JP3582600B2 - ブレーキ制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、制動時にロック状態を回避して良好な走行状態を得られるように、ブレーキ圧の増減を行いアンチロック制御するブレーキ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、自動車、あるいは自動二輪車等に対して適用されるアンチロック制御を行うブレーキ制御装置として、例えば、各車輪に設けられた車輪速度センサによって車輪速度を検出し、最高である車輪速度を疑似(推定)車体速度として検出し、前記疑似(推定)車体速度と車輪速度に基づいて所定範囲内でブレーキ圧を加減して車輪がロック状態になるのを阻止する(以下、サイクリック制御という)ものが開示されている(特開平4−15155号公報参照)。上記公報の例では、全系統がアンチロック制御の際にはブレーキ圧の加圧のタイミングをブレーキ系統と他のブレーキ系統とからの加圧可能信号に基づいて加圧するため、全車輪のブレーキ圧が同時に加圧されることはなく、正確な疑似(推定)車体速度を求めることができ、精度の良いアンチロック制御が可能になるとしている。
【0003】
また、同様にして求めた車輪速度と推定車体速度から路面に対する車輪のスリップ率を求め、前記スリップ率を車輪が最適な制動力を発揮できるスリップ率に収束させるようにブレーキ圧を加減するブレーキ制御(以下、一定スリップ率制御という)があるが、これは、一定のスリップ率に収束するようにブレーキ圧を加減するため、次第にブレーキ圧の加減量が減少して、車輪の減速度が一定になり、走行フィーリングに優れていると言われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記一定スリップ率制御を自動二輪車に適用した場合、図10に示すように、例えば、後輪のみを制動すると、前後輪の車輪速度の中、最高の車輪速度、すなわち、制動されていない前輪の車輪速度を推定車体速度として求め、この推定車体速度に基づいてスリップ率を求めるため、精緻な制御ができる。しかしながら、図11に示すように、前後輪を同時に制動すると、前後輪とも路面に対してスリップしていくので、前後輪の車輪速度とも実車体速度から離間してしまうため、その車輪速度の高い方を推定車体速度としてスリップ率を算出し、ブレーキ圧を制御しても精度の良くない制御となる。
【0005】
また、サイクリック制御において、タイミングをずらしてブレーキ系統を加圧すれば、実車体速度から推定車体速度が離間するという問題は生じないが、所定範囲内でブレーキ圧を減少させて実車体速度近傍に車輪速度が接近した場合、その車輪の荷重分担量が大きければ、車体の制動力が低下するという問題が生ずる。また、サイクリック制御である場合、常にブレーキ圧の増減を繰り返すため、車輪の加減速度が変化して走行フィーリングが悪いという問題がある。
【0006】
本発明は、この種の問題を解決するためになされたものであって、精度良くアンチロック制御を行うとともに、走行フィーリングに優れたブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明は、複数のブレーキ系統を備え、前記各ブレーキ系統によって制動される車輪の路面に対するスリップ率等に基づいてブレーキ圧を制御するブレーキ制御装置であって、
各ブレーキ系統に対して運転者により操作されたブレーキ圧を制限するアンチロック制御状態であるか否かを判別するアンチロック制御判別手段と、
各車輪に掛かる荷重を比較して、最も荷重分担の低い最低荷重車輪を選択する荷重分担検出手段と、
各車輪の車輪速度を検出する車輪速度検出手段と、
アンチロック制御状態でない車輪または前記最低荷重車輪の前記車輪速度に基づき推定車体速度を算出する車体速度検出手段と、
一部のブレーキ系統がアンチロック制御状態であれば、アンチロック制御されるブレーキ系統に対して、前記推定車体速度に基づいて算出されるスリップ率をブレーキ圧の制御により最適な一定スリップ率に収束する一定スリップ率制御を施し、全ブレーキ系統がアンチロック制御状態であれば、前記最低荷重車輪を制動するブレーキ系統に対して所定範囲内でブレーキ圧の増減を繰り返すサイクリック制御を施し、その他のブレーキ系統に対して前記一定スリップ率制御を施すアンチロック制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
【作用】
本発明に係るブレーキ制御装置では、各ブレーキ系統の中、一部のブレーキ系統のみがアンチロック制御状態であれば、他のアンチロック制御されていないブレーキ系統の車輪の中の最高車輪速度から推定車体速度を求め、これに基づいて求めたスリップ率から前記一部のブレーキ系統を一定スリップ率制御するため、制動力および走行フィーリングを最適の状態に制御することができる。また、制動力がほぼ一定に保持されるのでピッチング挙動等を抑制することができる。また、全ブレーキ系統が同時にアンチロック制御状態であれば、全ブレーキ系統の中、接地荷重の最小である車輪を制動するブレーキ系統をサイクリック制御する。したがって、当該車輪の車輪速度が周期的に実車体速度に接近するため、この車輪速度に基づいて求める推定車体速度、スリップ率の精度が向上し、前記スリップ率に基づいて残りの車輪を精緻に一定スリップ率制御することができる。また、接地荷重の分担量が小さい車輪のブレーキ系統をサイクリック制御するため、車体の制動力に対する影響は小さく、他のブレーキ系統を一定スリップ率制御するため、車体の制動力が精度良く制御されるとともに、走行フィーリングも良好である。
【0010】
【実施例】
本発明に係るブレーキ制御装置について、好適な実施例を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0011】
本実施例では、自動二輪車の車体に装着されたブレーキ制御装置の例について説明する。
【0012】
図1は、本実施例に係るブレーキ制御装置10の概略構成図であり、コントロールユニット12によってモジュレータ14、14aを制御することにより、ブレーキ油圧を制御して最適な制動力を得ている。
【0013】
コントロールユニット12は、前輪Wfおよび後輪Wrの近傍に設けられた接地荷重検出センサ15、15aおよび車輪速度検出センサ16、16aを介して車輪の接地荷重と車輪速度Vwを検出し、前記車輪速度Vwのパルス信号をコントロールユニット12に導入する。
【0014】
