JP3589477B2 - 新規鉄4核錯体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、新規鉄4核錯体及びその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、鉄の錯体としては種々のものが知られているが、鉄4核錯体としては、僅かに下記式(4)
Na6 [Fe4 (O)2 (CO3 )2 (dpta)2 ]・〜20H2 O…(4)
で表されるものが知られている程度である(D.L.Jameson 他, J.Am.Chem.Soc.,109,740−746(1987))。
また鉄4核錯体については、その化学構造も未だ不明である点が多い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、3価の鉄の水溶性塩類と、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸とを水性媒体中で混合し、これに1価または2価の金属カチオンと窒素、硫黄、炭素或いはリンのオキシ酸のアニオン性の配位子を含む水溶性塩類を酸性乃至弱アルカリ性の条件下で反応させる時には、特異な配位子を含有する新規な鉄4核錯体が得られることを見いだした。
【0004】
本発明者らは、更に上記鉄4核錯体を加水分解するときには、ノニオン性配位子を含有する鉄4核錯体が得られることを見いだした。
【0005】
即ち、本発明の目的は、新規な錯体構造を有し、水の電気分解における水素の発生向上剤、イオン交換体及びその他の材料として有用な鉄4核錯体及びその製造方法を提供するにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記一般式(1)
Mp Rq [Fe4 (O)2 (A)r (dpta)2 ]・kX…(1)
式中、M及びRは1価または2価のカチオンであり、
Aは中性または窒素、硫黄或いはリンのオキシ酸のアニオン性の配位子であり、dptaは1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸の残基であり、Xは結晶溶媒であり、
p,q及びrは、式 mp+nq−ra=2を満足する数であって、ここで、mはカチオンMの価数であり、nはカチオンRの価数であり、aはアニオン性配位子の価数(絶対値)であり、p及びrはそれぞれ1以上で6以下の数、qは4以下の数であり、qはAが中性配位子の場合ゼロであるものとし、
kは30以下の数である、
で表される新規鉄4核錯体が提供される。
【0007】
本発明によればまた、3価の鉄の水溶性塩類と、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸とを水性媒体中で混合し、これに1価または2価の金属カチオンと窒素、硫黄、炭素或いはリンのオキシ酸のアニオン性の配位子を含む水溶性塩類を酸性乃至弱アルカリ性の条件下で反応させ、必要により濃縮後、水混和性極性有機溶媒を添加して、結晶を析出させることを特徴とする鉄4核錯体の製造方法が提供される。
【0008】
上記の方法で得られた鉄4核錯体を、ノニオン性配位子の存在下にアルカリ、水或いは酸で加水分解することにより、ノニオン性配位子を含む鉄4核錯体を製造することができる。
【0009】
本発明によれば更に、3価の鉄の水溶性塩類と、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸とを水性媒体中で混合し、これをアルカリと反応させ、必要により濃縮後、水混和性極性有機溶媒を添加して、結晶を析出させることを特徴とする水を配位子として含む鉄4核錯体の製造方法が提供される。
【0010】
【作用】
本発明による典型的な鉄4核錯体、即ち、下記式(2)
Na2 (H5 O2 )2 [Fe4 (O)2 (NO2 )2 (dpta)2 ]・kX…(2)
で表される化合物のオルテップ(ORTEP)図を図1に示す。また、鉄4骨格のORTEP図を図2に、また鉄イオン周りの歪んだ6配位八面体構造のORTEP図を図3に示す。
【0011】
この図から明らかなとおり、この化合物は、4個の鉄イオンが、オキソ、アルコキソ、及びオキシ酸のアニオン基(図1の場合ニトロ基)で混合架橋された鉄(III) 4核錯体であることが明らかである。
【0012】
鉄(III) イオン周りは、歪んだ6配位八面体構造で、dptaの解離したヒドロキソ基が2個の鉄を架橋し、更にこの2核ユニットをオキソ基とM−O−N−O−M’(M=M’=Fe)の珍しい架橋構造のニトロ基が配位して4核構造を保持している。
【0013】
図4の反応スキームに示すとおり、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸は、3価の鉄イオンと反応して、オクタデンテートリガンドを形成し、これに亜硝酸塩が反応して、本発明の鉄4核錯体となる。
【0014】
ニトロ基の金属M(M=Fe)への配位を考えると、図5に示すとおり、I、II、III 、IV、V及びIVの6個の場合があり得るのであるが、本発明の鉄4核錯体では、これらの内VIの配位をとるのであって、これは真に意外のことであった。
