JP3572400B2 - 電流制御型素子用駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電流制御型素子、例えばパワートランジスタをパルス電流で駆動する際におけるスイッチング時の損失を低減する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のパワートランジスタ用駆動回路としては、「SITを用いたフォークリフト用コントローラ」、保田 保、吉澤 敏夫、(株)豊田自動織機製作所、電気学会電子デバイス研究会資料vol.EDD−90−64、pp.57−64、1990に示すものが知られている。この従来例では小電流領域から大電流領域までパワートランジスタが過飽和にならないように工夫が施され、ベース電流の最適化が図られている。しかし、この従来例ではDC−DCコンバータのスイッチオフの間に供給するエネルギーをチョークコイル中に蓄積する必要がある。チョークコイルの単位体積当たりに蓄積できる最大のエネルギーは磁性材の特性で決まるため、大きなエネルギーの蓄積には大きなチョークコイルが必要となる。その結果、電源の小型化が制限される。さらにDC−DCコンバータの出力を安定な直流にするため、一般的にはフィードバックによる制御回路が用いられている。この制御回路によってもDC−DCコンバータの大きさおよびコストが制限され、小型・低コスト化の妨げとなる。
【0003】
上記のごとき問題を解決するため本出願人は、DC−DCコンバータを用いずに、直流電源から直接に最適なレベルのパルス電流を作り、それをパワートランジスタのベースに供給するようにしたパワートランジスタ駆動電源回路を既に出願している(特願2001−68382:未公開)。この回路においては、DC−DCコンバータを用いず直流電源から直接に最適なパルス電流を作り、パワートランジスタのベースに供給するようにしているので、回路の構成要素を従来よりも少なくでき、その結果として回路を小型・低コスト化することができる。
【0004】
図13は、上記本出願人の先行技術の回路図である。図13ではトランス3の1次巻線にスイッチSW1、SW2とダイオードDs1、Ds2からなるスイッチング回路が設けられ、このスイッチング回路を介してトランス3の1次巻線の両端が正、負それぞれの方向で直流電源2に接続される。なお、トランス3の1次巻線と2次巻線は同方向に巻かれている。トランス3の2次巻線には、1次側が直流電源の正(または負)方向に接続されたときだけ電流が流れ出る方向のダイオードD1からなる半波整流回路(全波整流回路でも可能)が設けられ、半波整流回路の出力が電流調整回路となるMOSFET−M1を介してパワートランジスタ1のベースに接続されている。MOSFET−M1のゲートはセンス回路6の出力に接続されている。センス回路6は高耐圧ダイオードHV、MOSFET−Mおよび抵抗Rによって構成され、コレクタ電圧に応じてMOSFET−M1のゲートに与える電圧を制御する。また、パワートランジスタ1のコレクタ端子は負荷(例えば誘導性負荷)5を介して電源Vccに接続されている。なお、パワートランジスタ1のエミッタ端子側に負荷を接続する場合もある。また、パワートランジスタ1のオン・オフを制御する駆動指令SG1(例えばオン・オフ信号で外部の制御装置から与えられる)は入力端子7から入力する。
【0005】
上記の回路において、スイッチSW1、SW2はパルス発振回路4から与えられるパルス信号Vg1に従ってオン・オフする。まずスイッチSW1、SW2がオンになっているとする。このときスイッチSW1、SW2を介して直流電源2からトランス3の1次巻線に向かって電流が流れ、この電流のエネルギーがトランス3のコアを励磁する。励磁されたトランス3を通って直流電源2のエネルギーが2次側に供給され、トランス3の1次側には励磁分よりも多くの電流が直流電源2から流れ込んでくる。その結果、トランス3の2次巻線からパワートランジスタ1のベースに向かって電流が供給される。次に、スイッチSW1、SW2がオフすると、トランス3のコア内に蓄積した励磁分のエネルギーがダイオードDs1、Ds2を通って直流電源2に返される。このとき半波整流回路のダイオードDによって電流がトランス3の2次巻線を流れることができない。この回路においては、トランス3以外にエネルギーを磁気として貯めることのできる要素を持っていないので、トランス3からエネルギーが通ってこなければパワートランジスタ1のベースに電流を供給することができない。結果としてパワートランジスタ1のベースにはスイッチSW1、SW2のオン・オフに従ってパルス状の電流が供給されることになる。
