JP3578018B2 - 耐食性に優れた有機被覆鋼板およびその製造方法 - Google Patents

耐食性に優れた有機被覆鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、家電、建材用途等に最適な有機被覆鋼板に関し、製品を取扱う作業者やユーザーへの影響、製造時の排水処理対策、さらには使用環境下における製品からの有害物質の揮発・溶出などの環境問題に適応するために、製造時および製品中に環境・人体に有害なクロム、鉛、カドミウム、水銀などの重金属を全く含まない環境適応型表面処理鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
家電製品用鋼板、建材用鋼板、自動車用鋼板には、従来から亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、耐食性(耐白錆性、耐赤錆性)を向上させる目的で、クロム酸、重クロム酸またはその塩類を主要成分とした処理液によるクロメート処理が施された鋼板が幅広く用いられている。このクロメート処理は耐食性に優れ、且つ比較的簡単に行うことができる経済的な処理方法である。
【0003】
クロメート処理は公害規制物質である6価クロムを使用するものであるが、この6価クロムは処理工程においてクローズドシステムで処理され、完全に還元・回収されて自然界には放出されていないこと、また、有機皮膜によるシーリング作用によってクロメート皮膜中からのクロム溶出もほぼゼロにできることから、実質的には6価クロムによって環境や人体が汚染されることはない。しかしながら、最近の地球環境問題から、6価クロムを含めた重金属の使用を自主的に削減しようとする動きが高まりつつある。また、廃棄製品のシュレッダーダストを投棄した場合に環境を汚染しないようにするため、製品中にできるだけ重金属を含ませない若しくはこれを削減しようとする動きも始まっている。
【0004】
このようなことから、亜鉛系めっき鋼板の白錆の発生を防止するために、クロメート処理によらない無公害な処理技術が数多く提案されている。このうち有機系化合物や有機樹脂を利用した方法もいくつか提案されており、例えば、以下のような方法を挙げることができる。
【0005】
(1)タンニン酸を用いる方法(例えば、特開昭51−71233号)
(2)エポキシ樹脂とアミノ樹脂とタンニン酸を混合した熱硬化性塗料を用いる方法(例えば、特開昭63−90581号)
(3)水系樹脂と多価フェノールカルボン酸の混合組成物を用いる方法(例えば、特開平8−325760号)などのようなタンニン酸のキレート力を利用する方法
(4)ヒドラジン誘導体水溶液をブリキまたは亜鉛鉄板の表面に塗布する表面処理方法(例えば、特公昭53−27694号、特公昭56−10386号)
【0006】
(5)アシルザルコシンとベンゾトリアソールとの混合物にアミンを付加させて得られたアミン付加塩を含む防錆剤を用いる方法(例えば、特開昭58−130284号)
(6)ベンゾチアゾール化合物などの複素環化合物とタンニン酸を混合した処理剤を用いる方法(例えば、特開昭57−198267号)
(7)水酸基含有モノマーを共重合成分として含有する有機樹脂とリン酸、金属のリン酸系化合物からなる表面処理用組成物を用いる方法(例えば、特開平9−208859号、特開平9−241856号)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの従来技術には以下に述べるような問題点がある。
まず、上記(1)〜(4)の方法はいずれも耐食性などの面で問題がある。すなわち、上記(1)の方法では耐食性が不十分であり、また処理後の均一な外観が得られない。また、上記(2)の方法は、特に亜鉛系またはアルミニウム系めっき表面に直接、薄膜状(0.1〜5μm)の防錆皮膜を形成することを狙いとしたものではなく、このため亜鉛系またはアルミニウム系めっき表面に薄膜状に適用したとしても十分な防食効果は得られない。また、上記(3)の方法についても同様に耐食性が不十分である。
【0008】
さらに上記(4)の方法は亜鉛系またはアルミニウム系めっき鋼板について適用したものではなく、また、仮に亜鉛系またはアルミニウム系めっき鋼板に適用したとしても、得られる皮膜はネットワーク構造を有していないため十分なバリヤー性がなく、このため耐食性が不十分である。また、特公昭53−23772号、特公昭56−10386号には皮膜の均一性向上を狙いとしてヒドラジン誘導体水溶液に水溶性高分子化合物(ポリビニルアルコール類、マレイン酸エステル共重合体、アクリル酸エステル共重合体など)を混合することが開示されているが、ヒドラジン誘導体水溶液と水溶性高分子化合物との単なる混合物では十分な耐食性は得られない。
【0009】
さらに、上記(5)、(6)の方法も亜鉛系またはアルミニウム系めっき鋼板表面に短時間で防錆皮膜を形成することを狙いとしたものではなく、また、仮に処理剤をめっき鋼板表面に塗布したとしても、酸素や水などの腐食因子へのバリヤー性がないため優れた耐食性は得られない。また、(6)の方法については、添加剤として樹脂(エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ニトロセルロース樹脂、塩化ビニル樹脂など)との混合についても述べられているが、ベンゾチアゾール化合物などの複素環化合物と樹脂との単なる混合物では十分な耐食性は得られない。
また、上記(7)の方法は有機樹脂とリン酸系の無機成分から構成される単層皮膜を形成する技術に関するものであるが、このような単層皮膜のみではバリヤー性が不十分であり、このため十分な耐食性は得られない。
【0010】
また、上記(1)〜(7)の方法はいずれも、プレス加工などで表面に塗布した油を除去するために、スプレーなどによるpH9〜11程度のアルカリ脱脂を行うような実用条件においては、アルカリ脱脂によって皮膜が剥離または損傷し、耐食性を保持できないという問題がある。したがって、これらの方法は、防錆皮膜を形成する方法としては実用に適したものではない。
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、皮膜中に6価クロムなどの重金属を含まず、製造工程や使用する際にも安全、無害であって、しかも優れた耐食性が得られる有機被覆鋼板を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討を行った結果、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、第1層皮膜として特定の複合酸化物皮膜を形成し、その上部に第2層皮膜として特定のキレート形成樹脂皮膜を形成することにより、さらに、好ましくはこのキレート形成樹脂皮膜中に特定の防錆添加剤を適量配合することにより、環境や人体に悪影響を及ぼすおそれのあるクロメート処理を行うことなく、無公害で且つ耐食性に極めて優れた有機被覆鋼板が得られることを見い出した。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、その特徴とする構成は以下の通りである。
【0012】
[1] 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、第1層皮膜として、
(α)酸化物微粒子と、
(β)リン酸および/またはリン酸化合物と、
を含有し、膜厚が0.005〜3μmまたは上記成分(α)とP換算での上記成分(β)の合計付着量が6〜3600mg/mである複合酸化物皮膜を有し、
その上部に第2層皮膜として、皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物を含む膜厚が0.1〜5μmの有機皮膜を有することを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0013】
[2] 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、第1層皮膜として、
(α)酸化物微粒子と、
(β)リン酸および/またはリン酸化合物と、
を含有し、膜厚が0.005〜3μmまたは上記成分(α)とP換算での上記成分(β)の合計付着量が6〜3600mg/mである複合酸化物皮膜を有し、
その上部に第2層皮膜として、皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物と、無機系防錆顔料(a)とを含み、該無機系防錆顔料(a)の含有量が前記反応生成物100重量部(固形分)に対して1〜100重量部(固形分)である、膜厚が0.1〜5μmの有機皮膜を有することを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0014】
[3] 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、第1層皮膜として、
(α)酸化物微粒子と、
(β)リン酸および/またはリン酸化合物と、
を含有し、膜厚が0.005〜3μmまたは上記成分(α)とP換算での上記成分(β)の合計付着量が6〜3600mg/mである複合酸化物皮膜を有し、
その上部に第2層皮膜として、皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物と、固形潤滑剤(b)とを含み、該固形潤滑剤(b)の含有量が前記反応生成物100重量部(固形分)に対して1〜80重量部(固形分)である、膜厚が0.1〜5μmの有機皮膜を有することを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0015】
[4] 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、第1層皮膜として、
(α)酸化物微粒子と、
(β)リン酸および/またはリン酸化合物と、
を含有し、膜厚が0.005〜3μmまたは上記成分(α)とP換算での上記成分(β)の合計付着量が6〜3600mg/mである複合酸化物皮膜を有し、
その上部に第2層皮膜として、皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物と、無機系防錆顔料(a)と、固形潤滑剤(b)とを含み、前記無機系防錆顔料(a)の含有量が前記反応生成物100重量部(固形分)に対して1〜100重量部(固形分)、前記固形潤滑剤(b)の含有量が前記反応生成物100重量部(固形分)に対して1〜80重量部(固形分)である、膜厚が0.1〜5μmの有機皮膜を有することを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0016】
[5] 上記[1]〜[4]のいずれかの有機被覆鋼板において、有機皮膜中の無機系防錆顔料(a)がシリカ化合物、リン酸塩、カルシウム化合物の中から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
[6] 上記[5]の有機被覆鋼板において、有機皮膜中の無機系防錆顔料(a)がイオン交換シリカであることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
[7] 上記[5]の有機被覆鋼板において、有機皮膜中の無機系防錆顔料(a)が微粒子シリカであることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0017】
[8] 上記[5]の有機被覆鋼板において、有機皮膜中の無機系防錆顔料(a)がイオン交換シリカ(c)と微粒子シリカ(d)からなり、且つイオン交換シリカ(c)と微粒子シリカ(d)の含有量(固形分)の重量比(c)/(d)が1/99〜99/1であることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
[9] 上記[5]の有機被覆鋼板において、有機皮膜中の無機系防錆顔料(a)がリン酸亜鉛(e)および/またはリン酸アルミニウム(f)であることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0018】
[10] 上記[5]の有機被覆鋼板において、有機皮膜中の無機系防錆顔料(a)がリン酸亜鉛(e)および/またはリン酸アルミニウム(f)とカルシウム化合物(g)からなり、且つリン酸亜鉛(e)および/またはリン酸アルミニウム(f)の合計の含有量(固形分)とカルシウム化合物(g)の含有量(固形分)の重量比(e,f)/(g)が1/99〜99/1であることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
[11] 上記[5]、[6]、[8]のいずれかの有機被覆鋼板において、有機皮膜中のイオン交換シリカ(c)がCaイオン交換シリカであることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0019】
[12] 上記[11]の有機被覆鋼板において、Caイオン交換シリカの平均粒子径が4μm以下であることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
[13] 上記[11]または[12]の有機被覆鋼板において、Caイオン交換シリカのCa濃度が2〜8wt%であることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
[14] 上記[1]〜[13]のいずれかの有機被覆鋼板において、皮膜形成有機樹脂(A)がエポキシ基含有樹脂(D)であることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0020】
[15] 上記[1]〜[14]のいずれかの有機被覆鋼板において、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)が、活性水素を有するピラゾール化合物および/または活性水素を有するトリアゾール化合物であることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
[16] 上記[1]〜[15]のいずれかの有機被覆鋼板において、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)が活性水素含有化合物(B)中に10〜100モル%含まれることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0021】
[17] 上記[14]〜[16]のいずれかの有機被覆鋼板において、エポキシ基含有樹脂(D)が下記式(1)で示されるエポキシ樹脂であることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【化2】
Figure 0003578018
【0022】
[18] 上記[1]〜[17]のいずれかの有機被覆鋼板において、複合酸化物皮膜中に含まれる成分(α)が酸化ケイ素であることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
[19] 上記[18]の有機被覆鋼板において、複合酸化物皮膜中に成分(α)として含まれる酸化ケイ素のSiO換算量が、複合酸化物皮膜の合計付着量に対する重量割合で5〜95wt%であることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0023】
[20] 上記[18]または[19]の有機被覆鋼板において、複合酸化物皮膜が成分(α)および(β)として、
(α)SiO微粒子をSiO換算量で0.01〜3000mg/m
(β)リン酸および/またはリン酸化合物をP換算量で0.01〜3000mg/m
を含有し、成分(α)および(β)の上記付着量の合計が6〜3600mg/mであることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0024】
[21] 上記[1]〜[20]のいずれかの有機被覆鋼板において、複合酸化物皮膜が、さらに、
(γ)Mg、Ca、Sr、Baの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)、
を含有し、膜厚が0.005〜3μmまたは成分(α)とP換算での成分(β)と金属換算での上記成分(γ)の合計付着量が6〜3600mg/mであることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0025】
[22] 上記[1]〜[20]のいずれかの有機被覆鋼板において、複合酸化物皮膜が、さらに、
(δ)Li、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、La、Ceの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)、
を含有し、膜厚が0.005〜3μmまたは成分(α)とP換算での成分(β)と金属換算での上記成分(δ)の合計付着量が6〜3600mg/mであることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0026】
[23] 上記[1]〜[20]のいずれかの有機被覆鋼板において、複合酸化物皮膜が、さらに、
(γ)Mg、Ca、Sr、Baの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)と、
(δ)Li、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、La、Ceの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)と、
を含有し、膜厚が0.005〜3μmまたは成分(α)とP換算での成分(β)と金属換算での上記成分(γ)と金属換算での上記成分(δ)の合計付着量が6〜3600mg/mであることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0027】
[24] 上記[21]または[23]の有機被覆鋼板において、複合酸化物皮膜中に含まれる成分(γ)がMg(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)であることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
[25] 上記[22]または[23]の有機被覆鋼板において、複合酸化物皮膜中に含まれる成分(δ)がNi、Mn(但し、いずれも化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)の中から選ばれる1種または2種であることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0028】
[26] 上記[21]の有機被覆鋼板において、複合酸化物皮膜が成分(α)、(β)および(γ)として、
(α)SiO微粒子をSiO換算量で0.01〜3000mg/m
(β)リン酸および/またはリン酸化合物をP換算量で0.01〜3000mg/m
(γ)Mg(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)をMg換算量で0.01〜1000mg/m
を含有し、成分(α)、(β)および(γ)の上記付着量の合計が6〜3600mg/mであることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0029】
[27] 上記[22]または[25]の有機被覆鋼板において、複合酸化物皮膜が成分(α)、(β)および(δ)として、
(α)SiO微粒子をSiO換算量で0.01〜3000mg/m
(β)リン酸および/またはリン酸化合物をP換算量で0.01〜3000mg/m
(δ)Li、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、La、Ceの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)を金属換算量で0.01〜1000mg/m
を含有し、成分(α)、(β)および(δ)の上記付着量の合計が6〜3600mg/mであることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0030】
[28] 上記[23]または[25]の有機被覆鋼板において、複合酸化物皮膜が成分(α)、(β)、(γ)および(δ)として、
(α)SiO微粒子をSiO換算量で0.01〜3000mg/m
(β)リン酸および/またはリン酸化合物をP換算量で0.01〜3000mg/m
(γ)Mg(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)をMg換算量で0.01〜1000mg/m
(δ)Li、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、La、Ceの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)を金属換算量で0.01〜1000mg/m
を含有し、成分(α)、(β)、(γ)および(δ)の上記付着量の合計が6〜3600mg/mであることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0031】
[29] 上記[21]、[23]、[25]〜[28]のいずれかの有機被覆鋼板において、複合酸化物皮膜中の成分(γ)がMg(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)であり、且つ成分(γ)と成分(α)との割合が、成分(γ)のMg換算量と成分(α)のSiO換算量とのモル比[Mg/SiO]で1/100〜100/1の範囲であることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0032】
[30] 上記[21]、[23]、[25]〜[29]のいずれかの有機被覆鋼板において、複合酸化物皮膜中の成分(γ)がMg(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)であり、且つ成分(β)と成分(γ)との割合が、成分(β)のP換算量と成分(γ)のMg換算量とのモル比[P/Mg]で1/100〜100/1の範囲であることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0033】
[31] 上記[22]〜[25]、[27]〜[30]のいずれかの有機被覆鋼板において、複合酸化物皮膜中の成分(δ)と成分(α)との割合が、成分(δ)の金属換算量Me(但し、2種以上の金属を含む場合はその合計量)と成分(α)のSiO換算量とのモル比[Me/SiO]で1/100〜100/1の範囲であることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0034】
