JP3582213B2 - 大気圧イオン化質量分析計 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大気圧化でイオン化を行い、生成されたイオンを真空室内にある検出器に導いて検出することにより質量分析を行う大気圧イオン化質量分析計に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえば、液体クロマトグラフ質量分析装置(LC/MS)では、液体クロマトグラフ部で分離された成分をイオン化して質量分析部に導入する。したがって、分離成分をイオン化するインタフェースが必要である。LC/MSに一般的に用いられるインタフェースとしては、近年、エレクトロスプレイインタフェース(ESI)や大気圧化学イオン化インタフェース(APCI)等の大気圧下でのイオン化を行う方法が用いられるようになっている。一方、これらのインターフェースの後段に設けられる質量分析計は一般に高真空状態下で用いられる。したがって、大気圧イオン化法によるLC/MSでは通常、液体クロマトグラフ部から導入される液体を大気圧下でイオン化するための大気圧イオン化室と、質量分析計を内蔵する質量分析室との間に少なくとも1つの中間排気室を設けた構成とし、中間排気室とその後段の高真空排気室とに別々の真空排気系を設けて、前段側から後段側になるにつれて段階的に高真空状態になるようにしてある。図3はこのようなLC/MS装置の従来例の概略構成図である。図において、1はエレクトロスプレーイオン化手段のスプレーノズルであり、液体クロマトグラフ部からの試料導入管として機能している。2は大気圧イオン化室、3は油回転ポンプ(RP)により粗引排気される中間排気室、5はイオンを収束するレンズ機構、6はターボ分子ポンプ(TMP)により中間排気室3より高真空に排気される第質量分析室、7は質量分析計である。
【0003】
大気圧イオン化室2と中間排気室3との間には小径のオリフィス8を有する隔壁12が、また中間排気室3と質量分析室6との間には小径のスキマー9を有する隔壁11があり、これらのみによって互いの室間が連通するようにされているので、それぞれの室に対して独立の排気系を設けることにより、前段から後段になるにつれて高真空状態が維持できるようにしてある。そして、スプレーノズル1、中間排気室3の排気系(RP)、質量分析室6の排気系(TMP)、質量分析計7などの各部の制御は操作部のCPUにより制御される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来のLC/MSで質量分析は、前段にある液体クロマトグラフ部から試料が送られてきて、この試料をスプレーノズル1により大気圧イオン化室2内に噴霧される。このとき、スプレーノズル1に印加された高電界により試料は大気圧状態下でイオン化させられる。そして、生成されたイオンはオリフィス8を介して中間排気室3に入り、そのうちの一部のイオンはスキマー9を介して第1排気室3よりも高真空である質量分析室6に送られる。質量分析室6内にはイオン集束用のレンズ機構5が設けてあり、この中を通過したイオンは質量分析室6内の質量分析計7により検出される。質量分析計7としては四重極質量分析計が汎用されている。
【0005】
このような装置において、連続して測定を行っていると、検出信号に原因不明の不安定さを含むことがわかった。この変動は周囲の温度変化に依存しており、測定室の温度を一定に維持することにより、変動を抑えることができるものであった。
【0006】
しかしながら、通常測定室は質量分析計以外にも種々の分析装置を設置しており、測定室全体を一定温度に維持することは容易ではないし、たとえ一定温度に維持できるとしても一定温度の維持には大がかりな設備と費用とを要する。このような設備を使わず通常の測定室で分析をしようとする場合には、分析結果の検討に測定室の温度をも含めて考慮することが必要となり、測定室の温度の影響を無視してしまうと定量精度が悪化することとなる。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、温度に依存する不安定の原因をつきとめ、その原因を除去することにより、周囲温度の影響を受けにくくした質量分析装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するためになされた本発明の大気圧イオン化質量分析計は、大気圧イオン化室で生成したイオンを、少なくとも1つの中間排気室を介して高真空状態に維持された質量分析室に導いて検出する大気圧イオン化質量分析計において、中間排気室と質量分析室との間、または中間排気室と中間排気室との間にあり、イオンを通過させるためのスキマーを有する隔壁のうちの少なくとも1つを、スキマー口径を一定に保つために、温度制御装置により、連続測定の間一定温度に制御したことを特徴とする。
【0009】
大気圧イオン化室で生成されたイオンは、大気圧イオン化室と隣接する中間排気室が減圧されていることによりその圧力差により、あるいは図示しない中間排気室内に設けられたイオン引き込み電極により、中間排気室に引き込まれる。中間排気室に入ったイオンのうち一部のイオンは、中間排気室の後段側の隔壁に設けられたスキマーを介して、その中間排気室の後段に接続されていてさらに高真空状態に維持されている質量分析室(中間排気室が後段にあるときは次の中間排気室)に引き込まれ、残りは真空排気系により排出される。このときスキマーの口径が温度により変動することが検出信号の変動に影響を及ぼしていることがわかった。
【0010】
すなわち、本来中間排気室以降は真空状態であるから温度の影響が少ないと思われていたが、実際には周囲温度の影響によりスキマーの口径が変動することが検出信号に影響を与えていることが判明した。
【0011】
そこで、このスキマーに温度調節機構を設け、一定温度に維持することにより、スキマーの口径を一定に維持することができ、その結果、周囲温度が変動してもその影響を受けない質量分析計にすることができた。
【0012】
なお、従来から大気圧イオン化室と中間排気室との間の隔壁については、脱溶媒化という別の目的で温度調整されることがあったが、これとは異なる。すなわち、大気圧イオン化室と中間排気室との間の隔壁(最初の隔壁)について温度制御するか否かを問わず、本発明にあるように中間排気室と質量分析室との間、あるいは中間室間の隔壁(第2番目以降の隔壁)の温度制御を行うことにより、そのような温度制御を行わないものより、感度の向上を図ることができるものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図を用いて説明する。図1、2は本発明の一実施例を示す大気圧イオン化質量分析計を示す断面構成図である。なお、図において従来例と同じものについては図2と同符号を付することにより説明を省略する。
