JP3590286B2 - 切り替え手段を備えた撮像モジュール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は可視光と不可視光との撮像を切り替えるための撮像モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
<従来のコンピュータへの入力手段>
コンピュータへの入力デバイスとしては、マウスが圧倒的に使われている。が、マウスでできることは、カーソルの移動と、メニューの選択など、あくまでも2次元のポインティングデバイスとしての役目である。マウスで扱えるのは、2次元情報なので、3次元空間のなかの物体など奥行きがあるものを選択することは難しい。また、アニメーションを作成するときに、キャラクタに動きをつけるのに、マウスでは、自然な動きをつけることが難しかった。
【0003】
<既存の3次元ポインティングデバイス>
3次元空間でのポインティングの難点を補うために、3次元ポインティングデバイスが開発されている。
【0004】
しかし、実際に操作すると、思うようにカーソルや視点の制御ができないという問題がある。例えば、左右に回そうとすると、前方あるいは後方を押してしまい、思わぬ方向にカーソルが動いたり、視点が動いたりしてしまう。
【0005】
<装着型の3次元入力デバイス>
このような3次元ポインティングデバイスに対して、手振りや身ぶりを使って入力するデバイスも開発されている。データグローブやデータスーツ、サイバーグローブと呼ばれるものである。これらは、例えば、データグローブは手袋状のデバイスで、表面に光ファイバが走っている。
【0006】
光ファイバは、指の関節まで通っており、指を曲げることにより、光の導通が変わる。この光の導通を計測することで、各指の関節がどの程度曲がっているかがわかる。手自体の3次元空間内の位置は、手の甲についている磁気センサによって計測するようになっている。人差し指を立てれば、前進するというように、身ぶりとそれに対応する指示を決めておけば、データグローブを使って、3次元空間内を種々に視点を変えて、ちょうど歩き回るようにする(ウオークスルーという)ことができる。
【0007】
<データグローブの問題点>
しかし、問題がいくつかある。まず、価格が高価であり、家庭用などで手軽に使用することは難しい。指の関節の角度を計測しているので、例えば、人差し指だけのばし、他の指は、曲げた状態を前進指示と定義したとする。一口に指を伸ばすといっても、人差し指の第2関節の角度が180度に完全になっていることは少ないので、遊びの部分を作らないと、きっちりのばしたとき以外は、のばしていると認識するのが難しい。
【0008】
また、データーグローブを装着するので、自然な操作が阻害される。また、装着するたびに、手の開いた状態と閉じた状態で、光の導通状態を校正せねばならないので、手軽に使えない。また、光ファイバを使っているため、継続的に使っていると、ファイバが断絶するなど消耗品に近いという問題がある。
【0009】
また、このように、高価で、手間がかかるデバイスである割には、手袋の大きさが、ぴったり合っていないと、使っているうちにずれたりして校正した値からずれるために、細かな手振りを認識することは難しい。このように、いろいろな問題があるために、データグローブは、VR(バーチャルリアリティ、仮想現実感)技術のトリガーとなったデバイスであったにもかかわらず、当初の期待ほど、普及しておらず、また、低価格化もなされていず、使い勝手の点で問題が多い。
【0010】
<画像を用いた身振り手振りの認識技術の問題点>
これに対し、データグローブのような特殊な装置を装着することなく、手振りや身ぶりを入力しようとする試みが、いくつかなされている。例えば、ビデオ映像などの動画像を解析して、手の形を認識するような研究がなされている。が、これらでは、背景画像から目的とする画像、手振りの認識の場合には、手のみを切り出すことが難しいという問題がある。
【0011】