[32] 上記[22]〜[25]、[27]〜[31]のいずれかの有機被覆鋼板において、複合酸化物皮膜中の成分(β)と成分(δ)との割合が、成分(β)のP換算量と成分(δ)の金属換算量Me(但し、2種以上の金属を含む場合はその合計量)とのモル比[P/Me]で1/2〜2/1の範囲であることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
[33] 上記[1]〜[32]のいずれかの有機被覆鋼板において、複合酸化物皮膜が、さらに有機樹脂を含有することを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0035】
[34] 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面を、少なくとも、
(イ)酸化物微粒子を0.001〜3.0モル/L、
(ロ)リン酸および/またはリン酸化合物をP換算量で0.001〜6.0モル/L、
を含有する水溶液で処理し、しかる後、加熱乾燥することにより、めっき鋼板表面に第1層皮膜として、
(α)酸化物微粒子と、
(β)リン酸および/またはリン酸化合物と、
を含有し、膜厚が0.005〜3μmまたは上記成分(α)とP換算での上記成分(β)の合計付着量が6〜3600mg/mである複合酸化物皮膜を形成し、次いで、その上部に上記[1]〜[17]に記載のいずれかの有機皮膜構成成分を含む有機皮膜形成用の塗料組成物を塗布し、加熱乾燥することにより、膜厚が0.1〜5μmの有機皮膜を形成することを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
【0036】
[35] 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面を、少なくとも、
(イ)酸化物微粒子を0.001〜3.0モル/L、
(ロ)リン酸および/またはリン酸化合物をP換算量で0.001〜6.0モル/L、
(ハ)Mg、Ca、Sr、Baの各金属イオン、前記金属のうちの少なくとも1種を含む水溶性イオン、前記金属のうちの少なくとも1種を含む化合物、前記金属のうちの少なくとも1種を含む複合化合物の中から選ばれる1種または2種以上を、前記金属の金属量換算の合計で0.001〜3.0モル/L、
を含有するpH0.5〜5の酸性水溶液で処理し、しかる後、加熱乾燥することにより、めっき鋼板表面に第1層皮膜として、
(α)酸化物微粒子と、
(β)リン酸および/またはリン酸化合物と、
(γ)Mg、Ca、Sr、Baの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)と、
を含有し、膜厚が0.005〜3μmまたは上記成分(α)とP換算での上記成分(β)と金属換算での上記成分(γ)の合計付着量が6〜3600mg/mである複合酸化物皮膜を形成し、次いで、その上部に上記[1]〜[17]に記載のいずれかの有機皮膜構成成分を含む有機皮膜形成用の塗料組成物を塗布し、加熱乾燥することにより、膜厚が0.1〜5μmの有機皮膜を形成することを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
【0037】
[36] 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面を、少なくとも、
(イ)酸化物微粒子を0.001〜3.0モル/L、
(ロ)リン酸および/またはリン酸化合物をP換算量で0.001〜6.0モル/L、
(ニ)Li、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、La、Ceの各金属イオン、前記金属のうちの少なくとも1種を含む水溶性イオン、前記金属のうちの少なくとも1種を含む化合物、前記金属のうちの少なくとも1種を含む複合化合物の中から選ばれる1種または2種以上を、前記金属の金属量換算の合計で0.001〜3.0モル/L、
を含有するpH0.5〜5の酸性水溶液で処理し、しかる後、加熱乾燥することにより、めっき鋼板表面に第1層皮膜として、
(α)酸化物微粒子と、
(β)リン酸および/またはリン酸化合物と、
(δ)Li、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、La、Ceの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)と、
を含有し、膜厚が0.005〜3μmまたは上記成分(α)とP換算での上記成分(β)と金属換算での上記成分(δ)の合計付着量が6〜3600mg/mである複合酸化物皮膜を形成し、次いで、その上部に上記[1]〜[17]に記載のいずれかの有機皮膜構成成分を含む有機皮膜形成用の塗料組成物を塗布し、加熱乾燥することにより、膜厚が0.1〜5μmの有機皮膜を形成することを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
【0038】
[37] 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面を、少なくとも、
(イ)酸化物微粒子を0.001〜3.0モル/L、
(ロ)リン酸および/またはリン酸化合物をP換算量で0.001〜6.0モル/L、
(ハ)Mg、Ca、Sr、Baの各金属イオン、前記金属のうちの少なくとも1種を含む水溶性イオン、前記金属のうちの少なくとも1種を含む化合物、前記金属のうちの少なくとも1種を含む複合化合物の中から選ばれる1種または2種以上を、前記金属の金属量換算の合計で0.001〜3.0モル/L、
(ニ)Li、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、La、Ceの各金属イオン、前記金属のうちの少なくとも1種を含む水溶性イオン、前記金属のうちの少なくとも1種を含む化合物、前記金属のうちの少なくとも1種を含む複合化合物の中から選ばれる1種または2種以上を、前記金属の金属量換算の合計で0.001〜3.0モル/L、
を含有するpH0.5〜5の酸性水溶液で処理し、しかる後、加熱乾燥することにより、めっき鋼板表面に第1層皮膜として、
(α)酸化物微粒子と、
(β)リン酸および/またはリン酸化合物と、
(γ)Mg、Ca、Sr、Baの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)と、
(δ)Li、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、La、Ceの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)と、
を含有し、膜厚が0.005〜3μmまたは上記成分(α)とP換算での上記成分(β)と金属換算での上記成分(γ)と金属換算での上記成分(δ)の合計付着量が6〜3600mg/mである複合酸化物皮膜を形成し、次いで、その上部に上記[1]〜[17]に記載のいずれかの有機皮膜構成成分を含む有機皮膜形成用の塗料組成物を塗布し、加熱乾燥することにより、膜厚が0.1〜5μmの有機皮膜を形成することを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
【0039】
[38] 上記[34]〜[37]のいずれかの製造方法において、複合酸化物皮膜形成用の水溶液中の添加成分(イ)が酸化ケイ素であることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
[39] 上記[34]〜[38]のいずれかの製造方法において、複合酸化物皮膜形成用の水溶液中の添加成分(ロ)がリン酸アンモニウムであることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
【0040】
[40] 上記[35]、[37]〜[39]のいずれかの製造方法において、複合酸化物皮膜形成用の酸性水溶液中の添加成分(ハ)がMgイオン、Mgを含む水溶性イオン、Mgを含む化合物、Mgを含む複合化合物の中から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
[41] 上記[36]〜[40]のいずれかの製造方法において、複合酸化物皮膜形成用の酸性水溶液中の添加成分(ニ)がNiイオン、Mnイオン、Niを含む水溶性イオン、Mnを含む水溶性イオン、Niを含む化合物、Mnを含む化合物、Niを含む複合化合物、Mnを含む複合化合物の中から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
【0041】
[42] 上記[35]、[37]〜[39]、[41]のいずれかの製造方法において、複合酸化物皮膜形成用の酸性水溶液中の添加成分(ハ)がMgイオン、Mgを含む水溶性イオン、Mgを含む化合物、Mgを含む複合化合物の中から選ばれる1種または2種以上であり、且つ添加成分(ハ)と添加成分(イ)との割合が、添加成分(ハ)のMg換算量と添加成分(イ)のSiO換算量とのモル比[Mg/SiO]で1/100〜100/1の範囲であることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
【0042】
[43] 上記[35]、[37]〜[39]、[41]、[42]のいずれかの製造方法において、複合酸化物皮膜形成用の酸性水溶液中の添加成分(ハ)がMgイオン、Mgを含む水溶性イオン、Mgを含む化合物、Mgを含む複合化合物の中から選ばれる1種または2種以上であり、且つ添加成分(ロ)と添加成分(ハ)との割合が、添加成分(ロ)のP換算量と添加成分(ハ)のMg換算量とのモル比[P/Mg]で1/100〜100/1の範囲であることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
【0043】
[44] 上記[36]〜[43]のいずれかの製造方法において、複合酸化物皮膜形成用の酸性水溶液中の添加成分(ニ)と添加成分(イ)との割合が、添加成分(ニ)の金属換算量Meと添加成分(イ)のSiO換算量とのモル比[Me/SiO]で1/100〜100/1の範囲であることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
【0044】
[45] 上記[36]〜[44]のいずれかの製造方法において、複合酸化物皮膜形成用の酸性水溶液中の添加成分(ロ)と添加成分(ニ)との割合が、添加成分(ロ)のP換算量と添加成分(ニ)の金属換算量Meとのモル比[P/Me]で1/2〜2/1の範囲であることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
[46] 上記[34]〜[45]のいずれかの製造方法において、複合酸化物皮膜形成用の水溶液が、さらに有機樹脂を含有することを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
【0045】
本発明の有機被覆鋼板の基本的な特徴は、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、第1層皮膜として、(α)酸化物微粒子と、(β)リン酸および/またはリン酸化合物とを含有し、さらに好ましくは、(γ)Mg、Ca、Sr、Baの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)、および/または(δ)Li、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、La、Ceの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)を含有する(好ましくは、主成分として含有する)複合酸化物皮膜を形成し、さらにその上部に第2層皮膜として、皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)とを反応させることにより、皮膜形成用樹脂(A)にキレート形成基としてヒドラジン誘導体(C)を付与し、この反応生成物であるキレート形成樹脂を含有する(好ましくは、主成分として含有する)有機皮膜を形成した点にある。
【0046】
また、第1層皮膜である上記複合酸化物皮膜は、成分(α)としてSiO微粒子を特定の付着量で、成分(β)としてリン酸および/またはリン酸化合物を特定の付着量で、それぞれ含有させることが好ましい。
また、複合酸化物皮膜が上記成分(γ)および/または成分(δ)をさらに含む場合には、成分(α)としてSiO微粒子を、成分(β)としてリン酸および/またはリン酸化合物をそれぞれ特定の付着量で含有させるとともに、成分(γ)としてMg、Mgを含む化合物、Mgを含む複合化合物の中から選ばれる1種または2種以上(マグネシウム成分)を特定の付着量で、上記成分(δ)(特に好ましくは、Ni、Mn、Niを含む化合物、Mnを含む化合物、Niを含む複化合物、Mnを含む複化合物の中から選ばれる1種または2種以上)を特定の付着量で、それぞれ含有させることが好ましい。
【0047】
上記の第1層皮膜と第2層皮膜は、それぞれ単独の皮膜としても従来の非クロメート系皮膜に較べて優れた防錆効果を有するが、本発明ではこれらの皮膜を下層および上層とする二層皮膜構造とし、この二層皮膜構造による相乗効果によって薄膜の皮膜でありながらクロメート皮膜に匹敵する耐食性を得ることを可能にしたものである。このような特定の複合酸化物皮膜と有機皮膜とからなる二層皮膜構造による防食機構は必ずしも明らかでないが、以下に述べるような両皮膜による腐食抑制作用が複合化した結果であると考えられる。
【0048】
上記第1層皮膜である複合酸化物皮膜の防食機構については必ずしも明確でないが、緻密で難溶性の複合酸化物皮膜がバリヤー性皮膜として腐食因子を遮断すること、酸化ケイ素(SiO微粒子)などの酸化物微粒子が金属とリン酸および/またはリン酸化合物ととともに安定で緻密なバリヤー皮膜を形成すること、酸化物微粒子が酸化ケイ素(SiO微粒子)である場合に酸化ケイ素から放出されるケイ酸イオンが腐食環境下で塩基性塩化亜鉛を形成してバリヤー性を向上させること、などにより優れた防食性能が得られるものと考えられる。また、リン酸および/またはリン酸化合物は複合酸化物皮膜の緻密性の向上に寄与するとともに、皮膜欠陥部で腐食反応であるアノード反応によって溶解した亜鉛イオンをリン酸成分が捕捉し、難溶性のリン酸亜鉛化合物としてそこに沈殿生成物を形成するものと考えられる。
【0049】
また、上記のような作用効果は、上述したように複合酸化物皮膜の成分(α)としてSiO微粒子を特定の付着量で、成分(β)としてリン酸および/またはリン酸化合物を特定の付着量で、それぞれ含有させた場合に特に効果的に得られる。
【0050】
また、第1層皮膜である複合酸化物皮膜が上記成分(γ)を含有する場合の防食機構については、上述したように緻密で難溶性の複合酸化物皮膜がバリヤー性皮膜として腐食因子を遮断すること、また、酸化ケイ素(SiO微粒子)などの酸化物微粒子がMgなどのアルカリ土類金属とリン酸および/またはリン酸化合物とともに安定で緻密なバリヤー皮膜を形成すること、酸化物微粒子が酸化ケイ素(SiO微粒子)である場合に酸化ケイ素から放出されるケイ酸イオンが腐食環境下で塩基性塩化亜鉛を形成してバリヤー性を向上させること、などにより優れた防食性能が得られるとともに、さらに皮膜に欠陥が生じた場合でも、カソード反応によってOHイオンが生成して界面がアルカリ性になることにより、アルカリ土類金属の可溶性成分であるMgイオンやCaイオンなどがMg(OH)、Ca(OH)として沈殿し、緻密で難溶性の生成物として欠陥を封鎖し、腐食反応を抑制するものと考えられる。また、上述したようにリン酸および/またはリン酸化合物は複合酸化物皮膜の緻密性の向上に寄与するとともに、皮膜欠陥部で腐食反応であるアノード反応によって溶解した亜鉛イオンをリン酸成分が捕捉し、難溶性のリン酸亜鉛化合物としてそこに沈殿生成物を形成するものと考えられる。以上のように、アルカリ土類金属とリン酸および/またはリン酸化合物は皮膜欠陥部での自己修復作用を示すものと考えられる。
【0051】
また、上記成分(γ)の中でも、マグネシウム成分を含有する場合に特に優れた耐食性が得られる。これは、Mgは他のアルカリ土類金属に較べて水酸化物の溶解度が低く、難溶塩を形成しやすいためであると考えられる。
また、上記のような作用効果は、上述したように複合酸化物皮膜の成分(α)としてSiO微粒子を特定の付着量で、成分(β)としてリン酸および/またはリン酸化合物を特定の付着量で、成分(γ)としてマグネシウム成分を特定の付着量で、それぞれ含有させた場合に特に顕著に得られる。
【0052】
また、第1層皮膜である複合酸化物皮膜が上記成分(δ)を含有する場合の防食機構については、上述したように緻密で難溶性の複合酸化物皮膜がバリヤー性皮膜として腐食因子を遮断すること、酸化ケイ素(SiO微粒子)などの酸化物微粒子が金属とリン酸および/またはリン酸化合物とともに安定で緻密なバリヤー皮膜を形成すること、酸化物微粒子が酸化ケイ素(SiO微粒子)である場合に酸化ケイ素か放出されるケイ酸イオンが腐食環境下で塩基性塩化亜鉛を形成してバリヤー性を向上させること、などにより優れた防食性能が得られるとともに、さらに上記成分(δ)はいずれもアルカリ域においてリン酸成分と難溶性の金属塩を形成しやすいことから、腐食反応において酸素のカソード反応の結果、OHイオンが生成してアルカリ環境となった場合に上記金属塩が腐食サイトを封鎖し、高いバリヤー効果をもたらすものと考えられる。また、上述したようにリン酸および/またはリン酸化合物は複合酸化物皮膜の緻密性の向上に寄与するとともに、皮膜欠陥部で腐食反応であるアノード反応によって溶解した亜鉛イオンをリン酸成分が捕捉し、難溶性のリン酸亜鉛化合物としてそこに沈殿生成物を形成するものと考えられる。
【0053】
また、上記成分(δ)の中でも、マンガン成分および/またはニッケル成分を含有する場合に特に良好な耐食性が得られる。これは、上記金属成分とリン酸成分とにより形成される金属塩がアルカリ環境において特に溶解しにくいことによるものと考えられる。
また、上記成分(δ)のリン酸塩がアルカリ域において難溶性であるため、この成分(δ)はアルカリ脱脂後の耐食性の向上にも有効である。このような成分(δ)を含む複合酸化物皮膜と第2層皮膜とを組み合わせることにより、複合酸化物皮膜単独の場合に較べて耐食性及びアルカリ脱脂後の耐食性の顕著な向上が認められる。これは複合酸化物皮膜成分と第2層皮膜成分との相乗効果により、優れた耐食性及びアルカリ脱脂後の耐食性が発現するためであると考えられる。さらに、上記のような作用効果は、上述したように複合酸化物皮膜の成分(α)としてSiO微粒子を特定の付着量で、成分(β)としてリン酸および/またはリン酸化合物を特定の付着量で、成分(δ)を特定の付着量で、それぞれ含有させた場合に特に顕著に得られる。
また、上述した作用効果の点からして、上記成分(γ)と成分(δ)を複合添加することにより、特に優れた耐食性が得られる。
【0054】
上記第2層皮膜である有機皮膜の防食機構についても必ずしも明確でないが、その機構は以下のように推定できる。ヒドラジン誘導体が金属に対して一時的な(軽度の)防錆効果を有することは従来技術にも記したように公知であるが、このような従来技術では家電製品用途などの鋼板に必要な高度の防錆効果は期待できない。これに対して本発明では、単なる低分子量のキレート化剤ではなく、皮膜形成有機樹脂にヒドラジン誘導体を付与することによって、(1)緻密な有機高分子皮膜により酸素や塩素イオンなどの腐食因子を遮断する効果が得られること、(2)ヒドラジン誘導体が第1層皮膜の表面と強固に結合して安定な不動態化層を形成できること、(3)腐食反応によって溶出した亜鉛イオンを皮膜中のフリーのヒドラジン誘導体基がトラップし、安定な不溶性キレート化合物層を形成するため、界面でのイオン伝導層の形成が抑制されて腐食の進行が抑制されること、などの作用効果により腐食の進行が効果的に抑制され、優れた耐食性が得られるものと考えられる。
【0055】
また、皮膜形成有機樹脂(A)として、特にエポキシ基含有樹脂を用いた場合には、エポキシ基含有樹脂と架橋剤との反応により緻密なバリヤー皮膜が形成され、このバリヤー皮膜は酸素などの腐食因子の透過抑制能に優れ、また、分子中の水酸基により素地との優れた結合力が得られるため、特に優れた耐食性が得られる。
さらに、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)として、特に活性水素を有するピラゾール化合物および/または活性水素を有するトリアゾール化合物を用いることにより、より優れた耐食性が得られる。
【0056】
従来技術のように皮膜形成有機樹脂に単にヒドラジン誘導体を混合しただけでは、腐食抑制の向上効果はほとんど認められない。その理由は、皮膜形成有機樹脂の分子中に組み込まれていないヒドラジン誘導体は、腐食環境下で溶出した亜鉛とキレート化合物を形成するものの、そのキレート化合物は低分子量のため緻密なバリヤー層にはならないためであると考えられる。これに対して、本発明のように皮膜形成有機樹脂の分子中にヒドラジン誘導体を組み込むことにより、格段に優れた腐食抑制効果が得られる。
【0057】
また、本発明の有機被覆鋼板では、その有機皮膜に無機系防錆顔料(a)、好ましくは下記するような特定の無機系防錆顔料を添加することにより、防食性能がさらに高まる。
まず、本発明の有機被覆鋼板において、上記のような特定の反応生成物からなる有機皮膜中に無機系防錆顔料(a)としてイオン交換シリカ(c)を適量配合することにより、さらに優れた防食性能(皮膜欠陥部での自己修復作用)を得ることができる。この特定の有機皮膜中にイオン交換シリカ(c)を配合したことにより得られる防食機構は、以下のようなものであると考えられる。
【0058】
まず、腐食環境下ではめっき皮膜から溶出した亜鉛イオンを上記ヒドラジン誘導体がトラップすることによりアノード反応が抑制される。一方、腐食環境下でNaイオンなどのカチオンが侵入すると、イオン交換作用によりシリカ表面のCaイオンやMgイオンが放出され、さらに、腐食環境下でのカソード反応によりOHイオンが生成してめっき界面近傍のpHが上昇すると、イオン交換シリカから放出されたCaイオン(またはMgイオン)がCa(OH)またはMg(OH)としてめっき界面近傍に沈殿し、緻密で難溶性の生成物として欠陥を封鎖し、腐食反応を抑制する。また、溶出した亜鉛イオンはCaイオン(またはMgイオン)と交換されてシリカ表面に固定される効果も考えられる。そして、このようなヒドラジン誘導体とイオン交換シリカの両防食作用が複合化されて、特に優れた防食効果が得られるものと考えられる。
【0059】
一般の有機皮膜中にイオン交換シリカを配合した場合でもある程度の防食効果は得られるが、本発明のように特定のキレート変性樹脂からなる有機皮膜中にイオン交換シリカを配合したことにより、キレート変性樹脂によるアノード反応部での腐食抑制効果と、イオン交換シリカによるカソード反応部での腐食抑制効果とが複合化し、これによりアノード、カソード両腐食反応が抑制される結果、極めて優れた防食効果が発揮されるものと考えられる。さらに、このような複合化された防食効果は皮膜の傷部や欠陥部の腐食抑制にも有効であり、皮膜に優れた自己修復作用を付与することができる。