【0006】
次に、電流調整機能について説明する。センス回路6によってコレクタ電圧が検出され、コレクタ電圧が高いときにはMOSFET−M1のゲートに大きな電圧が加えられ、コレクタ電圧が低くなるとMOSFET−M1のゲートが低くなるように調整される。その結果、MOSFET−M1の抵抗値がコレクタ電圧に応じて変化する。コレクタ電圧が高いときにはMOSFET−M1の抵抗が小さく、その結果、制御回路のスイッチSW1、SW2がオンしたときにトランス3の2次巻線から大きな電流がパワートランジスタ1のベースに供給される。逆にベース電流が過剰に供給されるとコレクタ電圧が減少し、MOSFET−M1の抵抗が大きくなる。その結果、トランス3の2次巻線からベースに供給される電流が絞られる。このように従来ではパルス電流のオン・オフ幅を調整することによって最適なベース電流を得ていたのに対し、上記先行技術の回路ではパルス電流の高さが調整され、結果的には同様に最適なベース電流を得ることが出来る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、本出願人の先行技術では、回路の構成要素を従来よりも少なくでき、その結果として回路を小型・低コスト化することができる、という効果が得られる。しかし、上記の回路においては、次のごとき問題が残った。
図14は、図13の回路各部における信号波形を示すタイミングチャートである。図14において、Vg1はスイッチSW1、SW2のオン・オフを制御するパルス信号、V2はトランス3の2次巻線電圧、SG1はパワートランジスタ1の動作・停止を制御する駆動指令、Ibはパワートランジスタ1のベース電流、Vceはパワートランジスタ1のコレクタ・エミッタ間電圧である。
トランス3からパルス状の電流が供給可能な状態において、駆動指令SG1がHレベル(オン指令)になったとする。その結果、パワートランジスタ1のベースに電流Ibが流れる。この電流Ibが流れることによって、パワートランジスタ1にキャリヤが注入され、やがてパワートランジスタ1はオン状態に至る。パワートランジスタ1のオン状態はキャリヤの注入によって始まるが、注入と同時にフルオン状態になるわけではなく、パワートランジスタ1の主電流経路内がキャリヤで満たされ、伝導度変調状態となることによってフルオン状態に至る。したがって注入するキャリヤが少ないと、オンはするが、オン抵抗の高い状態となる。例えば、図14においてベース電流Ibのパルス1個分でパワートランジスタ1に対してフルオンできるキャリヤを注入できるものとすれば、図14に示すように、スイッチSW1、SW2を制御するパルス信号Vg1のHレベル状態の途中で駆動指令SG1がHレベルになった場合には、Ibのパルス1個分よりも少ない電荷しか注入できない。そのためパワートランジスタ1はオンはするが、図中のtpの期間はオン抵抗が高い状態となる。このような現象はパワートランジスタ1のスイッチング損失の増大につながる。
【0008】
本発明は、上記のごとき先行技術における問題点を解決し、スイッチング損失の増大を防止した電流制御型素子用駆動回路を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明においては特許請求の範囲に記載するように構成している。すなわち請求項1に記載の発明においては、直流電源とトランスを備えた電流制御型素子の駆動回路であって、前記直流電源の出力両端と前記トランスの1次巻線の両端とを正、負方向に交互に接続することによって前記トランスの1次巻線にパルス電流を流す第1のスイッチング回路と、前記トランスの1次巻線に正または負の何れか一方向の電流が流れるときに前記トランスの2次巻線に電流が流れるような方向の半波整流回路、または前記1次巻線に正負どちらの方向に電流が流れるときでも前記トランスの2次巻線に電流が流れるような全波整流回路と、前記電流制御型素子の制御端子に対して供給する電流を調整する第2のスイッチング回路と、を備え、前記トランスの2次巻線の両端と前記電流制御型素子の制御端子および一方の電源端子との間に、前記半波整流回路または前記全波整流回路の出力を前記第2のスイッチング回路を介して前記電流制御型素子の制御端子へ与えるように、前記半波整流回路または前記全波整流回路を接続し、かつ、前記トランスの1次巻線または2次巻線にパルス電流が流れるタイミングと前記第2のスイッチング回路がオンするタイミングとを同期させるように構成している。
