JP3566274B2 - 誘導ブリルアン散乱を用いた光伝送システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般的に、誘導ブリルアン散乱を用いた光信号生成装置、光伝送システム又は光伝送路のフレネル反射点の探索方法に関し、特に誘導ブリルアン散乱を用いた光信号生成装置に関する。
【0002】
誘導ブリルアン散乱は2次の非線形光学現象であり、光通信等においてはこれまで積極的に利用されたことは殆どなく、むしろ伝送特性を劣化させるものとして排除するような提案がなされていた。即ち、如何に誘導ブリルアン散乱を抑圧するかということが技術的課題であったといえる。
【0003】
しかし、誘導ブリルアン散乱は、(1)しきい値が他の非線形光学効果に比べて極端に(1〜2桁)小さい(損失0.2dB/km程度のシングルモードファイバの場合は1mW程度)、(2)音響フォノンとの相互作用を介するので、ストークスシフトが小さい(例えば伝送波長1.55μmのシングルモードファイバの場合約11GHz)、(3)後方散乱光のみが発生する、等の特異の性質を有しており、このような性質をうまく用いれば光伝送システム等への幅広い応用が可能であると考えられる。
【0004】
【従来の技術】
上述ように、従来、誘導ブリルアン散乱を積極的に用いた例は殆どなく、わずかに、誘導ブリルアン散乱の狭帯域性を用いた光フィルタとしての応用や、誘導ブリルアン散乱光と励起光の波長多重伝送への応用が考えられている程度である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
誘導ブリルアン散乱の応用がこれまで殆ど提案されていないのは、誘導ブリルアン散乱の帯域が狭いことに起因すると考えられる。誘導ブリルアン散乱は音響フォノンとの相互作用を介するので、帯域はこの音響フォノンの緩和時間で決まる。従って、常温における帯域は10〜100MHz程度といったところである。この狭帯域性により、光通信等の広帯域伝送への適用は殆ど考えられていない。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みて創作されたもので、誘導ブリルアン散乱の特徴を生かしてこれを光伝送システム等に有効に適用することを目的としている。
【0007】
具体的には、本発明の目的は、誘導ブリルアン散乱を用いた光信号生成装置、光伝送システム又は光伝送路のフレネル反射点の探索方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の一側面によれば、光送信局と、光受信局と、該光送信局と該光受信局を接続する光伝送路と、該光伝送路間に該光送信局からの光を中継する光中継器を有する光伝送システムにおいて、該光送信局は信号光を該伝送路に送信し、該光中継器は、該光送信局からの該信号光を増幅し中継するための光増幅器と、該光増幅器の出力パワーを光伝送路の誘導ブリルアン散乱のしきい値或いはこのしきい値よりも少し低い値に設定し、光増幅器の出力パワーを第1の情報信号により該誘導ブリルアン散乱のしきい値の上下で振幅変調するように制御する制御手段と、該光中継器と該光受信局間の該光伝送路で発生し上記振幅変調器の伝搬方向と逆の方向に伝搬する誘導ブリルアン散乱光を該光増幅器を介さずに上記光送信局の側に伝送する迂回光路とを有し、該信号光は第1の情報信号よりも高周波数又は高ビットレートの第2の情報信号により変調された光で有って、該光中継器からの第1情報を該光送信局へ伝送する。
【0009】
本発明の他の側面によれば、光送信局と、光受信局と、該光送信局と該光受信局を接続する光伝送路と、該光伝送路間に該光送信局からの光を中継する光中継器を有する光伝送システムにおいて、該光送信局は、信号光を該伝送路に送信し、該光中継器は、該光送信し局からの該信号光を増幅し中継するための光増幅器と、該光増幅器の出力パワーを光伝送路の誘導ブリルアン散乱のしきい値よりも高く設定する手段と、該光中継器と該光受信局間の該光伝送路で発生し該信号光の伝搬方向と逆の方向に伝搬する誘導ブリルアン散乱光を該光増幅器を介さずに上記光送信局の側に伝送する迂回光路と、該迂回光路上に該ブリルアン散乱光を第1の情報信号で変調するための変調器を設けることで、該中継器からの第1の情報信号を該光送信局へ伝送する。
【0010】
本発明の更に他の側面によれば、光送信局と、光受信局と、該光送信局と該光受信局を接続する光伝送路と、該光伝送路間に該光送信局からの光を中継する光中継器を有する光伝送システムにおいて、該光送信局は信号光を該伝送路に送信し、該光中継器は、該光送信局からの該信号光を増幅し中継するための光増幅器と、該光増幅器の出力パワーを光伝送路の誘導ブリルアン散乱のしきい値或いはこのしきい値よりも少し低い値に設定し、光増幅器の出力パワーを第1の情報信号により該誘導ブリルアン散乱のしきい値の上下で振幅変調するように制御する制御手段と、該光中継器と該光受信局間の該光伝送路で発生し上記振幅変調光の伝搬方向と逆の方向に伝搬する誘導ブリルアン散乱光を該光増幅器を介さずに迂回光路により対向回線に合流させ該光中継器からの該第1の情報信号を該光送信局へ伝送する。
【0011】
本発明によれば、上記第1の情報信号は上記光中継器の監視信号である
【0012】
本発明によれば、上記光送信局と上記光中継器の間で、該第1の情報信号が該信号光によりブリルアン増幅される
【0013】
本発明によれば、上記光中継器は複数ある。
【0014】
本発明の光伝送路のフレネル反射点の探索方法は、2次の非線形効果を有する光学媒質からなる光伝送路の端部から、該光学媒質の誘導ブリルアン散乱のしきい値よりも高い強度の励起光を入射するステップと、上記励起光の周波数よりも所定周波数だけ低い周波数の光パルスを上記励起光に重畳して上記光伝送路に上記端部から入射するステップと、上記端部から出射する光の強度の経時変化を観測するステップとを含む。
【0015】
まず、ブリルアン散乱の発生の原理を図1により説明する。媒質中を速度vで粗密波が進行しているとすると、波長λに相当する周期の屈折率の粗密格子が速度vaで進んでいて、この格子によって周波数ωの入射光(波長λ、波数k)がブラッグ反射により特定の方向θに強く回折される。このとき、散乱光の周波数をω、波長をλ、波数をk、粗密波の周波数をω、波長をλ、波数をkとすると、以下の保存則がなりたつ。
【0016】
ω=ω−ω …(1)
=k−k …(2)
また、格子が速度vで進行している場合のドップラー効果を考慮すると、ストークスシフトは次式で表される。
【0017】
ω−ω=ω=k=2vsin(θ/2)…(3)
従って、ストークスシフト量はθ=π、即ち後方散乱において最大となり、θ=0、即ち前方散乱において最小となる。特に、媒質がシングルモードファイバ(以下「SMF」ともいう。)の場合には、後方散乱のみが表れる。
【0018】
