JP3588670B2 - トロイダル型無段変速機の変速制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両等に用いられるトロイダル型無段変速機の変速制御装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車などの車両に採用されるトロイダル型無段変速機では、変速制御を油圧によって行っており、実際の変速比をプリセスカム及びリンクを介して変速制御弁にフィードバックするメカニカルフィードバックを備えたものが知られており、例えば、本願出願人が提案した特開平5−26317号等が知られている。
【0003】
これは、図6に示すように、パワーローラを軸支したトラニオンの軸4Aの下端には所定の傾斜のカム面を備えたプリセスカム2が固設され、プリセスカム2のカム面には、L字状のフィードバックリンク5の一端に設けた摺接部材51が当接する一方、フィードバックリンク5の他端52は、図示しない変速制御弁に連結される。なお、摺接部材51は、所定の半径Rの円形断面あるいは円弧状の断面を備える。
【0004】
フィードバックリンク5は、パワーローラの傾転角を変速制御弁へフィードバックして、実変速比を目標変速比に一致させるように、揺動軸50を軸に揺動しする。
【0005】
そして、プリセスカム2のカム面の形状は、通常変速領域のフィードバックゲインに応じた通常制御用斜面20の両側に、傾斜を大きくすることで通常制御時よりも大きなフィードバックゲインに設定された衝突防止用斜面21、21を配設して、パワーローラの傾転角が過大になった場合、フィードバックゲインを急増することで、パワーローラを支持するトラニオンがストッパに衝突するのを防止するものである。
【0006】
ここで、プリセスカム2のフィードバックゲインは、プリセスカム2の斜面の傾斜角度で表されるため、衝突防止用斜面21は通常制御用斜面20よりも角度の大きい斜面で形成されており、通常制御用斜面20と衝突防止用斜面21、21との境界は、変速比が大となるLo側には凸状の屈曲部22が形成され、また、変速比が小となるHi側には凹状の屈曲部23が形成されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例においては、緩やかな傾斜角度で形成される通常制御用斜面20のLo側に、凸状の屈曲部22を介して、傾斜角度の大きな衝突防止用斜面21を設ける場合では、図7に示すように、パワーローラのLo側への傾転に伴ってプリセスカム2も回転し、フィードバックリンク5の摺接部材51とプリセスカム2の摺接位置は、通常制御用斜面20から凸状の屈曲部22を超えて衝突防止用斜面21に入る。
【0008】
摺接部材51の当接位置が、凸状の屈曲部22から傾斜角度の大きな衝突防止用斜面21へ変位する際には、摺接部材51が半径Rの所定の円弧で形成されるため、摺接部材51の中心の軌跡は、図中一点鎖線のように、屈曲部22を超えた直後には摺接部材51の半径Rに応じて円弧となってから、衝突防止用斜面21に沿って直線的に変化する。
【0009】
トロイダル型無段変速機では、部品の変形量や同一トルク入力に対する必要油圧の違い等から、同一カムリードで比較しても、変速比のLo側の方がHi側より入力トルクに対するトルクシフト量が大きい。
【0010】
一方、走行中の傾転角ストッパへの衝突を防止するためには、通常使用傾転角の最大値、最小値をLo側、Hi側のストッパから、トルクシフト分だけ傾転角に余裕代を設ける必要があり、その余裕代は、もしカムリードが同一であれば、Lo側の方が大きくなる(同一カムリードでも、Lo側のトルクシフト量が大きいため)。
【0011】
このような条件下においては、前記従来例では、通常制御用斜面20から衝突防止用斜面21へ切り替わる凸状の屈曲部22がLo側となるように構成しているが、このときカムリードは図7に示すように、摺接部材51の半径Rに応じて徐々に増大するため、必要な傾転角の余裕代は凹状の屈曲部をLo側に設けた場合よりも大きくなる。
【0012】
逆に、Hi側では、凹状の屈曲部23が設けられているため、凸状の屈曲部を設けた場合より、必要余裕代は小さくて済むが、Hi側はLo側に比べて、同一のカムリードでのトルクシフト量が小さいことから、屈曲部形状による必要余裕代の差は、Lo側での差に比べて小さい。
【0013】
よって、トルクシフト量の大きなLo側に凸状の屈曲部22を設定していることで、Lo側+Hi側の必要余裕代(余裕傾転角)の合計が大きくなって、その結果、通常の変速制御で使用できる傾転角範囲が狭まり、変速比幅が大きく設定できないという問題があった。
