JP3571999B2 - 平面アンテナ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、小型で、広い周波数範囲にわたって良好な(低い)軸比特性を有する円偏波平面アンテナに係るもので、誘電体平面アンテナと90°位相調整回路(以下90°ハイブリッドという)を用いて構成されるものである。
【0002】
【従来の技術】
パッチ電極を用いた従来の誘電体平面アンテナによる円偏波アンテナは1点給電が主で、良軸比を呈する周波数範囲は狭かった。GPSは中心周波数が1575.42MHzで±1.023MHzの周波数範囲で比帯域幅は0.13%と狭く、良軸比の周波数範囲を広くする必要はない。したがって、1点給電のマイクロストリップ円偏波アンテナで問題がなかった。
【0003】
しかし、通信・放送に利用される周波数が高くなって、例えば2450MHz±50MHzのISMバンドを用いる無線LANでは、比帯域幅が4.1%になり、良軸比−周波数範囲を広くする必要がある。
【0004】
従来90°ハイブリッドを用いた円偏波アンテナは、1素子のみを用いる用途に使用されることが少なく、高利得で狭指向性アンテナを得るために図11に示したような配列構成のアンテナで放射電極と90°ハイブリッドを、図10に示したように、同一平面に構成することが多く、放射電極パッチよりも90°ハイブリッドの方が広い面積を有するようになり、小型化には向いていなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、2450MHz帯の無線LANだけでなく、5150〜5250MHz帯無線LANおよび5250〜5350MHz無線アクセス、5795〜5845MHz帯ETCや衛星ディジタル放送などの、良軸比を広帯域にわたって必要とする通信に用いることのできる小型の円偏波平面アンテナを提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、誘電体平面アンテナと90°ハイブリッドを重ねて配置して、誘電体平面アンテナの裏面に90°ハイブリッドが収容される構造を採用することによって、上記の課題を解決するものである。また、その90°ハイブリッドと同軸線、並びにアンテナとの接続構造を改良することによって、さらにその特性の改善を図るものである。
【0007】
すなわち、誘電体基板上の正方形の導体パターンの直交する2軸方向の共振モードを用い、対向する辺の中点を結ぶ線上の50Ω整合点にそれぞれ給電点を有する誘電体平面アンテナ素子と、
1周1波長の閉じた導体パターンに接続される、それぞれの給電点に接続される2つのポートと、送信または受信系回路に接続される2つの同軸線接続側ポートを具えた90°ハイブリッドを具えた平面アンテナにおいて、
上記90°ハイブリッドは、2層以上の配線基板に構成され、給電点に接続される2つのポートが、閉じた導体パターンの内側に引き出され、アースパターンが閉じた導体パターンを囲んで形成され、
上記内側に引き出された導体パターンが誘電体平面アンテナの給電点と接続され、上記閉じた導体パターンのポートおよびアースパターンがそれぞれ同軸線の芯線と外線に接続され、
90°ハイブリッドが誘電体平面アンテナ素子の裏面に配置されたことに特徴を有するものである。
【0008】
誘電体基板上の正方形の導体パターンの直交する2軸方向の共振モードを用い、対向する辺の中点を結ぶ線上の50Ω整合点にそれぞれ給電点を有する誘電体平面アンテナ素子と、
1周1波長の閉じた導体パターンに接続される、それぞれの給電点に接続される2つのポートと、送信または受信系回路に接続される2つの同軸線接続側ポートを具えた90°ハイブリッドを具えた平面アンテナにおいて、
上記90°ハイブリッドは、ほぼ正方形の配線基板に構成され、給電点に接続される2つのポートが、閉じた導体パターンの内側に引き出され、アースパターンが閉じた導体パターンを囲んで形成され、
上記内側に引き出された導体パターンが誘電体平面アンテナの給電点と接続され、上記閉じた導体パターンのポートおよびアースパターンがそれぞれ配線基板の角の位置で同軸線に接続され、
90°ハイブリッドが誘電体平面アンテナ素子の裏面に配置されたことに特徴を有するものである。
【0009】
更に、誘電体基板上の正方形の導体パターンの直交する2軸方向の共振モードを用い、対向する辺の中点を結ぶ線上の50Ω整合点にそれぞれ給電点を有する誘電体平面アンテナ素子と、
