JP3574243B2 - 微小体付着力測定装置及び微小体付着力測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば基板等に付着している微小体の付着力を測定する微小体付着力測定装置及び微小体付着力測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、例えば医療分野においてチタン材から成る人口骨又はセラミックス材から成る歯科材料等の生体親和力の測定や、工業分野において異種の材料相互の接合力の測定等に微小体付着力測定装置が必要とされている。
【0003】
特に、基板上に培養された複数の細胞の付着力を測定する場合、この基板を遠心分離器にかけた後、細胞の質量と細胞に加えられた遠心力、基板から剥がれた細胞の個数と基板上に残った細胞の個数の割合に対して統計的な処理を施すことによって、基板に対する細胞の付着力が測定されている(第1の従来技術)。
【0004】
また、微小体に作用する力を検出する装置として、例えば特開昭62−130302号公報には、尖鋭化した探針が自由端に設けられたカンチレバーによって、探針と微小体表面との間に働く微弱な力を検出して、微小体表面の3次元情報を得る原子間力顕微鏡(AFM)が開示されている(第2の従来技術)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、第1の従来技術によれば、複数の細胞のトータル的な付着力評価は可能であるが、個々の細胞の付着力を独立且つ直接に測定することはできなかった。
【0006】
また、第2の従来技術では、例えば生体細胞程度の大きさの微小体が基板に付着している場合、この微小体の付着力を測定するために、微小体に力を加えて基板から微小体を剥がすように動作制御することは困難である。なぜなら、AFMは、探針と微小体表面との間において、微小体の面法線方向に働く力によって生じるカンチレバーの変位量を検出するように構成されているからである。仮に、面法線方向に微小体を摘み上げるようにカンチレバーを制御できたとしても、そのときのカンチレバーの変位量に基づいて、カンチレバーと微小体との間の付着力、微小体と基板との間の付着力を分離して検出することは難しい。
【0007】
本発明は、上述したような課題を解決するためになされており、その目的は、任意面に付着している所望の微小体の付着力だけを高精度且つ簡単に測定することができる微小体付着力測定装置及び微小体付着力測定方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明の微小体付着力測定装置は、
垂直及び水平方向に変位自在に構成されたプローブと、
前記プローブの先端の垂直方向の変位を光学的に検出する第1の変位センサと、
前記プローブを任意の面に対して相対的に水平方向へ移動させて、前記面に付着している前記複数の微小体のうち、所望の微小体のみに前記プローブの先端を圧接させる手段と、
前記所望の微小体を前記プローブの先端に圧接させた際に生じる前記プローブの水平方向の初期変形量,及び、前記プローブの先端によって前記面から前記所望の微小体が剥がれた際に生じる前記プローブの水平方向の最大変形量を光学的に検出する第2の変位センサと、
前記初期変形量と前記最大変形量との間に差演算を施すことによって、前記面に付着している前記所望の微小体の付着力を測定する手段と、
を備えている。
【0009】
また、本発明の微小体付着力測定方法は、プローブの先端の垂直方向の変位を光学的に検出しながら、前記プローブの先端を複数の微小体が付着している任意の面上の所望位置に位置決めする工程と、前記プローブを前記面に対して相対的に水平方向へ移動させて、前記面に付着している前記複数の微小体のうち、所望の微小体のみに前記プローブの先端を圧接させる工程と、前記所望の微小体を前記プローブの先端に圧接させた際に生じる前記プローブの水平方向の初期変形量を光学的に検出する工程と、前記プローブの先端によって前記面から前記所望の微小体が剥がれた際に生じる前記プローブの水平方向の最大変形量を光学的に検出する工程と、前記初期変形量と前記最大変形量との間に差演算を施すことによって、前記面に付着している前記所望の微小体の付着力を測定する工程とを有する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態に係る微小体付着力測定装置について、添付図面を参照して説明する。
