JPH09145725A - 微小体付着力測定装置及び微小体付着力測定方法 - Google Patents

微小体付着力測定装置及び微小体付着力測定方法

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JPH09145725A
JPH09145725A JP30421095A JP30421095A JPH09145725A JP H09145725 A JPH09145725 A JP H09145725A JP 30421095 A JP30421095 A JP 30421095A JP 30421095 A JP30421095 A JP 30421095A JP H09145725 A JPH09145725 A JP H09145725A
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方衛 角田
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Shuzo Mishima
周三 三島
Yoshihiro Kami
喜裕 上
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Abstract

(57)【要約】 【課題】任意面に付着している所望の微小体の付着力だ
けを高精度且つ簡単に測定可能な微小体付着力測定装置
及び微小体付着力測定方法を提供する。 【解決手段】垂直及び水平方向に変位自在なプローブ2
8と、プローブの押圧部28aを細胞26が付着してい
るシャーレ24の底面上の所望位置に位置決めするよう
に、プローブ先端の垂直方向の変位を光学的に検出する
垂直方向変位センサ30と、プローブをシャーレに対し
て相対的に水平方向へ移動させて、細胞にプローブの押
圧部を圧接させる微動XYステージ50と、細胞を押圧
部に圧接させた際に生じるプローブの水平方向の初期変
形量、及び、押圧部によってシャーレの底面から細胞が
剥がれた際に生じるプローブの水平方向の最大変形量を
光学的に検出する水平方向変位センサ32と、初期変形
量と最大変形量に差演算を施して細胞の付着力を測定す
る水平変位検出回路48とを備える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば基板等に付
着している微小体の付着力を測定する微小体付着力測定
装置及び微小体付着力測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、例えば医療分野においてチタン材
から成る人口骨又はセラミックス材から成る歯科材料等
の生体親和力の測定や、工業分野において異種の材料相
互の接合力の測定等に微小体付着力測定装置が必要とさ
れている。
【0003】特に、基板上に培養された複数の細胞の付
着力を測定する場合、この基板を遠心分離器にかけた
後、細胞の質量と細胞に加えられた遠心力、基板から剥
がれた細胞の個数と基板上に残った細胞の個数の割合に
対して統計的な処理を施すことによって、基板に対する
細胞の付着力が測定されている(第1の従来技術)。
【0004】また、微小体に作用する力を検出する装置
として、例えば特開昭62−130302号公報には、
尖鋭化した探針が自由端に設けられたカンチレバーによ
って、探針と微小体表面との間に働く微弱な力を検出し
て、微小体表面の3次元情報を得る原子間力顕微鏡(A
FM)が開示されている(第2の従来技術)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、第1の
従来技術によれば、複数の細胞のトータル的な付着力評
価は可能であるが、個々の細胞の付着力を独立且つ直接
に測定することはできなかった。
【0006】また、第2の従来技術では、例えば生体細
胞程度の大きさの微小体が基板に付着している場合、こ
の微小体の付着力を測定するために、微小体に力を加え
て基板から微小体を剥がすように動作制御することは困
難である。なぜなら、AFMは、探針と微小体表面との
間において、微小体の面法線方向に働く力によって生じ
るカンチレバーの変位量を検出するように構成されてい
るからである。仮に、面法線方向に微小体を摘み上げる