1周1波長の閉じた導体パターンに接続される、それぞれの給電点に接続される2つのポートと、送信または受信系回路に接続される2つの同軸線接続側ポートを具えた90°ハイブリッドを具えた平面アンテナにおいて、
上記90°ハイブリッドは、正方形の配線基板に構成され、給電点に接続される2つのポートが、閉じた導体パターンの配線基板の角の位置から内側に引き出され、アースパターンが閉じた導体パターンを囲んで形成され、
上記内側に引き出されたポートの導体パターンが誘電体平面アンテナの給電点と接続され、上記閉じた導体パターンおよびアースパターンがそれぞれ配線基板の角の位置で同軸線の芯線と外線に接続され、
給電点、同軸線に接続されない上記90°ハイブリッドの端子は、配線基板に形成された導体パターンによるインピーダンス素子を介してアースパターンと接続され、
90°ハイブリッドが誘電体平面アンテナ素子の裏面に配置されたことに特徴を有するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明による平面アンテナの構成要素は、次のものである。
正方形または円形のパッチで構成され、2軸方向の整合点に2つの給電点を具えた放射電極を有する誘電体平面アンテナ、
片面の導体がアンテナのグラウンド電極となり、もう一方の表面に90°ハイブリッドとそのポートとなる導体パターン、それらを囲むアースパターンが形成された2層の配線基板、そして
90°ハイブリッドのポートとアースパターンに接続される同軸線、
である。
【0011】
同軸線の引き出しを配線基板の対角線方向とする構造を採用したり、同軸線あるいはアンテナと接続しないポートとの整合接続を配線基板のパターンで実現して、特性を更に改善するものである。
【0012】
【実施例】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0013】
図1は本発明の実施例を示す、(A)は平面図、(B)は正面図である。アンテナ素子11は、2450MHzの中心周波数で帯域幅を100MHzとする場合、誘電率8の26mm角で厚さが6mmの誘電体基板の表面に20mm角のパッチ12を形成したものである。パッチの直交する角辺の中心線上の2つの50Ω点に各1本の給電ピンが挿通され、X方向とY方向の偏波軸が直交する2つの独立したマイクロストリップアンテナから構成されるものである。
【0014】
配線基板14の片方の面は、アンテナ素子の給電ピンの位置にクリアランスをとるほかは全面をグラウンドパターンとし、マイクロストリップアンテナ素子のグラウンド導体とする。給電は後に説明する90°ハイブリッドを介して行うが、外部回路との接続は同軸線17を介して行う。
【0015】
図2は、配線基板の一例を示す平面図である。表裏2層の配線基板24の片面に形成する導体パターンの例を示すものである。1周が1波長で90°ごとに特性インピーダンスが34.5Ωと50Ωに変えられた1周70.4mm(直径約22.4mm)で角が円形でその間が直線の90°ハイブリッドの導体パターン25を形成したものである。これらの導体パターン25の周囲はアースパターン26で囲まれる。配線基板24の裏面は上記のようにほぼ全面にグラウンドパターンが形成されている。
【0016】
1つの50Ωのアーム部分の両端より閉じたパターン25の内側に特性インピーダンスが50オームの2本の長さの等しい導体パターン28を引き出す。この導体パターン28はアンテナ素子の給電点に対応する位置まで形成され、ピンで放射電極と接続される。
【0017】
他の50Ωのアームの両端の一方は50オームの特性インピーダンスで図示しない同軸線に接続される。すなわち、50Ωのアームの一端が同軸線の芯線と接続され、アースパターンが同軸線の外線に接続される。もう一方の端部はアースパターン26とやはり50Ωの整合インピーダンスで接続される。通常、チップ抵抗をはんだ付けして所定のインピーダンスに合わせ込んでいる。アースパターン26は対向面の全面グラウンドパターンとスルーホール等で接続しておく。
【0018】
2点給電円偏波アンテナの良軸比−周波数特性が良いのは以下の理由である。正方形の放射パターンはX方向とY方向と2つの直交するアンテナとして共振し、中心周波数の近傍の周波数では、円偏波に対してX方向共振で誘起される受信電力、およびY方向共振で誘起される受信電力は等しく、両者の比をデシベルで表わした軸比は低い良好な値を示す。受信出力を取り出すためにX、Y各辺の中心の垂線上に50Ωの給電点がある2点給電マイクロストリップアンテナの出力を、入力2ポート、出力2ポートの90°ハイブリッドで合成すると、出力ポートの一端には右旋偏波出力が得られ、他端には左旋偏波出力が得られる。
