JP3577983B2 - 旅行時間情報処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、旅行時間情報の処理装置並びにその応用システムに関わり、特に、道路上で計測された実測旅行時間情報の異常処理方法及び手段を用いたものに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
所定区間の旅行時間を計測して収集するシステム、例えば道路上の所定の2地点を通過する車両の車番を認識することで旅行時間を計測するAVI装置(車番認識による旅行時間計測装置)、道路上に設置された光ビーコンと車載機との双方向通信による車両ID認識を利用して旅行時間(アップリンク旅行時間)を計測するAMIS、セルラー電話通信網を利用して一定時間周期ごとの車両の位置から旅行時間計測するシステムにおいて計測される旅行時間(実測旅行時間)は、真の旅行時間情報であるので、旅行時間情報提供を行うにあたっては非常に有効な情報である。実測旅行時間は真の旅行時間情報ではあるが、旅行時間計測を行った車両が想定される区間を通行しなかった場合、あるいは長時間停止するなどしていた場合には、交通状況を反映した旅行時間として情報提供に用いることはできない。よって実測旅行時間の異常判定を行って異常値を排除することが必要となってくる。従来の異常処理技術の例としては、特開平9−35174号公報に記載されるように、AVI装置を用いて蓄積された旅行時間データを利用して統計的に推測旅行時間の異常処理を行う方法がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
実測旅行時間の計測についてのもう一つの問題点は、単位時間周期で旅行時間情報が毎回必ず取得可能であるわけではないという点である。特にアップリンク旅行時間やセルラー電話を利用した方法により取得された実測旅行時間データの時間に対するデータ取得頻度は、通信端末を利用した車両の交通量に依存してしまう。特開平8−287393 号公報に記載されるような過去の旅行時間データを平均して統計旅行時間として異常処理の判断基準に適用しても、通信端末の利用率が低いような状況下では単位時間周期内に複数の旅行時間データが存在すること自体稀であるので、データの平均化が行われずに異常値と考えられる値自体が統計旅行時間データとなることがおこりうる。異常値である実測旅行時間を通信端末の利用者に提供する危険があるために、単位時間内に複数の実測旅行時間情報が得られたときにのみ情報提供を行うか、実測旅行時間情報自体を提供しないというのが現在の状況である。
【0004】
よって本発明では、実測旅行時間データが単位時間内に一つしか取得できない状態であっても、実測旅行時間データ中の異常値を統計的手法に基づく異常判定により排除することによって、実測旅行時間情報を最大限に利用し、かつ正確な旅行時間情報を摘出するための旅行時間情報処理装置を提供することを目的としている。
【0005】
また本発明の旅行時間情報処理装置は、異常値を含む過去の実測旅行時間データから、正常と推定される旅行時間の上限値を抽出する手段を有する装置を提供することを目的としている。
【0006】
さらに本発明の旅行時間情報処理装置は、現在の実測旅行時間データが過去の実測旅行時間統計と異なる傾向を示した場合においても、比較判定を修正して該実測旅行時間データを活用する手段を有する装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を実現する旅行時間情報処理装置は、旅行時間上限値を算出する上限値算出部と、旅行時間下限値を算出する下限値算出部と、該旅行時間上限値及び該旅行時間下限値を現在の旅行時間データと比較して該旅行時間データの異常判定を行う比較判定部を有することを特徴としている。
【0008】
前記旅行時間情報処理装置の別の特徴は、前記上限値算出部に関して、区間距離データと制限速度データのうち少なくとも一方を用いて旅行時間上限値を算出する手段を有することにある。
【0009】
また前記旅行時間情報処理装置の別の特徴は、前記上限値算出部に関して、過去の旅行時間データベースを用いた旅行時間上限値算出部を有することにある。上記旅行時間情報処理装置の別の特徴は、上記上限値算出部に関して、時間的に変化する旅行時間上限値を算出する手段を有することにある。
