JP3564922B2 - 発光表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電界放射型の電子放出素子を用いた発光装置および発光表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、平板型表示装置などの電子源として電界放射型の電子放出素子が採用されてきている。平板型表示装置では、面積の比較的大きい発光面に対して電子線を均一に照射することが要求されるから、この種の用途に用いる電子放出素子では、多数の電界放射型の陰極をアレイ状に配列した冷陰極アレイとして形成することが考えられている(Technical Digest of IVMC 91, Nagahama 1991, p.50 ,(社)日本電子工業振興協会,真空マイクロエレクトロニクス調査報告書I,1992年3月,p.37等参照)。
【0003】
電界放射型の電子放出素子の一例としては、図8に示すように、カソード基板1上に導電性のベース層2、絶縁体層3および電子引き出し層4(以下、ゲート層4という)を順次形成し、ゲート層4および絶縁体層3にベース層2まで達する穴を形成し、その穴にベース層2と電気的に接続されたエミッタ(陰極)5を配置してカソード板6を構成する。ここで、エミッタ4の先端部はゲート層4の穴の端部から約1μm以下の微小空隙を隔てた位置となるよう設定されている。また、上述したように、エミッタ5は一つのベース層2上に複数個が配置され、アレイ状をなしている。
【0004】
一方、上記カソードを平面型表示素子として使用するには、蛍光面基板7上にアノード層8と電子線励起蛍光面9(以下、蛍光面9という)を順次形成して発光面板10とし、この発光面板10を真空空間を介してカソード板6に対向させる。
【0005】
このように構成された平面型表示素子において、ベース層2に対して数10V〜数100V程度の正の電圧をゲート層4に印加すると、ベース層2と電気的に接続されたエミッタ5とゲート層4との間に、108 V/m以上の高電界がかかり、電界電子放出によってエミッタ5の先端から電子が放出される。ここで、ベース層2に対して正の電圧をアノード層8に印加すると、放出された電子の大部分はアノード層8側に加速され、蛍光面9に衝突して蛍光面9が発光するといったシステムで動作する。
【0006】
通常、ベース層2およびゲート層4にはクロムなどの金属膜を用いており、透光性を持たない。また、蛍光面基板7にガラスを、アノード層8として透明導電膜を使用し、蛍光面9で発生した光をアノード層8および蛍光面基板7を通して外部に取り出す構造となっている。
【0007】
そして、ベース層2とゲート層4をパターニングし、蛍光面9も対応するようパターニングすることで、発光にパターンを持たせ表示素子としての機能を持たしている。ベース層2とゲート層4を互いに直交するストライプにパターニングすることでマトリックスを形成し、対応する蛍光面9も同様にマトリックスパターンとすることで、任意の図形や文字を表示する機能を持たせた表示素子が代表的な形態である。
【0008】
このような平面型表示素子は、次のような特長を有している。
1.高効率であること
電子源として電界放射型の電子放出素子を使用しているため、電子放出のためのヒーター加熱などが不要であり、低消費電力であること。ひいては表示素子としても高効率が得られる。LED(数V,数10mA)と比較した場合、この発光素子では駆動電圧が数10V〜数100Vと高いが、必要電流が数10μA〜数mAと小さいため、消費電力としてはLEDと同程度かそれ以下とすることが可能である。
2.薄型であること
電子放出素子自体は数μmと非常に薄く、カソード板6の厚さはほとんどカソード基板1と同程度であること。また、電子放出素子を広い面積にアレイ状に配置することで、放出された電子を偏向することなく蛍光面9に照射できるので、カソード板6と発光面板10との距離を狭くすることができる。結果として、表示素子としての厚さは、カソード基板1と蛍光面基板7を合わせた厚さと同程度にまで薄くできる。
【0009】
3.温度依存性が小さいこと
電界放出により電子を供給しているために、電子源の電子放出能は周囲温度にあまり依存しない。−40℃ほどの低温でも安定した電子放出が可能である。LEDの場合は、80℃付近を越えると輝度が1/3程度にまで劣化し、使用に耐えなくなるが、この発光素子の場合は、高温においては電子源の動作は数100℃まで可能であり、むしろ基板ガラスや周辺部品の耐熱性、蛍光面9の温度消光によってその高温動作は上限が規定される。
【0010】
4.発熱が小さいこと