このようにトランスの1次巻線または2次巻線にパルス電流が流れるタイミングと第2のスイッチング回路がオンするタイミングとを同期させることにより、電流制御型素子の制御端子に流れる電流は、第1のスイッチング回路のオン状態に対応した電流になるので、注入電荷が減少してオン抵抗が高い期間が生じることがなくなり、スイッチング損失を減少させることが出来る。
【0010】
また、請求項2に記載の発明においては、トランスの1次巻線または2次巻線にパルス電流が流れるタイミングを検出するタイミング検出手段と、外部から与えられる駆動信号と前記タイミング検出手段の検出結果とに応じて第2のスイッチング回路の開閉タイミングを制御する制御手段と、を備え、トランスの2次巻線の両端と電流制御型素子の制御端子および一方の電源端子との間に、半波整流回路または全波整流回路の出力を第2のスイッチング回路を介して電流制御型素子の制御端子へ与えるように、半波整流回路または全波整流回路を接続し、前記制御手段はトランスの1次巻線または2次巻線にパルス電流が流れるタイミングと第2のスイッチング回路がオンするタイミングとを同期させるように制御するものである。このように構成したことにより請求項1と同等の効果が得られる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2におけるタイミング検出手段として、電気的に絶縁された信号伝達手段を介して制御手段に検出結果を送る構成としたものである。上記の電気的に絶縁された信号伝達手段とは、例えばフォトカプラのように光信号を利用したものを用いることが出来る。このような信号伝達手段を用いることにより、トランスの2次側からだけではなく、1次側からタイミングを検出することが可能になる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明においては、タイミング制御手段は、駆動信号が入った後におけるタイミング検出手段の出力の最初の変移方向に応じて、第2のスイッチング回路を開閉するタイミングを制御することにより、駆動信号の幅が一定であれば、駆動信号が入るタイミングにかかわらず、電流制御型素子に供給するパルス電流のパルス数が一定になるように制御するものである。
【0013】
また、請求項5に記載の発明においては、タイミング制御手段は、駆動信号が入った後におけるタイミング検出手段の出力の立上りまたは立下がりの発生に応じて、第2のスイッチング回路を非導通状態から導通状態とし、駆動信号が停止した後におけるタイミング検出手段の出力の立上りまたは立下がりの発生に応じて、第2のスイッチング回路を導通状態から非導通状態とすることにより、駆動信号の幅が一定であれば、駆動信号が入るタイミングにかかわらず、電流制御型素子に供給するパルス電流のパルス数が一定になるように制御するものである。
【0014】
また、請求項6に記載の発明においては、トランスが複数の2次巻線を有し、各2次巻線に2次側の各回路が接続され、トランスの1次側は共通の1組の回路とすることにより、一つのトランスと一つの1次側回路で、複数の電流制御型素子に駆動電力を供給できるように構成したものである。このように構成することにより、一つのトランスと一つの1次側回路で、複数の電流制御型素子に駆動電力を供給できるので、構成部品をさらに減少させることが出来、全体の回路を小型化することが出来る。
【0015】
また、請求項7に記載の発明においては、複数の2次巻線毎に、第2のスイッチング回路の開閉タイミングを制御するタイミング制御手段を備え、2次側の各回路毎に、2次巻線にパルス電流が流れるタイミングと第2のスイッチング回路がオンするタイミングとを同期させるように構成している。
【0016】
【発明の効果】
請求項1、請求項2に記載の発明においては、電流制御型素子がターンオンする際には必ずパルス1個分のベース電流が流れ、速やかに電流制御型素子をフルオン状態にすることができる。したがってスイッチング損失の増大を防ぐことが可能になるという効果が得られる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明においては、フォトカプラのような電気的に絶縁された信号伝達手段を用いることにより、トランスの1次側から直接にタイミングを検出することが出来る。