例えば、色を使って切り出す場合を考えてみる。手の色は肌色であるので、肌色の部分のみを切り出すような方式が考えられる。が、背景にベージュ色の洋服や、壁があったりすると、肌色を識別することが難しい。また、調整を行って、ベージュと肌色を区別できるようにしても、照明が変われば、色調が変化してしまうために、定常的に切り出すことは困難である。
【0012】
このような問題から逃れるために、背景にブルーマットをおくというように、背景画像に制限を置き、切り出しを容易にする方策も採られている。
また、以上のような切り出しなどのビデオの画像認識処理は、非常に演算量が多い。このため、現状のパーソナルコンピュータでは、秒30枚発生する画像を処理しきれないのが実状である。従って、ビデオ映像の処理によってモーションキャプチャなどを行うのは、リアルタイムは無理である。
【0013】
<マーカーによる身振りの認識>
また、手や身体の一部に色マーカーや発光部を取り付け、画像によりそれらを検出し、手・身体の形、動きなどを捉える装置もあり、一部実用化されている。CGアニメーションやTVゲームなどの制作現場で用い、入力した人間の動きにしたがってCGキャラクタを動かす。
【0014】
しかし個人レベルのユーザーがこのような装置を使うことを考えると、操作の度に装置を装着しなくてはならないというのは大きなデメリットであり、応用範囲を非常に制約する。また、データグローブの例に見られるように、装置を手などの可動部に装着して使用する装置は耐久性が問題になりやすい。
【0015】
<レンジファインダ>
レンジファインダと呼ばれる、距離画像を入力する装置がある。その代表的な原理として、スポット光あるいはスリット光を対象物体に照射し、その反射光の受光位置から三角測量の原理で求めるものである。2次元的な距離情報を求めるために、スポット光あるいはスリット光を機械的に走査している。
【0016】
この装置は非常に高精度な距離画像を生成することができるが、その反面、装置の構成が大掛かりになり、高コストになる。また入力に時間がかかり、実時間で処理を行わせるのは困難である。
【0017】
またカメラを2台使い、2つの方向からの画像を撮像し、両方の画像中の対応点から、三角法を用いて3次元情報を生成するという手法もある。しかし、2つの画像中から対応点を見つけることは難しく、とくに複雑な背景下でこれを行うのは非常に困難である。またその難しさから、実時間処理には非常に多く計算機パワーを要する。
【0018】
<画像中からのキャラクタの切り出し>
次に、以上のような入力デバイスとは別に、カメラ技術について従来技術についての問題点を述べる。従来のカメラ技術では、背景に対して、キャラクタの合成(クロマキー)を行うには、あらかじめ、ブルーバックでキャラクタを撮影して、キャラクタの切り出しを容易にする必要があった。
【0019】
このため、ブルーバックで撮影ができるスタジオなど、撮影場所に制限があった。あるいは、ブルーバックでない状態で撮影した映像から、キャラクタを切り出すには、コマごとに、キャラクタの切り出し範囲を人手で編集せねばならないので、非常な手間がかかっていた。
【0020】
同様に、キャラクタを3次元空間の中に生成するには、あらかじめ3次元のモデルをつくっておき、そこにキャラクタの写真を貼り付ける(テクスチャマッピング)をおこなうような方式をとっている。が、3次元モデルの生成、および、クスチャマッピングには手間がかかり、映画制作など経費がかかってもよい用途以外では、ほとんど使えなかった。
【0021】
<問題提起>
以上述べたように従来は、特殊な装置を装着することなく、簡易にジェスチャや動きを入力できる直接指示型の入力デバイスが存在しなかった。特に、3次元空間でのポインティングや視点の変更を容易に行える簡易なデバイスは存在しなかった。また、ユーザのジェスチャや動きをそのまま使って、アニメーションのキャラクタなどに自然な動きをつけたりすることができなかった。
【0022】
さらに、従来のカメラでは、特定のキャラクタだけを切り出したり、キャラクタの奥行き情報を容易に入力できなかった。
<その解決法としての発光手段を持つ撮像装置の発明>
上記の問題点を解決するために、物体の形状、動き、距離情報などを非接触で入力することの可能な装置を発明した。この入力装置は、光を発光し、その対象物体による反射光を画像として捉える。物体表面がほぼ均一な拡散反射面である場合、反射光の強さは物体までの距離と密接な関係を持つ。
