JP3587119B2 - Ofdm伝送用非線形歪補償回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はOFDM伝送用非線形歪補償回路に関し、特にOFDM伝送用信号の高出力増幅に伴って発生する非直線歪みを有効に補償するためのOFDM伝送用非線形歪補償回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
OFDMとは直交周波数分割多重(Orthogonal Frequency Division Multiplex )と呼ばれる方式であり、デジタル放送および無線アクセスなどに利用されようとしている。この方式の特徴としては、直交周波数を利用したマルチキャリア伝送方式であるために周波数利用効率が高く、変調方式自体がマルチパス歪に強いことがあげられる。
【0003】
しかし、OFDM変調波は高いピークファクタを持つため、送信アンプのバックオフ(back−off:2以上の搬送波を同時に増幅する場合にアンプの非直線歪みによる相互変調を軽減するための手段の一つであり、飽和電力よりも低い点で動作させるためのその下げ幅をいう)が十分でないと、アンプの非線形歪により伝送品質に劣化を生じる。また、周波数スペクトラムのサイドローブレベルが高まり、隣接チャネル干渉量を増加させてしまうという欠点がある。
【0004】
一方、省電力化の観点からは送信アンプのバックオフは余り大きく取れない。バックオフと非線形歪は相反する関係にあり、非線形歪とのトレードオフでバックオフを設定する必要がある。
【0005】
この送信アンプの非線形歪を低減する従来技術としてプリディストーションがある。これは送信アンプの非直線性とは逆の特性を送信アンプの入力信号に与え、送信アンプの出力において非線形歪を可能な限り取除こうという技術である。従来技術の例として、特開平11−215197号公報や特開2000−22659号公報等に開示の技術がある。
【0006】
これ等の技術では、直交変調を行う前のベースバンド信号において、その直交信号I,Qよりベースバンド信号の電力を計算し、送信信号電力に応じた複素補償係数をテーブルから引用し、これを送信の直交信号I,Qに複素乗算を行うプリディストーション方式である。このプリディストーションの基本動作を図3を用いて説明を行う。図3はアンプの入出力特性(AM/AM)の一例を示す。アンプの出力には飽和点があるために、一般に図3に示されるような特性となる。すなわち、入力レベルが低い領域では線形性を示し、非線形領域を経て飽和に達する。プリディストーションはこの非線形領域を可能な限り線形な特性となるよう入力レベルに補償係数を乗じる手法である。
【0007】
例えば、入力レベルがx(n) の場合、アンプが線形ならば出力レベルがy=xの一次直線によりy(j) となるべきであるが、アンプの非線形性によってy(j) よりも低いレベルとなってしまう。これを補償するには入力レベルx(n) に乗数
m=x(j) /x(n) ……(1)
を掛算し、出力レベルが所望のy(j) に等しくなる入力レベルx(j) まで増加させれば良い。すなわち入力レベルx(n) に対応する所望出力y(j) が選られるx(j) をアンプの入出力特性より求め、(1)式を満足する補償係数mを予め求めておけば、アンプの入力レベルに応じて線形化のための補償係数を引用することができる。
【0008】
以上の処理により、図3の飽和に達するまでの非線形性は改善され、可能な限り入出力特性を線形化できる。また、アンプの入出力特性に関して位相特性(AM/PM)に関しても、同様に、予めアンプの位相特性を測定しておき、入力レベルに応じて、実測位相と逆位相を送信信号に乗算することで補償が可能となる。実際のプリディストーションでは、アンプの入出力特性において振幅と位相の情報を持たせるため、プリディストーションの補償係数は複素数となる。
【0009】
図4はOFDMの伝送系に従来技術のプリディストーションを適用した例を示すブロック図である。図4において、1はOFDM変調器、2はプリディストーション回路、3は送信周波数変換回路、4は送信アンプである。プリディストーション回路2において、レベル検出器26によりOFDM変調波の送信電力もしくは振幅を検波し、A/D変換器27により電力または振幅情報を量子化する。これをアドレスとしてルックアップテーブル(LUT)28からプリディストーションのための複素補償係数を引用し、これを複素乗算器21にてOFDM送信信号と複素乗算を行う。かかる構成によって、送信アンプ4の非直線性と逆の特性を送信信号に乗じ、送信アンプ4の出力において非線形歪を軽減することができるのである。