【0018】
また、請求項4、請求項5に記載の発明においては、駆動信号の幅が一定であれば、駆動信号が入るタイミングにかかわらず、電流制御型素子に供給するパルス電流のパルス数が一定になるように制御することが出来るので、同じ長さの駆動信号を入力しているにも関わらず、電流制御型素子に供給する電流パルスの数が異なるという事態が発生するおそれがない。
【0019】
また、請求項6に記載の発明においては、パルス電源の1次側を共通化することによってコストを低減することができる。
【0020】
また、請求項7に記載の発明においては、各電流制御型素子に対する駆動信号がパルス電源の周期に対してばらばらに入ってきても、2次側で駆動信号とパルス周期のタイミングを合わせているので、それぞれのスイッチング回路の各電流制御型素子のスイッチング損失の増大を防ぐことが可能である。つまり、パルス電源の1次側を共通化することによってコスト低減を図り、複数のパワートランジスタの制御の自由度を確保しつつ、スイッチング損失の増大を防ぐことができる、という効果が得られる。
【0021】
【発明の実施の形態】
(第1の実施例)
図1は本発明の第1の実施例を示す回路図である。
【0022】
図1において、パルス発生回路4と直流電源2とダイオードDs1およびDs2とスイッチSW1およびSW2とトランス3はパルス電源8を構成している。また、パルス周期センス回路9はMOSFET−MSと一端が所定の電位Vdにつながれた抵抗R1によって構成され、MOSFET−MSのゲートがトランス3の出力の一端に、ソースまたはドレインがトランス3の出力の他端に接続されている。このパルス周期センス回路9の出力PTは、D−FFから構成されるタイミング制御回路10のクロック入力端子に接続されている。タイミング制御回路10の出力Vg11は、センス回路6を介して電流調整回路となるMOSFET−M1のゲートに与えられる。なお、本発明においては、センス回路6は必須の構成要素ではなく、省略することも出来る。その場合にはVg11が直接にMOSFET−M1のゲートに与えられる。センス回路6の作用効果は前記先行技術で説明した内容と同じである。
【0023】
その他、ダイオードD1からなる半波整流回路(全波整流回路でも可能)が設けられ、半波整流回路の出力が電流調整回路となるMOSFET−M1を介してパワートランジスタ1のベースに接続されている。MOSFET−M1のゲートはセンス回路6の出力に接続されている。センス回路6は高耐圧ダイオードHV、MOSFET−Mおよび抵抗Rによって構成され、コレクタ電圧に応じてMOSFET−M1のゲートに与える電圧を制御する。また、パワートランジスタ1のコレクタ端子は負荷(例えば誘導性負荷)5を介して電源Vccに接続されている。
【0024】
図2は、図1の回路各部の波形図である。以下、図2に基づいて図1の回路の動作を説明する。
パルス電源8は、パルス発生回路4の出力Vg1で、スイッチSW1およびSW2を所定の周期でオン・オフさせることにより、図2のV2に示すようなパルスをトランス3の2次側に出力するものとする。
パルス周期センス回路9は、パルス電源8の出力に応じてMOSFET−MSをオン・オフすることにより、パルス電源8の周期に同期した信号PTを出力する。また、タイミング制御回路10のD−FFはクロック端子CKに入力するパルス周期センス回路の出力PTの立ち上がりで駆動指令SG1をラッチする。なお、ここでは、パルス周期センス回路9とタイミング制御回路10は図示した構成としたが同様な動作をする他の回路でも良い。また、図1において、パワートランジスタ1はパルス電源8の出力パルス1個分でフルオン状態に至るものとする。
【0025】
上記のように、駆動指令SG1の入力後にVg11が立ち上がるタイミングをPT(パルス電源8の出力に同期)と同期させた結果、図2の時点t1までは、MOSFET−M1のゲート信号レベル(図2のVg11)はLレベルで、MOSFET−M1はオフとなっている。よって、パワートランジスタ1に対してはベース電流Ibが流れず、パワートランジスタ1はオフ状態である。時点t1以降はMOSFET−M1のゲート信号レベルはHレベルとなってMOSFET−M1はオンする。そのためパワートランジスタ1に対しては、まずパルス一つ分のベース電流が流れ、パワートランジスタ1は速やかにフルオン状態に至る。MOSFET−M1がオンしている間はダイオードD1により半波整流されたベース電流が流れ、MOSFET−M1がオフするとパワートランジスタ1はやがてオフ状態となる。