【0060】
また、本発明の有機被覆鋼板において、上記のような特定の反応生成物からなる有機皮膜中に無機系防錆顔料(a)として微粒子シリカ(d)を適量配合することによっても耐食性を向上させることができる。すなわち、特定の有機皮膜中にヒュームドシリカやコロイダルシリカなどのような比表面積の大きい微粒子シリカ(平均一次粒子径5〜50nm、好ましくは5〜20nm、さらに好ましくは5〜15nm)を配合することにより、塩基性塩化亜鉛などの緻密で安定な腐食生成物の生成を促進し、酸化亜鉛(白錆)の発生を抑制できる。
【0061】
さらに、本発明の有機被覆鋼板において、上記のような特定の反応生成物からなる有機皮膜中に無機系防錆顔料(a)としてイオン交換シリカ(c)と微粒子シリカ(d)を複合添加することにより、さらなる耐食性向上効果が得られる。イオン交換シリカは多孔質シリカを主体としており、一般に粒子径が1μm以上と比較的大きいため、Caイオンが放出された後はシリカとしての防錆効果はあまり期待できない。このためヒュームドシリカやコロイダルシリカ等のような比表面積の大きい微粒子シリカ(一次粒子径5〜50nm、望ましくは5〜20nm、さらに望ましくは5〜15nm)を併用することにより、塩基性塩化亜鉛などの緻密で安定な腐食生成物の生成が促進され、酸化亜鉛(白錆)の生成を抑制できるものと考えられ、このようなイオン交換シリカと微粒子シリカの複合的な防錆機構によって、特に優れた防食効果が得られるものと推定される。
【0062】
さらに、本発明の有機被覆鋼板において、上記のような特定の反応生成物からなる有機皮膜中に無機系防錆顔料(a)としてリン酸亜鉛(e)および/またはリン酸アルミニウム(f)を適量配合することによっても、特に優れた防食性能(皮膜欠陥部での自己修復作用)を得ることができる。この特定の有機皮膜中にリン酸亜鉛(e)および/またはリン酸アルミニウム(f)を配合したことにより得られる防食機構は、以下の反応ステップで進行するものと考えられる。
【0063】
[第1ステップ]:腐食環境下において、めっき金属である亜鉛やアルミニウムなどが溶出する。
[第2ステップ]:リン酸亜鉛および/またはリン酸アルミニウムが加水分解反応を起こし、リン酸イオンに解離する。
[第3ステップ]:溶出した亜鉛イオンやアルミニウムイオンがリン酸イオンと錯形成反応を起こし、緻密で難溶性の保護皮膜が生成し、これが皮膜欠陥部を封鎖し、腐食反応を抑制する。
【0064】
一般の有機皮膜中にリン酸亜鉛および/またはリン酸アルミニウムを配合した場合でもある程度の防食効果は得られるが、本発明のように特定のキレート変性樹脂からなる有機皮膜中にリン酸亜鉛および/またはリン酸アルミニウムを配合したことにより両者の腐食抑制効果が複合化し、これにより極めて優れた防食効果が発揮されるものと考えられる。
【0065】
さらに、本発明の有機被覆鋼板において、上記のような特定の反応生成物からなる有機皮膜中に無機系防錆顔料(a)としてリン酸亜鉛(e)および/またはリン酸アルミニウム(f)とカルシウム化合物(g)を複合添加することにより、さらなる耐食性向上効果が得られる。この理由は、以下のように考えられる。リン酸亜鉛および/またはリン酸アルミニウムによる自己修復作用は、上述のようにめっき金属の溶出(第1ステップ)をトリガーとしているため、腐食の極く初期には腐食反応を抑制するものの、腐食反応を完全には抑制することはできない。これに対して亜鉛やアルミニウムよりも卑な金属であるカルシウム化合物を併用することによって、上述のトリガーとしてめっき金属ではなくカルシウムの優先溶出を作用させ、これによりめっき金属の溶出に依存することなく腐食反応を抑制することができる。このような機構により、リン酸亜鉛および/またはリン酸アルミニウムとカルシウム化合物との併用による複合的な防錆効果が得られるものと考えられる。
【0066】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細とその限定理由を説明する。
本発明の有機被覆鋼板のベースとなる亜鉛系めっき鋼板としては、亜鉛めっき鋼板、Zn−Ni合金めっき鋼板、Zn−Fe合金めっき鋼板(電気めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板)、Zn−Cr合金めっき鋼板、Zn−Mn合金めっき鋼板、Zn−Co合金めっき鋼板、Zn−Co−Cr合金めっき鋼板、Zn−Cr−Ni合金めっき鋼板、Zn−Cr−Fe合金めっき鋼板、Zn−Al合金めっき鋼板(例えば、Zn−5%Al合金めっき鋼板、Zn−55%Al合金めっき鋼板)、Zn−Mg合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板、さらにはこれらのめっき鋼板のめっき皮膜中に金属酸化物、ポリマーなどを分散した亜鉛系複合めっき鋼板(例えば、Zn−SiO分散めっき鋼板)などを用いることができる。
【0067】
また、上記のようなめっきのうち、同種または異種のものを2層以上めっきした複層めっき鋼板を用いることもできる。
また、本発明の有機被覆鋼板のベースとなるアルミニウム系めっき鋼板としては、アルミニウムめっき鋼板、Al−Si合金めっき鋼板などを用いることができる。
また、めっき鋼板としては、鋼板面に予めNiなどの薄目付めっきを施し、その上に上記のような各種めっきを施したものであってもよい。
めっき方法としては、電解法(水溶液中での電解または非水溶媒中での電解)、溶融法および気相法のうち、実施可能ないずれの方法を採用することもできる。
【0068】
また、後述するような二層皮膜をめっき皮膜表面に形成した際に皮膜欠陥やムラが生じないようにするため、必要に応じて、予めめっき皮膜表面にアルカリ脱脂、溶剤脱脂、表面調整処理(アルカリ性の表面調整処理、酸性の表面調整処理)などの処理を施しておくことができる。また、有機被覆鋼板の使用環境下での黒変(めっき表面の酸化現象の一種)を防止する目的で、必要に応じて予めめっき皮膜表面に鉄族金属イオン(Niイオン、Coイオン、Feイオン)を含む酸性またはアルカリ性水溶液による表面調整処理を施しておくこともできる。また、電気亜鉛めっき鋼板を下地鋼板として用いる場合には、黒変を防止する目的で電気めっき浴に鉄族金属イオン(Niイオン、Coイオン、Feイオン)を添加し、めっき皮膜中にこれらの金属を1ppm以上含有させておくことができる。この場合、めっき皮膜中の鉄族金属濃度の上限については特に制限はない。
【0069】
次に、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に形成される第1層皮膜である複合酸化物皮膜について説明する。
この複合酸化物皮膜は、従来の酸化リチウムと酸化ケイ素からなる皮膜組成物に代表されるアルカリシリケート処理皮膜とは全く異なり、
(α)酸化物微粒子(好ましくは、SiO微粒子)と、
(β)リン酸および/またはリン酸化合物と、
さらに必要に応じて、
(γ)Mg、Ca、Sr、Baの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)、
および/または、
(δ)Li、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、La、Ceの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)と、
を含有する(好ましくは、主成分として含有する)複合酸化物皮膜である。
【0070】
上記成分(α)である酸化物微粒子としては、耐食性の観点から特に酸化ケイ素(SiO微粒子)が好ましい。また、このような酸化ケイ素のなかでもコロイダルシリカが最も好ましい。
コロイダルシリカとしては、例えば、商品名で日産化学工業(株)製のスノーテックスO、スノーテックスOS、スノーテックスOXS、スノーテックスOUP、スノーテックスAK、スノーテックスO40、スノーテックスOL、スノーテックスOL40、スノーテックスOZL(以上、酸性溶液)、スノーテックスXS、スノーテックスS、スノーテックスNXS、スノーテックスNS、スノーテックスN、スノーテックスQAS−25、スノーテックスLSS−35、スノーテックスLSS−45、スノーテックスLSS−75(以上、アルカリ性溶液)、触媒化成工業(株)製のカタロイドS、カタロイドSI−350、カタロイドSI−40、カタロイドSA(以上、アルカリ性溶液)、カタロイドSN(酸性溶液)、旭電化工業(株)製のアデライトAT−20〜50、アデライトAT−20N、アデライトAT−300、アデライトAT−300S(以上、アルカリ性溶液)、アデライトAT20Q(酸性溶液)などを用いることができる。
【0071】
これらの酸化ケイ素(SiO微粒子)の中でも、特に粒子径が14nm以下のもの、さらに好ましくは8nm以下のものが耐食性の観点から望ましい。
また、酸化ケイ素としては、乾式シリカ微粒子を皮膜組成物溶液に分散させたものを用いることもできる。この乾式シリカとしては、例えば、商品名で日本アエロジル(株)製のアエロジル200、アエロジル3000、アエロジル300CF、アエロジル380などを用いることができ、なかでも粒子径12nm以下、さらに好ましくは7nm以下のものが望ましい。
【0072】
酸化物微粒子としては、上記の酸化ケイ素のほかに、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アンチモンなどのコロイド溶液、微粉末などを用いることもでき、これら酸化物微粒子の1種または2種以上を用いることができる。
耐食性および溶接性の観点から上記成分(α)の好ましい付着量は0.01〜3000mg/m、より好ましくは0.1〜1000mg/m、さらに好ましくは1〜500mg/mである。
【0073】
上記成分(β)であるリン酸および/またはリン酸化合物は、例えば、オルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、メタリン酸など、これらの金属塩や化合物などの1種または2種以上を皮膜組成物中に添加することにより皮膜成分として配合することができる。また、皮膜組成物に有機リン酸やそれらの塩(例えば、フィチン酸、フィチン酸塩、ホスホン酸、ホスホン酸塩及びこれらの金属塩)の1種以上を添加してもよい。また、そのなかでも第一リン酸塩が皮膜組成物溶液の安定性の面から好適である。
【0074】
また、リン酸塩として第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、第三リン酸アンモニウムの1種以上を皮膜組成物溶液に添加すると、耐食性が改善される傾向が認められた。その理由は明らかでないが、これらのアンモニウム塩を使用した場合には、皮膜組成物溶液のpHを高くしても液がゲル化しない。一般にアルカリ域では金属塩が不溶性となるため、pHの高い皮膜組成物溶液から皮膜が形成される場合に、より難溶性の化合物が乾燥過程で生じるものと考えられる。
【0075】
皮膜中でのリン酸、リン酸化合物の存在形態も特別な限定はなく、また、結晶若しくは非結晶であるか否かも問わない。また、皮膜中でのリン酸、リン酸化合物のイオン性、溶解度についても特別な制約はない。
耐食性および溶接性などの観点から上記成分(β)の好ましい付着量はP量換算で0.01〜3000mg/m、より好ましくは0.1〜1000mg/m、さらに好ましくは1〜500mg/mである。
【0076】
上記成分(γ)である特定のアルカリ土類金属成分(Mg、Ca、Sr、Ba)は、これらの1種以上が皮膜中に取り込まれていることが必要である。アルカリ土類金属が皮膜中に存在する形態は特に限定されず、金属として、或いは酸化物、水酸化物、水和酸化物、リン酸化合物、配位化合物などの化合物若しくは複合化合物として存在してよい。これらの化合物、水酸化物、水和酸化物、リン酸化合物、配位化合物などのイオン性、溶解度などについても特に限定されない。
【0077】
また、これらアルカリ土類金属成分のなかでも、特に優れた耐食性を得るにはMg(マグネシウム成分)を用いるのが最も好ましい。Mgの添加が最も顕著に耐食性を向上させるのは、Mgは他のアルカリ土類金属に較べて水酸化物の溶解度が低く、難溶塩を形成しやすいためであると考えられる。
皮膜中に成分(γ)を導入する方法としては、Mg、Ca、Sr、Baのリン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などとして皮膜組成物に添加すればよい。
耐食性および皮膜外観の低下防止の観点から上記成分(γ)の好ましい付着量は金属量換算で0.01〜1000mg/m、より好ましくは0.1〜500mg/m、さらに好ましくは1〜100mg/mある。
【0078】
上記成分(δ)である特定の金属成分(Li、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、La、Ce)は、これらの1種以上が皮膜中に取り込まれていることが必要である。これらの金属が皮膜中に存在する形態は特に限定されず、金属として、或いは酸化物、水酸化物、水和酸化物、リン酸化合物などの化合物若しくは複合化合物として存在してよい。これらの化合物、水酸化物、水和酸化物、リン酸化合物などのイオン性、溶解度などについても特に限定されない。
【0079】
また、これらの金属成分の中でも、特に優れた耐食性を得るにはMn(マンガン成分)および/またはNi(ニッケル成分)を用いるのが最も好ましい。Mnおよび/またはNiの添加が最も効果的に耐食性を向上させるのは、これらの金属成分とリン酸成分とにより形成される金属塩は他の金属のそれに較べてアルカリ環境下における溶解度が低いためであると考えられる。
皮膜中に成分(δ)を導入する方法としては、Li、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、La、Ceのリン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などの1種または2種以上を皮膜組成物に添加すればよい。
耐食性および皮膜外観の低下防止の観点から上記成分(δ)の好ましい付着量は金属量換算で0.01〜1000mg/m、より好ましくは0.1〜500mg/m、さらに好ましくは1〜100mg/mある。
また、本発明では上記成分(γ)と成分(δ)とを上述した条件で複合添加してもよい。
【0080】
複合酸化物皮膜中には、皮膜の加工性、耐食性を向上させることを目的として、さらに有機樹脂を配合することができる。この有機樹脂としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリル−エチレン共重合体、アクリル−スチレン共重合体、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン樹脂などを用いることができる。これらは水溶性樹脂および/または水分散性樹脂として皮膜中に導入できる。
さらに、これらの水系樹脂に加えて、水溶性エポキシ樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性ブタジエンラバー(SBR、NBR、MBR)、メラミン樹脂、ブロックイソシアネート、オキサゾリン化合物などを架橋剤として併用することが有効である。
【0081】
複合酸化物皮膜中には、耐食性をさらに向上させるための添加剤として、さらに、ポリリン酸塩、リン酸塩(例えば、リン酸亜鉛、リン酸二水素アルミニウム、亜リン酸亜鉛など)、モリブデン酸塩、リンモリブデン酸塩(例えば、リンモリブデン酸アルミニウムなど)、有機リン酸およびその塩(例えば、フィチン酸、フィチン酸塩、ホスホン酸、ホスホン酸塩及びこれらの金属塩、アルカリ金属塩など)、有機インヒビター(例えば、ヒドラジン誘導体、チオール化合物、ジチオカルバミン酸塩など)、有機化合物(例えば、ポリエチレングリコールなど)などの1種または2種以上を配合してもよい。
【0082】
さらに、その他の添加剤として、有機着色顔料(例えば、縮合多環系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料など)、着色染料(例えば、有機溶剤可溶性アゾ系染料、水溶性アゾ系金属染料など)、無機顔料(例えば、酸化チタンなど)、キレート剤(例えば、チオールなど)、導電性顔料(例えば、亜鉛、アルミニウム、ニッケルなどの金属粉末、リン化鉄、アンチモンドーブ型酸化錫など)、カップリング剤(例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤など)、メラミン・シアヌル酸付加物などの1種または2種以上を添加することもできる。
【0083】
また、複合酸化物皮膜中には、有機被覆鋼板の使用環境下での黒変(めっき表面の酸化現象の一種)を防止する目的で、鉄族金属イオン(Niイオン,Coイオン,Feイオン)の1種以上を添加してもよい。なかでもNiイオンの添加が最も好ましい。この場合、鉄族金属イオンの濃度としては、処理組成物中の金属量換算での成分(γ)1モルまたは成分(δ)1モルに対して1/10000モル以上あれば所望の効果が得られる。鉄族イオン濃度の上限は特に定めないが、濃度の増加に伴い耐食性に影響を及ぼさない程度とするのが好ましい。
【0084】
複合酸化物皮膜の膜厚は0.005〜3μm、好ましくは0.01〜2μm、より好ましくは0.1〜1μm、さらに好ましくは0.2〜0.5μmとする。複合酸化物皮膜の膜厚が0.005μm未満では耐食性が低下する。一方、膜厚が3μmを超えると、溶接性などの導電性が低下する。また、複合酸化物皮膜をその付着量で規定する場合、上記成分(α)とP換算での上記成分(β)の合計付着量、また複合酸化物皮膜が上記成分(γ)および/または成分(δ)を含有する場合にはこれらの金属換算量を含めた合計付着量を6〜3600mg/m、好ましくは10〜1000mg/m、さらに好ましくは50〜500mg/m、特に好ましくは100〜500mg/m、最も好ましくは200〜400mg/mとすることが適当である。この合計付着量が6mg/m未満では耐食性が低下し、一方、合計付着量が3600mg/mを超えると、導電性が低下するため溶接性などが低下する。
【0085】
以下、本発明において特に優れた性能を得るための複合酸化物皮膜の好ましい条件について述べる。
まず、優れた耐食性を得るためには、複合酸化物皮膜中の成分(α)を酸化ケイ素とし、そのSiO換算量を複合酸化物皮膜の全皮膜付着量に対する重量割合で5〜95wt%の範囲、好ましくは10〜60wt%の範囲とすることが適当である。
酸化ケイ素の量を上記の範囲にした場合に特に優れた耐食性が得られる理由は必ずしも明らかでないが、酸化ケイ素のみでは得られないバリヤー性をリン酸成分が補完して緻密な膜を形成し、且つリン酸成分、酸化ケイ素のそれぞれの腐食抑制作用の相乗効果により優れた耐食性が発現されるものと考えられる。
【0086】
また、複合酸化物皮膜に、さらに成分(γ)および/または成分(δ)を添加する場合には、成分(α)としてSiO微粒子を特定の付着量で、成分(β)としてリン酸および/またはリン酸化合物を特定の付着量でそれぞれ含有させるとともに、成分(β)としてMg(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)を特定の付着量で、成分(δ)を特定の付着量でそれぞれ含有させることが好ましい。
【0087】
まず、上記成分(α)であるSiO微粒子の好ましい条件は先に述べた通りである。
このSiO微粒子の皮膜中での付着量はSiO換算で0.01〜3000mg/m、より好ましくは0.1〜1000mg/m、さらに好ましくは1〜500mg/m、特に好ましくは5〜100mg/mとすることが適当である。SiO微粒子のSiO換算での付着量が0.01mg/m未満では酸化ケイ素から放出されるケイ素成分の耐食性への寄与が小さく、十分な耐食性が得られない。一方、SiO換算での付着量が3000mg/mを超えると、導電性が低下するため溶接性などが劣化する。
なお、皮膜中に上記成分(α)を導入するには、皮膜形成用組成物にコロイダルシリカなどのケイ酸ゾルを添加するとよい。これに好適なコロイダルシリカは先に例示した通りである。
【0088】
上記成分(β)であるリン酸および/またはリン酸化合物の皮膜中への導入方法や皮膜中での存在形態に特別な制限がないことは先に述べた通りである。
また、複合酸化物皮膜中に成分(γ)としてマグネシウム成分が共存する場合には、皮膜中のリン酸化合物の形態として、リン酸マグネシウムのリン酸塩、あるいは縮合リン酸塩などの形態も可能である。また、このようなリン酸化合物を皮膜中に導入する方法としては、処理組成物中にリン酸塩、有機リン酸及びその塩(例えば、フィチン酸、フィチン酸塩、ホスホン酸、ホスホン酸塩及びこれらの金属塩など)の1種または2種以上を添加することが可能である。
【0089】
リン酸および/またはリン酸化合物の皮膜中での付着量はP換算で0.01〜3000mg/m、より好ましくは0.1〜1000mg/m、さらに好ましくは1〜500mg/mとすることが適当である。リン酸及び/またはリン酸化合物のP換算での付着量が0.01mg/m未満では耐食性が低下する。一方、P換算での付着量が3000mg/mを超えると皮膜の導電性が低下するため溶接性が劣化する。
【0090】
上記成分(γ)であるマグネシウム成分が皮膜中に存在する形態は特に限定されず、金属として、或いは酸化物、水酸化物、水和酸化物、リン酸化合物、配位化合物などの化合物若しくは複合化合物として存在してよい。これらの化合物、水酸化物、水和酸化物、リン酸化合物、配位化合物などのイオン性、溶解度などについても特に限定されない。
このマグネシウム成分の皮膜中での付着量はMg換算で0.01〜1000mg/m、より好ましくは0.1〜500mg/m、さらに好ましくは1〜100mg/mすることが適当である。マグネシウム成分のMg換算での付着量が0.01mg/m未満ではマグネシウム成分の耐食性への寄与が小さく、十分な耐食性が得られない。一方、Mg換算での付着量が1000mg/mを超えると、皮膜中に過剰のマグネシウムが可溶性成分として存在し、皮膜外観の低下を引き起こす。
【0091】
皮膜中に上記成分(γ)であるマグネシウム成分を導入するには、Mgのリン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物や酸化マグネシウム微粒子などの1種または2種以上を皮膜形成用組成物に添加すればよい。
特に、本発明の複合酸化物皮膜はリン酸成分を構成成分として含有しているため、リン酸マグネシウムなどのリン酸塩を処理組成物に添加するとよい。この場合、リン酸マグネシウムの形態は特に規定されないが、オルトリン酸塩、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などいずれの形態も可能である。
【0092】
また、上記成分(δ)の金属成分の皮膜中での存在形態、各金属成分を皮膜中に導入する方法については先に述べた通りである。
この成分(δ)の皮膜中での付着量は、先に述べたように金属量換算で0.01〜1000mg/m、より好ましくは0.1〜500mg/m、さらに好ましくは1〜100mg/mすることが適当であり、付着量が0.01mg/mでは金属成分の耐食性への寄与が小さいため十分な耐食性が得られず、一方、付着量が1000mg/mを超えると、皮膜中に過剰の金属成分が可溶性成分として存在するため皮膜外観の低下を引き起こす。