図1には、本実施の形態の微小体付着力測定装置が組み込まれた顕微鏡システムの全体の構成が示されている。
【0011】
図1に示すように、顕微鏡システムは、鏡体2の下部側に配置された光学顕微鏡ユニットと、鏡体2の上部側に取り付けられた測定ユニットとを備えている。測定ユニットは、その全体が光学的に透明なガラス又はプラスチック製の保温ケース4で覆われており、本実施の形態の微小体付着力測定装置は、この保温ケース4内に組み込まれている。この保温ケース4には、温度コントローラ6及びガス導入コントローラ8を介してガスボンベ10が接続されており、付着力測定時における保温ケース4内の温度やガス雰囲気が常時一定(本実施の形態では、30℃〜40℃程度の範囲)に保持されるように構成されている。なお、本実施の形態において、ガスボンベ10には、例えば、細胞等の生体試料を用いる場合には炭酸ガスが充填され、セラミック等の生体以外の試料を用いる場合にはドライ窒素が充填される。
【0012】
光学顕微鏡ユニットは、保温ケース4内に配置され且つ粗動XYつまみ12を操作することによって水平面内(XY平面内)を粗動自在に構成された粗動XYステージ14と、この粗動XYステージ14に形成された粗動開口部14aを介して光源16からの照明光を後述する微小体26及びプローブ28方向へ照射させると共に、微小体26及びプローブ28から反射した反射光を取り込む対物レンズ18と、この対物レンズ18によって取り込まれた反射光に所定の画像処理を施してモニタテレビ20上に光学顕微鏡像を画像化させる固体撮像素子カメラ22とを備えている。このような光学顕微鏡ユニットによれば、鏡体2の下方から微小体26及びプローブ28に対する落射検鏡観察を行うことができる。
【0013】
また、プローブ28上方の空間に微小体観察用の照明系を設け、微小体26を透過した透過光を対物レンズ18で取り込み、この透過光に上述の落斜検鏡観察と同様の画像処理を施して、透過検鏡観察を行うことも可能である。
【0014】
測定ユニットの保温ケース4内に組み込まれた微小体付着力測定装置は、シャーレ24内に培養されてシャーレ24の底面に付着している複数の細胞のうち、所望の細胞26を個別に押圧してシャーレ24の底面から剥がすことができるように構成されたL字状のプローブ28と、このプローブ28のL字状先端に突設された押圧部28aが細胞26に対して所望の位置関係に維持されるように、プローブ28のL字状先端の垂直方向の変位を光学的に検出する垂直方向変位センサ30と、プローブ28の押圧部28aによって細胞26をシャーレ24の底面から剥がす際に生じるプローブ28の水平方向の変位を光学的に検出する水平方向変位センサ32とを備えている。
【0015】
ところで、ここで言う所望の位置関係は、例えば、押圧部28aが水平方向に細胞26を押圧する力点が、細胞26の高さのほぼ中点であることが好ましい。
なお、本実施の形態に適用されたプローブ28は、ステンレス箔製の板ばねで構成されたL字状片持ち梁であり、押圧部28aには、三角錐形状のダイアモンド探針若しくは半導体プロセスでプローブ28と一体に作製されるシリコン製、酸化シリコン製、そして窒化シリコン製等の探針が適用されている。また、シャーレ24は、その全体が光学的に透明なガラス又はプラスチックによって形成されている。
【0016】
また、ここで使用するL字状片持ち梁は、長さ15〜30mm、厚さ50〜80μm、幅1mmを満足することが好ましいが、本発明と同様の目的に使用されるものであれば、この数値に特に限定されることはない。
【0017】
また、プローブ28,垂直方向変位センサ30及び水平方向変位センサ32は、共に、シャーレ24上に位置付けられるように、微動Zステージ34に支持されており、この微動Zステージ34は、粗動Zステージ36を介して鏡体2に支持されている。
【0018】
