JP3573554B2 - 人工血管及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、血管疾患の治療に際して、生体血管のバイパス術や置換術に使用される人工血管に関するものである。更に詳しくは、生体血管の内弾性板に類似下構造を人工血管の内腔面に形成することによって、血液の凝固と血漿蛋白の付着及び細胞の過剰な成長を制御し、小口径でも内膜肥厚を起こさず、高い開存性を有する人工血管及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
大腿動脈から膝窩動脈、更に脛骨、腓骨動脈を満足に再建できる内径3〜6mmの小口径人工血管は未だに無く、この領域の動脈再建には自己静脈が主に使用されているのが現状である。
小口径人工血管では、血流量が少なく血栓閉塞が生じ易いため、植え込み初期の優れた抗血栓性が要求される。また、植え込み後数ヶ月で宿主動脈や周辺組織から新生の細胞や組織が伸展してくるため、これらを安定して生着させることのできる足場を提供する材料であることが重要である。
例えば膝窩動脈再建用のテフロン製人工血管は、疎水性が高く、血液や蛋白質を付着しない為、抗血栓性は良好であるが、細胞や組織が生着する足場が無いため、パンヌスや内膜肥厚を生じ、閉塞し易いという欠点がある。
【0003】
また、ゼラチンやコラーゲンでシールしたポリエステル製の人工血管は、細胞や組織の足場は有るが、抗血栓性が悪く植え込み初期で血栓閉塞してしまうという欠点を有している。
そこで、我々はウシの内胸動脈やヒトの臍帯動脈の内弾性板に存在するエラスチンが抗血栓性と組織適合性に優れていることに着目し、エラスチンをコアセルベーションさせた後架橋することで、内弾性板に存在する構造と同様の三次元構造を持つエラスチン層が構築できることを見出し、先に特願平06−171095号にて、合成樹脂からなる人工血管の内腔面にエラスチンを固定した人工血管およびその製造方法を開示した。
【0004】
しかしながら、このような方法ではエラスチンが脱離し易く、長期間血流下にさらされると脱離部から血栓形成や内膜肥厚が生じ易いという問題を有している。 また、他にエラスチンを用いた人工血管では、特開平03−41963号公報や特開平03−254753号公報などがあるが、これらは合成高分子中やフィブリン蛋白中にエラスチンを混合し成形したものであるため、構築された血液接触面はエラスチンと合成樹脂またはフィブリン蛋白質との混合物表面であり、エラスチンを主成分とする生体血管の内弾性板表面とは大きく構造が異なるし、エラスチン自体の三次元構造も内弾性板中の構造と全く異なるため、本来、内胸動脈表面や臍帯動脈表面が示す血液適合性や組織適合性は得られない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
先に、特願平06−171095号で開示した人工血管及びその製造方法においては、人工血管基材である管状の合成樹脂とエラスチン又は人工血管基材の内腔面上に設けたコラーゲン層もしくはゼラチン層とエラスチンとの親和性が悪く、血流下に長期間さらされた場合、エラスチン層が脱離し、エラスチン脱離部から血栓形成が生じたり細胞の過剰成長が生じ、結果として人工血管の内膜肥厚や狭窄、閉塞を引き起こす可能性があった。
本発明は、従来のこのような問題点を解決しようとするもので、長期間血流下にあってもエラスチン層が脱離せず、抗血栓性と組織適合性を兼ね備えた人工血管内腔面を有し優れた開存性を有する人工血管を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、先に特願平06−171095号で開示した人工血管及びその製造方法において、管状の合成樹脂からなる人工血管基材の内腔面上に直接又は予め構築したコラーゲン層もしくはゼラチン層の上にエラスチン層を構築するのではなく、管状の合成樹脂からなる人工血管基材に予め熱又は架橋剤によって架橋されたアルブミン層を設け、この上にエラスチン層を設けることでエラスチン層の人工血管基材への接着を改善しエラスチンの効果を長期間持続させることを特徴とする人工血管及びその製造方法に関するものである。
