JPH09173361A - 人工血管及びその製造方法 - Google Patents

人工血管及びその製造方法

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JPH09173361A
JPH09173361A JP34106395A JP34106395A JPH09173361A JP H09173361 A JPH09173361 A JP H09173361A JP 34106395 A JP34106395 A JP 34106395A JP 34106395 A JP34106395 A JP 34106395A JP H09173361 A JPH09173361 A JP H09173361A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生体血管の内弾性板に類似下構造を内腔面に
形成することによって、血液の凝固と血漿蛋白の付着及
び細胞の過剰な成長を制御し、小口径でも内膜肥厚を起
こさず、高い開存性を有する人工血管を提供することに
ある。 【解決手段】 管状の合成樹脂からなる人工血管基材の
内腔面に、アルブミンを塗布し、加熱するか又は加熱後
更に架橋剤で架橋して構築したアルブミン層上に水溶性
エラスチンをコアセルベーションさせ架橋剤によって固
定した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、血管疾患の治療に
際して、生体血管のバイパス術や置換術に使用される人
工血管に関するものである。更に詳しくは、生体血管の
内弾性板に類似下構造を人工血管の内腔面に形成するこ
とによって、血液の凝固と血漿蛋白の付着及び細胞の過
剰な成長を制御し、小口径でも内膜肥厚を起こさず、高
い開存性を有する人工血管及びその製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】大腿動脈から膝窩動脈、更に脛骨、腓骨
動脈を満足に再建できる内径3〜6mmの小口径人工血
管は未だに無く、この領域の動脈再建には自己静脈が主
に使用されているのが現状である。小口径人工血管で
は、血流量が少なく血栓閉塞が生じ易いため、植え込み
初期の優れた抗血栓性が要求される。また、植え込み後
数ヶ月で宿主動脈や周辺組織から新生の細胞や組織が伸
展してくるため、これらを安定して生着させることので
きる足場を提供する材料であることが重要である。例え
ば膝窩動脈再建用のテフロン製人工血管は、疎水性が高
く、血液や蛋白質を付着しない為、抗血栓性は良好であ
るが、細胞や組織が生着する足場が無いため、パンヌス
や内膜肥厚を生じ、閉塞し易いという欠点がある。
【0003】また、ゼラチンやコラーゲンでシールした
ポリエステル製の人工血管は、細胞や組織の足場は有る
が、抗血栓性が悪く植え込み初期で血栓閉塞してしまう
という欠点を有している。そこで、我々はウシの内胸動
脈やヒトの臍帯動脈の内弾性板に存在するエラスチンが
抗血栓性と組織適合性に優れていることに着目し、エラ
スチンをコアセルベーションさせた後架橋することで、
内弾性板に存在する構造と同様の三次元構造を持つエラ
スチン層が構築できることを見出し、先に特願平06−
171095号にて、合成樹脂からなる人工血管の内腔
面にエラスチンを固定した人工血管およびその製造方法
を開示した。
【0004】しかしながら、このような方法ではエラス
チンが脱離し易く、長期間血流下にさらされると脱離部
から血栓形成や内膜肥厚が生じ易いという問題を有して
いる。 また、他にエラスチンを用いた人工血管では、
特開平03−41963号公報や特開平03−2547
53号公報などがあるが、これらは合成高分子中やフィ
ブリン蛋白中にエラスチンを混合し成形したものである
ため、構築された血液接触面はエラスチンと合成樹脂ま
たはフィブリン蛋白質との混合物表面であり、エラスチ
ンを主成分とする生体血管の内弾性板表面とは大きく構
造が異なるし、エラスチン自体の三次元構造も内弾性板
中の構造と全く異なるため、本来、内胸動脈表面や臍帯
動脈表面が示す血液適合性や組織適合性は得られない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】先に、特願平06−1