【0010】
尚、OFDM変調器1は、FEC(Forward Error Correction)回路11と、S/P(直並列)変換回路12と、サブキャリア変調回路13と、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)回路14と、G/I(ガードインタバル)付加回路15と、波形整形回路16とからなり、これ等は上記特開2000−22659号公報に開示のものと同等であって周知の構成であるので、その説明は省略する。
【0011】
この従来技術においては、レベル検出器26として,アナログのダイオード検波もしくはベースバンド信号から電力もしくは振幅を計算する演算回路などが必要となる。電力を演算するのであれば直交信号I,Qの自乗和を、振幅を演算するのであればI、Qの自乗和に対して平方根を、それぞれに取る必要がある。
【0012】
一方、論文”Quantizastion Analysis and Design of a Digital Predistortion Linearizer for RF Power Amplifiers,”Lars Sundstroem, Michael Faulkner, Mats Johansson, IEEE Transactions on Vehicular Technology November 1996においては、電力情報は振幅情報よりも計算が簡単であるが、精度の高いプリディストーションを行うには振幅情報を利用すべきであると指摘されている。
【0013】
レベル検出のために送信信号の振幅を演算するには、直交信号の自乗和の平方根を求める必要があるが、これらの演算をベースバンド信号で行うにはデジタル演算回路が必要であり、装置規模とデジタル回路を駆動する電力を余分に必要とする問題が生じる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
OFDMはデジタル放送および無線アクセスなどの分野で変調方式の標準となり、重要な技術である。OFDMの利点は周波数利用効率が高く、変調方式自体がマルチパス歪に強いということあるが、送信アンプの非線形歪に対して影響を受けやすい変調方式である。また隣接チャネル干渉の観点からも送信アンプの非線形性に留意する必要がある。以上の事情によりOFDM伝送にプリディストーションなどの非線形歪補償を行うことは効果的である。
【0015】
特に、送信アンプのバックオフをプリディストーションにより低減できるため、送信アンプの省電力化につながり、移動体通信など省電力化システムへの適用に寄与できる。しかしながら、OFDMのようにピークファクタの高い変調波に対して従来のプリディストーションを適用した場合、送信信号の振幅もしくは電力を検出する手段としてのダイオード検波器に大きなダイナミックレンジを必要とし、またアナログ回路による特性のバラツキが問題となる。
【0016】
さらに、従来のプリディストーションでは、上述した様に、送信信号の振幅または電力を特定するための演算回路が必要であり、デジタル処理を用いたとしても回路規模、消費電力が大きくなる。
【0017】
本発明の目的は、OFDM変調後の振幅を直接検出するのではなく、OFDM変調を行う前の送信データ系列から事前に演算しておいた振幅情報を引用することで、上述した問題点を解決することが可能なフレディストーション付のOFDM伝送用非線形歪補償回路を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、OFDM変調を行う前の送信データ系列を入力とし、この送信データ系列に対応して予め求められたOFDM変調波の振幅情報(または電力情報)を引用する情報引用手段と、この情報引用手段による引用情報を入力とし、この引用情報に対応して予め求められた送信アンプの非線形歪の補償係数を引用する補償係数引用手段と、この補償係数引用手段による補償係数を前記OFDM変調波に乗算する乗算手段とを含むことを特徴とするOFDM伝送用非線形歪補償回路が得られる。
【0019】
また、本発明によれば、OFDM変調を行う前の送信データ系列を入力とし、この送信データ系列に対応して予め求められた送信アンプの非線形歪の補償係数を引用する引用手段と、この引用手段により引用された補償係数を前記OFDM変調波に乗算する乗算手段とを含むことを特徴とするOFDM伝送用非線形歪補償回路が得られる。
【0020】