粗動Zステージ36は、粗動Zつまみ38を操作することによって、垂直方向(Z方向)へ上下粗動自在に構成されており、この粗動Zステージ36をZ方向へ粗動させることによって、微動Zステージ34と共にプローブ28,垂直方向変位センサ30及び水平方向変位センサ32がシャーレ24に対して垂直方向へ上下粗動するように構成されている。
【0019】
微動Zステージ34には、圧電体としてアクチュエータ(図示しない)が適用されており、コンピュータ40からフィードバック回路42を介して出力された制御信号に基づいて、駆動回路44がアクチュエータを駆動することによって、垂直方向変位センサ30及び水平方向変位センサ32と共にプローブ28をシャーレ24の底面に対して垂直方向へ上下微動させるように構成されている。
【0020】
また、本実施の形態に適用された垂直方向変位センサ30及び水平方向変位センサ32とプローブ28との間の配置関係において、特に図3に示すように、垂直方向変位センサ30は、プローブ28のL字状先端部28bに垂直変位測定用レーザー光を出射可能に構成されている。そして、このプローブ28のL字状先端部28bから反射した反射光は、再び垂直変位センサ30によって取り込まれた後、図1に示すように、垂直変位検出回路46によって所定の変位信号に変換され、フィードバック回路42を介してコンピュータ40に出力されるように構成されている。
【0021】
なお、垂直方向変位センサ30からの垂直変位測定用レーザー光が、L字状先端部28bの中でも押圧部28aの裏面にあたる部分に照射されるように、垂直方向変位センサ30を位置決めすることが好ましい。
【0022】
一方、水平方向変位センサ32は、図3に示すように、プローブ28の垂直延出部28cに水平変位測定用レーザー光を出射可能に構成されている。そして、このプローブ28の垂直延出部28cから反射した反射光は、再び水平方向変位センサ32によって取り込まれた後、図1に示すように、水平変位検出回路48によって所定の変位信号に変換されてコンピュータ40に出力されるように構成されている。
【0023】
このような構成において、垂直方向変位センサ30及び水平方向変位センサ32には、例えば、反射光の光量変化に基づいてプローブ28の変位を測定可能なフォトニックセンサ(米国MTI社製:MTI−2000)が用いられており、0.5nm程度の分解能を有している。
【0024】
なお、このフォトニックセンサは、センサの感度や製品により測定に最適な位置が異なる。そこで、センサとプローブ28との最適な位置への位置決めは、プローブ28に対してセンサを移動させることで行っている。
【0025】
また、フィードバック回路42は、垂直変位検出回路46から出力される変位信号が常時一定値となるように、フィードバック制御を行うことができるように構成されている。なお、フィードバック制御の制御値は、コンピュータ40によって適宜調整することができるように構成されている。
【0026】
更に、コンピュータ40は、プローブ28の垂直及び水平方向への変位によって変化する上記夫々の変位信号に基づいて、プローブ28の垂直方向の変位量及び水平方向の変位量を夫々算出してモニタ表示することができるように構成されている。
【0027】
図1及び図2に示すように、シャーレ24は、微動XYステージ50に保持された試料台52上に載置されており、微動XYステージ50は、上記粗動XYステージ14に固定されている。従って、粗動XYつまみ12を操作することによって、微動XYステージ50は、粗動XYステージ14と共に水平面内(XY平面内)を移動することができる。
【0028】
本実施の形態において、微動XYステージ50及び試料台52には、夫々、粗動XYステージ14の粗動開口部14aを介して伝波される照明光がシャーレ24の底面に照射されるように、微動開口部50a及び試料台開口部52a(図2参照)が形成されており、試料台52は、微動XYステージ50の微動開口部50a内に嵌合保持されるように構成されている。なお、試料台52は、厚さ1mm程度のステンレス製の円板で構成されており、その中央部に直径15mm程度の試料台開口部52aが形成されている。また、シャーレ24は、その自重を介して試料台52との間の生じる摩擦力によって、試料台52上に固定されるように構成されているが、適宜必要に応じてホルダ等の固定部材(図示しない)によって固定してもよい。また、上記粗動XYステージ14の粗動開口部14aには、試料台52の代わりに、例えば、シャーレ24内の温度コントロールが精密に行われるように、ヒータを組み込んだガラス板を嵌合保持させてもよい。