【0023】
物体が存在している場所からの反射光はある程度の値を持ち、遠い背景からの反射光はほとんど無いため、反射光の画像をしきい値で分けることにより、物体の形状を抽出することが出来る。またその形状を画像処理することにより、重心位置や大きさ、水平方向、垂直方向への形状の広がり、また形状の時系列からその動きや変形などの様々な特徴量を抽出することができる。また物体の凹凸を反射光量の違いとして捉えられるため、対象物体の立体構造を得ることも出来る。
【0024】
<外光の影響の低減>
光を発して、その反射光を単に受光しても、その中には、照明や太陽光などの外光が入り込んでしまい、正しい受光量が得られない。反射光の画像を入力するために、あるタイミングを発生するタイミング発生部の制御信号によって、発光部、および受光部を動作させる。発光部が発光しているときの受光画像から発光部が発光していないときの受光画像の差分を取ることによって、反射光画像を得ることができる。
【0025】
具体的には例えば、一つの画素に相当するセルに2つのキャパシタを持った撮像センサを発光部と同期させて動作させることによって反射光画像を得ることができる。セルの光電変換部で受光し発生した電荷は2つのキャパシタのうちどちらかを選択して蓄積できるようにしておく。そして発光部が発光しているときに受光し発生した電荷を第1のキャパシタに蓄積し、次に発光していないときに受光し発生した電荷を第2のキャパシタに蓄積する。セルから電荷を読み出す際に2つの電荷量の差を出力するしくみを用意しておけば、2つのキャパシタの差、すなわち反射光のみの画像データが得られる。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
ところで通常の撮像素子は不可視光だけでなく、可視光も撮像できる。このため、不可視光の反射光を撮像するときには、可視光を遮断する必要があるので、例えば、不可視光の領域のみを通過させるフィルタをレンズと撮像素子との間に設置せねばならない。
【0027】
一方、不可視光を遮断し可視光のみを撮像すれば、通常の撮像を行える。この場合にも、例えば、可視光のみを通過させるフィルタをレンズと撮像素子との間に設置せねばならない。
【0028】
この2つのフィルタを切り替えることで、可視光も不可視光も撮像は可能である。が、可視光と不可視光では、レンズのフランジバック(レンズ鏡筒終端から結像面までの距離)が異なっている。例えば不可視光として、近赤外光などの可視光より長波長の光を用いた場合、一般的に不可視光のフランジバックの方が、可視光のフランジバックより長い。が、機械的に移動するなどして、レンズと撮像素子の距離を不可視光撮影時と、可視光撮影時に変化させることは、コストが高くなり、また、壊れやすくなるという問題があった。仮想的にフランジバックを長くするには、間に挿入するフィルタの厚さを厚くすることが一方法である。
【0029】
しかし、単純に可視光用のフィルタの厚みを厚くすると、不可視光用のフィルタと切り替えるためにはめ込むフィルタはめ込み部が厚くなり、レンズあるいは、撮像素子表面と触れてしまう問題が生じた。逆に、不可視光用のフィルタの厚みを薄くすると、フィルタが薄くなって壊れやすくなるという問題が生じていた。
【0030】
使用者がこの撮像装置の前に手を出して動かすことにより機械をコントロールすることを考えた場合、使用者の体格や姿勢によって、手をだしやすい場所が異なる。撮像モジュールの向きが固定になっていると、その撮像範囲に合わせて使用者が自分の手の位置を調整しなくてはならず、これは自然な操作を阻害することになり疲労を助長してしまう、という問題がある。
【0031】
このような問題を解決するために、撮影モジュールを回転するなど可動できるようにする方策がとられる。が、角度を変えるなど動かすと、モジュールに電源が入っているのかどうかなどの状況の表示を行う表示部が、見えなくなる可能性があった。
【0032】
また、不可視光は実は、蛍光灯などの室内灯にも大量に含まれている。単に不可視光を撮像したのでは、室内灯からの不可視光がノイズとなり、正確に撮像できないという問題がある。