【0026】
上記のように、第1の実施例では、トランジスタパワートランジスタ1へのベース電流の供給源であるパルス電源8のパルス出力の周期と、パワートランジスタ1へのベース電流をコントロールするMOSFET−M1のオンとを同期させることにより、従来例にみられたようにパルス周期の途中でMOSFET−M1がオンすることがなく、パワートランジスタ1がターンオンする際には必ずパルス1個分のベース電流が流れ、速やかにパワートランジスタ1をフルオン状態にすることができる。したがってスイッチング損失の増大を防ぐことが可能になるという効果が得られる。
【0027】
(第2の実施例)
図3は本発明の第2の実施例を示す回路図である。第1の実施例と同様な構成については同じ記号で示している。第1の実施例との違いは、パルス周期センス回路9としてフォトカプラPCを用い、パルス発生回路4の出力Vg1を直接に検出している点である。その他の動作は第1の実施例と同じである。フォトカプラPCのように電気的に絶縁された信号伝達手段を介して信号を伝送すれば、トランス3の1次側から直接にタイミングを検出することが出来る。なお、フォトカプラに限らず、電気的に絶縁された信号伝達手段であれば同様に適用可能である。
【0028】
(第3の実施例)
図4は本発明の第3の実施例を示す回路図である。第1の実施例と同様な構成については同じ記号で示している。第1の実施例との違いは、第1の実施例が半波整流することによってパルス電源の正側出力のみを使用していたのに対し、ダイオードD1をMOSFET−M2とダイオードとの並列回路に置き換え、パルス電源の負側出力も使用する点が異なる。なお、パルス周期センス回路9、タイミング制御回路10の中身は図1または図3と同様なので、ブロックのみを示している。また、センス回路6は表示を省略したが、図1、図3と同様に設けてもよい。
【0029】
以下、動作を図5を併用して説明する。図5は、回路各部の波形である。第1の実施例と同様に、駆動指令SG1をパルス周期センス回路9の出力PTの立ち上りでラッチし、MOSFET−M1のゲート駆動信号Vg11としている。またVg11をNOT回路INVで反転した信号Vg12を作り、これをMOSFET−M2のゲート端子へ入力している。したがってMOSFET−M1をオンさせている時はMOSFET−M2はオフであり、MOSFET−M2の両端は並列接続されたダイオードによって導通するので、トランス3とMOSFET−M1はつながれていることと同じ、つまり第1の実施例と同じである。そのため時点t1〜t2の動作は、第1の実施例と同じである。時点t2以降の動作は、MOSFET−M1がオフ、MOSFET−M2がオンになり、t1〜t2の動作におけるMOSFET−M2とMOSFET−M1の役割が逆となる。つまり、MOSFET−M1に並列接続されたダイオードが半波整流用として動作する。よってパルス電源8の負側パルスに同期して、パワートランジスタ1からベース電流Ibが引き出されることになる。上記の構成により、本実施例では第1の実施例にくらべて素早くオン状態からオフ状態へ遷移するという効果が得られる。
【0030】
(第4の実施例)
図6は本発明の第4の実施例を示す回路図である。この実施例は複数のパワートランジスタを持ったシステムの例である。本例ではパワートランジスタとその駆動回路込みでスイッチング回路と記述している。スイッチング回路の部分はほぼ第3の実施例と同じであるが、勿論第1または第2の実施例と同じでもよい。この例においては、スイッチング回路はAとBの2個有する場合を示している。構成上の特徴は、トランス3の1次側回路を共通にし、トランス3の2次側回路をパワートランジスタの数だけ設けている。そしてパルス電源のパルス周期の検知は各2次巻線毎に行ない、タイミング制御回路10も各スイッチング回路毎に設けている。したがって、各パワートランジスタに対する駆動指令がパルス電源8の周期に対してばらばらに入ってきても、2次側で駆動指令とパルス周期のタイミングを合わせているので、それぞれのスイッチング回路の各パワートランジスタのスイッチング損失の増大を防ぐことが可能である。つまり、本実施例では、パルス電源8の1次側を共通化することによってコスト低減を図り、複数のパワートランジスタの制御の自由度を確保しつつ、スイッチング損失の増大を防ぐことができる、という効果が得られる。