また、この成分(δ)としては、特に耐食性の観点からNi、Mn(但し、いずれも化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)の中から選ばれる1種または2種が好ましい。
【0093】
また、成分(γ)としてマグネシウム成分を含有する場合において特に優れた耐食性を得るためには、複合酸化物皮膜中の成分(γ)であるマグネシウム成分と成分(α)であるSiO微粒子との割合を、成分(γ)のMg換算量と成分(α)のSiO換算量とのモル比[Mg/SiO]で1/100〜100/1、より好ましくは1/10〜10/1、さらに好ましくは1/2〜5/1の範囲とすることが適当である。
マグネシウム成分とSiO微粒子との割合を上記の範囲とした場合に特に優れた耐食性が得られる理由は必ずしも明らかではないが、マグネシウム成分とSiO微粒子との割合が上記の範囲となる場合に、SiO微粒子から放出されるケイ素成分とマグネシウム成分のそれぞれの腐食抑制作用の相乗効果が特に顕著に発現されるためであると推定される。
【0094】
また、同様の観点から、複合酸化物皮膜中の成分(β)であるリン酸および/またはリン酸化合物と成分(γ)であるマグネシウム成分との割合を、成分(β)のP換算量と成分(γ)のMg換算量とのモル比[P/Mg]で1/100〜100/1、より好ましくは1/10〜10/1、さらに好ましくは1/2〜2/1とすることが適当である。
リン酸および/またはリン酸化合物とマグネシウム成分との割合を上記の範囲とした場合に特に優れた耐食性が得られる理由は必ずしも明らかではないが、リン酸および/またはリン酸化合物とマグネシウム成分との割合が上記の範囲となる場合に、リン酸および/またはリン酸化合物とマグネシウム成分のそれぞれの腐食抑制作用の相乗効果が特に顕著に発現されるためであると推定される。
【0095】
また、最も優れた耐食性を得るためには、複合酸化物皮膜中の成分(γ)であるマグネシウム成分と成分(α)であるSiO微粒子との割合を、成分(γ)のMg換算量と成分(α)のSiO換算量とのモル比[Mg/SiO]で1/100〜100/1、より好ましくは1/10〜10/1、さらに好ましくは1/2〜5/1の範囲とし、且つ複合酸化物皮膜中の成分(β)であるリン酸および/またはリン酸化合物と成分(γ)であるマグネシウム成分との割合を、成分(β)のP換算量と成分(γ)のMg換算量とのモル比[P/Mg]で1/100〜100/1、より好ましくは1/10〜10/1、さらに好ましくは1/2〜2/1とすることが適当である。
【0096】
マグネシウム成分とSiO微粒子とリン酸および/またはリン酸化合物の割合を上記の範囲とした場合に最も優れた耐食性が得られる理由は、上述したような各成分のそれぞれの腐食抑制作用の相乗効果が特に顕著に発現されることと、皮膜形成時におけるめっき素地との反応に起因した皮膜形態が適正化されること、などによるものと推定される。
【0097】
また、成分(δ)を含有する場合において特に優れた耐食性を得るためには、複合酸化物皮膜中の成分(δ)である金属成分と成分(α)であるSiO微粒子との割合を、成分(δ)の金属換算量Meと成分(α)のSiO換算量とのモル比[Me/SiO]で1/100〜100/1、より好ましくは1/10〜10/1、さらに好ましくは1/2〜5/1の範囲とすることが適当である。成分(δ)とSiO微粒子との割合を上記の範囲とした場合に特に優れた耐食性が得られる理由は必ずしも明らかではないが、成分(δ)である金属成分とSiO微粒子との割合が上記の範囲となる場合に、SiO微粒子から放出されるケイ素成分と金属成分のそれぞれの腐食抑制作用の相乗効果が特に顕著に発現されるためであると推定される。
【0098】
また、同様の観点から、複合酸化物皮膜中の成分(β)であるリン酸および/またはリン酸化合物と成分(δ)である金属成分との割合を、成分(β)のP換算量と成分(δ)の金属換算量Meとのモル比[P/Me]で1/2〜2/1とすることが適当である。
リン酸および/またはリン酸化合物と成分(δ)である金属成分との割合を上記の範囲とした場合に特に優れた耐食性が得られる理由は必ずしも明らかではないが、リン酸成分の溶解性はリン酸と金属の割合によって変化するため、皮膜の難溶性が上記の範囲にある場合に特に優れており、皮膜のバリヤー性がより高くなるものと考えられる。
【0099】
また、最も優れた耐食性を得るためには、複合酸化物皮膜中の成分(δ)である金属成分と成分(α)であるSiO微粒子との割合を、成分(δ)の金属換算量Meと成分(α)のSiO換算量とのモル比[Me/SiO]で1/100〜100/1、より好ましくは1/10〜10/1、さらに好ましくは1/2〜5/1の範囲とし、且つ複合酸化物皮膜中の成分(β)であるリン酸および/またはリン酸化合物と成分(δ)である金属成分との割合を、成分(β)のP換算量と成分(δ)の金属換算量Meとのモル比[P/Me]で1/2〜2/1とすることが適当である。
【0100】
上記金属成分とSiO微粒子とリン酸および/またはリン酸化合物の割合を上記の範囲とした場合に最も優れた耐食性が得られる理由は、上述したような各成分のそれぞれの腐食抑制作用の相乗効果が特に顕著に発現されることと、皮膜形成時におけるめっき素地との反応に起因した皮膜形態が適正化されること、などによるものと推定される。
【0101】
この複合酸化物皮膜において、上記成分(α)のSiO換算での付着量と上記成分(β)のP換算での付着量の合計、また、さらに上記成分(γ)および/または成分(δ)を含む場合にはこれらの金属換算での付着量を含めた合計は、6〜3600mg/m、より好ましくは10〜1000mg/m、さらに好ましくは50〜500mg/mとすることが適当である。この合計付着量が6mg/m未満では耐食性が十分でなく、一方、合計付着量が3600mg/mを超えると導電性が低下するため溶接性などが劣化する。
【0102】
次に、上記複合酸化物皮膜の上部に第2層皮膜として形成される有機皮膜について説明する。
本発明において、上記複合酸化物皮膜の上部に形成される有機皮膜は、皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物を含み(好ましくは、主成分として含み)、必要に応じて防錆添加剤などの添加剤が適量配合された膜厚が0.1〜5μmの有機皮膜である。
【0103】
皮膜形成有機樹脂(A)の種類としては、一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)と反応して、皮膜形成有機樹脂に活性水素含有化合物(B)が付加、縮合などの反応により結合でき、且つ皮膜を適切に形成できる樹脂であれば特別な制約はない。この皮膜形成有機樹脂(A)としては、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、アクリル系共重合体樹脂、ポリブタジエン樹脂、フェノール樹脂、およびこれらの樹脂の付加物または縮合物などを挙げることができ、これらのうちの1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0104】
また、皮膜形成有機樹脂(A)としては、反応性、反応の容易さ、防食性などの点から、樹脂中にエポキシ基を含有するエポキシ基含有樹脂(D)が特に好ましい。このエポキシ基含有樹脂(D)としては、一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)と反応して、皮膜形成有機樹脂に活性水素含有化合物(B)が付加、縮合などの反応により結合でき、且つ皮膜を適切に形成できる樹脂であれば特別な制約はなく、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、エポキシ基含有モノマーと共重合したアクリル系共重合体樹脂、エポキシ基を有するポリブタジエン樹脂、エポキシ基を有するポリウレタン樹脂、およびこれらの樹脂の付加物もしくは縮合物などが挙げられ、これらのエポキシ基含有樹脂の1種を単独で、または2種以上混合して用いることができる。
また、これらのエポキシ基含有樹脂(D)の中でも、めっき表面との密着性、耐食性の点からエポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂が特に好適である。
【0105】
上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ノボラック型フェノールなどのポリフェノール類とエピクロルヒドリンなどのエピハロヒドリンとを反応させてグリシジル基を導入してなるか、若しくはこのグリシジル基導入反応生成物にさらにポリフェノール類を反応させて分子量を増大させてなる芳香族エポキシ樹脂、さらには脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂などが挙げられ、これらの1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。これらのエポキシ樹脂は、特に低温での皮膜形成性を必要とする場合には数平均分子量が1500以上であることが好適である。
【0106】
上記変性エポキシ樹脂としては、上記エポキシ樹脂中のエポキシ基または水酸基に各種変性剤を反応させた樹脂を挙げることができ、例えば、乾性油脂肪酸を反応させたエポキシエステル樹脂、アクリル酸またはメタクリル酸などを含有する重合性不飽和モノマー成分で変性したエポキシアクリレート樹脂、イソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂などを例示できる。
上記エポキシ基含有モノマーと共重合したアクリル系共重合体樹脂としては、エポキシ基を有する不飽和モノマーとアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを必須とする重合性不飽和モノマー成分とを、溶液重合法、エマルション重合法または懸濁重合法などによって合成した樹脂を挙げることができる。
【0107】
上記重合性不飽和モノマー成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−,iso−若しくはtert−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸のC1〜24アルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、ビニルトルエン、アクリルアミド、アクリロニトリル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドのC1〜4アルキルエーテル化物;N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどを挙げることができる。
【0108】
また、エポキシ基を有する不飽和モノマーとしては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなど、エポキシ基と重合性不飽和基を持つものであれば特別な制約はない。
また、このエポキシ基含有モノマーと共重合したアクリル系共重合体樹脂は、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などによって変性させた樹脂とすることもできる。
【0109】
前記エポキシ樹脂として特に好ましいのは、ビスフェノールAとエピハロヒドリンとの反応生成物である下記(1)式に示される化学構造を有する樹脂であり、このエポキシ樹脂は特に耐食性に優れているため好ましい。
【化3】
Figure 0003578018
このようなビスフェノールA型エポキシ樹脂の製造法は当業界において広く知られている。また、上記化学構造式において、qは0〜50、好ましくは1〜40、特に好ましくは2〜20である。
なお、皮膜形成有機樹脂(A)は、有機溶剤溶解型、有機溶剤分散型、水溶解型、水分散型のいずれであってもよい。
【0110】
本発明では皮膜形成有機樹脂(A)の分子中にヒドラジン誘導体を付与することを狙いとしており、このため活性水素含有化合物(B)の少なくとも一部(好ましくは全部)は、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)であることが必要である。
【0111】
皮膜形成有機樹脂(A)がエポキシ基含有樹脂である場合、そのエポキシ基と反応する活性水素含有化合物(B)として例えば以下に示すようなものを例示でき、これらの1種または2種以上を使用できるが、この場合も活性水素含有化合物(B)の少なくとも一部(好ましくは全部)は、活性水素を有するヒドラジン誘導体であることが必要である。
・活性水素を有するヒドラジン誘導体
・活性水素を有する第1級または第2級のアミン化合物
・アンモニア、カルボン酸などの有機酸
・塩化水素などのハロゲン化水素
・アルコール類、チオール類
・活性水素を有しないヒドラジン誘導体または第3級アミンと酸との混合物である4級塩化剤
【0112】
前記活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
▲1▼ カルボヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、チオカルボヒドラジド、4,4′−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゾフェノンヒドラゾン、アミノポリアクリルアミドなどのヒドラジド化合物;
▲2▼ ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−ピラゾロン、3−アミノ−5−メチルピラゾールなどのピラゾール化合物;
【0113】
▲3▼ 1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2,3−ジヒドロ−3−オキソ−1,2,4−トリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1水和物)、6−メチル−8−ヒドロキシトリアゾロピリダジン、6−フェニル−8−ヒドロキシトリアゾロピリダジン、5−ヒドロキシ−7−メチル−1,3,8−トリアザインドリジンなどのトリアゾール化合物;
【0114】
▲4▼ 5−フェニル−1,2,3,4−テトラゾール、5−メルカプト−1−フェニル−1,2,3,4−テトラゾールなどのテトラゾール化合物;
▲5▼ 5−アミノ−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールなどのチアジアゾール化合物;
▲6▼ マレイン酸ヒドラジド、6−メチル−3−ピリダゾン、4,5−ジクロロ−3−ピリダゾン、4,5−ジブロモ−3−ピリダゾン、6−メチル−4,5−ジヒドロ−3−ピリダゾンなどのピリダジン化合物
また、これらのなかでも、5員環または6員環の環状構造を有し、環状構造中に窒素原子を有するピラゾール化合物、トリアゾール化合物が特に好適である。
これらのヒドラジン誘導体は1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0115】
活性水素含有化合物(B)の一部として使用できる上記活性水素を有するアミン化合物の代表例としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
▲1▼ ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどの1個の2級アミノ基と1個以上の1級アミノ基を含有するアミン化合物の1級アミノ基を、ケトン、アルデヒド若しくはカルボン酸と例えば100〜230℃程度の温度で加熱反応させてアルジミン、ケチミン、オキサゾリン若しくはイミダゾリンに変性した化合物;
【0116】
▲2▼ ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−または−iso−プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級モノアミン;
▲3▼ モノエタノールアミンのようなモノアルカノールアミンとジアルキル(メタ)アクリルアミドとをミカエル付加反応により付加させて得られた第2級アミン含有化合物;
▲4▼ モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノール、2−ヒドロキシ−2′(アミノプロポキシ)エチルエーテルなどのアルカノールアミンの1級アミノ基をケチミンに変性した化合物;
【0117】
活性水素含有化合物(B)の一部として使用できる上記4級塩化剤は、活性水素を有しないヒドラジン誘導体または第3級アミンはそれ自体ではエポキシ基と反応性を有しないので、これらをエポキシ基と反応可能とするために酸との混合物としたものである。4級塩化剤は、必要に応じて水の存在下でエポキシ基と反応し、エポキシ基含有樹脂と4級塩を形成する。
【0118】
4級塩化剤を得るために使用される酸は、酢酸、乳酸などの有機酸、塩酸などの無機酸のいずれでもよい。また、4級塩化剤を得るために使用される活性水素を有しないヒドラジン誘導体としては、例えば3,6−ジクロロピリダジンなどを、また、第3級アミンとしては、例えば、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミンなどを挙げることができる。
【0119】
皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物は、皮膜形成有機樹脂(A)と活性水素含有化合物(B)とを10〜300℃、好ましくは50〜150℃で約1〜8時間程度反応させて得られる。
【0120】
この反応は有機溶剤を加えて行ってもよく、使用する有機溶剤の種類は特に限定されない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エタノール、ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどの水酸基を含有するアルコール類やエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエステル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素等を例示でき、これらの1種または2種以上を使用することができる。また、これらのなかでエポキシ樹脂との溶解性、塗膜形成性等の面からは、ケトン系またはエーテル系の溶剤が特に好ましい。
【0121】
皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との配合比率は、固形分の割合で皮膜形成有機樹脂(A)100重量部に対して、活性水素含有化合物(B)を0.5〜20重量部、特に好ましくは1.0〜10重量部とするのが望ましい。
また、皮膜形成有機樹脂(A)がエポキシ基含有樹脂(D)である場合には、エポキシ基含有樹脂(D)と活性水素含有化合物(B)との配合比率は、活性水素含有化合物(B)の活性水素基の数とエポキシ基含有樹脂(D)のエポキシ基の数との比率[活性水素基数/エポキシ基数]が0.01〜10、より好ましくは0.1〜8、さらに好ましくは0.2〜4とすることが耐食性などの点から適当である。
【0122】
また、活性水素含有化合物(B)中における活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)の割合は10〜100モル%、より好ましくは30〜100モル%、さら好ましくは40〜100モル%とすることが適当である。活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)の割合が10モル%未満では有機皮膜に十分な防錆機能を付与することができず、得られる防錆効果は皮膜形成有機樹脂とヒドラジン誘導体を単に混合して使用した場合と大差なくなる。
【0123】
本発明では緻密なバリヤー皮膜を形成するために、樹脂組成物中に硬化剤を配合し、有機皮膜を加熱硬化させることが望ましい。
樹脂組成物皮膜を形成する場合の硬化方法としては、(1)イソシアネートと基体樹脂中の水酸基とのウレタン化反応を利用する硬化方法、(2)メラミン、尿素およびベンゾグアナミンの中から選ばれた1種以上にホルムアルデヒドを反応させてなるメチロール化合物の一部若しくは全部に炭素数1〜5の1価アルコールを反応させてなるアルキルエーテル化アミノ樹脂と基体樹脂中の水酸基との間のエーテル化反応を利用する硬化方法、が適当であるが、このうちイソシアネートと基体樹脂中の水酸基とのウレタン化反応を主反応とすることが特に好適である。
【0124】
上記(1)の硬化方法で用いるポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環族(複素環を含む)または芳香族イソシアネート化合物、若しくはそれらの化合物を多価アルコールで部分反応させた化合物である。このようなポリイソシアネート化合物としては、例えば以下のものが例示できる。
▲1▼ m−またはp−フェニレンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、o−またはp−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート
【0125】
▲2▼ 上記▲1▼の化合物単独またはそれらの混合物と多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなどの2価アルコール類;グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール;ペンタエリスリトールなどの4価アルコール;ソルビトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコールなど)との反応生成物であって、1分子中に少なくとも2個のイソシアネートが残存する化合物
これらのポリイソシアネート化合物は、1種を単独で、または2種以上を混合して使用できる。
【0126】
また、ポリイソシアネート化合物の保護剤(ブロック剤)としては、例えば、▲1▼ メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクチルアルコールなどの脂肪族モノアルコール類
▲2▼ エチレングリコールおよび/またはジエチレングリコールのモノエーテル類、例えば、メチル、エチル、プロピル(n−,iso)、ブチル(n−,iso,sec)などのモノエーテル
▲3▼ フェノール、クレゾールなどの芳香族アルコール
▲4▼ アセトオキシム、メチルエチルケトンオキシムなどのオキシム
などが使用でき、これらの1種または2種以上と前記ポリイソシアネート化合物とを反応させることにより、少なくとも常温下で安定に保護されたポリイソシアネート化合物を得ることができる。
【0127】