【0033】
この問題を解決するために、蛍光灯からの不可視光を除く必要がある。実は蛍光灯の明滅は、完全に50Hz(関西では60Hz)でないため、この明滅を除去するためには、蛍光灯の明滅周期を検知せねばならない。が、蛍光灯の明滅には、個体差がある。このため、蛍光灯の周期を検知する検知部が、撮像素子と同一の方向にないと、撮像素子に影響を与えるのとは、異なる蛍光灯を検知し、ノイズが除去できないという問題が生じていた。
【0034】
【課題を解決するための手段】
これらの課題を解決するために、本願発明は、不可視光を撮像するための第1のフィルタと、この第1のフィルタと異なる厚さを有する可視光を撮像するための第2のフィルタと、これら2つのフィルタを切り替えるスイッチと、このスイッチと連動して可動し第1のフィルタと第2のフィルタとの切り替えを行えるように第1のフィルタと第2のフィルタとを配置したフィルタはめ込み部とから構成された切り替え手段と、不可視光あるいは可視光を集光するためのレンズと、このレンズにより集光され、前記切り替え手段によって切り替えられた第1のフィルタを通過した不可視光あるいは第2のフィルタを通過した可視光を撮像する撮像素子とを具備し、前記第1のフィルタと前記第2のフィルタの異なる厚さに応じて、少なくとも一方のフィルタに関し、フィルタはめ込み部へのはめ込み部とそれ以外の部位との厚みとを異ならせることを特徴とする。
【0035】
また、アレイ状に配列された受光セルが受光した電荷の差分をとるエリアイメージセンサと、パルス信号もしくは変調信号を発生させるタイミング信号生成手段と、前記エリアイメージセンサの受光セルの受光を個別に制御するための制御信号を、前記タイミング信号生成手段からの信号に基づいて生成する制御信号生成手段と、前記タイミング信号生成手段からの信号に基づいて強度変化する光を発する発光手段と、この発光手段の発光する光の反射光を撮像するための第1のフィルタと、この第1のフィルタと異なる厚さの可視光を撮像するための第2のフィルタと、これら2つのフィルタを切り替えるスイッチと、このスイッチと連動して可動し第1のフィルタと第2のフィルタとの切り替えを行えるように第1のフィルタと第2のフィルタとを配置したフィルタはめ込み部とから構成された切り替え手段と、不可視光あるいは可視光を集光するためのレンズと、このレンズにより集光され、前記切り替え手段によって切り替えられた第1のフィルタを通過した不可視光あるいは第2のフィルタを通過した可視光を撮像する撮像素子とを具備し、前記第1のフィルタと前記第2のフィルタの異なる厚さに応じて、少なくとも一方のフィルタに関し、フィルタはめ込み部へのはめ込み部とそれ以外の部位との厚みとを異ならせることを特徴とする。
【0036】
【発明の実施の形態】
<基本原理の説明>
まず始めに本発明を適用するところの撮像装置の基本原理および基本構成を説明する。この撮像装置は不可視光を発光する手段を持ち、その物体による反射光を撮像する。発光部と撮像部を同期的に動作させることによって室内照明や太陽光などの外部光から分離して、発光部による光の反射光だけを捉える。またこの反射光画像を入力情報としてコンピュータなどの機器に取り込んだり、またこの画像を様々な形に加工してあるいはこの画像から情報を抽出して、機器を操作するための情報として利用する。
【0037】
本撮像装置の基本構成を図1に示す。発光部1より発光された光は、対象物体2に反射して、受光光学系(レンズ)3により、反射光画像検出部4の受光面上に結像する。反射光画像検出部4は、この反射光の強度分布、すなわち反射光画像を検出する。反射光画像検出部4において外光から分離して反射光のみを取り出すしくみについては後述する。
【0038】
反射光画像検出部4は反射光画像の各画素の反射光量をシーケンシャルに出力する。反射光画像検出部からの出力はアンプ5によって増幅され、A/D変換器6によってデジタルデータに変換された後、メモリ7に蓄えられる。しかるべきタイミングでこのメモリ7より蓄積されたデータが読み出される。読み出されたデータは例えば、図示しない特徴情報生成部において処理される。 これら全体の制御はしかるべきタイミングで制御部9が行う。