ようにカンチレバーを制御できたとしても、そのときの
カンチレバーの変位量に基づいて、カンチレバーと微小
体との間の付着力、微小体と基板との間の付着力を分離
して検出することは難しい。
【0007】本発明は、上述したような課題を解決する
ためになされており、その目的は、任意面に付着してい
る所望の微小体の付着力だけを高精度且つ簡単に測定す
ることができる微小体付着力測定装置及び微小体付着力
測定方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
るために、本発明の微小体付着力測定装置は、垂直及び
水平方向に変位自在に構成されたプローブと、前記プロ
ーブの先端の垂直方向の変位を光学的に検出する第1の
変位センサと、前記プローブを前記面に対して相対的に
水平方向へ移動させて、前記面に付着している前記複数
の微小体のうち、所望の微小体のみに前記プローブの先
端を圧接させる手段と、前記所望の微小体を前記プロー
ブの先端に圧接させた際に生じる前記プローブの水平方
向の初期変形量、及び、前記プローブの先端によって前
記面から前記所望の微小体が剥がれた際に生じる前記プ
ローブの水平方向の最大変形量を光学的に検出する第2
の変位センサと、前記初期変形量と前記最大変形量との
間に差演算を施すことによって、前記面に付着している
前記所望の微小体の付着力を測定する手段とを備えてい
る。
【0009】また、本発明の微小体付着力測定方法は、
プローブの先端の垂直方向の変位を光学的に検出しなが
ら、前記プローブの先端を複数の微小体が付着している
任意の面上の所望位置に位置決めする工程と、前記プロ
ーブを前記面に対して相対的に水平方向へ移動させて、
前記面に付着している前記複数の微小体のうち、所望の
微小体のみに前記プローブの先端を圧接させる工程と、
前記所望の微小体を前記プローブの先端に圧接させた際
に生じる前記プローブの水平方向の初期変形量を光学的
に検出する工程と、前記プローブの先端によって前記面
から前記所望の微小体が剥がれた際に生じる前記プロー
ブの水平方向の最大変形量を光学的に検出する工程と、
前記初期変形量と前記最大変形量との間に差演算を施す
ことによって、前記面に付着している前記所望の微小体
の付着力を測定する工程とを有する。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態に係
る微小体付着力測定装置について、添付図面を参照して
説明する。図1には、本実施の形態の微小体付着力測定
装置が組み込まれた顕微鏡システムの全体の構成が示さ
れている。
【0011】図1に示すように、顕微鏡システムは、鏡
体2の下部側に配置された光学顕微鏡ユニットと、鏡体
2の上部側に取り付けられた測定ユニットとを備えてい
る。測定ユニットは、その全体が光学的に透明なガラス
又はプラスチック製の保温ケース4で覆われており、本
実施の形態の微小体付着力測定装置は、この保温ケース
4内に組み込まれている。この保温ケース4には、温度
コントローラ6及びガス導入コントローラ8を介してガ
スボンベ10が接続されており、付着力測定時における
保温ケース4内の温度やガス雰囲気が常時一定(本実施
の形態では、30℃〜40℃程度の範囲)に保持される
ように構成されている。なお、本実施の形態において、
ガスボンベ10には、例えば、細胞等の生体試料を用い
る場合には炭酸ガスが充填され、セラミック等の生体以
外の試料を用いる場合にはドライ窒素が充填される。
【0012】光学顕微鏡ユニットは、保温ケース4内に
配置され且つ粗動XYつまみ12を操作することによっ
て水平面内(XY平面内)を粗動自在に構成された粗動
XYステージ14と、この粗動XYステージ14に形成
された粗動開口部14aを介して光源16からの照明光
を後述する微小体26及びプローブ28方向へ照射させ
ると共に、微小体26及びプローブ28から反射した反
射光を取り込む対物レンズ18と、この対物レンズ18
によって取り込まれた反射光に所定の画像処理を施して
モニタテレビ20上に光学顕微鏡像を画像化させる固体
撮像素子カメラ22とを備えている。このような光学顕
微鏡ユニットによれば、鏡体2の下方から微小体26及
びプローブ28に対する落射検鏡観察を行うことができ