(3)式よりストークスシフト量Δνは次式で与えられる。ここで、nは媒質の屈折率である。
【0019】
Δν=ν=ω/2π=2nv/λ …(4)
SiO2を主成分とする石英系の光ファイバにおいては、v=6.96km/s,n=1.45,λ=1.55μmであるとすると、
Δν≒11.2GHz …(5)
となる。
【0020】
散乱により生じたストークス光と入射光が媒質の超音波振動を駆動するようになると、誘導ブリルアン散乱(以下「SBS」ということがある。)が発生する。SBSの発生メカニズムは、光周波数ωとωの電場が、電歪現象によって媒質中に周波数ω(=ω−ω)の圧力変動を生じさせ、それにより超音波が発生し、その超音波が周波数ωの入射光を散乱して周波数ωのストークス光を発生し、それがさらに電歪現象により超音波を発生するというものである。
【0021】
この現象を図2により定量的に考察する。いま、図2に示すように、SMF10の入射点を零点とし、励起光の進行方向をz軸とする座標系を想定する。このとき、光強度の結合方程式は次のようになる。
【0022】
dI(z)/dz=−g(z)I(z)+αI(z) …(6)
dI(z)/dz=−g(z)I (z)−αI(z) …(7)
ここで、I(z),I(z)は各々励起光及び散乱光の強度を表し、αはファイバの損失係数を表す。一方、gはブリルアン利得係数であり、次式で与えられる。
【0023】
Figure 0003566274
である。ここで、cは真空中の光速、p12は縦方向の弾性光学定数、ρは物質密度、νはブリルアン帯域の中心周波数を表し、Δνは、フォノンの寿命がTである場合のブリルアン利得の半値全幅を表す。
【0024】
ここでは、音響波がexp(−t/T)に従って減衰すると仮定している。従って、この場合、利得スペクトルはLorentzian型になる。また、信号光と励起光に対するファイバの減衰定数は一般に異なるが、考えている系においては、信号光と励起光の周波数差が11GHz程度であるので、共通のαで十分近似可能である。
【0025】
(6),(7)式を境界条件I(z)→0(z→∞)のもとで解くと、解は以下のようになる。
【0026】
Figure 0003566274
である。また、bはブリルアン変換効率(入力励起光パワーに対する出力ストークス光パワーの比)を表す。また、gはSBS過程における小信号利得である。
【0027】
(11)式及び(12)式の解を図3に図示する。図3は、励起光及びストークス光の相対強度と光ファイバにおける入射点からの距離を光ファイバ全長で規格化した値との関係を表すグラフである。
【0028】
図3の結果から明らかなように、SBSにより励起光のエネルギーが散乱光に変換されて後方向に出力される。従って、もし反対方向にブリルアン散乱光の周波数と同一の周波数の信号光を入力すれば、この信号光は増幅されて後方向に出射することになる。この増幅の原理を考察する。
【0029】
いま、励起光パワーが十分大きく、損失以外の減衰が殆どないとすると、即ち所謂depletion−lessの状態であるとすると、(7)式より、
(z)=I(0)exp(−αz) …(16)
となる。そこで、SBSに使われる有効励起パワーとして以下の量を定義する。
【0030】
Figure 0003566274
を得る。(19)式は、励起光の入射端から距離Lの位置に逆方向に入射された信号光がブリルアン増幅されて出射される様子を示している。(19)式は、入射励起光パワーP及びファイバのコアの有効断面積Aeffを用いて以下のようにも書ける。
【0031】
(0)=I(L)exp〔geff/Aeff−αL〕…(20)
(20)式より、ブリルアン増幅器のしきい値励起光パワーP crに対する条件として、
creff/Aeff≒21 …(21)を得る。この式に波長1.55μm用のシングルモードファイバの条件、Aeff≒50μm,Leff≒20km,g=5×10−11m/Wを適用すると、
cr≒1.1mW …(22)
を得る。
【0032】
誘導ブリルアン増幅の原理の応用としては、広範囲な例が考えられるが、これを通常の光通信に適用しようとすると、帯域が比較的狭い(約100MHz)ことが制約となる。本発明においてこの狭帯域性が制約にならないことは以下の説明から明らかである。
【0033】
図4は本発明の光信号生成装置の基本構成を示すブロック図である。符号21は励起光を情報信号により振幅変調する光変調手段である。符号22は光変調手段21から出力した振幅変調光が伝搬する光伝送路であり、この光伝送路22は2次の非線形効果を有する光学媒質からなる。
【0034】
符号23は光変調手段21を制御する制御手段であり、その制御態様は、振幅変調光の情報信号による変調波形の高レベルと低レベルの間に上述の光学媒質の誘導ブリルアン散乱のしきい値が位置するようにするものである。
【0035】
そして、光伝送路22内で振幅変調光の伝搬方向と逆の方向に伝搬する誘導ブリルアン散乱光を生成するようにしている。この誘導ブリルアン散乱光は次のような特性を有する。
【0036】
図5において、(A)は光伝送路22に入力する振幅変調光の経時変化を表すグラフ、(B)は光伝送路22内において生じた誘導ブリルアン散乱光の強度の経時変化を表すグラフである。
【0037】
光伝送路22にパワーPの励起光を入力し、パワーPを光伝送路22の誘導ブリルアン散乱のしきい値P crと等しいか或いはP crよりも少し小さい値Pに設定しておく。そして、この励起光を情報信号により振幅変調する。この情報信号は図示された例ではデジタル信号であるが、アナログ信号であってもかまわない。ただし、変調パルス幅Tは、フォノンの減衰定数よりも十分に大きいとする。即ち、次式を満足する。
【0038】
T≫T …(23)
このとき、P>P crのときにだけ誘導ブリルアン散乱光が発生するので、図5(B)に示すような波形で振幅変調された誘導ブリルアン散乱光を生成することができるのである。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施例を説明する。
【0040】
図6は光信号生成装置の第1実施例を示すブロック図である。符号33は光伝送路として機能するシングルモードファイバであり、このシングルモードファイバ33は2次の非線形効果を呈する。
【0041】
光変調手段は、励起光を出力する光源31と、この光源31からの励起光を振幅変調する光変調器32とから構成される。光変調器32としては、マッハツェンダ型のもの等が使用され、この光変調器32には駆動回路34から駆動信号が与えられる。
【0042】
この実施例の構成によると、図5(A)に示すような波形の振幅変調光を光変調器32からシングルモードファイバ33に入射させ、その結果、図5(B)に示すような波形の振幅変調された誘導ブリルアン散乱光を生じさせることができる。
【0043】
