JP3583478B2 - マイクロ波用可動スタブチューナ - Google Patents

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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、マイクロ波回路に用いられるインピーダンス整合を行う可動スタブチューナに係り、特にマイクロ波の漏洩を防止するスタブチューナに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マイクロ波用チョーク構造を有する従来の可動スタブチューナの要部概略縦断面図を図5に示す。図示するように、可動スタブチューナがマイクロ波を通過させるための方形導波管1に取付けられており、この導波管1の電界面(電界が生じる面)に設けた貫通孔1aに、先端部が丸みを帯びた導体棒構造のスタブ2を挿入引出し自在となるように配設され、通常3本が例えばλg/4(λg:管内波長)の間隔で、方形導波管1の管軸方向に沿って設けられている。
【0003】
スタブ2の外周には、貫通孔1aとスタブ2とを電気的接触させることが期待できないので、スタブとして有効に機能させるため、またマイクロ波が外部へ漏洩することを防止するためのマイクロ波用チョーク構造を形成するチョーク部材3を配設させており、このチョーク部材3は断面が円形状を呈した導体の外筒チョーク部材3a及び内筒チョーク部材3bからなる。外筒チョーク部材3aは、その下端のフランジ開口部と貫通孔1aとが合致するように、導波管1の壁面と垂直に取付けられて、スタブ2の外周の長手方向に続いた第1及び第2の空間S1,S2が形成される。
【0004】
外筒チョーク部材3aの上端には、この外筒チョーク部材3aの内側に適宜の間隙及び長さλ/4(λ:自由空間波長)による第1の空間S1を形成する内筒チョーク部材3bが取付けられ、外筒チョーク部材3a及び内筒チョーク部材3bがスタブ2と同心的に配設されており、スタブ2が外筒チョーク部材3a及び内筒チョーク部材3bの内側を挿通することによって、外筒チョーク部材3aとスタブ2との間に、適宜の間隙及び長さλ/4による第2の空間S2が上記第1の空間S1と同様に形成されるので、A点は短絡終端され、それからλ/2離れたC点も電気的短絡の状態になる。また、B点が開放(入力インピーダンスが無限大)の状態になるために、スタブ2と内筒チョーク部材3bとに間隙があっても、マイクロ波のB点から外部への漏洩を防止することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のマイクロ波用チョーク構造を形成するチョーク部材3では、スタブ2及びチョーク部材3から同軸線路が形成されるので、スタブ2とチョーク部材3との間隙をTEMモードで伝搬するマイクロ波は、B点でA点側へ分波(F1 )して伝搬され、またD点側へ分波(F2 )して伝搬される。A点側へ伝搬したマイクロ波は、A点で短絡されるために、A点からB点へ全反射するが、この反射波はB点でD点側へ分波(R1 )して伝搬され、またC点側へ分波(R2 )して伝搬される。したがって、上記分波(F2 )と分波(R1 )とが合成されたマイクロ波がD点から外部へ漏洩するという問題がある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1においては、可変インピーダンス素子としての棒構造のスタブと、スタブの外周に同心的に配設され、筒状に形成されていてその内側に、スタブの外周から隔てられスタブの外周にスタブの長手方向に沿って形成された所定長さの第1の空間を有し、スタブの外周にスタブの長手方向に沿って形成された所定長さの第2の空間を有すると共に、第1の空間が方形導波管と遠い側に形成され、第2の空間が方形導波管と近い側に形成され、第1の空間と第2の空間とが連通したマイクロ波用チョーク構造を形成するチョーク部材とを具備して方形導波管の外壁面に取付けられ、方形導波管の電界面に設けた貫通孔にスタブを挿入引出し自在となるようにチョーク部材が配設されたマイクロ波用可動スタブチューナにおいて、スタブは、可変インピーダンス素子としての有効部分と有効部分以外である非有効部分とが長手方向に構成され、有効部分が方形導波管と近い側に位置され、非有効部分が方形導波管と遠い側に位置されると共に、有効部分の少なくとも表面が導体で形成され、非有効部分が誘電体で形成され、有効部分と非有効部分との境界は、スタブが可変インピーダンス素子としての最大挿入状態で方形導波管の内壁から方形導波管と離れる方向へ使用するマイクロ波の波長の略1/4倍の位置から、チョーク部材の方形導波管と離れる方向の端部に形成されるスタブ挿入開口面の位置までの任意の位置に設定され、スタブが可変インピーダンス素子としての最小挿入状態でスタブ挿入開口面の位置から、方形導波管の内壁から方形導波管と離れる方向へ使用するマイクロ波の波長の略1/4倍の位置までの任意の位置に設定され、第1の空間を形成するチョーク部材のスタブ側のチョーク部材の内径の半分を、マイクロ波の波長のk/2π(k=1.84)倍以下にした構成としている。
【0007】