【0010】
前記旅行時間情報処理装置における比較判定部は、旅行時間上限値及び旅行時間下限値を現在の旅行時間データと比較して該旅行時間データの異常判定を行う手段と、前回までに取得された旅行時間データの該比較判定部での異常判定履歴を参考に現在の旅行時間データに対する異常判定を修正する手段とを有することを別の特徴としている。
【0011】
また前記旅行時間情報処理装置の上限値算出部は、道路上のセンサによって直接計測又は算出された速度データを用いて旅行時間上限値を算出する手段を有することを別の特徴としている。
【0012】
前記旅行時間情報処理装置の下限値算出部における別の特徴は、区間距離データと制限速度データのうち少なくとも一方を用いて旅行時間下限値を算出する手段を有することにある。
【0013】
本発明の旅行時間情報処理装置の特徴は、該旅行時間情報処理装置を用いて、異常判定によって正常と判断された旅行時間データを所定のフォーマットに編集して交通情報を作成する手段と、該交通情報を交通管理者が監視するモニタ出力手段と、該交通情報を路上の通信装置に伝達する手段と、該通信装置から移動体上の情報媒体に表示する手段等を有する交通情報提供システムにある。
【0014】
本発明の旅行時間情報処理装置の特徴は、該旅行時間情報処理装置を用いて、異常判定によって正常と判断された旅行時間データを所定のフォーマットに編集して交通情報を作成する手段と、該交通情報を交通管理者が監視するモニタ出力手段と、該交通情報を路上の信号制御装置に伝達する手段と、該通信装置からの情報を利用して信号パラメータ設定する手段等を有する信号制御システムにある。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、旅行時間情報処理装置の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明による一実施形態である旅行時間処理装置全体を示すブロック図である。図1において、10a,10bは光ビーコンによるアップリンク実測旅行時間計測システム、11a,11bはAVIによる実測旅行時間計測システム、12a,12b,12cはセルラー電話網による旅行時間計測システムである。10a〜12cの各システムで計測された旅行時間は、13の区間旅行時間計算部によって所定の区間の旅行時間として集計される。14は該区間ごとに分類された旅行時間を過去の一定期間にわたって貯えたデータベース、15は旅行時間上限値算出部、16は該区間の距離及び法定速度等の情報を保有する道路データベース、17は旅行時間下限値算出部である。18は現在における旅行時間計測区間であり、19は該実測旅行時間を上限値及び下限値と比較して異常判定を行う比較判定部である。
【0016】
本実施例では、過去の旅行時間データベース14及び道路データベース16を用いて上限値算出部15により上限値を算出する部分と、道路データベース16を用いて下限値算出部17により下限値を算出する部分と、該旅行時間上限値及び下限値を利用して現在の旅行時間計測区間18で取得された実測旅行時間データを比較判定部19で該データの異常判定を行う所とに特徴がある。
【0017】
10a〜12cの路上システムで計測された実測旅行時間データが区間ごとに分類されて、旅行時間データベース14に蓄積される部分までは前述した通りである。旅行時間データベース14内部で、実測旅行時間データは交通状態が類似していると考えられる車種,日種の区別もつけて分類される。実測旅行時間データは該データが取得された時刻情報も持っているので、一定期間収集したデータを時刻順に並べることで、一日では時間的に低頻度でしか実測旅行時間が取得できないような状況下であっても、旅行時間の統計的な日変化を知ることが可能となる。上限値算出部15は、該統計的データから各時間帯における上限値をあらかじめ算出して、比較判定部19に送る。一方下限値算出部17は、旅行時間の下限値を所定の区間を走行するのに考えられる最短時間として定義する。定義の基準は法定速度に基づいており、例えば道路データベース16から区間の距離を法定速度(一般道60[km/h])で走行したときの旅行時間を下限値とする場合、あるいは各区間距離と該区間ごとの制限速度を割増しした速度で走行したときの旅行時間を下限値とする場合が考えられる。比較判定部19は、上記の方法で計算された上限値及び下限値を比較対照として、現在の旅行時間計測区間