ブレーキ装置18は、ハンドル20に設けられたブレーキレバー22によって駆動されるマスタシリンダ24と、前輪Wfを制動するキャリパシリンダ26を備え、マスタシリンダ24とキャリパシリンダ26は、モジュレータ14を介して相互に接続されている。このマスタシリンダ24は、ブレーキレバー22の作用下に油圧の調節を行ってキャリパシリンダ26に伝達するものであり、一方、キャリパシリンダ26は、ディスクプレート28に制動力を付与するものである。
【0015】
前輪Wf用のモジュレータ14は、モジュレータ14を構成する直流モータ30に対する電流を付勢、滅勢させてこの直流モータ30を駆動制御するためのモータドライバ32を備える。このモータドライバ32は、コントロールユニット12と電気的に接続され、コントロールユニット12から導出された信号が導入される。直流モータ30の駆動軸にはピニオン34が連結され、このピニオン34にギヤ36が噛合する。ギヤ36の中心には、クランク軸38が固定されており、このクランク軸38にはクランク腕40を介してクランクピン42の一端部が連結される。このクランクピン42の他端部には、クランク腕44が連結され、このクランク腕44に、クランクピン42の偏位角度を検出するポテンショメータ46が連結される。
【0016】
クランクピン42の外周には、カムベアリング48が回転自在に装着され、このカムベアリング48は、リターンスプリング50を介して上方向に押圧されている。カムベアリング48の上面には、このカムベアリング48の偏位作用のもとに上下に進退するエキスパンダピストン52が当接し、このエキスパンダピストン52の上下運動の作用下にカットバルブ54が開閉される。カットバルブ54は、カットバルブ収納部56に上下変位自在に配置されるとともに、このカットバルブ54の上面には、マスタシリンダ24に連通する入力ポート58が設けられる一方、カットバルブ収納部56とエキスパンダピストン52の連設部位には、キャリパシリンダ26に連通する出力ポート60が設けられている。前記入力ポート58と出力ポート60は、カットバルブ54の外周面に画成された連通孔62を介して連通している。
【0017】
一方、後輪Wr用のモジュレータ14aは、後輪Wrのブレーキペダル23に連結されたマスタシリンダ24aと後輪Wrのディスクプレート28aに連結されたキャリパシリンダ26aとを連通させている。なお、モジュレータ14aは上述したモジュレータ14と同一構成からなり、同一の構成要素には同一の参照数字に符号aを付し、その詳細な説明は省略する。
【0018】
ここで、前記コントロールユニット12は、図2に示すように、前後輪の車輪速度検出センサ16、16aから入力されたパルス信号に基づいて車輪速度を演算する車輪速度演算部70、70aと、前後輪の接地荷重検出センサ15、15aからの出力に基づき、最少の接地荷重分担をしている車輪を検出する荷重分担検出部72と、ポテンショメータ46、46aからの出力に基づき、モジュレータ14、14aがアンチロック制御されているか否かを判定し制御状態信号を出力するアンチロック制御判別部74と、前記荷重分担検出部72、あるいはアンチロック制御判別部74からの出力信号に応じて前記車輪速度から、適宜、車輪速度を選択する選択部76と、前記選択部76で選択された車輪速度から推定車体速度を求める推定車体速度演算部78と、前記推定車体速度と前後輪の車輪速度から前後輪のスリップ率を求めるスリップ率演算部80と、前記前後輪の車輪速度からそれぞれ車輪加減速度を求める車輪加減速度演算部82、82aと、前記アンチロック制御判別部74からの制御状態信号に基づき、前記スリップ率と車輪加減速度からブレーキ圧の昇減圧量を設定し、これに基づいて直流モータ30、30aの回転量をモータドライバ32、32aに出力するモータ制御部84とを備える。
【0019】
このように構成されるブレーキ制御装置10は、次のように作動する。
【0020】
マニュアル制御時には、リターンスプリング50の弾発力によってクランクピン42は予め設定された上限位置に保持され、このクランクピン42に装着されたカムベアリング48がエキスパンダピストン52を押し上げた状態で維持されている。これにより、カットバルブ54がエキスパンダピストン52によって押し上げられ、入力ポート58と出力ポート60とが連通している。
【0021】
そこで、ブレーキレバー22が把持されることによりマスタシリンダ24が付勢され、このマスタシリンダ24によって発生したブレーキ油圧は、入力ポート58、および出力ポート60を介してキャリパシリンダ26に伝達され、ディスクプレート28に制動力が付与される。
【0022】
アンチロック制御である場合の制御方法を、図3のフローチャートを参照して概略説明する。先ず、前後輪が同時にアンチロック制御(ABS)であるか否かを判定し(ステップS1)、前後輪が同時にアンチロック制御であれば、前後輪の接地荷重を比較し(ステップS2)、マップに基づいて接地荷重の小さい車輪をサイクリック制御し、他方の車輪を一定スリップ率制御とする(ステップS3、ステップS4)。また、前後輪が同時にアンチロック制御でない場合は、前輪アンチロック制御であるか否かを判定し(ステップS5)、前輪がアンチロック制御であれば、前輪に一定スリップ率制御を行い(ステップS6)、後輪がアンチロック制御であれば、後輪に一定スリップ率制御を行う(ステップS7)。
【0023】
最初に、前輪のみがアンチロック制御である場合について詳細に説明する。すなわち、ポテンショメータ46、46aからの出力信号に基づき、アンチロック制御判別部74において、前後輪のいずれがアンチロック制御されているか判別する。ここで、アンチロック制御判別部74から前輪のみがアンチロック制御であるという制御状態出力信号が荷重分担検出部72、選択部76、モータ制御部84に出力される。なお、荷重分担検出部72は、前記制御状態出力信号によって、検出信号を導出しない。前記荷重分担検出部72は、全車輪がアンチロック制御状態である場合にのみ検出信号を導出する。選択部76では、アンチロック制御されていない車輪速度、すなわち、後輪の車輪速度を選択する。推定車体速度演算部78では、前記後輪の車輪速度に基づいて推定車体速度を求める。このように、アンチロック制御されていない車輪(後輪Wr)の車輪速度に基づいて推定車体速度を求めるのは、アンチロック制御されている車輪(前輪Wf)が後述する一定スリップ率制御により、前輪の車輪速度が実車体速度から離間しているのに対して、後輪の車輪速度が実車体速度に近いためである。したがって、その後輪の車輪速度に基づいて推定車体速度を求めてアンチロック制御を行うため、前記アンチロック制御が精度良く行える。