る。
【0013】また、プローブ28上方の空間に微小体観
察用の照明系を設け、微小体26を透過した透過光を対
物レンズ18で取り込み、この透過光に上述の落斜検鏡
観察と同様の画像処理を施して、透過検鏡観察を行うこ
とも可能である。
【0014】測定ユニットの保温ケース4内に組み込ま
れた微小体付着力測定装置は、シャーレ24内に培養さ
れてシャーレ24の底面に付着している複数の細胞のう
ち、所望の細胞26を個別に押圧してシャーレ24の底
面から剥がすことができるように構成されたL字状のプ
ローブ28と、このプローブ28のL字状先端に突設さ
れた押圧部28aが細胞26に対して所望の位置関係に
維持されるように、プローブ28のL字状先端の垂直方
向の変位を光学的に検出する垂直方向変位センサ30
と、プローブ28の押圧部28aによって細胞26をシ
ャーレ24の底面から剥がす際に生じるプローブ28の
水平方向の変位を光学的に検出する水平方向変位センサ
32とを備えている。
【0015】ところで、ここで言う所望の位置関係は、
例えば、押圧部28aが水平方向に細胞26を押圧する
力点が、細胞26の高さのほぼ中点であることが好まし
い。なお、本実施の形態に適用されたプローブ28は、
ステンレス箔製の板ばねで構成されたL字状片持ち梁で
あり、押圧部28aには、三角錐形状のダイアモンド探
針若しくは半導体プロセスでプローブ28と一体に作製
されるシリコン製、酸化シリコン製、そして窒化シリコ
ン製等の探針が適用されている。また、シャーレ24
は、その全体が光学的に透明なガラス又はプラスチック
によって形成されている。
【0016】また、ここで使用するL字状片持ち梁は、
長さ15〜30mm、厚さ50〜80μm、幅1mmを
満足することが好ましいが、本発明と同様の目的に使用
されるものであれば、この数値に特に限定されることは
ない。
【0017】また、プローブ28,垂直方向変位センサ
30及び水平方向変位センサ32は、共に、シャーレ2
4上に位置付けられるように、微動Zステージ34に支
持されており、この微動Zステージ34は、粗動Zステ
ージ36を介して鏡体2に支持されている。
【0018】粗動Zステージ36は、粗動Zつまみ38
を操作することによって、垂直方向(Z方向)へ上下粗
動自在に構成されており、この粗動Zステージ36をZ
方向へ粗動させることによって、微動Zステージ34と
共にプローブ28,垂直方向変位センサ30及び水平方
向変位センサ32がシャーレ24に対して垂直方向へ上
下粗動するように構成されている。
【0019】微動Zステージ34には、圧電体としてア
クチュエータ(図示しない)が適用されており、コンピ
ュータ40からフィードバック回路42を介して出力さ
れた制御信号に基づいて、駆動回路44がアクチュエー
タを駆動することによって、垂直方向変位センサ30及
び水平方向変位センサ32と共にプローブ28をシャー
レ24の底面に対して垂直方向へ上下微動させるように
構成されている。
【0020】また、本実施の形態に適用された垂直方向
変位センサ30及び水平方向変位センサ32とプローブ
28との間の配置関係において、特に図3に示すよう
に、垂直方向変位センサ30は、プローブ28のL字状
先端部28bに垂直変位測定用レーザー光を出射可能に
構成されている。そして、このプローブ28のL字状先
端部28bから反射した反射光は、再び垂直変位センサ
30によって取り込まれた後、図1に示すように、垂直
変位検出回路46によって所定の変位信号に変換され、
フィードバック回路42を介してコンピュータ40に出
力されるように構成されている。
【0021】なお、垂直方向変位センサ30からの垂直
変位測定用レーザー光が、L字状先端部28bの中でも
押圧部28aの裏面にあたる部分に照射されるように、
垂直方向変位センサ30を位置決めすることが好まし
い。
【0022】一方、水平方向変位センサ32は、図3に
示すように、プローブ28の垂直延出部28cに水平変
位測定用レーザー光を出射可能に構成されている。そし
て、このプローブ28の垂直延出部28cから反射した
反射光は、再び水平方向変位センサ32によって取り込
まれた後、図1に示すように、水平変位検出回路48に