【0015】
前記一般式(1)において、カチオンMはアルカリ金属カチオンであるのが一般的であるが、反応物(または配位子)であるオクタデンテートリガンドに作用させる塩類として、他の1価または2価のカチオンの塩類を用いればこのカチオン類をカチオンMとして組み込みうることは当業者に自明であろう。また、組み込むアニオン性配位子Aも亜硝酸根に限定されず、オクタデンテートリガンドがアニオンによる架橋構造を生じやすいことから、これに作用させる塩類として、他の窒素のオキシ酸の塩や、炭素のオキシ酸、硫黄のオキシ酸の塩或いはリンのオキシ酸の塩を用いればこのアニオン類をアニオンAとして組み込みうることも当業者には自明であろう。
【0016】
酸性条件で析出させたとき、生じる結晶のカチオンRは、式(2)に示すとおり、オキソニウムイオンであるのが一般的である。しかしながら、このオキソニウムイオンは当然イオン交換性であり、結晶析出に際して、他のカチオンを存在させれば、このカチオンを一般式(1)のカチオンRとして組み込むことができる。
【0017】
本発明の他の態様では、一般式(1)において、配位子Aとしてノニオン性の配位子Aを組み込むことができる。即ち、式(2)の鉄4核錯体を水に溶解して加水分解させると、式(3)
Na2 [Fe4 (O)2 (H2 O)4 (dpta)2 ]・kX…(3)
で表される鉄4核錯体が生成する。
この加水分解に際して、アルコール類等のノニオン性配位子を存在させることにより、ノニオン性配位子を組み込むことができる。
【0018】
本発明の鉄4核錯体は水溶性であり、種々の有用性を有する。例えば、この鉄4核錯体は水の加水分解において、水素の還元電位を低下させる一種の減極剤として有用である。
【0019】
図6及び図7は、0.1モルの硫酸ナトリウム水溶液(pH 5.90)及びこの水溶液に本発明の鉄4核錯体(式(3)のもの)を添加した溶液(pH 7.72)について電気分解を行い、陰極への印加電圧(V VS S.C.E.、横軸)と電流(A、縦軸)との関係をプロットしたものである。
図8及び図9は、溶液のpHの影響を見るために、0.1モルの硫酸ナトリウム水溶液に0.1モル苛性ソーダを配合してpHを9.01とした溶液、及び硫酸ナトリウムに本発明の鉄4核錯体を添加してpH 8.08とした溶液について、同様の電気分解を行ったサイクリックボルタメトリーの結果を示したものであり、陰極への印加電圧(V、VS S.C.E.、横軸)と電流(A、縦軸)との関係をプロットしたものである。
【0020】
一般に、電気分解の場合、電圧が分解電圧に達するまでは流れる電流は殆どゼロであり、電圧が分解電圧を越えてから電流が上昇し、電気分解が行われるようになるものであり、硫酸ナトリウム溶液について白金電極をもちいた場合の分解電圧はおおよそ1.2V程度であるが、図7及び図9の結果によると、本発明の鉄4核錯体を添加した場合、印加電圧がゼロを少し超えたあたりから、電流が著しく増加しており、水の電解電圧を低下させて水素の発生を容易にできるという予想外の効果が明らかである。
【0021】
本発明の鉄4核錯体はまた、鉄を含有する水溶性の化合物であるから、鉄剤や種々の磁性材料の中間体として有用であり、またカチオン類に対するイオン交換体として有用である。
【0022】
本発明の鉄4核錯体を合成する反応では、窒素の酸化物(NOx)及び硫黄の酸化物(SOx)の分子内への固定と、アルカリによる分解(溶液としての放出)及び再生とが同時に行われるので、この鉄4核錯体は、窒素の酸化物(NOx)及び硫黄の酸化物(SOx)の同時吸着剤としても有用である。
【0023】
【発明の好適態様】
本発明では、キレート化剤として、種々のアミノ酸類の中でも、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−N,N,N’,N’−四酢酸を使用する。このものは、下記式(4)
で表される構造を有しており、本発明の配位構造を形成するものである。
【0024】
3価の鉄塩としては、水溶性の鉄塩(III) であれば任意のものが使用される。一般には、硝酸第二鉄、塩化第二鉄、臭化第二鉄、アンモニウム鉄みょうばん等が使用されるが、硝酸第二鉄が好適なものである。
【0025】
鉄塩(III) と1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸との反応は、前記式(1)の化学量論的量比、即ち2:1のモル比で進行する。勿論、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸基準の量比を高める目的で鉄塩(III) を過剰に使用することは許容できる。
この反応は、水性媒体中で、一般に常温乃至100℃、特に40乃至80℃の温度で行うことができる。反応時間は、温度によっても相違するが、一般に30分乃至10時間程度が適当である。
【0026】
次いでこの反応混合物に、1価または2価の金属カチオンと窒素、硫黄或いはリンのオキシ酸のアニオン性の配位子を含む水溶性塩類を酸性条件下で反応させる。
【0027】