71095号で開示した人工血管及びその製造方法にお
いては、人工血管基材である管状の合成樹脂とエラスチ
ン又は人工血管基材の内腔面上に設けたコラーゲン層も
しくはゼラチン層とエラスチンとの親和性が悪く、血流
下に長期間さらされた場合、エラスチン層が脱離し、エ
ラスチン脱離部から血栓形成が生じたり細胞の過剰成長
が生じ、結果として人工血管の内膜肥厚や狭窄、閉塞を
引き起こす可能性があった。本発明は、従来のこのよう
な問題点を解決しようとするもので、長期間血流下にあ
ってもエラスチン層が脱離せず、抗血栓性と組織適合性
を兼ね備えた人工血管内腔面を有し優れた開存性を有す
る人工血管を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、先に特願平0
6−171095号で開示した人工血管及びその製造方
法において、管状の合成樹脂からなる人工血管基材の内
腔面上に直接又は予め構築したコラーゲン層もしくはゼ
ラチン層の上にエラスチン層を構築するのではなく、管
状の合成樹脂からなる人工血管基材に予め熱又は架橋剤
によって架橋されたアルブミン層を設け、この上にエラ
スチン層を設けることでエラスチン層の人工血管基材へ
の接着を改善しエラスチンの効果を長期間持続させるこ
とを特徴とする人工血管及びその製造方法に関するもの
である。すなわち、管状の人工血管基材の内腔面上に少
なくともアルブミン層とエラスチン層の2層を有するこ
とを特徴とする人工血管である。
【0007】本発明者らは、物質間の親和性は、物質間
の疎水−疎水相互作用の強度又は親水−親水相互作用の
強度によって支配されることに注目し、エラスチンがそ
のアミノ酸組成において非極性アミノ酸であるグリシ
ン、アラニン、プロリン、バリンを多く含み、極性アミ
ノ酸であるアスパラギン酸、グルタミン、リジン、ヒス
チジン、アルギニンをわずかにしか含まない疎水性の高
い蛋白質であり、(Norman T. Soskel, Terril B. Wol
t, and Lawrence B. Sandberg, METHOD IN ENZYMOLOG
Y, Vol.144 196-214 (1987))、同様に疎水性蛋白質で
あるアルブミンと疎水−疎水相互作用で良好な親和性を
示すことを見いだし、更に検討を進めて本発明を完成す
るに至った。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明で管状の人工血管基材の壁
面内及び内腔面上にアルブミン層を構築する工程におい
て、アルブミン溶液に加える温度は50〜80℃が好ま
しく、回転速度は用いるアルブミン溶液の濃度にもよる
が、1〜100rpmが好ましい。この理由は、温度が
低すぎるとアルブミンが架橋されずアルブミン層が得ら
れないし、温度が高過ぎるとアルブミン溶液中に気泡が
発生しやすく構築したアルブミン層表面に凹凸が生じる
ためである。また、回転速度が1rpm未満であるとア
ルブミン溶液が人工血管基材の内腔の一部分に溜まって
しまうため人工血管基材の内腔面上に均一なアルブミン
層を形成することができないし、回転速度が100rp
mより速いと、アルブミン溶液が人工血管基材の外壁面
に移行し、人工血管基材の内腔表面上に十分な厚さのア
ルブミン層が形成できないためである。
【0009】また、本発明で管状の人工血管基材の内腔
面上にアルブミン層を構築する工程において、アルブミ
ンを人工血管基材の壁面内及び内腔表面に含浸もしくは
コーティングした後、加熱する時間は、アルブミン溶液
の濃度にもよるが1分〜5時間が好ましい。この理由は
加熱時間が短いと充分にアルブミンが架橋されないし、
時間が長すぎると架橋アルブミンが熱分解してしまうた
めである。また、本発明で用いることのできるアルブミ
ンは、特に限定はしないがウシ血清アルブミン、ヒト血
漿アルブミンなどの動物由来アルブミンが使用できる。
また、本発明でアルブミンを溶解する水又は緩衝溶液は
特に限定はしないが、血液の流路として生体内に留置す
るためエンドトキシンなどの発熱性物資を含有しないも
のが望ましい。
【0010】また、本発明で用いることのできるアルブ