また、請求項2においては、有効部分の全体を導体からなる構成としている。
【0008】
さらに、請求項3においては、有効部分を中空の導体からなる構成としている。
【0009】
また、請求項4においては、スタブ全体を誘電体からなる構成とし、かつ有効部分に金属メッキを施した構成としている。
【0010】
【作用】
上記請求項1に記載した構成にすれば、チョーク部材を外導体とし、スタブを内導体とする同軸線路が形成され、この同軸線路を伝搬するマイクロ波は、外導体とするチョーク部材と内導体とするスタブとが対向しない部分のチョーク部材が円形導波管として形成されるので、この円形導波管を伝搬する。したがって、円形導波管の遮断波長λc は、導波管の半径をrとすれば、λc =2πr/kから求められるので、第1の空間を形成するチョーク部材のスタブ側のチョーク部材の内径(半径)を、使用するマイクロ波の波長のk/2π(k=1.84以下にすれば、チョーク部材から漏洩する全てのモードのマイクロ波が遮断される。
【0011】
また、請求項2に記載した構成にすれば、特に構造が単純な2つの部材を組合わせているので、加工工数が少なく、しかも製作が容易となる。
【0012】
さらに、請求項3に記載した構成にすれば、特に軽量化されるので、スタブの駆動源が小型化される。
【0013】
また、請求項4に記載した構成にすれば、特にスタブ全体が主に誘電体を一体成形した構造であるので、加工工数が不要であり、しかも製作が著しく容易となる。
【0014】
【実施例】
図1は本発明に係るスタブの一実施例を示す縦断面図で、図2は一実施例に示したスタブを用いたマイクロ波用可動スタブチューナの要部概略縦断面図であり、チョーク部材3は図5と同じであるので説明を省略する。
【0015】
本実施例のスタブ20は、可変インピーダンス素子としての有効部分20Aと、非有効部分20Bとからなり、有効部分20Aは導波管1と近い側に位置されており、全て銅、真鍮などの金属導体で形成され、非有効部分20Bは導波管1と遠い側に位置されており、誘電体で形成されている。
【0016】
有効部分20Aと非有効部分20Bとの境界は、スタブ20が可変インピーダンス素子として可動している状態、すなわち、スタブ20が可動しうる範囲内で、内筒チョーク部材3bの下端3cから、内筒チョーク部材3bの導波管1と離れる方向の端部に形成されるスタブ挿入開口面3dまでの位置としている。例えば、スタブの挿入長が最大状態(最大挿入状態)で導波管1の内壁1bから導波管1と離れる方向へ使用するマイクロ波の波長の略1/4倍(λ/4)の位置から、導波管1と離れる方向へ任意の位置(当然、スタブ挿入開口面3dの位置まで)に設定され、また、スタブの挿入長が最小状態(最小挿入状態)でスタブ挿入開口面3dの位置から、導波管1側へ任意の位置(当然、導波管1の内壁1bから導波管1と離れる方向へ使用するマイクロ波の波長の略1/4倍(λ/4)の位置まで)に設定されている。本実施例では、スタブの挿入長が最大状態で内筒チョーク部材3bの下端3c、すなわち、内壁1bから導波管1と離れる方向へ略λ/4倍の位置に設定し、また、挿入長が零(最小)の状態でチョーク部材3の短絡終端点Aと略同じ位置に設定している。
【0017】
スタブ20が最大に挿入された状態では、スタブ20の有効部分20Aを内導体とし、チョーク部材3を構成する外筒チョーク部材3aを外導体とする同軸線路が形成されるので、マイクロ波は内壁1bから導波管1と離れる方向へ略λ/4倍の長さのスタブ20と外筒チョーク部材3aとの間隙をTEMモ−ドで伝搬する。
【0018】
スタブ20の挿入長が零(最小)の状態では、スタブ20が最大に挿入された状態と同様に、有効部分20A及び外筒チョーク部材3aから同軸線路が形成され、さらに有効部分20Aと内筒チョーク部材3bから同軸線路が形成されるので、マイクロ波は内壁1bから導波管1と離れる方向へ略λ/2倍の長さのスタブ20とチョーク部材3との間隙をTEMモ−ドで伝搬する。
【0019】
チョーク部材3を外導体とし、スタブ20を内導体とする同軸線路が形成され、この同軸線路を伝搬するマイクロ波は、非有効部分20Bが誘電体で形成され、マイクロ波を透過しやすいために、外導体とするチョーク部材3と内導体とするスタブ20の有効部分20Aとが対向しない領域、すなわち非有効部分20Bとチョーク部材3とが対向する領域のチョーク部材3が円形導波管として形成されるので、この領域内を伝搬することになる。
【0020】
ところで、円形導波管の遮断波長λc は、導波管の半径をrとすれば、λc =2πr/kから求められることはよく知られている。ここで、kはモードによって異なる値で、例えばTE01,TE11,TM01,TM11モードの場合、それぞれk=3.83,1.84,2.40,3.83である。すなわち、TE01モードの場合、チョーク部材3を構成する内筒チョーク部材3bの内径(半径)を、使用するマイクロ波の波長の3.83/2π=1/1.64以下、またTE11モードの場合、1.84/2π=1/3.41以下、さらにTM01モードの場合、2.40/2π=1/2.61以下、またTM11モードの場合、3.83/2π=1/1.64以下にすれば、それぞれのモードのマイクロ波が遮断される。
【0021】