本発明の作用を述べる。本発明では、ベースバンド帯域の送信データに応じて予め求めておいたOFDM変調波の振幅情報を引用することによって、従来のような送信信号レベルの検出手段を用いる必要をなくしている。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。図1はに本発明の第1の実施例の構成を示すブロック図であり、図4と同等部分は同一符号により示している。図1において、1はOFDM変調器、2はプリディストーション回路、3は送信周波数変換回路、4は送信アンプである。OFDM変調器1において、11は誤り訂正回路(FEC)、12は直並列変換回路(S/P)、13はサブキャリア変調回路、14は逆フーリエ変換回路(IFFT)、15はガードインタバル付加回路(G/I)、16は波形整形回路である。
【0022】
プリディストーション回路2において、21は複素乗算器、22は直並列変換回路(S/P)、23はルックアップテーブル#2(LUT−2)、24はルックアップテーブル#1(LUT−1)である。
【0023】
本発明では、従来の図4に示した送信信号のレベル検出器26を用いないで、ベースバンド帯域の送信データ系列から送信信号の振幅情報を求め、プリディストーションを行うようにしている。送信データ系列からOFDM変調波の振幅情報を求める方法としては、OFDM変調の1シンボルがN波のサブキャリア変調波の和で構成されている性質を利用して行う。
【0024】
例えば、サブキャリア変調がBPSKの場合を例にとると、時刻tにおけるOFDM変調波は一般に、
s(t)={Σ(n=0,N−1) dn・exp (j2πfn・t)}……(2)
で示される。ここで、Σ(n=0,N−1) は変数nが0からN−1までの総和を示し、dnは送信データ、fnはn番目の直交周波数である。この(2)式は、時刻tが連続しているアナログ信号の場合を示しているが、デジタル処理を行うには時刻tはサンプリング化される。
【0025】
一方、サブキャリア対応した並列化されたデータの周期をTcとおいた場合、n番目のサブキャリアの周波数fnは
fn=n/Tc ……(3)
で示される。また時刻tを
t=p・Tc/N(p=0,1,2,……,N) ……(4)
のサンプリング値で定義すると、(21)式は
s(pTc/N)={Σ(n=0,N−1) dn・exp (j2πnp/N)}/N……(5)
となる。これは逆離散フーリエ変換(IDFT)の処理に相当している。
【0026】
以上のことより、送信データのn=0からn=N−1までのNビットの情報から送信OFDM信号のp番目のサンプリング値s(pTc/N)を(5)式から求めることが出来る。すなわち、送信データの系列とOFDM変調波とは写像関係にあり、OFDM変調波の振幅情報も送信データの系列と写像の関係にある。この性質を利用してNビットのデータ系列の組み合せに対応して、送信OFDM変調波の振幅値(絶対値)|s(pTc/N)|を予め計算しておき、これをルックアップテーブルに格納しておけば、図1に示すように送信データ系列の情報をアドレス入力とすることにより、この送信データ系列の情報からルックアップテーブル23をアクセスし、送信データ系列に対応したOFDM変調波の振幅情報を引用することができる。
【0027】
該振幅値情報はルックアップテーブル24に入力され、OFDM変調波の振幅に対応したプリディストーション補償係数を引用することができる。ルックアップテーブル24からのプリディストーション補償係数を、複素乗算器21にて、OFDM変調器1からのOFDM変調波に複素乗算することにより、従来通りプリディストーションが可能となる。
【0028】
以上の説明はBPSKを例に行っているが、サブキャリア変調がQPSKの場合にはQPSKの1シンボルに対して2ビットの情報データを割当てるため、直並列変換回路12では、1列の送信データは2Nブランチに並列化される。同様に、サブキャリア変調が16QAMの場合には、直並列変換回路12は4Nブランチの並列化を行う。従って、プリディストーション回路2の直並列変換回路22も同様の処理を行えば良いものである。
【0029】
図2に本発明の第2の実施例のブロック図を示し、図2において、図1と同等部分は同一符号により示している。図2において、図1の実施例との差異は、図ルックアップテーブル(#2)23を削除し、ひとつのルックアップテーブル25としたことである。すなわち、上記図1の例では、送信データ系列から送信OFDM変調波の振幅情報を引用するためのルックアップテーブルと、プリディストーション補償係数を引用するためのルックアップテーブルとを、それぞれに独立して個別に備えていたが、これら2個のルックアップテーブルを一つのルックアップテーブルに集約したのがこの第2の実施例である。