このようなポリイソシアネート化合物(E)は、硬化剤として皮膜形成有機樹脂(A)に対し、(A)/(E)=95/5〜55/45(不揮発分の重量比)、好ましくは(A)/(E)=90/10〜65/35の割合で配合するのが適当である。ポリイソシアネート化合物には吸水性があり、これを(A)/(E)=55/45を超えて配合すると有機皮膜の密着性を劣化させてしまう。さらに、有機皮膜上に上塗り塗装を行った場合、未反応のポリイソシアネート化合物が塗膜中に移動し、塗膜の硬化阻害や密着性不良を起こしてしまう。このような観点から、ポリイソシアネート化合物(E)の配合量は(A)/(E)=55/45以下とすることが好ましい。
【0128】
なお、皮膜形成有機樹脂(A)は以上のような架橋剤(硬化剤)の添加により十分に架橋するが、さらに低温架橋性を増大させるため、公知の硬化促進触媒を使用することが望ましい。この硬化促進触媒としては、例えば、N−エチルモルホリン、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸コバルト、塩化第1スズ、ナフテン酸亜鉛、硝酸ビスマスなどが使用できる。
また、例えば皮膜形成有機樹脂(A)にエポキシ基含有樹脂を使用する場合、付着性など若干の物性向上を狙いとして、エポキシ基含有樹脂とともに公知のアクリル、アルキッド、ポリエステル等の樹脂を混合して用いることもできる。
【0129】
本発明では、有機皮膜中にさらに無機系防錆顔料(a)を添加することが好ましい。
無機系防錆顔料としては、イオン交換シリカ、微粒子シリカなどのシリカ化合物、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、ポリリン酸塩(例えば、ポリリン酸アルミ:商品名でテイカ(株)製のテイカK−WHITE80、テイカK−WHITE84、テイカK−WHITE105、テイカK−WHITE G105、テイカK−WHITE90)、リン酸塩(例えば、リン酸亜鉛、リン酸二水素アルミニウム、亜リン酸亜鉛など)、モリブデン酸塩、リンモリブデン酸塩(例えば、リンモリブデン酸アルミニウムなど)などが使用できる。また、これらのなかでも特に、イオン交換シリカ(c)、微粒子シリカ(d)などのシリカ化合物、リン酸亜鉛(e)、リン酸アルミニウム(f)などのリン酸塩、カルシウム化合物(g)のうちの1種または2種以上を配合した場合に耐食性が特に良好となる。
【0130】
有機樹脂皮膜中での無機系防錆顔料(a)の配合量は、皮膜形成用の樹脂組成物である反応生成物(皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物)100重量部(固形分)に対して、1〜100重量部(固形分)、好ましくは5〜80重量部(固形分)、さらに好ましくは10〜50重量部(固形分)とすることが適当である。無機系防錆顔料(a)の配合量が1重量部未満では、耐アルカリ脱脂後の耐食性向上効果が小さく、一方、配合量が100重量部を超えると、耐食性などが低下するので好ましくない。
【0131】
無機系防錆顔料(a)として用いられるイオン交換シリカ(c)は、カルシウムやマグネシウムなどの金属イオンを多孔質シリカゲル粉末の表面に固定したもので、腐食環境下で金属イオンが放出されて沈殿膜を形成する。また、このイオン交換シリカの中でもCaイオン交換シリカが最も好ましい。
Caイオン交換シリカとしては任意のものを用いることができるが、平均粒子径が6μm以下、望ましくは4μm以下のものが好ましく、例えば、平均粒子径が2〜4μmのものを用いることができる。Caイオン交換シリカの平均粒子径が6μmを超えると耐食性が低下するとともに、塗料組成物中での分散安定性が低下する。
【0132】
Caイオン交換シリカ中のCa濃度は1wt%以上、望ましくは2〜8wt%であることが好ましい。Ca濃度が1wt%未満ではCa放出による防錆効果が十分に得られない。なお、Caイオン交換シリカの表面積、pH、吸油量については特に限定されない。
以上のようなCaイオン交換シリカとしては、商品名でW.R.Grace & Co.製のSHIELDEX C303(平均粒子径2.5〜3.5μm、Ca濃度3wt%)、SHIELDEX AC3(平均粒子径2.3〜3.1μm、Ca濃度6wt%)、SHIELDEX AC5(平均粒子径3.8〜5.2μm、Ca濃度6wt%)、富士シリシア化学(株)製の SHIELDEX(平均粒子径3μm、Ca濃度6〜8wt%)、SHIELDEX SY710(平均粒子径2.2〜2.5μm、Ca濃度6.6〜7.5wt%)などを用いることができる。
【0133】
有機皮膜中にイオン交換シリカ(c)を添加した場合の防食機構は先に述べた通りであり、特に本発明では皮膜形成有機樹脂である特定のキレート変性樹脂とイオン交換シリカとを複合化することにより、キレート変性樹脂によるアノード反応部での腐食抑制効果と、イオン交換シリカによるカソード反応部での腐食抑制効果とが複合化することによって極めて優れた防食効果が発揮される。
【0134】
有機皮膜中の無機系防錆顔料(a)としてイオン交換シリカ(c)を用いる場合、その配合量は、皮膜形成用の樹脂組成物である反応生成物(皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物)100重量部(固形分)に対して、1〜100重量部(固形分)、好ましくは5〜80重量部(固形分)、さらに好ましくは10〜50重量部(固形分)とすることが適当である。イオン交換シリカ(c)の配合量が1重量部未満では、耐アルカリ脱脂後の耐食性向上効果が小さい。一方、配合量が100重量部を超えると、耐食性が低下するので好ましくない。
【0135】
無機系防錆顔料(a)として用いられる微粒子シリカ(d)はコロイダルシリカ、ヒュームドシリカのいずれでもよい。コロイダルシリカとしては、水系皮膜形成樹脂をベースとする場合には、例えば、商品名で日産化学工業(株)製のスノーテックスO、スノーテックスN、スノーテックス20、スノーテックス30、スノーテックス40、スノーテックスC、スノーテックスS、触媒化成工業(株)製のカタロイドS、カタロイドSI−350、カタロイドSI−40、カタロイドSA、カタロイドSN、旭電化工業(株)製のアデライトAT−20〜50、アデライトAT−20N、アデライトAT−300、アデライトAT−300S、アデライトAT20Qなどを用いることができる。
【0136】
また、溶剤系皮膜形成樹脂をベースとする場合には、例えば、商品名で日産化学工業(株)製のオルガノシリカゾルMA−ST−M、オルガノシリカゾルIPA−ST、オルガノシリカゾルEG−ST、オルガノシリカゾルE−ST−ZL、オルガノシリカゾルNPC−ST、オルガノシリカゾルDMAC−ST、オルガノシリカゾルDMAC−ST−ZL、オルガノシリカゾルXBA−ST、オルガノシリカゾルMIBK−ST、触媒化成工業(株)製のOSCAL−1132、OSCAL−1232、OSCAL−1332、OSCAL−1432、OSCAL−1532、OSCAL−1632、OSCAL−1722などを用いることができる。
【0137】
特に、有機溶剤分散型シリカゾルは、分散性に優れ、ヒュームドシリカよりも耐食性に優れている。
また、ヒュームドシリカとしては、例えば、商品名で日本アエロジル(株)製のAEROSIL R971、AEROSIL R812、AEROSIL R811、AEROSIL R974、AEROSIL R202、AEROSIL R805、AEROSIL 130、AEROSIL 200、AEROSIL 300、AEROSIL 300CFなどを用いることができる。
【0138】
微粒子シリカは、腐食環境下において緻密で安定な亜鉛の腐食生成物の生成に寄与し、この腐食生成物がめっき表面に緻密に形成されることによって、腐食の促進を抑制することができると考えられている。
耐食性の観点からは、微粒子シリカは粒子径が5〜50nm、望ましくは5〜20nm、さらに好ましくは5〜15nmのものを用いるのが好ましい。
【0139】
有機皮膜中の無機系防錆顔料(a)として微粒子シリカ(d)を用いる場合、その配合量は、皮膜形成用の樹脂組成物である反応生成物(皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物)100重量部(固形分)に対して、1〜100重量部(固形分)、好ましくは5〜80重量部(固形分)さらに好ましくは10〜30重量部(固形分)とすることが適当である。微粒子シリカ(d)の配合量が1重量部未満では、耐アルカリ脱脂後の耐食性向上効果が小さい。一方、配合量が100重量部を超えると、耐食性や加工性が低下するので好ましくない。
【0140】
また、本発明では有機皮膜中に無機系防錆顔料(a)としてイオン交換シリカ(c)と微粒子シリカ(d)を複合添加することにより、特に優れた耐食性が得られる。すなわち、イオン交換シリカ(c)と微粒子シリカ(d)とを複合添加することにより、両者の複合的な防錆機構によって特に優れた防食効果が得られる。
【0141】
有機皮膜中の無機系防錆顔料(a)としてイオン交換シリカ(c)と微粒子シリカ(d)を複合添加する場合、その配合量は、皮膜形成用の樹脂組成物である反応生成物(皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物)100重量部(固形分)に対して、イオン交換シリカ(c)および微粒子シリカ(d)の合計の配合量で1〜100重量部(固形分)、好ましくは、5〜80重量部(固形分)であって、且つイオン交換シリカ(c)と微粒子シリカ(d)の配合量(固形分)の重量比(c)/(d)を99/1〜1/99、好ましくは95/5〜40/60、さらに好ましくは90/10〜60/40とすることが適当である。
【0142】
イオン交換シリカ(c)および微粒子シリカ(d)の合計の配合量が1重量部未満では、耐アルカリ脱脂後の耐食性向上効果が小さい。一方、合計の配合量が100重量部を超えると塗装性や加工性が低下するので好ましくない。
また、イオン交換シリカ(c)と微粒子シリカ(d)の重量比(c)/(d)が1/99未満では耐食性が劣り、一方、重量比(c)/(d)が99/1を超えるとイオン交換シリカ(c)と微粒子シリカ(d)の複合添加による効果が十分に得られなくなる。
【0143】
無機系防錆顔料(a)として用いられるリン酸亜鉛(e)やリン酸アルミニウム(f)は、そのリン酸イオンの骨格や縮合度などに特別な制限はなく、正塩、二水素塩、一水素塩或いは亜リン酸塩のいずれでもよく、また、正塩はオルトリン酸塩のほか、ポリリン酸塩などの全ての縮合リン酸塩を含む。例えば、リン酸亜鉛としては商品名でキクチカラー(株)製のLFボウセイZP−DL、リン酸アルミニウムとしては商品名でテイカ(株)製のテイカK−WHITEなどを適用できる。
これらリン酸亜鉛(e)やリン酸アルミニウム(f)は、腐食環境下において加水分解によってリン酸イオンに解離し、溶出金属と錯形成反応を起こすことにより保護皮膜を形成する。
【0144】
有機皮膜中の無機系防錆顔料(a)としてリン酸亜鉛(e)および/またはリン酸アルミニウム(f)を用いる場合、その配合量は、皮膜形成用の樹脂組成物である反応生成物(皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物)100重量部(固形分)に対して、1〜100重量部(固形分)、好ましくは5〜80重量部(固形分)、さらに好ましくは10〜50重量部(固形分)とすることが適当である。リン酸亜鉛(e)および/またはリン酸アルミニウム(f)の配合量が1重量部未満では、耐アルカリ脱脂後の耐食性向上効果が小さい。一方、配合量が100重量部を超えると、耐食性が低下するので好ましくない。
【0145】
また、本発明では有機皮膜中に無機系防錆顔料(a)としてリン酸亜鉛(e)および/またはリン酸アルミニウム(f)とともにカルシウム化合物(g)を複合添加することにより、特に優れた耐食性が得られる。すなわち、リン酸亜鉛(e)および/またはリン酸アルミニウム(f)とカルシウム化合物(g)とを複合添加することにより、両者の複合的な防錆機構によって特に優れた防食効果が得られる。
【0146】
カルシウム化合物(g)は、カルシウム酸化物、カルシウム水酸化物、カルシウム塩のいずれでもよく、これらの1種または2種以上を使用できる。また、カルシウム塩の種類にも特に制限はなく、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどのようなカチオンとしてカルシウムのみを含む単塩のほか、リン酸カルシウム・亜鉛、リン酸カルシウム・マグネシウムなどのようなカルシウムとカルシウム以外のカチオンを含む複塩を使用してももよい。
カルシウム化合物は、腐食環境下においてめっき金属よりも優先的に溶出することにより、めっき金属の溶出をトリガーとせずにリン酸イオンと錯形成反応を起こして緻密で難溶性の保護皮膜を形成し、腐食反応を抑制するものと考えらる。
【0147】
有機樹脂皮膜中の無機系防錆顔料(a)としてリン酸亜鉛(e)および/またはリン酸アルミニウム(f)とカルシウム化合物(g)を複合添加する場合、その配合量は、皮膜形成用の樹脂組成物である反応生成物(皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物)100重量部(固形分)に対して、リン酸亜鉛(e)および/またはリン酸アルミニウム(f)とカルシウム化合物(g)の合計の配合量で1〜100重量部(固形分)、好ましくは、5〜80重量部(固形分)であって、且つリン酸亜鉛(e)および/またはリン酸アルミニウム(f)とカルシウム化合物(g)の配合量(固形分)の重量比(e,f)/(g)を99/1〜1/99、好ましくは95/5〜40/60、さらに好ましくは90/10〜60/40とすることが適当である。
【0148】
リン酸亜鉛(e)および/またはリン酸アルミニウム(f)とカルシウム化合物(g)の合計の配合量が1重量部未満では、耐アルカリ脱脂後の耐食性向上効果が小さい。一方、合計の配合量が100重量部を超えると、耐食性が低下するので好ましくない。また、リン酸亜鉛(e)および/またはリン酸アルミニウム(f)とカルシウム化合物(g)の配合量(固形分)の重量比(e,f)/(g)が1/99未満では耐食性が劣り、一方、重量比(e,f)/(g)が99/1を超えるとリン酸亜鉛および/またはリン酸アルミニウム(e,f)とカルシウム化合物(g)の複合添加による効果が十分に得られなくなる。
【0149】
また、有機皮膜中には上述した各種の無機系防錆顔料に加えて、腐食抑制剤として、有機リン酸およびその塩(例えば、フィチン酸、フィチン酸塩、ホスホン酸、ホスホン酸塩およびこれらの金属塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩など)、有機インヒビター(例えば、ヒドラジン誘導体、チオール化合物、ジチオカルバミン酸塩など)などを添加できる。
【0150】
有機皮膜中には、さらに必要に応じて、皮膜の加工性を向上させる目的で固形潤滑剤(b)を配合することができる。
本発明に適用できる固形潤滑剤としては、例えば、以下のようなものが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
(1)ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス:例えば、ポリエチレンワックス、合成パラフィン、天然パラフィン、マイクロワックス、塩素化炭化水素など
(2)フッ素樹脂微粒子:例えば、ポリフルオロエチレン樹脂(ポリ4フッ化エチレン樹脂等)、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂など
【0151】
また、この他にも、脂肪酸アミド系化合物(例えば、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド、オレイン酸アミド、エシル酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミドなど)、金属石けん類(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛、ラウリン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウムなど)、金属硫化物(例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステンなど)、グラファイト、フッ化黒鉛、窒化ホウ素、ポリアルキレングリコール、アルカリ金属硫酸塩などの1種または2種以上を用いてもよい。
【0152】
以上の固形潤滑剤の中でも、特に、ポリエチレンワックス、フッ素樹脂微粒子(なかでも、ポリ4フッ化エチレン樹脂微粒子)が好適である。
ポリエチレンワックスとしては、例えば、商品名でヘキスト社製のセリダスト9615A、セリダスト 3715、セリダスト 3620、セリダスト 3910、三洋化成(株)製のサンワックス 131−P、サンワックス 161−P、三井石油化学(株)製のケミパール W−100、ケミパール W−200、ケミパール W−500、ケミパール W−800、ケミパール W−950などを用いることができる。
【0153】
また、フッ素樹脂微粒子としては、テトラフルオロエチレン微粒子が最も好ましく、例えば、商品名でダイキン工業(株)製のルブロン L−2、ルブロン L−5、三井・デュポン(株)製のMP1100、MP1200、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のフルオンディスパージョン AD1、フルオンディスパージョン AD2、フルオン L141J、フルオン L150J、フルオン L155Jなどが好適である。
また、これらのなかで、ポリオレフィンワックスとテトラフルオロエチレン微粒子の併用により特に優れた潤滑効果が期待できる。
【0154】
有機皮膜中での固形潤滑剤(b)の配合量は、皮膜形成用の樹脂組成物である反応生成物(皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物)100重量部(固形分)に対して、1〜80重量部(固形分)、好ましくは3〜40重量部(固形分)とすることが適当である。固形潤滑剤(b)の配合量が1重量部未満では潤滑効果が乏しく、一方、配合量が80重量部を超えると塗装性が低下するので好ましくない。
【0155】
本発明の有機被覆鋼板が有する有機皮膜は、通常、皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物(樹脂組成物)を主成分とし、必要に応じて、無機系防錆顔料(a)、固形潤滑剤(b)および硬化剤などが添加されるが、さらに必要に応じて、添加剤として、有機着色顔料(例えば、縮合多環系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料など)、着色染料(例えば、有機溶剤可溶性アゾ系染料、水溶性アゾ系金属染料など)、無機顔料(例えば、酸化チタンなど)、キレート剤(例えば、チオールなど)、導電性顔料(例えば、亜鉛、アルミニウム、ニッケルなどの金属粉末、リン化鉄、アンチモンドープ型酸化錫など)、カップリング剤(例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤など)、メラミン・シアヌル酸付加物などを添加することができる。
【0156】
また、上記主成分および添加成分を含む皮膜形成用の塗料組成物は、通常、溶媒(有機溶剤および/または水)を含有し、さらに必要に応じて中和剤などが添加される。
上記有機溶剤としては、上記皮膜形成有機樹脂(A)と活性水素含有化合物(B)との反応生成物を溶解または分散でき、塗料組成物として調整できるものであれば特別な制約なく、例えば、先に例示した種々の有機溶剤を使用することができる。
上記中和剤は、皮膜形成有機樹脂(A)を中和して水性化するために必要に応じて配合されるものであり、皮膜形成有機樹脂(A)がカチオン性樹脂である場合には酢酸、乳酸、蟻酸などの酸を中和剤として使用することができる。
【0157】
以上述べたような有機皮膜は上記複合酸化物皮膜の上部に形成される。
有機皮膜の乾燥膜厚は0.1〜5μm、好ましくは0.3〜3μm、さらに好ましくは0.5〜2μmとする。有機皮膜の膜厚が0.1μm未満では耐食性が不十分であり、一方、膜厚が5μmを超えると導電性、加工性が低下する。
【0158】
次に、本発明の有機被覆鋼板の製造方法について説明する。
本発明の有機被覆鋼板は、上述した複合酸化物皮膜の構成成分を含む処理液で亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面を処理(処理液を塗布)した後、加熱乾燥させ、次いでその上層に、上述した皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物を含み(好ましくは主成分とする)、必要に応じて無機系防錆顔料(a)、固形潤滑剤(b)などが添加された塗料組成物を塗布し、加熱乾燥させることにより製造される。
なお、めっき鋼板の表面は、上記処理液を塗布する前に必要に応じてアルカリ脱脂処理し、さらに密着性、耐食性を向上させるために表面調整処理などの前処理を施すことができる。
【0159】
亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面を処理液で処理し、上記成分(α)および(β)を含有する複合酸化物皮膜を形成するには、
(イ)酸化物微粒子を0.001〜3.0モル/L、
(ロ)リン酸および/またはリン酸化合物をP換算量で0.001〜6.0モル/L、
を含有し、さらに必要に応じて上述した各添加成分(有機樹脂成分、鉄族金属イオン、腐食抑制剤、その他の添加剤)を添加した水溶液で処理し、しかる後加熱乾燥させることが好ましい。
【0160】
また、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面を処理液で処理し、上記成分(α)、(β)および(γ)を含有する複合酸化物皮膜を形成するには、上述した添加成分(イ)および(ロ)に加えて、さらに、
(ハ)Mg、Ca、Sr、Baの各金属イオン、前記金属のうちの少なくとも1種を含む水溶性イオン、前記金属のうちの少なくとも1種を含む化合物、前記金属のうちの少なくとも1種を含む複合化合物の中から選ばれる1種または2種以上を、前記金属の金属量換算の合計で0.001〜3.0モル/L、
を含有し、さらに必要に応じて上述した各添加成分(有機樹脂成分、鉄族金属イオン、腐食抑制剤、その他の添加剤)を添加したpH0.5〜5の酸性水溶液で処理し、しかる後加熱乾燥させることが好ましい。
【0161】
また、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面を処理液で処理し、上記成分(α)、(β)および(δ)を含有する複合酸化物皮膜を形成するには、上述した添加成分(イ)および(ロ)に加えて、さらに、
(ニ)Li、Mn、Fe、Co、Ni、Zn,Al、La、Ceの各金属イオン、前記金属のうちの少なくとも1種を含む水溶性イオン、前記金属のうちの少なくとも1種を含む化合物、前記金属のうちの少なくとも1種を含む複合化合物の中から選ばれる1種または2種以上を、前記金属の金属量換算の合計で0.001〜3.0モル/L、