18において計測された旅行時間が過去の統計データに対して乖離していれば、異常実測旅行時間として廃棄する。
【0018】
以上の処理によって、実測旅行時間データの取得頻度が小さい状況下においても、実測旅行時間データの異常判定が可能となる。
【0019】
図2は、上限値算出部15内部の処理の一例を表すフローチャートである。図2は一つの旅行時間計測区間についての説明となっているが、複数の旅行時間計測区間が存在するときは全ての区間について同様の処理を行うものとする。
【0020】
本実施例では、旅行時間データベースのデータ個数の多寡により上限値導出方法を変化させること、時間的な間隔が不均一である時系列旅行時間データから一定時間間隔における妥当な旅行時間上限値を算出可能であることに特徴がある。処理20では、旅行時間上限値を算出したい区間,車種,日種での旅行時間データを上限値算出部106の入力である旅行時間データベース105から抽出する。条件判定処理21は、当該区間,車種,日種での旅行時間データの個数が所定の個数N個以上のときには、道路データベース107を用いて時間的に変化する上限値を設定するために処理22以降へと、データの個数がN個に満たないときには、時間的に一定な上限値設定の処理27へと、処理の流れを分岐する。
【0021】
処理22では、旅行時間データの入力に対して異常値の排除と統計処理によって、各データに対する上限値(Tsup )を算出する。例えばデータが20個あればその一つ一つのデータに対してTsup は設定される。入力旅行時間データは、日の区別を無視した到着時刻情報も持っていて、該到着時刻情報順に並んでいる。例えば、1998年5月5日 10:30amと1998年6月5日9:30amにおけるデータがあった場合は後者のデータの方が先に来るような順序に並べ替えられているものとする。Tsup のデータ系列も入力旅行時間データと同一フォーマットで、対応する入力データと同一の到着時刻データと、上限値の二つのデータからなる。処理22内部での詳細は後述する。処理22により、時刻によっては存在密度の不均一な上限値Tsup が出力されるが、以後処理23〜26は、Tsup から一定時刻周期の旅行時間上限値Tmax を出力する処理である。
【0022】
Tsup のノイズ的な変動成分を取り除きつつ、急激な変化にも対応した一定時刻周期の時系列データTmax を導出するところが、本発明の実施形態による以後の処理の特徴である。
【0023】
処理23では、処理22により作成されたTsup のデータを元にして、単位時間間隔内にTsup のデータが複数ある場合にはその時間間隔内でのTsup の最大値をTmax として採用し、単位時間間隔内にTsup のデータが存在しない場合には既に算出された前後の単位時間間隔内におけるTmax を使って直線補完を行い、所定の単位時間間隔ごと、例えば5分間隔ごとのデータTmax を算出する。処理24では、所定の速度で走行したときの旅行時間を上限値の最小値と定めて、Tmax の値が該最小値より小さい時間帯については、該最小値をTmax として置き換える。さらにTmax の凹凸を平滑化するにあって、まず処理25では、到着時間と出発時間が前後で逆転しているようなTmax の値を除外して、周辺の時間帯に比べて大きな凸部を除去し、処理26では、Tmax の時系列データを所定の単位時間間隔だけずらしたものをお互い重ねあわせて、細かい凹部を除去する。本発明の実施形態の旅行時間上限値算出部によって求められた旅行時間上限値は、処理25によって、周囲の交通に比べて遅く走行する車両の旅行時間が除去され、処理26によって、一日全体の旅行時間の変化に比べて細かいと思われる変化が除かれることで、一日の旅行時間変化として平滑なデータとなる。
【0024】
処理27では、データ数がN個に満たなかった旅行時間データに対して、法定速度×P1%(P1%<100%)で表される速度で走行したときの旅行時間を上限値と設定する。処理28では、処理26,27の出力を上限値算出部106の出力として旅行時間上限値をデータベース化する。
【0025】