よって所定の変位信号に変換されてコンピュータ40に
出力されるように構成されている。
【0023】このような構成において、垂直方向変位セ
ンサ30及び水平方向変位センサ32には、例えば、反
射光の光量変化に基づいてプローブ28の変位を測定可
能なフォトニックセンサ(米国MTI社製:MTI−2
000)が用いられており、0.5nm程度の分解能を
有している。
【0024】なお、このフォトニックセンサは、センサ
の感度や製品により測定に最適な位置が異なる。そこ
で、センサとプローブ28との最適な位置への位置決め
は、プローブ28に対してセンサを移動させることで行
っている。
【0025】また、フィードバック回路42は、垂直変
位検出回路46から出力される変位信号が常時一定値と
なるように、フィードバック制御を行うことができるよ
うに構成されている。なお、フィードバック制御の制御
値は、コンピュータ40によって適宜調整することがで
きるように構成されている。
【0026】更に、コンピュータ40は、プローブ28
の垂直及び水平方向への変位によって変化する上記夫々
の変位信号に基づいて、プローブ28の垂直方向の変位
量及び水平方向の変位量を夫々算出してモニタ表示する
ことができるように構成されている。
【0027】図1及び図2に示すように、シャーレ24
は、微動XYステージ50に保持された試料台52上に
載置されており、微動XYステージ50は、上記粗動X
Yステージ14に固定されている。従って、粗動XYつ
まみ12を操作することによって、微動XYステージ5
0は、粗動XYステージ14と共に水平面内(XY平面
内)を移動することができる。
【0028】本実施の形態において、微動XYステージ
50及び試料台52には、夫々、粗動XYステージ14
の粗動開口部14aを介して伝波される照明光がシャー
レ24の底面に照射されるように、微動開口部50a及
び試料台開口部52a(図2参照)が形成されており、
試料台52は、微動XYステージ50の微動開口部50
a内に嵌合保持されるように構成されている。なお、試
料台52は、厚さ1mm程度のステンレス製の円板で構
成されており、その中央部に直径15mm程度の試料台
開口部52aが形成されている。また、シャーレ24
は、その自重を介して試料台52との間の生じる摩擦力
によって、試料台52上に固定されるように構成されて
いるが、適宜必要に応じてホルダ等の固定部材(図示し
ない)によって固定してもよい。また、上記粗動XYス
テージ14の粗動開口部14aには、試料台52の代わ
りに、例えば、シャーレ24内の温度コントロールが精
密に行われるように、ヒータを組み込んだガラス板を嵌
合保持させてもよい。
【0029】図1及び図4に示すように、本実施の形態
に適用された微動XYステージ50は、微動開口部50
aの周囲に複数の貫通溝54が形成されたステンレス製
の一体型切り抜きばね部材から構成されており、複数の
貫通溝54の外側に形成され且つ粗動XYステージ14
(図1参照)に固定された固定部56aと、複数の貫通
溝54を含めた内側に形成され且つ固定部56aに対し
てXY平面内を任意方向へ移動自在な移動部56bとを
備えている。なお、微動開口部50aは、移動部56b
に係属している。
【0030】複数の貫通溝54には、移動部56bがX
Y平面内で任意方向へ移動できるように構成された第1
ないし第4のリンク機構部58a,58b,58c,5
8dと、所定方向へ押圧力を作用させることによって、
第1ないし第4のリンク機構部58a,58b,58
c,58dを介して移動部56bをXY方向へ移動させ
る第1及び第2のてこ部60a,60bとが設けられて
いる。
【0031】第1及び第2のてこ部60a,60bに
は、これらてこ部60a,60bに所定の押圧力を作用
させるための第1及び第2の圧電素子62a,62bが
組み込まれている。これら第1及び第2の圧電素子62
a,62bは、夫々、図1に示すように駆動回路64か
らフィードバック回路66を介してコンピュータ40に
接続されており、コンピュータ制御されている。具体的
には、移動部56bを図中X方向へ移動させるときに
は、コンピュータ40からの指令を受けた駆動回路64
によって第1の圧電素子62aを動作させ、また、移動
