JP3565970B2 - 亀裂深さの非破壊検査法及び亀裂数の非破壊検査法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、亀裂深さの非破壊検査法及び亀裂数の非破壊検査法に関し、詳しくは、交流電位差法を利用して、被測定物表面に複数存在する亀裂の平均亀裂深さ及び亀裂数を検出する方法に関する。本発明方法は、特に焼結鍛造材の未焼結部に代表されるように、被測定物表面に複数存在する微小な亀裂の平均亀裂深さを検出する際に好適に利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来、非常に微小な亀裂が複数分布するような表面欠陥、例えば焼結鍛造材の未焼結部にみられるような表面欠陥について、その亀裂深さを定量的に把握する方法としては、断面研磨試料の光学顕微鏡観察や、あるいは静的破面のSEM観察などの破壊検査法に限定されていた。
【0003】
しかし、このような試料の破壊を伴う破壊検査法は、量産品の品質チェックや品質管理には適用することが困難である。また上記従来の各破壊検査法により例えば焼結鍛造部材の未焼結部を検査する場合、以下に示す欠点がある。すなわち、光学顕微鏡観察の場合、酸化が顕著な部分については断面の研磨試料を光学顕微鏡で観察することが可能であるが、このような部分は未焼結部の一部に過ぎない。このため、光学顕微鏡観察により、未焼結部の全体像を捕らえることはできない。一方、静的破面のSEM観察の場合、例えば断面積に占める未焼結部の面積率を測定することにより、未焼結部の量を定量的に計測することは可能であるが、試料内で一つの破断面の計測はできても試料全体にわたる欠陥の分布をこの方法で計測することはきわめて困難である。
【0004】
そこで、試料の破壊を伴わない非破壊検査法の適用が考えられる。亀裂深さの定量的な非破壊検査法としては、交流電位差法が提案されている。例えば、Materialpruefung vol.35,No.7/8,PP212〜217(1993)には、微小表面疲れ亀裂の測定に交流電位差法を適用した報告例がある。この交流電位差法は、疲労亀裂を導入した金属試験片に交流電流を流し、亀裂をはさんで位置する2点間の電位差を計測し、亀裂に沿って交流電流が迂回して流れることによる電気抵抗の変化を電位差の変化として検出することにより、亀裂の長さを測定する方法である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記文献の報告例は、交流電位差法を応力拡大係数の評価に利用するもので、単一の大きな亀裂(数mmオーダー)を検査する場合に限定されている。すなわち、交流電位差法を利用して、焼結鍛造材の未焼結部に代表されるような非常に微細な亀裂が複数分布する表面欠陥について、その亀裂深さを定量的に検出する試みは従来なされていなかった。また、疲労強度を推定するには、亀裂深さとともに亀裂数も考慮する必要があるが、それも検出されていなかった。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、交流電位差法を利用して、微細な亀裂が複数分布するような表面欠陥について、亀裂の平均亀裂深さ及び亀裂数を定量的に検査することができる亀裂深さの非破壊検査法及び亀裂数の非破壊検査法を創出することを解決すべき技術課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
(1)上記課題を解決する請求項1記載の亀裂深さの非破壊検査法は、被測定物表面に複数存在する亀裂の平均亀裂深さを検出する方法であって、
上記複数の亀裂の平均亀裂間隔bを求め、該平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ<b/2となるように周波数fP を決定する工程と、
上記被測定物の表面に当接された電流入力端子に上記周波数fP の交流電流を供給し、上記電流入力端子間で上記被測定物の表面に所定の間隔Δで当接された電位差測定探触子により該電流供給時に発生する電位差VP を求める工程と、
上記電位差測定探触子間に亀裂がないと仮定したときに上記周波数fP の交流電流供給時に発生する電位差VPOを求める工程と、
上記電位差VP と上記電位差VPOとを比較し、下記式
VP /VPO =(Δ+2na)/Δ
より、亀裂数nと平均亀裂深さaとの積naを求める工程と、
上記電位差測定探触子間に存在する亀裂の亀裂数nを求め、該亀裂数n及び上記亀裂数nと平均亀裂深さaとの積naから平均亀裂深さaを求める工程とからなることを特徴とするものである。
【0008】
(2)請求項1に記載された亀裂深さの非破壊検査法の好適な態様において、ある周波数fP で測定して求めた平均亀裂深さaの値と、その周波数fP に対応する表皮深さδの値とを比較し、aの値とδの値とが異なる場合は、周波数fP を増減しながら繰り返し測定して平均亀裂深さaを求め、aの値と測定時の周波数fP に対応する表皮深さδの値とが一致したときのaの値を信頼性の高い平均亀裂深さと判定する。
【0009】
(3)上記課題を解決する請求項3記載の亀裂深さの非破壊検査法は、被測定物表面に複数存在する亀裂の平均亀裂深さを検出する方法であって、
上記複数の亀裂の平均亀裂間隔bを求め、該平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ≧b/2となるように周波数fQ を決定する工程と、
上記被測定物の表面に当接された電流入力端子に上記周波数fQ の交流電流を供給し、上記電流入力端子間で上記被測定物の表面に所定の間隔Δで当接された電位差測定探触子により該電流供給時に発生する電位差VQ を求める工程と、
上記電位差測定探触子間に亀裂がないと仮定したときに上記周波数fQ の交流電流供給時に発生する電位差VQOを求める工程と、
上記電位差VQ と上記電位差VQOとを比較し、下記式
VQ /VQO=(Δ+2a)/Δ
より、平均亀裂深さaを求める工程とからなり、
ある周波数f Q で測定して求めた平均亀裂深さaの値と、その周波数f Q に対応する表皮深さδの値とを比較し、aの値とδの値とが異なる場合は、周波数f Q を増減しながら繰り返し測定して平均亀裂深さaを求め、aの値と測定時の周波数f Q に対応する表皮深さδの値とが一致したときのaの値を信頼性の高い平均亀裂深さと判定することを特徴とするものである。
【0011】
(4)上記課題を解決する請求項4記載の亀裂数の非破壊検査法は、被測定物表面に複数存在する亀裂の亀裂数を検出する方法であって、
上記複数の亀裂の平均亀裂間隔bを求め、該平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ<b/2となるように周波数fP を決定する工程と、
上記被測定物の表面に当接された電流入力端子に上記周波数fP の交流電流を供給し、上記電流入力端子間で上記被測定物の表面に所定の間隔Δで当接された電位差測定探触子により該電流供給時に発生する電位差VP を求める工程と、
上記電位差測定探触子間に亀裂がないと仮定したときに上記周波数fP の交流電流供給時に発生する電位差VPOを求める工程と、
上記電位差VP と上記電位差VPOとを比較し、下記式
VP /VPO=(Δ+2na)/Δ
より、亀裂数nと平均亀裂深さaとの積naを求める工程と、
上記平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ≧b/2となるように周波数fQ を決定する工程と、
上記被測定物の表面に当接された電流入力端子に上記周波数fQ の交流電流を供給し、上記電流入力端子間で上記被測定物の表面に所定の間隔Δで当接された電位差測定探触子により該電流供給時に発生する電位差VQ を求める工程と、
上記電位差測定探触子間に亀裂がないと仮定したときに上記周波数fQ の交流電流供給時に発生する電位差VQOを求める工程と、
上記電位差VQ と上記電位差VQOとを比較し、下記式
VQ /VQO=(Δ+2a)/Δ
より、平均亀裂深さaを求める工程と、
上記亀裂数nと平均亀裂深さaとの積na及び上記平均亀裂深さaから亀裂数nを求める工程とからなることを特徴とするものである。
【0012】
(5)上記課題を解決する請求項5記載の亀裂深さの非破壊検査法は、被測定物表面に複数存在する亀裂の平均亀裂深さを検出する方法であって、
上記複数の亀裂の平均亀裂間隔bを求め、該平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ<b/2となる範囲の異なる周波数fP1 ,fP2 ,…の交流電流を上記被測定物の表面に当接された電流入力端子にそれぞれ供給し、上記電流入力端子間で上記被測定物の表面に所定の間隔Δで当接された電位差測定探触子により、上記各電流供給時に発生する電位差VP1,VP2,…をそれぞれ求め、上記周波数fP1 ,fP2 ,…及び上記電位差VP1,VP2,…より、電位差VP の周波数依存性を調べて、VP とfP 1/2 の傾きKP を求める工程と、
上記電位差測定探触子間に亀裂がないと仮定したときに上記各周波数fP1 ,fP2 ,…の交流電流供給時に発生する電位差VPO1 ,VPO2 ,…をそれぞれ求め、上記周波数fP1 ,fP2 ,…及び上記電位差VPO1 ,VPO2 ,…より、電位差VPOの周波数依存性を調べて、VPOとfP 1/2 の傾きKPOを求める工程と、
上記VP とfP 1/2 の傾きKP と上記VPOとfP 1/2 の傾きKPOとを比較し、下記式
KP /KPO=(Δ+2na)/Δ
より、亀裂数nと平均亀裂深さaとの積naを求める工程と、
上記電位差測定探触子間に存在する亀裂の亀裂数nを求め、該亀裂数n及び上記亀裂数nと平均亀裂深さaとの積naから平均亀裂深さaを求める工程とからなることを特徴とするものである。
【0013】
(6)上記課題を解決する請求項6記載の亀裂深さの非破壊検査法は、被測定物表面に複数存在する亀裂の平均亀裂深さを検出する方法であって、