ミン溶液中のアルブミン濃度は、水又は緩衝溶液に対し
て1〜50重量%であることが好ましい。この理由は、
濃度が低すぎると加熱してもアルブミンの架橋物が得ら
れないし、得られても架橋物中のアルブミン密度が低い
ため得られたアルブミン層の強度が低く人工血管として
使用できないし、また、濃度が高すぎると溶液の粘度が
高くなり過ぎ管状の人工血管基材の壁面内に充分含浸す
ることができないし、管状の人工血管基材の内腔面上に
均一な架橋層を構築することができないためである。
【0011】また、本発明の各工程においてアルブミン
架橋物やアルブミン層、あるいはコアセルベーションさ
せたエラスチン層を架橋させる架橋剤としては、ジアル
デヒド化合物や水溶性多官能性エポキシ化合物が利用で
きるが、中でも水溶性エポキシ化合物は、アミノ基とカ
ルボキシル基の両方の官能基と反応でき、また、架橋後
は柔らかい蛋白層を与えるため生体血管に近いコンプラ
イアンスを得ることができ特に好ましく、例えばデナコ
ールEX−614、デナコールEX−614B、デナコ
ールEX−521(ナガセ化成工業(株)製)などが使
用できる。
【0012】また、本発明で用いることのできるエラス
チンは特に限定しないが、ブタ大動脈由来エラスチン、
ウシ頸靱帯由来エラスチン、ウシ肺由来エラスチン、ウ
シ大動脈由来エラスチン、ヒト肺由来エラスチン、ヒト
大動脈由来エラスチン、ヒト臍帯動脈由来エラスチンな
どのエラスチン、又はこれらを熱蓚酸処理によって水溶
性にしたα−エラスチンもしくはβ−エラスチン、アル
カリエタノール処理によって水溶性にしたκ−エラスチ
ン、ペプシン、エラスターゼなどの酵素で処理し水溶性
にしたエラスチンタンパク質などが挙げられる。中でも
組織適合性と抗血栓性の点でヒト大動脈由来エラスチン
もしくはヒト臍帯動脈由来エラスチンが望ましく、その
理由の詳細は不明であるが、エラスチンはその由来部位
と動物の種類によって若干アミノ酸組成が異なり、ヒト
大動脈由来エラスチンもしくはヒト臍帯動脈由来エラス
チンの有するアミノ酸組成では特に架橋後の表面を平滑
にできるため、血液の凝固活性を引き起こし難いと考え
られる。
【0013】また、本発明で使用する管状の人工血管基
材は、血液の流路としてマクロファージなどの放出する
過酸化物分解酵素や加水分解酵素の存在する生体内に長
期間留置するため、生体内で酵素などにより分解され
ず、かつ毒性がなく、また血圧の変動に充分耐えられる
材料であることが必要で、その材料としては、ポリウレ
タン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレンなど
の材料が好ましい。また、管状の合成樹脂の内腔面にア
ルブミンを強固に固定するためには、内腔面の構造は多
孔性、繊維を編んだもの、もしくは繊維が積み重なった
構造のものが好ましい。その理由はこのような構造の材
料ではアルブミンが内腔面の孔や繊維間に入り込み強い
アンカー効果が得られるためである。
【0014】また、管状の人工血管基材の内腔面上に設
けたアルブミン層上に水溶性エラスチンをコアセルベー
ションさせる工程において、水溶性エラスチンをコアセ
ルベーションさせる緩衝溶液はpH=4〜7の範囲のも
のであれば良く特に限定はしない。中でもpH=5で充
分な緩衝能を持つクエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝
液、クエン酸/水酸化ナトリウム緩衝液、酢酸/酢酸ナ
トリウム緩衝液、リン酸緩衝液、リン酸二水素カリウム
/リン酸水素二ナトリウム緩衝液、コハク酸/水酸化ナ
トリウム緩衝液などが水溶性エラスチンをコアセルベー
ショーンさせるのに適している。これは水溶性エラスチ
ンの等電点がこの付近にあるため電気的に中和されたエ
ラスチンが疎水−疎水相互作用によって会合し、凝集を
生じやすく、コアセルベーションが安定するためである
と考えられる。
【0015】また、水溶性エラスチンを緩衝溶液に溶解
する量は、pH=4〜7の緩衝液に対して1〜30重量
%の範囲で用いることができる。この理由は、エラスチ
ンの濃度が1重量%より低すぎると水溶性エラスチンが
コアセルベーションし難く、30重量%より濃度が高す