【0039】
反射光画像検出部4は、画像の1画素分に相当する単位受光部であるセルが2次元的に並べられている。この点ではCCDイメージセンサなど他の撮像素子と似ている。異なるのは、セル構造の中に外光から分離して反射光のみを取り出すためのしくみがあることである。セルは光電変換部と蓄積方向制御部と第1および第2の電荷蓄積部と、選択出力部からなる。
【0040】
光電変換部は入射した光を電荷に変換する。第1および第2の電荷蓄積部は光電変換部において発生した電荷を蓄積する手段である。蓄積方向制御部は光電変換部において発生した電荷を第1、第2の電荷蓄積部のいずれに蓄積するかを制御する手段である。選択出力部は第1、第2の電荷蓄積部のいずれか選択しその電荷をセル外部へ読み出すための手段である。
【0041】
1枚の反射光画像を得るために以下のような動作を行う。まず発光部1がパルスを発光する。発光している間、光電変換部で発生した電荷を第1の電荷蓄積部に蓄積する。次に発光していない間に、光電変換部で発生した電荷を第2の電荷蓄積部に蓄積する。
【0042】
以上のように、第1の電荷蓄積部には反射光と室内照明、太陽光などの外光を受光した電荷量が、第2の電荷蓄積部には外光のみを受光した電荷量が蓄積される。セルから電荷を読み出すときは、2つの電荷蓄積量を順番に読み出し外部の差分回路でその差分を取り出す。第1の電荷蓄積部の蓄積量から第2の電荷蓄積部の蓄積量を引くと、反射光成分のみが取り出される。
【0043】
上の説明では、第1、第2の電荷蓄積部への電荷蓄積は1回ずつであったが、回数はこれに限らない。例えば2つの電荷蓄積部への蓄積を10回繰り返してもよい。また、第1、第2の電荷蓄積部への電荷蓄積回数が異なってもよい。例えば、始めに第1の電荷蓄積部へ1ms蓄積し、ついで第2の電荷蓄積部へ2ms蓄積し、最後にもう一度第1の電荷蓄積部へ1ms蓄積してもよい。このようにすると、外光の変動の影響を受けにくい。
【0044】
発光部1は人間の目に見えない、不可視光を発光する。より具体的には近赤外光を発光するLEDはそのコスト、装置への組み込みやすさから言っても好適である。不可視光であるため、使用者は眩しさを感じずに済む。
【0045】
また、より好適には受光光学系(レンズ)には、図示しない波長選択型光学フィルタが設けてある。近赤外光を用いる場合は、このフィルタは発光波長である近赤外光を通過し、可視光、遠赤外光を遮断する。従って、ノイズとなる外光の多くをカットしている。
【0046】
上記で述べた撮像装置の構成はほんの一例である。実際にはさまざまな形で反射光画像を得る装置を構成できる。本特許では発光部と受光光学系(レンズ)の位置関係を主にした発明を述べているので、撮像素子自体の細かい構成は問わない。
【0047】
上の説明では、単位セル内に2つの電荷蓄積部を持つ撮像素子を例に挙げたが、例えば、セル内には電荷蓄積部は1つしかなく、差分を得るしくみをセル外に用意してもよい。同じ考え方で、既存のCCDイメージセンサなどを用いてもこの撮像装置を構成することはできる。
【0048】
<反射光画像の利用>
物体からの反射光は、物体の距離が大きくなるにつれ大幅に減少する。物体の表面が一様に光を散乱する場合、反射光画像1画素あたりの受光量は物体までの距離の2乗に反比例して小さくなる。従って、本入力装置の前に物体を置いたとき、背景からの反射光はほぼ無視できるくらいに小さくなり、物体のみからの反射光画像を得ることが出来る。
【0049】
例えば、入力装置の前に手を持ってきた場合、その手からの反射光画像が得られる。この時、反射光画像の各画素値は、その画素に対応する単位受光セルで受光した反射光の量を表す。
【0050】
反射光量は、物体の性質(光を鏡面反射する、散乱する、吸収する、など)、物体面の向き、物体の距離、などに影響されるが、物体全体が一様に光を散乱する物体である場合、その反射光量は物体までの距離と密接な関係を持つ。手などはこのような性質を持つため、手を差し出した場合の反射光画像は、手の距離、手の傾き(部分的に距離が異なる)、などを反映する。従ってこれらの特徴情報を抽出することによって、様々な情報の入力・生成が可能になる。