上記複数の亀裂の平均亀裂間隔bを求め、該平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ≧b/2となる範囲の異なる周波数fQ1 ,fQ2 ,…の交流電流を上記被測定物の表面に当接された電流入力端子にそれぞれ供給し、上記電流入力端子間で上記被測定物の表面に所定の間隔Δで当接された電位差測定探触子により、上記各電流供給時に発生する電位差VQ1,VQ2,…をそれぞれ求め、上記周波数fQ1 ,fQ2 ,…及び上記電位差VQ1,VQ2,…より、電位差VQ の周波数依存性を調べて、VQ とfQ 1/2 の傾きKQ を求める工程と、
上記電位差測定探触子間に亀裂がないと仮定したときに上記各電流供給時に発生する電位差VQO1 ,VQO2 ,…をそれぞれ求め、上記周波数fQ1 ,fQ2 ,…及び上記電位差VQO1 ,VQO2 ,…より、電位差VQOの周波数依存性を調べて、VQOとfQ 1/2 の傾きKQOを求める工程と、
上記VQ とfQ 1/2 の傾きKQ と上記VQOとfQ 1/2 の傾きKQOとを比較し、下記式
KQ /KQO=(Δ+2a)/Δ
より、平均亀裂深さaを求める工程とからなることを特徴とするものである。
【0014】
(7)上記課題を解決する請求項7記載の亀裂数の非破壊検査法は、被測定物表面に複数存在する亀裂の亀裂数を検出する方法であって、
上記複数の亀裂の平均亀裂間隔bを求め、該平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ<b/2となる範囲の異なる周波数fP1 ,fP2 ,…の交流電流を上記被測定物の表面に当接された電流入力端子にそれぞれ供給し、上記電流入力端子間で上記被測定物の表面に所定の間隔Δで当接された電位差測定探触子により、上記各電流供給時に発生する電位差VP1,VP2,…をそれぞれ求め、上記周波数fP1 ,fP2 ,…及び上記電位差VP1,VP2,…より、電位差VP の周波数依存性を調べて、VP とfP 1/2 の傾きKP を求める工程と、
上記電位差測定探触子間に亀裂がないと仮定したときに上記各周波数fP1 ,fP2 ,…の交流電流供給時に発生する電位差VPO1 ,VPO2 ,…をそれぞれ求め、上記周波数fP1 ,fP2 ,…及び上記電位差VPO1 ,VPO2 ,…より、電位差VPOの周波数依存性を調べて、VPOとfP 1/2 の傾きKPOを求める工程と、
上記VP とfP 1/2 の傾きKP と上記VPOとfP 1/2 の傾きKPOとを比較し、下記式
KP /KPO=(Δ+2na)/Δ
より、亀裂数nと平均亀裂深さaとの積naを求める工程と、
上記平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ≧b/2となる範囲の異なる周波数fQ1 ,fQ2 ,…の交流電流を上記被測定物の表面に当接された電流入力端子にそれぞれ供給し、上記電流入力端子間で上記被測定物の表面に所定の間隔Δで当接された電位差測定探触子により、上記各電流供給時に発生する電位差VQ1,VQ2,…をそれぞれ求め、上記周波数fQ1 ,fQ2 ,…及び上記電位差VQ1,VQ2,…より、電位差VQ の周波数依存性を調べて、VQ とfQ 1/2 の傾きKQ を求める工程と、
上記電位差測定探触子間に亀裂がないと仮定したときに上記各電流供給時に発生する電位差VQO1 ,VQO2 ,…をそれぞれ求め、上記周波数fQ1 ,fQ2 ,…及び上記電位差VQO1 ,VQO2 ,…より、電位差VQOの周波数依存性を調べて、VQOとfQ 1/2 の傾きKQOを求める工程と、
上記VQ とfQ 1/2 の傾きKQ と上記VQOとfQ 1/2 の傾きKQOとを比較し、下記式
KQ /KQO=(Δ+2a)/Δ
より、平均亀裂深さaを求める工程と、
上記亀裂数nと平均亀裂深さaとの積na及び上記平均亀裂深さaから亀裂数nを求める工程とからなることを特徴とするものである。
【0015】
(8)請求項1、2又は5に記載された亀裂深さの非破壊検査法の好適な態様において、前記被測定物は焼結体よりなり、該焼結体の原料粉末の平均粒子径から前記亀裂の亀裂間隔bを求め、かつ、該焼結体の原料粉末の平均粒子径と前記電位差測定探触子の間隔Δとから前記電位差測定探触子間に存在する亀裂の亀裂数nを求める。
【0016】
(9)請求項3又は6に記載された亀裂深さの非破壊検査法の好適な態様において、前記被測定物は焼結体よりなり、該焼結体の原料粉末の平均粒子径から前記亀裂の亀裂間隔bを求める。
(10)請求項4又は7に記載された亀裂数の非破壊検査法の好適な態様において、前記被測定物は焼結体よりなり、該焼結体の原料粉末の平均粒子径から前記亀裂の亀裂間隔bを求める。
【0017】
【作用】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る亀裂深さ又は亀裂数の非破壊検査法の作用について説明する。
本発明に係る亀裂深さ又は亀裂数の非破壊検査法は、図1に示すように、亀裂が複数分布するような被測定物の表面欠陥について、亀裂の平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係に応じて、異なる方法により亀裂の平均亀裂深さ又は亀裂数を検出する。
【0018】
ここで、表皮深さδは、自然対数の底をeとして、電流密度が最表面の値の1/eになる深さを示す。この表皮深さδは、周波数f、透磁率μ、電気伝導度σにより下記数1式のように表される。したがって、表皮深さδの値は、供給する交流電流の周波数fを調整することにより調整することができる。
【0019】
【数1】
【0020】
また、電位差測定探触子間に亀裂がないと仮定した場合、該電位差測定探触子により測定される電位差VO は、電位差測定探触子の間隔をΔ、被測定物の表面に当接された電流入力端子に供給される交流電流の電流路の幅をw、電気抵抗をR、電気抵抗率をRO とすれば、下記数2式のように表される。
【0021】
【数2】
【0022】
(1)請求項1記載の亀裂深さの非破壊検査法は、亀裂の平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ<b/2を満たす場合のものである。すなわち、請求項1記載の方法では、複数の亀裂の平均亀裂間隔bを求め、該平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ<b/2となるように上記数1式より周波数fP を決定する。そして、被測定物の表面に当接された電流入力端子に上記周波数fP の交流電流を供給し、この時発生する電位差VP を、電流入力端子間で被測定物の表面に所定の間隔Δで当接された電位差測定探触子により求める。
【0023】
ここで請求項1記載の方法では、亀裂の平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ<b/2を満たす周波数fP の交流電流を供給しているので、図2に示すように、表皮効果により、電流は被測定物の表面及び亀裂の表面に沿ってのみ流れる(図2中、黒く帯状に示した部分が電流が流れる部分である。)。このため、亀裂の平均亀裂深さa、電位差測定探触子間に存在する亀裂の亀裂数nとすると、上記数2式のΔは(Δ+2na)となる。したがって、上記電位差測定探触子により求められた電位差VP は、下記数3式により表される。
【0024】
【数3】
【0025】
一方、上記電位差測定探触子間に亀裂がないと仮定したときに上記周波数fP の交流電流供給時に発生する電位差VPOを求めれば、上記電位差VP と、この電位差VPOとの比Vnormalizedは、下記式のように表される。
Vnormalized=VP /VPO=(Δ+2na)/Δ
したがって、亀裂数nと平均亀裂深さaとの積naは、下記数4式のように表される。
【0026】
【数4】
【0027】
そして、上記電位差測定探触子間に存在する亀裂の亀裂数nを求め、該亀裂数n及び上記亀裂数nと平均亀裂深さaとの積naから平均亀裂深さaを求めることができる。
(2)請求項1記載の方法において、ある周波数fP に対応する表皮深さδの値と、その周波数を用いて測定された平均亀裂深さaの値とが一致するとき、このときのaの値と実際の亀裂深さとがよく対応することが実験的にわかった。この理由については不明だが、亀裂深さと同等の表皮深さδとなる周波数fP で測定すると、常に亀裂深さと電流路の相対的関係が同じ条件になるためと考えられる。
【0028】
したがって、まず、ある周波数fP で測定し、その結果得られた平均亀裂深さaの値と、その周波数fP に対応する表皮深さδの値とを比較し、aの値とδの値とが一致するまで、周波数fP を増減しながら繰り返し測定することにより、信頼性の高い平均亀裂深さaの値を求めることができる。
なお、aの値とδの値とが一致するとは、許容誤差の範囲内に入ることである。
【0029】
(3)請求項3記載の亀裂深さの非破壊検査法は、亀裂の平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ≧b/2を満たす場合のものである。すなわち、請求項3記載の方法では、複数の亀裂の平均亀裂間隔bを求め、該平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ≧b/2となるように上記数1式より周波数fQ を決定する。そして、被測定物の表面に当接された電流入力端子に上記周波数fQ の交流電流を供給し、この時発生する電位差VQ を、電流入力端子間で被測定物の表面に所定の間隔Δで当接された電位差測定探触子により求める。
【0030】
ここで請求項3記載の方法では、亀裂の平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ≧b/2を満たす周波数fQ の交流電流を供給しているので、図3に示すように、電流は亀裂を避けて流れるようになる(図3中、黒く帯状に示した部分が電流が流れる部分である。)。すなわち、亀裂間隔が相対的に狭いため、隣接する亀裂表面の表皮効果が互いに干渉し合って電流が亀裂表面に沿って流れ難くなる。このため、電流は被測定物の表面から両端に位置する亀裂の外側表面に沿って流れるとともに、各亀裂の最深部を結んだ直線に沿って流れることとなる。したがって、上記数2式のΔは、電位差測定探触子間に存在する亀裂の亀裂数nにかかわらず亀裂の平均亀裂深さaのみが関与して、(Δ+2a)となる。したがって、上記電位差測定探触子により求められた電位差VQ は、下記数5式により表される。
【0031】
【数5】
【0032】