部56bを図中Y方向へ移動させるときには、コンピュ
ータ40からの指令を受けた駆動回路64によって第2
の圧電素子62bを動作させる。
【0032】また、第1及び第2の圧電素子62a,6
2bには、これら圧電素子62a,62bが変位するこ
とによって生じる歪みを検出するための第1及び第2の
歪みゲージ68a,68bが貼り付けられている。これ
ら第1及び第2の歪みゲージ68a,68bは、夫々、
図1に示すように変位検出回路70からフィードバック
回路66を介してコンピュータ40に接続されており、
各歪みゲージ68a,68bからの出力信号の変化量が
常時一定となるように(即ち、第1及び第2の圧電素子
62a,62bのヒステリシスが除去されるように)フ
ィードバック制御されている。なお、このフィードバッ
ク制御の制御値は、コンピュータ40によって適宜調整
することができるように構成されている。
【0033】本実施の形態において、第1の圧電素子6
2aには、Tokin製の積層型圧電体(5mm×5m
m×9mm)が、また、第2の圧電素子62a,62b
には、Tokin製の積層型圧電体(5mm×5mm×
18mm)が適用されており、共に、駆動回路64から
最大100Vの電圧を印加することができるように構成
されている。なお、例えば100Vの電圧が印加された
とき、第1及び第2の圧電素子62a,62bは、夫々
約6.5μm,約12μm程度伸びるように構成されて
いる。このような構成を有する微動XYステージ50に
よれば、比較的低い印加電圧によって、約150μm程
度の大きな変位量を確保できると共に、数十ミクロンオ
ーダーの微小体即ち細胞26の測定もできる直交性の良
いXYステージが実現されることになる。
【0034】次に、本発明の一実施の形態に係る微小体
付着力測定方法について、図1,図5及び図6を参照し
て説明する。なお、本実施の説明に際し、シャーレ24
内には、所定の培養液(例えば、水)が収容されてお
り、この培養液によって培養された微小体としての細胞
26がシャーレ24の底面に付着しているものと仮定す
る。
【0035】この状態において、光学顕微鏡ユニットに
よってシャーレ24に対する落射検鏡観察を行いなが
ら、粗動XYつまみ12を操作して、シャーレ24とプ
ローブ28とのXY方向の相対的な位置を移動させ、ま
た、粗動Zつまみ38を操作して、垂直方向変位センサ
30及び水平方向変位センサ32と共にプローブ28を
シャーレ24内の所望の細胞26の近傍上部に位置付け
る(図5(a)参照)。
【0036】この後、微動Zステージ34を駆動するこ
とによってプローブ28のL字状先端を微動させなが
ら、プローブ28の押圧部28aをシャーレ24の底面
に接触或いは近接させる。このとき、垂直方向変位セン
サ30から取り込まれたプローブ28のL字状先端部2
8bからの反射光の光量変化を検出することによって、
シャーレ24の底面に対するプローブ28の押圧部28
aの接触或いは近接程度が光学的に確認される。この場
合、押圧部28aとシャーレ24の底面との間に働く作
用力(接触力或いは近接力)は、細胞26の付着力より
も弱くなるようにフィードバック制御される(図5
(b)参照)。
【0037】次に、このようなプローブ28の押圧部2
8aとシャーレ24の底面との間の位置関係が一定に保
たれるように、微動Zステージ34をフィードバック制
御しながら、駆動回路64を介して第1及び第2の圧電
素子62a,62b(図4参照)に所定の電圧を印加し
て微動XYステージ50を駆動させることによって、こ
の微動XYステージ50上に試料台52を介して載置さ
れたシャーレ24を図中矢印S方向へ移動させる(図5
(b)参照)。
【0038】また、押圧部28aとシャーレ24の底面
との間に作用力が働かない状態での測定も考えられる。
これは、細胞26の大きさに関係するものであるが、細
胞26が、シャーレ24の底面から高さ方向に、押圧部
28aと比較して十分に高い場合である。
【0039】このような場合、上述のフィードバック制
御が行えないため、シャーレ24の底面と押圧部28a
との高さ方向の絶対位置を調べる必要があり、以下のよ
うな操作を行う。
【0040】押圧部28aをシャーレ24の底面に接触
する位置まで近付けた後、この位置から細胞26の高さ
