/D変換時でのサンプリング周波数により、その設定可能な範囲が定まる。すなわち、設定可能な周波数fmax は、A/D変換時のサンプリング周波数を
fsとすると、サンプリング定理より、
fmax =fs /2
となる。一方、同時に各発振コイルC1〜Cnに電流を供給するための周波数それぞれの間隔fpitch は、サンプリング点数をNsamp とすれば、少なくとも
fpitch =fs/Nsamp
を、互いに有していなければならない。
【0025】
したがって、使用できる最大発振コイル数Nmax は
Nmax = fmax /fpitch =Nsamp /2
となる。
【0026】
次に、n個の発振コイルC1〜Cnから同時に送出された異なる周波数の磁場データは、磁束計S1〜Smでそれぞれ検出され、データ収集ユニット2でA/D変換された後、磁場弁別部3においてフーリエ変換等の手法により磁場解析がされ、磁束計S1〜Sm毎に発振コイルC1〜Cnそれぞれから生じた磁場が算出される(S13)。
【0027】
すなわち、n個の発振コイルC1〜Cnから同時に発生した異なる周波数の磁場は、一つの磁束計Sjでは、次のような磁場データMj として検出される。
【0028】
Mj =ΣBi ・nj
ここで、njは、磁束計Sj内のピックアップコイルの法線ベクトルであり、また、Biは、発振コイルCiによる磁束計Sj内のピックアップコイル位置での磁場ベクトルである。
【0029】
この検出磁場Mj を、磁場弁別部3で各発振コイルC1〜Cn毎の磁場に弁別するための手順を図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0030】
まず、図7aに示される一つの磁束計Sjで検出された磁場データMj を、フーリエ変換する(S21)。磁束計Sj で得られた磁場データMj は、意図的に個々に周波数を変えて各発振コイルから発せられた磁場の合成であるので、フーリエ変換後のデータは図7bに示されるように、各発振コイルC1〜Cn毎に供給された電流の周波数f1〜fnのそれぞれにおいて、所定強度の出力信号となる。
【0031】
次に、それぞれの周波数f1〜fn成分毎の信号強度M’j1〜M’jnを求めることにより、各発振コイルC1〜Cnそれぞれに起因する磁場データを得る(S22)。
【0032】
そして、すべての磁束計S1〜Smについて上述したS21〜S22の動作を繰り返し行い(S23)、磁束計S1〜Smについて各発振コイルC1〜Cnそれぞれに起因する磁場データが得られる。
【0033】
発振コイルC1〜Cnそれぞれから生じた磁場が算出されると、磁場解析部4において、各発振コイルC1〜Cn毎に算出された磁場から磁束計S1〜Smまでの距離の比率が求められる(S14)。
【0034】
すなわち、S12で、発振コイルC1〜Cnに対して、それぞれ異なる周波数の電流Imax /nが供給されたときに、発振コイルC1〜Cn毎に磁束計S1〜Smで検出された磁場データの平均値をBi(i=1,2,…n)とすると、磁場データの強度は発振コイルC1〜Cnと磁束計との距離に反比例するので、各発振コイルから磁束計までの距離の比率は、
(1/√B1 ):(1/√B2 ):・・・・:(1/√Bn )
として求めることができる。なお、ここで求めた距離の比率は、正確には、各発振コイルから磁束計S1〜Smの重心位置までの距離の比率である。
【0035】
次に、磁場解析部4において、求めた各発振コイルから磁束計までの距離の比率から、各発振コイルの最適電流値が求められる(S15)。
【0036】
ここで、発振コイルの位置推定誤差は、計測した磁場のS/N比に反比例し、磁束計までの距離に比例するため、磁束計から距離dにある発振コイルに電流Iを流したときに計測される磁場をB、この磁場を用いて発振コイルの位置特定を行った時の位置推定誤差をeとすると、Bに含まれるノイズは一定と考えられるので、位置推定誤差eは計測磁場Bに反比例し、磁束計からの距離dに比例することとなる。そして、計測磁場Bが、磁束計からの距離dの2乗に反比例し、供給される電流Iに比例することを考慮すると、位置推定誤差eは、磁束計からの距離dの3乗に比例し、供給される電流Iに反比例するということができる。