図7は光信号生成装置の第2実施例を示すブロック図である。この実施例では、光変調手段はレーザダイオード41を含んで構成され、このレーザダイオード41に供給するバイアス電流が駆動回路42により調整されて情報信号による励起光の振幅変調がなされる。
【0044】
図8は光信号生成装置の第3実施例を示すブロック図である。この実施例では、光変調手段は、励起光を出力する光源31と、光源31からの励起光を増幅する光増幅器51とを含み、光増幅器51の利得が利得制御回路52によって振幅変調される。
【0045】
光増幅器51として、半導体の利得媒質を備えた半導体光増幅器が用いられている場合には、半導体利得媒質への注入電流を情報信号により変調することによって、振幅変調光を得ることができる。
【0046】
光増幅器51として、ファイバ型光増幅器が用いられている場合には、励起光源からの励起光の振幅を変調するようにすればよい。その具体例を以下に説明する。
【0047】
図9は図8の光信号生成装置の第3実施例における光増幅器51の一構成例を示すブロック図である。この例では、光増幅器51は、第2の励起光を出力する励起レーザダイオード61と、この第2の励起光を図8の光源31からの増幅すべき第1の励起光と合波する合波器62と、合波器62により合波された第1及び第2の励起光が入力するドープファイバ63とを備えている。
【0048】
ドープファイバ63は、主としてコアにEr等の希土類元素をドープして構成される。そして、励起レーザダイオード61のバイアス電流が情報信号により変調されるようになっている。
【0049】
この種のファイバ型の光増幅器においては、励起レーザダイオードからの励起光の強度に応じてこの光増幅器の利得が決定されるので、上述のように励起レーザダイオード61のバイアス電流を情報信号により振幅変調することによって、ドープファイバ63から出力する光について振幅変調を行うことができる。
【0050】
図10は図8の光信号生成装置の第3実施例における光増幅器の他の構成例を示すブロック図である。この例では、光増幅器51は、第2の励起光を出力する第1の励起レーザダイオード71と、この第2の励起光を図8の光源31からの増幅すべき第1の励起光と合波する第1の合波器72と、第1の合波器72からの第1及び第2の励起光がその一端に入力するドープファイバ73と、第3の励起光を出力する第2の励起レーザダイオード74と、この第3の励起光をドープファイバ73の第2端から入射させる第2の合波器75とを備えている。
【0051】
この構成によると、励起レーザダイオードを2つ用いているので、1つの励起レーザダイオードの出力が光増幅動作に足りないような場合に有利である。また、2つの励起レーザダイオードのうちのいずれか一方(図では第2の励起レーザダイオード74)を用いてこの光増幅器から出力する励起光を誘導ブリルアン散乱のしきい値以上にするのに用い、他方の励起レーザダイオード(図では第1の励起レーザダイオード71)のバイアス電流に情報信号を重畳することによって、この光増幅器から出力する励起光を振幅変調することができる。
【0052】
この実施例では、ドープファイバ73の第1の励起光伝搬方向上流側及び下流側からドープファイバの励起用の励起光を入射させているが、2以上の励起レーザダイオードを用いて、上記上流側及び下流側のいずれか一方のみから励起光を入射させるようにしてもよい。
【0053】
また、図10の構成において、第1の励起レーザダイオード71及び第1の合波器72を省略して、後方励起型の光増幅器を構成してもよい。この場合第2の励起レーザダイオード74のバイアス電流が振幅変調される。
【0054】
ところで、(23)式に示したように、情報信号による変調パルス幅Tはフォノンの減衰定数よりも十分大きいことが要求される。変調パルス幅Tが大きくなるに従って情報信号の帯域は狭くなり、伝送可能な情報量が少なくなる。そこで、本発明の光信号生成装置を用い場合における伝送速度の限界について考察する。
【0055】
この限界は、明らかに(18)式で定義された励起光の有効到達距離Leffに依存すると考えられる。誘導ブリルアン散乱光として後方に出力する光は、入力した励起光の有効到達距離Leffの範囲内の誘導ブリルアン散乱光の累積である。従って、入射端付近からの誘導ブリルアン散乱光と、有効到達距離Leffの位置からの誘導ブリルアン散乱光の遅延時間差をΔtとした場合、ΔtがTに比べて十分小さくないと、パルス波形に乱れが生じることになる。
【0056】
光伝送路としてシングルモードファイバが用いられている場合、励起光の有効到達距離Leffは約20kmであり、また、非線形効果の時定数は遅延時間差Δtに比べて十分短いから、Δtは光が有効到達距離を1往復する時間に等しく、約2×10−4秒となる。
【0057】
いま、Δt/T<0.2の条件が信号を復調可能な範囲とすれば、T>1×10−3秒となるから、伝送可能な信号の速度限界は約1kb/sとなる。本発明を適用するのに適した光中継器の監視信号の速度は大体100b/s程度であるから、上述の速度限界は実用上十分なものである。
【0058】
次に、図5(A)において、P>P crに設定する場合を考える。この場合、常に誘導ブリルアン散乱が生じ、散乱光の波長と同一の波長の光に対して誘導ブリルアン増幅がなされる。従って、誘導ブリルアン散乱光と同一周波数の光を増幅してファイバ伝送することができる。ファイバ長をLとしたときのPのレベルダイヤグラムを図11に示す。ここでは、光ファイバの送信局端を距離の原点にとっている。
【0059】
このとき、(20)式より次の式が導出される。
【0060】
(0)=P(L)exp〔geff/Aeff−αL〕 …(24)
図12は上述の誘導ブリルアン増幅の原理を用いた光伝送システムの説明図である。このシステムは、2次の非線形効果を有する光学媒質からなる光伝送路81と、この光学媒質の誘導ブリルアン散乱のしきい値よりも高い強度の励起光82を光伝送路81の第1端から入射させる手段と、励起光82と所定の周波数関係にある信号光83を光伝送路81の第2端から入射させる手段とを備えている。信号光の中心周波数ωはブリルアン増幅帯域の中心周波数と一致し、この周波数と励起光の周波数ωの関係は以下の通りである。
【0061】
ω=ω−ω …(25)
ここで、ωは(4)式で与えられる。
【0062】
図12のシステムによると、信号光83を光伝送路81内で誘導ブリルアン増幅して、矢印84で示すように、励起光82と反対の方向に伝送することができる。
【0063】
図13は図12のシステムの具体例を示す図である。図12の信号光83の生成方法として最も単純なものは、周波数ωで発振する光源91を用い、その出射光を光伝送路81に入射するようにするものである。光源91は情報信号により変調される。この場合、変調方式としては、振幅変調、位相変調、周波数変調等を採用可能である。
【0064】
この構成によると、情報信号により変調された光源91からの信号光を光伝送路81内で誘導ブリルアン増幅して励起光82の伝搬方向と逆の方向に伝送することができる。