【0051】
反射光画像の加工の仕方の代表例は、距離情報の抽出と、領域抽出である。先にも述べたように、物体が一様で均質な散乱面を持つ物体であれば、反射光画像は距離画像と見なすことができる。従って、物体の立体形状を抽出することができる。物体が手であれば、手のひらの傾きなどが検出できる。手のひらの傾きは部分的な距離の違いとして現れる。
【0052】
また、手を移動させたときに画素値が変われば、距離が移動したと見ることができる。また、背景のように遠い物体からの反射光はほとんどないため、反射光画像からあるしきい値以上の領域を切り出すという処理で、物体の形状を簡単に切り出すことができる。
【0053】
例えば、物体が手であれば、そのシルエット像を切り出すのは極めて容易である。また画素値が距離と密接な関係を持つため物体の凹凸の情報を得ることができる。これは3次元形状の獲得が可能であることを示す。
【0054】
また反射光画像よりさまざまな特徴情報を抽出することができる。この特徴情報あるいは特徴情報の抽出方法は様々考えられる。例えば形状の面積や重心の位置、水平方向、垂直方向の広がり、およびそれらの時間的変化などを抽出することができます。また手の形から指先の位置などを検出することもできる。また距離情報も併用した特徴量を求めることもできる。
【0055】
これらの特徴情報からジェスチャーやポインティングなどの情報を生成し、これによりコンピュータなどの操作を行うことができる。また対象物体の立体情報を抽出し、利用することもできる。また、コンピュータに限らず、AV機器や家電製品などの機器や非接触で操作したい医療機器や汚れた手のままで操作したい工場などの装置などさまざまな製品に応用できる。
【0056】
<明るさを距離に変換することを説明>
これまでにも述べたように、本装置では、発光部により光を発し、その光の対象物体による反射光を画像として獲得する。したがって、物体が近くに存在すれば反射光は大きくなり、物体が遠くになれば反射光は小さくなる。物体面が光軸と垂直であり、その表面が完全拡散面だと仮定すると、物体面上からの反射光を受光する、受光セル(反射光画像の1画素に相当する)が受ける光の量は、物体面までの距離の2乗に反比例する。
【0057】
実際には、物体面が完全拡散面でないこともあるし、物体面は光軸に垂直でなければ反射光量は減衰する。また発光部が均一に対象空間を照らしていなければ対象物体の位置によっても反射光量が変わる。したがって、精度良く求めようとすればさまざまな補正を行う必要はある。しかし基本的には反射光量、つまり画素値は距離と関係を持つ。
【0058】
このように反射光を用いることで、物体を背景から切り出すことができる。一方、反射光でなく、通常の画像(可視光による受動的な)撮像も可能である。本発明は、通常の撮像と反射光による距離画像の撮像と双方を可能にするものである。
【0059】
図2は本発明の正面からみた概観と横からみた概観を示すものである。図3は本発明をほぼ真上から見たものである。筐体は周囲からの光がもれこまないように、密閉型になっている。電源など熱を発生する部分には、熱を発散するための放射板などが設置されたりする。レンズ3の周囲に発光部であるLED1が複数並んでいる。レンズ3の後ろに反射光画像検出部4が配置されている。
【0060】
LED1の下には、電源がはいっているかどうかを示す電源ON/OFF表示器31が設置され、例えば、ONの時には、緑色に点灯し、OFFの時には、点灯が消えることにより、ユーザが簡単に電源ON/OFFを確認できるようになっている。電源ON/OFFのスイッチは、この筐体の後部につけることも可能である。あるいは、接続されているパソコンなどのコンピュータ側からソフトウェア的にON/OFFすることも可能である。
【0061】
また、蛍光灯などの外光によるノイズを除くために、外光の周波数の検知などを行う必要がある。このための外光検出部32が、レンズと同じ側で、この例では、電源ON/OFF表示器31とは反対側の上部に設置されている。
【0062】