【0037】
従って、S14で求めた各発振コイルから磁束計までの距離の比率を用いて、発振コイルC1〜Cn毎の位置推定誤差を全て同じにするための各発振コイルCiに供給すべき最適電流値Ii は、{1/√Bi3}/{Σj=1,n (1/√Bj 3 )}×Imax として求めることができる。
【0038】
各発振コイルC1〜Cnに供給すべき最適電流値I1 〜In が求められると、収集制御部5において、その最適電流値であって、S12と同様に異なる周波数f1〜fnの交流電流を同時に出力するための指示、すなわち、図3におけるそれぞれの交流電流源AC1 〜ACn 及び増幅アンプAMP1〜AMPnに対する発振周波数及び増幅度の設定指示がなされると共に、交流電流源AC1 〜ACn に対する電流出力指示がなされ、それぞれの発振コイルC1〜Cnから生じた磁場が磁束計S1〜Smで計測される(S16)。
【0039】
計測された磁場データは、データ収集ユニット2でA/D変換された後、磁場弁別部3において磁場解析がされ、磁束計S1〜Sm毎に発振コイルC1〜Cnそれぞれから生じた磁場データが算出される(S17)。
【0040】
次に、磁場源解析部4によって、磁束計S1〜Sm毎に得られた各発振コイルC1〜Cnそれぞれに起因する磁場データ、及び各発振コイルC1〜Cnに供給された既知の電流強度に基づき、磁束計S1〜Smに対する発振コイルC1〜Cnの相対的な位置関係が算出される(S18)。
【0041】
ここで、各発振コイルC1〜Cn毎に弁別された検出磁場強度列Mj1 〜Mjn を用いて、磁束計S1〜Smの位置に対する各発振コイルC1〜Cnの相対位置を、最小自乗法によって求める手順を磁場源解析部4の動作を示す図8のフローチャートに基づいて説明する。
【0042】
まず、第1番目の発振コイルC1に起因する磁場データを用い(S31)、発振コイルC1の位置を仮想的に設定する(S32)。そして、その仮想位置に発振コイルC1がある場合に、各磁束計S1〜Smによって検出される仮想磁場強度列を計算する(S33)。この仮想磁場強度列と実際に測定された検出磁場強度列M11 〜Mm1 との間で対応する項同士の差の自乗和を求め、自乗誤差とする(S34)。次に、求めた自乗誤差と、予め決められた判定値とを比較し(S35)、自乗誤差が予め決められた判定値よりも大きければこの発振コイルの仮想位置を自乗誤差が小さくなる方向に移動し(S36)、これを新たな仮想位置として同様に自乗誤差を求め、自乗誤差が判定値以下になるまで上記の動作を繰り返す(S33〜S36)。
【0043】
自乗誤差が、予め決められた判定値よりも小さければ、その仮想位置を発振コイルC1の位置と特定し、2番目の発振コイルC2を特定して(S39)、磁束計群に対する全ての発振コイルC1〜Cnに対して上述した動作を繰り返し行う(S32〜S37)。
【0044】
上述のように、磁束計S1〜Smに対する発振コイルC1〜Cnの相対的な位置関係が定まると、次に本来の生体活動電流源の計測動作がなされる。すなわち、まず、被検体M内に故意に生体活動電流を発生せしめるため刺激装置12を介して、被検体Mに対して光,音,電気などの刺激を与える(S2)。
【0045】
次いで、与えた刺激で生じた生体活動電流によって発生する微小磁場を磁束計S1〜Smによって検出し、データ収集ユニット2を介して直接磁場源解析部4に出力し、磁束計S1〜Smに対する生体活動電流源の相対位置を算出する(S3)。
【0046】
ここで、磁束計S1〜Smに対する生体活動電流源の相対位置の算出方法は、最小ノルム法や最小自乗法など種々の手法が提案されており、いずれの手法を用いても良いが、ここでは、最小ノルム法を用いた従来の電流源推定方法を説明する。すなわち、図9に示すように、被検体Mに近接してセンサユニット1が配設され、このセンサユニット1内に磁束計S1〜Smが収納されているとする。
【0047】