【0065】
図14は図12のシステムの他の具体例を示す図である。この例では、図13の例のように信号光の光源を独立に設けるのではなく、光伝送路81からの励起光を分岐して、この分岐された光をサブキャリア変調するようにしている。より具体的には次の通りである。
【0066】
光伝送路81の第1端に入射した励起光82は、光伝送路81の第2端に接続された光合波器103を介してハーフミラー101で分岐される。分岐した励起光はマッハツェンダ光変調器等の外部変調器102でサブキャリア変調され、この変調された光は光合波器103を介して光伝送路81に逆方向に合流する。
【0067】
発振器104からの周波数νのサブキャリアは、ミキサ105で情報信号により変調され、その変調出力が外部変調器102に入力する。
【0068】
このときの変調された信号光のスペクトルを図15に示す。丁度ブリルアン増幅帯域の中心と1次の変調信号(図では低周波側の変調信号)の中心とが一致し、その信号成分だけが誘導ブリルアン増幅される。従って、この信号成分を光伝送路の他端で検波して情報を検出可能である。
【0069】
この例によると、信号光用の独立した光源が不要であり、しかも、高精度の電気発振器を用いてサブキャリア変調を行うことができるので、安定した誘導ブリルアン増幅を実現することができる。
【0070】
次に、図16により、光伝送路の破断点等のフレネル反射点の探索方法を説明する。いま、周波数がωであり、パワーが誘導ブリルアン散乱のしきい値よりも高い値の連続的な励起光と、(25)式の関係を満足する周波数ωのパルス光とをシングルモードファイバ等からなる光伝送路111に入射する構成について考える。
【0071】
パルス光のパルス幅はT′である。入射点を原点とし、進行方向にz座標をとり、破断点111Aの座標をLとする。パルス光は光伝送路内でレーリー散乱され、そのうちの後方散乱成分は誘導ブリルアン増幅されて入射点に戻ってくる。また、破断点においては、フレネル反射が生じ、後方に散乱光が生じる。パルス光の散乱成分は誘導ブリルアン増幅されて入射点に戻ってくる。
【0072】
このときの、入射端で観測した全後方散乱光のうちの周波数ωの成分Pの時間変化は、パルス光の入射時刻を零として図17に示すようになる。即ち、Pはレーリー散乱成分と誘導ブリルアン散乱成分とフレネル反射成分の合成となる。いま、フレネル反射成分の観測時刻をパルス光入射後2tとすると、破断点の位置Lは、次式で与えられる。
【0073】
L=(c/n)t …(26)
また、この観測における分解能ΔLは次式で与えられる。
【0074】
ΔL=(c/n)T′ …(27)
一般に、レーリー散乱光及びフレネル反射光はともに微弱なものであり、光伝送路における損失により観測可能な距離が制限されるものであるが、上述した方法によると、誘導ブリルアン増幅の大きな利得を用いて遠方の破断点の位置を高精度に観測することができるようになる。
【0075】
次に、本発明の光信号生成装置を適用した光伝送システムについて説明する。図18に示すように、送信局121と受信局122の間で、光増幅器123を備えた光中継器124を用いて光伝送を行う場合、一般に、光中継器124は送信局121及び受信局122から遠隔地にあるから、光増幅器123についての監視情報を送信局121又は受信局122においてモニタする必要がある場合が生じる。この監視機能は、システム全体を安定に機能させる意味からも、また、何らかの故障が発生した場合にその故障箇所を迅速に検出する意味からも非常に重要である。
【0076】
モニタする内容としては、光増幅器の動作条件、温度等が考えられるが、こうした情報はさほど大容量ではなく、精々数十ビット程度である。従来、このような監視情報を伝送する手段としては、伝送信号に微小な変調度でサブキャリア振幅変調をかけ、これを光増幅中継した後、フィルタ検波するというような方法が用いられている。しかしながら、この方法では、主信号の感度低下を防止するために原理的に監視信号の変調度を大きくすることができず、従って、光増幅器が発生する自然放出光雑音の影響により、中継可能な光増幅器の段数に制限が生じる。そこで、監視信号の伝送に本発明の光信号生成装置を用いることとする。
【0077】
図19は図4及び図5により説明した装置の原理を適用した光伝送システムのブロック図である。伝送損失Γの光ファイバ132に送信局131からパワーPの信号光(第1の励起光)を入力し、伝送により減衰した信号光を利得Gの光増幅器133により増幅補償し、残りの光ファイバ132を介して受信局135に伝送するものである。このとき、光増幅器133の出力パワーをPとすると、次式が成立する。
【0078】
=PΓG …(28)
光増幅器133の出力パワーPを光ファイバ134の誘導ブリルアン散乱のしきい値P cr或いはこのしきい値よりも少し低い値Pに設定しておき、このPを監視情報(デジタル信号)によりP crの上下で振幅変調する。変調パルス幅Tはフォノンの減衰定数よりも十分に大きく設定される。
【0079】
こうすると、図5の動作原理に従って、P>P crのときにだけ誘導ブリルアン散乱光が発生する。この散乱光は、ビームスプリッタ136で主光伝送路から分岐され、迂回光路137を通ってもう1つのビームスプリッタ138で主光伝送路に結合される。
【0080】
これにより、監視情報により振幅変調された誘導ブリルアン散乱光を送信局131に伝送することができる。
【0081】
図19のシステムにおいて、P>P crに設定する場合を考える。この場合、送信局131と光増幅器133の間の光ファイバ132は、誘導ブリルアン散乱光と同一波長の光に対して誘導ブリルアン増幅を呈する。従って、上述のようにして得られた、監視信号により変調された強度Pの誘導ブリルアン散乱光をさらに増幅して送信局131に伝送することができる。尚、この場合におけるファイバ長をLとしたときのPのレベルダイヤグラムは、光ファイバ132の送信局131側の端部を距離の原点にとった場合、図11と同様になる。
【0082】
誘導ブリルアン増幅の原理を適用した図19のシステムにおいて、光中継器を複数縦列に備えた多段中継システムの第1実施例を図20に示す。この例では、送信局131と受信局135の間に、図19に準じて構成される光中継器が符号141(#1〜#N)で示すようにN個縦列に接続されている。
【0083】
この場合、各光ファイバへの入力光パワーP(i=0,1,2,…,N)の初期値又は定常値PiO(i=0,1,2,…,N)は、P crよりも大きい値に設定しておき、常に誘導ブリルアン散乱が生じる状態にしておく。そして、光増幅器141(#i;iは任意)の監視情報によりその光増幅器の出力光に振幅変調をかけ、図21に示すように、出力振幅の最小点がP crよりも小さくなるようにする。
【0084】