図3は図2における処理22の内部構造の一例で、離散的かつ時間的に不規則に出現する旅行時間データから、該データに対する異常値を排除した上限値を設定する装置である。30は上限値を設定する入力旅行時間データのもとのデータ(Tbase)の例、323,333は上限値を算出するための中間データでそれぞれTsup1,Tsup2、37は上限値出力Tsup である。Tsup1,Tsup2,Tsupは全て旅行時間情報の他に時刻情報も持っている。該装置は、希薄な旅行時間情報下においても旅行時間分布形状を推定して上限値を出力することを可能にする所に特徴がある。
【0026】
処理31では、Tbaseの先頭データを以後の処理の読み込み位置の初期値として設定する。以下、Tbase先頭データから最終データまで処理320〜処理322,処理330〜処理332の繰返し処理を行う。処理320では、読み込まれているTbaseのデータを中心に合計M1個のデータを抽出し、該データを旅行時間の小さい順に並べて、その旅行時間の値を順に{T_n}={T_1,T_2,… T_M1}とする。このときT_nに対して
【0027】
【数1】
p_n=(n−1)/(M1−1)(n=1,2,…M1)
となるようにp_n を定める。このp_nはT_nの累積確率分布を表すことになる。T_nの真の分布はわからないが、(T_n,p_n)を用いて分布形状を近似する。分布の両端つまりT_1及びT_M1は外れ値である確率が高いので、この二つの値を除いて累積確率分布を最小二乗法により直線近似する。すなわち
【0028】
【数2】
p′_n=a・T_n+b(n=2,3,…M1−1)
の形で推定累積確率分布p′_n を求めるために最小二乗法を用いてa,bを定める。次に処理321では、この推定累積確率からM1個の旅行時間データの上限値Tsup1を求める。異常値を含まない旅行時間の真の累積確率分布では、上に有界であると推定されるので、p_n=1となるときのT_nが上限値と推定できる。ここでは簡単にp′_n=1となるときのT_nが旅行時間上限値の推定値であるとする。次に数2にp′_n=1を代入したときのT_nをT′_M1 として求めて、T_M1と比較する。T_M1<T′_M1である場合、T_M1は異常値ではないと考えて、上限値T_sup1=T_M1 とする。T′_M1<T_M1である場合、T_M1は異常値であると考えて、Tsup1=T′_M1 とする。このT_sup1が、Tbaseの現在の読み込み値に対応する上限値となる。処理322では、Tbaseのデータに対して順次、処理320,処理321を行って、Tbaseの全てのデータに対応するデータ系列323(Tsup1のデータ系列)を作成する。
処理330〜処理332では、処理320〜処理322とほぼ同様の処理を
Tbaseに対して実行する。処理330と処理320の相違点は、一つの旅行時間データの上限値を求めるために必要なデータ範囲をM2(M1<M2<2M1)とすること、最大値側で2個のデータを外れ値とする(T_1及びT_(M2−1),T_M2)を除外する)部分にある。処理331と処理321は全く同じ処理であり、以下処理332を経てTsup1と同様の時系列データ(Tsup2のデータ系列)を出力する。処理34〜36では、Tsup1,Tsup2の二つの上限値推定値を一つにまとめる。処理34では、Tsup1,Tsup2の先頭データを同時に読み込みを開始し、処理35では、Tsup1,Tsup2のうち小さい方の値を最終的な上限推定値Tsup とし、処理36では、Tsup1,Tsup2のデータの末尾に至るまで処理34,処理35を繰返し、データ系列37(Tsup のデータ系列)を出力する。Tsup1とTsup2の相違点は、処理320と処理330の違いによるものである。Tsup2 は、処理330でM1<M2<2M1の条件に対してデータ範囲をM2としたことにより上限値側に2個の異常値まで処理可能であるので、Tsup1 に比べて異常値を含む確率が低い。しかしTsup2はTsup1と比べて対象とするデータ範囲が大きいことから、細かい値の変動がTsup1 に比べて鈍感になる傾向がある。Tsup は、上記の方法で算出することで、異常値を含みにくい特徴と値の変動に敏感である特徴の二つを兼ね備えることになる。
【0029】