一方、被検体Mの診断対象領域である例えば脳に、多数の格子点1〜nを設定し、各格子点に未知の電流源(電流双極子)を仮定し、各電流源を3次元ベクトルVPj (j=1〜n)で表す。そうすると、各磁束計S1〜Sm で検出される磁界B1 〜Bm は、次式(1)で表される。
【0048】
【数1】
式(1)において、VPj =(Pjx,Pjy,Pjz)
αij=(αijx,αijy,αijz )
なお、αijは、格子点上にX,Y,Z方向の単位大きさの電流源を置いた場合に磁束計S1〜Sm の各位置で検出される磁界の強さを表す既知の係数である。
【0049】
ここで、[B]=(B1,B2,・・・Bm )
[P]=(P1x,P1y,P1z,・・・・Pnx,Pny,Pnz)
のように表すと、(1)式は(2)式のような線形の関係式に書き換えられる。
[B]=A[P] (2)
(2)式において、Aは次式(3)で表される3n×m個の要素を持った行列である。
【0050】
【数2】
ここで、Aの逆行列をA− で表すと、[P]は次式(4)で表される。
【0051】
[P]=A− [B] (4)
ここで、最小ノルム法は、式の個数m(磁束計S1〜Sm の個数)よりも、未知数の個数3n(各格子点に仮定される電流源のX,Y,Z方向の大きさを考慮した場合の未知数)が多い場合を前提とするもので、電流源[P]のノルム|[P]|を最小にするという条件を付加することで電流源[P]の解を求めるものである。なお、上述した式の個数mと未知数の個数3nとを等しくとることで、解は一意的に求めることができるが、かかる場合には、解が非常に不安定となることからこの最小ノルム法が用いられている。
【0052】
電流源[P]のノルム|[P]|を最小にするという条件を付加することで、上式(4)は次式(5)のように表される。
【0053】
[P]=A+ [B] (5)
ここで、A+ は次式(6)で表される一般行列である。
【0054】
A+ =At (AAt )−1 (6)
ただし、At はAの転置行列である。
【0055】
上式(5)を解いて各格子点上の電流源VPj の方向、大きさを推定し、その中で値の最も大きなものを真の電流源に近いものとする。
【0056】
さらに、最小ノルム法の位置分解能を向上させるために格子点分割を細分しながら最小ノルム解を繰り返し求めることもできる。
【0057】
図10は、図9に示した格子点群Nの一部を拡大して示したもので、図中の符号Jは、上述した最小ノルム法を用いて推定された真の電流源に近い電流源が存在する格子点で、この格子点Jの周りに細分された格子点群M(図10では小さな黒点で示す)を追加設定し、最初に設定した格子点群に新たに設定した格子点群Mを含ませた形態で、前述と同様の手法を用いてより真の電流源に近い電流源を推定するものである。
【0058】
上述したように、磁束計S1〜Smに対する発振コイルC1〜Cnの相対位置関係及び磁束計S1〜Smに対する生体活動電流源の発生位置が求められると、次に、画像記憶部7から予め被検体Mについて撮影されたMRI画像が読み出され、MRI画像に生体活動電流源を示す情報が重ねられた状態でモニタ9に表示される(S4)。
【0059】
ここで、MRI画像上の所定位置に生体活動電流源を示す情報を重ねて表示するには、まず、発振コイルC1〜Cnを付着すべき位置にMRI撮像用のマーカを付着してMRI撮影を行うことにより、撮影したMRI画像上に付着したマーカを表示し、生体活動電流源の測定時には、付着したマーカを外し、その位置に発振コイルC1〜Cnを付着して、発振コイルC1〜Cnの位置特定を行う。これにより、MRI画像上に表示されたマーカの位置に発振コイルの位置を対応させれば、MRI画像上での磁束計S1〜Smの位置が特定されるため、求められた生体活動電流源のMRI画像上での位置が特定されることとなる。
【0060】
なお、発振コイルのコイル部が真円に近く、かつ全ての発振コイルのコイル部にばらつきがない方が、上記の算出結果の精度は向上する。
【0061】
また、本実施例では、1回の発振動作で得た磁場データから磁束計に対する発振コイルの位置を求めたが、本発明はこれに限らず、交流電流源の不安定さを補うために複数回の発振と磁場データの収集を行いそれらを加算平均して用いるよう構成してもよい。