を考慮した分だけ押圧部28aをシャーレ24の底面か
ら離すように制御する。そして、この位置関係を保ちつ
つ測定を行う。
【0041】この状態から以降のプロセスにおいては、
水平方向変位センサ32から取り込まれたプローブ28
の垂直延出部28cからの反射光の光量変化によって、
垂直延出部28cの変形状態が光学的に検出されること
になる。
【0042】まず、プローブ28の押圧部28aに細胞
26が接触する前で、且つ、シャーレ24の底面にプロ
ーブ28の押圧部28aが接している場合、押圧部28
aには、シャーレ24の底面からの一定の摩擦力(図6
の符号B参照)のみが作用しており、プローブ28の垂
直延出部28cは、摩擦力Bに対応して水平方向へ変形
した状態に維持される(図6の符号A参照)。なお、こ
の状態において、プローブ28の垂直延出部28cの変
形状態を初期変形量と称する。
【0043】また、シャーレ24の底面にプローブ28
の押圧部28aが非接触の場合、シャーレ24の底面か
らの摩擦力Bは発生しない(初期変形量はゼロになる)
が、培養液の粘性等に基づく外的要因による不定量の摩
擦力B(ノイズ)が発生することは考えられる。このよ
うな外的要因は、底面に押圧部28aが接触している場
合にも考えられる。
【0044】続いて、シャーレ24を図中矢印S方向へ
更に移動させて、プローブ28の押圧部28aに細胞2
6を当接させると、押圧部28aには、細胞26の付着
力に対応した押圧力が作用する。このとき、プローブ2
8のL字状先端部28bが水平方向に押圧されることに
よって、垂直延出部28cが上記初期変形量から更に変
形し始める。これと同時に、プローブ28の反作用を受
けることによって細胞26も変形し始める(図5(c)
参照)。
【0045】そして、シャーレ24(即ち、細胞26)
の移動に伴ってプローブ28の垂直延出部28cの変形
量(即ち、水平方向変位センサ32の出力信号レベル)
が増加して行く(図6の符号C参照)。
【0046】更にシャーレ24(即ち、細胞26)を移
動させた場合において、垂直延出部28cの変形量に対
応したプローブ28の反作用力が細胞26の付着力を上
回ったとき(垂直延出部28cの変形状態が最大変形量
となったとき)、細胞26は、シャーレ24の底面から
引き剥がされることになる(図5(d)参照)。
【0047】このとき、最大変形量にあったプローブ2
8の垂直延出部28cが初期変形量に戻るため、水平方
向変位センサ32の出力信号レベルは、その最大値から
初期値まで下がり(図6の符号D参照)、元の摩擦力B
のみの値となる。
【0048】本実施の形態では、この出力信号の最大値
から摩擦力Bを差演算した値即ちプローブ28の垂直延
出部28cの最大変形量から初期変形量を差演算した値
(図6中符号E参照)が、細胞26の付着力として検出
される。
【0049】また、図6に示したプローブ28の変形量
と細胞26の移動量との関係は、細胞26が比較的硬質
なものである場合の関係であるため、水平方向変位セン
サ32の出力レベルは、その最大値から初期値まで一気
に下がる(図6の符号D参照)が、細胞26の粘性や弾
性によっては、異なる関係を示す場合もある。例えば、
細胞26が粘性の強いものであれば、シャーレ24から
完全に剥がれるまでに水平方向変位センサ32の出力レ
ベルが初期値まで一気にではなく、傾斜を有しながらゆ
っくりと下がることも考えられる。
【0050】このように本実施の形態によれば、上述し
たプロセスを実行するだけで、1つ1つの細胞26の付
着力を高精度に検出することができるため、成長過程に
おける個々の細胞26の性質を精度良く評価することが
可能になる。また、本実施の形態によれば、光学顕微鏡
ユニットによって落射検鏡観察を行いながらプローブ2
8と細胞26との間の位置合わせを行うことができるた
め、プローブ28の押圧部28aを所望の細胞26に対
して高精度に圧接させることが可能となる。更に、本実
施の形態の微小体付着力測定装置は、温度やガス雰囲気
が常時一定に保持された保温ケース4内に組み込まれて
いるため、最適な培養環境の中で生きたままの細胞26
の付着力の測定を行うことが可能となる。
【0051】なお、上述した実施の形態では、プローブ
