JP3587068B2 - 圧電アクチュエータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数(例えば2つ)の圧電素子を互いに交差するように配置し、各圧電素子に相互に位相のずれた駆動電圧を印加して各圧電素子の交差部分に設けられたチップ部材を楕円運動させ、駆動力を発生するいわゆるトラス型圧電アクチュエータの運動軌跡制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧電素子には、その構造や電気的特性により決定される固有の共振周波数が存在し、交流の駆動電圧の周波数が圧電素子の共振周波数と一致すると、インピーダンスが低下し、圧電素子の変位が増大する。圧電素子は、その外形寸法に対して変位が小さいため、圧電素子を用いたアクチュエータを効率的に利用するには、圧電素子をその共振周波数近傍の周波数で駆動することが望ましい。
【0003】
一方、圧電素子の共振周波数は温度や負荷により変動するものであるため、共振周波数の変化を検出して駆動信号の周波数を補償する必要がある。例えば、特公平4−61593号公報に記載された圧電アクチュエータ(第1従来例とする)では、共振状態になると駆動回路のインピーダンスが低下し、電圧と電流の位相差が小さくなる性質を利用して、駆動信号の周波数を変化させて電流や位相差が最小となるように制御している。また、特公平6−36673号公報に記載された圧電アクチュエータ(第2従来例とする)では、駆動用圧電素子の変位方向に変位量検出用圧電素子を設け、検出用圧電素子が電圧の最大値を示すように駆動用圧電素子に印加する駆動信号の周波数を制御している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、圧電素子はその分極方向に変位するだけでなく、変位方向に直交する方向に変位したり、曲げやねじれ等が発生するため、圧電素子はこれらの各変位に対して複数の固有共振モードを有している。従って、上記第1従来例において、電流や位相差が最小となるように駆動信号を制御しても、圧電素子が所望する共振モードで振動しているかどうかを判別することは事実上不可能であった。
【0005】
また、第2従来例では、変位量検出用の圧電素子を追加しているので、圧電アクチュエータが大型になったり、コストがアップするという問題を有していた。また、構成部品の増加により振動モードが複雑になり、制御が困難になると共に、重量の増加により共振周波数が低下し、出力が低下するという問題を有していた。
【0006】
本発明は、上記従来例の問題点を解決するためになされたものであり、簡単な構成により共振状態を正確に検出し、制御が容易でかつ出力の安定した圧電アクチュエータを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の圧電アクチュエータは、複数の圧電素子を互いに所定角度で交差するように配置し、いずれかの圧電素子を駆動信号により駆動し、各圧電素子の交差部分に設けられた駆動部材に所定の運動を生じさせるものであって、第1圧電素子が変位したときに、第2圧電素子に発生する起電圧の変化を用いて前記第1圧電素子の変位量を検出することを特徴とする。
【0008】
上記構成において、前記第2圧電素子の出力信号が一定となるように前記第1圧電素子の駆動信号を変化させるように構成しても良い。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の圧電アクチュエータの一実施形態について説明する。まず、本実施形態で用いる積層型圧電素子の構成を図1に示す。図1に示すように、積層型圧電素子10は、PZT等の圧電特性を示す複数のセラミック薄板11と電極12,13を交互に積層したものであり、各セラミック薄板11と電極12,13とは接着剤等により固定されている。1つおきに配置された各電極群12及び13は、それぞれ信号線14,15を介して駆動電源16に接続されている。信号線14と15の間に所定の電圧を印加すると、電極12と13に挟まれた各セラミック薄板11には、その積層方向に電界が発生し、その電界は1つおきに同じ方向である。従って、各セラミック薄板11は、1つおきに分極の方向が同じになる(隣り合う2つのセラミック薄板11の分極方向は逆となる)ように積層されている。
【0010】