1価のカチオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属、銅、亜鉛等が挙げられる。窒素のオキシ酸としては、硝酸、亜硝酸等が、硫黄のオキシ酸としては、硫酸、亜硫酸、次亜硫酸、二硫酸(ピロ硫酸)等が、炭素のオキシ酸としては炭酸、シュウ酸が、またリンのオキシ酸としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸等が挙げられる。
【0028】
後段の反応に使用する塩中の酸根は、用いた鉄塩(III)中に酸根として含まれる酸(A)に比して、電離度の小さい酸、即ち酸強度の小さい酸(B)の酸根であることが好ましく、例えば、用いた鉄塩(III) が硝酸塩である場合には、亜硝酸塩や亜硫酸塩、亜リン酸塩等を用いるのがよい。カチオンはアルカリ金属であることが好ましい。
【0029】
後段の反応は、全段の反応と同じ温度条件下に、化学量論的量以上の上記塩を添加して行うことができる。反応は、酸性条件下に行うのがよく、一般に反応系のpHは組み込むアニオン配位子の種類によっても相違するが、例えば亜硝酸アニオンの場合3乃至5の範囲、炭酸アニオンの場合8乃至10の範囲内にあるのが望ましい。
【0030】
反応後の溶液を、必要により濃縮し、これに水混和性極性溶媒を添加して、鉄4核錯体を析出させる。水混和性極性溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒が適しているが、鉄4核錯体を選択的に析出しうるものであれば、他の水混和性極性溶媒も使用しうる。
【0031】
本発明による鉄4核錯体は、再結晶法等のそれ自体公知の精製法で生成することができ、また、後述する例に示すとおり、水−DMF混合溶液を使用することにより、単結晶の形で得ることもできる。
【0032】
上記の方法で得られた鉄4核錯体を、ノニオン性配位子の存在下に加水分解することにより、ノニオン性配位子を含む鉄4核錯体を製造することができ、この加水分解反応を、水中で行えば、一般式(3)の鉄4核錯体が合成される。
【0033】
加水分解反応は、水に溶解するのみでも進行し、必要によりアルカリや酸を用いて行うことができる。アルカリとしては、炭酸ナトリウムが好適に使用されるが、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いることもできる。また、酸としては、塩酸、硝酸、硫酸等を使用できる。生成溶液の濃縮や非溶媒添加による鉄4核錯体の析出は、前の方法と同様である。
【0034】
本発明による鉄4核錯体は、前記一般式(1)で示される分子構造を有する。その化学構造の詳細は、既に指摘したとおりであり、また詳細な結晶構造は、後述する実施例に示すとおりである。
【0035】
図10は、本発明の式(2)のニトロ基配位鉄4核錯体(A)、dpta配位子(B)及び亜硝酸ナトリウム(C)の赤外吸収スペクトルであるが、この鉄4核錯体は、原料のIRスペクトルとは全く異なったスペクトルを示すことが明らかである。
【0036】
式(3)の水配位鉄4核錯体に亜硝酸ナトリウムを作用させると、式(2)の鉄4核錯体が復元する。図11は、本発明の式(2)のニトロ基配位鉄4核錯体(A)、水配位鉄4核錯体(B)及び水配位鉄4核錯体に亜硝酸ナトリウムを再び作用させたもの(C)の赤外吸収スペクトルであるが、水配位型の鉄4核錯体は大部分、ニトロ基配位型に戻っていることが明らかである。
【0037】
本発明の鉄4核錯体は、緑色の結晶である。図12は、式(2)の鉄4核錯体の可視部吸収スペクトルである。
【0038】
【実施例】
本発明の実施例を次に示す。
【0039】
実施例1
[合成法]
硝酸鉄(III) の水溶液に、H2 dpta(1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸)を加え、60℃で2時間攪拌した。黄褐色の反応液を同じ温度に保ちながら、亜硝酸ナトリウムを徐々に添加した。反応液は、1M硝酸によってpH4.0以下に調整した。減圧濃縮後、DMF(ジメチルホルムアミド)を加えて緑色の化合物を鉄に対して約70%の収率で得た。
I.R.:1395,945,930,750,685cm−1.図10A。
【0040】
[結晶解析]
測定・解析には、緑色の微小で偏平な単結晶を水−DMF混合溶液から合成した。単斜晶系、空間群P21 /mの結晶で、格子定数はa=10.885(2),b=20.354(6),c=11.736(1),オングストローム,β=100.93(1)゜であった。
また、dx=1.55,dm=1.54であった。測定はAFC5R,CuKα線を用い、重原子法によって解析した。構造の精密化には Full Matrix 最小二乗法を用いた。全計算は、TEXAN によって実行した。水素原子を含まないR=8.6%の段階での錯イオンの ORTEP 図を図1に示した。
【0041】
鉄(III) イオン周りは歪んだ6配位八面体構造で、dhpta の解離したヒドロキソ基が2つの鉄を架橋し、さらにその2核ユニットをオキソ基とM−O−N−O−M’(M=M’=Fe)の珍しい架橋構造のニトロ基が配位して4核構造を保持していることが判明した。
【0042】
実施例2
実施例1で製造した鉄4核錯体を水中に溶解し、液中のpHが10.5になるように炭酸ソーダを添加して、褐色の溶液を製造した。この溶液にDMFを添加し、緑色の化合物を合成した。