一方、上記電位差測定探触子間に亀裂がないと仮定したときに上記周波数fQ の交流電流供給時に発生する電位差VQOを求めれば、上記電位差VQ と、この電位差VQOとの比Vnormalizedは、下記式のように表される。
Vnormalized=VQ /VQO=(Δ+2a)/Δ
したがって、平均亀裂深さaは、下記数6式により求めることができる。
【0033】
【数6】
【0034】
このように請求項3記載の方法では、電位差測定探触子間に存在する亀裂の亀裂数nを求めることなく(亀裂数nが未知の場合でも)、電位差測定探触子間に存在する亀裂の平均亀裂深さaを求めることができる。
そして、この請求項3記載の方法においても、請求項1記載の方法と同様に、ある周波数fQ に対応する表皮深さδの値と、その周波数を用いて測定された平均亀裂深さaの値とが一致するとき、このときのaの値と実際の亀裂深さとがよく対応することが実験的にわかった。
【0035】
したがって、まず、ある周波数fQ で測定し、その結果得られた平均亀裂深さaの値と、その周波数fQ に対応する表皮深さδの値とを比較し、aの値とδの値とが一致するまで、周波数fQ を増減しながら繰り返し測定することにより、信頼性の高い平均亀裂深さaの値を求めることができる。
なお、aの値とδの値とが一致するとは、許容誤差の範囲内に入ることである。
【0036】
(4)請求項4記載の亀裂数の非破壊検査法は、基本的には請求項1記載の方法の要部及び請求項3記載の方法の要部を併用するものである。すなわち、まず請求項1記載の方法と同様に、亀裂数nと平均亀裂深さaとの積naを求める。そして、請求項3記載の方法と同様に平均亀裂深さaを求め、このaの値と上記亀裂数nと平均亀裂深さaとの積naの値とから、亀裂数nを求めることができる。
【0037】
このように、請求項4記載の方法によれば、電位差測定探触子間に存在する亀裂の亀裂数nが未知の場合でも、該亀裂数nの値を求めることができる。
(5)請求項5記載の亀裂深さの非破壊検査法は、亀裂の平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ<b/2を満たす場合のものである。すなわち、請求項5記載の方法では、複数の亀裂の平均亀裂間隔bを求め、該平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ<b/2となる範囲の異なる周波数fP1 ,fP2 ,…の交流電流を被測定物の表面に当接された電流入力端子にそれぞれ供給し、この時発生する電位差VP1,VP2,…を、電流入力端子間で被測定物の表面に所定の間隔Δで当接された電位差測定探触子によりそれぞれ求める。そして、上記周波数fP1 ,fP2 ,…及び上記電位差VP1,VP2,…より、電位差VP の周波数依存性を調べ、VP とfP 1/2 の傾きKP を求める。すなわち、fP 1/2 をx軸とし、VP をy軸とした場合の直線の傾きKP を求める。なお、fP 1/2 をx軸とし、VP をy軸とした場合の直線の傾きは、前記数3式で表される直線の傾き(前記数3式の下線部で示す部分)と一致する。
【0038】
一方、上記電位差測定探触子間に亀裂がないと仮定したときに上記各周波数fP1 ,fP2 ,…の交流電流供給時に発生する電位差VPO1,VPO2 ,…をそれぞれ求める。そして、上記周波数fP1 ,fP2 ,…及び上記電位差VPO1,VPO2 ,…より、電位差VPOの周波数依存性を調べ、VPOとfP 1/2 の傾きKPOを求める。すなわち、fP 1/2 をx軸とし、VPOをy軸とした場合の直線の傾きKPOを求める。なお、fP 1/2 をx軸とし、VPOをy軸とした場合の直線の傾きは、前記数2式で表される直線の傾き(前記数2式の下線部で示す部分)と一致する。
【0039】
ここで請求項5記載の方法では、請求項1記載の方法と同様に、亀裂の平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ<b/2を満たす周波数fの交流電流を供給しているので、表皮効果により、電流は被測定物の表面及び亀裂の表面に沿ってのみ流れる。このため、上記VP とfP 1/2 の傾きKP と上記VPOとfP 1/2 の傾きKPOの比は、前記数2式及び前記数3式より、下記式のように表される。
【0040】
KP /KPO=(Δ+2na)/Δ(=Vnormalized=V/VO )
したがって、亀裂数nと平均亀裂深さaとの積naは、下記数7式のように表される。
【0041】
【数7】
【0042】
そして、上記電位差測定探触子間に存在する亀裂の亀裂数nを求め、該亀裂数n及び上記亀裂数nと平均亀裂深さaとの積naから平均亀裂深さaを求めることができる。
このように請求項5記載の方法では、周波数を複数変えて電位差測定を行い、得られた電位差の周波数依存性から平均亀裂深さaを求めるものであるから、平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係から計算上求めた1点の周波数で電位差測定を行う請求項1記載の方法と比べて、信頼性が向上する。
【0043】
(6)請求項6記載の亀裂深さの非破壊検査法は、亀裂の平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ≧b/2を満たす場合のものである。すなわち、請求項6記載の方法では、複数の亀裂の平均亀裂間隔bを求め、該平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ≧b/2となる範囲の異なる周波数fQ1 ,fQ2 ,…の交流電流を被測定物の表面に当接された電流入力端子にそれぞれ供給し、この時発生する電位差VQ1,VQ2,…を、電流入力端子間で被測定物の表面に所定の間隔Δで当接された電位差測定探触子によりそれぞれ求める。そして、上記周波数fQ1 ,fQ2 ,…及び上記電位差VQ1,VQ2,…より、電位差VQ の周波数依存性KQ を調べ、VQ とfQ 1/2の傾きKQ を求める。すなわち、fQ 1/2 をx軸とし、VQ をy軸とした場合の直線の傾きKQ を求める。なお、fQ 1/2 をx軸とし、VQ をy軸とした場合の直線の傾きは、前記数5式で表される直線の傾き(前記数5式の下線部で示す部分)と一致する。
【0044】
一方、上記電位差測定探触子間に亀裂がないと仮定したときに上記各周波数fQ1 ,fQ2 ,…の交流電流供給時に発生する電位差VQO1,VQO2 ,…をそれぞれ求める。そして、上記周波数fQ1 ,fQ2 ,…及び上記電位差VQO1,VQO2 ,…より、電位差VQOの周波数依存性を調べ、VQOとfQ 1/2 の傾きKQOを求める。すなわち、fQ 1/2 をx軸とし、VQOをy軸とした場合の直線の傾きKQOを求める。なお、fQ 1/2 をx軸とし、VQOをy軸とした場合の直線の傾きは、前記数2式で表される直線の傾き(前記数2式の下線部で示す部分)と一致する。
【0045】
ここで請求項6記載の方法では、請求項3記載の方法と同様に、亀裂の平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ≧b/2を満たす周波数fの交流電流を供給しているので、電流は被測定物の表面から両端に位置する亀裂の外側表面に沿って流れるとともに、各亀裂の最深部を結んだ直線に沿って流れる。このため、上記VQ とfQ 1/2 の傾きKQ と上記VQOとfQ 1/2 の傾きKQOの比は、前記数2式及び前記数5式より、下記式のように表される。
【0046】
KQ /KQO=(Δ+2a)/Δ(=Vnormalized=V/VO )
したがって、平均亀裂深さaは、下記数8式により求めることができる。
【0047】
【数8】
【0048】
このように請求項6記載の方法では、周波数を複数変えて電位差測定を行い、得られた電位差の周波数依存性から平均亀裂深さaを求めるものであるから、平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係から計算上求めた1点の周波数で電位差測定を行う方法と比べて、信頼性が向上する。
(7)請求項7記載の亀裂数の非破壊検査法は、基本的には請求項5記載の方法の要部及び請求項6記載の方法の要部を併用するものである。すなわち、まず請求項5記載の方法と同様に、亀裂数nと平均亀裂深さaとの積naを求める。そして、請求項6記載の方法と同様に平均亀裂深さaを求め、このaの値と上記亀裂数nと平均亀裂深さaとの積naの値とから、亀裂数nを求めることができる。
【0049】
このように、請求項7記載の方法によれば、電位差測定探触子間に存在する亀裂数nが未知の場合でも、該亀裂数nの値を求めることができる。
(8)請求項1、2又は5に記載された亀裂深さの非破壊検査法において、被測定物が焼結体よりなる場合は、亀裂間隔は焼結体の粒子間隔と考えることができるため、前記亀裂の平均亀裂間隔bは焼結体の原料粉末の平均粒子径から求めることができる。また、前記電位差測定探触子間に存在する亀裂の亀裂数nは、前記電位差測定探触子の間隔Δと焼結体の原料粉末の平均粒子径とから、Δ/bの式より求めることができる。
【0050】
(9)請求項3又は6に記載された亀裂深さの非破壊検査法において、被測定物が焼結体よりなる場合は、亀裂間隔は焼結体の粒子間隔と考えることができるため、前記亀裂の平均亀裂間隔bは焼結体の原料粉末の平均粒子径から求めることができる。
(10)請求項4又は7に記載された亀裂数の非破壊検査法において、被測定物が焼結体よりなる場合は、亀裂間隔は焼結体の粒子間隔と考えることができるため、前記亀裂の平均亀裂間隔bは焼結体の原料粉末の平均粒子径から求めることができる。
【0051】
【発明の実施の形態】
以下、実施形態により本発明を具体的に説明する。
〔第1実施形態〕
図4に模式的に示すように、鋼製(JIS S45C)の鉄板1に幅0.15mm、深さ1.0mmの亀裂2をカットワイヤを用いて0.5mm間隔で多数加工した。
【0052】
ここで、上記鉄板1は、透磁率μ=2×10−4H/m、電気伝導度σ=5.8×106 Ω−1/mであり、前記数1より求めた周波数fと表皮深さδとの関係を表1に示す。
【0053】
【表1】
(実施形態1)
