JP3567288B2 - 簡易締結装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建設、電気、機械等の諸設備に使用される可動式ねじ駒を用いたワンタッチで挿入、締付けが行える簡易締結装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
簡易締結装置は、ボルトのワンタッチ挿入によってボルトと締結するように使用される。従来の簡易締結装置としては、実公昭55−48171号公報に記載されるように、ボルトに噛み合うねじ駒をナットを分割した形状とし、このねじ駒を複数用いた構造となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報の簡易締結装置では、ねじ駒がボルトに確実に噛み合うために、複数のねじ駒のそれぞれのねじの位相を変える必要がある。このためには、ねじ駒を順序正しく配置しなければならず、組み立てが面倒であるばかりでなく、誤組み付けし易く、製造面からの問題を有している。また、異なったねじの位相のねじ駒を製造する場合には、そのための型が多種類必要となり、製造コストが高騰する問題も有している。さらには、複数のねじ駒を配置するだけのスペースが必要であり、小型化ができない問題点も有している。
【0004】
本発明はこのような従来の問題点を考慮してなされたものであり、単一のねじ駒を用いる構造とすることにより、ねじ駒の無駄をなくすと共に、組み立てを簡単に行うことができ、さらには、小型化及び低コスト化が可能な簡易締結装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、ばねによって付勢されたねじ駒が、ボルトをベースの穴に挿入することにより、ベースに形成したすり鉢状穴の斜面に沿って反付勢方向に移動した後、付勢方向に移動してボルトを締結する装置において、前記ばねはボルト挿通穴を有して前記ベースに取り付けられたキャップに押えられることによりねじ駒を直径の縮方向に付勢し、前記斜面はベースに挿入されるボルトの挿入方向に向かって径が漸減しており、前記ねじ駒はナットを分割した分割形状に形成された1個であり、前記ベースの穴の直径と略平行な端面を有する半ドーナツ形状部がねじ駒と対面するように前記ベースに形成され、ねじ駒の端面が半ドーナツ形状部の端面と当接することによりボルトの挿入時にボルトと干渉しないようにねじ駒の位置が規制されていることを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、ばねによって付勢されたねじ駒が、ボルトをベースの穴に挿入することにより、ベースに形成したすり鉢状穴の斜面に沿って反付勢方向に移動した後、付勢方向に移動してボルトを締結する装置において、前記ばねはボルト挿通穴を有して前記ベースに取り付けられたキャップに押えられることによりねじ駒を直径の縮方向に付勢し、前記斜面はベースに挿入されるボルトの挿入方向に向かって径が漸減しており、前記ねじ駒はナットを分割した分割形状に形成された1個であり、前記ベースの穴の直径と略平行な端面を有する半ドーナツ形状部がねじ駒と対面するように前記ベースに形成され、ねじ駒の端面が半ドーナツ形状部の端面と当接することによりボルトの挿入時にボルトと干渉しないようにねじ駒の位置が規制され、ボルトに噛み込む固定ねじ部を前記半ドーナツ形状部に設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2記載の発明であって、ボルトへの締付け状態において、ねじ駒のねじ部及びベースの固定ねじ部のねじの位相が相互にずれるようにしたことを特徴とする。
【0008】
これらの発明では、ねじ駒が1個となっており、この1個のねじ駒がボルトに締結するため、ねじ駒の無駄がなく、誤組み立てがなくなると共に、小型化でき、安価とすることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る実施の形態を図に基づいて説明する。図1は第1実施の形態の平面図、図2はその正面図、図3は図1のA−A線に沿う断面図、図4は図3のB−B線に沿う断面図、図5はベースの平面図、図6は図5のC−C線に沿う断面図、図7はねじ駒の平面図、図8は図7のD−D線に沿う断面図である。