【0031】
なお、パルス電源8のパルス周期は共通の一つのみなので、例えば第2の実施例のように、フォトカプラを用いて1次側でパルス周期を検出したり、2次側全体でパルス周期センス回路9を1個のみ設けた場合でも、タイミング制御回路10を各スイッチング回路毎に設ければ、各駆動指令にそれぞれ同期して各スイッチング回路を制御することが出来る。
【0032】
(第5の実施例)
図7は本発明の第5の実施例を示す回路図である。これは第4の実施例と同様に複数のパワートランジスタを持ったシステムでの実施例であり、直流電源で3相モータを駆動する際に用いられるインバータ回路ヘの適用例である。本例でも第4の実施例と同様に、パワートランジスタとその駆動回路込みでスイッチング回路と記述している。すなわち、スイッチング回路A1とスイッチング回路A2でハーフブリッジを構成して3相モータ11のU相を制御し、同様にスイッチング回路B1とスイッチング回路B2でV相を、スイッチング回路C1とスイッチング回路C2でW相を制御する。スイッチング回路の部分はほぼ第3の実施例と同じであるが、2個のスイッチング回路のパワートランジスタが直列に接続され、その直列回路の一端が電源Vccへ、他の一端が接地されてハーフブリッジを構成し、上記直列回路の接続点から3相モータ11の各相へ接続されている。
【0033】
構成上の特徴は、それぞれのハーフブリッジごとに、つまり2個のスイッチング回路ごとにトランスを有し、各トランスには2組の2次巻線を備え、それぞれの2次巻線ごとにスイッチング回路を構成している。ただし、1次側ではトランス以外の回路は全てに共通の1組のみである。また、それぞれのスイッチング回路ごとに、パルス電源8のパルス周期の検知を2次側で行ない、かつ、タイミング制御回路10を設けて各駆動指令との同期を図っている。
【0034】
本実施例においても、第4の実施例と同様に、各パワートランジスタに対する駆動指令がパルス電源8の周期に対してばらばらに入ってきても、2次側でタイミングを合わせているので、それぞれのスイッチング回路の各パワートランジスタのスイッチング損失の増大を防ぐことが可能である。
【0035】
なお、パルス電源を用いた駆動において、パワートランジスタに対し、瞬時にベース電流を流すことがスイッチング損失を増大させないことにつながることは、前述した。つまり2次側回路に瞬時に大電流を流そうとした場合、2次側回路のインダクタンスは小さい必要があり、これは2次側回路の配線長は極力短くするということに他ならない。原理的には3つのハーフブリッジに対して、1つのトランスで実現することは可能であるが、物理的にそれぞれのハーフブリッジの間には、或る距離が発生する。2次側回路の配線長さを極小としようとした場合、トランス1個であると2次側回路のインダクタンスの大きさには、おのずと限界があり、必要な性能を満足できないという事態が発生するおそれがある。本実施例のようにハーフブリッジごとにトランスを配置すれば、これに対処することができる。なお、通常トランスの1次側の巻数は2次側の巻数より大きいため、1次側に流れる電流は少なく、よって1次側の配線長は長くなっても問題はない。
【0036】
(第6の実施例)
図8は本発明の第6の実施例を示す回路図である。本例は、第1の実施例の問題点を改善した実施例であり、図9は図8の回路各部における波形図である。 まず、第1の実施例の問題点を図10を用いて説明する。これは、同じ長さの駆動指令を異なるタイミングで動作させた場合の回路各部の波形である。図10において、駆動指令タイミング1と駆動指令タイミング2は図示のように異なったタイミングで駆動指令が入力した場合を示す。図10から判るように、駆動指令の入力タイミングが異なると、Vg11の長さが異なり、同じ長さの駆動指令を入力しているにも関わらず、パワートランジスタに供給する電流パルスの数(Ibのパルス数)が異なるという事態が発生する。このような事態は駆動指令に対しての動作精度が悪いことを意味しており、この回路をインバータ回路などに用いてモータを駆動した場合には、インバータの出力電流が歪み、結果としてモータの効率が落ちたり、動作音が大きくなるといったような問題が発生する。この問題点を改善したのが、本実施例である。