本実施形態1は、請求項1記載の方法を適用して、鉄板1に加工された亀裂2の平均亀裂深さaを求めるものである。すなわち、亀裂2の平均亀裂間隔b=0.5mmであり、平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ<b/2となり、しかも表皮深さδがb/2より相対的にはるかに小さくなるように(具体的にはb/2に対して、1/10〜1/2倍以下)、測定周波数fP =30kHzを決定した(表皮深さδ=0.096mm)。なお、電位差測定機器としては、Matelect製の汎用機器CGM−5を用い、供給交流電流は2A一定とした。
【0054】
図5に模式的に示すように、鉄板1の表面で亀裂2が形成された箇所を含むように交流電源3に接続された電流入力端子4、4を当接した。なお、電流入力端子4、4の間隔は24mmとした。そして、交流電源3から周波数fP =30kHzの交流電流を電流入力端子4、4に供給した。この時、鉄板1の表面で亀裂2が形成された範囲内に一定の間隔Δ=5mmで当接された電位差測定探触子5、5により電位差VP を測定した。その結果、電位差VP =5.94Vであった。また、鉄板1の表面で亀裂2が形成されていない範囲内に一定の間隔Δ=5mmで当接された電位差測定探触子6、6により電位差VPOを測定した。その結果、電位差VPO=1.10Vであった。
【0055】
したがって、上記電位差VP と、上記電位差VPOとの比Vnormalizedは、
Vnormalized=VP /VPO=5.4
となり、Δ=5mm、及び前記数4式より、
na=5×(5.4−1)÷2=11(mm個)
を求めることができる(a=平均亀裂深さ)。
【0056】
ここで、電位差測定探触子5、5間に存在する亀裂2の亀裂数nは、電位差測定探触子5、5の間隔Δ=5mm、及び亀裂2の平均亀裂間隔b=0.5mmより、n=10個となる。したがって、亀裂2の平均亀裂深さa=1.1mmを求めることができる。
なお、本実施形態では亀裂2の平均亀裂間隔bが0.5mmと既知であり、また電位差測定探触子5、5間に存在する亀裂2の亀裂数nは上記のように計算により求めることができるが、これらの値がわからない場合は予めSEM写真や光学顕微鏡写真等を利用して求めておく必要がある。但し、後述する第2実施形態のように被測定物として焼結体を用いる場合は、その焼結体の原料粉末の平均粒子径から亀裂2の平均亀裂間隔bを求めることができるとともに、n=Δ/bより亀裂2の亀裂数nを求めることができる。
【0057】
(参考形態1)
参考形態1は、請求項3記載の方法を部分的に適用して、鉄板1に加工された亀裂2の平均亀裂深さaを求めるものである。すなわち、亀裂2の平均亀裂間隔b=0.5mmであり、平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ≧b/2、具体的には表皮深さδがb/2の5〜1倍以上となるように、測定周波数fQ =1kHzを決定した(表皮深さδ=0.52mm)。
【0058】
そして、上記実施形態1に準ずる方法により、電位差VQ 及び電位差VQOを測定した。その結果、電位差VQ =0.217Vであり、電位差VQO=0.15Vであった。
したがって、上記電位差VQ と、上記電位差VQOとの比Vnormalizedは、
Vnormalized=VQ /VQO=1.45 となり、Δ=5mm、及び前記数6式より、
a=5×(1.45−1)÷2=1.125(mm)
を求めることができる(a=平均亀裂深さ)。
【0059】
このように、参考形態1の方法によれば、電位差測定探触子5、5間に存在する亀裂2の亀裂数nを求めることなく(亀裂数nが未知の場合でも)、亀裂2の平均亀裂深さaを求めることができる。
なお、参考形態1では亀裂2の平均亀裂間隔bが0.5mmと既知であるが、この値がわからない場合は予めSEM写真や光学顕微鏡写真等を利用して求めておく必要がある。但し、後述する第2実施形態のように被測定物として焼結体を用いる場合は、その焼結体の原料粉末の平均粒子径から亀裂2の平均亀裂間隔bを求めることができる。
【0060】
(実施形態2)
本実施形態2は、請求項4記載の方法を適用して、鉄板1に加工された亀裂2の平均亀裂深さa、及び電位差測定探触子5、5間に存在する亀裂2の亀裂数nを求めるものである。すなわち、上記実施形態1及び参考形態1の方法の要部を併用するもので、まず実施形態1と同様に、電位差Vp 及び電位差VPOを測定し、Vnormalizedを求め、前記数4式より、亀裂数nと平均亀裂深さaとの積naの値(na=11mm個)を求めた。そして、上記参考形態1と同様に、電位差VQ 及び電位差VQOを測定し、Vnormalizedを求め、前記数6式より、平均亀裂深さaの値(a=1.125mm)を求めた。さらに、この平均亀裂深さaの値(a=1.125mm)及び上記亀裂数nと平均亀裂深さaとの積naの値(na=11mm個)より、電位差測定探触子5、5間に存在する亀裂2の亀裂数nの値(n=9.7)を求めることができる。
【0061】
このように、本実施形態2の方法によれば、電位差測定探触子5、5間に存在する亀裂2の亀裂数nが未知の場合でも、該亀裂数nの値を求めることができる。
(実施形態3)
本実施形態3は、請求項5記載の方法を適用して、鉄板1に加工された亀裂2の平均亀裂深さaを求めるものである。すなわち、亀裂2の平均亀裂間隔b=0.5mmであり、平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ<b/2となり、しかも表皮深さδがb/2より相対的にはるかに小さくなる範囲内で(具体的にはb/2に対して、1/10〜1/2倍以下)、測定周波数fP1=30kHz(表皮深さδ=0.096mm), fP2=100kHz(表皮深さδ=0.052mm)を決定した。
【0062】
そして、亀裂2が形成された範囲内に、上記実施形態1と同様に、各周波数fP1=30kHz, fP2=100kHzの交流電流を供給した時の電位差VP1, VP2をそれぞれ求めた。その結果、電位差VP1=5.94V, VP2=13.5Vであった。そして、上記周波数fP1=30kHz, fP2=100kHz、及び上記電位差VP1=5.94V, VP2=13.5Vより、電位差VP の周波数依存性を調べ、VP とfP 1/2 の傾きKP を求めた。すなわち、fP 1/2 をx軸とし、VP をy軸とした場合の直線の傾きKP を求めた。その結果、KP =1.841であった。
【0063】
一方、亀裂2が形成されていない範囲内に、上記実施形態1と同様に、各周波数fP1=30kHz, fP2=100kHzの交流電流を供給した時の電位差VPO1,VPO2 をそれぞれ求めた。その結果、電位差VPO1 =1.10V, VPO2 =2.7Vであった。そして、上記周波数fP1=30kHz, fP2=100kHz、及び上記電位差VPO1 =1.10V, VPO2 =2.7Vより、電位差VPOの周波数依存性を調べ、VPOとfP 1/2 の傾きKPOを求めた。すなわち、fP 1/2 をx軸とし、VPOをy軸とした場合の直線の傾きKPOを求めた。その結果、KPO=0.354であった。
【0064】
したがって、上記傾きKP と、上記傾きKPOとの比、すなわちVnormalized(=V/VO )は、
KP /KPO=5.2(=Vnormalized=VP /VPO)
となり、Δ=5mm、及び前記数7式より、
na=5×(5.2−1)÷2=10.5(mm個)
を求めることができる(a=平均亀裂深さ)。
【0065】
ここで、電位差測定探触子5、5間に存在する亀裂2の亀裂数nは、電位差測定探触子5、5の間隔Δ=5mm、及び亀裂2の平均亀裂間隔b=0.5mmより、n=10個となる。したがって、亀裂2の平均亀裂深さa=1.05mmを求めることができる。
このように、本実施形態3の方法では、周波数を複数変えて電位差測定を行い、得られた電位差の周波数依存性から平均亀裂深さaを求めるので、平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係から計算上求めた1点の周波数で電位差測定を行う実施形態1の方法と比べて、信頼性を向上させることができる。
【0066】
なお、本実施形態では亀裂2の平均亀裂間隔bが0.5mmと既知であり、また電位差測定探触子5、5間に存在する亀裂2の亀裂数nは上記のように計算により求めることができるが、これらの値がわからない場合は予めSEM写真や光学顕微鏡写真等を利用して求めておく必要がある。但し、後述する第2実施形態のように被測定物として焼結体を用いる場合は、その焼結体の原料粉末の平均粒子径から亀裂2の平均亀裂間隔bを求めることができるとともに、n=Δ/bより亀裂2の亀裂数nを求めることができる。
【0067】
(実施形態4)
本実施形態4は、請求項6記載の方法を適用して、鉄板1に加工された亀裂2の平均亀裂深さaを求めるものである。すなわち、亀裂2の平均亀裂間隔b=0.5mmであり、平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ≧b/2、具体的には表皮深さδがb/2の1〜1.5倍以上となる範囲内で、測定周波数fQ1=1kHz(表皮深さδ=0.52mm), fQ2=3kHz(表皮深さδ=0.3mm)を決定した。
【0068】
そして、上記実施形態1に準ずる方法により、各周波数fQ1=1kHz, fQ2=3kHzの交流電流を供給した時の電位差VQ1, VQ2をそれぞれ求め、電位差VQ の周波数依存性を調べ、VQ とfQ 1/2 の傾きKQ を求めた。その結果、電位差VQ1=0.217V, VQ2=0.359Vであり、KQ =0.1940であった。
【0069】
また、上記実施形態1に準ずる方法により、各周波数fQ1=1kHz, fQ2=3kHzの交流電流を供給した時の電位差VQO1,VQO2 をそれぞれ求め、電位差VQOの周波数依存性を調べ、VQOとfQ 1/2 の傾きKQOを求めた。その結果、電位差VQO1 =0.15V, VQO2 =0.25Vであり、KQO=0.1366であった。
【0070】
したがって、上記傾きKQ と、上記傾きKQOとの比、すなわちVnormalized(=V/VO )は、
KQ /KQO=1.42(=Vnormalized=VQ /VQO)
となり、Δ=5mm、及び前記数8式より、
a=5×(1.42−1)÷2=1.05(mm)
を求めることができる(a=平均亀裂深さ)。
