JP3564201B2 - 自律走行作業車の自己位置検出装置 - Google Patents

自律走行作業車の自己位置検出装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の作業領域周辺に設置された複数の標識を認識して自己位置を検出し、草刈、芝刈作業等における作業走行を行なう自律走行作業車の自己位置検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、無人で自律走行する自律走行車に対しては、自律走行のための自己位置検出として、電線を地下に埋設し、この電線が発する磁界を磁気センサで検出する技術が提案されているが、ゴルフ場、河川敷堤防、公園等の各種フィールドで草刈、芝刈等の作業を無人で行なう自律走行作業車等のように、自律走行領域が広大な場合、領域の地下全てに電線を埋設することは困難であり、設置費用も大きなものとなる。
【0003】
このため、複数の標識を自律走行させる領域の周辺に設置し、この標識を認識して自車輌位置を検出する技術が開発されており、例えば、特開平3−135606号公報には、電磁波の一例として光を用い、特定区域内に立設した複数の再帰性反射ポール(光反射標識)に投光し、反射光を光センサで受光して隣合う反射ポールを臨む角度を検出し、検出した角度と標識の既知の座標とから三点挟角法(三角測量法)により自己位置を検出する技術が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述の先行技術においては、光反射標識で反射された光を光センサで受光することにより光反射標識を検出し、三角測量により自己位置を検出するため、三角測量のために少なくとも3個の光反射標識が必要となり、また、移動方向が前後あるいは左右斜め方向と多様に渡る自律走行作業においては、車輌と光反射標識との位置関係によっては標識間の角度誤差が大きくなり、計測精度が悪化する虞がある。
【0005】
さらに、自律走行作業車においては、作業領域周辺に存在する障害物を考慮する必要があるが、従来、この周辺障害物と光反射標識とを同時に検出することは困難であり、光反射標識を検出するための装置に加え、障害物を検出するための装置を備えなければならず、コスト上昇の要因となっている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、作業領域周辺に設置する反射標識の数を最小限に抑えつつ正確に自己位置を検出できるばかりでなく、反射標識と障害物とを同時に検出することのできる自律走行作業車の自己位置検出装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、作業領域周辺に設置した複数の反射標識を電磁波走査によって検出し、自己位置を測定する自律走行作業車の自己位置検出装置において、図1の基本構成図に示すように、走査手段を作動させて電磁波を外部に投射してから外部の物体で反射された電磁波を検知するまでの時間に基づく距離情報を得ると共に、検知した電磁波の反射強度を計測する距離/電磁波反射強度計測手段と、上記距離情報および電磁波反射強度に基づいて投射した電磁波を反射した物体が上記反射標識あるいは周辺障害物かを識別する識別手段と、上記反射標識を識別したときには、上記反射標識に対する距離情報と電磁波走査位置とから自車輌に対する方角及び距離を算出し、少なくとも2個の上記反射標識に係わる方角及び距離の情報と予め記憶してある上記反射標識の位置情報とに基づいて自車輌位置を算出する自車輌位置算出手段と、上記周辺障害物を識別したときには、この周辺障害物に対する距離情報と電磁波走査位置とから自車輌に対する周辺障害物の方角及び距離を算出する周辺障害物情報算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明では、上記識別手段は、投射した電磁波を反射した物体が上記反射標識あるいは周辺障害物であると識別する際、上記距離情報と上記電磁波反射強度とから物体の反射率を算出し、この反射率を識別の指標として用いることを特徴とする。
【0009】