【0024】
そこで、前記推定車体速度および前後輪の車輪速度に基づいて、スリップ率演算部80において、前後輪のスリップ率を求め、車輪加減速度演算部82で求められた前輪の車輪加減速度とともに、モータ制御部84に出力される。モータ制御部84では、アンチロック制御判別部74からの制御状態出力信号に基づき、図4に示すマップに基づいて前輪を一定スリップ率制御する。前記マップは、ファジイ理論により、図示しないスリップ率λ、車輪加減速度、ブレーキ昇減圧量のメンバシップ関数に基づいて設定されている。
【0025】
前記一定スリップ率制御では、モータ制御部84から前記マップに基づいて設定されたブレーキ圧の昇減圧量に対応する回転量がモータドライバ32に出力される。前記回転量に基づいて、直流モータ30を駆動してクランクピン42を変位させることにより、エキスパンダピストン52が上下動してカットバルブ54によって閉塞された出力ポート60の体積を増減させてキャリパシリンダ26のブレーキ圧を増減させる。したがって、車輪が減速を始めて、減速度が増大し、スリップ率λが増大して収束目標である目標スリップ率λTを越えると、ブレーキ圧を減少させる。このブレーキ圧の減少により、車輪が加速され、スリップ率λが目標スリップ率λTを下回ると、ブレーキ圧を増加させる。この結果、図4の矢印、あるいは、図5の実線に示すように、推定車体速度に対する目標スリップ率λTに相当する目標車輪速度(一点鎖線)近傍に収束する。この結果、スリップ率λが一定に制御されているため、制動力を最適な状態に制御できる。また、ブレーキ圧がほとんど変化せず、減速度がほぼ一定となるため、走行フィーリングが良好になるとともに車体のピッチング挙動等を抑制する。
【0026】
後輪Wrのみがアンチロック制御である場合は、前輪Wfの場合と同様にして後輪Wrのみを一定スリップ率制御する。
【0027】
前後輪が同時にアンチロック制御されている場合には、アンチロック制御判別部74において前後輪が同時にアンチロック制御であると判定され、その制御状態出力信号が荷重分担検出部72、選択部76、モータ制御部84に導出される。前記制御状態出力信号に基づいて荷重分担検出部72では、前後輪の接地荷重検出センサ15、15aの出力信号に基づき、接地荷重の小さい車輪を選択する。本実施例においては、接地荷重の小さい車輪が後輪Wrであったとすると、選択部76において、後輪Wrの車輪速度が選択され、推定車体速度演算部78において前記後輪の車輪速度に基づいて推定車体速度を求める。前記推定車体速度と車輪速度から前後輪のスリップ率λを求めるとともに、前後輪の車輪加減速度に基づいてモータ制御部84でブレーキ圧の昇減圧量を求める。この場合、前輪Wfは一定スリップ率制御であり、後輪Wrは後述するサイクリック制御となる。
【0028】
後輪Wrのサイクリック制御は、図6に示すマップに基づいて行われる。モータ制御部84から前記マップによって設定されたブレーキ圧の昇減圧量に対応する回転量をモータドライバ32aに出力する。したがって、前記回転量に従って直流モータ30aを駆動し、出力ポート60aの体積を増減させることにより、キャリパシリンダ26aのブレーキ圧を制御する。したがって、一旦低下した車輪速度が、ブレーキ圧の減少により一定スリップ率制御の場合の目標車輪速度まで増加してもブレーキ圧を減少させる(図5A点破線部参照)。さらに、スリップ率が0近傍、すなわち、車輪速度が増加して実車体速度近傍まで復帰しても減圧し、車輪速度が実車体速度に倣って減速し始めてブレーキ圧を増加するように設定されている(図5B点破線部参照)。したがって、図5の破線部、あるいは図6の矢印で示すようにブレーキ圧は昇減を繰り返し、図5の破線部に示すように、車輪速度が周期的に実車体速度に接近する。
【0029】
したがって、サイクリック制御されている後輪は、実車体速度近傍の車輪速度に周期的になるため、推定車体速度が精度良く求められる。この結果、前記推定車体速度から前後輪の制御に用いられるスリップ率が精度良く求められるため、精度の良いアンチロック制御が行われる。また、サイクリック制御が行われた車輪(後輪)は、接地荷重の小さい車輪であるため、車体の制動状態に付与する影響は小さく、また、他の車輪(前輪)が一定スリップ率制御されているため、制動性および走行フィーリングも良好である。
【0030】
このように本実施例に係るブレーキ制御装置では、前後輪の中、一方の車輪のみがアンチロック制御状態であれば、他の車輪の車輪速度から推定車体速度を求め、これに基づいて求めたスリップ率から前記一方の車輪を一定スリップ率制御するため、制動力を最適の状態に制御することができる。また、制動力がほぼ一定に保持されるので走行フィーリングが良好であり、車体のピッチング挙動等を抑制することができる。さらに、前後輪が同時にアンチロック制御状態であれば、前後輪の中、接地荷重の小さい車輪をサイクリック制御し、当該車輪の車輪速度に基づいて推定車体速度を求めるため、精度良くスリップ率が求まる。さらに、前記スリップ率に基づいて残りの車輪を一定スリップ率制御する。したがって、接地荷重の分担量が小さい車輪をサイクリック制御するため、車体の制動力に対する影響は小さく、また、他の車輪を一定スリップ率制御するため、車体の制動力が精度良く制御される。
【0031】
なお、本実施例では、ファジイ理論に基づいて設定されたマップにより一定スリップ率制御、サイクリック制御を行ったが、クリスプな関数等に基づいて制御することも勿論可能である。
【0032】
また、二輪車の多くは制動時に前輪分担荷重が後輪よりも一般的に大きくなるため、図7に示すように、接地荷重検出センサ15、15aおよび荷重分担検出部72を省略し、代わりに記憶部86を設け、前記記憶部86に接地荷重の小さい車輪、ここでは後輪を記憶させておくことにより、前後輪が同時にアンチロック制御時に後輪がサイクリック制御、前輪が一定スリップ率制御になるようにすることもできる。このように構成することにより接地荷重検出センサ15、15a等を省略できる。
【0033】
続いて、本発明に係るブレーキ制御装置を四輪自動車に適用した例を説明する。なお、第1実施例と同様な構成要素には同一の参照番号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0034】