ぎると、溶液中でエラスチンの凝集体が形成しているた
めか人工血管の内腔面上に形成されるエラスチン層に凹
凸が形成してしまうためである。また、水溶性エラスチ
ンをコアセルベーションさせる温度は、35℃〜70℃
が好ましい。この理由は35℃未満の低温では水溶性エ
ラスチンをコアセルベーションさせることができない
し、70℃より高い温度では水溶性エラスチンが熱変性
しやすいためである。
【0016】また、水溶性エラスチンをアルブミン層を
設けた人工血管基材の内腔面上に均一にコアセルベーシ
ョンさせるためには、作製する人工血管の内径にもよる
が、エラスチン水溶液を充填した人工血管を長手方向に
水平に保ちながら、内径2〜6mmφの人工血管では円
周方向に0.1〜10rpmの回転速度で静かに回転さ
せるのが好ましい。この理由は、エラスチン層形成の際
に、エラスチンを35℃以上の温度で静置すると、重力
方向にエラスチンがコアセルベーションしてコアセルベ
ート(凝集体)を形成する特性を利用するため、回転速
度が速すぎると内腔に充填した水溶性エラスチン溶液が
攪拌されてしまい、エラスチンの凝集を妨げてしまう
し、回転速度が遅すぎるとエラスチンのコアセルベーシ
ョン速度よりも人工血管基材内腔面の移動速度が遅くな
るため、人工血管の内腔面に均一なエラスチン層を形成
することができないためである。
【0017】また、管状の人工血管基材の壁面内及び内
腔面上にアルブミン層とエラスチン層を形成した後、水
又は緩衝溶液もしくは生理食塩水に溶解した脂肪族多価
アルコール溶液を含浸する工程において用いることので
きる脂肪族多価アルコールは、特に限定はしないがグリ
セリンが好ましい。この理由は、グリセリンは本来血液
中に存在する成分であり、人工血管を生体内に植え込ん
だ後血液中に溶出しても生体に悪影響を与えないためで
ある。
【0018】また、脂肪族多価アルコールを溶解する緩
衝溶液は、特に限定はしないが、リン酸緩衝液、リン酸
二水素カリウム/リン酸水素二ナトリウム緩衝液などが
好ましい。この理由はこれらの緩衝溶液の塩は、微量を
体内に入れても生体に悪影響を与えないからである。ま
た、脂肪族多価アルコール溶液の濃度は、水又は緩衝溶
液もしくは生理食塩水に対して0.5〜20重量%が好
ましい。この理由は、濃度が0.5重量%より低いと充
分乾燥した人工血管を柔軟な状態に維持できないし、濃
度が20重量%よい高いと乾燥後でも取扱性が悪いし、
生体内に植え込んだ場合血液中に多量の脂肪族多価アル
コールが溶出し、生体に悪影響を与えるためである。
【0019】
〔実施例、及び比較例〕
<溶液の調製及び人工血管の作製>ウシ血清アルブミン
粉末(和光純薬製)2gを純水10mlに室温にて溶解
し、アルブミン溶液を作製した。ポリエチレンテレフタ
レートを内径3mmφの管状に編んだ人工血管基材を長
さ5cmに切断し、内径4.5mmφ、長さ6cmのガ
ラス製試験管に装着した。人工血管基材を装着したガラ
ス試験管内にアルブミン溶液0.4mlを充填し、シリ
コーン栓を取付け、更にガラス試験管をモーターによっ
て回転できるようにしたステンレス製の管状の治具の中
に挿入し装着した。モーターのチャックに治具を取付
け、モーターを10rpmの速度で回転させながら20
分間全体を60℃に加熱した後、モーターを止めガラス
管内のアルブミン溶液を排出し人工血管基材内腔にアル
ブミン層を構築した。
【0020】次にグルタールアルデヒド20重量%溶液
(和光純薬製)5mlに純水を加え100mlとした架
橋剤溶液0.4mlを上記で得られた人工血管内腔に充
填し、50℃にて12時間架橋し、架橋剤を排出した。
続いて、ウシ首靱帯製α−エラスチン(エラスチン・プ
ロダクツ社製)150mgをpH=5.2に調製したリ
ン酸二水素カリウム/リン酸水素二ナトリウム緩衝液
1.5mlに溶解したエラスチン水溶液0.4mlを上
記で得られた人工血管内腔に充填し、シリコーン栓を取
付け、モーターによって回転できるようにしたステンレ
ス製の管状の治具の中に挿入し装着した。
【0021】モーターのチャックに治具を取付け5rp
mの速度でモーターを回転させながら60℃に12時間
加熱しアルブミン層を内腔に固定した人工血管の内腔面
上にエラスチンをコアセルベーションさせた。モーター