赤外線吸収スペクトル: 図11Bに示す。
【0043】
この結晶は、三斜晶系、空間群P1− の結晶で、格子定数はa=11.588, b=12.876,c=11.309,オングストローム,α=95.78゜、β=116.33゜、γ= 77.81であった。また、V=1478.1(オングストローム−3),Z=1、dm=1.826であった。
【0044】
実施例3
硝酸鉄(III) の水溶液に、H5 dpta(1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸)を加え、60℃で2時間攪拌した。この溶液に、7乃至10モル倍の炭酸ソーダを添加した。褐色の溶液を減圧濃縮後、DMF(ジメチルホルムアミド)を加えて、実施例2と同じ組成及び結晶の緑色の化合物を得た。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、3価の鉄の水溶性塩類と、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸とを水性媒体中で混合し、これに1価または2価の金属カチオンと窒素、硫黄或いはリンのオキシ酸のアニオン性の配位子を含む水溶性塩類を酸性条件下で反応させることにより、特異な配位子を含有する新規な鉄4核錯体が得られる。また上記鉄4核錯体を加水分解するときには、水等のノニオン性配位子を含有する鉄4核錯体が得られる。
【0046】
この新規な鉄4核錯体は、水の電気分解における水素の発生向上剤、イオン交換体及びその他の材料として有用であり、また窒素酸化物或いは更に硫黄酸化物等を捕集する可逆的吸着剤としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による式(2)の化合物のオルテップ(ORTEP)図である。
【図2】式(2)の化合物における鉄4骨格を示すオルテップ図である。
【図3】式(2)の化合物における鉄イオン周りの歪んだ6配位八面体構造を示すオルテップ図である。
【図4】1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸は、3価の鉄イオンと反応して、オクタデンテートリガンドを形成する反応スキームを示す説明図である。
【図5】ニトロ基の金属M(M=Fe)への配位の仕方を示す説明図である。
【図6】0.1モルの硫酸ナトリウム水溶液(pH 5.90)について電気分解を行い、陰極への印加電圧(V VS S.C.E.、横軸)と電流(A、縦軸)との関係をプロットしたもサイクリックボルタメトリーのグラフである。
【図7】0.1モルの硫酸ナトリウム水溶液に本発明の鉄4核錯体(式(3)のもの)を添加した溶液(pH 7.72)について電気分解を行った同様のサイクリックボルタメトリーのグラフである。
【図8】溶液のpHの影響を見るために、0.1モルの硫酸ナトリウム水溶液に苛性ソーダを配合してpHを9.01とした溶液について電気分解を行った同様のサイクリックボルタメトリーのグラフである。
【図9】硫酸ナトリウムに本発明の鉄4核錯体を添加してpH 8.08とした溶液について、同様の電気分解を行ったサイクリックボルタメトリーの結果を示したグラフである。
【図10】本発明の式(2)のニトロ基配位鉄4核錯体(A)、dpta配位子(B)及び亜硝酸ナトリウム(C)の赤外吸収スペクトルである。
【図11】本発明の式(2)のニトロ基配位鉄4核錯体(A)、水配位鉄4核錯体(B)及び水配位鉄4核錯体に亜硝酸ナトリウムを再び作用させたもの(C)の赤外吸収スペクトルである。
【図12】式(2)の鉄4核錯体の可視部吸収スペクトルである。
【産業上の利用分野】
本発明は、新規鉄4核錯体及びその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、鉄の錯体としては種々のものが知られているが、鉄4核錯体としては、僅かに下記式(4)
Na6 [Fe4 (O)2 (CO3 )2 (dpta)2 ]・〜20H2 O…(4)
で表されるものが知られている程度である(D.L.Jameson 他, J.Am.Chem.Soc.,109,740−746(1987))。
また鉄4核錯体については、その化学構造も未だ不明である点が多い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、3価の鉄の水溶性塩類と、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸とを水性媒体中で混合し、これに1価または2価の金属カチオンと窒素、硫黄、炭素或いはリンのオキシ酸のアニオン性の配位子を含む水溶性塩類を酸性乃至弱アルカリ性の条件下で反応させる時には、特異な配位子を含有する新規な鉄4核錯体が得られることを見いだした。
【0004】
本発明者らは、更に上記鉄4核錯体を加水分解するときには、ノニオン性配位子を含有する鉄4核錯体が得られることを見いだした。
【0005】
即ち、本発明の目的は、新規な錯体構造を有し、水の電気分解における水素の発生向上剤、イオン交換体及びその他の材料として有用な鉄4核錯体及びその製造方法を提供するにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記一般式(1)