図4は、離散時系列データ上限出力装置の処理を具体的に示したものである。40は時系列データTbaseを表したグラフで、統計旅行時間データの日変化を示す。42,43は図3中に示されるそれぞれの処理320,321、処理330,331を図式化したもの、44は出力上限値をTbaseのグラフと重ねあわせたものであり、統計旅行時間データの日変化と上限値のグラフである。グラフ44から離散時系列データ上限出力装置によって処理することで異常値を含む旅行時間データから、異常値を排除し、妥当な上限値を算出していることがわかる。例として401の範囲に示されるデータに対して処理を行う。41は、このデータを具体的に取り出した表で、411に示される時刻9:02:31、旅行時間値90[秒]のデータを中心にして、処理320のM1個は412の範囲で示される5個、処理330のM2個は413の範囲で示される9個として採用する。範囲412に対して、横軸に旅行時間値、縦軸に累積頻度分布をとって、最大値と最小値以外の3点をプロットしたものがグラフ42の黒菱形であり、最大値,最小値をプロットしたものが、グラフ42の×である。421は黒菱形から最小二乗法近似によって導出された直線で、422は直線421上で累積頻度100%となる点である。点422と範囲412の最大値とを比べると、範囲412における最大値の方がグラフ42の左側、つまり小さい側にあるので、上限値としては該最大値の方を出力する。同様に範囲413に対して、累積頻度分布上に最大側2個、最小側1個を除外してプロットしたものがグラフ43の黒菱形であり、最大値側2個、最小値をプロットしたものがグラフ43の×である。431は黒菱形から最小二乗法近似によって導出された直線で、432は直線431上で累積頻度100%となる点である。この場合、点432の方が範囲413における最大値よりも小さいので、上限値としては小さい方の値である点432の旅行時間値を採用する。グラフ42,43からそれぞれ求まった上限値が、データ411の時刻における上限値の候補であり、図3における処理35に従って小さい方
(グラフ42で出力された上限値)がデータ411の時刻における上限値として採用される。Tbaseの全ての時刻における値について処理を行い、グラフ44に示されるような上限値の系列が出力される。
【0030】
図5は、比較判定部111の一例で、現在の実測旅行時間の異常判定を行う部分の処理のフローチャートである。本例は、読み込まれた現在の実測旅行時間データを過去の実測旅行時間データベースから算出された上限値・下限値を用いて異常判定処理を施すが、当日の旅行時間変化を反映するために、上限値を超えた値に対しても判定修正を行うのが特徴である。
【0031】
処理500では、現在の旅行時間データ(Tt)を読み込み、旅行時間上限値,下限値と比較し、501の表にあるように、下限値より小さければ過小,下限値以上、上限値以下であれば正常、上限値より大きく、上限値に所定の倍率f倍を乗じた値よりも大きければ過大と判定し、それぞれの判定に基づいて正常,異常,過大,過小の順で条件51〜条件54に以後の処理を分岐する。最終的に
Ttは、処理540にあるように実測旅行時間として採用、または処理541にあるように実測旅行時間として不採用の判断がなされる。以下それぞれの判定における処理の流れを示す。
【0032】
Ttが正常と判定されたときは、無条件で処理540に移り、Ttが過小と判定されたときは、無条件で処理541に移る。Ttが異常または過大と判定されたときは、少々処理が複雑になる。Ttが異常と判定されたとき、処理は条件
521に進む。条件521は、Ttの直前から過去に溯って処理された実測旅行時間データが所定の回数(L1回)以上連続して異常であるか否かである。過去に溯って実測旅行時間データを参照する際に所定の時間以上過去に溯るものは、過去のデータは既に無効であるとして、該条件を否定する。同様に、過去の実測時間データを参照する場合の後述する条件判定には、上記に示した処理と同様の処理が付随する。処理は、条件521が肯定されれば処理540に進み、否定されれば522に進む。条件522は、Ttの直前から過去に溯って処理された実測旅行時間データが過大かつ処理540の部分で採用判断されていたか否かである。処理は、条件522が肯定されれば処理540に進み、条件522が否定されれば処理541に進む。Ttが過大と判定されたときは、処理は条件531に進む。条件531は、Ttの直前から過去に溯って処理された実測旅行時間データが所定の回数(L2回)以上連続して過大と判定されているか否かである。処理は、条件531が肯定されれば処理540に進み、条件531が否定されれば処理541に進む。