本実施例では、前輪は左右独立2チャンネル、後輪1チャンネルの3チャンネルのブレーキ制御を行う。すなわち、本実施例のブレーキ制御装置90では、図8に示すように、前左車輪92、前右車輪94に対して、第1実施例のモジュレータ14と同様な構成であるモジュレータ14b、14cが、また、後左車輪96、後右車輪98に対して、両輪のキャリパシリンダ26に同一のキャリパ圧を供給するモジュレータ14dが備えられている。また、車輪92、94、96、98には、それぞれ図示しない接地荷重検出センサが備えられており、それぞれの車輪の接地荷重を検出している。
【0035】
このように構成されるブレーキ制御装置90では、第1実施例と略同様に構成されたコントロールユニット12a(図2参照)のアンチロック制御判別部74において、アンチロック制御しているモジュレータが1つ、あるいは2つであると判断された場合には、アンチロック制御されているモジュレータに対して第1実施例で説明した一定スリップ率制御を行う。この場合、選択部76では、アンチロック制御されていないモジュレータの車輪の中、最高の車輪速度を選択し、推定車体速度演算部78でこの車輪速度に基づいて推定車体速度を求め、これに基づいて前記一定スリップ率制御を行う。
【0036】
一方、アンチロック制御判別部74において、全車輪92、94、96、98が同時にアンチロック制御されている場合には、先ず、荷重分担検出部72において、最も荷重分担の少ない車輪を選択する。但し、モジュレータ14b、14c、14dが3チャンネルであるため、判断基準を以下のようにしている。すなわち、車輪92、94、96、98のそれぞれの接地荷重をI、II、III 、IVとすると、
I+II≧ III+IVならば、 車輪96、98
I+II< III+IVであり、
且つ、I≦IIならば、 車輪92
I>IIならば、 車輪94
を選択する。
【0037】
続いて、選択部76において、前記荷重分担検出部72において車輪96、98が選択された場合、あるいは、舵角センサ100によって検出された前輪の舵角が所定舵角αよりも大きく、車輪96、98の車輪速度の大きい方が選択された場合、これに基づいて推定車体速度演算部78で推定車体速度を求める。車輪92、あるいは車輪94が選択された場合には、当該車輪の車輪速度に基づいて推定車体速度を求める。
【0038】
モータ制御部84では、図9に示すように、舵角がα以上であり、あるいは前記荷重分担検出部72で車輪96、98が選択されていれば、モジュレータ14dをサイクリック制御し、他のモジュレータ14b、14cを一定スリップ率制御する。舵角がα以下で、前記荷重分担検出部72で選択された車輪が車輪92の場合には、モジュレータ14b、車輪94の場合にはモジュレータ14cをサイクリック制御し、他のモジュレータを一定スリップ率制御する。
【0039】
このように本実施例の制御においても、全車輪が同時にアンチロック制御させている場合であっても、舵角が所定角度α内であれば、荷重分担の低い車輪を制動するモジュレータのみをサイクリック制御し、その他のモジュレータを一定スリップ率制御するため、走行フィーリングに優れるとともに、推定車体速度が精度良く求められ、精緻なアンチロック制御が行われる。また、舵角が所定角度α以上であれば、操舵されない後輪である車輪96、98をサイクリック制御するため、優れた走行フィーリングを確保できる。
【0040】
【発明の効果】
本発明に係るブレーキ制御装置によれば、以下の効果が得られる。
【0041】
すなわち、ブレーキ制御装置では、各ブレーキ系統の中、一部のブレーキ系統のみがアンチロック制御状態であれば、他のアンチロック制御されていないブレーキ系統の車輪速度から推定車体速度を求め、これに基づいて求めたスリップ率から前記一部のブレーキ系統を一定スリップ率制御するため、制動力を最適の状態に制御することができる。また、制動力がほぼ一定に保持されるので走行フィーングに優れるとともに車体のピッチング挙動等を抑制することができる。さらに、全ブレーキ系統が同時にアンチロック制御状態であれば、全ブレーキ系統の中、接地荷重の小さい車輪を制動するブレーキ系統をサイクリック制御し、当該車輪の車輪速度に基づいて推定車体速度を求めるため、精度良くスリップ率が求まる。さらに、前記スリップ率に基づいて残りの車輪を一定スリップ率制御する。したがって、接地荷重の分担量が小さい車輪のブレーキ系統をサイクリック制御するため、車体の制動力に対する影響は小さく、他のブレーキ系統を一定スリップ率制御するため、車体の制動力が精度良く制御される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るブレーキ制御装置の概略構成図である。
【図2】本発明に係るブレーキ制御装置のコントロールユニットの構成図である。
【図3】本発明に係るブレーキ制御装置の制御方法を示したフローチャートである。
【図4】本発明に係るブレーキ制御装置の一定スリップ率制御を行う制御マップである。
【図5】本発明に係るブレーキ制御装置の制御結果を示した図である。
【図6】本発明に係るブレーキ制御装置のサイクリック制御を行う制御マップである。
【図7】本発明に係るブレーキ制御装置のコントロールユニットの構成図である。
【図8】本発明に係るブレーキ制御装置の構成図である。
【図9】本発明に係るブレーキ制御装置の選択回路における判断基準に示す図である。
【図10】従来例に係るブレーキ制御装置の制御結果を示す図である。
【図11】従来例に係るブレーキ制御装置の制御結果を示す図である。
【符号の説明】
10、90…ブレーキ制御装置
12、12a…コントロールユニット
14、14a〜14d…モジュレータ
15、15a…接地荷重検出センサ
16、16a…車輪速度検出センサ
24…マスタシリンダ
26…キャリパシリンダ
46、46a…ポテンショメータ
72…荷重分担検出部
74…アンチロック制御判別部
76…選択部
84…モータ制御部
100…舵角センサ
【産業上の利用分野】
本発明は、制動時にロック状態を回避して良好な走行状態を得られるように、ブレーキ圧の増減を行いアンチロック制御するブレーキ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、自動車、あるいは自動二輪車等に対して適用されるアンチロック制御を行うブレーキ制御装置として、例えば、各車輪に設けられた車輪速度センサによって車輪速度を検出し、最高である車輪速度を疑似(推定)車体速度として検出し、前記疑似(推定)車体速度と車輪速度に基づいて所定範囲内でブレーキ圧を加減して車輪がロック状態になるのを阻止する(以下、サイクリック制御という)ものが開示されている(特開平4−15155号公報参照)。上記公報の例では、全系統がアンチロック制御の際にはブレーキ圧の加圧のタイミングをブレーキ系統と他のブレーキ系統とからの加圧可能信号に基づいて加圧するため、全車輪のブレーキ圧が同時に加圧されることはなく、正確な疑似(推定)車体速度を求めることができ、精度の良いアンチロック制御が可能になるとしている。