【0029】
図1及び図4に示すように、本実施の形態に適用された微動XYステージ50は、微動開口部50aの周囲に複数の貫通溝54が形成されたステンレス製の一体型切り抜きばね部材から構成されており、複数の貫通溝54の外側に形成され且つ粗動XYステージ14(図1参照)に固定された固定部56aと、複数の貫通溝54を含めた内側に形成され且つ固定部56aに対してXY平面内を任意方向へ移動自在な移動部56bとを備えている。なお、微動開口部50aは、移動部56bに係属している。
【0030】
複数の貫通溝54には、移動部56bがXY平面内で任意方向へ移動できるように構成された第1ないし第4のリンク機構部58a,58b,58c,58dと、所定方向へ押圧力を作用させることによって、第1ないし第4のリンク機構部58a,58b,58c,58dを介して移動部56bをXY方向へ移動させる第1及び第2のてこ部60a,60bとが設けられている。
【0031】
第1及び第2のてこ部60a,60bには、これらてこ部60a,60bに所定の押圧力を作用させるための第1及び第2の圧電素子62a,62bが組み込まれている。これら第1及び第2の圧電素子62a,62bは、夫々、図1に示すように駆動回路64からフィードバック回路66を介してコンピュータ40に接続されており、コンピュータ制御されている。具体的には、移動部56bを図中X方向へ移動させるときには、コンピュータ40からの指令を受けた駆動回路64によって第1の圧電素子62aを動作させ、また、移動部56bを図中Y方向へ移動させるときには、コンピュータ40からの指令を受けた駆動回路64によって第2の圧電素子62bを動作させる。
【0032】
また、第1及び第2の圧電素子62a,62bには、これら圧電素子62a,62bが変位することによって生じる歪みを検出するための第1及び第2の歪みゲージ68a,68bが貼り付けられている。これら第1及び第2の歪みゲージ68a,68bは、夫々、図1に示すように変位検出回路70からフィードバック回路66を介してコンピュータ40に接続されており、各歪みゲージ68a,68bからの出力信号の変化量が常時一定となるように(即ち、第1及び第2の圧電素子62a,62bのヒステリシスが除去されるように)フィードバック制御されている。なお、このフィードバック制御の制御値は、コンピュータ40によって適宜調整することができるように構成されている。
【0033】
本実施の形態において、第1の圧電素子62aには、Tokin製の積層型圧電体(5mm×5mm×9mm)が、また、第2の圧電素子62a,62bには、Tokin製の積層型圧電体(5mm×5mm×18mm)が適用されており、共に、駆動回路64から最大100Vの電圧を印加することができるように構成されている。なお、例えば100Vの電圧が印加されたとき、第1及び第2の圧電素子62a,62bは、夫々約6.5μm,約12μm程度伸びるように構成されている。このような構成を有する微動XYステージ50によれば、比較的低い印加電圧によって、約150μm程度の大きな変位量を確保できると共に、数十ミクロンオーダーの微小体即ち細胞26の測定もできる直交性の良いXYステージが実現されることになる。
【0034】
次に、本発明の一実施の形態に係る微小体付着力測定方法について、図1,図5及び図6を参照して説明する。なお、本実施の説明に際し、シャーレ24内には、所定の培養液(例えば、水)が収容されており、この培養液によって培養された微小体としての細胞26がシャーレ24の底面に付着しているものと仮定する。
【0035】