【0014】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、トルクシフトに応じた必要余裕傾転角の合計を減少させて、変速比幅を拡大することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、入出力ディスクに挟持されて傾転自在なパワーローラを回転自在に支持するとともに、所定の軸まわりに回動可能かつ軸方向へ変位可能なローラ支持部材と、前記ローラ支持部材を軸方向へ駆動する油圧シリンダへの油圧を制御する変速制御弁と、前記ローラ支持部材の軸まわりの回動を軸部に設けたカムと、該カムの傾斜面に当接して応動するフィードバックリンクを介して前記変速制御弁へ伝達するフィードバック手段と、前記カムの傾斜面は、通常の変速制御で当接する所定の緩傾斜領域を形成する第1のカム面と、この第1カム面の両側にローラ支持部材の回転角が所定値または所定値近傍の値を超えた領域で、前記第1カム面に比して急傾斜の急傾斜領域を形成する第2のカム面とを有するトロイダル型無段変速機の変速制御装置において、
前記第1カム面と第2カム面とは、それぞれ屈曲部を介して接続されるとともに、変速比が大側の屈曲部を凹状に形成する一方、変速比が小側の屈曲部を凸状に形成する。
【0016】
また、第2の発明は、前記第1の発明において、前記フィードバックリンクは、所定の半径の円弧を備えてカムに摺接する摺接部材を備え、前記屈曲部のうち変速比が大側の屈曲部は、摺接部材の円弧よりも小さい半径の円弧を備える。
【0017】
また、第3の発明は、前記第1の発明において、前記カムは、溝状に形成される。
【0018】
【発明の効果】
したがって、第1カム面の両側には屈曲部を介して第2カム面が形成され、ローラ支持部材が第1カム面による通常の変速制御域を超えて回転しようとすると、傾斜の増大した第2カム面へ入るため、カム面の傾斜の増大に応動するフィードバックリンクが、変速制御弁から油圧シリンダへの油圧の変化速度を大きくして、トラニオンがストッパ等に衝突するのを防止し、迅速に第1カム面の通常変速制御域へ復帰させる。
【0019】
通常制御用の第1カム面から変速比がLo側(大側)の第2カム面へ入る場合は、第1カム面から凹状の屈曲部を超えて急傾斜の第2カム面に入る一方、第1カム面から変速比がHi側(小側)の第2カム面へ入る場合は、第1カム面から凸状の屈曲部を超えて急傾斜の第2カム面に入るため、凹状の屈曲部をLo側に配設することで、トルクシフト量の大きいLo側の必要余裕傾転角を前記従来例に比して減少しながらも、Lo側でトラニオンがストッパなどに衝突することを防止でき、凸状の屈曲部をトルクシフト量の小さいHi側に設けることで、トルクシフトに対応するHi側+Lo側の必要余裕傾転角を前記従来例に比して減少させて、通常の変速制御で使用可能な第1カム面の傾転角範囲を拡大することが可能となって、前記従来例に比して、変速比幅を拡大することが可能となる。
【0020】
また、第2の発明は、変速比が大側の屈曲部の円弧を、フィードバックリンクに設けた摺接部材の円弧の半径よりも小さく設定したため、摺接部材はカム面の形状の変化に正確に追従することができる。
【0021】
また、第3の発明は、カムを溝状に形成したため、フィードバックリンクや変速制御弁のフリクションが増大しても、摺接部材がカム面から離れてメカニカルフィードバックが不能となるのを防止することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は、トロイダル型無段変速機の変速制御装置の概略を示し、パワーローラ3をそれぞれ軸支した複数のトラニオン4(ローラ支持部材)のうちの一つの軸部4Aの下端には、軸方向変位及び軸まわり変位をフィードバックリンク5によって変速制御弁7へ伝達するためのプリセスカム2が配設される。
【0024】
このプリセスカム2の端面に設けた斜面(カム面)には、L字状のフィードバックリンク5の一端に設けた摺接部材51が摺接するとともに、フィードバックリンク5は揺動軸50を中心に揺動し、図示しない付勢手段によって摺接部材51がカム面に当接するようフィードバックリンク5は付勢される。なお、摺接部材51は、所定の半径Rの円形断面あるいは円弧状の断面を備え、また、付勢手段は、揺動軸50回りにフィードバックリンク5を付勢するねじりコイルバネやフィードバックリンク5のアーム部を付勢するスプリングなどで構成される。
【0025】
そして、フィードバックリンク5は、図中下端52で変速制御弁7と連結して、プリセスカム2の軸回り変位、すなわち、実変速比を変速制御弁7にフィードバックし、トラニオン4の軸部4Aに設けた油圧サーボシリンダ1が変速制御弁7からの油圧に応じて駆動され、図示しないアクチュエータで設定した目標変速比と実際の変速比を一致させる。