Mp Rq [Fe4 (O)2 (A)r (dpta)2 ]・kX…(1)
式中、M及びRは1価または2価のカチオンであり、
Aは中性または窒素、硫黄或いはリンのオキシ酸のアニオン性の配位子であり、dptaは1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸の残基であり、Xは結晶溶媒であり、
p,q及びrは、式 mp+nq−ra=2を満足する数であって、ここで、mはカチオンMの価数であり、nはカチオンRの価数であり、aはアニオン性配位子の価数(絶対値)であり、p及びrはそれぞれ1以上で6以下の数、qは4以下の数であり、qはAが中性配位子の場合ゼロであるものとし、
kは30以下の数である、
で表される新規鉄4核錯体が提供される。
【0007】
本発明によればまた、3価の鉄の水溶性塩類と、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸とを水性媒体中で混合し、これに1価または2価の金属カチオンと窒素、硫黄、炭素或いはリンのオキシ酸のアニオン性の配位子を含む水溶性塩類を酸性乃至弱アルカリ性の条件下で反応させ、必要により濃縮後、水混和性極性有機溶媒を添加して、結晶を析出させることを特徴とする鉄4核錯体の製造方法が提供される。
【0008】
上記の方法で得られた鉄4核錯体を、ノニオン性配位子の存在下にアルカリ、水或いは酸で加水分解することにより、ノニオン性配位子を含む鉄4核錯体を製造することができる。
【0009】
本発明によれば更に、3価の鉄の水溶性塩類と、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸とを水性媒体中で混合し、これをアルカリと反応させ、必要により濃縮後、水混和性極性有機溶媒を添加して、結晶を析出させることを特徴とする水を配位子として含む鉄4核錯体の製造方法が提供される。
【0010】
【作用】
本発明による典型的な鉄4核錯体、即ち、下記式(2)
Na2 (H5 O2 )2 [Fe4 (O)2 (NO2 )2 (dpta)2 ]・kX…(2)
で表される化合物のオルテップ(ORTEP)図を図1に示す。また、鉄4骨格のORTEP図を図2に、また鉄イオン周りの歪んだ6配位八面体構造のORTEP図を図3に示す。
【0011】
この図から明らかなとおり、この化合物は、4個の鉄イオンが、オキソ、アルコキソ、及びオキシ酸のアニオン基(図1の場合ニトロ基)で混合架橋された鉄(III) 4核錯体であることが明らかである。
【0012】
鉄(III) イオン周りは、歪んだ6配位八面体構造で、dptaの解離したヒドロキソ基が2個の鉄を架橋し、更にこの2核ユニットをオキソ基とM−O−N−O−M’(M=M’=Fe)の珍しい架橋構造のニトロ基が配位して4核構造を保持している。
【0013】
図4の反応スキームに示すとおり、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸は、3価の鉄イオンと反応して、オクタデンテートリガンドを形成し、これに亜硝酸塩が反応して、本発明の鉄4核錯体となる。
【0014】
ニトロ基の金属M(M=Fe)への配位を考えると、図5に示すとおり、I、II、III 、IV、V及びIVの6個の場合があり得るのであるが、本発明の鉄4核錯体では、これらの内VIの配位をとるのであって、これは真に意外のことであった。
【0015】
前記一般式(1)において、カチオンMはアルカリ金属カチオンであるのが一般的であるが、反応物(または配位子)であるオクタデンテートリガンドに作用させる塩類として、他の1価または2価のカチオンの塩類を用いればこのカチオン類をカチオンMとして組み込みうることは当業者に自明であろう。また、組み込むアニオン性配位子Aも亜硝酸根に限定されず、オクタデンテートリガンドがアニオンによる架橋構造を生じやすいことから、これに作用させる塩類として、他の窒素のオキシ酸の塩や、炭素のオキシ酸、硫黄のオキシ酸の塩或いはリンのオキシ酸の塩を用いればこのアニオン類をアニオンAとして組み込みうることも当業者には自明であろう。
【0016】
酸性条件で析出させたとき、生じる結晶のカチオンRは、式(2)に示すとおり、オキソニウムイオンであるのが一般的である。しかしながら、このオキソニウムイオンは当然イオン交換性であり、結晶析出に際して、他のカチオンを存在させれば、このカチオンを一般式(1)のカチオンRとして組み込むことができる。
【0017】
本発明の他の態様では、一般式(1)において、配位子Aとしてノニオン性の配位子Aを組み込むことができる。即ち、式(2)の鉄4核錯体を水に溶解して加水分解させると、式(3)
Na2 [Fe4 (O)2 (H2 O)4 (dpta)2 ]・kX…(3)
で表される鉄4核錯体が生成する。
この加水分解に際して、アルコール類等のノニオン性配位子を存在させることにより、ノニオン性配位子を組み込むことができる。
【0018】
本発明の鉄4核錯体は水溶性であり、種々の有用性を有する。例えば、この鉄4核錯体は水の加水分解において、水素の還元電位を低下させる一種の減極剤として有用である。