特長の第1項目で示したように、この発光素子は電界放出で電子を発生させているために、電子源からの熱の発生はほとんどない。蛍光面9に突入した電子によってわずかに発熱する程度である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の電界放射型電子放出素子を応用した発光表示素子では、ゲート層4とベース層2にクロムなどの金属膜を用い、アノード層8に透明導電膜などを用いることで、発光面板10側に光を取り出し表示を行なう構成、もしくはゲート層4とベース層2に透明導電膜など透光性を有する膜を用い、アノード層8に金属膜を用いることでカソード板6側に光を採りだし表示を行なう構成であり、発光を取り出して表示ができるのは、発光面板10側あるいはカソード板6側のいずれか一面のみであった。また、ゲート層4、ベース層2、アノード層8のいずれかの層が不透明であるため、発光素子、表示素子自体としても透明性、透光性が無いものであった。
【0012】
さらに、上述のように、従来の電界放射型電子放出素子を応用した発光表示素子では、発光が取り出せるのはどちらか一方のみであり、このため、かかる発光表示素子を、例えば天井から吊り下げて使用する表示装置に用いた場合、その両側から見るという使用方法を提供できないという問題があった。
【0013】
また、単にゲート層4、ベース層2、アノード層8を透明な導電性材料で構成し、両側から発光表示が見られる構造にしたとしても、発光面板10側とカソード板6側とではパターンが左右反転するため、左右対称な図形ならば表示可能であるが、左右非対称な文字などの表示には使うことができないという問題があった。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、発光面板側およびカソード板側のいずれの面からも発光を取り出して、両面で異なる文字や図形などの表示ができる発光表示装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明は、電界放射型電子放出素子を備えたカソード板と、電子線励起蛍光面を備えた発光面板とを真空空間を介して対向して配置し、電子線励起蛍光面と電子放出素子との間に電圧を印加することにより、電子放出素子から放出された電子で電子線励起蛍光面を発光させる発光表示装置であって、前記カソード板および前記発光面板に、部分的に透光性もしくは透明性を持たせると共に、前記発光面板の不透明部に対向する位置のカソード板を透明構造とし、前記発光面板の透明部に対向する位置のカソード板を不透明構造として、その透光性もしくは透明性を有する部分の配置に特徴を持たせることによって、カソード板および発光面板の両側から発光表示を視認できるようにし、かつ、前記カソード板透明部を介して得られる発光と、前記発光面板透明部を介して得られる発光とをそれぞれ別個に制御したことを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施形態を示す模式図である。本発明に係る発光装置は、前記従来例と同様に、電界放射型電子放出素子を備えたカソード板6と、電子線励起蛍光面を備えた発光面板10とを真空空間を介して対向して配置し、電子線励起蛍光面と電子放出素子との間に電圧を印加することにより、電子放出素子から放出された電子で電子線励起蛍光面を発光させる発光装置であり、以下に示すような特徴ある構成を有している。
【0017】
この実施形態では、発光面板10を構成する蛍光面基板7およびカソード板6を構成するカソード基板1に、それぞれガラスに代表される透明な材料を用いるとともに、絶縁体層3にシリカ、アルミナに代表される透明な材料を用い、ゲート層4には透明な導電性材料を用いる。蛍光面9としては、蛍光体紛体を塗布して不透明ながらも透光性膜とするか、蒸着法などによって透明性を有する均一蛍光性層を形成する。
【0018】
また、アノード層8は透明導電膜よりなるアノード透明部8aとアノード不透明部8bよりなり、アノード不透明部8に対向する位置のゲート層4およびベース層2は透明な構造(A部)とし、アノード透明部8aに対向する位置のゲート層4およびベース層2は不透明な構造(B部)とした。
【0019】
このように構成することにより、上記A部においては発光(つまりベース透明部2aを介して得られる発光A)はカソード板6側からのみ取り出され、上記B部においては発光(つまりアノード透明部8aを介して得られる発光B)は発光面板10側からのみ取り出される。
【0020】
従って、ゲート層4およびベース層2を所定のパターンにパターニングすると共に、ベース透明部2aを介して得られる発光Aと、アノード透明部8aを介して得られる発光Bとをそれぞれ別個に制御することによって、この発光表示装置の両側から表示を見ることができ、しかも、発光面板10側から見た場合と、カソード板6側から見た場合が異なる表示とすることができる。