これにより、P<P crのときには誘導ブリルアン散乱が生じない状況を作れるから、これにより誘導ブリルアン散乱光のオン・オフを行い、この振幅変調された誘導ブリルアン散乱光を順次前段に伝送することにより、任意の光中継器の監視情報を送信局131に伝送する。この実施例においては、各光ファイバはブリルアン増幅器となっているので、その利得により伝送損失やビームスプリッタによる分岐損等を補償することができる。
【0085】
尚、この実施例では、光中継器141(#1)から送信局131に伝送される監視信号を誘導ブリルアン増幅するために、光中継器141(#1)と送信局131を接続する光伝送路142についても、他の光伝送路と同じように2次の非線形効果を有する光学媒質から形成しておく。
【0086】
ところで、(23)式に示したように、変調パルス幅Tはフォノンの減衰定数よりも十分に大きいことが望ましいが、Tが大きければ大きい程情報信号の帯域は狭くなり、伝送可能な情報量が少なくなる。本実施例における伝送速度の限界も明らかに励起光の有効到達距離Leffに依存し、その限界は前述したように約1kb/sとなる。
【0087】
図22は、多段中継システムの第2実施例を示す図である。
【0088】
送信局131と受信局135の間には複数の光中継器151(#1〜#N)が縦列に配置されており、各中継器の光出力はブリルアン散乱のしきい値よりも高い値に設定されている。それぞれの光中継器においては、迂回光路を通る誘導ブリルアン散乱光がそれぞれ変調器152(#1〜#N)により外部変調される。ここで、各変調は、ブリルアン周波数νの発振周波数の光源の直接変調或いはその出力光の外部変調でもよい。
【0089】
図23は多段中継システムの第3実施例を示す図である。この例では、図14及び図15における原理に基づき動作する光中継器153(#1〜#N)が用いられている。ここでは、各光増幅器の出力の一部が分岐され、それぞれ周波数νa のサブキャリアを用いてサブキャリア変調される。
【0090】
図22,23の実施例の特徴は、図20のシステムに比べて伝送可能な速度の限界が大きいことである。即ち、この実施例における伝送速度の制限要因は誘導ブリルアン散乱の緩和時間そのもの、即ち誘導ブリルアン散乱の帯域であるから、10〜100Mb/s程度の情報信号の伝送が可能である。
【0091】
図19における光中継器を複数リング状に配置することによって、双方向伝送が可能になることが明らかである。図24は双方向伝送システムの第1実施例を示す図である。このシステムは、図19における光中継器161を複数(#1〜#N)用い、これらをリング状に接続して構成される。各光中継器における光増幅器の順方向は図において時計回りを向くように揃えてある。
【0092】
ここでは、光中継器における光増幅器の各々から振幅変調光を誘導ブリルアン散乱によって生成するとともに、これにより生成された光信号を誘導ブリルアン増幅により主信号と反対方向に伝送する。例えば、各光増幅器をターミナル内に設置し、そこから信号を加入者に分配するようなシステムを想定すると、この実施例は各加入者からのリクエスト信号等の伝送に使えることがわかる。
【0093】
図25は線形光増幅器を用いた光伝送システムを示す図である。図19に示した光伝送システムにおいては、監視情報をのせた誘導ブリルアン散乱光を主光伝送路から迂回して送信局に向けて伝送するようにしていたが、この実施例では、光増幅器の双方向性を用いて、監視情報をのせた誘導ブリルアン散乱光を主光伝送路から迂回させずに送信局に伝送するようにしている。
【0094】
図25において、送信局131から送出された励起光は、光ファイバ132を介して光増幅器171に順方向で入力する。光増幅器171は、図4及び図5における原理と同様の動作原理によって、入力した励起光を振幅変調して光ファイバ134に送出する。送出された励起光の主信号成分は受信局135に伝送される。
【0095】
一方、光増幅器171と受信局135の間の光ファイバ134内で生じた誘導ブリルアン散乱光は、前述の監視信号によって振幅変調されている。この光は、光増幅器171を逆方向に通過することによってこの光増幅器171により増幅され、増幅された光は、光ファイバ132を介して送信局131に伝送される。
【0096】
このような線形増幅動作をする光増幅器としては、ドープファイバを備えたファイバ型光増幅器や半導体光増幅器等がある。
【0097】
図26は多段中継システムの第4実施例を示す図である。この例では、図25に示した線形的に動作する光増幅器171(#1〜#N)を複数従属に接続し、多段中継システムを構成している。各光増幅器の動作については図25のシステムに準じ、全体の動作については図20のシステムに準じる。
【0098】
図27は双方向伝送システムの第2実施例を示す図である。この例では、図25の線形的に動作する光増幅器171(#1〜#N)を複数リング状に接続し、各光増幅器の順方向が同一の方向を向くようにしている。この構成によっても、図25のシステム及び図24のシステムの動作原理に準じて双方向伝送が可能になる。
【0099】
図28は本発明を上り・下り回線に適用した実施例を示す図である。符号181は主信号光が図中の左から右方向に伝搬する上り回線の光伝送路、符号182は主信号光が図中の右から左方向に伝搬する下り回線の光伝送路である。上り回線及び下り回線の光伝送路181,182にはそれぞれ光中継器としての光増幅器183,184が設けられている。
【0100】
光増幅器183では、この光増幅器183の監視情報によって上り回線の主信号光(第1の励起光)が振幅変調される。また、光増幅器184では、この光増幅器184の監視情報によって下り回線の主信号光が振幅変調される。
【0101】
上り回線の光伝送路181の光増幅器183の下流側で生じた誘導ブリルアン散乱光は、図中の右から左方向に伝搬して、光分岐回路185で分岐され、この分岐された光は、光合波器186を介して下り回線の光伝送路182に結合される。そして、この光増幅器183についての監視情報を含む光は、光増幅器184で線形増幅されて光伝送路182に送出される。
【0102】
一方、下り回線の光伝送路182の光増幅器184の下流側で生じた誘導ブリルアン散乱光は、光分岐回路187で分岐され、この分岐された光は、光合波器188を介して上り回線の光伝送路181に結合される。上り回線の光伝送路181に結合した、光増幅器184についての監視情報を含む光は、上り回線の光増幅器183で増幅されて、上り回線の光伝送路181に送出される。
【0103】
この実施例では、監視情報を含む光を、その光が伝搬する光伝送路における主信号光の伝搬方向と同一の方向に伝搬させるようにしているが、逆方向に伝搬するように光学的に構成してもよい。
【0104】
この実施例では、振幅変調手段として光増幅器を用いているが、それ以外にも光信号生成装置の具体例で説明した様々な手段を採用することができる。
【0105】
