JP3582215B2 - 歯付プーリ - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、回転角度の検出機能をもった歯付プーリに関する。
【0002】
【従来の技術】
歯付プーリは、歯付ベルトとの組合せで動力を滑り無く伝達することができ、4サイクル内燃機関のカム軸駆動用等に使用されている。歯付プーリはそれ自体では回転角度を検出する機能をもたないため、別のデバイスをカム軸等に付加する必要がある。歯付プーリが非磁性材である樹脂、アルミダイカスト等からなるものであれば、ボスあるいはリブあるいはリム部分に、回転角度検出用として同一円周上に全周にわたって等間隔もしくは任意の間隔で信号発生部材である磁石または鋼材のブロックを配置すればよい。また、歯付プーリが磁性材である焼結製であれば、同部分に信号発生部材である凹凸を設けるようにすればよい。そして、これら信号発生部材を電磁ピックアップセンサ等の磁気センサで検出することにより回転角度を測定し、内燃機関の点火タイミングや燃料噴射タイミングをとる。
上記信号発生部材として複数の磁石を配置した非磁性材からなる歯付プーリにおいては、同一円周上に表面の極性を同じにして複数の磁石を配置した場合、配置する磁石同士の間隔が狭いと、磁気センサである電磁ピックアップセンサから得られる出力は、先に検出される第1の磁石からの出力より、その後に検出される第1の磁石と隣合う第2の磁石からの出力の方が低下する傾向にある。これは、第2の磁石が第1の磁石の磁界の影響を受けるためである。この様な傾向があると、磁気センサから得られる出力波形を制御回路にてON、OFFの制御波形に変換し内燃機関の点火タイミングや燃料噴射タイミングをとる際に、制御回路のノイズフィルタによって出力の低い波形がカットされてしまい正常な制御波形が得られないことがある。
【0003】
そこで、第1の磁石と隣合う第2の磁石を有し、第2の磁石が第1の磁石の磁界の影響を受ける位置関係にある上記の歯付プーリにおいて、第2の磁石は、磁力を第1の磁石より大きくする提案がある。例えば、第1の磁石としてフェライト磁石を配置し、第2の磁石として希土類磁石を配置するものである(特開平6−280972号公報)。
第2の磁石の前にはこれに影響を与える第1の磁石が存在し、第2の磁石は第1の磁石の磁界の影響を受ける。従って、磁気センサは、第2の磁石の磁力を検出する際には、第2の磁石の磁力から第1の磁石の磁界の影響分を差し引いた磁力を検出することになる。上記公報が開示する技術は、この点を考慮して、第2の磁石の磁力を第1の磁石の磁力に比べて強くすることにより、第2の磁石が磁気センサを通過するときに得られる出力を、第1の磁石が磁気センサを通過するときに得られる出力と同等以上にすることを目指すものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記第2の磁石の磁力を強くした歯付プーリは、所期の目的を十分達成するものである。しかし、これら同種の複数個の歯付プーリを取扱中に、プーリの磁石装着面同士が近接して向き合うと、第2の磁石(希土類磁石)の磁力が強いがために、第1の磁石(フェライト磁石)を減磁させることがある。このような誤った取扱をした歯付プーリでは所期の特性を期待できなくなる。
本発明が解決しようとする課題は、第1の磁石と隣合う第2の磁石を有し、第2の磁石が第1の磁石の磁界の影響を受ける位置関係にあり、第2の磁石が磁気センサを通過するときに得られる出力を十分に大きくした構成の歯付プーリにおいて、複数個の歯付プーリを取扱中に、誤って磁石を減磁させないようにすることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る非磁性材からなる歯付プーリは、ボスあるいはリブあるいはリムの同一円周上に、回転角度検出用として複数個の磁石を表面の極性を同じにして配置してあり、歯付プーリ回転中にセンサによってより先に検出される第1の磁石と、第1の磁石と隣合う第2の磁石を有し、第2の磁石が第1の磁石の磁界の影響を受ける位置関係にあるものにおいて、第1の磁石と第2の磁石の最大エネルギー積を同じにして、且つ、第2の磁石の総磁束を第1の磁石の総磁束より大きくしたことを特徴とする。