【0019】
図2に示した配線基板を用いて、給電基板24の辺の中央部に同軸線を接続しそのまま中央部から引き出したときの周波数帯幅の端での放射角ごとの軸比と中心周波数での放射角ごとの軸比特性を図3に示す。すなわち、同軸線の芯線を辺の中心線の位置で辺に垂直の方向に引き出した時のものである。棒長が長いほど軸比が悪いことを示している。この場合、軸比は十分とは言えない。
【0020】
同軸線のアームとの接続位置は図2に示した例と同じとし、外部への引き出し位置を配線基板の対角線方向としたときの特性を図4に示す。このように、引き出し方向を変えるだけで軸比を改善できる。
【0021】
図5は、本発明の他の実施例を示す平面図で、90°ハイブリッドの形状を変えたものである。この例では、90°ハイブリッドパターン55は正方形の配線基板の対角線上にアームの接続点が位置するように配置され、50Ωのアームの両端から内側にアンテナ素子の給電点に対応する位置まで50Ωの長さの等しい導体パターン58が形成されている。
【0022】
図6は、図5に示した90°ハイブリッドと同軸線との接続構造を示すもので、90°ハイブリッドパターン65の接続点から外側に引き出したパターンに同軸線67の芯線を接続し、アースパターン66に外線を接続したものである。このように、角部で引き出すことによってグラウンド板のサイズがX方向、Y方向で等価な寸法になり、この結果軸比−周波数範囲が拡大する。
【0023】
誘電体アンテナ素子の誘電率でアンテナ素子のサイズが決まり、また配線基板の誘電率で90°ハイブリッドパターンのサイズがきまる。配線基板の誘電率を実効的にアンテナ素子の基板の誘電率の40%〜130%にすれば、アンテナ素子の裏面に90°ハイブリッドのパターンを収容することができる。
【0024】
90°ハイブリッドの入力ポートは互いに直交するアンテナの給電点に接続されるが、受信または送信回路に接続されるポート対は通常片側のみを使用する。不使用ポートを開放のままとすると、図7に示したように、中心周波数では軸比がよいが、±50MHzでは整合が大きく乱れて特性が劣化する。これを50Ωで整合をとると、図8に示したように、広帯域で軸比が良好となる。
【0025】
整合をとるために抵抗を接続する場合にはマウントの工程が必要となり、はんだ印刷−マウント−リフローの工程が付加されることになる。これを使用する周波数で50Ωのインピ−ダンスとなるような導体パターンで置きかえられれば製造工数を減少させることができる。
【0026】
そこで、ミアンダの導体パターンを90°ハイブリッドの形成時に作りこむことが考えられる。例えば2.45GHzで50Ωになるためには、L=Z/(2πf)の関係から3.3nHのインダクタンスを形成すればよい。図9は90°ハイブリッドの接続点とアースパターン間にミアンダの導体パターン99を形成した例である。
【0027】
これまでの説明は正方形のアンテナ素子の例を用いて行ったが、アンテナ素子は円形であってもよい。また、90°ハイブリッドを構成する配線基板は3層以上のものを用いてトリプレート構成としてもよい。なお、同軸線の代りに、部分グラウンド導体と反対面のマイクロストリップ線路を用い、マイクロストリップ線路をハイブリッドポートに接続するようにしてもよい。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、アンテナ素子の裏面に90°ハイブリッドを収容することができるので、極めて小型の平面アンテナが得られる。
【0029】
また、同軸線の引き出し方向を配線基板の対角線方向とすることによって、良好な軸比が広い周波数帯にわたって得ることができ、広い範囲の良軸比が要求される通信に適した平面アンテナが得られる。
【0030】
更に、整合を得るインピーダンスを90°ハイブリッドと一体に、かつ同時に形成できるので、製造工数が少なく、信頼性も高い平面アンテナが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す(A)は平面図、(B)は正面図
【図2】本発明に用いる配線基板の1例の平面図
【図3】本発明による平面アンテナの特性の説明図
【図4】本発明による平面アンテナの特性の説明図
【図5】本発明に用いる配線基板の1例の平面図
【図6】本発明の実施例の部分平面図
【図7】本発明による平面アンテナの特性の説明図
【図8】本発明による平面アンテナの特性の説明図
【図9】本発明の実施例の部分平面図
【図10】従来の平面アンテナの平面図
【図11】従来の平面アンテナの平面図