【0003】
また、同様にして求めた車輪速度と推定車体速度から路面に対する車輪のスリップ率を求め、前記スリップ率を車輪が最適な制動力を発揮できるスリップ率に収束させるようにブレーキ圧を加減するブレーキ制御(以下、一定スリップ率制御という)があるが、これは、一定のスリップ率に収束するようにブレーキ圧を加減するため、次第にブレーキ圧の加減量が減少して、車輪の減速度が一定になり、走行フィーリングに優れていると言われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記一定スリップ率制御を自動二輪車に適用した場合、図10に示すように、例えば、後輪のみを制動すると、前後輪の車輪速度の中、最高の車輪速度、すなわち、制動されていない前輪の車輪速度を推定車体速度として求め、この推定車体速度に基づいてスリップ率を求めるため、精緻な制御ができる。しかしながら、図11に示すように、前後輪を同時に制動すると、前後輪とも路面に対してスリップしていくので、前後輪の車輪速度とも実車体速度から離間してしまうため、その車輪速度の高い方を推定車体速度としてスリップ率を算出し、ブレーキ圧を制御しても精度の良くない制御となる。
【0005】
また、サイクリック制御において、タイミングをずらしてブレーキ系統を加圧すれば、実車体速度から推定車体速度が離間するという問題は生じないが、所定範囲内でブレーキ圧を減少させて実車体速度近傍に車輪速度が接近した場合、その車輪の荷重分担量が大きければ、車体の制動力が低下するという問題が生ずる。また、サイクリック制御である場合、常にブレーキ圧の増減を繰り返すため、車輪の加減速度が変化して走行フィーリングが悪いという問題がある。
【0006】
本発明は、この種の問題を解決するためになされたものであって、精度良くアンチロック制御を行うとともに、走行フィーリングに優れたブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明は、複数のブレーキ系統を備え、前記各ブレーキ系統によって制動される車輪の路面に対するスリップ率等に基づいてブレーキ圧を制御するブレーキ制御装置であって、
各ブレーキ系統に対して運転者により操作されたブレーキ圧を制限するアンチロック制御状態であるか否かを判別するアンチロック制御判別手段と、
各車輪に掛かる荷重を比較して、最も荷重分担の低い最低荷重車輪を選択する荷重分担検出手段と、
各車輪の車輪速度を検出する車輪速度検出手段と、
アンチロック制御状態でない車輪または前記最低荷重車輪の前記車輪速度に基づき推定車体速度を算出する車体速度検出手段と、
一部のブレーキ系統がアンチロック制御状態であれば、アンチロック制御されるブレーキ系統に対して、前記推定車体速度に基づいて算出されるスリップ率をブレーキ圧の制御により最適な一定スリップ率に収束する一定スリップ率制御を施し、全ブレーキ系統がアンチロック制御状態であれば、前記最低荷重車輪を制動するブレーキ系統に対して所定範囲内でブレーキ圧の増減を繰り返すサイクリック制御を施し、その他のブレーキ系統に対して前記一定スリップ率制御を施すアンチロック制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
【作用】
本発明に係るブレーキ制御装置では、各ブレーキ系統の中、一部のブレーキ系統のみがアンチロック制御状態であれば、他のアンチロック制御されていないブレーキ系統の車輪の中の最高車輪速度から推定車体速度を求め、これに基づいて求めたスリップ率から前記一部のブレーキ系統を一定スリップ率制御するため、制動力および走行フィーリングを最適の状態に制御することができる。また、制動力がほぼ一定に保持されるのでピッチング挙動等を抑制することができる。また、全ブレーキ系統が同時にアンチロック制御状態であれば、全ブレーキ系統の中、接地荷重の最小である車輪を制動するブレーキ系統をサイクリック制御する。したがって、当該車輪の車輪速度が周期的に実車体速度に接近するため、この車輪速度に基づいて求める推定車体速度、スリップ率の精度が向上し、前記スリップ率に基づいて残りの車輪を精緻に一定スリップ率制御することができる。また、接地荷重の分担量が小さい車輪のブレーキ系統をサイクリック制御するため、車体の制動力に対する影響は小さく、他のブレーキ系統を一定スリップ率制御するため、車体の制動力が精度良く制御されるとともに、走行フィーリングも良好である。
【0010】
【実施例】
本発明に係るブレーキ制御装置について、好適な実施例を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0011】
本実施例では、自動二輪車の車体に装着されたブレーキ制御装置の例について説明する。
【0012】
図1は、本実施例に係るブレーキ制御装置10の概略構成図であり、コントロールユニット12によってモジュレータ14、14aを制御することにより、ブレーキ油圧を制御して最適な制動力を得ている。
【0013】
コントロールユニット12は、前輪Wfおよび後輪Wrの近傍に設けられた接地荷重検出センサ15、15aおよび車輪速度検出センサ16、16aを介して車輪の接地荷重と車輪速度Vwを検出し、前記車輪速度Vwのパルス信号をコントロールユニット12に導入する。
【0014】
ブレーキ装置18は、ハンドル20に設けられたブレーキレバー22によって駆動されるマスタシリンダ24と、前輪Wfを制動するキャリパシリンダ26を備え、マスタシリンダ24とキャリパシリンダ26は、モジュレータ14を介して相互に接続されている。このマスタシリンダ24は、ブレーキレバー22の作用下に油圧の調節を行ってキャリパシリンダ26に伝達するものであり、一方、キャリパシリンダ26は、ディスクプレート28に制動力を付与するものである。
【0015】