すなわち、管状の人工血管基材の内腔面上に少なくともアルブミン層とエラスチン層の2層を有することを特徴とする人工血管である。
【0007】
本発明者らは、物質間の親和性は、物質間の疎水−疎水相互作用の強度又は親水−親水相互作用の強度によって支配されることに注目し、エラスチンがそのアミノ酸組成において非極性アミノ酸であるグリシン、アラニン、プロリン、バリンを多く含み、極性アミノ酸であるアスパラギン酸、グルタミン、リジン、ヒスチジン、アルギニンをわずかにしか含まない疎水性の高い蛋白質であり、(Norman T. Soskel, Terril B. Wolt, and Lawrence B. Sandberg, METHOD IN ENZYMOLOGY, Vol.144 196−214 (1987))、同様に疎水性蛋白質であるアルブミンと疎水−疎水相互作用で良好な親和性を示すことを見いだし、更に検討を進めて本発明を完成するに至った。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で管状の人工血管基材の壁面内及び内腔面上にアルブミン層を構築する工程において、アルブミン溶液に加える温度は50〜80℃が好ましく、回転速度は用いるアルブミン溶液の濃度にもよるが、1〜100rpmが好ましい。この理由は、温度が低すぎるとアルブミンが架橋されずアルブミン層が得られないし、温度が高過ぎるとアルブミン溶液中に気泡が発生しやすく構築したアルブミン層表面に凹凸が生じるためである。また、回転速度が1rpm未満であるとアルブミン溶液が人工血管基材の内腔の一部分に溜まってしまうため人工血管基材の内腔面上に均一なアルブミン層を形成することができないし、回転速度が100rpmより速いと、アルブミン溶液が人工血管基材の外壁面に移行し、人工血管基材の内腔表面上に十分な厚さのアルブミン層が形成できないためである。
【0009】
また、本発明で管状の人工血管基材の内腔面上にアルブミン層を構築する工程において、アルブミンを人工血管基材の壁面内及び内腔表面に含浸もしくはコーティングした後、加熱する時間は、アルブミン溶液の濃度にもよるが1分〜5時間が好ましい。この理由は加熱時間が短いと充分にアルブミンが架橋されないし、時間が長すぎると架橋アルブミンが熱分解してしまうためである。
また、本発明で用いることのできるアルブミンは、特に限定はしないがウシ血清アルブミン、ヒト血漿アルブミンなどの動物由来アルブミンが使用できる。
また、本発明でアルブミンを溶解する水又は緩衝溶液は特に限定はしないが、血液の流路として生体内に留置するためエンドトキシンなどの発熱性物資を含有しないものが望ましい。
【0010】
また、本発明で用いることのできるアルブミン溶液中のアルブミン濃度は、水又は緩衝溶液に対して1〜50重量%であることが好ましい。この理由は、濃度が低すぎると加熱してもアルブミンの架橋物が得られないし、得られても架橋物中のアルブミン密度が低いため得られたアルブミン層の強度が低く人工血管として使用できないし、また、濃度が高すぎると溶液の粘度が高くなり過ぎ管状の人工血管基材の壁面内に充分含浸することができないし、管状の人工血管基材の内腔面上に均一な架橋層を構築することができないためである。
【0011】