例えば周波数2.45GHz (自由空間波長λ=12.24cm)のマイクロ波を伝搬させる場合、JIS規格番号WRJ−2と同様のa=10.9cm×b=5.5cmの導波管を用い、さらにこの導波管に本発明に係るスタブを用いたスタブチューナを取付けており、内筒チョーク部材3bの内径(半径)を、例えば12.24cm×1/3.41=3.6cm以下にすると、TE11モードは伝搬されなくなり始めるので、3.6cmよりもさらに小さくすることが望ましい。したがって、内筒チョーク部材3bの内径(半径)を、kの一番小さい値を採用すれば、TE11モードはもちろん、他の全てのモードのマイクロ波が遮断される。
【0022】
有効部分20Aと非有効部分20Bとの境界は、スタブ20の挿入長さに拘らず常にチョーク部材3のスタブ挿入開口面3から導波管1側に設定されているが、スタブ挿入開口面3までの長さは、マイクロ波の減衰量及び内筒チョーク部材3bの内径(半径)を考慮して、適宜に設定すればよい。
【0023】
スタブ20の構造は、上記実施例に限定されることなく、図3に示すように、有効部分20Aに銅、真鍮などの金属導体を中空に成形したものを用いてもよく、また図4に示すように、全体を誘電体とし、有効部分20Aの表面に銅などの導電性金属をメッキしてもよい。
【0024】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に記載した発明によれば、従来のマイクロ波用チョーク構造を有するチョーク部材を改良することなく、マイクロ波用可動スタブチューナ外へのマイクロ波の漏洩を一段と少なくさせることができるという利点がある。
【0025】
また、請求項2に記載した発明によれば、単純な2つの部材を組合わせたスタブ構造であるので、加工工数が少なく、しかも容易に製作することができる。
【0026】
さらに、請求項3に記載した発明によれば、スタブが軽量化されるので、スタブの駆動源を小型化することができる。
【0027】
また、請求項4に記載した発明によれば、スタブ全体が主に誘電体を一体成形した構造であるので、加工することなく、しかも著しく容易に製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスタブの一実施例を示す縦断面図である。
【図2】本発明の一実施例に示したスタブを用いたマイクロ波用可動スタブチューナの要部概略縦断面図である。
【図3】本発明に係るスタブの他の実施例を示す縦断面図である。
【図4】本発明に係るスタブのさらに他の実施例を示す縦断面図である。
【図5】従来のスタブを用いたマイクロ波用可動スタブチューナの要部概略縦断面図である。
【符号の説明】
3 チョーク部材
20 スタブ
20A 有効部分
20B 非有効部分

Claims (4)

  1. 可変インピーダンス素子としての棒構造のスタブと、前記スタブの外周に同心的に配設され、筒状に形成されていてその内側に、前記スタブの外周から隔てられ前記スタブの外周に前記スタブの長手方向に沿って形成された所定長さの第1の空間を有し、前記スタブの外周に前記スタブの長手方向に沿って形成された所定長さの第2の空間を有すると共に、前記第1の空間が前記方形導波管と遠い側に形成され、前記第2の空間が前記方形導波管と近い側に形成され、前記第1の空間と前記第2の空間とが連通したマイクロ波用チョーク構造を形成するチョーク部材とを具備して方形導波管の外壁面に取付けられ、前記方形導波管の電界面に設けた貫通孔に前記スタブを挿入引出し自在となるように前記チョーク部材が配設されたマイクロ波用可動スタブチューナにおいて、
    前記スタブは、可変インピーダンス素子としての有効部分と前記有効部分以外である非有効部分とが長手方向に構成され、前記有効部分が前記方形導波管と近い側に位置され、前記非有効部分が前記方形導波管と遠い側に位置されると共に、前記有効部分の少なくとも表面が導体で形成され、前記非有効部分が誘電体で形成され、
    前記有効部分と非有効部分との境界は、前記スタブが可変インピーダンス素子としての最大挿入状態で前記方形導波管の内壁から前記方形導波管と離れる方向へ使用するマイクロ波の波長の略1/4倍の位置から、前記チョーク部材の前記方形導波管と離れる方向の端部に形成されるスタブ挿入開口面の位置までの任意の位置に設定され、前記スタブが可変インピーダンス素子としての最小挿入状態で前記スタブ挿入開口面の位置から、前記方形導波管の内壁から前記方形導波管と離れる方向へ使用するマイクロ波の波長の略1/4倍の位置までの任意の位置に設定され、
    前記第1の空間を形成する前記チョーク部材の前記スタブ側のチョーク部材の内径の半分を、前記マイクロ波の波長のk/2π(k=1.84)倍以下にしたマイクロ波用可動スタブチューナ。
  2. 前記有効部分は、全体が導体からなる請求項1に記載のマイクロ波用可動スタブチューナ。
  3. 前記有効部分は、中空の導体からなる請求項1に記載のマイクロ波用可動スタブチューナ。
  4. 前記有効部分は、誘電体に金属メッキを施した請求項1に記載のマイクロ波用可動スタブチューナ。
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