図29は図28の光中継器を多段に設けた実施例を示す図である。この実施例では、図27の上り回線用の光増幅器183及び下り回線用の光増幅器184をそれぞれ備えた光中継器191(#1〜#N)を複数従属に接続している。
【0106】
このように複数の光中継器を用いて上り回線及び下り回線の監視を行う場合には、いずれの光中継器からの監視信号かを容易に判別するために、各光中継器の固有番号をコード化しておき、復調時にどの光中継器からの信号かを区別できるようにしておくとよい。
【0107】
図30は、光中継器の監視情報を含む誘導ブリルアン散乱光を光送信局で受けるための光受信機の構成の一例を示すブロック図である。図示しない光送信機からの主信号光は、ビームスプリッタ202を介して光伝送路201に送出される。光伝送路201を図中の右から左方向に伝搬してきた監視情報を含む誘導ブリルアン散乱光は、ビームスプリッタ202で分岐されて光バンドパスフィルタ203に入力する。
【0108】
光バンドパスフィルタ203はその誘導ブリルアン散乱光の周波数ωiに一致する周波数の光は透過させそれ以外の光は反射させる。光バンドパスフィルタ203を透過した誘導ブリルアン散乱光は、フォトダイオード204で直接検波され、これにより光中継器の監視情報が再生される。
【0109】
図31は、光中継器の監視情報を含む誘導ブリルアン散乱光を光送信局で受けるための光受信機の他の構成例を示す図である。この例では、光伝送路201の送信局側に設けられたビームスプリッタ202で分岐された誘導ブリルアン散乱光は、ヘテロダイン検波されて光中継器の監視情報が再生される。具体的には次の通りである。
【0110】
分岐された誘導ブリルアン散乱光は、光カプラ211でローカルレーザダイオード212からのローカル光と合波され、この合波された光はフォトダイオード213に入力する。フォトダイオード213で光電変換がなされると、誘導ブリルアン散乱光の周波数とローカル光の周波数の差に相当する周波数のヘテロダイン検波信号(中間周波信号)が得られ、この信号は増幅器214で増幅されてバンドパスフィルタ215に入力する。このバンドパスフィルタ215は中間周波信号の周波数に相当する周波数成分を通過させる。
【0111】
この構成によっても、光増幅器の監視情報を再生することができる。この場合、ローカル光の周波数を調整することによって、所要の周波数の誘導ブリルアン散乱光を選択的に同調させることができるので、この実施例は、主信号光が光伝送路201を双方向に伝搬するり双方向伝送方式に適している。
【0112】
また、ローカルレーザダイオード212の出力を増大させることにより、高感度な受信が可能になる。
【0113】
図32は、光中継器の監視情報を含む誘導ブリルアン散乱光を光受信局で受けるための光受信機の構成例を示す図である。この光受信機は、例えば、図28又は図29のシステムのように監視情報を含む光が主信号光の伝搬方向と同一の方向に伝搬する場合に適用される。
【0114】
光伝送路221を図中の左から右方向に伝搬してきた、主信号光及び監視情報を含む誘導ブリルアン散乱光は、ビームスプリッタ222で分岐される。分岐された一方の光は主光受信機223に入力し、ここで主信号光に基づく情報伝送が再生される。
【0115】
ビームスプリッタ222で分岐された他方の光は、光バンドパスフィルタ224に入力する。光バンドパスフィルタ224は誘導ブリルアン散乱光の周波数ωに一致する周波数の光は透過させそれ以外の光は反射させる。光バンドパスフィルタ224を透過した誘導ブリルアン散乱光は、フォトダイオード225で直接検波され、これにより光中継器からの監視情報が再生される。
【0116】
図33は、光中継器の監視情報を含む誘導ブリルアン散乱光を光受信局で受けるための光受信機の他の構成例を示す図である。図32の実施例と異なる点は、ハーフミラー222で分岐された光に基づく監視情報の再生をヘテロダイン検波により行っている点である。
【0117】
ハーフミラー222で分岐された光は、光カプラ226でローカルレーザダイオード227からのローカル光と合波され、この合波された光は、フォトダイオード228に入力する。フォトダイオード228の自乗検波特性によって得られたヘテロダイン検波信号(中間周波信号)は、増幅器229で増幅されてバンドパスフィルタ230に入力する。バンドパスフィルタ230は、誘導ブリルアン散乱光の周波数とローカル光の周波数の差に相当する周波数成分のみを通過させ、これにより光増幅器からの監視情報が再生される。
【0118】
この実施例によると、ローカルレーザダイオード227の出力を増大させることにより、監視情報についての高感度な受信が可能になる。また、ローカル光の周波数を調整することによって、所要の周波数の誘導ブリルアン散乱光を選択的に同調させることができるので、主信号と監視情報の分離が容易である。
【0119】
図16及び図17により説明した光伝送路における破断点等のフレネル反射点の探索方法は、以上説明したいずれの実施例のシステムにも適用可能である。
【0120】
本発明は、以下の付記を含むものである。
【0121】
(付記1) 第1の励起光を第1の情報信号により振幅変調する光変調手段(21)と、
該光変調手段から出力した振幅変調光が伝搬する2次の非線形効果を有する光学媒質からなる光伝送路(22)と、
上記振幅変調光の上記第1の情報信号による変調波形の高レベルと低レベルの間に上記光学媒質の誘導ブリルアン散乱のしきい値が位置するように上記光変調手段を制御する制御手段(23)とを備え、
上記光伝送路(22)内で上記振幅変調光の伝搬方向と逆の方向に誘導ブリルアン散乱光が生じるようにしたことを特徴とする光信号生成装置。
【0122】
(付記2) 上記第1の励起光は上記第1の情報信号よりも高周波数又は高ビットレートの第2の情報信号により変調されていることを特徴とする付記1に記載の光信号生成装置。
【0123】
(付記3) 上記光伝送路(22)は石英系のシングルモードファイバであることを特徴とする付記2に記載の光信号生成装置。
【0124】
(付記4) 上記光変調手段(21)は、上記第1の励起光を出力する光源(31)と、該第1の励起光を振幅変調する光変調器(32)とを含み、上記第1の情報信号は上記光変調器(32)に入力することを特徴とする付記3に記載の光信号生成装置。
【0125】
(付記5) 上記光変調手段(21)は、上記第1の励起光を出力するレーザダイオード(41)を含み、該レーザダイオードのバイアス電流が上記第1の情報信号により変調されることを特徴とする付記3に記載の光信号生成装置。
【0126】
(付記6) 上記光変調手段(21)は、上記第1の励起光を増幅する光増幅器(51)を含み、該光増幅器の利得が上記第1の情報信号により変調されることを特徴とする付記3に記載の光信号生成装置。
【0127】
(付記7) 上記光増幅器(51)は半導体の利得媒質を有し、該利得媒質への注入電流が上記第1の情報信号により変調されることを特徴とする付記6に記載の光信号生成装置。