の回転を止め、管内の溶液を捨て、0.4mgの水溶性
エポキシ架橋剤(デナコールEX−614B、ナガセ化
成工業(株)製)をpH=7.0のリン酸緩衝液0.4
mlに溶解した水溶液を上記で得られた人工血管内腔に
充填し、5rpmの速度でモーターを回転させながら6
0℃にて24時間架橋反応を行い、人工血管基材内腔面
にアルブミン層とエラスチン層を構築し、1gのグリセ
リン(和光純薬(株)製 血清用)を生理食塩水(大塚
製薬(株)製)100mlに溶解した溶液に5時間浸
し、本発明の人工血管を得た。
【0022】また、比較例としてポリエチレンテレフタ
レートを内径3mmφの管状に編んだ人工血管基材を長
さ5cmに切断し、内径4.5mmφ、長さ6cmのガ
ラス製試験管に装着し、ウシ骨製ゼラチン粉末(和光純
薬製)8mgをリン酸緩衝液0.4mlに溶解した水溶
液を30℃にて充填し、人工血管基材に充分含浸し、溶
液を排出後、4℃に3時間保ち、ゼラチン層を人工血管
内腔面に構築した。次にグルタールアルデヒド20重量
%溶液(和光純薬製)5mlに純水を加え100mlと
した架橋剤溶液0.4mlを上記で得られた人工血管内
腔に充填し、4℃にて12時間架橋し、架橋剤を排出し
た。
【0023】続いて、ウシ首靱帯製α−エラスチン(エ
ラスチン・プロダクツ社製)150mgをpH=5.2
に調製したリン酸二水素カリウム/リン酸水素二ナトリ
ウム緩衝液0.4mlに溶解したエラスチン水溶液を上
記で得られた人工血管内腔に充填し、シリコーン栓を取
付け、モーターによって回転できるようにした治具の中
に挿入し装着した。
【0024】モーターのチャックに治具を取付け5rp
mの速度でモーターを回転させながら60℃に12時間
加熱しゼラチン層を内腔に固定した人工血管の内腔面上
にエラスチンをコアセルベーションさせた。モーターの
回転を止め、管内の溶液を捨て、0.4mgの水溶性エ
ポキシ架橋剤(デナコールEX−614B、ナガセ化成
工業(株)製)をpH=7.0のリン酸緩衝液0.4m
lに溶解した水溶液を上記で得られた人工血管内腔に充
填し、5rpmの速度でモーターを回転させながら60
℃にて24時間架橋反応を行い、人工血管基材の内腔面
にゼラチン層とエラスチン層を構築し、1gのグリセリ
ン(和光純薬製 血清用)を生理食塩水(大塚製薬製)
100mlに溶解した溶液に5時間浸し、比較例の人工
血管を作製した。
【0025】<動物実験>体重11kgのビーグル成犬
(雌性)1頭をアトロピンにて前処理し、導入麻酔をフ
ルニトラゼパム0.1mg/kg、ケタミン3mg/k
gの静注によって実施した。イヌを手術台に固定後、ヘ
パリン(100IU/kg)を静注し、フローセンによ
る麻酔を維持しながら、右頸部を切開して右総頸動脈を
長さ約5cmにわたって切除し、ここに7−0ポリプロ
ピレン製縫合糸を用い端々吻合にて内径3mmφ×長さ
5cmの本発明のアルブミン層とエラスチン層を有する
人工血管を植え込んだ。また全く同様に左頸部を切開
し、左総頸動脈を長さ約5cmにわたって切除し、比較
例の内径3mmφ×長さ5cmのエラスチン層のみを有
する人工血管を端々吻合にて植え込んだ。
【0026】術後、抗凝固薬は一切使用せず12ヶ月間
イヌを飼育した。12ヶ月後、イヌをアトロピンにて前
処理し、導入麻酔をフルニトラゼパム0.1mg/k
g、ケタミン3mg/kgの静注によって実施した。イ
ヌを手術台に固定後、ヘパリン(100IU/kg)を
静注し、フローセンによる麻酔を維持しながら、左右頸
部を切開して左右両総頸動脈に植え込んだ両人工血管を
宿主動脈と共に摘出した。直ちに、注射器を用い500
IU/mlのヘパリンを溶解した生理食塩水にて人工血
管の内外面を静かに洗浄し、血液を洗い流し、人工血管
を縦に切り開き肉眼的に観察し、本発明のアルブミン層
とエラスチン層を有する人工血管と比較例のエラスチン
層のみを有する人工血管との比較を行った。
【0027】次に両人工血管を縦に2つ割にし、一方を
冷蔵庫中で4%ホルマリンの中性緩衝溶液に浸し固定し
た後、光学顕微鏡用試料とした。残りの試料は、1%グ
ルタールアルデヒドの中性緩衝溶液及び3%グルタール
アルデヒドの中性緩衝溶液に冷蔵庫中で浸して固定し、