この状態において、光学顕微鏡ユニットによってシャーレ24に対する落射検鏡観察を行いながら、粗動XYつまみ12を操作して、シャーレ24とプローブ28とのXY方向の相対的な位置を移動させ、また、粗動Zつまみ38を操作して、垂直方向変位センサ30及び水平方向変位センサ32と共にプローブ28をシャーレ24内の所望の細胞26の近傍上部に位置付ける(図5(a)参照)。
【0036】
この後、微動Zステージ34を駆動することによってプローブ28のL字状先端を微動させながら、プローブ28の押圧部28aをシャーレ24の底面に接触或いは近接させる。このとき、垂直方向変位センサ30から取り込まれたプローブ28のL字状先端部28bからの反射光の光量変化を検出することによって、シャーレ24の底面に対するプローブ28の押圧部28aの接触或いは近接程度が光学的に確認される。この場合、押圧部28aとシャーレ24の底面との間に働く作用力(接触力或いは近接力)は、細胞26の付着力よりも弱くなるようにフィードバック制御される(図5(b)参照)。
【0037】
次に、このようなプローブ28の押圧部28aとシャーレ24の底面との間の位置関係が一定に保たれるように、微動Zステージ34をフィードバック制御しながら、駆動回路64を介して第1及び第2の圧電素子62a,62b(図4参照)に所定の電圧を印加して微動XYステージ50を駆動させることによって、この微動XYステージ50上に試料台52を介して載置されたシャーレ24を図中矢印S方向へ移動させる(図5(b)参照)。
【0038】
また、押圧部28aとシャーレ24の底面との間に作用力が働かない状態での測定も考えられる。これは、細胞26の大きさに関係するものであるが、細胞26が、シャーレ24の底面から高さ方向に、押圧部28aと比較して十分に高い場合である。
【0039】
このような場合、上述のフィードバック制御が行えないため、シャーレ24の底面と押圧部28aとの高さ方向の絶対位置を調べる必要があり、以下のような操作を行う。
【0040】
押圧部28aをシャーレ24の底面に接触する位置まで近付けた後、この位置から細胞26の高さを考慮した分だけ押圧部28aをシャーレ24の底面から離すように制御する。そして、この位置関係を保ちつつ測定を行う。
【0041】
この状態から以降のプロセスにおいては、水平方向変位センサ32から取り込まれたプローブ28の垂直延出部28cからの反射光の光量変化によって、垂直延出部28cの変形状態が光学的に検出されることになる。
【0042】
まず、プローブ28の押圧部28aに細胞26が接触する前で、且つ、シャーレ24の底面にプローブ28の押圧部28aが接している場合、押圧部28aには、シャーレ24の底面からの一定の摩擦力(図6の符号B参照)のみが作用しており、プローブ28の垂直延出部28cは、摩擦力Bに対応して水平方向へ変形した状態に維持される(図6の符号A参照)。なお、この状態において、プローブ28の垂直延出部28cの変形状態を初期変形量と称する。
【0043】
また、シャーレ24の底面にプローブ28の押圧部28aが非接触の場合、シャーレ24の底面からの摩擦力Bは発生しない(初期変形量はゼロになる)が、培養液の粘性等に基づく外的要因による不定量の摩擦力B(ノイズ)が発生することは考えられる。このような外的要因は、底面に押圧部28aが接触している場合にも考えられる。
【0044】
続いて、シャーレ24を図中矢印S方向へ更に移動させて、プローブ28の押圧部28aに細胞26を当接させると、押圧部28aには、細胞26の付着力に対応した押圧力が作用する。このとき、プローブ28のL字状先端部28bが水平方向に押圧されることによって、垂直延出部28cが上記初期変形量から更に変形し始める。これと同時に、プローブ28の反作用を受けることによって細胞26も変形し始める(図5(c)参照)。
【0045】
そして、シャーレ24(即ち、細胞26)の移動に伴ってプローブ28の垂直延出部28cの変形量(即ち、水平方向変位センサ32の出力信号レベル)が増加して行く(図6の符号C参照)。
【0046】
更にシャーレ24(即ち、細胞26)を移動させた場合において、垂直延出部28cの変形量に対応したプローブ28の反作用力が細胞26の付着力を上回ったとき(垂直延出部28cの変形状態が最大変形量となったとき)、細胞26は、シャーレ24の底面から引き剥がされることになる(図5(d)参照)。