【0021】
一例として、ゲート層4とベース層2をマトリックス状にパターニングし、図2に示すように、上記A部とB部とを市松模様に配置することによって、発光面板10側から見た文字と、カソード板6側から見た文字とを異なる表示とすることができる。単に両側に発光を取り出すのみの表示素子では、一方と他方から見たときの表示パターンは左右が反転してしまうため、左右対称な図形に対してしか用いることができない。しかしながら、この実施形態のように、交互に一方のみから発光を取り出す構造とすることによって、左右非対象な文字などの表示にも用いることができる。
【0022】
なお、本発明においては、アノード層8、ゲート層4、ベース層2自体を直接不透明としなくても、蛍光面基板7やカソード基板1など他の部位を不透明とすることにより上記と同様の効果を奏するようにしてもよい。
【0023】
また、上記A部とB部の蛍光面9(アノード透明部8aとアノード不透明部8bとに対応する蛍光面9)の発光色を変えることによって、発光面板10側からとカソード板6側から見える発光の色を異なるものにすることもできる。
【0024】
次に、図3〜図7を参照して本発明に係る実施の形態を更に詳細に説明する。図1に示す発光表示装置において、発光面板10の形成は、図3に示すように、ガラス製の発光面基板7の上にクロム金属を蒸着し(アノード不透明部8bとなる)、それを市松模様にパターニングした後、全面に透明導電膜を蒸着した(アノード透明部8aとなる)。さらにその上から蛍光体を塗布して蛍光面9を形成した。クロム層8bが残っている部分は、図3(a)に示すような断面構造となり、透光性を持たずむしろ反射性を持つ。クロム層を除去した部分は図3(b)に示すような断面構造となり、透光性を持つ。
【0025】
カソード板6は、ベース層パターン(図4(a)参照)に示すように、クロム金属層からなるベース層2をストライプ状で、かつ交互にメッシュ構造(ベースメッシュ部分2aとベースベタ部分2bとよりなる)であるパターンとする。メッシュ部分2aの線幅を空白部に対して十分に細く取ることによって、メッシュ部分2aが十分な透明性を有するようにした。その上に絶縁体層3及びエミッタ5を形成する。ゲート層4もまたクロム蒸着膜からなり、ゲート層パターン(図4(b)参照)に示すように、ベース層ストライプと直交する形でストライプ状とし、かつベース層のメッシュ構造と重なる形でメッシュ構造部分(ゲートメッシュ部分4aとゲートベタ部分4bとよりなる)を形成する。
【0026】
このように構成したカソード板6は、図5に示すメッシュ構造からなる透明部分と、図6に示すクロムベタ構造からなる不透明部分(反射部分)とが市松模様に分布した構造となっている。透明部分の平面構造と断面構造を図5に示し、反射部分の構造を図6に示す。また、ベース層ストライプとゲート層ストライプが互いに直交してマトリックスを形成しているので、任意のマトリックス部分から電子エミッションさせることが可能である。なお、図7(a)は発光面側のパターン(アノード透明部8aとアノード不透明部8bとよりなる)を示し、図7(b)はカソード面側のパターン(カソード透明部6aとカソード不透明部6bとよりなる)を示す。
【0027】
これらの発光面板10とカソード板6とを図1に示すように対向させて、その間の空間を真空状態として発光表示装置を構成した。このとき、発光面板10の反射部分の対面にはカソード板6の透明部分が配置され(A部)、発光面板10の透光性部分の対面にはカソード板6の反射部分が配置される(B部)ように対向させた。
【0028】
このように構成された発光表示装置において、アノード層8に加速電圧を印加した状態で、カソード板6でマトリックス駆動を行なうと、上記A部での発光はカソード板6側からのみドットパターンとして観察され、上記B部での発光は発光面板10側からのみドットパターンとして観察された。
【0029】
A部とB部の発光パターンは、互いに独立して変化させることが可能であり、発光面板10側とカソード板6側とで異なるパターンとすることができる。さらに、左右非対象な同じ図形を表示することで、発光面板10側とカソード板6側とで左右が反転しない図形の観察が可能である。