電子顕微鏡用試料とした。光学顕微鏡用試料は中枢側吻
合部、中央部、末梢側吻合部の3つに切断し、ホルマリ
ンを洗浄した後、パラフィン包埋し、各部位からミクロ
トームによって切片を切り出しプレパラートとし、エラ
スチカワンギーソン染色及びヘマトキシリン−エオジン
染色をおこなった。
【0028】光学顕微鏡観察は、中枢側吻合部、中央
部、末梢側吻合部でそれぞれ20倍と100倍にて行
い、エラスチカワンギーソン染色でエラスチン層の脱離
の程度を評価し、ヘマトキシリン−エオジン染色で細胞
と組織の伸展の程度と内膜肥厚の程度を評価した。評価
は全て本発明のアルブミン層とエラスチン層を有する人
工血管と比較例のエラスチン層のみを有する人工血管と
の比較評価とした。
【0029】また、電子顕微鏡観察用試料はグルタール
アルデヒド固定後、中枢側吻合部、中央部、末梢側吻合
部の3つに分け、1%オスミウム酸と1%タンニン酸で
導電染色を行った後、臨界点乾燥によって乾燥し、試料
台に固定してPd−Ptを蒸着した。電子顕微鏡観察は
200倍と1000倍にて、本発明のアルブミン層とエ
ラスチン層を有する人工血管と比較例のエラスチン層の
みを有する人工血管の内腔面の状態を比較評価した。
尚、光学顕微鏡はニコン社製DIAPHOT−TMD型
を使用し、走査型電子顕微鏡は日立S−800型を使用
した。実施例及び比較例の各人工血管の評価結果は、表
1及び表2に示した通りであった。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【発明の効果】以上のように、アルブミン層を設けた人
工血管基材内腔面上にエラスチンをコアセルベーション
させ、架橋剤によって架橋した人工血管は、アルブミン
とエラスチンとの接着性が良好であるため、生体内植え
込み後でもエラスチン層が剥離することがなく、長期間
にわたり優れた抗血栓性と組織適合性を併せ持ち、人工
血管内腔面での血栓形成や吻合部での組織や細胞の過剰
成長が全くないため、従来にない内径4mmφ以下の小
口径でも長期間にわたる開存性が期待できる人工血管で
あることが明白になった。

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 管状の人工血管基材の内腔面上に少なく
    ともアルブミン層とエラスチン層の2層を有することを
    特徴とする人工血管。
  2. 【請求項2】 管状の人工血管基材の内腔にアルブミン
    を水もしくは緩衝液に対して濃度が1〜50重量%にな
    る割合で加えた溶液を充填し1〜100rpmの回転数
    で回転させながら50〜80℃の熱を1分〜5時間加え
    た後、アルブミン溶液を排出し管状の人工血管基材の壁
    面内にアルブミン架橋物を形成すると同時に該管状の人
    工血管基材の内腔面上にアルブミン層を構築し、該管状
    の人工血管基材の内腔に水溶性エラスチンをpH=4〜
    7の緩衝液に対して濃度が1〜30重量%になる割合で
    加えたエラスチン溶液を4℃以上35℃未満にて充填
    し、該管状の人工血管基材を長軸方向に水平に維持しな
    がら、35〜70℃にて0.1〜10rpmの速度で該
    管状の人工血管基材の円周方向に回転させて、アルブミ
    ン層上にエラスチンをコアセルベーションさせたエラス
    チン層を構築し、内腔の溶液を排出し、次に架橋剤を水
    もしくは緩衝液に対して0.1〜10重量%になる割合
    で溶解した溶液を内腔に充填し、エラスチン層を架橋さ
    せることによって、管状の人工血管基材の内腔面上にア
    ルブミン層とエラスチン層を構築することを特徴とする
    人工血管の製造方法。
  3. 【請求項3】 管状の人工血管基材の内腔にアルブミン
    を水もしくは緩衝液に対して濃度が1〜50重量%にな
    る割合で加えた溶液を充填し1〜100rpmの回転数
    で回転させながら50〜80℃の熱を1分〜5時間加え
    た後、過剰なアルブミン溶液を排出し、次に架橋剤を水
    もしくは緩衝液に対して濃度が0.1〜10重量%にな
    る割合で加えた溶液を該管状の人工血管基材の内腔に充
    填し、4〜80℃で1〜24時間架橋して管状の人工血