【0062】
さらに、本実施例では、フーリエ変換後の磁場データに基づいて各発振コイルから発せられた周波数に対応する信号強度を得たが、それぞれ発振コイルに割り当てられた周波数を含むある範囲内、例えば、両隣の発振コイルに割り当てられた周波数との平均値で定まる周波数の範囲内での信号強度の最大値を対応する発振コイルからの検出磁場としても良い。
【0063】
また、上述した実施例では、各発振コイルに供給すべき最適電流値を求めるのに、各発振コイルに異なる周波数の正弦波電流を同時に流した場合の実施例を示したが、まず、1つ目の発振コイルに直流電流が与え、その発振コイルから発せられる磁場を互いにその位置関係が既知の複数の磁束計によって検出し、発振コイルに与えた電流の強さと各磁束計で検出した磁場の強さ、及び各磁束計間の位置関係から磁束計群に対する上記1つ目の発振コイルの位置を求め、この操作を2つ目以降の発振コイルに順次適用し、発振コイルすべての位置を求め、磁束計群に対する被検体の位置を決定するといった手法により各発振コイルに電流を供給するよう構成してもよい。
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、各発振コイルと磁束計との相対位置に応じて各発振コイルの位置推定誤差が均一化されるよう各発振コイルそれぞれに所定の電流を供給するよう構成したため、特定した生体の位置特定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる生体磁気計測装置の一実施例を示す図である。
【図2】本発明にかかる発振コイルの一実施例を示す図である。
【図3】本発明の一実施例に係る電流供給制御ユニットの構成を示す図である。
【図4】本発明の動作を示すフローチャートである。
【図5】各発振コイルに供給すべき最適電流値を求める動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明にかかる磁場弁別手段の動作を示すフローチャートである。
【図7】磁束計で検出された信号と、その信号をフーリエ変換した状態の信号を示す図である。
【図8】本発明にかかる磁場解析手段との動作を示すフローチャートである。
【図9】生体活動電流源推定方法の説明に供する図である。
【図10】従来の生体活動電流源推定方法の説明に供する図である。
【符号の説明】
M 被検体
S1〜Sm 磁束計
C1〜Cn 発振コイル
1 センサーユニット
2 データ収集ユニット
3 磁場弁別部
4 磁場解析部
5 収集制御部
6 コンピュータ
7 画像記憶部
8 外部メモリ
9 モニタ
10 プリンタ
11 電源供給ユニット
12 刺激装置
Claims (1)
- 被検体内の生体活動電流源に伴って発生する微小磁界を計測し、その計測データに基づいて前記被検体内の生体活動電流源を求める生体磁気計測装置において、
前記被検体に付着される複数の発振コイルと、この複数の発振コイルのそれぞれに電流を供給する電流供給手段と、供給された電流によって前記複数の発振コイルから生じた磁場を検出する磁束計と、この磁束計で検出した磁場を各発振コイル毎の磁場に弁別する磁場弁別手段と、各発振コイル毎に弁別された磁場に基づき前記磁束計に対する各発振コイルの相対位置を算出する磁場解析手段と、を備え、
前記電流供給手段は、前記磁束計で検出される磁場に基づき、前記磁場解析手段で算出される各発振コイル毎の位置推定誤差が略同一となるよう各発振コイルに対して次式より算出される所定電流 Ii を供給することを特徴とする生体磁気計測装置。
Ii ={1/√Bi 3 }/{Σj=1,n (1/√Bj 3 )}×Is
(但し、Is : 各発振コイルに供給される電流の総量
Bi : 各発振コイルCi(i=1,2, ...n)の各々に同一電流が供給されたときの各発振コイル毎に磁束計で検出された磁場データの平均値)
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