【0019】
図6及び図7は、0.1モルの硫酸ナトリウム水溶液(pH 5.90)及びこの水溶液に本発明の鉄4核錯体(式(3)のもの)を添加した溶液(pH 7.72)について電気分解を行い、陰極への印加電圧(V VS S.C.E.、横軸)と電流(A、縦軸)との関係をプロットしたものである。
図8及び図9は、溶液のpHの影響を見るために、0.1モルの硫酸ナトリウム水溶液に0.1モル苛性ソーダを配合してpHを9.01とした溶液、及び硫酸ナトリウムに本発明の鉄4核錯体を添加してpH 8.08とした溶液について、同様の電気分解を行ったサイクリックボルタメトリーの結果を示したものであり、陰極への印加電圧(V、VS S.C.E.、横軸)と電流(A、縦軸)との関係をプロットしたものである。
【0020】
一般に、電気分解の場合、電圧が分解電圧に達するまでは流れる電流は殆どゼロであり、電圧が分解電圧を越えてから電流が上昇し、電気分解が行われるようになるものであり、硫酸ナトリウム溶液について白金電極をもちいた場合の分解電圧はおおよそ1.2V程度であるが、図7及び図9の結果によると、本発明の鉄4核錯体を添加した場合、印加電圧がゼロを少し超えたあたりから、電流が著しく増加しており、水の電解電圧を低下させて水素の発生を容易にできるという予想外の効果が明らかである。
【0021】
本発明の鉄4核錯体はまた、鉄を含有する水溶性の化合物であるから、鉄剤や種々の磁性材料の中間体として有用であり、またカチオン類に対するイオン交換体として有用である。
【0022】
本発明の鉄4核錯体を合成する反応では、窒素の酸化物(NOx)及び硫黄の酸化物(SOx)の分子内への固定と、アルカリによる分解(溶液としての放出)及び再生とが同時に行われるので、この鉄4核錯体は、窒素の酸化物(NOx)及び硫黄の酸化物(SOx)の同時吸着剤としても有用である。
【0023】
【発明の好適態様】
本発明では、キレート化剤として、種々のアミノ酸類の中でも、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−N,N,N’,N’−四酢酸を使用する。このものは、下記式(4)
で表される構造を有しており、本発明の配位構造を形成するものである。
【0024】
3価の鉄塩としては、水溶性の鉄塩(III) であれば任意のものが使用される。一般には、硝酸第二鉄、塩化第二鉄、臭化第二鉄、アンモニウム鉄みょうばん等が使用されるが、硝酸第二鉄が好適なものである。
【0025】
鉄塩(III) と1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸との反応は、前記式(1)の化学量論的量比、即ち2:1のモル比で進行する。勿論、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸基準の量比を高める目的で鉄塩(III) を過剰に使用することは許容できる。
この反応は、水性媒体中で、一般に常温乃至100℃、特に40乃至80℃の温度で行うことができる。反応時間は、温度によっても相違するが、一般に30分乃至10時間程度が適当である。
【0026】
次いでこの反応混合物に、1価または2価の金属カチオンと窒素、硫黄或いはリンのオキシ酸のアニオン性の配位子を含む水溶性塩類を酸性条件下で反応させる。
【0027】
1価のカチオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属、銅、亜鉛等が挙げられる。窒素のオキシ酸としては、硝酸、亜硝酸等が、硫黄のオキシ酸としては、硫酸、亜硫酸、次亜硫酸、二硫酸(ピロ硫酸)等が、炭素のオキシ酸としては炭酸、シュウ酸が、またリンのオキシ酸としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸等が挙げられる。
【0028】
後段の反応に使用する塩中の酸根は、用いた鉄塩(III)中に酸根として含まれる酸(A)に比して、電離度の小さい酸、即ち酸強度の小さい酸(B)の酸根であることが好ましく、例えば、用いた鉄塩(III) が硝酸塩である場合には、亜硝酸塩や亜硫酸塩、亜リン酸塩等を用いるのがよい。カチオンはアルカリ金属であることが好ましい。
【0029】
後段の反応は、全段の反応と同じ温度条件下に、化学量論的量以上の上記塩を添加して行うことができる。反応は、酸性条件下に行うのがよく、一般に反応系のpHは組み込むアニオン配位子の種類によっても相違するが、例えば亜硝酸アニオンの場合3乃至5の範囲、炭酸アニオンの場合8乃至10の範囲内にあるのが望ましい。
【0030】
反応後の溶液を、必要により濃縮し、これに水混和性極性溶媒を添加して、鉄4核錯体を析出させる。水混和性極性溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒が適しているが、鉄4核錯体を選択的に析出しうるものであれば、他の水混和性極性溶媒も使用しうる。
【0031】
本発明による鉄4核錯体は、再結晶法等のそれ自体公知の精製法で生成することができ、また、後述する例に示すとおり、水−DMF混合溶液を使用することにより、単結晶の形で得ることもできる。