【符号の説明】
11:アンテナ素子
14、24:配線基板
25、55、65:90°ハイブリッド
26、66:アースパターン
17、67:同軸線

Claims (10)

  1. 誘電体基板上の正方形の導体パターンの直交する2軸方向の共振モードを用い、対向する辺の中点を結ぶ線上の50Ω整合点にそれぞれ給電点を有する誘電体平面アンテナ素子と、
    1周1波長の閉じた導体パターンに接続される、それぞれの給電点に接続される2つのポートと、送信または受信系回路接続される2つの同軸線接続側ポートを具えた90°ハイブリッドを具えた平面アンテナにおいて、
    上記90°ハイブリッドは、配線基板の片面に構成され、給電点に接続される2つのポートが閉じた導体パターンの内側に引き出され、アースパターンが閉じた導体パターンを囲んで形成され、
    上記内側に引き出された導体パターンが誘電体平面アンテナの給電点に接続され、上記閉じた導体パターンのポートおよびアースパターンがそれぞれ配線基板の角の位置で同軸線の芯線と外線に接続され、
    90°ハイブリッドが誘電体平面アンテナ素子の裏面に配置されたことを特徴とする平面アンテナ。
  2. 前記配線基板の90°ハイブリッドが形成された表面の裏面が誘電体平面アンテナのグラウンド導体となる請求項1記載の平面アンテナ。
  3. 前記配線基板の誘電率が前記誘電体平面アンテナの誘電体基板の誘電率の40%〜130%である請求項1または請求項2記載の平面アンテナ。
  4. 誘電体基板上の正方形の導体パターンの直交する2軸方向の共振モードを用い、対向する辺の中点を結ぶ線上の50Ω整合点にそれぞれ給電点を有する誘電体平面アンテナ素子と、
    1周1波長の閉じた導体パターンに接続される、それぞれの給電点に接続される2つのポートと、送信または受信系回路接続される2つの同軸線接続側ポートを具えた90°ハイブリッドを具えた平面アンテナにおいて、
    上記90°ハイブリッドは、ほぼ正方形の配線基板の片面に構成され、給電点に接続される2つのポートが閉じた導体パターンの配線基板の角の位置から内側に引き出され、アースパターンが閉じた導体パターンを囲んで形成され、
    上記内側に引き出されたポートの導体パターンが誘電体平面アンテナの給電点に接続され、上記閉じた導体パターンのポートおよびアースパターンがそれぞれ配線基板の角の位置で同軸線の芯線と外線に接続され、
    90°ハイブリッドが誘電体平面アンテナ素子の裏面に配置されたことを特徴とする平面アンテナ。
  5. 前記配線基板の90°ハイブリッドが形成された表面の裏面が誘電体平面アンテナのグラウンド導体となる請求項4記載の平面アンテナ。
  6. 前記配線基板の誘電率が前記誘電体平面アンテナの誘電体基板の誘電率の40%〜130%である請求項4記載の平面アンテナ。
  7. 誘電体基板上の正方形の導体パターンの直交する2軸方向の共振モードを用い、対向する辺の中点を結ぶ線上の50Ω整合点にそれぞれ給電点を有する誘電体平面アンテナ素子と、
    1周1波長の閉じた導体パターンに接続される、それぞれの給電点に接続される2つのポートと、送信または受信系回路接続される2つの同軸線接続側ポートを具えた90°ハイブリッドを具えた平面アンテナにおいて、
    上記90°ハイブリッドは、ほぼ正方形の配線基板の片面に構成され、給電点に接続される2つのポートが閉じた導体パターンの配線基板の角の位置から内側に引き出され、アースパターンが閉じた導体パターンを囲んで形成され、
    上記内側に引き出されたポートの導体パターンが誘電体平面アンテナの給電点に接続され、上記閉じた導体パターンのポートおよびアースパターンがそれぞれ配線基板の角の位置で同軸線の芯線と外線に接続され、
    給電点、同軸線に接続されない上記90°ハイブリッドの端子は、配線基板に形成された導体パターンによるインピーダンス素子を介してアースパターンと接続され、
    90°ハイブリッドが誘電体平面アンテナ素子の裏面に配置されたことを特徴とする平面アンテナ。
  8. インピーダンス素子がインダクタンス素子である請求項7記載の平面アンテナ。
  9. 前記配線基板の90°ハイブリッドが形成された表面の裏面が誘電体平面アンテナのグラウンド導体となる請求項8記載の平面アンテナ。
  10. 前記配線基板の誘電率が前記誘電体平面アンテナの誘電体基板の誘電率の40%〜130%である請求項7記載の平面アンテナ。
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