また、本発明の各工程においてアルブミン架橋物やアルブミン層、あるいはコアセルベーションさせたエラスチン層を架橋させる架橋剤としては、ジアルデヒド化合物や水溶性多官能性エポキシ化合物が利用できるが、中でも水溶性エポキシ化合物は、アミノ基とカルボキシル基の両方の官能基と反応でき、また、架橋後は柔らかい蛋白層を与えるため生体血管に近いコンプライアンスを得ることができ特に好ましく、例えばデナコールEX−614、デナコールEX−614B、デナコールEX−521(ナガセ化成工業(株)製)などが使用できる。
【0012】
また、本発明で用いることのできるエラスチンは特に限定しないが、ブタ大動脈由来エラスチン、ウシ頸靱帯由来エラスチン、ウシ肺由来エラスチン、ウシ大動脈由来エラスチン、ヒト肺由来エラスチン、ヒト大動脈由来エラスチン、ヒト臍帯動脈由来エラスチンなどのエラスチン、又はこれらを熱蓚酸処理によって水溶性にしたα−エラスチンもしくはβ−エラスチン、アルカリエタノール処理によって水溶性にしたκ−エラスチン、ペプシン、エラスターゼなどの酵素で処理し水溶性にしたエラスチンタンパク質などが挙げられる。中でも組織適合性と抗血栓性の点でヒト大動脈由来エラスチンもしくはヒト臍帯動脈由来エラスチンが望ましく、その理由の詳細は不明であるが、エラスチンはその由来部位と動物の種類によって若干アミノ酸組成が異なり、ヒト大動脈由来エラスチンもしくはヒト臍帯動脈由来エラスチンの有するアミノ酸組成では特に架橋後の表面を平滑にできるため、血液の凝固活性を引き起こし難いと考えられる。
【0013】
また、本発明で使用する管状の人工血管基材は、血液の流路としてマクロファージなどの放出する過酸化物分解酵素や加水分解酵素の存在する生体内に長期間留置するため、生体内で酵素などにより分解されず、かつ毒性がなく、また血圧の変動に充分耐えられる材料であることが必要で、その材料としては、ポリウレタン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレンなどの材料が好ましい。また、管状の合成樹脂の内腔面にアルブミンを強固に固定するためには、内腔面の構造は多孔性、繊維を編んだもの、もしくは繊維が積み重なった構造のものが好ましい。その理由はこのような構造の材料ではアルブミンが内腔面の孔や繊維間に入り込み強いアンカー効果が得られるためである。
【0014】
また、管状の人工血管基材の内腔面上に設けたアルブミン層上に水溶性エラスチンをコアセルベーションさせる工程において、水溶性エラスチンをコアセルベーションさせる緩衝溶液はpH=4〜7の範囲のものであれば良く特に限定はしない。
中でもpH=5で充分な緩衝能を持つクエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液、クエン酸/水酸化ナトリウム緩衝液、酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液、リン酸緩衝液、リン酸二水素カリウム/リン酸水素二ナトリウム緩衝液、コハク酸/水酸化ナトリウム緩衝液などが水溶性エラスチンをコアセルベーショーンさせるのに適している。これは水溶性エラスチンの等電点がこの付近にあるため電気的に中和されたエラスチンが疎水−疎水相互作用によって会合し、凝集を生じやすく、コアセルベーションが安定するためであると考えられる。
【0015】
また、水溶性エラスチンを緩衝溶液に溶解する量は、pH=4〜7の緩衝液に対して1〜30重量%の範囲で用いることができる。この理由は、エラスチンの濃度が1重量%より低すぎると水溶性エラスチンがコアセルベーションし難く、30重量%より濃度が高すぎると、溶液中でエラスチンの凝集体が形成しているためか人工血管の内腔面上に形成されるエラスチン層に凹凸が形成してしまうためである。
また、水溶性エラスチンをコアセルベーションさせる温度は、35℃〜70℃が好ましい。この理由は35℃未満の低温では水溶性エラスチンをコアセルベーションさせることができないし、70℃より高い温度では水溶性エラスチンが熱変性しやすいためである。