を含有し、さらに必要に応じて上述した各添加成分(有機樹脂成分、鉄族金属イオン、腐食抑制剤、その他の添加剤)を添加したpH0.5〜5の酸性水溶液で処理し、しかる後加熱乾燥させることが好ましい。
【0162】
さらに、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板表面を処理液で処理し、上記成分(α)、(β)、(γ)および(δ)を含有する複合酸化物皮膜を形成するには、上述した添加成分(イ)、(ロ)、(ハ)および(ニ)を含有し、さらに必要に応じて上述した各添加成分(有機樹脂成分、鉄族金属イオン、腐食抑制剤、その他の添加剤)を添加したpH0.5〜5の酸性水溶液で処理し、しかる後加熱乾燥させることが好ましい。
【0163】
添加成分(イ)である酸化物微粒子としては酸化ケイ素(SiO微粒子)が最も好ましい。この酸化ケイ素は酸性水溶液中で安定な水分散性のSiO微粒子であればよく、市販のシリカゾルや水分散性のケイ酸オリゴマーなどを用いることができる。但し、ヘキサフルオロケイ酸などのフッ化物は腐食性が強く、人体への影響も大きいため、作業環境への影響などの観点から使用しないことが望ましい。
【0164】
処理液中での酸化物微粒子の添加量(酸化ケイ素の場合はSiO量としての添加量)は0.001〜3.0モル/L、好ましくは0.05〜1.0モル/L、さらに好ましくは0.1〜0.5モル/Lとする。酸化物微粒子の添加量が0.001モル/L未満では添加による効果が十分でなく、耐食性が劣る。一方、添加量が3.0モル/Lを超えると皮膜の耐水性が悪くなり、結果的に耐食性も劣化する。
【0165】
添加成分(ロ)であるリン酸および/またはリン酸化合物としては、オルトリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸などのポリリン酸、メタリン酸およびこれらの無機塩(例えば、第一リン酸アルミニウムなど)、亜リン酸、亜リン酸塩、次亜リン酸、次亜リン酸塩などのリン酸含有の化合物が、水溶液中で溶解した際に生じるアニオン、或いは金属カチオンとの錯イオンとして存在している形態、遊離酸として存在している形態、無機塩として水分散状態で存在している形態など全てを含み、本発明におけるリン酸成分の量は酸性水溶液中で存在するこれら全ての形態の合計をP換算として規定する。
【0166】
処理液中でのリン酸および/またはリン酸化合物の添加量はP換算で0.001〜6.0モル/L、好ましくは0.02〜1.0モル/L、さらに好ましくは0.1〜0.8モル/Lとする。リン酸および/またはリン酸化合物の添加量が0.001モル/L未満では添加による効果が十分でなく、耐食性が劣る。一方、添加量が6.0モル/Lを超えると過剰のリン酸イオンが湿潤環境においてめっき皮膜と反応し、腐食環境によってはめっき素地の腐食を促進し、変色やシミ状錆発生の要因となる。
また、添加成分(ロ)としては、耐食性の優れた複合酸化物を得ることができるため、リン酸アンモニウム塩を使用することも有効である。リン酸アンモニウム塩としては、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウムなどの1種または2種以上を用いることが好ましい。
【0167】
処理液中での上記添加成分(ハ)の添加量は、金属量換算の合計で0.001〜3.0モル/L、好ましくは0.01〜0.5モル/Lとする。これらの合計の添加量が0.001モル/L未満では添加による効果が十分に得られず、一方、添加量が3.0モル/Lを超えると、逆にこれらの成分が皮膜のネットワークを阻害するようになり、緻密な皮膜ができにくくなる。また、金属成分が皮膜から溶出しやすくなり、環境によっては外観が変色するなどの欠陥を生じる。
【0168】
また、上記の添加成分(ハ)の中でもMg成分が最も顕著に耐食性を向上させる。また、このMg成分の処理液中での存在形態はMgを含む化合物や複合化合物でもよいが、特に優れた耐食性を得るためには金属イオンまたはMgが含まれる水溶性イオンの形態が特に好ましい。
なお、添加成分(ハ)のイオンを金属塩として供給するために、塩素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、酢酸イオン、ホウ酸イオンなどのアニオンが処理液中に添加されてもよい。
【0169】
処理液中での上記添加成分(ニ)の添加量は、金属量換算の合計で0.001〜3.0モル/L、好ましくは0.01〜0.5モル/Lとする。これらの合計の添加量が0.001モル/L未満では添加による効果が十分に得られず、一方、添加量が3.0モル/Lを超えると、逆にこれらの成分が可溶性カチオンとなり、皮膜のネットワークを阻害するようになり、緻密な皮膜ができにくくなる。
また、上記の添加成分(ニ)の中でもNi(ニッケル成分)および/またはMn(マンガン成分)が最も顕著に耐食性を向上させる。
なお、添加成分(ニ)のイオンを金属塩として供給するために、リン酸イオン以外に塩素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、酢酸イオン、ホウ酸イオンなどのアニオンが処理液中に添加されてもよい。
【0170】
上記添加成分(ハ)および/または添加成分(ニ)を含む処理液は、酸性水溶液である点が重要である。すなわち、処理液を酸性とすることにより亜鉛などのめっき成分が溶解しやすくなるため、化成処理皮膜とめっき界面に亜鉛などのめっき成分を含むリン酸化合物層が形成され、これにより両者の界面結合が強化される結果、耐食性に優れた皮膜になるものと推定される。
また、酸性水溶液のpHは0.5〜5、好ましくは2〜4とすることが好ましい。処理液がpH0.5未満では処理液の反応性が高くなり過ぎるため皮膜に微細な欠陥部が形成され、耐食性が低下する。一方、処理液がpH5を超えると処理液の反応性が低くなり、上述したようなめっき方面と皮膜との界面の結合が不十分となり、この場合も耐食性が低下する。
【0171】
以下、本発明において特に良好な性能を有する複合酸化物皮膜を得るための処理液の好ましい条件について説明する。
まず、先に述べた成分(α)および(β)として、
(α)SiO微粒子をSiO換算量で0.01〜3000mg/m
(β)リン酸および/またはリン酸化合物をP換算量で0.01〜3000mg/m
を含有し、成分(α)および(β)の上記付着量の合計が6〜3600mg/mである複合酸化物皮膜を形成する場合には、上記複合酸化物皮膜形成用の水溶液中の添加成分(イ)および(ロ)として、
(イ)SiO微粒子をSiO換算量で0.001〜3.0モル/L、好ましくは0.05〜1.0モル/L、さらに好ましくは0.1〜0.5モル/L
(ロ)リン酸および/またはリン酸化合物をP換算量で0.001〜6.0モル/L、好ましくは0.02〜1.0モル/L、さらに好ましくは0.1〜0.8モル/L、
を含有し、さらに必要に応じて上述した各添加成分(有機樹脂成分、鉄族金属イオン、腐食抑制剤、その他の添加剤)を添加した水溶液で処理し、しかる後加熱乾燥させることが好ましい。
【0172】
また、上記成分(α)および(β)に加えて、さらに成分(γ)として、
(γ)Mg、Mgを含む化合物、Mgを含む複合化合物からなる群の中から選ばれる1種以上をMg換算量で0.01〜1000mg/m
を含有し、成分(α)、(β)および(γ)の上記付着量の合計が6〜3600mg/mである複合酸化物皮膜を形成する場合には、上記複合酸化物皮膜形成用の水溶液中に、上記添加成分(イ)および(ロ)に加えて、さらに添加成分(ハ)として、
(ハ)Mgイオン、Mgを含む水溶性イオン、Mgを含む化合物、Mgを含む複合化合物の中から選ばれる1種または2種以上をMg換算量で0.001〜3.0モル/L、好ましくは0.01〜0.5モル/L、
を含有し、さらに必要に応じて上述した各添加成分(有機樹脂成分、鉄族金属イオン、腐食抑制剤、その他の添加剤)を添加したpH0.5〜5の酸性水溶液で処理し、しかる後加熱乾燥させることが好ましい。
【0173】
また、上記成分(α)および(β)に加えて、さらに成分(δ)として、
(δ)Li、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、La、Ceの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)、
を含有し、成分(α)、(β)および(δ)の上記付着量の合計が6〜3600mg/mである複合酸化物皮膜を形成する場合には、上記複合酸化物皮膜形成用の水溶液中に、上記添加成分(イ)および(ロ)に加えて、さらに添加成分(ニ)として、
(ニ)Li、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、La、Ceの各金属イオン、前記金属のうちの少なくとも1種を含む水溶性イオン、前記金属のうちの少なくとも1種を含む化合物、前記金属のうちの少なくとも1種を含む複合化合物の中から選ばれる1種または2種以上を、前記金属の金属量換算の合計で0.001〜3.0モル/L、好ましくは0.01〜0.5モル/L、
を含有し、さらに必要に応じて上述した各添加成分(有機樹脂成分、鉄族金属イオン、腐食抑制剤、その他の添加剤)を添加したpH0.5〜5の酸性水溶液で処理し、しかる後加熱乾燥させることが好ましい。
【0174】
また、上記成分(α)および(β)に加えて成分(γ)および(δ)を含有し、これら成分(α)、(β)、(γ)および(δ)の上記付着量の合計が6〜3600mg/mである複合酸化物皮膜を形成する場合には、複合酸化物皮膜形成用の水溶液中に上記添加成分(イ)、(ロ)、(ハ)および(ニ)を含有させ、さらに必要に応じて上述した各添加成分(有機樹脂成分、鉄族金属イオン、腐食抑制剤、その他の添加剤)を添加したpH0.5〜5の酸性水溶液で処理し、しかる後加熱乾燥させることが好ましい。
上記添加成分(イ)、(ロ)、(ハ)および(ニ)の添加条件と添加量の限定理由は先に述べた通りである。
【0175】
また、複合酸化物皮膜中の成分(γ)と成分(α)との割合を、成分(γ)のMg換算量と成分(α)のSiO換算量とのモル比[Mg/SiO]で1/100〜100/1の範囲とするためには、複合酸化物皮膜形成用の酸性水溶液中の添加成分(ハ)と添加成分(イ)との割合を、添加成分(ハ)のMg換算量と添加成分(イ)のSiO換算量とのモル比[Mg/SiO]で1/100〜100/1の範囲とすればよい。
【0176】
また、複合酸化物皮膜中の成分(γ)と成分(α)との割合を、成分(γ)のMg換算量と成分(α)のSiO換算量とのモル比[Mg/SiO]でより好ましい範囲である1/10〜10/1、さらに好ましい範囲である1/2〜5/1の範囲とするには、複合酸化物皮膜形成用の酸性水溶液中の添加成分(ハ)と添加成分(イ)との割合を、添加成分(ハ)のMg換算量と添加成分(イ)のSiO換算量とのモル比[Mg/SiO]で1/10〜10/1、さらに好ましくは1/2〜5/1の範囲とすることが適当である。
【0177】
さらに、複合酸化物皮膜中の成分(β)と成分(γ)との割合を、成分(β)のP換算量と成分(γ)のMg換算量とのモル比[P/Mg]で1/100〜100/1の範囲とするには、複合酸化物皮膜形成用の酸性水溶液中の添加成分(ロ)と添加成分(ハ)との割合を、添加成分(ロ)のP換算量と添加成分(ハ)のMg換算量とのモル比[P/Mg]で1/100〜100/1の範囲とすればよい。
【0178】
また、複合酸化物皮膜中の成分(β)と成分(γ)との割合を、成分(β)のP換算量と成分(γ)のMg換算量とのモル比[P/Mg]でより好ましい範囲である1/10〜10/1、さらに好ましい範囲である1/2〜2/1とするには、複合酸化物皮膜形成用の酸性水溶液中の添加成分(ロ)と添加成分(ハ)との割合を、添加成分(ロ)のP換算量と添加成分(ハ)のMg換算量とのモル比[P/Mg]で1/10〜10/1、さらに好ましくは1/2〜2/1とすることが適当である。
【0179】
複合酸化物皮膜形成用の酸性水溶液中の添加成分(ロ)と添加成分(ハ)との割合を調整する際、予めマグネシウム成分とリン酸成分のモル比を規定して得られる、第一リン酸マグネシウム水溶液などを用いると、他のアニオン成分が処理液中に混在しないため好ましい。
但し、第一リン酸マグネシウム水溶液を用いる場合、モル比[P/Mg]の値が小さくなると同化合物の水溶液中での安定性が低下するため、モル比[P/Mg]は1/2以上が好適である。
【0180】
一方、第一リン酸マグネシウム水溶液のモル比[P/Mg]が大きくなると、処理液のpHが低くなるためめっき素地との反応性が大きくなり、この結果、反応ムラによる皮膜の不均一な生成が生じて耐食性に影響を与える。したがって、マグネシウム成分とリン酸成分のモル比を規定して得られる、第一リン酸マグネシウム水溶液を用いる場合には、モル比[P/Mg]は2/1以下とすることが好適である。
【0181】
また、最も優れた耐食性を得るために、複合酸化物皮膜中の成分(γ)と成分(α)との割合を、成分(γ)のMg換算量と成分(α)のSiO換算量とのモル比[Mg/SiO]で1/100〜100/1、より好ましくは1/10〜10/1、さらに好ましくは1/2〜5/1とし、且つ複合酸化物皮膜中の成分(β)と成分(γ)との割合を、成分(β)のP換算量と成分(γ)のMg換算量とのモル比[P/Mg]で1/100〜100/1、より好ましくは1/10〜10/1、さらに好ましくは1/2〜2/1とするためには、複合酸化物皮膜形成用の酸性水溶液中の添加成分(ハ)と添加成分(イ)との割合を、添加成分(ハ)のMg換算量と添加成分(イ)のSiO換算量とのモル比[Mg/SiO]で1/100〜100/1、好ましくは1/10〜10/1、さらに好ましくは1/2〜5/1の範囲とし、且つ添加成分(ロ)と添加成分(ハ)との割合を、添加成分(ロ)のP換算量と添加成分(ハ)のMg換算量とのモル比[P/Mg]で1/100〜100/1、好ましくは1/10〜10/1、さらに好ましくは1/2〜2/1とすることが適当である。
【0182】
また、複合酸化物皮膜中の成分(δ)と成分(α)との割合を、成分(δ)の金属換算量Meと成分(α)のSiO換算量とのモル比[Me/SiO]で1/100〜100/1の範囲とするためには、複合酸化物皮膜形成用の酸性水溶液中の添加成分(ニ)と添加成分(イ)との割合を、添加成分(ニ)の金属換算量Meと添加成分(イ)のSiO換算量とのモル比[Me/SiO]で1/100〜100/1の範囲とすればよい。
【0183】
また、複合酸化物皮膜中の成分(δ)と成分(α)との割合を、成分(δ)の金属換算量Meと成分(α)のSiO換算量とのモル比[Me/SiO]でより好ましい範囲である1/10〜10/1、さらに好ましい範囲である1/2〜5/1の範囲とするには、複合酸化物皮膜形成用の酸性水溶液中の添加成分(ニ)と添加成分(イ)との割合を、添加成分(ニ)の金属換算量Meと添加成分(イ)のSiO換算量とのモル比[Me/SiO]で1/10〜10/1、さらに好ましくは1/2〜5/1の範囲とすることが適当である。
【0184】
さらに、複合酸化物皮膜中の成分(β)と成分(δ)との割合を、成分(β)のP換算量と成分(δ)の金属換算量Meとのモル比[P/Me]で1/2〜2/1の範囲とするには、複合酸化物皮膜形成用の酸性水溶液中の添加成分(ロ)と添加成分(ニ)との割合を、添加成分(ロ)のP換算量と添加成分(ニ)の金属換算量Meとのモル比[P/Me]で1/2〜2/1の範囲とすればよい。
【0185】
また、最も優れた耐食性を得るために、複合酸化物皮膜中の成分(δ)と成分(α)との割合を、成分(δ)の金属換算量Meと成分(α)のSiO換算量とのモル比[Me/SiO]で1/100〜100/1、より好ましくは1/10〜10/1、さらに好ましくは1/2〜5/1とし、且つ複合酸化物皮膜中の成分(β)と成分(δ)との割合を、成分(β)のP換算量と成分(δ)の金属換算量Meとのモル比[P/Me]で1/2〜2/1とするためには、複合酸化物皮膜形成用の酸性水溶液中の添加成分(ニ)と添加成分(イ)との割合を、添加成分(ニ)の金属換算量Meと添加成分(イ)のSiO換算量とのモル比[Me/SiO]で1/100〜100/1、好ましくは1/10〜10/1、さらに好ましくは1/2〜5/1の範囲とし、且つ添加成分(ロ)と添加成分(ニ)との割合を、添加成分(ロ)のP換算量と添加成分(ニ)の金属換算量Meとのモル比[P/Me]で1/2〜2/1とすることが適当である。
【0186】
処理液中にはさらに、添加成分(ホ)として、Ni、Fe、Coのうちのいずれかの金属イオン、前記金属のうちの少なくとも1種を含む水溶性イオンの中から選ばれる1種以上を適量添加することができ、このような鉄族金属を添加することにより、鉄族金属を添加しない場合に生じる、湿潤環境下におけるめっき極表層の腐食に起因した黒変現象が回避できる。また、これらの鉄族金属のなかでも特にNiの効果が高く、微量でも優れた効果が認められる。但し、Ni、Coなどの鉄族金属の過剰添加は耐食性劣化につながるため、適量の添加が必要である。
【0187】
上記添加成分(ホ)の添加量としては、金属量換算で、金属量換算での添加成分(ハ)1モルまたは添加成分(ニ)1モルに対して1/10000〜1モル、望ましく1/10000〜1/100モルの範囲とすることが好ましい。添加成分(ホ)の添加量が添加成分(ハ)1モルまたは添加成分(ニ)1モルに対して1/10000モル未満では添加による効果が十分でなく、一方、添加量が1モルを超えると上記のように耐食性が劣化する。
【0188】
複合酸化物皮膜形成用の処理液中にはさらに、皮膜の加工性、耐食性を向上させることを目的として有機樹脂(ヘ)を配合することができる。この有機樹脂(へ)としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリル−エチレン共重合体、アクリルースチレン共重合体、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン樹脂などの水溶性樹脂および/または水分散性樹脂が挙げられる。
さらに、これらの水系樹脂に加えて、水溶性エポキシ樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性ブタジエンラバー(SBR、NBR、MBR)、メラミン樹脂、ブロックイソシアネート、オキサゾリン化合物などを架橋剤として添加することもできる。
処理液中には、上記添加成分(イ)〜(ヘ)のほかに、先に述べた皮膜中への添加成分を適量添加してもよい。
【0189】
めっき鋼板表面に処理液をコーティングする方法としては、塗布方式、浸漬方式、スプレー方式のいずれでもよく、塗布方式ではロールコーター(3ロール方式、2ロール方式など)、スクイズコーター、ダイコーターなどのいずれの塗布手段を用いてもよい。また、スクイズコーターなどによる塗布処理、浸漬処理、スプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
処理液の温度に特別な制約はないが、常温〜60℃程度が適当である。常温以下では冷却などのための設備が必要となるため不経済であり、一方、60℃を超えると水分が蒸発し易くなるため処理液の管理が難しくなる。
【0190】
上記のように処理液をコーティングした後、通常、水洗することなく加熱乾燥を行うが、本発明で使用する処理液は下地めっき鋼板との反応により難溶性塩を形成するため、処理後に水洗を行ってもよい。
コーティングした処理液を加熱乾燥する方法は任意であり、例えば、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉などの手段を用いることができる。
この加熱乾燥処理は到達板温で50〜300℃、望ましくは80〜200℃、さらに望ましくは80〜160℃の範囲で行うことが好ましい。加熱乾燥温度が50℃未満では皮膜中に水分が多量に残り、耐食性が不十分となる。一方、加熱乾燥温度が300℃を超えると非経済的であるばかりでなく、皮膜に欠陥が生じやすくなり、耐食性が低下する。
【0191】
以上のようにして亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に複合酸化物皮膜を形成した後、その上層に先に述べたような有機皮膜形成用の塗料組成物を塗布する。塗料組成物を塗布する方法としては、塗布法、浸漬法、スプレー法などの任意の方法を採用できる。塗布法としては、ロールコーター(3ロール方式、2ロール方式等)、スクイズコーター、ダイコーターなどのいずれの方法を用いてもよい。また、スクイズコーターなどによる塗布処理、浸漬処理またはスプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
【0192】
塗料組成物の塗布後、通常は水洗することなく、加熱乾燥を行うが、塗料組成物の塗布後に水洗工程を実施しても構わない。
加熱乾燥処理には、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉などを用いることができる。加熱処理は、到達板温で50〜350℃、好ましくは80℃〜250℃の範囲で行うことが望ましい。加熱温度が50℃未満では皮膜中の水分が多量に残り、耐食性が不十分となる。また、加熱温度が350℃を超えると非経済的であるばかりでなく、皮膜に欠陥が生じて耐食性が低下するおそれがある。
【0193】
本発明は、以上述べたような有機皮膜を両面または片面に有する鋼板を含むものである。したがって、本発明鋼板の形態としては、例えば、以下のようなものがある。
(1)片面:めっき皮膜−複合酸化物皮膜−有機皮膜、片面:めっき皮膜
(2)片面:めっき皮膜−複合酸化物皮膜−有機皮膜、片面:めっき皮膜−公知のリン酸塩処理皮膜など
(3)両面:めっき皮膜−複合酸化物皮膜−有機皮膜
(4)片面:めっき皮膜−複合酸化物皮膜−有機皮膜、片面:めっき皮膜−複合酸化物皮膜
(5)片面:めっき皮膜−複合酸化物皮膜−有機皮膜、片面:めっき皮膜−有機皮膜
【0194】
【実施例】
[実施例1]
表2〜表17に示す第1層皮膜形成用の処理液(皮膜組成物)を調整した。
また、第2層皮膜形成用の樹脂組成物(反応生成物)を以下のようにして合成した。
[合成例1]
EP828(油化シェルエポキシ社製,エポキシ当量187)1870部とビスフェノールA912部、テトラエチルアンモニウムブロマイド2部、メチルイソブチルケトン300部を四つ口フラスコに仕込み、140℃まで昇温して4時間反応させ、エポキシ当量1391、固形分90%のエポキシ樹脂を得た。このものに、エチレングリコールモノブチルエーテル1500部を加えてから100℃に冷却し、3,5−ジメチルピラゾール(分子量96)を96部とジブチルアミン(分子量129)を129部加えて、エポキシ基が消失するまで6時間反応させた後、冷却しながらメチルイソブチルケトン205部を加えて、固形分60%のピラゾール変性エポキシ樹脂を得た。これを樹脂組成物(1)とする。この樹脂組成物(1)は、皮膜形成有機樹脂(A)と、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)を50mol%含む活性水素含有化合物との反応生成物である。