【0037】
他の実施例との違いはタイミング制御回路10の内容である。この回路は、2つのEN(イネーブル)端子付きのD−FF1およびD−FF2と、2つNOT回路と、1つのOR回路で構成される。このときD−FF1は、PTの立ち上りで、入力であるDの値(駆動指令)をラッチするものとし、D−FF2はPTの立ち下がりでラッチするものとする。また、EN端子がHレベルのときイネーブルとする。
【0038】
本制御回路は図9に示すように、駆動指令が入った直後におけるPTの変移方向を参照してタイミングを取るように動作する。つまり駆動指令が入った直後にPTが立ち上がったら、その後はPTの立ち上がりでラッチを行い、駆動指令が入った直後にPTが立ち下がったら、その後はPTの立ち下がりでラッチを行う。例えば、駆動指令タイミング1に示すように、駆動指令が入った直後にPTが立ち上がったら、そのPTの立ち上がりでVg11はHレベルになり、駆動指令が立ち下がった後に、PTが立ち上がったときVg11はLレベルに戻る。また、駆動指令タイミング2に示すように、駆動指令が入った直後にPTが立ち下がったら、そのPTが立ち下がりでVg11はHレベルになり、駆動指令が立ち下がった後に、PTが立ち下がったときVg11はLレベルに戻る。したがって図9の例では、ベース電流Ibのパルスはどちらのタイミングでも共に3個が入力されることになる。つまり、駆動指令の幅が一定であれば、駆動指令の入るタイミングにかかわらずパワートランジスタに供給するパルスの数は一定となる。
【0039】
(第7の実施例)
図11は本発明の第7の実施例を示す回路図であり、図12は図11の回路各部における波形図である。本実施例もタイミング制御回路10の内容が異なっている。この回路はD−FF3およびD−FF4と、4つのNOT回路と、4つのAND回路と、1つのOR回路で構成される。この実施例では、図12に示すように、Vg11がLレベルからHレベルに変わる時は、PTの立ち上りで変化し、HレベルからLレベルに変わる時はPTの立ち下がりで動作する。つまり駆動指令が立ち上がった後、PTが立ち上がったときVg11はHレベルになり、駆動指令が立ち下がった後に、PTが立ち下がったときVg11はLレベルに戻る。これにより、第6の実施例と同様に、駆動指令の幅が一定であれば、駆動指令が入るタイミングにかかわらず、パワートランジスタに供給するパルスが一定になるようにしたものである。
【0040】
なお、第6、第7の実施例に示すタイミング制御回路10の論理回路は一例であり、駆動指令の幅が一定であれば、駆動指令が入るタイミングにかかわらず、パワートランジスタに供給するパルスが一定になるように論理回路を構成すればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の回路図。
【図2】図1の回路各部の波形図。
【図3】本発明の第2の実施例の回路図。
【図4】本発明の第3の実施例の回路図。
【図5】図4の回路各部の波形図。
【図6】本発明の第4の実施例の回路図。
【図7】本発明の第5の実施例の回路図。
【図8】本発明の第6の実施例の回路図。
【図9】図8の回路各部の波形図。
【図10】第1の実施例における問題点を説明するための波形図。
【図11】本発明の第7の実施例の回路図。
【図12】図11の回路各部の波形図。
【図13】従来例の回路図。
【図14】図13の回路各部の波形図。
【符号の説明】
1…パワートランジスタ 2…直流電源
3…トランス 4…パルス発振回路
5…負荷 6…センス回路
7…入力端子 8…パルス電源
9…パルス周期センス回路 10…タイミング制御回路
11…3相モータ
SW1、SW2…スイッチ Ds1、Ds2…ダイオード
D1…半波整流回路を構成するダイオード
Claims (7)
- 直流電源とトランスを備えた電流制御型素子の駆動回路であって、
前記直流電源の出力両端と前記トランスの1次巻線の両端とを正、負方向に交互に接続することによって前記トランスの1次巻線にパルス電流を流す第1のスイッチング回路と、
前記トランスの1次巻線に正または負の何れか一方向の電流が流れるときに前記トランスの2次巻線に電流が流れるような方向の半波整流回路、または前記1次巻線に正負どちらの方向に電流が流れるときでも前記トランスの2次巻線に電流が流れるような全波整流回路と、
前記電流制御型素子の制御端子に対して供給する電流を調整する第2のスイッチング回路と、を備え、