【0016】
また、水溶性エラスチンをアルブミン層を設けた人工血管基材の内腔面上に均一にコアセルベーションさせるためには、作製する人工血管の内径にもよるが、エラスチン水溶液を充填した人工血管を長手方向に水平に保ちながら、内径2〜6mmφの人工血管では円周方向に0.1〜10rpmの回転速度で静かに回転させるのが好ましい。この理由は、エラスチン層形成の際に、エラスチンを35℃以上の温度で静置すると、重力方向にエラスチンがコアセルベーションしてコアセルベート(凝集体)を形成する特性を利用するため、回転速度が速すぎると内腔に充填した水溶性エラスチン溶液が攪拌されてしまい、エラスチンの凝集を妨げてしまうし、回転速度が遅すぎるとエラスチンのコアセルベーション速度よりも人工血管基材内腔面の移動速度が遅くなるため、人工血管の内腔面に均一なエラスチン層を形成することができないためである。
【0017】
また、管状の人工血管基材の壁面内及び内腔面上にアルブミン層とエラスチン層を形成した後、水又は緩衝溶液もしくは生理食塩水に溶解した脂肪族多価アルコール溶液を含浸する工程において用いることのできる脂肪族多価アルコールは、特に限定はしないがグリセリンが好ましい。この理由は、グリセリンは本来血液中に存在する成分であり、人工血管を生体内に植え込んだ後血液中に溶出しても生体に悪影響を与えないためである。
【0018】
また、脂肪族多価アルコールを溶解する緩衝溶液は、特に限定はしないが、リン酸緩衝液、リン酸二水素カリウム/リン酸水素二ナトリウム緩衝液などが好ましい。この理由はこれらの緩衝溶液の塩は、微量を体内に入れても生体に悪影響を与えないからである。
また、脂肪族多価アルコール溶液の濃度は、水又は緩衝溶液もしくは生理食塩水に対して0.5〜20重量%が好ましい。この理由は、濃度が0.5重量%より低いと充分乾燥した人工血管を柔軟な状態に維持できないし、濃度が20重量%よい高いと乾燥後でも取扱性が悪いし、生体内に植え込んだ場合血液中に多量の脂肪族多価アルコールが溶出し、生体に悪影響を与えるためである。
【0019】
【実施例】
以下に、実施例によって本発明の効果を説明する。
〔実施例、及び比較例〕
<溶液の調製及び人工血管の作製>
ウシ血清アルブミン粉末(和光純薬製)2gを純水10mlに室温にて溶解し、アルブミン溶液を作製した。
ポリエチレンテレフタレートを内径3mmφの管状に編んだ人工血管基材を長さ5cmに切断し、内径4.5mmφ、長さ6cmのガラス製試験管に装着した。
人工血管基材を装着したガラス試験管内にアルブミン溶液0.4mlを充填し、シリコーン栓を取付け、更にガラス試験管をモーターによって回転できるようにしたステンレス製の管状の治具の中に挿入し装着した。
モーターのチャックに治具を取付け、モーターを10rpmの速度で回転させながら20分間全体を60℃に加熱した後、モーターを止めガラス管内のアルブミン溶液を排出し人工血管基材内腔にアルブミン層を構築した。
【0020】
次にグルタールアルデヒド20重量%溶液(和光純薬製)5mlに純水を加え100mlとした架橋剤溶液0.4mlを上記で得られた人工血管内腔に充填し、50℃にて12時間架橋し、架橋剤を排出した。
続いて、ウシ首靱帯製α−エラスチン(エラスチン・プロダクツ社製)150mgをpH=5.2に調製したリン酸二水素カリウム/リン酸水素二ナトリウム緩衝液1.5mlに溶解したエラスチン水溶液0.4mlを上記で得られた人工血管内腔に充填し、シリコーン栓を取付け、モーターによって回転できるようにしたステンレス製の管状の治具の中に挿入し装着した。
【0021】