【0195】
[合成例2]
EP1007(油化シェルエポキシ社製,エポキシ当量2000)4000部とエチレングリコールモノブチルエーテル2239部を四つ口フラスコに仕込み、120℃まで昇温して1時間で完全にエポキシ樹脂を溶解した。このものを100℃に冷却し、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール(分子量84)を168部加えて、エポキシ基が消失するまで6時間反応させた後、冷却しながらメチルイソブチルケトン540部を加えて、固形分60%のトリアゾール変成エポキシ樹脂を得た。これを樹脂組成物(2)とする。この樹脂組成物(2)は、皮膜形成有機樹脂(A)と、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)を100mol%含む活性水素含有化合物との反応生成物である。
【0196】
[合成例3]
イソホロンジイソシアネート(イソシアネート当量111)222部とメチルイソブチルケトン34部を四つ口フラスコに仕込み、30〜40℃に保ってメチルエチルケトキシム(分子量87)87部を3時間かけて滴下後、40℃に2時間保ち、イソシアネート当量309、固形分90%の部分ブロックイソシアネートを得た。
【0197】
次いで、EP828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量187)1496部とビスフェノールA684部、テトラエチルアンモニウムブロマイド1部、メチルイソブチルケトン241部を四つ口フラスコに仕込み、140℃まで昇温して4時間反応させ、エポキシ当量1090、固形分90%のエポキシ樹脂を得た。このものに、メチルイソブチルケトン1000部を加えてから100℃に冷却し、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール(分子量101)を202部加えて、エポキシ基が消失するまで6時間反応させた後、上記固形分90%の部分ブロックイソシアネートを230部加え100℃で3時間反応させ、イソシアネート基が消失したことを確認した。さらに、エチレングリコールモノブチルエーテル461部を加えて、固形分60%のトリアゾール変成エポキシ樹脂を得た。これを樹脂組成物(3)とする。この樹脂組成物(3)は、皮膜形成有機樹脂(A)と、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)を100mol%含む活性水素含有化合物との反応生成物である。
【0198】
[合成例4]
EP828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量187)1870部とビスフェノールA912部、テトラエチルアンモニウムブロマイド2部、メチルイソブチルケトン300部を四つ口フラスコに仕込み、140℃まで昇温して4時間反応させ、エポキシ当量1391、固形分90%のエポキシ樹脂を得た。このものに、エチレングリコールモノブチルエーテル1500部を加えてから100℃に冷却し、ジブチルアミン(分子量129)を258部加えて、エポキシ基が消失するまで6時間反応させた後、冷却しながらメチルイソブチルケトン225部を加えて、固形分60%のエポキシアミン付加物を得た。これを樹脂組成物(4)とする。この樹脂組成物(4)は、皮膜形成有機樹脂(A)と、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)を含まない活性水素含有化合物との反応生成物である。
【0199】
上記ようにして合成された樹脂組成物(1)〜(4)に硬化剤を配合し、表18に示す樹脂組成物(塗料組成物)を作成した。これら塗料組成物にはイオン交換シリカ、表19に示す微粒子シリカ、表20に示す固形潤滑剤を適宜配合し、塗料用分散機(サンドグラインダー)を用いて必要時間分散させて所望の塗料組成物とした。上記イオン交換シリカとしてはCa交換シリカであるW.R.Grace & Co.製のSHIELDEX C303(平均粒子径2.5〜3.5μm、Ca濃度3wt%)を用いた。
【0200】
家電、建材、自動車部品用の有機被覆鋼板を得るため、板厚:0.8mm、表面粗さRa:1.0μmの冷延鋼板に各種亜鉛系めっきまたはアルミニウム系めっきを施した表1に示すめっき鋼板を処理原板として用い、このめっき鋼板の表面をアルカリ脱脂処理及び水洗乾燥した後、表2〜表17に示す処理液(皮膜組成物)をロールコーターで塗布し、加熱乾燥させて第1層皮膜を形成させた。この第1層皮膜の膜厚は、処理液の固形分(加熱残分)または塗布条件(ロールの圧下力、回転速度等)により調整した。次いで、表18に示す塗料組成物に各種添加剤を配合したものをロールコーターにより塗布し、加熱乾燥して第2層皮膜を形成させ、本発明例および比較例の有機被覆鋼板を製造した。第2層皮膜の膜厚は、塗料組成物の固形分(加熱残分)または塗布条件(ロールの圧下力、回転速度等)により調整した。
【0201】
得られた有機被覆鋼板について、品質性能(皮膜外観、耐白錆性、アルカリ脱脂後の耐白錆性、塗料密着性、加工性)の評価を行った。その結果を第1層皮膜および第2層皮膜の皮膜構成などとともに表21〜表87に示す。
有機被覆鋼板の品質性能の評価は以下のようにして行った。
(1) 皮膜外観
各サンプルについて、皮膜外観の均一性(ムラの有り無し)を目視で評価した。評価基準は、以下の通りである。
○:ムラが全くない均一な外観
△:ムラが若干目立つ外観
×:ムラが目立つ外観
【0202】
(2) 耐白錆性
各サンプルについて、塩水噴霧試験(JIS−Z−2371)を実施し、所定時間後の白錆発生面積率で評価した。
評価基準は、以下の通りである。
◎ :白錆発生なし
○+:白錆発生面積率5%未満
○ :白錆発生面積率5%以上、10%未満
○−:白錆発生面積率10%以上、25%未満
△ :白錆発生面積率25%以上、50%未満
× :白錆発生面積率50%以上
【0203】
(3) アルカリ脱脂後の耐白錆性
各サンプルについて、日本パーカライジング(株)製のアルカリ処理液CLN−364S(60℃,スプレー2分)でアルカリ脱脂を行った後、塩水噴霧試験(JIS−Z−2371)を実施し、所定時間後の白錆面積率で評価した。
評価基準は、以下の通りである。
◎ :白錆発生なし
○+:白錆発生面積率5%未満
○ :白錆発生面積率5%以上、10%未満
○−:白錆発生面積率10%以上、25%未満
△ :白錆発生面積率25%以上、50%未満
× :白錆発生面積率50%以上
【0204】
(4) 塗料密着性
各サンプルについて、メラミン系の焼付塗料(膜厚30μm)を塗装した後、沸水中に2時間浸漬し、直ちに碁盤目(1mm間隔で10×10の碁盤目)のカットを入れて、粘着テープによる貼着・剥離を行い、塗膜の剥離面積率で評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:剥離なし
○:剥離面積率5%未満
△:剥離面積率5%以上、20%未満
×:剥離面積率20%以上
【0205】
(5) 加工性
ブランク径φ120mm、ダイス径φ50mmで深絞り成形(無塗油条件)を行い、割れが生ずるまでの成形高さで評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:絞り抜け
○:成形高さ30mm以上
△:成形高さ20mm以上、30mm未満
×:成形高さ20mm未満
【0206】
【表1】
Figure 0003578018
【0207】
【表2】
Figure 0003578018
【0208】
【表3】
Figure 0003578018
【0209】
【表4】
Figure 0003578018
【0210】
【表5】
Figure 0003578018
【0211】
【表6】
Figure 0003578018
【0212】
【表7】
Figure 0003578018
【0213】
【表8】
Figure 0003578018
【0214】
【表9】
Figure 0003578018
【0215】
【表10】
Figure 0003578018
【0216】
【表11】
Figure 0003578018
【0217】
【表12】
Figure 0003578018
【0218】
【表13】
Figure 0003578018
【0219】
【表14】
Figure 0003578018
【0220】
【表15】
Figure 0003578018
【0221】
【表16】
Figure 0003578018
【0222】
【表17】
Figure 0003578018
【0223】
【表18】
Figure 0003578018
【0224】
【表19】
Figure 0003578018
【0225】
【表20】
Figure 0003578018
【0226】
下記の表21〜表87において、表中に記載してある *1〜*13 は以下のような内容を示す。
*1:表1に記載のNo.
*2:表2〜表17に記載のNo.
*3:表18に記載のNo.
*4:SiO微粒子(α)=SiO微粒子のSiO換算での付着量
:Mg成分(γ)=Mg、Mgを含む化合物、Mgを含む複合化合物からなる群の中から選ばれる1種以上のMg換算での付着量
:P成分(β)=リン酸および/またはリン酸化合物のP換算での付着量
*5:Mg換算でのMg成分(γ)とSiO換算でのSiO微粒子(α)とのモル比
*6:P換算でのP成分(β)とMg換算でのMg成分(γ)(但し、アルカリ土類金属成分がCa成分、Sr成分またはBa成分の場合には、それぞれの金属換算でのCa成分、Sr成分またはBa成分)とのモル比
*7:樹脂組成物の固形分100重量部に対するイオン交換シリカ(c)の固形分配合量(重量部)
*8:表19に記載のNo.
*9:樹脂組成物の固形分100重量部に対する微粒子シリカ(d)の固形分配合量(重量部)
*10:樹脂組成物の固形分100重量部に対するイオン交換シリカ(c)と微粒子シリカ(d)の合計固形分配合量(重量部)
*11:イオン交換シリカ(c)と微粒子シリカ(d)の固形分重量比
*12:表20に記載のNo.
*13:樹脂組成物の固形分100重量部に対する固形潤滑剤(b)の固形分配合量(重量部)
【0227】
【表21】
Figure 0003578018
【0228】
【表22】
Figure 0003578018
【0229】
【表23】
Figure 0003578018
【0230】
【表24】
Figure 0003578018
【0231】
【表25】
Figure 0003578018
【0232】
【表26】
Figure 0003578018
【0233】
【表27】
Figure 0003578018
【0234】
【表28】
Figure 0003578018
【0235】
【表29】
Figure 0003578018
【0236】
【表30】
Figure 0003578018
【0237】
【表31】
Figure 0003578018
【0238】
【表32】
Figure 0003578018
【0239】
【表33】
Figure 0003578018
【0240】
【表34】
Figure 0003578018
【0241】
【表35】
Figure 0003578018
【0242】
【表36】
Figure 0003578018
【0243】
【表37】
Figure 0003578018
【0244】
【表38】
Figure 0003578018
【0245】
【表39】
Figure 0003578018
【0246】
【表40】
Figure 0003578018
【0247】
【表41】
Figure 0003578018
【0248】
【表42】
Figure 0003578018
【0249】
【表43】
Figure 0003578018
【0250】
【表44】
Figure 0003578018
【0251】
【表45】
Figure 0003578018
【0252】
【表46】
Figure 0003578018
【0253】
【表47】
Figure 0003578018
【0254】
【表48】
Figure 0003578018
【0255】
【表49】
Figure 0003578018
【0256】
【表50】
Figure 0003578018
【0257】
【表51】
Figure 0003578018
【0258】
【表52】
Figure 0003578018
【0259】
【表53】
Figure 0003578018
【0260】
【表54】
Figure 0003578018
【0261】
【表55】
Figure 0003578018
【0262】
【表56】
Figure 0003578018
【0263】
【表57】
Figure 0003578018
【0264】
【表58】
Figure 0003578018
【0265】
【表59】
Figure 0003578018
【0266】
【表60】
Figure 0003578018
【0267】
【表61】
Figure 0003578018
【0268】
【表62】
Figure 0003578018
【0269】
【表63】
Figure 0003578018
【0270】
【表64】
Figure 0003578018
【0271】
【表65】
Figure 0003578018
【0272】
【表66】
Figure 0003578018
【0273】
【表67】
Figure 0003578018
【0274】
【表68】
Figure 0003578018
【0275】
【表69】
Figure 0003578018
【0276】
【表70】
Figure 0003578018
【0277】
【表71】
Figure 0003578018
【0278】
【表72】
Figure 0003578018
【0279】
【表73】
Figure 0003578018
【0280】
【表74】
Figure 0003578018
【0281】
【表75】
Figure 0003578018
【0282】
【表76】
Figure 0003578018
【0283】
【表77】
Figure 0003578018
【0284】
【表78】
Figure 0003578018
【0285】
【表79】
Figure 0003578018
【0286】
【表80】
Figure 0003578018
【0287】
【表81】
Figure 0003578018
【0288】
【表82】
Figure 0003578018
【0289】
【表83】
Figure 0003578018
【0290】
【表84】
Figure 0003578018
【0291】
【表85】
Figure 0003578018
【0292】
【表86】
Figure 0003578018
【0293】
【表87】
Figure 0003578018
【0294】
従来の反応型クロメート処理鋼板として、無水クロム酸:30g/l、リン酸:10g/l、NaF:0.5g/l、KTiF:4g/lを含む処理液を用い、浴温40℃の条件でスプレー処理した後、水洗・乾燥することにより、クロム付着量(金属クロム換算)が20mg/mのクロメート処理鋼板を製造した。これを本実施例と同様の条件で塩水噴霧試験に供したところ、約24時間で白錆が発生した。したがって、この結果と本実施例の結果からして、本発明の有機被覆鋼板では従来型のクロメート処理鋼板に較べて格段に優れた耐食性が得られることが判る。
【0295】
[実施例2]
第1層皮膜形成用の処理液(皮膜組成物)として、表2〜表5に示すNo.1〜No.15を用いた。
また、第2層皮膜形成用の樹脂組成物(塗料組成物)としては、[実施例1]と同じ表18に示すものを用いた。これら塗料組成物には表88に示すリン酸亜鉛および/またはリン酸アルミニウム、表89に示すカルシウム化合物、表20に示す固形潤滑剤を適宜配合し、塗料用分散機(サンドグラインダー)を用いて必要時間分散させて所望の塗料組成物とした。
【0296】
家電、建材、自動車部品用の有機被覆鋼板を得るため、板厚:0.8mm、表面粗さRa:1.0μmの冷延鋼板に各種亜鉛系めっきまたはアルミニウム系めっきを施した表1に示すめっき鋼板を処理原板として用い、このめっき鋼板の表面をアルカリ脱脂処理及び水洗乾燥した後、表2〜表5に示す処理液No.1〜No.15(皮膜組成物)をロールコーターで塗布し、加熱乾燥させて第1層皮膜を形成させた。この第1層皮膜の膜厚は、処理液の固形分(加熱残分)または塗布条件(ロールの圧下力、回転速度等)により調整した。次いで、表18に示す塗料組成物に各種添加剤を配合したものをロールコーターにより塗布し、加熱乾燥して第2層皮膜を形成させ、本発明例および比較例の有機被覆鋼板を製造した。第2層皮膜の膜厚は、塗料組成物の固形分(加熱残分)または塗布条件(ロール圧下力、回転速度等)により調整した。
【0297】
得られた有機被覆鋼板について、品質性能(皮膜外観、耐白錆性、アルカリ脱脂後の耐白錆性、塗料密着性、加工性)の評価を行った。その結果を第1層皮膜および第2層皮膜の皮膜構成などとともに表90〜表110に示す。なお、表90〜表110の各実施例において、第一層皮膜の付着量、成分(α)、(β)及び(γ)の付着量、モル比(γ)/(α)、モル比(β)/(γ)については、[実施例1]における同一の処理組成物を適用した同一の膜厚の第一層皮膜のものと同じであるので、表中への記載は省略した。
有機被覆鋼板の品質性能の評価は[実施例1]と同様にして行った。
【0298】
【表88】
Figure 0003578018
【0299】
【表89】
Figure 0003578018
【0300】
下記の表90〜表110において、表中に記載してある*1〜*11は以下のような内容を示す。
*1:表1に記載のNo.
*2:表2〜表5に記載のNo.
*3:表18に記載のNo.
*4:表88に記載のNo.
*5:樹脂組成物の固形分100重量部に対するリン酸亜鉛(e)および/またはリン酸アルミニウム(f)の固形分配合量(重量部)
*6:表89に記載のNo.
*7:樹脂組成物の固形分100重量部に対するカルシウム化合物(g)の固形分配合量
*8:樹脂組成物の固形分100重量部に対するリン酸亜鉛(e)および/またはリン酸アルミニウム(f)とカルシウム化合物(g)の合計固形分配合量(重量部)
*9:リン酸亜鉛(e)および/またはリン酸アルミニウム(f)とカルシウム化合物(g)の固形分重量比
*10:表20に記載のNo.
*11:樹脂組成物の固形分100重量部に対する固形潤滑剤(b)の固形分配合量(重量部)
【0301】
【表90】
Figure 0003578018
【0302】
【表91】
Figure 0003578018
【0303】
【表92】
Figure 0003578018
【0304】
【表93】
Figure 0003578018
【0305】
【表94】
Figure 0003578018
【0306】
【表95】
Figure 0003578018
【0307】
【表96】
Figure 0003578018
【0308】
【表97】
Figure 0003578018
【0309】
【表98】
Figure 0003578018
【0310】
【表99】
Figure 0003578018
【0311】
【表100】
Figure 0003578018
【0312】
【表101】
Figure 0003578018
【0313】
【表102】
Figure 0003578018
【0314】
【表103】
Figure 0003578018
【0315】
【表104】
Figure 0003578018
【0316】
【表105】
Figure 0003578018
【0317】
【表106】
Figure 0003578018
【0318】
【表107】
Figure 0003578018
【0319】
【表108】
Figure 0003578018
【0320】
【表109】
Figure 0003578018
【0321】
【表110】
Figure 0003578018
【0322】
従来の反応型クロメート処理鋼板として、無水クロム酸:30g/l、リン酸:10g/l、NaF:0.5g/l、KTiF:4g/lを含む処理液を用い、浴温40℃の条件でスプレー処理した後、水洗・乾燥することにより、クロム付着量(金属クロム換算)が20mg/mのクロメート処理鋼板を製造した。これを本実施例と同様の条件で塩水噴霧試験に供したところ、約24時間で白錆が発生した。したがって、この結果と本実施例の結果からして、本発明の有機被覆鋼板では従来型のクロメート処理鋼板に較べて格段に優れた耐食性が得られることが判る。
【0323】
[実施例3]
表111〜表116に示す第1層皮膜形成用の処理液(皮膜組成物)を調整した。また、第2層皮膜形成用の樹脂組成物(塗料組成物)としては、[実施例1]と同じ表18に示すものを用いた。これら塗料組成物には表117〜表119に示す無機系防錆顔料、表20に示す固形潤滑剤を適宜配合し、塗料用分散機(サンドグラインダー)を用いて必要時間分散させて所望の塗料組成物とした。
【0324】
家電、建材、自動車部品用の有機被覆鋼板を得るため、板厚:0.8mm、表面粗さRa:1.0μmの冷延鋼板に各種亜鉛系めっきまたはアルミニウム系めっきを施した表1に示すめっき鋼板を処理原板として用い、このめっき鋼板の表面をアルカリ脱脂処理及び水洗乾燥した後、表111〜表116に示す処理液(皮膜組成物)をロールコーターで塗布し、加熱乾燥させて第1層皮膜を形成させた。この第1層皮膜の膜厚は、処理液の固形分(加熱残分)または塗布条件(ロールの圧下力、回転速度等)により調整した。次いで、表18に示す塗料組成物に各種添加剤を配合したものをロールコーターにより塗布し、加熱乾燥して第2層皮膜を形成させ、本発明例および比較例の有機被覆鋼板を製造した。第2層皮膜の膜厚は、塗料組成物の固形分(加熱残分)または塗布条件(ロールの圧下力、回転速度等)により調整した。
【0325】
得られた有機被覆鋼板について、品質性能(皮膜外観、耐白錆性、アルカリ脱脂後の耐白錆性、塗料密着性、加工性)の評価を行った。その結果を第1層皮膜および第2層皮膜の皮膜構成などとともに表120〜表155に示す。
有機被覆鋼板の品質性能の評価は[実施例1]と同様にして行った。
【0326】
【表111】
Figure 0003578018
【0327】
【表112】
Figure 0003578018
【0328】
【表113】
Figure 0003578018
【0329】
【表114】
Figure 0003578018
【0330】
【表115】
Figure 0003578018
【0331】
【表116】
Figure 0003578018
【0332】
【表117】
Figure 0003578018
【0333】
【表118】
Figure 0003578018
【0334】
【表119】
Figure 0003578018
【0335】
下記の表120〜表155において、表中に記載してある*1〜*13は以下のような内容を示す。
*1:表1に記載のNo.
*2:表111〜表116に記載のNo.
*3:表18に記載のNo.