【0047】
このとき、最大変形量にあったプローブ28の垂直延出部28cが初期変形量に戻るため、水平方向変位センサ32の出力信号レベルは、その最大値から初期値まで下がり(図6の符号D参照)、元の摩擦力Bのみの値となる。
【0048】
本実施の形態では、この出力信号の最大値から摩擦力Bを差演算した値即ちプローブ28の垂直延出部28cの最大変形量から初期変形量を差演算した値(図6中符号E参照)が、細胞26の付着力として検出される。
【0049】
また、図6に示したプローブ28の変形量と細胞26の移動量との関係は、細胞26が比較的硬質なものである場合の関係であるため、水平方向変位センサ32の出力レベルは、その最大値から初期値まで一気に下がる(図6の符号D参照)が、細胞26の粘性や弾性によっては、異なる関係を示す場合もある。例えば、細胞26が粘性の強いものであれば、シャーレ24から完全に剥がれるまでに水平方向変位センサ32の出力レベルが初期値まで一気にではなく、傾斜を有しながらゆっくりと下がることも考えられる。
【0050】
このように本実施の形態によれば、上述したプロセスを実行するだけで、1つ1つの細胞26の付着力を高精度に検出することができるため、成長過程における個々の細胞26の性質を精度良く評価することが可能になる。また、本実施の形態によれば、光学顕微鏡ユニットによって落射検鏡観察を行いながらプローブ28と細胞26との間の位置合わせを行うことができるため、プローブ28の押圧部28aを所望の細胞26に対して高精度に圧接させることが可能となる。更に、本実施の形態の微小体付着力測定装置は、温度やガス雰囲気が常時一定に保持された保温ケース4内に組み込まれているため、最適な培養環境の中で生きたままの細胞26の付着力の測定を行うことが可能となる。
【0051】
なお、上述した実施の形態では、プローブ28をシャーレ24に対して水平方向に相対的に押し出すことによって所望の細胞26を引き剥がしているが、逆に、相対的に引き戻すことによって細胞26を引き剥がすように構成しても同様の作用効果が実現される。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、任意面に付着している微小体の付着力だけを高精度且つ簡単に測定することができる微小体付着力測定装置及び微小体付着力測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る微小体付着力測定装置が組み込まれた顕微鏡システムの全体の構成を示す図。
【図2】本実施の形態に適用された微動XYステージ上に試料台を介してシャーレが載置されている状態を示す分解図。
【図3】本実施の形態に適用された垂直方向変位センサ及び水平方向変位センサとプローブとの間の配置関係を示す斜視図。
【図4】本実施の形態に適用された微動XYステージの構成を示す平面図。
【図5】本発明の一実施の形態に係る微小体付着力測定方法の動作説明図であって、 (a)は、プローブが細胞近傍に位置付けられた状態を示す図、(b)は、プローブの押圧部をシャーレの底面に接触或いは接近させた状態を示す図、(c)は、プローブの押圧部に細胞を当接させた状態を示す図、(d)は、細胞がシャーレの底面から引き剥がされた状態を示す図。
【図6】図5に示された動作状態において、プローブの変形量と細胞の移動量との関係を示す図。
【符号の説明】
24…シャーレ、26…細胞、28…プローブ、28a…押圧部、30…垂直方向変位センサ、32…水平方向変位センサ、48…水平変位検出回路、50…微動XYステージ。
Claims (16)
- 垂直及び水平方向に変位自在に構成されたプローブと、
前記プローブの先端の垂直方向の変位を光学的に検出する第1の変位センサと、
前記プローブを任意の面に対して相対的に水平方向へ移動させて、前記面に付着している複数の微小体のうち、所望の微小体のみに前記プローブの先端を圧接させる手段と、
前記所望の微小体を前記プローブの先端に圧接させた際に生じる前記プローブの水平方向の初期変形量,及び、前記プローブの先端によって前記面から前記所望の微小体が剥がれた際に生じる前記プローブの水平方向の最大変形量を光学的に検出する第2の変位センサと、