本発明に係る歯付プーリは、第2の磁石の総磁束が第1の磁石の総磁束より大きい。従って、磁気センサが、第2の磁石の磁力から第1の磁石の磁界の影響分を差し引いて検出する第2の磁石の総磁束は十分に大きな値であり、第2の磁石が磁気センサを通過するときに得られる出力を、第1の磁石が磁気センサを通過するときに得られる出力と同等以上にすることができる。各磁石の最大エネルギー積は同じであるので、同種の複数個の歯付プーリを取扱中に誤って磁石同士が近接しても、相手磁石を減磁させることがない。
【0006】
【発明の実施の形態】
図1〜図3は、本発明を適用する歯付プーリの実施の形態を示している。図1はフェノール樹脂製歯付プーリの平面図、図2は同側面断面図、図3は信号発生部材である磁石からの信号を磁気センサで検出する様子を示す要部説明図である。
【0007】
歯付プーリ1のリブには、同一円周上に複数の磁石が表面をリブ面と同じにして、また、表面の極性を同じにして埋め込まれている。図3に示すように、歯付プーリ1の回転中には、磁石の表面に相対するように設置した磁気センサ2によって磁束の変化が検出されるが、より先に検出される第1の磁石11と、第1の磁石と隣合う第2の磁石12が配置されており、第2の磁石12はそのままでは第1の磁石の磁界の影響を受ける位置関係にある。第1の磁石11の前にはこれに影響を及ぼす磁石はなく、ほかに、第3の磁石13および第4の磁石14が同一円周上に配置されている。
このような磁石の配置の歯付プーリ1において、第2の磁石の総磁束を第1の磁石の総磁束より大きく設定する。但し、両磁石の最大エネルギー積は同レベルである。このような条件で、第2の磁石の総磁束を大きくするには、第2の磁石の体積を第1の磁石の体積より大きくする。また、全ての磁石は、磁力を大きくするために希土類磁石としている。
【0008】
磁石の磁力をそれほど大きくする必要がなければ、必ずしも希土類磁石を選択必要はない。歯付プーリに埋め込む複数個の磁石の最大エネルギー積が同レベルである限り、用途によっては焼結磁石や他の種類の磁石を選択してもよいし、異種の磁石を混在させて使用してもよい。
【0009】
【実施例】
(実施例)
図1に示したように、第1の磁石11ならびに第4の磁石14として、希土類磁石(直径3mm,厚み4mm,最大エネルギー積22MGOe)を、S極が磁気センサ2に相対するように配置した。また、第2の磁石12ならびに第3の磁石13として、希土類磁石(直径4mm,厚み3mm,最大エネルギー積22MGOe)を、S極が磁気センサ2に相対するように配置した。
磁気センサ2として電磁ピックアップセンサを使用し、図3に示すように、当該電磁ピックアップセンサを、各磁石の中心をトレースする位置に設置した。磁石と磁気センサとのギャップは1.3mmである。そして、歯付プーリ1を25rpmで回転させ、磁気センサ2から得られる出力を測定した。磁気センサ2から得られる出力波形ならびにこの出力波形に基づいて作られる制御波形を図4に示した。また、出力波形のピークJ,K,L,M(それぞれ、第1の磁石11、第2の磁石12、第3の磁石13、第4の磁石14の位置に相当、以下同様)の各出力値を表1に示す。第1の磁石と第2の磁石の体積の違いに基づく総磁束の差は、磁気センサの出力値で見ると50mVある。
次に、上記の構成の2個の歯付プーリの磁石装着面同士を向き合せ近接させる操作をした後、上記と同様に磁気センサ2から得られる出力を測定したところ、図4および表1に示した結果と何ら変るところはなかった。
【0010】
(従来例)