    管基材壁面内にアルブミン架橋物を形成すると同時に該
    管状の人工血管基材の内腔面上に架橋アルブミン層を形
    成した後、該管状の人工血管基材の内腔に水溶性エラス
    チンをpH=4〜7の緩衝液に対して濃度が1〜30重
    量%になる割合で加えたエラスチン溶液を4℃以上35
    ℃未満にて充填し、該管状の人工血管基材を長軸方向に
    水平に維持しながら、35〜70℃にて0.1〜10r
    pmの速度で該管状の人工血管基材の円周方向に回転さ
    せて、アルブミン層上にエラスチンをコアセルベーショ
    ンさせたエラスチン層を構築し、内腔の溶液を排出し、
    次に架橋剤を水もしくは緩衝液に対して0.1〜10重
    量%になる割合で溶解した溶液を内腔に充填し、エラス
    チン層を架橋させることによって、管状の人工血管基材
    の内腔面上にアルブミン層とエラスチン層を構築するこ
    とを特徴とする人工血管の製造方法。
  4. 【請求項4】 人工血管全体に脂肪族多価アルコールが
    含浸されている請求項1記載の人工血管。
  5. 【請求項5】 管状の人工血管基材の内腔面上にアルブ
    ミン層とエラスチン層を構築し脂肪族多価アルコールを
    水又は緩衝溶液もしくは生理食塩水に対して濃度が0.
    5〜20重量%になる割合で加えた溶液に浸した後乾燥
    させる請求項2又は3記載の人工血管の製造方法。
  6. 【請求項6】 アルブミン架橋物及びアルブミン層が動
    物由来の血清アルブミンからなる請求項1記載の人工血
    管、請求項2又は3記載の人工血管の製造方法。
  7. 【請求項7】 アルブミン架橋物及びアルブミン層を架
    橋する架橋剤がジアルデヒド化合物もしくは水溶性多官
    能性エポシキ化合物である請求項1記載の人工血管、請
    求項2又は3記載の人工血管の製造方法。
  8. 【請求項8】 エラスチン層及び水溶性エラスチンに動
    物由来もしくはヒト由来のエラスチンを熱蓚酸処理して
    得られるα−エラスチンもしくはβ−エラスチン、エラ
    スチンをアルカリエタノール処理して得られるκ−エラ
    スチン、またはエラスチンを酵素処理して水溶性にした
    エラスチンを用いる請求項1記載の人工血管、請求項2
    又は3記載の人工血管の製造方法。
  9. 【請求項9】 エラスチン層が水溶性エラスチンをコア
    セルベーションさせて形成される請求項1記載の人工血
    管。
  10. 【請求項10】 エラスチン層がジアルデヒド化合物も
    しくは水溶性多官能性エポシキ化合物によって架橋され
    ている請求項1記載の人工血管、請求項2又は3記載の
    人工血管の製造方法。
  11. 【請求項11】 管状の人工血管基材が合成樹脂の繊維
    を平織りもしくはメリヤス編みにして管状としたもの、
    合成樹脂に粒状の水溶性物質を混合し押し出し成形によ
    って管状とした後、これを水中に浸すことによって多孔
    性構造としたもの、あるいは合成樹脂組成物を押出し成
    形によって管状とした後、延伸を加えて多孔性構造とし
    たもののいずれかである請求項1記載の人工血管、請求
    項2又は3記載の人工血管の製造方法。
  12. 【請求項12】 管状の人工血管基材が合成樹脂の溶液
    を棒状もしくは管状の治具にコーティングし溶媒を蒸発
    させて管状としたもの、合成樹脂を押出し成形によって
    管状としたものである請求項1記載の人工血管、請求項
    2又は3記載の人工血管の製造方法。
  13. 【請求項13】 管状の人工血管基材がポリウレタン、
    ポリエステル、もしくはポリテトラフルオロエチレンで
    ある請求項1記載の人工血管、請求項2又は3記載の人
    工血管の製造方法。
  14. 【請求項14】 水溶性エラスチンをコアセルベーショ
    ンさせる溶液がpH=4〜7の緩衝液である請求項2又
    は3記載の人工血管の製造方法。
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