前記初期変形量と前記最大変形量との間に差演算を施すことによって、前記面に付着している前記所望の微小体の付着力を測定する手段と、
を備えている、
ことを特徴とする微小体付着力測定装置。 - 前記第1の変位センサにより前記プローブの先端の垂直方向の変位を光学的に検出するときに、前記面に前記プローブの先端の押圧部を接触させる、ことを特徴とする請求項1に記載の微小体付着力測定装置。
- 前記第1の変位センサにより前記プローブの先端の垂直方向の変位を光学的に検出するときに、前記面に前記プローブの先端の押圧部を近接させる、ことを特徴とする請求項1に記載の微小体付着力測定装置。
- 前記第1の変位センサからの垂直変位信号が一定値になるようにフィードバック回路によりフィードバック制御されている、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の微小体付着力測定装置。
- プローブ及び微小体を観察する光学顕微鏡をさらに備えている、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の微小体付着力測定装置。
- 前記面はシャーレの底面であり、シャーレの下から検鏡観察する、ことを特徴とする請求項5に記載の微小体付着力測定装置。
- 前記シャーレは、その全体が光学的に透明なガラス又はプラスチックによって形成されている、ことを特徴とする請求項6に記載の微小体付着力測定装置。
- 前記微小体付着力測定装置が組み込まれている保温ケースをさらに備えている、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の微小体付着力測定装置。
- 前記保温ケースはその内部の温度やガス雰囲気を一定に保持する、ことを特徴とする請求項8に記載の微小体付着力測定装置。
- 前記微小体は細胞である、ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の微小体付着力測定装置。
- プローブの先端の垂直方向の変位を光学的に検出しながら、前記プローブの先端を複数の微小体が付着している任意の面上の所望位置に位置決めする工程と、
前記プローブを前記面に対して相対的に水平方向へ移動させて、前記面に付着している前記複数の微小体のうち、所望の微小体のみに前記プローブの先端を圧接させる工程と、
前記所望の微小体を前記プローブの先端に圧接させた際に生じる前記プローブの水平方向の初期変形量を光学的に検出する工程と、
前記プローブの先端によって前記面から前記所望の微小体が剥がれた際に生じる前記プローブの水平方向の最大変形量を光学的に検出する工程と、
前記初期変形量と前記最大変形量との間に差演算を施すことによって、前記面に付着している前記所望の微小体の付着力を測定する工程と、
を備えている、
ことを特徴とする微小体付着力測定方法。 - 前記位置決めする工程と前記圧接させる工程との間に、前記面に前記プローブの先端の押圧部を接触させる工程をさらに備えている、ことを特徴とする請求項11に記載の微小体付着力測定方法。
- 前記位置決めする工程と前記圧接させる工程との間に、前記面に前記プローブの先端の押圧部を近接させる工程をさらに備えている、ことを特徴とする請求項11に記載の微小体付着力測定方法。
- 前記位置決めする工程と前記圧接させる工程とこれらの工程の間において、前記プローブ及び微小体を光学顕微鏡により観察する、ことを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載の微小体付着力測定方法。
- 前記微小体付着力測定装置は保温ケース内に組み込まれていて、前記保温ケースはその内部の温度やガス雰囲気を一定に保持する、ことを特徴とする請求項11乃至14のいずれか1項に記載の微小体付着力測定方法。
- 前記微小体は細胞である、ことを特徴とする請求項11乃至15のいずれか1項に記載の微小体付着力測定方法。
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