モーターのチャックに治具を取付け5rpmの速度でモーターを回転させながら60℃に12時間加熱しアルブミン層を内腔に固定した人工血管の内腔面上にエラスチンをコアセルベーションさせた。モーターの回転を止め、管内の溶液を捨て、0.4mgの水溶性エポキシ架橋剤(デナコールEX−614B、ナガセ化成工業(株)製)をpH=7.0のリン酸緩衝液0.4mlに溶解した水溶液を上記で得られた人工血管内腔に充填し、5rpmの速度でモーターを回転させながら60℃にて24時間架橋反応を行い、人工血管基材内腔面にアルブミン層とエラスチン層を構築し、1gのグリセリン(和光純薬(株)製 血清用)を生理食塩水(大塚製薬(株)製)100mlに溶解した溶液に5時間浸し、本発明の人工血管を得た。
【0022】
また、比較例としてポリエチレンテレフタレートを内径3mmφの管状に編んだ人工血管基材を長さ5cmに切断し、内径4.5mmφ、長さ6cmのガラス製試験管に装着し、ウシ骨製ゼラチン粉末(和光純薬製)8mgをリン酸緩衝液0.4mlに溶解した水溶液を30℃にて充填し、人工血管基材に充分含浸し、溶液を排出後、4℃に3時間保ち、ゼラチン層を人工血管内腔面に構築した。
次にグルタールアルデヒド20重量%溶液(和光純薬製)5mlに純水を加え100mlとした架橋剤溶液0.4mlを上記で得られた人工血管内腔に充填し、4℃にて12時間架橋し、架橋剤を排出した。
【0023】
続いて、ウシ首靱帯製α−エラスチン(エラスチン・プロダクツ社製)150mgをpH=5.2に調製したリン酸二水素カリウム/リン酸水素二ナトリウム緩衝液0.4mlに溶解したエラスチン水溶液を上記で得られた人工血管内腔に充填し、シリコーン栓を取付け、モーターによって回転できるようにした治具の中に挿入し装着した。
【0024】
モーターのチャックに治具を取付け5rpmの速度でモーターを回転させながら60℃に12時間加熱しゼラチン層を内腔に固定した人工血管の内腔面上にエラスチンをコアセルベーションさせた。モーターの回転を止め、管内の溶液を捨て、0.4mgの水溶性エポキシ架橋剤(デナコールEX−614B、ナガセ化成工業(株)製)をpH=7.0のリン酸緩衝液0.4mlに溶解した水溶液を上記で得られた人工血管内腔に充填し、5rpmの速度でモーターを回転させながら60℃にて24時間架橋反応を行い、人工血管基材の内腔面にゼラチン層とエラスチン層を構築し、1gのグリセリン(和光純薬製 血清用)を生理食塩水(大塚製薬製)100mlに溶解した溶液に5時間浸し、比較例の人工血管を作製した。
【0025】
<動物実験>
体重11kgのビーグル成犬(雌性)1頭をアトロピンにて前処理し、導入麻酔をフルニトラゼパム0.1mg/kg、ケタミン3mg/kgの静注によって実施した。イヌを手術台に固定後、ヘパリン(100IU/kg)を静注し、フローセンによる麻酔を維持しながら、右頸部を切開して右総頸動脈を長さ約5cmにわたって切除し、ここに7−0ポリプロピレン製縫合糸を用い端々吻合にて内径3mmφ×長さ5cmの本発明のアルブミン層とエラスチン層を有する人工血管を植え込んだ。また全く同様に左頸部を切開し、左総頸動脈を長さ約5cmにわたって切除し、比較例の内径3mmφ×長さ5cmのエラスチン層のみを有する人工血管を端々吻合にて植え込んだ。
【0026】
術後、抗凝固薬は一切使用せず12ヶ月間イヌを飼育した。12ヶ月後、イヌをアトロピンにて前処理し、導入麻酔をフルニトラゼパム0.1mg/kg、ケタミン3mg/kgの静注によって実施した。イヌを手術台に固定後、ヘパリン(100IU/kg)を静注し、フローセンによる麻酔を維持しながら、左右頸部を切開して左右両総頸動脈に植え込んだ両人工血管を宿主動脈と共に摘出した。
直ちに、注射器を用い500IU/mlのヘパリンを溶解した生理食塩水にて人工血管の内外面を静かに洗浄し、血液を洗い流し、人工血管を縦に切り開き肉眼的に観察し、本発明のアルブミン層とエラスチン層を有する人工血管と比較例のエラスチン層のみを有する人工血管との比較を行った。