【0128】
(付記8) 上記光増幅器(51)は、第2の励起光を出力する励起レーザダイオード(61)と、該第2の励起光を上記第1の励起光と合波する合波器(62)と、該合波器からの上記第1及び第2の励起光が入力する、主としてコアに希土類元素がドープされたドープファイバ(63)とを含み、上記励起レーザダイオード(61)のバイアス電流が上記第1の情報信号により変調されることを特徴とする付記6に記載の光信号生成装置。
【0129】
(付記9) 上記光増幅器(51)は、第2の励起光を出力する第1の励起レーザダイオード(71)と、該第2の励起光を上記第1の励起光と合波する第1の合波器(72)と、該第1の合波器からの上記第1及び第2の励起光がその第1端に入力する、主としてコアに希土類元素がドープされたドープファイバ(73)と、第3の励起光を出力する第2の励起レーザダイオード(74)と、該第3の励起光を上記ドープファイバ(73)の第2端から入射させる第2の合波器(75)とを含み、上記第1又は第2の励起レーザダイオードのバイアス電流が上記第1の情報信号により変調されることを特徴とする付記6に記載の光信号生成装置。
【0130】
(付記10) 光中継器として機能する請求項1に記載の光信号生成装置と、上記第1の情報信号よりも高周波数又は高ビットレートの第2の情報信号により変調された信号光を出力し、該信号光が上記第1の励起光として上記光信号生成装置に入力するようにされた光送信局(131)と、
上記光伝送路を伝搬した上記振幅変調光を受け、上記第2の情報信号を再生する受信局(135)とを備えたことを特徴とする光伝送システム。
【0131】
(付記11) 上記光送信局(131)は、上記誘導ブリルアン散乱光を受け上記第1の情報信号を再生する光受信機を備えていることを特徴とする付記10に記載の光伝送システム。
【0132】
(付記12) 上記光受信機は、上記誘導ブリルアン散乱光を通過させる光バンドパスフィルタ(203)と、該光バンドパスフィルタの出力光を受けるフォトダイオード(204)とを含み、上記第1の情報信号の再生は直接検波によりなされることを特徴とする付記11に記載の光伝送システム。
【0133】
(付記13) 上記光受信機は、ローカルレーザダイオード(212)と、該ローカルレーザダイオードからのローカル光を上記誘導ブリルアン散乱光と加え合わせる光カプラ(211)と、該光カプラの出力光を受けるフォトダイオード(213)と、該フォトダイオードの出力信号を受け、上記ローカル光の周波数と上記誘導ブリルアン散乱光の周波数の差に相当する周波数成分を通過させるバンドパスフィルタ(215)とを含み、上記第1の情報信号の再生はヘテロダイン検波によりなされることを特徴とする付記11に記載の光伝送システム。
【0134】
(付記14) 上記誘導ブリルアン散乱光は上記光変調手段を介して上記光送信局(131)の側に伝送されることを特徴とする付記10に記載の光伝送システム。
【0135】
(付記15) 上記誘導ブリルアン散乱光は上記光変調手段を介さずに迂回光路(137)を介して上記光送信局(131)の側に伝送されることを特徴とする付記10に記載の光伝送システム。
【0136】
(付記16) 上記第1の情報信号は上記光中継器の監視信号であることを特徴とする付記10に記載の光伝送システム。
【0137】
(付記17) 上記光送信局と上記光信号生成装置を接続する最上流側光伝送路(132,142)は2次の非線形効果を有する光学媒質からなり、上記誘導ブリルアン散乱光は上記最上流側光伝送路においてブリルアン増幅されることを特徴とする付記10に記載の光伝送システム。
【0138】
(付記18) 上記光信号生成装置は複数あり、該複数の光信号生成装置は縦列に接続されていることを特徴とする付記10に記載の光伝送システム。
【0139】
(付記19) 付記1に記載の光信号生成装置を複数リング状に配置してなることを特徴とする光伝送システム。
【0140】
(付記20) 上記光信号生成装置において生じた誘導ブリルアン散乱光は当該光信号生成装置の上流側の光信号生成装置の上記光伝送路でブリルアン増幅されることを特徴とする付記19に記載の光伝送システム。
【0141】
(付記21) 付記10又は18に記載の光伝送システムを上り回線及び下り回線用に2組備え、
該上り回線及び下り回線において生じた誘導ブリルアン散乱光を分岐してそれぞれ下り回線及び上り回線に合流させるようにしたことを特徴とする光伝送システム。
【0142】
(付記22) 上記上り回線及び下り回線に合流した誘導ブリルアン散乱光は上記振幅変調光と同方向に伝搬することを特徴とする付記21に記載の光伝送システム。
【0143】
(付記23) 上記光受信局は、上記誘導ブリルアン散乱光を受け上記第1の情報信号を再生する光受信機を備えていることを特徴とする付記22に記載の光伝送システム。
【0144】
(付記24) 上記光受信機は、上記誘導ブリルアン散乱光を通過させる光バンドパスフィルタ(224)と、該光バンドパスフィルタの出力光を受けるフォトダイオード(225)とを含み、上記第1の情報信号の再生は直接検波によりなされることを特徴とする付記23に記載の光伝送システム。
【0145】
(付記25) 上記光受信機は、ローカルレーザダイオード(227)と、該ローカルレーザダイオードからのローカル光を上記誘導ブリルアン散乱光と加え合わせる光カプラ(226)と、該光カプラの出力光を受けるフォトダイオード(228)と、該フォトダイオードの出力信号を受け、上記ローカル光の周波数と上記誘導ブリルアン散乱光の周波数の差に相当する周波数成分を通過させるバンドパスフィルタ(230)とを含み、上記第1の情報信号の再生はヘテロダイン検波によりなされることを特徴とする付記23に記載の光伝送システム。
【0146】
(付記26) 上記上り回線及び下り回線に合流した誘導ブリルアン散乱光は上記振幅変調光と逆方向に伝搬することを特徴とする付記21に記載の光伝送システム。
【0147】
(付記27) 2次の非線形効果を有する光学媒質からなる光伝送路(81)と、
該光学媒質の誘導ブリルアン散乱のしきい値よりも高い強度の励起光を上記光伝送路(81)の第1端から入射させる手段と、
上記励起光の周波数よりも所定周波数だけ低い周波数を有し、情報信号により変調された信号光を上記光伝送路(81)の第2端から入射させる手段とを備えたことを特徴とする光伝送システム。
【0148】
(付記28) 上記励起光の光源と上記信号光の光源は別々に設けられていることを特徴とする付記27に記載の光伝送システム。
【0149】
(付記29) 上記信号光は、上記光伝送路(81)の第2端から出射した上記励起光を分岐して、この分岐された励起光をサブキャリア変調することにより得られることを特徴とする付記27に記載の光伝送システム。
【0150】