【0071】
このように、本実施形態4の方法では、周波数を複数変えて電位差測定を行い、得られた電位差の周波数依存性から平均亀裂深さaを求めるので、平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係から計算上求めた1点の周波数で電位差測定を行う参考形態1の方法と比べて、信頼性を向上させることができる。
なお、本実施形態では亀裂2の平均亀裂間隔bが0.5mmと既知であるが、この値がわからない場合は予めSEM写真や光学顕微鏡写真等を利用して求めておく必要がある。但し、後述する第2実施形態のように被測定物として焼結体を用いる場合は、その焼結体の原料粉末の平均粒子径から亀裂2の平均亀裂間隔bを求めることができる。
【0072】
(実施形態5)
本実施形態5は、請求項7記載の方法を適用して、鉄板1に加工された亀裂2の平均亀裂深さa、及び電位差測定探触子5、5間に存在する亀裂2の亀裂数nを求めるものである。
すなわち、上記実施形態3及び実施形態4の方法の要部を併用するもので、まず実施形態3と同様に、電位差VP1, VP2をそれぞれ測定し、VP とfP 1/2 の傾きKP を求めるとともに、電位差VPO1,VPO2 をそれぞれ測定し、VPOとfP 1/2 の傾きKPOを求めた。そして、上記上記傾きKP と、上記傾きKPOとの比、すなわちVnormalized(=VP /VPO)を求め、前記数4式より、亀裂数nと平均亀裂深さaとの積naの値(na=10.5mm個)を求めた。
【0073】
次に、上記実施形態4と同様に、電位差VQ1, VQ2をそれぞれ測定し、VQ とfQ 1/2 の傾きKQ を求めるとともに、電位差VQO1,VQO2 をそれぞれ測定し、VQOとfQ 1/2 の傾きKQOを求めた。そして、上記上記傾きKQ と、上記傾きKQOとの比、すなわちVnormalized(=VQ /VQO)を求め、前記数6式より、平均亀裂深さaの値(a=1.05mm)を求めた。
【0074】
したがって、この平均亀裂深さaの値(a=1.05mm)及び上記亀裂数nと平均亀裂深さaとの積naの値(na=10.5mm個)より、電位差測定探触子5、5間に存在する亀裂2の亀裂数nの値(n=10)を求めることができる。
このように、本実施形態5の方法によれば、電位差測定探触子5、5間に存在する亀裂2の亀裂数nが未知の場合でも、該亀裂数nの値を求めることができる。
【0075】
なお、上記実施形態1〜5及び参考形態1の方法により求めたそれぞれの値を表2に示す。なお、表2中、実施1〜5は実施形態1〜5を示し、参考1は参考形態1を示す。
【0076】
【表2】
〔第2実施形態〕
アトマイズ鉄粉(神戸製鋼社製、商品名「アトメル300M」、平均粒径:約80μm)、電解銅粉(福田金属箔粉社製、商品名「CE25」、平均粒径:40μm)、天然黒鉛粉(日本黒鉛社製、商品名「ACP1000」、平均粒径:6μm)、及び潤滑剤としてのステアリン酸亜鉛(日本油脂社製)を用いて、Fe−2wt%Cu−0.6wt%グラファイト−0.6wt%ステアリン酸亜鉛の組成で、V型混粉機で600秒間混合した。この混合粉末を圧粉成形した後、得られた成形プリフォームを吸熱型分解ガス(Rxガス)中で、1423K、600秒の条件で焼結した。なお、上記成形プリフォームの密度は6.0Mg/m3 であり、その形状は鍛造型とのクリアランスが片側で0.2mmである。そして、得られた焼結体を1GPaの圧力で鍛造して、図6に示す形状(幅15mm×長さ133mm×厚さ15mm)の焼結鍛造粗材7を得た。なお、上記焼結体を炉から取り出してから鍛造するまでに、焼結体が大気中に露出する時間は10秒とした。また上記鍛造は、コイニングタイプのものであり、鍛造型は水溶性グラファイトで潤滑した。また、図6(a)は焼結鍛造材7の平面図を示し、図6(b)は側面図を示し、図6(b)に示す焼結鍛造材7の上下面が鍛造時のパンチ加圧面である。
【0077】
得られた焼結鍛造粗材7に含まれる未焼結部の面積率分布を測定するため、粗材7の長手方向の中央部に切欠きを設けた後、静的に破断し、破面をSEM写真で平面的に観察した。このSEM写真(500倍、観察視野:250μm×170μm)を図7に示す。また、上記破面を光学顕微鏡写真で断面的に観察した。この光学顕微鏡写真(200倍)を図8に示す。
【0078】
そして、上記SEM写真をもとに未焼結部を識別し、イメージアナライザーを用いて未焼結部の面積率を測定し、定量化した。その測定結果を図9に示す。なお、図9中のACPD mesured surfaceとは、本実施形態法で測定した上パンチ面側のことをいう。
図9から明らかなように、上記焼結鍛造粗材7は表面から約0.6mmの深さまでの部分に未焼結部が分布しており、それより深いところでは未焼結部は観察されなかった。
【0079】
次に、交流電位差測定に際し、未焼結部深さの異なる試験片を作製するため、図10に示すように、焼結鍛造材7の鍛造時の上側加圧面を長手方向に1/100の傾きで斜め研磨を行い、同一試料の中で未焼結部深さを連続的に変えた試料を作製した。したがって、1/100の傾きで斜め研磨した試料において、未焼結部の分布深さは、研磨開始位置で0.6mmと最大となり、研磨開始位置から6cmの位置まで徐々に減少して6cmの位置でゼロとなり、それ以降は未焼結部を含まない試料となっている。
【0080】
本実施形態で用いる被測定物としての試料は鉄系焼結鍛造材7であり、この未焼結部は図8に示す断面組織より、最表面ではほぼ全ての鉄粉の境界に酸化物が観察されることから明らかなように、亀裂の平均間隔bは使用した鉄粉の平均粒径(約80μm)のレベルと考えられる。
(参考形態2)
参考形態2は、請求項3記載の方法を部分的に適用して、鉄系焼結鍛造材7よりなる試料の未焼結部としての亀裂の平均亀裂深さaを求めるものである。すなわち、上記したように亀裂の平均亀裂間隔b=80μmであり、平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ≧b/2、具体的には表皮深さδがb/2の5〜1倍以上となるように、測定周波数fQ =10kHzを決定した(表皮深さδ=0.17mm)。
【0081】
そして、電位差測定機器として、英国Matelect製のCGM5を用い、前記参考形態1に準ずる方法により、斜め研磨した試料の中央部を5mmおきに 電位VQ 、VQOを測定した。なお、電力入力端子4、4間の間隔は24mm、電位差測定探触子5、5及び6、6の間隔Δは10mmとした。
そして、前記参考形態1と同様に電位差VQ と電位差VQOとの比Vnormalizedをそれぞれ求め、前記数6式より、平均亀裂深さaをそれぞれ求めた。
【0082】
このようにして得られた平均亀裂深さaと、前記静的破面のSEM観察から実測した未焼結部深さDとの関係を図11に示す。
図11から明らかなように、全体としてはほぼ1対1の相関が得られており、未焼結部の分布深さを非破壊的に定量することが可能であった。
なお、参考形態2では、被測定物としての試料は鉄系焼結鍛造材7を用いており、亀裂の平均亀裂間隔bは使用した鉄粉の平均粒径(約80μm)から求めることができ、したがって間隔Δ(=10mm)の電位差測定探触子5、5間に存在する亀裂の亀裂数nは、n=Δ/bより求めることができる。
【0083】
また、請求項1記載の方法を適用して、鉄系焼結鍛造材7よりなる試料の未焼結部としての亀裂の平均亀裂深さaを求めることも可能である。すなわち、亀裂の平均亀裂間隔b=80μmであり、平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ<b/2、具体的には表皮深さδがb/2の1/10〜1/2倍以下となるように、測定周波数fP =1MHzを決定し(表皮深さδ=0.017μm)、前記実施形態1に準ずる方法により、naの値を求め、n=Δ/bよりnを求めて、aを求めることができる。
【0084】
さらに、請求項5又は6記載の方法を適用して、鉄系焼結鍛造材7よりなる試料の未焼結部としての亀裂の平均亀裂深さaを求めることもでき、また請求項4又は7記載の方法を適用して、鉄系焼結鍛造材7よりなる試料の未焼結部としての亀裂の亀裂数nを求めることもできる。
(参考形態3)
参考形態3は、上記参考形態2において、平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ≧b/2となる範囲内で周波数fQ を、0.3kHz(表皮深さδ=0.90mm)、1kHz(表皮深さδ=0.52mm)、kHz(表皮深さδ=0.30mm)、10kHz(表皮深さδ=0.17mm)と種々変更して、平均亀裂深さaをそれぞれ求めた。
【0085】
このようにして得られた平均亀裂深さaと、静的破面のSEM観察から実測した未焼結部深さDとの関係を図12に示す。
図12から明らかなように、全体としてはほぼ1対1の相関が得られており、未焼結部の分布深さを非破壊的に定量することが可能であった。
また、図12の結果のうち、1kHz、3kHz、10kHzのそれぞれの測定周波数における表皮深さδと同等の未焼結部深さDを計測したデータのみを選択し、平均亀裂深さaと未焼結部深さDとの間にみられる関係を調べた。その結果を図13に示す。
【0086】
図13から明らかなように、未焼結部深さDが0.17〜0.5mmとなる広範囲にわたって、1対1の良い相関が得られた。これにより、平均亀裂深さaを求める際の信頼性を向上させる上で、亀裂深さと同等の表皮深さδとなる周波数で測定することが好ましいことがわかる。これは、亀裂深さと同等の表皮深さとなる周波数を選択することにより、常に亀裂深さと電流路の相対的な関係が同じ条件になるためと考えられる。
【0087】
(実施形態6)
本実施形態6は、請求項3記載の方法を適用して、鉄系焼結鍛造材7よりなる試料の未焼結部としての亀裂の平均亀裂深さaをより信頼性高く求めるもので、図14に示すフローチャートに従って行った。
まず、上記したように亀裂の平均亀裂間隔b=80μmであり、平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ≧b/2、具体的には表皮深さδがb/2の4〜5倍以上となるように、ある測定周波数fQ1=0.3kHzを決定した(表皮深さδ1 =0.9mm)。
【0088】