*4:SiO微粒子(α)=SiO微粒子のSiO換算での付着量(mg/m)と皮膜合計付着量に対する重量割合(wt%)
:P成分(β)=リン酸および/またはリン酸化合物のP換算での付着量
:金属成分(δ)=Li、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、La、Ceの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)の金属換算での付着量
*5:金属換算での成分(δ)とSiO換算でのSiO微粒子(α)とのモル比
*6:P換算でのP成分(β)と金属換算での成分(δ)とのモル比
*7:表117〜表119に記載のNo.
*8:樹脂組成物の固形分100重量部に対する無機系防錆顔料(a)の固形分配合量(重量部)
*9:樹脂組成物の固形分100重量部に対する顔料1と顔料2の合計固形分配合量(重量部)
*10:顔料1と顔料2の固形分重量比
*11:表20に記載のNo.
*12:樹脂組成物の固形分100重量部に対する固形潤滑剤(b)の固形分配合量(重量部)
【0336】
【表120】
Figure 0003578018
【0337】
【表121】
Figure 0003578018
【0338】
【表122】
Figure 0003578018
【0339】
【表123】
Figure 0003578018
【0340】
【表124】
Figure 0003578018
【0341】
【表125】
Figure 0003578018
【0342】
【表126】
Figure 0003578018
【0343】
【表127】
Figure 0003578018
【0344】
【表128】
Figure 0003578018
【0345】
【表129】
Figure 0003578018
【0346】
【表130】
Figure 0003578018
【0347】
【表131】
Figure 0003578018
【0348】
【表132】
Figure 0003578018
【0349】
【表133】
Figure 0003578018
【0350】
【表134】
Figure 0003578018
【0351】
【表135】
Figure 0003578018
【0352】
【表136】
Figure 0003578018
【0353】
【表137】
Figure 0003578018
【0354】
【表138】
Figure 0003578018
【0355】
【表139】
Figure 0003578018
【0356】
【表140】
Figure 0003578018
【0357】
【表141】
Figure 0003578018
【0358】
【表142】
Figure 0003578018
【0359】
【表143】
Figure 0003578018
【0360】
【表144】
Figure 0003578018
【0361】
【表145】
Figure 0003578018
【0362】
【表146】
Figure 0003578018
【0363】
【表147】
Figure 0003578018
【0364】
【表148】
Figure 0003578018
【0365】
【表149】
Figure 0003578018
【0366】
【表150】
Figure 0003578018
【0367】
【表151】
Figure 0003578018
【0368】
【表152】
Figure 0003578018
【0369】
【表153】
Figure 0003578018
【0370】
【表154】
Figure 0003578018
【0371】
【表155】
Figure 0003578018
【0372】
従来の反応型クロメート処理鋼板として、無水クロム酸:30g/l、リン酸:10g/l、NaF:0.5g/l、KTiF:4g/lを含む処理液を用い、浴温40℃の条件でスプレー処理した後、水洗・乾燥することにより、クロム付着量(金属クロム換算)が20mg/mのクロメート処理鋼板を製造した。これを本実施例と同様の条件で塩水噴霧試験に供したところ、約24時間で白錆が発生した。したがって、この結果と本実施例の結果からして、本発明の有機被覆鋼板では従来型のクロメート処理鋼板に較べて格段に優れた耐食性が得られることが判る。
【0373】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の有機被覆鋼板は、製造時の処理液や製品の皮膜成分中に6価クロムを全く含まず、しかも建材、家電、自動車等の用途の有機被覆鋼板として高度の耐食性を有し、また、皮膜外観、塗料密着性等にも優れている。

Claims (46)

  1. 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、第1層皮膜として、
    (α)酸化物微粒子と、
    (β)リン酸および/またはリン酸化合物と、
    を含有し、膜厚が0.005〜3μmまたは上記成分(α)とP換算での上記成分(β)の合計付着量が6〜3600mg/mである複合酸化物皮膜を有し、
    その上部に第2層皮膜として、皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物を含む膜厚が0.1〜5μmの有機皮膜を有することを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  2. 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、第1層皮膜として、
    (α)酸化物微粒子と、
    (β)リン酸および/またはリン酸化合物と、
    を含有し、膜厚が0.005〜3μmまたは上記成分(α)とP換算での上記成分(β)の合計付着量が6〜3600mg/mである複合酸化物皮膜を有し、
    その上部に第2層皮膜として、皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物と、無機系防錆顔料(a)とを含み、該無機系防錆顔料(a)の含有量が前記反応生成物100重量部(固形分)に対して1〜100重量部(固形分)である、膜厚が0.1〜5μmの有機皮膜を有することを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  3. 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、第1層皮膜として、
    (α)酸化物微粒子と、
    (β)リン酸および/またはリン酸化合物と、
    を含有し、膜厚が0.005〜3μmまたは上記成分(α)とP換算での上記成分(β)の合計付着量が6〜3600mg/mである複合酸化物皮膜を有し、
    その上部に第2層皮膜として、皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物と、固形潤滑剤(b)とを含み、該固形潤滑剤(b)の含有量が前記反応生成物100重量部(固形分)に対して1〜80重量部(固形分)である、膜厚が0.1〜5μmの有機皮膜を有することを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  4. 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、第1層皮膜として、
    (α)酸化物微粒子と、
    (β)リン酸および/またはリン酸化合物と、
    を含有し、膜厚が0.005〜3μmまたは上記成分(α)とP換算での上記成分(β)の合計付着量が6〜3600mg/mである複合酸化物皮膜を有し、
    その上部に第2層皮膜として、皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物と、無機系防錆顔料(a)と、固形潤滑剤(b)とを含み、前記無機系防錆顔料(a)の含有量が前記反応生成物100重量部(固形分)に対して1〜100重量部(固形分)、前記固形潤滑剤(b)の含有量が前記反応生成物100重量部(固形分)に対して1〜80重量部(固形分)である、膜厚が0.1〜5μmの有機皮膜を有することを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  5. 有機皮膜中の無機系防錆顔料(a)がシリカ化合物、リン酸塩、カルシウム化合物の中から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  6. 有機皮膜中の無機系防錆顔料(a)がイオン交換シリカであることを特徴とする請求項5に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  7. 有機皮膜中の無機系防錆顔料(a)が微粒子シリカであることを特徴とする請求項5に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  8. 有機皮膜中の無機系防錆顔料(a)がイオン交換シリカ(c)と微粒子シリカ(d)からなり、且つイオン交換シリカ(c)と微粒子シリカ(d)の含有量(固形分)の重量比(c)/(d)が1/99〜99/1であることを特徴とする請求項5に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  9. 有機皮膜中の無機系防錆顔料(a)がリン酸亜鉛(e)および/またはリン酸アルミニウム(f)であることを特徴とする請求項5に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  10. 有機皮膜中の無機系防錆顔料(a)がリン酸亜鉛(e)および/またはリン酸アルミニウム(f)とカルシウム化合物(g)からなり、且つリン酸亜鉛(e)および/またはリン酸アルミニウム(f)の合計の含有量(固形分)とカルシウム化合物(g)の含有量(固形分)の重量比(e,f)/(g)が1/99〜99/1であることを特徴とする請求項5に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  11. 有機皮膜中のイオン交換シリカ(c)がCaイオン交換シリカであることを特徴とする請求項5、6または8に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  12. Caイオン交換シリカの平均粒子径が4μm以下であることを特徴とする請求項11に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  13. Caイオン交換シリカのCa濃度が2〜8wt%であることを特徴とする請求項11または12に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  14. 皮膜形成有機樹脂(A)がエポキシ基含有樹脂(D)であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  15. 活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)が、活性水素を有するピラゾール化合物および/または活性水素を有するトリアゾール化合物であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  16. 活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)が活性水素含有化合物(B)中に10〜100モル%含まれることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  17. エポキシ基含有樹脂(D)が下記式(1)で示されるエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項14、15または16に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
    Figure 0003578018
  18. 複合酸化物皮膜中に含まれる成分(α)が酸化ケイ素であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16または17に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  19. 複合酸化物皮膜中に成分(α)として含まれる酸化ケイ素のSiO換算量が、複合酸化物皮膜の合計付着量に対する重量割合で5〜95wt%であることを特徴とする請求項18に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  20. 複合酸化物皮膜が成分(α)および(β)として、
    (α)SiO微粒子をSiO換算量で0.01〜3000mg/m
    (β)リン酸および/またはリン酸化合物をP換算量で0.01〜3000mg/m
    を含有し、成分(α)および(β)の上記付着量の合計が6〜3600mg/mであることを特徴とする請求項18または19に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  21. 複合酸化物皮膜が、さらに、
    (γ)Mg、Ca、Sr、Baの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)、
    を含有し、膜厚が0.005〜3μmまたは成分(α)とP換算での成分(β)と金属換算での上記成分(γ)の合計付着量が6〜3600mg/mであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  22. 複合酸化物皮膜が、さらに、
    (δ)Li、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、La、Ceの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)、
    を含有し、膜厚が0.005〜3μmまたは成分(α)とP換算での成分(β)と金属換算での上記成分(δ)の合計付着量が6〜3600mg/mであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  23. 複合酸化物皮膜が、さらに、
    (γ)Mg、Ca、Sr、Baの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)と、
    (δ)Li、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、La、Ceの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)と、
    を含有し、膜厚が0.005〜3μmまたは成分(α)とP換算での成分(β)と金属換算での上記成分(γ)と金属換算での上記成分(δ)の合計付着量が6〜3600mg/mであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  24. 複合酸化物皮膜中に含まれる成分(γ)がMg(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)であることを特徴とする請求項21または23に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  25. 複合酸化物皮膜中に含まれる成分(δ)がNi、Mn(但し、いずれも化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)の中から選ばれる1種または2種であることを特徴とする請求項22または23に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  26. 複合酸化物皮膜が成分(α)、(β)および(γ)として、
    (α)SiO微粒子をSiO換算量で0.01〜3000mg/m
    (β)リン酸および/またはリン酸化合物をP換算量で0.01〜3000mg/m
    (γ)Mg(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)をMg換算量で0.01〜1000mg/m
    を含有し、成分(α)、(β)および(γ)の上記付着量の合計が6〜3600mg/mであることを特徴とする請求項21に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  27. 複合酸化物皮膜が成分(α)、(β)および(δ)として、
    (α)SiO微粒子をSiO換算量で0.01〜3000mg/m
    (β)リン酸および/またはリン酸化合物をP換算量で0.01〜3000mg/m
    (δ)Li、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、La、Ceの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)を金属換算量で0.01〜1000mg/m
    を含有し、成分(α)、(β)および(δ)の上記付着量の合計が6〜3600mg/mであることを特徴とする請求項22または25に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  28. 複合酸化物皮膜が成分(α)、(β)、(γ)および(δ)として、
    (α)SiO微粒子をSiO換算量で0.01〜3000mg/m
    (β)リン酸および/またはリン酸化合物をP換算量で0.01〜3000mg/m
    (γ)Mg(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)をMg換算量で0.01〜1000mg/m
    (δ)Li、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、La、Ceの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)を金属換算量で0.01〜1000mg/m
    を含有し、成分(α)、(β)、(γ)および(δ)の上記付着量の合計が6〜3600mg/mであることを特徴とする請求項23または25に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  29. 複合酸化物皮膜中の成分(γ)がMg(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)であり、且つ成分(γ)と成分(α)との割合が、成分(γ)のMg換算量と成分(α)のSiO換算量とのモル比[Mg/SiO]で1/100〜100/1の範囲であることを特徴とする請求項21、23、25、26、27または28に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  30. 複合酸化物皮膜中の成分(γ)がMg(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)であり、且つ成分(β)と成分(γ)との割合が、成分(β)のP換算量と成分(γ)のMg換算量とのモル比[P/Mg]で1/100〜100/1の範囲であることを特徴とする請求項21、23、25、26、27、28または29に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  31. 複合酸化物皮膜中の成分(δ)と成分(α)との割合が、成分(δ)の金属換算量Me(但し、2種以上の金属を含む場合はその合計量)と成分(α)のSiO換算量とのモル比[Me/SiO]で1/100〜100/1の範囲であることを特徴とする請求項22、23、24、25、27、28、29または30に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  32. 複合酸化物皮膜中の成分(β)と成分(δ)との割合が、成分(β)のP換算量と成分(δ)の金属換算量Me(但し、2種以上の金属を含む場合はその合計量)とのモル比[P/Me]で1/2〜2/1の範囲であることを特徴とする請求項22、23、24、25、27、28、29、30または31に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  33. 複合酸化物皮膜が、さらに有機樹脂を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31または32に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  34. 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面を、少なくとも、
    (イ)酸化物微粒子を0.001〜3.0モル/L、
    (ロ)リン酸および/またはリン酸化合物をP換算量で0.001〜6.0モル/L、
    を含有する水溶液で処理し、しかる後、加熱乾燥することにより、めっき鋼板表面に第1層皮膜として、
    (α)酸化物微粒子と、
    (β)リン酸および/またはリン酸化合物と、
    を含有し、膜厚が0.005〜3μmまたは上記成分(α)とP換算での上記成分(β)の合計付着量が6〜3600mg/mである複合酸化物皮膜を形成し、次いで、その上部に請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16または17に記載の有機皮膜構成成分を含む有機皮膜形成用の塗料組成物を塗布し、加熱乾燥することにより、膜厚が0.1〜5μmの有機皮膜を形成することを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
  35. 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面を、少なくとも、
    (イ)酸化物微粒子を0.001〜3.0モル/L、
    (ロ)リン酸および/またはリン酸化合物をP換算量で0.001〜6.0モル/L、
    (ハ)Mg、Ca、Sr、Baの各金属イオン、前記金属のうちの少なくとも1種を含む水溶性イオン、前記金属のうちの少なくとも1種を含む化合物、前記金属のうちの少なくとも1種を含む複合化合物の中から選ばれる1種または2種以上を、前記金属の金属量換算の合計で0.001〜3.0モル/L、
    を含有するpH0.5〜5の酸性水溶液で処理し、しかる後、加熱乾燥することにより、めっき鋼板表面に第1層皮膜として、
    (α)酸化物微粒子と、
    (β)リン酸および/またはリン酸化合物と、
    (γ)Mg、Ca、Sr、Baの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)と、
    を含有し、膜厚が0.005〜3μmまたは上記成分(α)とP換算での上記成分(β)と金属換算での上記成分(γ)の合計付着量が6〜3600mg/mである複合酸化物皮膜を形成し、次いで、その上部に請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16または17に記載の有機皮膜構成成分を含む有機皮膜形成用の塗料組成物を塗布し、加熱乾燥することにより、膜厚が0.1〜5μmの有機皮膜を形成することを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
  36. 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面を、少なくとも、
    (イ)酸化物微粒子を0.001〜3.0モル/L、
    (ロ)リン酸および/またはリン酸化合物をP換算量で0.001〜6.0モル/L、
    (ニ)Li、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、La、Ceの各金属イオン、前記金属のうちの少なくとも1種を含む水溶性イオン、前記金属のうちの少なくとも1種を含む化合物、前記金属のうちの少なくとも1種を含む複合化合物の中から選ばれる1種または2種以上を、前記金属の金属量換算の合計で0.001〜3.0モル/L、
    を含有するpH0.5〜5の酸性水溶液で処理し、しかる後、加熱乾燥することにより、めっき鋼板表面に第1層皮膜として、
    (α)酸化物微粒子と、
    (β)リン酸および/またはリン酸化合物と、
    (δ)Li、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、La、Ceの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)と、
    を含有し、膜厚が0.005〜3μmまたは上記成分(α)とP換算での上記成分(β)と金属換算での上記成分(δ)の合計付着量が6〜3600mg/mである複合酸化物皮膜を形成し、次いで、その上部に請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16または17に記載の有機皮膜構成成分を含む有機皮膜形成用の塗料組成物を塗布し、加熱乾燥することにより、膜厚が0.1〜5μmの有機皮膜を形成することを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
  37. 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面を、少なくとも、
    (イ)酸化物微粒子を0.001〜3.0モル/L、
    (ロ)リン酸および/またはリン酸化合物をP換算量で0.001〜6.0モル/L、
    (ハ)Mg、Ca、Sr、Baの各金属イオン、前記金属のうちの少なくとも1種を含む水溶性イオン、前記金属のうちの少なくとも1種を含む化合物、前記金属のうちの少なくとも1種を含む複合化合物の中から選ばれる1種または2種以上を、前記金属の金属量換算の合計で0.001〜3.0モル/L、
    (ニ)Li、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、La、Ceの各金属イオン、前記金属のうちの少なくとも1種を含む水溶性イオン、前記金属のうちの少なくとも1種を含む化合物、前記金属のうちの少なくとも1種を含む複合化合物の中から選ばれる1種または2種以上を、前記金属の金属量換算の合計で0.001〜3.0モル/L、
    を含有するpH0.5〜5の酸性水溶液で処理し、しかる後、加熱乾燥することにより、めっき鋼板表面に第1層皮膜として、
    (α)酸化物微粒子と、
    (β)リン酸および/またはリン酸化合物と、
    (γ)Mg、Ca、Sr、Baの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)と、
    (δ)Li、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、La、Ceの中から選ばれる1種または2種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)と、
    を含有し、膜厚が0.005〜3μmまたは上記成分(α)とP換算での上記成分(β)と金属換算での上記成分(γ)と金属換算での上記成分(δ)の合計付着量が6〜3600mg/mである複合酸化物皮膜を形成し、次いで、その上部に請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16または17に記載の有機皮膜構成成分を含む有機皮膜形成用の塗料組成物を塗布し、加熱乾燥することにより、膜厚が0.1〜5μmの有機皮膜を形成することを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
  38. 複合酸化物皮膜形成用の水溶液中の添加成分(イ)が酸化ケイ素であることを特徴とする請求項34、35、36または37に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
  39. 複合酸化物皮膜形成用の水溶液中の添加成分(ロ)がリン酸アンモニウムであることを特徴とする請求項34、35、36、37または38に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
  40. 複合酸化物皮膜形成用の酸性水溶液中の添加成分(ハ)がMgイオン、Mgを含む水溶性イオン、Mgを含む化合物、Mgを含む複合化合物の中から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項35、37、38または39に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
  41. 複合酸化物皮膜形成用の酸性水溶液中の添加成分(ニ)がNiイオン、Mnイオン、Niを含む水溶性イオン、Mnを含む水溶性イオン、Niを含む化合物、Mnを含む化合物、Niを含む複合化合物、Mnを含む複合化合物の中から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項36、37、38、39または40に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
  42. 複合酸化物皮膜形成用の酸性水溶液中の添加成分(ハ)がMgイオン、Mgを含む水溶性イオン、Mgを含む化合物、Mgを含む複合化合物の中から選ばれる1種または2種以上であり、且つ添加成分(ハ)と添加成分(イ)との割合が、添加成分(ハ)のMg換算量と添加成分(イ)のSiO換算量とのモル比[Mg/SiO]で1/100〜100/1の範囲であることを特徴とする請求項35、37、38、39または41に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
  43. 複合酸化物皮膜形成用の酸性水溶液中の添加成分(ハ)がMgイオン、Mgを含む水溶性イオン、Mgを含む化合物、Mgを含む複合化合物の中から選ばれる1種または2種以上であり、且つ添加成分(ロ)と添加成分(ハ)との割合が、添加成分(ロ)のP換算量と添加成分(ハ)のMg換算量とのモル比[P/Mg]で1/100〜100/1の範囲であることを特徴とする請求項35、37、38、39、41または42に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
  44. 複合酸化物皮膜形成用の酸性水溶液中の添加成分(ニ)と添加成分(イ)との割合が、添加成分(ニ)の金属換算量Meと添加成分(イ)のSiO換算量とのモル比[Me/SiO]で1/100〜100/1の範囲であることを特徴とする請求項36、37、38、39、40、41、42または43に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
  45. 複合酸化物皮膜形成用の酸性水溶液中の添加成分(ロ)と添加成分(ニ)との割合が、添加成分(ロ)のP換算量と添加成分(ニ)の金属換算量Meとのモル比[P/Me]で1/2〜2/1の範囲であることを特徴とする請求項36、37、38、39、40、41、42、43または44に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
  46. 複合酸化物皮膜形成用の水溶液が、さらに有機樹脂を含有することを特徴とする請求項34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44または45に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板の製造方法。
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