前輪Wf用のモジュレータ14は、モジュレータ14を構成する直流モータ30に対する電流を付勢、滅勢させてこの直流モータ30を駆動制御するためのモータドライバ32を備える。このモータドライバ32は、コントロールユニット12と電気的に接続され、コントロールユニット12から導出された信号が導入される。直流モータ30の駆動軸にはピニオン34が連結され、このピニオン34にギヤ36が噛合する。ギヤ36の中心には、クランク軸38が固定されており、このクランク軸38にはクランク腕40を介してクランクピン42の一端部が連結される。このクランクピン42の他端部には、クランク腕44が連結され、このクランク腕44に、クランクピン42の偏位角度を検出するポテンショメータ46が連結される。
【0016】
クランクピン42の外周には、カムベアリング48が回転自在に装着され、このカムベアリング48は、リターンスプリング50を介して上方向に押圧されている。カムベアリング48の上面には、このカムベアリング48の偏位作用のもとに上下に進退するエキスパンダピストン52が当接し、このエキスパンダピストン52の上下運動の作用下にカットバルブ54が開閉される。カットバルブ54は、カットバルブ収納部56に上下変位自在に配置されるとともに、このカットバルブ54の上面には、マスタシリンダ24に連通する入力ポート58が設けられる一方、カットバルブ収納部56とエキスパンダピストン52の連設部位には、キャリパシリンダ26に連通する出力ポート60が設けられている。前記入力ポート58と出力ポート60は、カットバルブ54の外周面に画成された連通孔62を介して連通している。
【0017】
一方、後輪Wr用のモジュレータ14aは、後輪Wrのブレーキペダル23に連結されたマスタシリンダ24aと後輪Wrのディスクプレート28aに連結されたキャリパシリンダ26aとを連通させている。なお、モジュレータ14aは上述したモジュレータ14と同一構成からなり、同一の構成要素には同一の参照数字に符号aを付し、その詳細な説明は省略する。
【0018】
ここで、前記コントロールユニット12は、図2に示すように、前後輪の車輪速度検出センサ16、16aから入力されたパルス信号に基づいて車輪速度を演算する車輪速度演算部70、70aと、前後輪の接地荷重検出センサ15、15aからの出力に基づき、最少の接地荷重分担をしている車輪を検出する荷重分担検出部72と、ポテンショメータ46、46aからの出力に基づき、モジュレータ14、14aがアンチロック制御されているか否かを判定し制御状態信号を出力するアンチロック制御判別部74と、前記荷重分担検出部72、あるいはアンチロック制御判別部74からの出力信号に応じて前記車輪速度から、適宜、車輪速度を選択する選択部76と、前記選択部76で選択された車輪速度から推定車体速度を求める推定車体速度演算部78と、前記推定車体速度と前後輪の車輪速度から前後輪のスリップ率を求めるスリップ率演算部80と、前記前後輪の車輪速度からそれぞれ車輪加減速度を求める車輪加減速度演算部82、82aと、前記アンチロック制御判別部74からの制御状態信号に基づき、前記スリップ率と車輪加減速度からブレーキ圧の昇減圧量を設定し、これに基づいて直流モータ30、30aの回転量をモータドライバ32、32aに出力するモータ制御部84とを備える。
【0019】
このように構成されるブレーキ制御装置10は、次のように作動する。
【0020】
マニュアル制御時には、リターンスプリング50の弾発力によってクランクピン42は予め設定された上限位置に保持され、このクランクピン42に装着されたカムベアリング48がエキスパンダピストン52を押し上げた状態で維持されている。これにより、カットバルブ54がエキスパンダピストン52によって押し上げられ、入力ポート58と出力ポート60とが連通している。
【0021】
そこで、ブレーキレバー22が把持されることによりマスタシリンダ24が付勢され、このマスタシリンダ24によって発生したブレーキ油圧は、入力ポート58、および出力ポート60を介してキャリパシリンダ26に伝達され、ディスクプレート28に制動力が付与される。
【0022】
アンチロック制御である場合の制御方法を、図3のフローチャートを参照して概略説明する。先ず、前後輪が同時にアンチロック制御(ABS)であるか否かを判定し(ステップS1)、前後輪が同時にアンチロック制御であれば、前後輪の接地荷重を比較し(ステップS2)、マップに基づいて接地荷重の小さい車輪をサイクリック制御し、他方の車輪を一定スリップ率制御とする(ステップS3、ステップS4)。また、前後輪が同時にアンチロック制御でない場合は、前輪アンチロック制御であるか否かを判定し(ステップS5)、前輪がアンチロック制御であれば、前輪に一定スリップ率制御を行い(ステップS6)、後輪がアンチロック制御であれば、後輪に一定スリップ率制御を行う(ステップS7)。
【0023】
最初に、前輪のみがアンチロック制御である場合について詳細に説明する。すなわち、ポテンショメータ46、46aからの出力信号に基づき、アンチロック制御判別部74において、前後輪のいずれがアンチロック制御されているか判別する。ここで、アンチロック制御判別部74から前輪のみがアンチロック制御であるという制御状態出力信号が荷重分担検出部72、選択部76、モータ制御部84に出力される。なお、荷重分担検出部72は、前記制御状態出力信号によって、検出信号を導出しない。前記荷重分担検出部72は、全車輪がアンチロック制御状態である場合にのみ検出信号を導出する。選択部76では、アンチロック制御されていない車輪速度、すなわち、後輪の車輪速度を選択する。推定車体速度演算部78では、前記後輪の車輪速度に基づいて推定車体速度を求める。このように、アンチロック制御されていない車輪(後輪Wr)の車輪速度に基づいて推定車体速度を求めるのは、アンチロック制御されている車輪(前輪Wf)が後述する一定スリップ率制御により、前輪の車輪速度が実車体速度から離間しているのに対して、後輪の車輪速度が実車体速度に近いためである。したがって、その後輪の車輪速度に基づいて推定車体速度を求めてアンチロック制御を行うため、前記アンチロック制御が精度良く行える。
【0024】
そこで、前記推定車体速度および前後輪の車輪速度に基づいて、スリップ率演算部80において、前後輪のスリップ率を求め、車輪加減速度演算部82で求められた前輪の車輪加減速度とともに、モータ制御部84に出力される。モータ制御部84では、アンチロック制御判別部74からの制御状態出力信号に基づき、図4に示すマップに基づいて前輪を一定スリップ率制御する。前記マップは、ファジイ理論により、図示しないスリップ率λ、車輪加減速度、ブレーキ昇減圧量のメンバシップ関数に基づいて設定されている。
【0025】