【0033】
条件521,条件522,条件531,条件540の存在によって、過去に蓄積された旅行時間変化と異なる旅行時間変化が観察されて上限値を上回った場合においても、当日の旅行時間変化を反映するので、実測旅行時間データの利用効率を高めることができる。
【0034】
図6は、本発明の旅行時間処理装置の別の実施例で、上限値算出に感知器データを用いた場合の例である。この例は、路上に設置された感知器が2個の例であるが、さらに多くの感知器が存在する場合についても本実施例として考える。図6において、104,107,108は図1中に現れるものと同一の物を指し、60は現在における所定の旅行時間計測区間、601,602は該計測区間内に設置された感知器、61は上限値算出部、62は比較判定部である。本実施例では、現在の実測旅行時間を感知器から取得されたデータを元に算出した速度と比較して該実測旅行時間の異常判定を行う所に特徴がある。
【0035】
旅行時間計測区間60内では、実測旅行時間以外に区間60内に設置された複数の感知器601,602を用いて単位時間当りの車両の通過台数Q及び時間占有率Otを計測する。感知器で取得された単位時間当りの車両の通過台数Q及び時間占有率Otから単位時間当りの平均通過速度Vを算出する。平均通過速度Vは平均の車両長をLとして、以下の式で求められる。
【0036】
【数3】
V=L・Q/Ot
上限値算出部61内の速度変換部611は、感知器601,602における通過台数及び時間占有率を用いて、数3に従い平均通過速度をそれぞれV1,V2のように定める。速度選択部612は、区間推定速度をVaとしてV1,V2を平均化して求める。さらに、このVaに所定の割合、例えば80%乗じたものを区間における最低推定速度として、道路データベース107から取得される区間距離を該最低推定速度で割って旅行時間上限値をもとめる。下限値算出部108では、旅行時間情報処理装置1で用いられた方法で下限値を求める。比較判定部62は、現在測定された実測旅行時間を前記上限値及び前記下限値と比較して、該下限値以上該上限値以下であれば、該実測旅行時間を異常値でない実測旅行時間データとして出力する。現在の感知器データを利用することで、実測旅行時間データの時間的取得頻度が低い状況下においても旅行時間データの異常判定を行うことができる。
【0037】
図7は、本発明の旅行時間情報処理装置を利用した交通情報システム及び信号制御システムの一例を示す。図7において、1は図1で示した旅行時間情報処理装置、70は旅行時間情報編集装置、71は交通管理モニタ、72は路上に設置された交通情報表示装置、73は路上に設置された交通情報通信装置、74は路上に設置された信号制御装置である。
【0038】
旅行時間情報編集装置70は、旅行時間情報処理装置1によって異常判定によって正常と判定された実測旅行時間データを基に必要に交通情報を算出して、交通管理モニタ71を経由して交通管理者、路上の交通情報表示装置72及び信号制御装置74に該交通情報を提供する。交通管理モニタ71では、地図上に旅行時間を表示して渋滞個所の特定が可能である。交通情報表示装置72では、路上に設置された情報提供装置を通してドライバーに対して目的地までの所要時間及び渋滞区間といった交通情報の提供が可能である。交通情報通信装置73では、道路を走行中の車両の通信端末を通じて交通情報を提供することが可能である。また信号制御装置74にリアルタイムの旅行時間情報を提供して、信号パラメータを変更する制御を行うことが可能となる。このように実測旅行時間情報は異常処理を施すことによって、時間的に希薄であっても信頼できる情報として提供することが可能となる。
【0039】
【発明の効果】
本発明の旅行時間情報処理装置は、過去の実測旅行時間情報を蓄積し、上限値・下限値を設定して異常判定をすることによって、実測旅行時間情報の情報取得頻度が小さい状況下においても、精度の高い旅行時間情報を抽出することを可能にしている。
【0040】
また、本発明の旅行時間上限値算出手段を設けた場合には、周期的に取得される実測旅行時間情報、あるいは情報取得周期が不規則な実測旅行時間情報においても、一定時刻周期の上限値を導出することが可能となる。
【0041】