この筐体はコの字型の支え部で支えられており、その接触部は図2の側面図からわかるように、例えばこの字型のアクリルでできた支持部に円形にあいている穴の部分にちょうど筐体が収まるように溝が掘られていて、その部分で支持、回転ができるようになっている。
【0063】
図3では、不可視光と可視光の撮像を切り替えるための切り替え部10のうち、スイッチ部を示している。図4は、切り替え部10の詳細を示している。切り替え部10は2枚のフィルタがはめ込まれ、切り替えスイッチにより可動し、レンズに対し、2枚のフィルタを切り替えを行えるフィルタはめ込み部103と、不可視光撮像用フィルタ101と可視光撮像用フィルタ102とから構成されている。
【0064】
不可視光撮像用フィルタ101は例えば、近赤外通過バンドパスフィルタ(BPF)から構成されており、発光部のLED1が発光する近赤外光のみを通過し、他の波長の光は遮断するようになっている。
【0065】
一方の可視光撮像用フィルタ102はアクリル板から構成されている。可視光撮像時にも、発光部のLED1を点灯する場合には、近赤外光を遮断するために、可視光通過バンドパスフィルタを用いる必要がある。また、撮像素子の感度特性が視感度と大きく異なる場合は、視感度補正フィルタを用いることもできる。
【0066】
ここで、可視光と不可視光のフィルタの厚さを同一にすると、図6のように、不可視光撮像時と可視光撮像時で結像面の位置が異なってしまう。不可視光撮像用フィルタ使用時のフランジバック(レンズの鏡筒終端から結像面までの距離、FBと略称する)104が可視光撮像用フィルタ使用時のフランジバック105より短い。フィルタの厚さが同一の場合には、図6に示すように撮像面の位置を物理的に異ならせる必要がある。しかし、物理的に撮像部4の位置を移動するには、機構が大がかりになり、また精度を低下させるので望ましくない。
【0067】
そこで、図5に示すようにフィルタの厚さを異ならせることで、フランジバック長の異なりを吸収する。例えば、不可視光撮像用フィルタを用いた際のフランジバックをFi,フィルタの屈折率をni,フィルタの厚さをWiとし、可視光撮像時のフランジバックをFd,フィルタの屈折率をnd,フィルタの厚さをWdとすると、
Fd+(1+1/nd)・Wd=Fi+(1+1/ni)・Wi
という関係式が成り立つ。そこで、この関係を満たすように、フィルタの厚さWi,Wdを決定するとよい。
【0068】
また、単に、不可視光撮像用フィルタ101の厚さを薄くし、不可視光撮像時のフランジバック104と可視光撮像時のフランジバック105を仮想的に一致させる方法もある。不可視光撮像用フィルタ101の厚さはそのままで、可視光撮像用フィルタ102の厚さを厚くする方法では、レンズ3と撮像部4との距離が大きくなり、装置が小型化しにくくなる。装置を小型するためには、レンズ3と撮像部4との距離を大きくしたくないために、不可視光撮像用フィルタ101の厚さが薄くなり、製作過程で破損が発生し、歩留まりを大きく低減させる要因となる。また、フィルタの種類によっては、薄くするとその性能が劣化する。
【0069】
このような不具合を解決するために、図5に示すように、不可視光撮像用フィルタ101の厚さはそのままで、可視光撮像用フィルタ102の厚さを厚くするために、フィルタはめ込み部103にはめ込まれている部分の厚さは、不可視光撮像用フィルタ101の厚さと同一にし、それ以外の部分を厚くしている。このため、レンズ3と撮像部4との距離を大きくすることなく、かつ不可視光撮像用フィルタ101の厚さを薄くすることなく、可視光撮像用フィルタ102の厚さを厚くすることができ、仮想的に不可視光撮像用フィルタフランジバック104と可視光撮像用フィルタフランジバック105を一致させることができる。
【0070】
以上のように撮像して得られた画像を図7に示す。図7(a)が、可視光撮像の画像、図7(b)が不可視光撮像の画像である。可視光撮像では通常の画像が得られ、これに対し、図7(b)は、手の部分のみが背景から切り出された画像が撮像できていることがわかる。
【0071】
さらに、製品工程においては、レンズのピント合わせをおこなう必要がある。不可視光のピント合わせを行うには、従来の方法では、LED1を発光させておこなう必要がある。が、本発明により、可視光でピント合わせを行えば、同一のピントで不可視光も撮像ができる。このため、検査冶具は、LED1と不可視光撮像用フィルタ101を除いた構成で行うことができる。