前記一定スリップ率制御では、モータ制御部84から前記マップに基づいて設定されたブレーキ圧の昇減圧量に対応する回転量がモータドライバ32に出力される。前記回転量に基づいて、直流モータ30を駆動してクランクピン42を変位させることにより、エキスパンダピストン52が上下動してカットバルブ54によって閉塞された出力ポート60の体積を増減させてキャリパシリンダ26のブレーキ圧を増減させる。したがって、車輪が減速を始めて、減速度が増大し、スリップ率λが増大して収束目標である目標スリップ率λTを越えると、ブレーキ圧を減少させる。このブレーキ圧の減少により、車輪が加速され、スリップ率λが目標スリップ率λTを下回ると、ブレーキ圧を増加させる。この結果、図4の矢印、あるいは、図5の実線に示すように、推定車体速度に対する目標スリップ率λTに相当する目標車輪速度(一点鎖線)近傍に収束する。この結果、スリップ率λが一定に制御されているため、制動力を最適な状態に制御できる。また、ブレーキ圧がほとんど変化せず、減速度がほぼ一定となるため、走行フィーリングが良好になるとともに車体のピッチング挙動等を抑制する。
【0026】
後輪Wrのみがアンチロック制御である場合は、前輪Wfの場合と同様にして後輪Wrのみを一定スリップ率制御する。
【0027】
前後輪が同時にアンチロック制御されている場合には、アンチロック制御判別部74において前後輪が同時にアンチロック制御であると判定され、その制御状態出力信号が荷重分担検出部72、選択部76、モータ制御部84に導出される。前記制御状態出力信号に基づいて荷重分担検出部72では、前後輪の接地荷重検出センサ15、15aの出力信号に基づき、接地荷重の小さい車輪を選択する。本実施例においては、接地荷重の小さい車輪が後輪Wrであったとすると、選択部76において、後輪Wrの車輪速度が選択され、推定車体速度演算部78において前記後輪の車輪速度に基づいて推定車体速度を求める。前記推定車体速度と車輪速度から前後輪のスリップ率λを求めるとともに、前後輪の車輪加減速度に基づいてモータ制御部84でブレーキ圧の昇減圧量を求める。この場合、前輪Wfは一定スリップ率制御であり、後輪Wrは後述するサイクリック制御となる。
【0028】
後輪Wrのサイクリック制御は、図6に示すマップに基づいて行われる。モータ制御部84から前記マップによって設定されたブレーキ圧の昇減圧量に対応する回転量をモータドライバ32aに出力する。したがって、前記回転量に従って直流モータ30aを駆動し、出力ポート60aの体積を増減させることにより、キャリパシリンダ26aのブレーキ圧を制御する。したがって、一旦低下した車輪速度が、ブレーキ圧の減少により一定スリップ率制御の場合の目標車輪速度まで増加してもブレーキ圧を減少させる(図5A点破線部参照)。さらに、スリップ率が0近傍、すなわち、車輪速度が増加して実車体速度近傍まで復帰しても減圧し、車輪速度が実車体速度に倣って減速し始めてブレーキ圧を増加するように設定されている(図5B点破線部参照)。したがって、図5の破線部、あるいは図6の矢印で示すようにブレーキ圧は昇減を繰り返し、図5の破線部に示すように、車輪速度が周期的に実車体速度に接近する。
【0029】
したがって、サイクリック制御されている後輪は、実車体速度近傍の車輪速度に周期的になるため、推定車体速度が精度良く求められる。この結果、前記推定車体速度から前後輪の制御に用いられるスリップ率が精度良く求められるため、精度の良いアンチロック制御が行われる。また、サイクリック制御が行われた車輪(後輪)は、接地荷重の小さい車輪であるため、車体の制動状態に付与する影響は小さく、また、他の車輪(前輪)が一定スリップ率制御されているため、制動性および走行フィーリングも良好である。
【0030】
このように本実施例に係るブレーキ制御装置では、前後輪の中、一方の車輪のみがアンチロック制御状態であれば、他の車輪の車輪速度から推定車体速度を求め、これに基づいて求めたスリップ率から前記一方の車輪を一定スリップ率制御するため、制動力を最適の状態に制御することができる。また、制動力がほぼ一定に保持されるので走行フィーリングが良好であり、車体のピッチング挙動等を抑制することができる。さらに、前後輪が同時にアンチロック制御状態であれば、前後輪の中、接地荷重の小さい車輪をサイクリック制御し、当該車輪の車輪速度に基づいて推定車体速度を求めるため、精度良くスリップ率が求まる。さらに、前記スリップ率に基づいて残りの車輪を一定スリップ率制御する。したがって、接地荷重の分担量が小さい車輪をサイクリック制御するため、車体の制動力に対する影響は小さく、また、他の車輪を一定スリップ率制御するため、車体の制動力が精度良く制御される。
【0031】
なお、本実施例では、ファジイ理論に基づいて設定されたマップにより一定スリップ率制御、サイクリック制御を行ったが、クリスプな関数等に基づいて制御することも勿論可能である。
【0032】
また、二輪車の多くは制動時に前輪分担荷重が後輪よりも一般的に大きくなるため、図7に示すように、接地荷重検出センサ15、15aおよび荷重分担検出部72を省略し、代わりに記憶部86を設け、前記記憶部86に接地荷重の小さい車輪、ここでは後輪を記憶させておくことにより、前後輪が同時にアンチロック制御時に後輪がサイクリック制御、前輪が一定スリップ率制御になるようにすることもできる。このように構成することにより接地荷重検出センサ15、15a等を省略できる。
【0033】
続いて、本発明に係るブレーキ制御装置を四輪自動車に適用した例を説明する。なお、第1実施例と同様な構成要素には同一の参照番号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0034】
本実施例では、前輪は左右独立2チャンネル、後輪1チャンネルの3チャンネルのブレーキ制御を行う。すなわち、本実施例のブレーキ制御装置90では、図8に示すように、前左車輪92、前右車輪94に対して、第1実施例のモジュレータ14と同様な構成であるモジュレータ14b、14cが、また、後左車輪96、後右車輪98に対して、両輪のキャリパシリンダ26に同一のキャリパ圧を供給するモジュレータ14dが備えられている。また、車輪92、94、96、98には、それぞれ図示しない接地荷重検出センサが備えられており、それぞれの車輪の接地荷重を検出している。
【0035】