(付記30) 2次の非線形効果を有する光学媒質からなる光伝送路(111)の端部から、該光学媒質の誘導ブリルアン散乱のしきい値よりも高い強度の励起光を入射するステップと、
上記励起光の周波数よりも所定周波数だけ低い周波数の光パルスを上記励起光に重畳して上記光伝送路(111)に上記端部から入射するステップと、
上記端部から出射する光の強度の経時変化を観測するステップとを含むことを特徴とする光伝送路のフレネル反射点の探索方法。
【0151】
(付記31) 付記1,10,19,21又は27に記載の装置又はシステムにおいて、
上記第1の励起光又は上記励起光は複数あり、該複数の第1の励起光又は励起光はそれぞれ別々の周波数を割り当てられていることを特徴とする光信号生成装置又は光伝送システム。
【0152】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、誘導ブリルアン散乱の特徴を生かした光信号生成装置、光伝送システム及び光伝送路のフレネル反射点の探索方法の提供が可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】ブリルアン散乱の発生の原理説明図である。
【図2】シングルモードファイバにおける誘導ブリルアン散乱の発生を説明するための図である。
【図3】相対強度と規格化された距離の関係を表すグラフである。
【図4】光信号生成装置の基本構成を示す図である。
【図5】変調された誘導ブリルアン散乱光の説明図である。
【図6】光信号生成装置の第1実施例を示す図である。
【図7】光信号生成装置の第2実施例を示す図である。
【図8】光信号生成装置の第3実施例を示す図である。
【図9】図8の第3実施例における光増幅器の一例を示す図である。
【図10】図8の第3実施例における光増幅器の他の例を示す図である。
【図11】誘導ブリルアン増幅における信号光のレベルダイヤグラムである。
【図12】誘導ブリルアン増幅を用いた光伝送システムの説明図である。
【図13】図12のシステムの具体例を示す図である。
【図14】図12のシステムの他の具体例を示す図である。
【図15】サブキャリア変調による信号光のスペクトルを示す図である。
【図16】光伝送路のフレネル反射点の探索方法の説明図である。
【図17】後方散乱光のうちのブリルアン増幅帯域成分の時間変化を表すグラフである。
【図18】一般的な光伝送システムを示す図である。
【図19】図4、図5の装置の原理を用いた光伝送システムを示す図である。
【図20】多段中継システムの第1実施例を示す図である。
【図21】図20のシステムの動作原理の説明図である。
【図22】多段中継システムの第2実施例を示す図である。
【図23】多段中継システムの第3実施例を示す図である。
【図24】双方向伝送システムの第1実施例を示す図である。
【図25】線形光増幅器を用いた光伝送システムを示す図である。
【図26】多段中継システムの第4実施例を示す図である。
【図27】双方向伝送システムの第2実施例を示す図である。
【図28】本発明を上り・下り回線に適用した実施例を示す図である。
【図29】図28の光中継器を多段に接続した実施例を示す図である。
【図30】送信局用光受信機の一例を示す図である。
【図31】送信局用光受信機の他の例を示す図である。
【図32】
受信局用光受信機の一例を示す図である。
【図33】
受信局用光受信機の他の例を示す図である。
【符号の説明】
21 光変調手段
22 光伝送路
23 制御手段

Claims (6)

  1. 光送信局と、光受信局と、該光送信局と該光受信局を接続するための複数の光伝送路と、該光伝送路間に該光送信局からの光を中継する光中継器を有する光伝送システムにおいて、
    該光送信局は信号光を該伝送路に送信し、
    該光中継器は、該光送信局からの該信号光を増幅し中継するための光増幅器と、該光増幅器の出力パワーを光伝送路の誘導ブリルアン散乱のしきい値或いはこのしきい値よりも少し低い値に設定し、光増幅器の出力パワーを第1の情報信号により該誘導ブリルアン散乱のしきい値の上下で振幅変調するように制御する制御手段と、該光中継器と該光受信局間の該光伝送路で発生し上記振幅変調した光の伝搬方向と逆の方向に伝搬する誘導ブリルアン散乱光を該光増幅器を介さずに上記光送信局の側に伝送する迂回光路とを有し、
    該信号光は第1の情報信号よりも高周波数又は高ビットレートの第2の情報信号により変調された光で有って、該光中継器からの該第1の情報信号を該光送信局へ伝送することを特徴とする光伝送システム。
  2. 光送信局と、光受信局と、該光送信局と該光受信局を接続するための複数の光伝送路と、該光伝送路間に該光送信局からの光を中継する光中継器を有する光伝送システムにおいて、
    該光送信局は、信号光を該伝送路に送信し、
    該光中継器は、該光送信局からの該信号光を増幅し中継するための光増幅器と、該光増幅器の出力パワーを光伝送路の誘導ブリルアン散乱のしきい値よりも高く設定する手段と、該光中継器と該光受信局間の該光伝送路で発生し該信号光の伝搬方向と逆の方向に伝搬する誘導ブリルアン散乱光を該光増幅器を介さずに上記光送信局の側に伝送する迂回光路と、該迂回光路上に該ブリルアン散乱光を第1の情報信号で変調するための変調器を設けることで、該光中継器からの該第1の情報信号を該光送信局へ伝送することを特徴とする光伝送システム。
  3. 光送信局と、光受信局と、該光送信局と該光受信局を接続するための複数の光伝送路と、該光伝送路間に該光送信局からの光を中継する光中継器を有する上り回線と下り回線からなる光伝送システムにおいて、
    該光送信局は信号光を該伝送路に送信し、
    該光中継器は、該光送信局からの該信号光を増幅し中継するための光増幅器と、該光増幅器の出力パワーを光伝送路の誘導ブリルアン散乱のしきい値或いはこのしきい値よりも少し低い値に設定し、光増幅器の出力パワーを第1の情報信号により該誘導ブリルアン散乱のしきい値の上下で振幅変調するように制御する制御手段と、該光中継器と該光受信局間の該光伝送路で発生し上記振幅変調した光の伝搬方向と逆の方向に伝搬する誘導ブリルアン散乱光を該光増幅器を介さずに迂回光路により対向回線に合流させ該光中継器からの該第1の情報信号を該光送信局へ伝送することを特徴とする光伝送システム。
  4. 上記第1の情報信号は上記光中継器の監視信号であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の光伝送システム。
  5. 上記光送信局と上記光中継器の間で、該第1の情報信号が該信号光によりブリルアン増幅されることを特徴とする請求項1又は2記載の光伝送システム。
  6. 上記光中継器は複数あることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の光伝送システム。
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