さらに、本発明の旅行時間情報処理装置を利用した交通情報提供システム及び交通信号制御システムにおいては、精度の高い旅行時間情報を最大限提供及び利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である旅行時間情報処理装置のブロック図。
【図2】本発明の一実施例の旅行時間上限値算出部の処理を表したフローチャート。
【図3】本発明の一実施例の上限値算出部の一部である離散時系列データ上限出力装置内部の処理を表したフローチャート。
【図4】図3の離散時系列データ上限出力装置の具体的な処理を示した図。
【図5】本発明の一実施例の比較判定部内部の処理を表したフローチャート。
【図6】本発明の別の一実施例である旅行時間処理装置のブロック図。
【図7】本発明の旅行時間情報処理装置を利用した交通情報システム及び信号制御システムの一例。
【符号の説明】
1…旅行時間情報処理装置、10a,10b…アップリンク実測旅行時間計測システム、11a,11b…AVIによる実測旅行時間計測システム、12a,12b,12c…セルラー電話網による旅行時間計測システム、40…統計旅行時間データの日変化、44…統計旅行時間データの日変化と上限値のグラフ、
70…旅行時間情報編集装置、71…交通管理モニタ、73…交通情報通信装置、601,602…感知器。
Claims (6)
- 車両の識別情報を用いたアップリンク旅行時間または車両から送信される位置情報に基づく旅行時間により、所定区間の旅行時間情報を計測して処理する旅行時間情報処理装置において、
前記収集した旅行時間を少なくとも日種と時刻情報により分類して管理する旅行時間データベースと、
前記旅行時間データベースに格納された旅行時間により各区間について時間帯毎に旅行時間上限値を算出して旅行時間上限値の日変化を求める上限値算出部と、該当区間に対して定められる所定の旅行時間下限値を算出する下限値算出部と、該旅行時間上限値及び該旅行時間下限値を現在の旅行時間データと比較して該旅行時間データの異常判定を行う比較判定部を備え、
前記上限値算出部では、該当区間における旅行時間上限値を求める際には、前記旅行時間データベースに格納された該区間の当該日種に属する旅行時間のデータ個数が所定数以上の場合には、その旅行時間のデータから各時間帯毎の旅行時間分布形状を推定し、一日の旅行時間変化として平滑化した値を旅行時間の上限値とし、該データ個数が前記所定数未満の場合には、該区間の当該日種の旅行時間上限値をその区間により定まる所定値とする旅行時間情報処理装置。 - 請求項1に記載の旅行時間情報処理装置において、前記上限値算出部は、区間距離データと制限速度データのうち少なくとも一方を用いて旅行時間上限値を算出する手段を有する旅行時間情報処理装置。
- 請求項1に記載の旅行時間情報処理装置において、前記上限値算出部では、旅行時間のデータから各時間帯毎の旅行時間分布形状を推定する際に、異常値を含む確率が少ないデータ分布と値の変動を敏感に反映したデータ分布の内、小さい値を取るデータ分布から旅行時間分布を求めることを特徴とする旅行時間情報処理装置。
- 請求項1に記載の旅行時間情報処理装置において、前記比較判定部は、各区間の現在の旅行時間データと該当する時間帯における旅行時間上限値及び旅行時間下限値とを比較して該旅行時間データの異常判定を行う手段と、各区間毎に前回までに取得された旅行時間データの該比較判定部での異常判定履歴を参考に現在の旅行時間データに対する異常判定を修正する手段とを有する旅行時間情報処理装置。
- 請求項4に記載の旅行時間情報処理装置を用いて、異常判定によって正常と判断された旅行時間データを所定のフォーマットに編集して交通情報を作成する手段と、該交通情報を交通管理者が監視するモニタ出力手段と、該交通情報を路上の通信装置に伝達する手段と、該通信装置から移動体上の情報媒体に表示する手段を有する交通情報提供システム。
- 請求項4に記載の旅行時間情報処理装置を用いて、異常判定によって正常と判断された旅行時間データを所定のフォーマットに編集して交通情報を作成する手段と、該交通情報を交通管理者が監視するモニタ出力手段と、該交通情報を路上の信号制御装置に伝達する手段と、該通信装置からの情報を利用して信号パラメータ設定する手段を有する信号制御システム。
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