駆動電源16により直流の駆動電圧を各電極12と13の間に印加すると、全てのセラミック薄板11が同方向に伸び又は縮み、圧電素子10全体として伸縮する。電界が小さく、かつ変位の履歴が無視できる領域では、各電極12と13の間に発生する電界と圧電素子10の変位は、ほぼ直線的な関係と見なすことができる。この様子を図2に示す。図中、横軸は電界強度を、縦軸は歪み率を表す。
【0011】
次に、駆動電源16により交流の駆動電圧(交流信号)を各電極12と13の間に印加すると、その電界に応じて各セラミック薄板11は同方向に伸縮を繰り返し、圧電素子10全体として伸縮を繰り返す。圧電素子10には、その構造や電気的特性により決定される固有の共振周波数が存在する。交流の駆動電圧の周波数が圧電素子10の共振周波数と一致すると、インピーダンスが低下し、圧電素子10の変位が増大する。圧電素子10は、その外形寸法に対して変位が小さいため、低い電圧で駆動するためには、この共振現象を利用することが望ましい。
【0012】
次に、本実施形態の圧電アクチュエータの構成を図3に示す。図3に示すように、2つの積層型圧電素子(第1圧電素子10及び第2圧電素子10’)を略直角に交差させて配置し、それらの交差側端部にチップ部材20を接着剤により接合している。一方、第1及び第2圧電素子10,10’の他端部をベース部材30に接着剤により接合している。なお、第1圧電素子10及び第2圧電素子10’は図1に示す圧電素子10と実質的に同一であり、第2圧電素子10’の各構成要素の符号にをそれぞれ(’)をつけて区別する。
【0013】
第1及び第2圧電素子10,10’のいずれか1つを選択し、その圧電素子10又は10’を交流信号で駆動することにより、チップ部材20を往復運動させることができる。例えば、第1圧電素子10を駆動するとチップ部材20は図中左右方向に往復運動する。このチップ部材20を、例えば所定の軸の周りに回転可能なロータの円筒面40に押しつけると、チップ部材20の楕円運動(円運動を含む)をロータの回転運動に変換することが可能となる。または、チップ部材20を、例えば棒状部材(図示せず)の平面部に押しつけることにより、チップ部材20の楕円運動を棒状部材の直線運動に変換することが可能となる。
【0014】
図3は、特に第1圧電素子10を駆動し、第2圧電素子10’により第1圧電素子10の変位を検出する状態を示している。すなわち、第1圧電素子10の各電極12,13は駆動電源16に接続されており、所定周波数の交流駆動信号が印加されている。一方、第2圧電素子10’の各電極12’,13’には検出器(電圧計)17が接続されている。なお、第2圧電素子10’を駆動する場合も同様であり、第1圧電素子と第2圧電素子の関係が入れ替わる。
【0015】
図3に示す本実施形態の圧電アクチュエータでは、第1圧電素子10と第2圧電素子10’とを互いに90度をなすように交差させて配置しているので、一方の圧電素子(例えば第1圧電素子10)が伸縮すると、他方の圧電素子(第2圧電素子10’)がその分極方向に直交する方向の力を受ける。第2圧電素子10’に圧力が加わると、正電圧効果により第2圧電素子10’のセラミック薄板11’から電極12’又は13’に電荷が移動し、電極12’と13’との間に電圧が発生する。第2圧電素子10’に加えられた力と第2圧電素子10’が発生する電圧の関係は図2に示す関係と逆の関係にある。また、第2圧電素子10’が第1圧電素子10から受ける力は、第1圧電素子10の変位量に比例すると見なすことができるので、第2圧電素子10’が発生する電圧は、第1圧電素子10の変位量に比例する。そのため、第2圧電素子10’の電極12’と13’の間の電圧を測定することにより、第1圧電素子10の変位量を知ることができる。なお、第1圧電素子10は交流信号により駆動されて伸縮しているので、第2圧電素子10’も交流電圧を出力し、その位相は第1圧電素子10の変位の位相と一致する。
【0016】
このように、一方の圧電素子10又は10’を駆動したときの変位は他方の圧電素子10’又は10が発生する電圧として検出することができるので、電圧の最大値が一定となるように駆動信号(交流電圧)の周波数を変化させ、圧電素子10,10’の共振状態を維持することが可能となる。
【0017】