28をシャーレ24に対して水平方向に相対的に押し出
すことによって所望の細胞26を引き剥がしているが、
逆に、相対的に引き戻すことによって細胞26を引き剥
がすように構成しても同様の作用効果が実現される。
【0052】
【発明の効果】本発明によれば、任意面に付着している
微小体の付着力だけを高精度且つ簡単に測定することが
できる微小体付着力測定装置及び微小体付着力測定方法
を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る微小体付着力測定
装置が組み込まれた顕微鏡システムの全体の構成を示す
図。
【図2】本実施の形態に適用された微動XYステージ上
に試料台を介してシャーレが載置されている状態を示す
分解図。
【図3】本実施の形態に適用された垂直方向変位センサ
及び水平方向変位センサとプローブとの間の配置関係を
示す斜視図。
【図4】本実施の形態に適用された微動XYステージの
構成を示す平面図。
【図5】本発明の一実施の形態に係る微小体付着力測定
方法の動作説明図であって、(a)は、プローブが細胞
近傍に位置付けられた状態を示す図、(b)は、プロー
ブの押圧部をシャーレの底面に接触或いは接近させた状
態を示す図、(c)は、プローブの押圧部に細胞を当接
させた状態を示す図、(d)は、細胞がシャーレの底面
から引き剥がされた状態を示す図。
【図6】図5に示された動作状態において、プローブの
変形量と細胞の移動量との関係を示す図。
【符号の説明】
24…シャーレ、26…細胞、28…プローブ、28a
…押圧部、30…垂直方向変位センサ、32…水平方向
変位センサ、48…水平変位検出回路、50…微動XY
ステージ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 玲子 茨城県つくば市千現1丁目2番1号 科学 技術庁金属材料技術研究所内 (72)発明者 三島 周三 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内 (72)発明者 上 喜裕 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 垂直及び水平方向に変位自在に構成され
    たプローブと、 前記プローブの先端の垂直方向の変位を光学的に検出す
    る第1の変位センサと、 前記プローブを前記面に対し
    て相対的に水平方向へ移動させて、前記面に付着してい
    る前記複数の微小体のうち、所望の微小体のみに前記プ
    ローブの先端を圧接させる手段と、 前記所望の微小体を前記プローブの先端に圧接させた際
    に生じる前記プローブの水平方向の初期変形量、及び、
    前記プローブの先端によって前記面から前記所望の微小
    体が剥がれた際に生じる前記プローブの水平方向の最大
    変形量を光学的に検出する第2の変位センサと、 前記初期変形量と前記最大変形量との間に差演算を施す
    ことによって、前記面に付着している前記所望の微小体
    の付着力を測定する手段とを備えていることを特徴とす
    る微小体付着力測定装置。
  2. 【請求項2】 プローブの先端の垂直方向の変位を光学
    的に検出しながら、前記プローブの先端を複数の微小体
    が付着している任意の面上の所望位置に位置決めする工
    程と、 前記プローブを前記面に対して相対的に水平方向へ移動
    させて、前記面に付着している前記複数の微小体のう
    ち、所望の微小体のみに前記プローブの先端を圧接させ
    る工程と、 前記所望の微小体を前記プローブの先端に圧接させた際
    に生じる前記プローブの水平方向の初期変形量を光学的
    に検出する工程と、 前記プローブの先端によって前記面から前記所望の微小
    体が剥がれた際に生じる前記プローブの水平方向の最大
    変形量を光学的に検出する工程と、 前記初期変形量と前記最大変形量との間に差演算を施す
    ことによって、前記面に付着している前記所望の微小体
    の付着力を測定する工程とを有することを特徴とする微
    小体付着力測定方法。
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