【0032】
上記の方法で得られた鉄4核錯体を、ノニオン性配位子の存在下に加水分解することにより、ノニオン性配位子を含む鉄4核錯体を製造することができ、この加水分解反応を、水中で行えば、一般式(3)の鉄4核錯体が合成される。
【0033】
加水分解反応は、水に溶解するのみでも進行し、必要によりアルカリや酸を用いて行うことができる。アルカリとしては、炭酸ナトリウムが好適に使用されるが、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いることもできる。また、酸としては、塩酸、硝酸、硫酸等を使用できる。生成溶液の濃縮や非溶媒添加による鉄4核錯体の析出は、前の方法と同様である。
【0034】
本発明による鉄4核錯体は、前記一般式(1)で示される分子構造を有する。その化学構造の詳細は、既に指摘したとおりであり、また詳細な結晶構造は、後述する実施例に示すとおりである。
【0035】
図10は、本発明の式(2)のニトロ基配位鉄4核錯体(A)、dpta配位子(B)及び亜硝酸ナトリウム(C)の赤外吸収スペクトルであるが、この鉄4核錯体は、原料のIRスペクトルとは全く異なったスペクトルを示すことが明らかである。
【0036】
式(3)の水配位鉄4核錯体に亜硝酸ナトリウムを作用させると、式(2)の鉄4核錯体が復元する。図11は、本発明の式(2)のニトロ基配位鉄4核錯体(A)、水配位鉄4核錯体(B)及び水配位鉄4核錯体に亜硝酸ナトリウムを再び作用させたもの(C)の赤外吸収スペクトルであるが、水配位型の鉄4核錯体は大部分、ニトロ基配位型に戻っていることが明らかである。
【0037】
本発明の鉄4核錯体は、緑色の結晶である。図12は、式(2)の鉄4核錯体の可視部吸収スペクトルである。
【0038】
【実施例】
本発明の実施例を次に示す。
【0039】
実施例1
[合成法]
硝酸鉄(III) の水溶液に、H2 dpta(1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸)を加え、60℃で2時間攪拌した。黄褐色の反応液を同じ温度に保ちながら、亜硝酸ナトリウムを徐々に添加した。反応液は、1M硝酸によってpH4.0以下に調整した。減圧濃縮後、DMF(ジメチルホルムアミド)を加えて緑色の化合物を鉄に対して約70%の収率で得た。
I.R.:1395,945,930,750,685cm−1.図10A。
【0040】
[結晶解析]
測定・解析には、緑色の微小で偏平な単結晶を水−DMF混合溶液から合成した。単斜晶系、空間群P21 /mの結晶で、格子定数はa=10.885(2),b=20.354(6),c=11.736(1),オングストローム,β=100.93(1)゜であった。
また、dx=1.55,dm=1.54であった。測定はAFC5R,CuKα線を用い、重原子法によって解析した。構造の精密化には Full Matrix 最小二乗法を用いた。全計算は、TEXAN によって実行した。水素原子を含まないR=8.6%の段階での錯イオンの ORTEP 図を図1に示した。
【0041】
鉄(III) イオン周りは歪んだ6配位八面体構造で、dhpta の解離したヒドロキソ基が2つの鉄を架橋し、さらにその2核ユニットをオキソ基とM−O−N−O−M’(M=M’=Fe)の珍しい架橋構造のニトロ基が配位して4核構造を保持していることが判明した。
【0042】
実施例2
実施例1で製造した鉄4核錯体を水中に溶解し、液中のpHが10.5になるように炭酸ソーダを添加して、褐色の溶液を製造した。この溶液にDMFを添加し、緑色の化合物を合成した。
赤外線吸収スペクトル: 図11Bに示す。
【0043】
この結晶は、三斜晶系、空間群P1− の結晶で、格子定数はa=11.588, b=12.876,c=11.309,オングストローム,α=95.78゜、β=116.33゜、γ= 77.81であった。また、V=1478.1(オングストローム−3),Z=1、dm=1.826であった。
【0044】
実施例3
硝酸鉄(III) の水溶液に、H5 dpta(1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸)を加え、60℃で2時間攪拌した。この溶液に、7乃至10モル倍の炭酸ソーダを添加した。褐色の溶液を減圧濃縮後、DMF(ジメチルホルムアミド)を加えて、実施例2と同じ組成及び結晶の緑色の化合物を得た。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、3価の鉄の水溶性塩類と、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸とを水性媒体中で混合し、これに1価または2価の金属カチオンと窒素、硫黄或いはリンのオキシ酸のアニオン性の配位子を含む水溶性塩類を酸性条件下で反応させることにより、特異な配位子を含有する新規な鉄4核錯体が得られる。また上記鉄4核錯体を加水分解するときには、水等のノニオン性配位子を含有する鉄4核錯体が得られる。
【0046】