次に、本実施形態における駆動回路のブロック構成を図4に示す。発振器50は、例えばコンデンサ及び抵抗等で構成されたCR回路を用いて原信号を発生し、抵抗値を制御することにより原信号の周波数を変化させることができる。セレクタ51は、例えばマルチプレクサ等を用いて、ロータ40の回転方向に応じて原信号を伝達すべき圧電素子10又は10’を選択する。第1及び第2増幅器52,53は、それぞれトランジスタ等を用いて原信号を所定倍だけ増幅し、第1及び第2圧電素子10,10’に印加する。第1及び第2検出器54,55は、それぞれ第1及び第2圧電素子10,10’で発生した電荷を抵抗等を用いて電圧に変換し、発振器50にフィードバックする。
【0018】
セレクタ51により第1圧電素子10を選択した場合、原信号は第1増幅器52に送信され、増幅された後第1圧電素子10に印加される。第1圧電素子10が変位すると、第2圧電素子10’に第1圧電素子の変位に比例した電荷が発生し、第2検出器55が電荷に比例した信号電圧を発生する。この信号電圧は発振器50にフィードバックされ、第1圧電素子10の最大変位量が所定値になるように、すなわち信号電圧の最大値が所定値となるように、原信号の周波数が変化される。その結果、第1圧電素子10の共振状態が維持され、圧電アクチュエータの出力変動は非常に小さく、出力が安定する。
【0019】
なお、上記実施形態では、圧電素子10,10’に印加する電圧値を制御したが、電流値を制御しても同様の効果が得られる。また、図3に示す圧電アクチュエータを紙面に垂直な方向にも配置して各圧電アクチュエータの変位を合成することにより、2軸の運動を実現することが可能となる。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の圧電アクチュエータによれば、複数の圧電素子を互いに所定角度で交差するように配置し、いずれかの圧電素子を駆動信号により駆動し、各圧電素子の交差部分に設けられた駆動部材に所定の運動を生じさせるものであって、第1圧電素子が変位したときに、第2圧電素子に発生する起電圧の変化を用いて前記第1圧電素子の変位量を検出するので、別個独立した検出素子を設けることなく、簡単な構成で圧電素子の共振状態及び非共振状態を検出することができる。特に、圧電素子が発生する電圧はその変位量に比例する性質を利用して、駆動されていない圧電素子を駆動されている圧電素子の変位検出素子として用いているので、駆動されている圧電素子の変位量を正確に検出することが可能である。
【0021】
また、第2圧電素子の出力信号が一定となるように第1圧電素子の駆動信号を変化させることにより、温度変化等により駆動されている圧電素子の共振周波数が変動しても、比較的短時間の内に当該圧電素子の共振状態を再現することができる。その結果、圧電アクチュエータの出力の変動が小さくなり、安定した出力を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電アクチュエータの一実施形態において用いる積層型圧電素子の構成を示す図である。
【図2】圧電素子における電界と変位の関係を示す図である。
【図3】上記一実施形態における圧電アクチュエータの構成を示す図である。
【図4】上記一実施形態における駆動回路の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
10 :第1圧電素子
10’:第2圧電素子
11、11’ :セラミック薄板
12,12’,13,13’:電極
14,15:信号線
16 :駆動電源
17 :検出器
20 :チップ部材
30 :ベース部材
40 :ロータ
50 :発振器
51 :セレクタ
52 :第1増幅器
53 :第2増幅器
54 :第1検出器
55 :第2検出器
Claims (2)
- 複数の圧電素子を互いに所定角度で交差するように配置し、いずれかの圧電素子を駆動信号により駆動し、各圧電素子の交差部分に設けられた駆動部材に所定の運動を生じさせるものであって、第1圧電素子が変位したときに、第2圧電素子に発生する起電圧の変化を用いて前記第1圧電素子の変位量を検出することを特徴とする圧電アクチュエータ。
- 前記第2圧電素子の出力信号が一定となるように前記第1圧電素子の駆動信号を変化させることを特徴とする請求項1記載の圧電アクチュエータ。
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