そして、上記参考形態2に準ずる方法により、上記鉄系焼結材7よりなる試料を用い、表面から約0.5mmの深さまで未焼結部が分布している位置で平均亀裂深さa1 を求めた。その結果、a1 =0.3mmであった。
a1 の値と測定周波数fQ1に対応する表皮深さδ1 の値とを比較すると、a1 ≠δ1 である。
【0089】
したがって、次にa1 =δ2 (=0.3mm)となる周波数fQ2(fQ2=3kHz)で測定し、平均亀裂深さa2 を求めた。その結果、a2 =0.72mmであった。
a2 の値と測定周波数fQ2に対応する表皮深さδ2 の値とを比較すると、a2 ≠δ2 である。
【0090】
したがって、次にa2 =δ3 (=0.72mm)となる周波数fQ3(fQ3=0.5kHz)で測定し、平均亀裂深さa3 を求め、a3 の値と測定周波数fQ3に対応する表皮深さδ3 を比較した。
以下、an ≒δn となるまでこれを繰り返した。その結果を表3に示す。
【0091】
【表3】
このようにして、ある周波数fQ1で測定し、その結果得られた平均亀裂深さa1 の値と、その周波数fQ1に対応する表皮深さδ1 の値とを比較し、a1 の値とδ1 の値とが異なる場合は、an ≒δn となるまで、周波数fQ を増減しながら繰り返し測定することにより、信頼性の高い平均亀裂深さaの値を求めることができる。
【0092】
〔第3実施形態〕
本実施形態においては、請求項2又は3記載の方法を実施する場合に、上記an ≒δn になるべく早く到達するための方法について説明する。この方法では、図15〜図17のフローチャート及び図18〜図21に示すように、A〜Dの4つのパターンに分かれる。
【0093】
なお、前提条件として、複数の亀裂の平均亀裂間隔bがわかっているものとする。また、以下に示す方法は、平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ≧b/2となる場合、すなわち請求項3記載の方法を適用する場合について説明するが、平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ<b/2となる場合、すなわち請求項2記載の方法にも同様に適用することが可能である。
【0094】
まず、平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ≧b/2、具体的には表皮深さδがb/2の4〜5倍以上となるように、測定周波数fQ1(この周波数fQ1に対応する表皮深さはδ1 )を決定し、上記参考形態2に準ずる方法により測定して、平均亀裂深さa1 を求める。そして、図15に示すように、δ1 とa1 とを比較する。このとき、δ1 =a1 なら、この平均亀裂深さa1 の値が信頼性の高い平均亀裂深さであると判定できる。
【0095】
(Aパターン)
(1)δ1 <a1 のとき、a1 =δ2 となる周波数fQ2で測定し、同様に平均亀裂深さa2 を求める。そして、再びδ2 とa2 とを比較する。このとき、δ2 =a2 なら、この平均亀裂深さa2 の値が信頼性の高い平均亀裂深さであると判定できる。
【0096】
δ2 ≠a2 のとき、(δ1 ,a1 )及び(δ2 ,a2 )より、図18に示すように、(δ1 ,a1 )及び(δ2 ,a2 )を通る直線y=A1 x+B1 を求め、この直線y=A1 x+B1 と直線y=xとの交点M1 を求める。この交点M1 のx座標をδ3 (x=δ3 )とし、表皮深さδ3 となる周波数fQ3で測定して平均亀裂深さa3 を求める。そして、図16に示すように、再びδ3 とa3 とを比較する。このとき、δ3 =a3 なら、この平均亀裂深さa3 の値が信頼性の高い平均亀裂深さであると判定できる。
【0097】
(2)δ3 <a3 のとき、(δ2 ,a2 )及び(δ3 ,a3 )より、図18に示すように、(δ2 ,a2 )及び(δ3 ,a3 )を通る直線y=A2 x+B2 を求め、この直線y=A2 x+B2 と直線y=xとの交点M2 を求める。この交点M2 のx座標をδ4 (x=δ4 )とし、表皮深さδ4 となる周波数fQ4で測定して平均亀裂深さa4 を求める。そして、再びδ4 とa4 とを比較する。このとき、δ4 =a4 なら、この平均亀裂深さa4 の値が信頼性の高い平均亀裂深さであると判定できる。
【0098】
δ4 ≠a4 の場合は、(δ2 ,a2 )及び(δ4 ,a4 )より、(δ2 ,a2 )及び(δ4 ,a4 )を通る直線y=A3 x+B3 を求め、この直線y=A3 x+B3 と直線y=xとの交点M3 を求める。この交点M3 のx座標をδ5 (x=δ5 )とし、表皮深さδ5 となる周波数fQ5で測定して平均亀裂深さa5 を求める。そして、再びδ5 とa5 とを比較する。このとき、δ5 =a5 なら、この平均亀裂深さa5 の値が信頼性の高い平均亀裂深さであると判定できる。
【0099】
δ5 ≠a5 の場合は、それ以降上記操作を繰り返すことにより、最終的にδn ≒an となり、信頼性の高い平均亀裂深さan の値を求めることができる。
(Bパターン)
(3)上記Aパターンにおいて、δ3 とa3 とを比較した結果、δ3 >a3 のとき、(δ1 ,a1 )及び(δ3 ,a3 )より、図19に示すように、(δ1 ,a1 )及び(δ3 ,a3 )を通る直線y=A2 x+B2 を求め、この直線y=A2 x+B2 と直線y=xとの交点M2 を求める。この交点M2 のx座標をδ4 (x=δ4 )とし、表皮深さδ4 となる周波数fQ4で測定して平均亀裂深さa4 を求める。そして、再びδ4 とa4 とを比較する。このとき、δ4 =a4 なら、この平均亀裂深さa4 の値が信頼性の高い平均亀裂深さであると判定できる。
【0100】
δ4 ≠a4 の場合は、(δ1 ,a1 )及び(δ4 ,a4 )より、(δ1 ,a1 )及び(δ4 ,a4 )を通る直線y=A3 x+B3 を求め、この直線y=A3 x+B3 と直線y=xとの交点M3 を求める。この交点M3 のx座標をδ5 (x=δ5 )とし、表皮深さδ5 となる周波数fQ5で測定して平均亀裂深さa5 を求める。そして、再びδ5 とa5 とを比較する。このとき、δ5 =a5 なら、この平均亀裂深さa5 の値が信頼性の高い平均亀裂深さであると判定できる。
【0101】
δ5 ≠a5 の場合は、それ以降上記操作を繰り返すことにより、最終的にδn ≒an となり、信頼性の高い平均亀裂深さan の値を求めることができる。
(Cパターン)
(4)δ1 >a1 のとき、a1 =δ2 となる周波数fQ2で測定して平均亀裂深さa2 を求める。そして、δ2 とa2 とを比較し、δ2 =a2 なら、この平均亀裂深さa2 の値が信頼性の高い平均亀裂深さであると判定できる。
【0102】
δ2 ≠a2 のとき、(δ1 ,a1 )及び(δ2 ,a2 )より、図20に示すように、(δ1 ,a1 )及び(δ2 ,a2 )を通る直線y=A1 x+B1 を求め、この直線y=A1 x+B1 と直線y=xとの交点M1 を求める。この交点M1 のx座標をδ3 (x=δ3 )とし、表皮深さδ3 となる周波数fQ3で測定して平均亀裂深さa3 を求める。そして、図17に示すように、再びδ3 とa3 とを比較する。このとき、δ3 =a3 なら、この平均亀裂深さa3 の値が信頼性の高い平均亀裂深さであると判定できる。
【0103】
(5)δ3 <a3 のとき、(δ1 ,a1 )及び(δ3 ,a3 )より、図20に示すように、(δ1 ,a1 )及び(δ3 ,a3 )を通る直線y=A2 x+B2 を求め、この直線y=A2 x+B2 と直線y=xとの交点M2 を求める。この交点M2 のx座標をδ4 (x=δ4 )とし、表皮深さδ4 となる周波数fQ4で測定して平均亀裂深さa4 を求める。そして、再びδ4 とa4 とを比較する。このとき、δ4 =a4 なら、この平均亀裂深さa4 の値が信頼性の高い平均亀裂深さであると判定できる。
【0104】
δ4 ≠a4 の場合は、(δ1 ,a1 )及び(δ4 ,a4 )より、(δ1 ,a1 )及び(δ4 ,a4 )を通る直線y=A3 x+B3 を求め、この直線y=A3 x+B3 と直線y=xとの交点M3 を求める。この交点M3 のx座標をδ5 (x=δ5 )とし、表皮深さδ5 となる周波数fQ5で測定して平均亀裂深さa5 を求める。そして、再びδ5 とa5 とを比較する。このとき、δ5 =a5 なら、この平均亀裂深さa5 の値が信頼性の高い平均亀裂深さであると判定できる。
【0105】
δ5 ≠a5 の場合は、それ以降上記操作を繰り返すことにより、最終的にδn ≒an となり、信頼性の高い平均亀裂深さan の値を求めることができる。
(Dパターン)
(6)上記Cパターンにおいて、δ3 とa3 とを比較した結果、δ3 >a3 のとき、(δ2 ,a2 )及び(δ3 ,a3 )より、図21に示すように、(δ2 ,a2 )及び(δ3 ,a3 )を通る直線y=A2 x+B2 を求め、この直線y=A2 x+B2 と直線y=xとの交点M2 を求める。この交点M2 のx座標をδ4 (x=δ4 )とし、表皮深さδ4 となる周波数fQ4で測定して平均亀裂深さa4 を求める。そして、再びδ4 とa4 とを比較する。このとき、δ4 =a4 なら、この平均亀裂深さa4 の値が信頼性の高い平均亀裂深さであると判定できる。
【0106】
δ4 ≠a4 の場合は、(δ2 ,a2 )及び(δ4 ,a4 )より、(δ2 ,a2 )及び(δ4 ,a4 )を通る直線y=A3 x+B3 を求め、この直線y=A3 x+B3 と直線y=xとの交点M3 を求める。この交点M3 のx座標をδ5 (x=δ5 )とし、表皮深さδ5 となる周波数fQ5で測定して平均亀裂深さa5 を求める。そして、再びδ5 とa5 とを比較する。このとき、δ5 =a5 なら、この平均亀裂深さa5 の値が信頼性の高い平均亀裂深さであると判定できる。
【0107】
δ5 ≠a5 の場合は、それ以降上記操作を繰り返すことにより、最終的にδn ≒an となり、信頼性の高い平均亀裂深さan の値を求めることができる。
以下、上記方法を具体的に実施した例を示す。
(実施形態7)
本実施形態7は、請求項3記載の方法を適用して、鉄系焼結鍛造材7よりなる試料の未焼結部としての亀裂の平均亀裂深さaをより信頼性高く求めるものである。
【0108】