【0026】
なお、トラニオン4の上部には、ストッパ8が配設されて、トラニオン4が所定の傾転角範囲を超えないように軸回りの回動を規制する。
【0027】
ここで、プリセスカム2は、図2、図3に示すように、通常変速制御域のフィードバックゲインに応じた緩やかな傾斜角度の通常制御用斜面20(第1カム面)の両側に、通常制御域よりも大きなフィードバックゲインとして、急な傾斜角度に設定された衝突防止用斜面21、21(第2カム面)が形成される。
【0028】
そして、通常制御用斜面20と衝突防止用斜面21、21との境界は、変速比が大となるLo側には凹状の屈曲部22が形成され、また、変速比が小となるHi側には凸状の屈曲部22が形成される。
【0029】
以上のように構成されて、次に作用について説明する。
【0030】
通常制御用斜面20を超えてトラニオン4が回転しようとすると、フィードバックゲインが大きく設定された衝突防止用斜面21へ入るため、変速制御弁7の変位量は、通常制御用斜面20に比して増大する。
【0031】
したがって、油圧サーボシリンダ1への油圧の変化速度を大きくして、トラニオン4がストッパ8に衝突するのを防止して、迅速に通常制御用斜面20へ復帰させることができる。
【0032】
ここで、通常制御用斜面20から変速比がLo側(大側)の衝突防止用斜面21へ入る場合は、図3に示すように、パワーローラのLo側への傾転に伴ってプリセスカム2もLo側へ回転し、フィードバックリンク5の摺接部材51とプリセスカム2の摺接位置は、通常制御用斜面20から凹状の屈曲部23を超えて衝突防止用斜面21に入る。
【0033】
このとき、摺接部材51の当接位置が、凹状の屈曲部23から傾斜角度の大きな衝突防止用斜面21へ変位する際には、半径Rの所定の円弧で形成された摺接部材51の中心の軌跡は、図中一点鎖線のように、屈曲部23を超えると同時に、衝突防止用斜面21に沿って直線的に変化する。
【0034】
したがって、凹状の屈曲部23の近傍ではフィードバックリンク5が、プリセスカム2の形状を正確に追従するため、凹状の屈曲部23を境にフィードバックゲインを急増することが可能となる。
【0035】
そして、変速比のLo側でパワーローラ3の傾転角が過大になって、トラニオン4が図示しないストッパなどに衝突するのを回避するために必要な摺接部材51の軸方向変位量(図中上下方向)をAとすると、軸方向変位量Aを得るために必要なプリセスカム2の回転量は図3のBとなり、この回転量Bは、図7に示した凸状の屈曲部22側で軸方向変位量(図中上下方向)A(変速制御弁7のストローク)を得るための回転量B’に比して小さいため、トルクシフトを抑制するために必要な傾転角の余裕代は、前記従来例に比してB−B’の分だけ小さくすることができる。
【0036】
一方、変速比のHi側では、発生するトルクシフト量がLo側に比して小さいため、パワーローラ3の傾転角が過大になるのを防止するために必要な摺接部材51の軸方向変位量は、Lo側の軸方向変位量Aに比して小さな値で済み、したがって、凸状の屈曲部22を超えてから衝突防止用斜面21に入っても、小さなカムリードでトラニオン4が図示しないストッパなどに衝突するのを回避でき、このときのプリセスカム2の回転量は、前記従来例に示した、図7の回転量B’よりも小さくすることができる。
【0037】
したがって、摺接部材51が当接するプリセスカム2のカム面の回転範囲を前記従来例と同一とした場合、本発明によれば、上記B−B’の分だけ通常制御用斜面20の回転範囲を拡大することが可能となって、前記従来例に比して変速比幅を拡大することが可能となって、トロイダル型無段変速機の性能を向上させることができるのである。
【0038】
図4は第2の実施形態を示し、前記第1実施形態の凹状の屈曲部23を所定の半径rで形成したもので、その他の構成は前記第1実施形態と同様である。
【0039】
屈曲部23’は所定の半径rの凹部としたもので、プリセスカム2の加工を容易にするものである。
【0040】
この場合、屈曲部23’の半径rを、摺接部材51の半径Rよりも小さく設定しておけば、摺接部材51の軌跡は、前記第1実施形態と同じく、凹状の屈曲部23’の近傍で、プリセスカム2の傾斜の変化に追従することができるのである。
【0041】
図5は第3の実施形態を示し、前記第1実施形態に示したプリセスカム2のカム面を、溝状に形成したもので、その他の構成は前記第1実施形態と同様である。
【0042】
プリセスカム2’は、摺動部材51を挿通可能な溝状に形成されて、図中上方の内壁には、前記第1実施形態と同様に、フィードバックリンク5の摺動部材51と摺接する通常制御用斜面20及び衝突防止用斜面21、21が形成され、Lo側に凹状の屈曲部23、Hi側に凸状の屈曲部22が形成される。