【0030】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、カソード板および発光面板に、部分的に透光性もしくは透明性を持たせると共に、その部分の配置に特徴を持たせているので、カソード板および発光面板の両側から発光表示を視認できる。また、発光面板の不透明部に対向する位置のカソード板を透明構造とし、発光面板の透明部に対向する位置のカソード板を不透明構造としたことにより、カソード板透明部を介して得られる発光は、カソード板側からのみ取り出され、発光面板透明部を介して得られる発光は、発光面板側からのみ取り出される。従って、カソード板側と発光面板側では異なる発光表示を視認できる。また、カソード板透明部を介して得られる発光と、発光面板透明部を介して得られる発光とをそれぞれ別個に制御したことにより、発光表示装置の両側から表示を見ることができ、しかも、発光面板側から見た場合と、カソード板側から見た場合が異なる表示とすることができる。
【0033】
請求項2の発明によれば、発光面板側から見た文字または図形と、カソード板側から見た文字または図形とを異なる表示とすることができる。
【0034】
請求項3の発明によれば、発光面板の透明部と不透明部に対応する蛍光面の発光色を異なる発光色としたことにより、発光面板側からとカソード板側から見える発光表示の色を異なるものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る発光表示装置の一実施形態を示す模式図である。
【図2】上記発光表示装置の発光パターンを示すもので、(a)は発光面板側、(b)はカソード板側である。
【図3】上記発光表示装置に係る発光面板の断面図で、(a)は不透明部分、(b)は透明部分を示す。
【図4】(a)は上記発光表示装置に係るベース層のパターンを示し、(b)はゲート層のパターンを示す。
【図5】上記発光表示装置に係るカソード板のカソード・メッシュ構造を示すもので、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図6】上記発光表示装置に係るカソード板のカソード・不透明部構造を示すもので、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図7】上記発光表示装置の発光パターンを示すもので、(a)は発光面側パターン、(b)はカソード面側パターンである。
【図8】従来例を示す模式図である。
【符号の説明】
1 カソード基板
2 ベース層
3 絶縁体層
4 ゲート層(電子引き出し層)
5 エミッタ
6 カソード板
7 蛍光面基板
8 アノード層
9 電子線励起蛍光面(蛍光面)
10 発光面板
Claims (4)
- 電界放射型電子放出素子を備えたカソード板と、電子線励起蛍光面を備えた発光面板とを真空空間を介して対向して配置し、電子線励起蛍光面と電子放出素子との間に電圧を印加することにより、電子放出素子から放出された電子で電子線励起蛍光面を発光させる発光表示装置であって、前記カソード板および前記発光面板に、部分的に透光性もしくは透明性を持たせると共に、前記発光面板の不透明部に対向する位置のカソード板を透明構造とし、前記発光面板の透明部に対向する位置のカソード板を不透明構造として、その透光性もしくは透明性を有する部分の配置に特徴を持たせることによって、カソード板および発光面板の両側から発光表示を視認できるようにし、かつ、前記カソード板透明部を介して得られる発光と、前記発光面板透明部を介して得られる発光とをそれぞれ別個に制御したことを特徴とする発光表示装置。
- 前記カソード板を構成するゲート層(電子引き出し層)とベース層をマトリックス状にパターニングすると共に、前記前記カソード透明部と前記発光面板透明部とを市松模様に配置することによって、発光面板側から見た文字または図形と、カソード板側から見た文字または図形とを異なる表示としたことを特徴とする請求項1記載の発光表示装置。
- 前記発光面板の透明部と不透明部に対応する蛍光面の発光色を異なる発光色としたことを特徴とする請求項1から請求項2のいずれかに記載の発光表示装置。
- 前記発光面板の透明部と不透明部をアノード層に形成すると共に、前記カソード板の透明部と不透明部をゲート層とベース層に形成したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の発光表示装置。
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JPH10255698A JPH10255698A (ja) | 1998-09-25 |
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-
1997
- 1997-03-13 JP JP05948597A patent/JP3564922B2/ja not_active Expired - Fee Related
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