まず、上記したように亀裂の平均亀裂間隔b=80μmであり、平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ≧b/2、具体的には表皮深さδがb/2の4〜5倍以上となるように、ある測定周波数fQ1=0.3kHzを決定した(表皮深さδ1 =0.9mm)。
そして、上記参考形態2に準ずる方法により、上記鉄系焼結材7よりなる試料を用い、表面から約0.3mmの深さまで未焼結部が分布している位置で平均亀裂深さa1 を求めた。その結果、a1 =0.07mmであった。
【0109】
a1 の値と測定周波数fQ1に対応する表皮深さδ1 の値とを比較すると、δ1 >a1 である。このため、図15の(4)に進み、a1 =δ2 (=0.07mm)となる周波数fQ2(=56kHz)で測定して平均亀裂深さa2 を求めた。その結果、a2 =0.54mmであった。
a2 の値と測定周波数fQ2に対応する表皮深さδ2 の値とを比較すると、δ2 ≠a2 である。このため、(δ1 ,a1 )及び(δ2 ,a2 )、すなわち(0.9,0.07)及び(0.07,0.54)を通る直線y=A1 x+B1 を求めると、y=−0.57x+0.58となった。この直線と直線y=xとの交点M1 を求め、この交点M1 のx座標を求めた。その結果、x=0.37となり、これをδ3 とした。そして、表皮深さδ3 (=0.37)となる周波数fQ3(2kHz)で再び測定して平均亀裂深さa3 を求めた。その結果、a3 =0.24mmであった。
【0110】
a3 の値と測定周波数fQ3に対応する表皮深さδ3 の値とを比較すると、δ3 >a3 である。このため、図17の(6)に進み、(δ2 ,a2 )及び(δ3 ,a3 )、すなわち(0.07,0.54)及び(0.37,0.24)を通る直線y=A2 x+B2 を求めると、y=−x+0.61となった。この直線と直線y=xとの交点M2 を求め、この交点M2 のx座標を求めた。その結果、x=0.31となり、これをδ4 とした。そして、表皮深さδ4 (=0.31)となる周波数fQ4(2.9kHz)で再び測定して平均亀裂深さa4 を求めた。その結果、a4 =0.31mmであった。
【0111】
a4 の値と測定周波数fQ4に対応する表皮深さδ4 の値とを比較すると、δ4 =a4 であり、この平均亀裂深さa4 の値が信頼性の高い平均亀裂深さであると判定できた。
なお、上記実施形態7の方法により求めたそれぞれの値を表4に示す。また、上記実施形態7では、結果的に上記Dパターンで信頼性の高い平均亀裂深さを求めたことになる。
【0112】
【表4】
(実施形態8)
本実施形態8は、上記実施形態7と同様に、請求項3記載の方法を適用して、鉄系焼結鍛造材7よりなる試料の未焼結部としての亀裂の平均亀裂深さaをより信頼性高く求めるものである。
【0113】
まず、亀裂の平均亀裂間隔b=80μmであり、平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ≧b/2、具体的には表皮深さδがb/2の4〜5倍以上となるように、ある測定周波数fQ1=0.3kHzを決定した(表皮深さδ1 =0.9mm)。
そして、上記参考形態2に準ずる方法により、上記鉄系焼結材7よりなる試料を用い、表面から約0.5mmの深さまで未焼結部が分布している位置で平均亀裂深さa1 を求めた。その結果、a1 =0.3mmであった。
【0114】
a1 の値と測定周波数fQ1に対応する表皮深さδ1 の値とを比較すると、δ1 >a1 である。このため、図15の(4)に進み、a1 =δ2 (=0.3mm)となる周波数fQ2(=3kHz)で測定して平均亀裂深さa2 を求めた。その結果、a2 =0.74mmであった。
a2 の値と測定周波数fQ2に対応する表皮深さδ2 の値とを比較すると、δ2 ≠a2 である。このため、(δ1 ,a1 )及び(δ2 ,a2 )、すなわち(0.9,0.3)及び(0.3,0.74)を通る直線y=A1 x+B1 を求めると、y=−0.73x+0.96となった。この直線と直線y=xとの交点M1 を求め、この交点M1 のx座標を求めた。その結果、x=0.55となり、これをδ3 とした。そして、表皮深さδ3 (=0.55)となる周波数fQ3(0.92kHz)で再び測定して平均亀裂深さa3 を求めた。その結果、a3 =0.48mmであった。
【0115】
a3 の値と測定周波数fQ3に対応する表皮深さδ3 の値とを比較すると、δ3 >a3 である。このため、図17の(6)に進み、(δ2 ,a2 )及び(δ3 ,a3 )、すなわち(0.3,0.74)及び(0.55,0.48)を通る直線y=A2 x+B2 を求めると、y=−0.92x+1.02となった。この直線と直線y=xとの交点M2 を求め、この交点M2 のx座標を求めた。その結果、x=0.52となり、これをδ4 とした。そして、表皮深さδ4 (=0.52)となる周波数fQ4(1.0kHz)で再び測定して平均亀裂深さa4 を求めた。その結果、a4 =0.52mmであった。
【0116】
a4 の値と測定周波数fQ4に対応する表皮深さδ4 の値とを比較すると、δ4 =a4 であり、この平均亀裂深さa4 の値が信頼性の高い平均亀裂深さであると判定できた。
なお、上記実施形態8の方法により求めたそれぞれの値を表5に示す。また、上記実施形態8では、結果的に上記Dパターンで信頼性の高い平均亀裂深さを求めたことになる。
【0117】
【表5】
このように、本第2実施形態及び本第3実施形態に係る方法によれば、焼結鍛造材の疲労強度低下の主原因となっている未焼結部、すなわち亀裂の平均亀裂深さaや亀裂数nを非破壊的に定量することが可能となる。したがって、同材料を安定して高強度で使用するための量産時の品質チェックや、同材料に圧縮残留応力を付与してさらに高疲労強度で使用する際の品質管理に応用することができる。
【0118】
また、本発明に係る方法は、焼結鍛造材に限らず、従来単一の比較的大きなmmオーダーの亀裂しか非破壊的に定量できなかったために検査することができなかった全ての導電性の金属、合金について、応用することが可能である。例えば、焼結金属部品については、最終工程で、圧粉成形時などに発生する割れを磁気探傷検査法等により検査していたが、このような磁気探傷検査法では表面に複数分布する微小な亀裂を判別することができなかった。しかし、本発明に係る方法を焼結金属部品の最終工程の検査に適用すれば、微小亀裂が複数分布するような場合でも判別が可能となり、したがって本発明方法は焼結金属部品の品質管理にも好適に利用することができる。
【0119】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明に係る亀裂深さの非破壊検査法及び亀裂数の非破壊検査法によれば、交流電位差法を利用して、微細な亀裂が複数分布するような表面欠陥について、亀裂の平均亀裂深さや亀裂数を定量的に検査することができる。したがって、従来、SEM観察などの破壊検査法でしか検査できなかった表面欠陥について、非破壊的に平均亀裂深さ及び亀裂数を定量的に検査することが可能となり、疲労強度の推定の基礎データとすることができるとともに、量産金属部品の品質チックや品質管理に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の亀裂深さの非破壊検査法を模式的に説明する斜視図である。
【図2】平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ<b/2の場合に、交流電流が流れる様子を説明する断面図である。
【図3】平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ≧b/2の場合に、交流電流が流れる様子を説明する断面図である。
【図4】第1実施形態で用いた被測定物の拡大断面図である。
【図5】本実施形態の亀裂深さの非破壊検査法を模式的に説明する説明図である。
【図6】第2実施形態で用いた試料に係り、(a)はその平面図、(b)はその側面図である。
【図7】第2実施形態で用いた試料を静的に破断し、破面の金属組織を平面的に示すSEM写真(500倍)である。
【図8】第2実施形態で用いた試料を静的に破断し、破面の金属組織を断面的に示す光学顕微鏡写真(200倍)である。
【図9】第2実施形態で用いた試料について、静的破面のSEM観察写真により求めた未焼結部の面積率分布を示す図である。
【図10】第2実施形態で用いた電位差測定用に斜め研磨した試料に係り、(a)はその平面図、(b)はその側面図である。
【図11】第2実施形態の参考形態2に係る方法で検出した亀裂(未焼結部)の平均亀裂深さaと、静的破面のSEM観察より実測した未焼結部深さDとの関係を示す図である。
【図12】第2実施形態の参考形態3に係る方法で検出した亀裂(未焼結部)の平均亀裂深さaと、静的破面のSEM観察より実測した未焼結部深さDとの関係を示す図である。
【図13】図12の結果のうち、1kHz、3kHz、10kHzのそれぞれの測定周波数における表皮深さδと同等の未焼結部深さDを計測したデータのみを選択した結果を示す図である。
【図14】第2実施形態の実施形態6に係る方法を説明するフローチャートである。
【図15】第3実施形態に係る方法を説明するフローチャートである。
【図16】第3実施形態に係る方法を説明するフローチャートである。
【図17】第3実施形態に係る方法を説明するフローチャートである。
【図18】第3実施形態に係る方法を説明する図である。
【図19】第3実施形態に係る方法を説明する図である。
【図20】第3実施形態に係る方法を説明する図である。
【図21】第3実施形態に係る方法を説明する図である。
【符号の説明】
1は被測定物、2は亀裂、3は交流電源、4は電流入力端子、5、6は電位差測定探触子である。
Claims (10)
- 被測定物表面に複数存在する亀裂の平均亀裂深さを検出する方法であって、
上記複数の亀裂の平均亀裂間隔bを求め、該平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ<b/2となるように周波数fP を決定する工程と、
上記被測定物の表面に当接された電流入力端子に上記周波数fP の交流電流を供給し、上記電流入力端子間で上記被測定物の表面に所定の間隔Δで当接された電位差測定探触子により該電流供給時に発生する電位差VP を求める工程と、