【0014】
図に示すように大気圧イオン化室2と中間排気室3との間の隔壁12(最初の隔壁)にはオリフィス8があり、このオリフィス8はスプレーノズル1の先端に対向している。なお、このオリフィス8のかわりにキャピラリを取り付けてもよい。さらにこのキャピラリに加熱機構を設けて脱溶媒化を図ってもよい。
【0015】
中間排気室3と質量分析室6との間の隔壁11(2番目の隔壁)には微小な口径(通常0.1〜1.0mm程度)のスキマー9が設けられている。スキマー9を有する隔壁11は、ステンレスで作られるのが一般的であるが、ステンレスより熱伝導性がよいアルミなどでもよい。要するに一定の熱伝導性を有しておればよく通常の金属材料であれば使用できる。
【0016】
スプレーノズル1の出口と、オリフィス8とスキマー9とは同一軸線上にくるように構成され、スプレーノズル1から噴霧されたイオンが容易にスキマー9を通過できるようにしてある。
【0017】
なお、図2に示すように、大気圧イオン化室2と中間排気室3との間に、更に別の中間排気室として機能する、もうひとつの第2中間排気室3’(さらに第3中間排気室を設けてもよい)を有するときは第2中間排気室3’と中間排気室3の間に設けられる追加の第2の隔壁11’にもスキマー9’が設けられることになる。
【0018】
そして、本発明での特徴をなす点としてスキマー9を有する隔壁11が温度制御装置10により、一定温度になるように温度調整されている(隔壁11’があるときは、別の温度制御装置10’により隔壁11’についても隔壁11と同様に温度調整されるほうがより好ましい)。
【0019】
この温度制御装置10は、隔壁11に接続された図示しない熱電対などの温度計からの信号を受けて隔壁温度が一定となるように加熱できるようにしてある。そして、たとえば、室温より少し高い温度の摂氏50〜60度に温度調節することにより一定温度に維持するようにしてある。この制御温度は温度調節ができる温度であれば特に限定されない。なお、この温度をさらに高温にした場合には、他の効果としてベーキング効果を得ることもできる。すなわち、たとえば摂氏100度以上にて温度制御すれば、水分子を含む隔壁の吸着分子が容易に脱離されることとなり、十分に吸着ガスを追い出した状態で分析を始めるようにすれば、バックグランドノイズの低下を図ることもできる。このような温度で使用する場合は、隔壁が摂氏100度でも歪まないような熱処理や材料や厚みを選びさえすれば容易に行うことができる。
【0020】
そして、この隔壁11の温度制御により、スキマー9の口径の収縮、膨張が生じず、一定の大きさの口径に保持される。それゆえ、スプレーノズルから一定量の試料が噴霧されるかぎり、スキマー9を通過するイオン量も一定となる。
【0021】
本実施例では隔壁11(2番目以降の隔壁)を一定温度となるように制御した。しかし、従来からなされている脱溶媒化のための最初の隔壁12(大気圧イオン化室2と第1排気室3との間の隔壁12)の温度制御をも、並行して実施してもよい。その場合、最初の隔壁12の加熱制御は脱溶媒化という目的であるため、最初の隔壁12は摂氏100度以上で温度制御されるのが望ましい。また、オリフィス8のかわりにキャピラリを設けてこのキャピラリを摂氏100度程度以上に加熱するようにして脱溶媒化をはかってもよい。
【0022】
また、中間排気室が2つ以上ある場合は、すべての隔壁11、11’(あるいはその他の隔壁11に相当する隔壁)を温度制御することが最も望ましいが、少なくとも1つの隔壁を温度制御すれば、温度制御しないときよりも感度の向上が図れる。
【0023】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明の大気圧イオン化質量分析計では、中間排気室と質量分析室との間にある隔壁、あるいは中間室間にある隔壁が一定温度に維持されるように温度制御したので、スキマーの口径が一定となり、通過イオン量が安定することとなって、検出信号の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である大気圧イオン化質量分析計の断面構成図。
【図2】本発明の他の一実施例である大気圧イオン化質量分析計の断面構成図。
【図3】従来からの大気圧イオン化質量分析計の断面構成図。
【符号の説明】
1:スプレーノズル
2:大気圧イオン化室
3:中間排気室
3’:第2中間排気室
6:質量分析室
7:質量分析計
8:オリフィス
9、9’:スキマー
10、10’:温度制御装置
11、11’:隔壁(2番目以降)
12:隔壁(最初の隔壁)
Claims (1)
- 大気圧イオン化室で生成したイオンを、少なくとも1つの中間排気室を介して高真空状態に維持された質量分析室に導いて検出する大気圧イオン化質量分析計において、中間排気室と質量分析室との間、または中間排気室と中間排気室との間にあり、イオンを通過させるためのスキマーを有する隔壁のうちの少なくとも1つを、スキマー口径を一定に保つために、温度制御装置により、連続測定の間一定温度に制御したことを特徴とする大気圧イオン化質量分析計。
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JP06344896A JP3582213B2 (ja) | 1996-03-19 | 1996-03-19 | 大気圧イオン化質量分析計 |
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JP06344896A JP3582213B2 (ja) | 1996-03-19 | 1996-03-19 | 大気圧イオン化質量分析計 |
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1996
- 1996-03-19 JP JP06344896A patent/JP3582213B2/ja not_active Expired - Fee Related
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