【0027】
次に両人工血管を縦に2つ割にし、一方を冷蔵庫中で4%ホルマリンの中性緩衝溶液に浸し固定した後、光学顕微鏡用試料とした。残りの試料は、1%グルタールアルデヒドの中性緩衝溶液及び3%グルタールアルデヒドの中性緩衝溶液に冷蔵庫中で浸して固定し、電子顕微鏡用試料とした。
光学顕微鏡用試料は中枢側吻合部、中央部、末梢側吻合部の3つに切断し、ホルマリンを洗浄した後、パラフィン包埋し、各部位からミクロトームによって切片を切り出しプレパラートとし、エラスチカワンギーソン染色及びヘマトキシリン−エオジン染色をおこなった。
【0028】
光学顕微鏡観察は、中枢側吻合部、中央部、末梢側吻合部でそれぞれ20倍と100倍にて行い、エラスチカワンギーソン染色でエラスチン層の脱離の程度を評価し、ヘマトキシリン−エオジン染色で細胞と組織の伸展の程度と内膜肥厚の程度を評価した。
評価は全て本発明のアルブミン層とエラスチン層を有する人工血管と比較例のエラスチン層のみを有する人工血管との比較評価とした。
【0029】
また、電子顕微鏡観察用試料はグルタールアルデヒド固定後、中枢側吻合部、中央部、末梢側吻合部の3つに分け、1%オスミウム酸と1%タンニン酸で導電染色を行った後、臨界点乾燥によって乾燥し、試料台に固定してPd−Ptを蒸着した。電子顕微鏡観察は200倍と1000倍にて、本発明のアルブミン層とエラスチン層を有する人工血管と比較例のエラスチン層のみを有する人工血管の内腔面の状態を比較評価した。
尚、光学顕微鏡はニコン社製DIAPHOT−TMD型を使用し、走査型電子顕微鏡は日立S−800型を使用した。
実施例及び比較例の各人工血管の評価結果は、表1及び表2に示した通りであった。
【0030】
【表1】
Figure 0003573554
【0031】
【表2】
Figure 0003573554
【0032】
【発明の効果】
以上のように、アルブミン層を設けた人工血管基材内腔面上にエラスチンをコアセルベーションさせ、架橋剤によって架橋した人工血管は、アルブミンとエラスチンとの接着性が良好であるため、生体内植え込み後でもエラスチン層が剥離することがなく、長期間にわたり優れた抗血栓性と組織適合性を併せ持ち、人工血管内腔面での血栓形成や吻合部での組織や細胞の過剰成長が全くないため、従来にない内径4mmφ以下の小口径でも長期間にわたる開存性が期待できる人工血管であることが明白になった。

Claims (13)

  1. 管状の人工血管基材の内腔面上に少なくともアルブミン層とエラスチン層の2層を有し、かつ人工血管全体に脂肪族多価アルコールが含浸されていることを特徴とする人工血管。
  2. 管状の人工血管基材の内腔にアルブミンを水もしくは緩衝液に対して濃度が1〜50重量%になる割合で加えた溶液を充填し1〜100rpmの回転数で回転させながら50〜80℃の熱を1分〜5時間加えた後、アルブミン溶液を排出し管状の人工血管基材の壁面内にアルブミン架橋物を形成すると同時に該管状の人工血管基材の内腔面上にアルブミン層を構築し、該管状の人工血管基材の内腔に水溶性エラスチンをpH=4〜7の緩衝液に対して濃度が1〜30重量%になる割合で加えたエラスチン溶液を4℃以上35℃未満にて充填し、該管状の人工血管基材を長軸方向に水平に維持しながら、35〜70℃にて0.1〜10rpmの速度で該管状の人工血管基材の円周方向に回転させて、アルブミン層上にエラスチンをコアセルベーションさせたエラスチン層を構築し、内腔の溶液を排出し、次に架橋剤を水もしくは緩衝液に対して0.1〜10重量%になる割合で溶解した溶液を内腔に充填し、エラスチン層を架橋させることによって、管状の人工血管基材の内腔面上にアルブミン層とエラスチン層を構築することを特徴とする人工血管の製造方法。