【0010】
図1乃至図8において、ベース1はその下部が六角形状部1aであって、その上部は凸となって円形状部1bとなっている。そして、ベース1には穴1cが設けられると共に、この穴1cとつながった半ドーナツ形状部1dが設けられており、さらにこの半ドーナツ形状部1dと対面して斜面1eを有するすり鉢状穴1fが設けられている。すり鉢状穴1fの斜面1eはボルト5の挿入方向(図9(a)において矢印E方向)に向かって径が漸減している。
【0011】
ベース1のすり鉢状穴1fの中には1個のねじ駒2が配設されており、これにより半ドーナツ形状部1dはねじ駒2と対面している。この場合、ねじ駒2はベース1に嵌め込まれたキャップ4に押さえられたばね3によってすり鉢状穴1fの斜面1eに押圧されている。従って、ねじ駒2はばね3によって、直径の縮方向に付勢されている。
【0012】
ねじ駒2はナットを分割した形状をしており、内側には雌ねじ部2aが形成されると共に、外側にはベース1のすり鉢状穴1f内の斜面1eに対応した半円錐形状部2bが形成されている。また、上部には、ばね3を受ける段付き部2cが形成されている。上述したようにねじ駒2と対面するように半ドーナツ形状部1dがベース1に形成されることにより、半ドーナツ形状部1dの端面1hとねじ駒2の端面とが当接している。従って、斜面1eと半ドーナツ形状部1dの端面1hとによって、ボルト5との嵌合時の位置となるようにねじ駒2の位置が規制されており、ねじ駒2はベース1の穴1cの内径側に不用意に突出することがない。これにより、ベース1へのボルト5の挿入の際に、ねじ駒2がボルト5に干渉したり、引っ掛かることがなく、ボルト5を円滑に挿入することができる。
【0013】
キャップ4は穴の明いたコップ形状をしており、その内側にはばね3を受ける円筒部4aが形成され、さらにその内側にはボルト挿通孔4bが形成されている。また、その下端内周には凸部4cが形成されており、この凸部4cがベース1の円形状部1bの凹溝に嵌合することによってキャップ4はベース1に取り付けられるようになっている。
【0014】
上記のような簡易締結装置Tにおいては、図9の(a),(b),(c)及び(d)に示すように、ボルト5に対して簡易締結装置TをE方向へ挿入して行く。このとき、ねじ駒2がベース1の半ドーナツ形状部1dの端面1hに当接して、下方への移動が規制されてボルト5との干渉がないため、ボルト5を円滑に挿入することができる。そして、ボルト5の挿入による動きにつれてねじ駒2がベース1の斜面1eに沿ってa方向へずり上がる。この時、ねじ駒2の雌ねじ部2aとボルト5とは噛み合わないので、簡易締結装置Tを回すことなく挿入することができる。簡易締結装置Tを対象物6に当るまで挿入した後、通常のねじを締める要領でF方向に回すと、ねじ駒2がb方向(ばね3が付勢する方向)へずり下がりボルト5と噛み合い、締付けが完了する。
【0015】
簡易締結装置Tをボルト5から抜き取る場合は、ねじを緩める要領で簡易締結装置TをFと逆方向に回して外す。このように、ボルト5への簡易締結装置Tの挿入は、いちいち簡易締結装置T又はボルト5を回す必要がなく、ただ差し込むだけで簡単に行うことができる。
【0016】
次に、本発明に係る第2実施の形態について図10乃至図13に基づいて説明する。この第2実施の形態は、第1実施の形態のベース1の半ドーナツ形状部1dの内側に固定ねじ部1gを設けると共に、ベース1の穴1cとキャップ4の穴4bとを長円形としたこと以外はその構成は第1実施の形態と同様である。この場合は、ねじ駒2だけの例よりもねじとして強度アップが図れるものである。
【0017】
また、この第2実施の形態の変形形態として、ボルト5の締付け状態において、ねじ駒2のねじ部2a及びベース1の固定ねじ部1gのねじの位相を相互に少しずれるように設けることができる。この場合は、ボルト5への締付け後、ねじの位相のずれによる摩擦力が生じ、緩み止めの効果を奏することができる。