【0030】
ルックアップテーブルとしては、具体的にはROMなどの読出し専用メモリにより実現できるため、2個のルックアップテーブルの集約が可能である。第1の実施例の説明において述べたように、直並列変換回路22で並列化された送信データ系列とOFDM送信波の振幅情報は写像関係にある。また,該振幅情報とプリディストーション補償係数も写像関係にある。すなわち,送信データ系列とプリディストーション補償係数も写像関係にあるため、振幅情報を経由しないで、送信データ系列から直接プリディストーション補償係数を引用することが可能である。従って,図2に示すような2個のルックアップテーブルの集約化が可能であり、これは従来技術のプリディストーションと比較しても大幅な回路構成の縮小となっており、装置の小型化および省電力化に大きな効果が得られる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、送信信号の振幅情報を得る手段として、直並列変換回路及びルックアップテーブルを使用し、送信データ系列から直接プリディストーションのための乗数を得る構成であり、これらの回路規模および消費電力は従来技術のプリディストーションにおける送信信号の振幅情報を得る手段としてのレベル検波器、振幅演算回路、A/D変換回路などに比べて小さく、従来技術のプリディストーションよりも装置の小型化および省電力化が可能となるいう効果が得られる。
【0032】
また、従来技術のプリディストーションでは、送信ベースバンド信号のレベルを検出する手段としてアナログ検波器を用いるのが一般的であるが、OFMD信号のようなピークファクタの極めて高い変調方式の場合には、ダイオードの検波特性のダイナミックレンジが不足し、またダイオードの特性のバラツキが問題となるが、本発明ではこのようなアナログ回路によるレベル検出を用いず、送信データ系列から送信信号の振幅情報を一対一に求めることができるため、従来技術におけるアナログ回路の影響は受けないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施例のブロック図である。
【図2】本発明の第二の実施例のブロック図である。
【図3】アンプの入出力特性(AM/AM)を示す図である。
【図4】従来技術の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 OFDM変調器
2 プリディストーション回路
3 送信周波数変換回路
4 送信アンプ
11 FEC回路
12,22 直並列変換回路
13 サブキャリア変調回路
14 IFFT回路
15 ガードインタバル付加回路
16 波形整形回路
23,24,25 ルックアップテーブル
Claims (6)
- OFDM変調を行う前の送信データ系列を入力とし、この送信データ系列に対応して予め求められたOFDM変調波の振幅情報(または電力情報)を引用する情報引用手段と、この情報引用手段による引用情報を入力とし、この引用情報に対応して予め求められた送信アンプの非線形歪の補償係数を引用する補償係数引用手段と、この補償係数引用手段による補償係数を前記OFDM変調波に乗算する乗算手段とを含むことを特徴とするOFDM伝送用非線形歪補償回路。
- 前記情報引用手段は、前記送信データ系列をアドレス入力とし、このアドレスにそれぞれ対応して前記振幅情報(または電力情報)が予め格納されたメモリであることを特徴とする請求項1記載のOFDM伝送用非線形歪補償回路。
- 前記補償係数引用手段は、前記引用情報をアドレス入力とし、このアドレスにそれぞれ対応して前記補償係数が予め格納されたメモリであることを特徴とする請求項1または2記載のOFDM伝送用非線形歪補償回路。
- OFDM変調を行う前の送信データ系列を入力とし、この送信データ系列に対応して予め求められた送信アンプの非線形歪の補償係数を引用する引用手段と、この引用手段により引用された補償係数を前記OFDM変調波に乗算する乗算手段とを含むことを特徴とするOFDM伝送用非線形歪補償回路。
- 前記引用手段は、前記送信データ系列をアドレス入力とし、このアドレスにそれぞれ対応して前記補償係数が予め格納されたメモリであることを特徴とする請求項4記載のOFDM伝送用非線形歪補償回路。
- 前記メモリは読出し専用メモリであることを特徴とする請求項2,3,5いずれか記載のOFDM伝送用非線形歪補償回路。
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