【0043】
一方、プリセスカム2’の図中下方の内壁には、通常制御用斜面20及び衝突防止用斜面21、21と対向する位置に、それぞれ同一の傾斜で構成された通常制御用斜面20’及び衝突防止用斜面21’、21’が所定の間隙をおいて形成される。
【0044】
摺接部材51は図示しない付勢手段によって、通常、図中上方の通常制御用斜面20及び衝突防止用斜面21に当接しているが、フィードバックリンク5や変速制御弁7のフリクションが増大した場合には、図中下方の壁面に形成された通常制御用斜面20’及び衝突防止用斜面21’と摺接することで、摺接部材51がプリセスカムのカム面から離れてメカニカルフィードバックが不能となるのを防止することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示し、変速制御装置の概念図。
【図2】同じく、プリセスカムの側面展開図。
【図3】同じく、Lo側の屈曲部を示す側面展開図。
【図4】第2の実施形態を示し、プリセスカムのLo側の屈曲部を示す側面展開図。
【図5】第3の実施形態を示し、プリセスカムとフィードバックリンクの概念図。
【図6】従来のプリセスカムの斜面を示す側面展開図。
【図7】同じく、Lo側の屈曲部を示す側面展開図。
【符号の説明】
1 油圧サーボシリンダ
2 プリセスカム
3 パワーローラ
4 トラニオン
4A 軸部
5 フィードバックリンク
7 変速制御弁
8 ストッパ
20 通常制御用斜面
21 衝突防止用斜面
22、23 屈曲部
51 摺接部材
50 揺動軸
Claims (3)
- 入出力ディスクに挟持されて傾転自在なパワーローラを回転自在に支持するとともに、所定の軸まわりに回動可能かつ軸方向へ変位可能なローラ支持部材と、
前記ローラ支持部材を軸方向へ駆動する油圧シリンダへの油圧を制御する変速制御弁と、
前記ローラ支持部材の軸まわりの回動を軸部に設けたカムと、
該カムの傾斜面に当接して応動するフィードバックリンクを介して前記変速制御弁へ伝達するフィードバック手段と、
前記カムの傾斜面は、通常の変速制御で当接する所定の緩傾斜領域を形成する第1のカム面と、この第1カム面の両側にローラ支持部材の回転角が所定値または所定値近傍の値を超えた領域で、前記第1カム面に比して急傾斜の急傾斜領域を形成する第2のカム面とを有するトロイダル型無段変速機の変速制御装置において、
前記第1カム面と第2カム面とは、それぞれ屈曲部を介して接続されるとともに、変速比が大側の屈曲部を凹状に形成する一方、変速比が小側の屈曲部を凸状に形成したことを特徴とするトロイダル型無段変速機の変速制御装置。 - 前記フィードバックリンクは、所定の半径の円弧を備えてカムに摺接する摺接部材を備え、前記屈曲部のうち変速比が大側の屈曲部は、摺接部材の円弧よりも小さい半径の円弧を備えたことを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機の変速制御装置。
- 前記カムは、溝状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機の変速制御装置。
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JP13046698A JP3588670B2 (ja) | 1998-05-13 | 1998-05-13 | トロイダル型無段変速機の変速制御装置 |
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JP13046698A JP3588670B2 (ja) | 1998-05-13 | 1998-05-13 | トロイダル型無段変速機の変速制御装置 |
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JPH11325210A JPH11325210A (ja) | 1999-11-26 |
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JP13046698A Expired - Fee Related JP3588670B2 (ja) | 1998-05-13 | 1998-05-13 | トロイダル型無段変速機の変速制御装置 |
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1998
- 1998-05-13 JP JP13046698A patent/JP3588670B2/ja not_active Expired - Fee Related
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