第1の磁石11ならびに第4の磁石14として、フェライト磁石(直径5mm,厚み5mm,最大エネルギー積4.5MGOe)を、S極が磁気センサ2に相対するように配置した。また、第2の磁石12ならびに第3の磁石13として、希土類磁石(直径4mm,厚み3mm,最大エネルギー積22MGOe)を、S極が磁気センサ2に相対するように配置した。
この歯付プーリが適正に取り扱われる限りにおいては、その特性は、図5および表1の従来例(正常)に示したとおりであり、上記実施例の結果とほぼ同様であった。
しかし、2個の歯付プーリの磁石装着面同士を向き合せ近接させる操作をした後、実施例と同様に磁気センサ2から得られる出力を測定したところ、第1の磁石11から得られる出力が著しく低下し、第2の磁石12から得られる出力が上昇していた。磁気センサ2から得られた出力波形ならびにこの出力波形に基づいて作られる制御波形を図6に示した。また、出力波形のピークJ,K,L,Mの各出力値を従来例(異常)として表1に示す。
【0011】
図4から本発明の実施例に係る歯付プーリは、2個の歯付プーリの磁石装着面同士を向き合せ近接させる操作をした後も、磁気センサによる第2の磁石の検出出力が第1の磁石の検出出力と同レベルであり、出力波形を制御回路にて制御波形に変換する際にノイズフィルタでカットされることがなく、正常な制御波形を得ることができる。
従来例において2個の歯付プーリの磁石装着面同士を向き合せ近接させる操作をした後では、第1の磁石11から得られる出力が著しく低下したため、出力波形を制御回路にて制御波形に変換する際にノイズフィルタでカットされてしまい、正常な制御波形が得られない。
【0012】
【表1】
Figure 0003582215
【0013】
【発明の効果】
上述のように、本発明に係る歯付プーリは、その複数個を取扱中に誤った操作をしても磁石が減磁されることがないので、そのような誤った操作があったとしても磁気センサによる検出出力から常に正常な制御波形を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る歯付プーリの実施例を示す平面図である。
【図2】図1の側面断面図である。
【図3】歯付プーリの磁石からの信号を磁気センサで検出する様子を示す要部説明図である。
【図4】実施例の歯付プーリにおいて磁気センサで検出した出力波形図と出力波形から得られる制御波形図である。
【図5】従来例の歯付プーリ(磁石が減磁されていない)において磁気センサで検出した出力波形図と出力波形から得られる制御波形図である。
【図6】従来例の歯付プーリ(磁石が減磁されている)において磁気センサで検出した出力波形図と出力波形から得られる制御波形図である。
【符号の説明】
1は、歯付プーリ
2は、磁気センサ1
11は、第1の磁石
12は、第2の磁石
13は、第3の磁石
14は、第4の磁石

Claims (4)

  1. 非磁性材からなる歯付プーリのボスあるいはリブあるいはリムの同一円周上に、回転角度検出用として複数個の磁石を表面の極性を同じにして配置したものであって、歯付プーリ回転中にセンサによってより先に検出される第1の磁石と、第1の磁石と隣合う第2の磁石を有し、第2の磁石が第1の磁石の磁界の影響を受ける位置関係にあるものにおいて、
    第1の磁石と第2の磁石の最大エネルギー積を同じにして、且つ、第2の磁石の総磁束を第1の磁石の総磁束より大きくしたことを特徴とする歯付プーリ。
  2. 第2の磁石の総磁束を大きくする手段が、第2の磁石の体積を第1の磁石の体積より大きくすることである請求項1記載の歯付プーリ。
  3. 第1の磁石と第2の磁石以外に少なくとも一つの第3の磁石を配置し、第1の磁石と第2の磁石と第3の磁石の最大エネルギー積を同じにした請求項1又は2記載の歯付プーリ。
  4. 配置した磁石の全てが希土類磁石である請求項1〜3のいずれかに記載の歯付プーリ。
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