【0018】
以上述べたような簡易締結装置は、例えば天井の取付けの際等に使用して極めて便利である。即ち、図14に示すように、従来の天井の取り付け方法では、上の階の床内にコンクリート21と一緒に打ち込まれたインサート(内側に雌ねじ部が切られている)22に吊りボルト23をねじ込んでいるが、インサート22への吊りボルト23の取り付けは、1本、1本ねじ込まなければならず、その取り付けが面倒なことと、吊っている個所が非常に多いこともあり、その取り付けに要する工数は膨大なものとなっている。尚、図14において、24はナット、25はハンガー、26はチャンネルである。然るに、本発明に係る簡易締結装置をインサートしておけば、吊りボルトを差し込むだけで吊りボルトが固定できる。固定した吊りボルトを外す時は、従来のねじと同じ要領で吊りボルトを反時計方向に回して外す。
【0019】
【発明の効果】
本発明によれば、ねじ駒を1個用いる構造のため、ねじ駒に無駄がなく、誤組み立てを確実に防止でき、しかも、ねじ駒製作用の型が少なくなり、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1実施の形態の平面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図3のB−B線に沿う断面図である。
【図5】ベースの平面図である。
【図6】図5のC−C線に沿う断面図である。
【図7】ねじ駒の平面図である。
【図8】図7のD−D線に沿う断面図である。
【図9】(a),(b),(c)及び(d)は第1実施の形態の使用方法を示す説明図である。
【図10】本発明に係る第2実施の形態の平面図である。
【図11】図10の正面図である。
【図12】図10のG−G線に沿う断面図である。
【図13】図12のH−H線に沿う断面図である。
【図14】従来の使用例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 ベース
2 ねじ駒
3 ばね
4 キャップ
Claims (3)
- ばねによって付勢されたねじ駒が、ボルトをベースの穴に挿入することにより、ベースに形成したすり鉢状穴の斜面に沿って反付勢方向に移動した後、付勢方向に移動してボルトを締結する装置において、
前記ばねはボルト挿通穴を有して前記ベースに取り付けられたキャップに押えられることによりねじ駒を直径の縮方向に付勢し、前記斜面はベースに挿入されるボルトの挿入方向に向かって径が漸減しており、前記ねじ駒はナットを分割した分割形状に形成された1個であり、前記ベースの穴の直径と略平行な端面を有する半ドーナツ形状部がねじ駒と対面するように前記ベースに形成され、ねじ駒の端面が半ドーナツ形状部の端面と当接することによりボルトの挿入時にボルトと干渉しないようにねじ駒の位置が規制されていることを特徴とする簡易締結装置。 - ばねによって付勢されたねじ駒が、ボルトをベースの穴に挿入することにより、ベースに形成したすり鉢状穴の斜面に沿って反付勢方向に移動した後、付勢方向に移動してボルトを締結する装置において、
前記ばねはボルト挿通穴を有して前記ベースに取り付けられたキャップに押えられることによりねじ駒を直径の縮方向に付勢し、前記斜面はベースに挿入されるボルトの挿入方向に向かって径が漸減しており、前記ねじ駒はナットを分割した分割形状に形成された1個であり、前記ベースの穴の直径と略平行な端面を有する半ドーナツ形状部がねじ駒と対面するように前記ベースに形成され、ねじ駒の端面が半ドーナツ形状部の端面と当接することによりボルトの挿入時にボルトと干渉しないようにねじ駒の位置が規制され、ボルトに噛み込む固定ねじ部を前記半ドーナツ形状部に設けたことを特徴とする簡易締結装置。 - ボルトへの締付け状態において、ねじ駒のねじ部及びベースの固定ねじ部のねじの位相が相互にずれるようにしたことを特徴とする請求項2記載の簡易締結装置。
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