このように構成されるブレーキ制御装置90では、第1実施例と略同様に構成されたコントロールユニット12a(図2参照)のアンチロック制御判別部74において、アンチロック制御しているモジュレータが1つ、あるいは2つであると判断された場合には、アンチロック制御されているモジュレータに対して第1実施例で説明した一定スリップ率制御を行う。この場合、選択部76では、アンチロック制御されていないモジュレータの車輪の中、最高の車輪速度を選択し、推定車体速度演算部78でこの車輪速度に基づいて推定車体速度を求め、これに基づいて前記一定スリップ率制御を行う。
【0036】
一方、アンチロック制御判別部74において、全車輪92、94、96、98が同時にアンチロック制御されている場合には、先ず、荷重分担検出部72において、最も荷重分担の少ない車輪を選択する。但し、モジュレータ14b、14c、14dが3チャンネルであるため、判断基準を以下のようにしている。すなわち、車輪92、94、96、98のそれぞれの接地荷重をI、II、III 、IVとすると、
I+II≧ III+IVならば、 車輪96、98
I+II< III+IVであり、
且つ、I≦IIならば、 車輪92
I>IIならば、 車輪94
を選択する。
【0037】
続いて、選択部76において、前記荷重分担検出部72において車輪96、98が選択された場合、あるいは、舵角センサ100によって検出された前輪の舵角が所定舵角αよりも大きく、車輪96、98の車輪速度の大きい方が選択された場合、これに基づいて推定車体速度演算部78で推定車体速度を求める。車輪92、あるいは車輪94が選択された場合には、当該車輪の車輪速度に基づいて推定車体速度を求める。
【0038】
モータ制御部84では、図9に示すように、舵角がα以上であり、あるいは前記荷重分担検出部72で車輪96、98が選択されていれば、モジュレータ14dをサイクリック制御し、他のモジュレータ14b、14cを一定スリップ率制御する。舵角がα以下で、前記荷重分担検出部72で選択された車輪が車輪92の場合には、モジュレータ14b、車輪94の場合にはモジュレータ14cをサイクリック制御し、他のモジュレータを一定スリップ率制御する。
【0039】
このように本実施例の制御においても、全車輪が同時にアンチロック制御させている場合であっても、舵角が所定角度α内であれば、荷重分担の低い車輪を制動するモジュレータのみをサイクリック制御し、その他のモジュレータを一定スリップ率制御するため、走行フィーリングに優れるとともに、推定車体速度が精度良く求められ、精緻なアンチロック制御が行われる。また、舵角が所定角度α以上であれば、操舵されない後輪である車輪96、98をサイクリック制御するため、優れた走行フィーリングを確保できる。
【0040】
【発明の効果】
本発明に係るブレーキ制御装置によれば、以下の効果が得られる。
【0041】
すなわち、ブレーキ制御装置では、各ブレーキ系統の中、一部のブレーキ系統のみがアンチロック制御状態であれば、他のアンチロック制御されていないブレーキ系統の車輪速度から推定車体速度を求め、これに基づいて求めたスリップ率から前記一部のブレーキ系統を一定スリップ率制御するため、制動力を最適の状態に制御することができる。また、制動力がほぼ一定に保持されるので走行フィーングに優れるとともに車体のピッチング挙動等を抑制することができる。さらに、全ブレーキ系統が同時にアンチロック制御状態であれば、全ブレーキ系統の中、接地荷重の小さい車輪を制動するブレーキ系統をサイクリック制御し、当該車輪の車輪速度に基づいて推定車体速度を求めるため、精度良くスリップ率が求まる。さらに、前記スリップ率に基づいて残りの車輪を一定スリップ率制御する。したがって、接地荷重の分担量が小さい車輪のブレーキ系統をサイクリック制御するため、車体の制動力に対する影響は小さく、他のブレーキ系統を一定スリップ率制御するため、車体の制動力が精度良く制御される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るブレーキ制御装置の概略構成図である。
【図2】本発明に係るブレーキ制御装置のコントロールユニットの構成図である。
【図3】本発明に係るブレーキ制御装置の制御方法を示したフローチャートである。
【図4】本発明に係るブレーキ制御装置の一定スリップ率制御を行う制御マップである。
【図5】本発明に係るブレーキ制御装置の制御結果を示した図である。
【図6】本発明に係るブレーキ制御装置のサイクリック制御を行う制御マップである。
【図7】本発明に係るブレーキ制御装置のコントロールユニットの構成図である。
【図8】本発明に係るブレーキ制御装置の構成図である。
【図9】本発明に係るブレーキ制御装置の選択回路における判断基準に示す図である。
【図10】従来例に係るブレーキ制御装置の制御結果を示す図である。
【図11】従来例に係るブレーキ制御装置の制御結果を示す図である。
【符号の説明】
10、90…ブレーキ制御装置
12、12a…コントロールユニット
14、14a〜14d…モジュレータ
15、15a…接地荷重検出センサ
16、16a…車輪速度検出センサ
24…マスタシリンダ
26…キャリパシリンダ
46、46a…ポテンショメータ
72…荷重分担検出部
74…アンチロック制御判別部
76…選択部
84…モータ制御部
100…舵角センサ
Claims (1)
- 複数のブレーキ系統を備え、前記各ブレーキ系統によって制動される車輪の路面に対するスリップ率等に基づいてブレーキ圧を制御するブレーキ制御装置であって、
各ブレーキ系統に対して運転者により操作されたブレーキ圧を制限するアンチロック制御状態であるか否かを判別するアンチロック制御判別手段と、
各車輪に掛かる荷重を比較して、最も荷重分担の低い最低荷重車輪を選択する荷重分担検出手段と、
各車輪の車輪速度を検出する車輪速度検出手段と、
アンチロック制御状態でない車輪または前記最低荷重車輪の前記車輪速度に基づき推定車体速度を算出する車体速度検出手段と、
一部のブレーキ系統がアンチロック制御状態であれば、アンチロック制御されるブレーキ系統に対して、前記推定車体速度に基づいて算出されるスリップ率をブレーキ圧の制御により最適な一定スリップ率に収束する一定スリップ率制御を施し、全ブレーキ系統がアンチロック制御状態であれば、前記最低荷重車輪を制動するブレーキ系統に対して所定範囲内でブレーキ圧の増減を繰り返すサイクリック制御を施し、その他のブレーキ系統に対して前記一定スリップ率制御を施すアンチロック制御手段と、
を備えることを特徴とするブレーキ制御装置。
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