  3. 管状の人工血管基材の内腔にアルブミンを水もしくは緩衝液に対して濃度が1〜50重量%になる割合で加えた溶液を充填し1〜100rpmの回転数で回転させながら50〜80℃の熱を1分〜5時間加えた後、過剰なアルブミン溶液を排出し、次に架橋剤を水もしくは緩衝液に対して濃度が0.1〜10重量%になる割合で加えた溶液を該管状の人工血管基材の内腔に充填し、4〜80℃で1〜24時間架橋して管状の人工血管基材壁面内にアルブミン架橋物を形成すると同時に該管状の人工血管基材の内腔面上に架橋アルブミン層を形成した後、該管状の人工血管基材の内腔に水溶性エラスチンをpH=4〜7の緩衝液に対して濃度が1〜30重量%になる割合で加えたエラスチン溶液を4℃以上35℃未満にて充填し、該管状の人工血管基材を長軸方向に水平に維持しながら、35〜70℃にて0.1〜10rpmの速度で該管状の人工血管基材の円周方向に回転させて、アルブミン層上にエラスチンをコアセルベーションさせたエラスチン層を構築し、内腔の溶液を排出し、次に架橋剤を水もしくは緩衝液に対して0.1〜10重量%になる割合で溶解した溶液を内腔に充填し、エラスチン層を架橋させることによって、管状の人工血管基材の内腔面上にアルブミン層とエラスチン層を構築することを特徴とする人工血管の製造方法。
  4. 管状の人工血管基材の内腔面上にアルブミン層とエラスチン層を構築し脂肪族多価アルコールを水又は緩衝溶液もしくは生理食塩水に対して濃度が0.5〜20重量%になる割合で加えた溶液に浸した後乾燥させる請求項2又は3記載の人工血管の製造方法。
  5. アルブミン架橋物及びアルブミン層が動物由来の血清アルブミンからなる請求項1記載の人工血管、請求項2又は3記載の人工血管の製造方法。
  6. アルブミン架橋物及びアルブミン層を架橋する架橋剤がジアルデヒド化合物もしくは水溶性多官能性エポシキ化合物である請求項1記載の人工血管、請求項2又は3記載の人工血管の製造方法。
  7. エラスチン層及び水溶性エラスチンに動物由来もしくはヒト由来のエラスチンを熱蓚酸処理して得られるα−エラスチンもしくはβ−エラスチン、エラスチンをアルカリエタノール処理して得られるκ−エラスチン、またはエラスチンを酵素処理して水溶性にしたエラスチンを用いる請求項1記載の人工血管、請求項2又は3記載の人工血管の製造方法。
  8. エラスチン層が水溶性エラスチンをコアセルベーションさせて形成される請求項1記載の人工血管。
  9. エラスチン層がジアルデヒド化合物もしくは水溶性多官能性エポシキ化合物によって架橋されている請求項1記載の人工血管、請求項2又は3記載の人工血管の製造方法。
  10. 管状の人工血管基材が合成樹脂の繊維を平織りもしくはメリヤス編みにして管状としたもの、合成樹脂に粒状の水溶性物質を混合し押し出し成形によって管状とした後、これを水中に浸すことによって多孔性構造としたもの、あるいは合成樹脂組成物を押出し成形によって管状とした後、延伸を加えて多孔性構造としたもののいずれかである請求項1記載の人工血管、請求項2又は3記載の人工血管の製造方法。
  11. 管状の人工血管基材が合成樹脂の溶液を棒状もしくは管状の治具にコーティングし溶媒を蒸発させて管状としたもの、合成樹脂を押出し成形によって管状としたものである請求項1記載の人工血管、請求項2又は3記載の人工血管の製造方法。
  12. 管状の人工血管基材がポリウレタン、ポリエステル、もしくはポリテトラフルオロエチレンである請求項1記載の人工血管、請求項2又は3記載の人工血管の製造方法。
  13. 水溶性エラスチンをコアセルベーションさせる溶液がpH=4〜7の緩衝液である請求項2又は3記載の人工血管の製造方法。
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