前記トランスの2次巻線の両端と前記電流制御型素子の制御端子および一方の電源端子との間に、前記半波整流回路または前記全波整流回路の出力を前記第2のスイッチング回路を介して前記電流制御型素子の制御端子へ与えるように、前記半波整流回路または前記全波整流回路を接続し、
かつ、前記トランスの1次巻線または2次巻線にパルス電流が流れるタイミングと前記第2のスイッチング回路がオンするタイミングとを同期させたことを特徴とする電流制御型素子用駆動装置。 - 直流電源とトランスを備えた電流制御型素子の駆動用電源回路であって、
前記直流電源の出力両端と前記トランスの1次巻線の両端とを正、負方向に交互に接続することによって前記トランスの1次巻線にパルス電流を流す第1のスイッチング回路と、
前記トランスの1次巻線に正または負の何れか一方向の電流が流れるときに前記トランスの2次巻線に電流が流れるような方向の半波整流回路、または前記1次巻線に正負どちらの方向に電流が流れるときでも前記トランスの2次巻線に電流が流れるような全波整流回路と、
前記電流制御型素子の制御端子に対して供給する電流を調整する第2のスイッチング回路と、
前記トランスの1次巻線または2次巻線にパルス電流が流れるタイミングを検出するタイミング検出手段と、
外部から与えられる駆動信号と前記タイミング検出手段の検出結果とに応じて前記第2のスイッチング回路の開閉タイミングを制御するタイミング制御手段と、を備え、
前記トランスの2次巻線の両端と前記電流制御型素子の制御端子および一方の電源端子との間に、前記半波整流回路または前記全波整流回路の出力を前記第2のスイッチング回路を介して前記電流制御型素子の制御端子へ与えるように、前記半波整流回路または前記全波整流回路を接続し、
かつ、前記タイミング制御手段は前記トランスの1次巻線または2次巻線にパルス電流が流れるタイミングと前記第2のスイッチング回路がオンするタイミングとを同期させるように制御することを特徴とする電流制御型素子用駆動装置。 - 前記タイミング検出手段は、前記トランスの1次巻線にパルス電流が流れるタイミングを検出し、かつ、電気的に絶縁された信号伝達手段を介して前記制御手段に検出結果を送るものであることを特徴とする請求項2に記載の電流制御型素子用駆動装置。
- 前記タイミング制御手段は、前記駆動信号が入った後における前記タイミング検出手段の出力の最初の変移方向に応じて、前記第2のスイッチング回路を開閉するタイミングを制御することにより、前記駆動信号の幅が一定であれば、前記駆動信号が入るタイミングにかかわらず、前記電流制御型素子に供給するパルス電流のパルス数が一定になるように制御することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電流制御型素子用駆動装置。
- 前記タイミング制御手段は、前記駆動信号が入った後における前記タイミング検出手段の出力の立上りまたは立下がりの発生に応じて、前記第2のスイッチング回路を非導通状態から導通状態とし、前記駆動信号が停止した後における前記タイミング検出手段の出力の立上りまたは立下がりの発生に応じて、前記第2のスイッチング回路を導通状態から非導通状態とすることにより、前記駆動信号の幅が一定であれば、前記駆動信号が入るタイミングにかかわらず、前記電流制御型素子に供給するパルス電流のパルス数が一定になるように制御することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電流制御型素子用駆動装置。
- 前記トランスが複数の2次巻線を有し、
各2次巻線に前記2次側の各回路が接続され、前記トランスの1次側は共通の1組の回路とすることにより、一つのトランスと一つの1次側回路で、複数の電流制御型素子に駆動電力を供給できるように構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の電流制御型素子用駆動装置。 - 前記複数の2次巻線毎に、前記第2のスイッチング回路の開閉タイミングを制御するタイミング制御手段を備え、
2次側の各回路毎に、2次巻線にパルス電流が流れるタイミングと前記第2のスイッチング回路がオンするタイミングとを同期させるように制御することを特徴とする請求項6に記載の電流制御型素子用駆動装置。
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