上記電位差測定探触子間に亀裂がないと仮定したときに上記周波数fP の交流電流供給時に発生する電位差VPOを求める工程と、
上記電位差VP と上記電位差VPOとを比較し、下記式
VP /VPO =(Δ+2na)/Δ
より、亀裂数nと平均亀裂深さaとの積naを求める工程と、
上記電位差測定探触子間に存在する亀裂の亀裂数nを求め、該亀裂数n及び上記亀裂数nと平均亀裂深さaとの積naから平均亀裂深さaを求める工程とからなることを特徴とする亀裂深さの非破壊検査法。 - ある周波数fP で測定して求めた平均亀裂深さaの値と、その周波数fP に対応する表皮深さδの値とを比較し、aの値とδの値とが異なる場合は、周波数fP を増減しながら繰り返し測定して平均亀裂深さaを求め、aの値と測定時の周波数fP に対応する表皮深さδの値とが一致したときのaの値を信頼性の高い平均亀裂深さと判定することを特徴とする請求項1記載の亀裂深さの非破壊検査法。
- 被測定物表面に複数存在する亀裂の平均亀裂深さを検出する方法であって、
上記複数の亀裂の平均亀裂間隔bを求め、該平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ≧b/2となるように周波数fQ を決定する工程と、
上記被測定物の表面に当接された電流入力端子に上記周波数fQ の交流電流を供給し、上記電流入力端子間で上記被測定物の表面に所定の間隔Δで当接された電位差測定探触子により該電流供給時に発生する電位差VQ を求める工程と、
上記電位差測定探触子間に亀裂がないと仮定したときに上記周波数fQ の交流電流供給時に発生する電位差VQOを求める工程と、
上記電位差VQ と上記電位差VQOとを比較し、下記式
VQ /VQO=(Δ+2a)/Δ
より、平均亀裂深さaを求める工程とからなり、
ある周波数f Q で測定して求めた平均亀裂深さaの値と、その周波数f Q に対応する表皮深さδの値とを比較し、aの値とδの値とが異なる場合は、周波数f Q を増減しながら繰り返し測定して平均亀裂深さaを求め、aの値と測定時の周波数f Q に対応する表皮深さδの値とが一致したときのaの値を信頼性の高い平均亀裂深さと判定することを特徴とする亀裂深さの非破壊検査法。 - 被測定物表面に複数存在する亀裂の亀裂数を検出する方法であって、
上記複数の亀裂の平均亀裂間隔bを求め、該平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ<b/2となるように周波数fP を決定する工程と、
上記被測定物の表面に当接された電流入力端子に上記周波数fP の交流電流を供給し、上記電流入力端子間で上記被測定物の表面に所定の間隔Δで当接された電位差測定探触子により該電流供給時に発生する電位差VP を求める工程と、
上記電位差測定探触子間に亀裂がないと仮定したときに上記周波数fP の交流電流供給時に発生する電位差VPOを求める工程と、
上記電位差VP と上記電位差VPOとを比較し、下記式
VP /VPO=(Δ+2na)/Δ
より、亀裂数nと平均亀裂深さaとの積naを求める工程と、
上記平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ≧b/2となるように周波数fQ を決定する工程と、
上記被測定物の表面に当接された電流入力端子に上記周波数fQ の交流電流を供給し、上記電流入力端子間で上記被測定物の表面に所定の間隔Δで当接された電位差測定探触子により該電流供給時に発生する電位差VQ を求める工程と、
上記電位差測定探触子間に亀裂がないと仮定したときに上記周波数fQ の交流電流供給時に発生する電位差VQOを求める工程と、
上記電位差VQ と上記電位差VQOとを比較し、下記式
VQ /VQO=(Δ+2a)/Δ
より、平均亀裂深さaを求める工程と、
上記亀裂数nと平均亀裂深さaとの積na及び上記平均亀裂深さaから亀裂数nを求める工程とからなることを特徴とする亀裂数の非破壊検査法。 - 被測定物表面に複数存在する亀裂の平均亀裂深さを検出する方法であって、
上記複数の亀裂の平均亀裂間隔bを求め、該平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ<b/2となる範囲の異なる周波数fP1 ,fP2 ,…の交流電流を上記被測定物の表面に当接された電流入力端子にそれぞれ供給し、上記電流入力端子間で上記被測定物の表面に所定の間隔Δで当接された電位差測定探触子により、上記各電流供給時に発生する電位差VP1,VP2,…をそれぞれ求め、上記周波数fP1 ,fP2 ,…及び上記電位差VP1,VP2,…より、電位差VP の周波数依存性を調べて、VP とfP 1/2 の傾きKP を求める工程と、
上記電位差測定探触子間に亀裂がないと仮定したときに上記各周波数fP1 ,fP2 ,…の交流電流供給時に発生する電位差VPO1 ,VPO2 ,…をそれぞれ求め、上記周波数fP1 ,fP2 ,…及び上記電位差VPO1 ,VPO2 ,…より、電位差VPOの周波数依存性を調べて、VPOとfP 1/2 の傾きKPOを求める工程と、
上記VP とfP 1/2 の傾きKP と上記VPOとfP 1/2 の傾きKPOとを比較し、下記式
KP /KPO=(Δ+2na)/Δ
より、亀裂数nと平均亀裂深さaとの積naを求める工程と、
上記電位差測定探触子間に存在する亀裂の亀裂数nを求め、該亀裂数n及び上記亀裂数nと平均亀裂深さaとの積naから平均亀裂深さaを求める工程とからなることを特徴とする亀裂深さの非破壊検査法。 - 被測定物表面に複数存在する亀裂の平均亀裂深さを検出する方法であって、
上記複数の亀裂の平均亀裂間隔bを求め、該平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ≧b/2となる範囲の異なる周波数fQ1 ,fQ2 ,…の交流電流を上記被測定物の表面に当接された電流入力端子にそれぞれ供給し、上記電流入力端子間で上記被測定物の表面に所定の間隔Δで当接された電位差測定探触子により、上記各電流供給時に発生する電位差VQ1,VQ2,…をそれぞれ求め、上記周波数fQ1 ,fQ2 ,…及び上記電位差VQ1,VQ2,…より、電位差VQ の周波数依存性を調べて、VQ とfQ 1/2 の傾きKQ を求める工程と、
上記電位差測定探触子間に亀裂がないと仮定したときに上記各電流供給時に発生する電位差VQO1 ,VQO2 ,…をそれぞれ求め、上記周波数fQ1 ,fQ2 ,…及び上記電位差VQO1 ,VQO2 ,…より、電位差VQOの周波数依存性を調べて、VQOとfQ 1/2 の傾きKQOを求める工程と、
上記VQ とfQ 1/2 の傾きKQ と上記VQOとfQ 1/2 の傾きKQOとを比較し、下記式
KQ /KQO=(Δ+2a)/Δ
より、平均亀裂深さaを求める工程とからなることを特徴とする亀裂深さの非破壊検査法。 - 被測定物表面に複数存在する亀裂の亀裂数を検出する方法であって、
上記複数の亀裂の平均亀裂間隔bを求め、該平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ<b/2となる範囲の異なる周波数fP1 ,fP2 ,…の交流電流を上記被測定物の表面に当接された電流入力端子にそれぞれ供給し、上記電流入力端子間で上記被測定物の表面に所定の間隔Δで当接された電位差測定探触子により、上記各電流供給時に発生する電位差VP1,VP2,…をそれぞれ求め、上記周波数fP1 ,fP2 ,…及び上記電位差VP1,VP2,…より、電位差VP の周波数依存性を調べて、VP とfP 1/2 の傾きKP を求める工程と、
上記電位差測定探触子間に亀裂がないと仮定したときに上記各周波数fP1 ,fP2 ,…の交流電流供給時に発生する電位差VPO1 ,VPO2 ,…をそれぞれ求め、上記周波数fP1 ,fP2 ,…及び上記電位差VPO1 ,VPO2 ,…より、電位差VPOの周波数依存性を調べて、VPOとfP 1/2 の傾きKPOを求める工程と、
上記VP とfP 1/2 の傾きKP と上記VPOとfP 1/2 の傾きKPOとを比較し、下記式
KP /KPO=(Δ+2na)/Δ
より、亀裂数nと平均亀裂深さaとの積naを求める工程と、
上記平均亀裂間隔bと表皮深さδとの関係がδ≧b/2となる範囲の異なる周波数fQ1 ,fQ2 ,…の交流電流を上記被測定物の表面に当接された電流入力端子にそれぞれ供給し、上記電流入力端子間で上記被測定物の表面に所定の間隔Δで当接された電位差測定探触子により、上記各電流供給時に発生する電位差VQ1,VQ2,…をそれぞれ求め、上記周波数fQ1 ,fQ2 ,…及び上記電位差VQ1,VQ2,…より、電位差VQ の周波数依存性を調べて、VQ とfQ 1/2 の傾きKQ を求める工程と、
上記電位差測定探触子間に亀裂がないと仮定したときに上記各電流供給時に発生する電位差VQO1 ,VQO2 ,…をそれぞれ求め、上記周波数fQ1 ,fQ2 ,…及び上記電位差VQO1 ,VQO2 ,…より、電位差VQOの周波数依存性を調べて、VQOとfQ 1/2 の傾きKQOを求める工程と、
上記VQ とfQ 1/2 の傾きKQ と上記VQOとfQ 1/2 の傾きKQOとを比較し、下記式
KQ /KQO=(Δ+2a)/Δ
より、平均亀裂深さaを求める工程と、
上記亀裂数nと平均亀裂深さaとの積na及び上記平均亀裂深さaから亀裂数nを求める工程とからなることを特徴とする亀裂数の非破壊検査法。 - 前記被測定物は焼結体よりなり、該焼結体の原料粉末の平均粒子径から前記亀裂の亀裂間隔bを求め、かつ、該焼結体の原料粉末の平均粒子径と前記電位差測定探触子の間隔Δとから前記電位差測定探触子間に存在する亀裂の亀裂数nを求めることを特徴とする請求項1、2又は5記載の亀裂深さの非破壊検査法。
- 前記被測定物は焼結体よりなり、該焼結体の原料粉末の平均粒子径から前記亀裂の亀裂間隔bを求めることを特徴とする請求項3又は6記載の亀裂深さの非破壊検査法。
- 前記被測定物は焼結体よりなり、該焼結体の原料粉末の平均粒子径から前記亀裂の亀裂間隔bを求めることを特徴とする請求項4又は7記載の亀裂数の非破壊検査法。
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