この新規な鉄4核錯体は、水の電気分解における水素の発生向上剤、イオン交換体及びその他の材料として有用であり、また窒素酸化物或いは更に硫黄酸化物等を捕集する可逆的吸着剤としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による式(2)の化合物のオルテップ(ORTEP)図である。
【図2】式(2)の化合物における鉄4骨格を示すオルテップ図である。
【図3】式(2)の化合物における鉄イオン周りの歪んだ6配位八面体構造を示すオルテップ図である。
【図4】1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸は、3価の鉄イオンと反応して、オクタデンテートリガンドを形成する反応スキームを示す説明図である。
【図5】ニトロ基の金属M(M=Fe)への配位の仕方を示す説明図である。
【図6】0.1モルの硫酸ナトリウム水溶液(pH 5.90)について電気分解を行い、陰極への印加電圧(V VS S.C.E.、横軸)と電流(A、縦軸)との関係をプロットしたもサイクリックボルタメトリーのグラフである。
【図7】0.1モルの硫酸ナトリウム水溶液に本発明の鉄4核錯体(式(3)のもの)を添加した溶液(pH 7.72)について電気分解を行った同様のサイクリックボルタメトリーのグラフである。
【図8】溶液のpHの影響を見るために、0.1モルの硫酸ナトリウム水溶液に苛性ソーダを配合してpHを9.01とした溶液について電気分解を行った同様のサイクリックボルタメトリーのグラフである。
【図9】硫酸ナトリウムに本発明の鉄4核錯体を添加してpH 8.08とした溶液について、同様の電気分解を行ったサイクリックボルタメトリーの結果を示したグラフである。
【図10】本発明の式(2)のニトロ基配位鉄4核錯体(A)、dpta配位子(B)及び亜硝酸ナトリウム(C)の赤外吸収スペクトルである。
【図11】本発明の式(2)のニトロ基配位鉄4核錯体(A)、水配位鉄4核錯体(B)及び水配位鉄4核錯体に亜硝酸ナトリウムを再び作用させたもの(C)の赤外吸収スペクトルである。
【図12】式(2)の鉄4核錯体の可視部吸収スペクトルである。
Claims (8)
- 下記一般式(1)
Mp Rq [Fe4 (O)2 (A)r (dpta)2 ]・kX…(1)
式中、M及びRは1価または2価のカチオンであり、
Aは中性または窒素、硫黄或いはリンのオキシ酸のアニオン性の配位子であり、dptaは1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸の残基であり、Xは結晶溶媒であり、
p,q及びrは、式 mp+nq−ra=2を満足する数であって、ここで、mはカチオンMの価数であり、nはカチオンRの価数であり、aはアニオン性配位子の価数(絶対値)であり、p及びrはそれぞれ1以上で6以下の数、qは4以下の数であり、qはAが中性配位子の場合ゼロであるものとし、
kは30以下の数である、
で表される鉄4核錯体。 - 式(1)中、Aが亜硝酸アニオン配位子である請求項1記載の鉄4核錯体。
- 式(1)中、Mがアルカリ金属イオンである請求項1記載の鉄4核錯体。
- 式(1)中、Rがオキソニウムイオン、アンモニウムイオン、有機カチオンまたは金属カチオンである請求項1記載の鉄4核錯体。
- 下記式(2)
Na2 (H5 O2 )2 [Fe4 (O)2 (NO2 )2 (dpta)2 ]・kX…(2)で表される請求項1記載の鉄4核錯体。 - 下記式(3)
Na2 [Fe4 (O)2 (H2 O)4 (dpta)2 ]・kX …(3)で表される請求項1記載の鉄4核錯体。 - 3価の鉄の水溶性塩類と、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸とを水性媒体中で混合し、これに1価または2価の金属カチオンと窒素、硫黄、炭素或いはリンのオキシ酸のアニオン性の配位子を含む水溶性塩類を酸性乃至弱アルカリ性の条件下で反応させ、必要により濃縮後、水混和性極性有機溶媒を添加して、結晶を析出させることを特徴とする鉄4核錯体の製造方法。
- 請求項7記載の方法で得られた鉄4核錯体を、ノニオン性配位子の存在下に加水分解することを特徴とするノニオン性配位子を含む鉄4核錯体の製造方法。
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| JP02703794A JP3589477B2 (ja) | 1994-02-24 | 1994-02-24 | 新規鉄4核錯体及びその製造方法 |
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| CN116514879B (zh) * | 2023-05-10 | 2024-08-16 | 四川轻化工大学 | 一种氯化(4,5-二(2-嘧啶甲硫基)-1,3-二硫杂环戊二烯-2-硫酮)合镍的制备及其应用 |
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1994
- 1994-02-24 JP JP02703794A patent/JP3589477B2/ja not_active Expired - Fee Related
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