【0072】
【発明の効果】
上述のように本発明によれば、撮像モジュールを大型にすることなく、またフィルタの破損ない厚さで、異なるフィルタ厚を実現し、仮想的にフランジバックを可視光と不可視光とで同一にして、可視光と不可視光の切り替えを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用する、発光部と撮像部を持った入力装置の構成
【図2】本発明の概観を示す正面図と側面図
【図3】本発明の概観を示す真上からみた図
【図4】可視光と不可視光の切り替え部の正面図
【図5】可視光と不可視光のフィルタの厚さの違いを示す図
【図6】可視光と不可視光のフランジバックの長さの違いを示す図
【図7】可視光と不可視光での撮像結果を示す図
【符号の説明】
1…発光部
2…対象物体
3…受光光学系(レンズ)
4…反射光画像検出部
5…アンプ
6…A/D変換器
7…メモリ
8…I/F回路
9…制御部
10…切り替え部
101…不可視光撮像用フィルタ
102…可視光撮像用フィルタ
103…フィルタはめ込み部
Claims (4)
- 不可視光を撮像するための第1のフィルタと、この第1のフィルタと異なる厚さを有する可視光を撮像するための第2のフィルタと、これら2つのフィルタを切り替えるスイッチと、このスイッチと連動して可動し第1のフィルタと第2のフィルタとの切り替えを行えるように第1のフィルタと第2のフィルタとを配置したフィルタはめ込み部とから構成された切り替え手段と、
不可視光あるいは可視光を集光するためのレンズと、
このレンズにより集光され、前記切り替え手段によって切り替えられた第1のフィルタを通過した不可視光あるいは第2のフィルタを通過した可視光を撮像する撮像素子とを具備し、
前記第1のフィルタと前記第2のフィルタの異なる厚さに応じて、少なくとも一方のフィルタに関し、フィルタはめ込み部へのはめ込み部とそれ以外の部位との厚みとを異ならせることを特徴とする撮像モジュール。 - アレイ状に配列された受光セルが受光した電荷の差分をとるエリアイメージセンサと、
パルス信号もしくは変調信号を発生させるタイミング信号生成手段と、
前記エリアイメージセンサの受光セルの受光を個別に制御するための制御信号を、前記タイミング信号生成手段からの信号に基づいて生成する制御信号生成手段と、
前記タイミング信号生成手段からの信号に基づいて強度変化する光を発する発光手段と、
この発光手段の発光する光の反射光を撮像するための第1のフィルタと、この第1のフィルタと異なる厚さの可視光を撮像するための第2のフィルタと、これら2つのフィルタを切り替えるスイッチと、このスイッチと連動して可動し第1のフィルタと第2のフィルタとの切り替えを行えるように第1のフィルタと第2のフィルタとを配置したフィルタはめ込み部とから構成された切り替え手段と、
不可視光あるいは可視光を集光するためのレンズと、
このレンズにより集光され、前記切り替え手段によって切り替えられた第1のフィルタを通過した不可視光あるいは第2のフィルタを通過した可視光を撮像する撮像素子とを具備し、
前記第1のフィルタと前記第2のフィルタの異なる厚さに応じて、少なくとも一方のフィルタに関し、フィルタはめ込み部へのはめ込み部とそれ以外の部位との厚みとを異ならせることを特徴とする撮像モジュール。 - 可視光域における前記レンズの鏡筒終端から結像面までの距離と不可視光域における前記レンズの鏡筒終端から結像面までの距離の差を吸収するよう、第1のフィルタと第2のフィルタの厚さを異ならせたことを特徴とする特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の撮像モジュール。
- 第2のフィルタを用いて可視光を撮像するときには、発光手段が発光しないように前記タイミング信号生成手段で生成する信号を制御することを特徴とする請求項2に記載の撮像モジュール。
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