すなわち、請求項1記載の発明では、電磁波を外部に投射してから外部の物体で反射された電磁波を検知するまでの時間に基づく距離情報と、検知した電磁波の反射強度とに基づいて、投射した電磁波を反射した物体が反射標識あるいは周辺障害物かを識別する。そして、識別した物体が反射標識であるときには、反射標識に対する距離情報と電磁波走査位置とから自車輌に対する方角及び距離を算出し、少なくとも2個の上記反射標識に係わる方角及び距離の情報と予め記憶してある上記反射標識の位置情報とに基づいて自車輌位置を算出する。また、識別した物体が周辺障害物であるときには、この周辺障害物に対する距離情報と電磁波走査位置とから自車輌に対する周辺障害物の方角及び距離を算出する。
【0010】
この場合、請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明において、電磁波を外部に投射してから外部の物体で反射された電磁波を検知するまでの時間に基づく距離情報と、検知した電磁波の反射強度とから物体の反射率を算出し、この反射率を指標として投射した電磁波を反射した物体が反射標識であるか周辺障害物であるかを識別する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図2〜図7は本発明による第1の実施の形態に係わり、図2は自己位置検出ルーチンのフローチャート、図3は主制御ルーチンのフローチャート、図4は芝刈作業車及び光反射標識を示す説明図、図5は制御系のブロック図、図6は距離及び光反射強度計測の説明図、図7は作業領域における自己位置検出の説明図である。
【0012】
図4において、符号1は無人で自律走行が可能な自律走行作業車を示し、本実施の形態においてはゴルフ場等の草・芝刈り作業を行う芝刈作業車であり、電磁波の一例として光を用い、光走査により自己位置を検出する。この芝刈作業車1は、エンジン駆動で走行し、前後輪の操舵角を独立して制御可能となっており、車輌本体下部に、草・芝刈作業を行うためのモーア等の刈刃機構部2を備えるとともに、走行履歴に基づいて現在位置を測定するための推測航法用センサや、草・芝刈作業領域の刈跡境界に沿った倣い走行を行うための倣い走行用センサを備えている。
【0013】
上記推測航法用センサとしては、地磁気センサ3及び車輪エンコーダ4が採用され、また、上記倣い走行用センサとしては、芝刈作業における既刈部と未刈部との刈跡境界を検出する刈跡境界検出センサ5が採用されている。尚、刈跡境界検出センサ5は、例えば、草・芝丈に応じて上下するそり状の板と、このそり状の板を支持する部材の回動角を検出するロータリエンコーダ等を組合わせて構成される。
【0014】
さらに、上記芝刈作業車1には、草・芝刈作業領域の周辺に立設された複数の光反射標識20を認識して自己位置を検出するため、走査手段としてレーザレーダの走査部6が車体前部に設置されており、走行の障害となる周辺障害物が存在する場合には、この周辺障害物も上記光反射標識20と同時に認識可能なようになっている。上記光反射標識20は、光が常に入射方向に反射される性質を持った再帰性反射標識であり、例えば、コーナキューブ型光反射シート等の再帰性反射板を所定の長さに渡って貼りつけて構成される。
【0015】
上記レーザレーダ走査部6には、図5に示すように、一定周期のパルスレーザ光を出射する投光器7、この投光器7から出射されたレーザ光をビーム状に収束させる収束レンズ8、この収束レンズ8からの光を透過する一方、外部からの入射光を反射する半透過ミラー(ハーフミラー)9、外部に投光する光を走査するための走査ミラー10、この走査ミラー10を回転させる高速の走査モータ11、ハーフミラー9で反射された外部からの入射光を収束させる収束レンズ12、この収束レンズ12からの光を受光する受光器13等が備えられ、走査モータ11には、車体に対する走査ミラー10の角度を検出するための回転角センサ14が取り付けられている。
【0016】
以上の各センサ3,4,5,14、投光器7、走査モータ11、受光器13は、制御装置30に接続され、この制御装置30により、芝刈作業車1の自己位置が検出され、自律走行が制御される。
【0017】
上記制御装置30は、複数のマイクロコンピュータ等から構成され、上記投光器7及び上記走査モータ11を作動させるとともに上記受光器13からの信号が入力される距離/光反射強度計測部31、上記回転角センサ14からの信号及び上記距離/光反射強度計測部31からの情報が入力される物体認識/位置検出部32、上記地磁気センサ3及び車輪エンコーダ4からの信号が入力される推測航法位置検出部33、上記刈跡境界検出センサ5からの信号が入力される刈跡境界検出部34等が備えられ、さらに、各検出部32,33,34からの信号に基づいて走行制御を行なうための走行制御部35、作業領域の地形データや光反射標識の位置データ等の固定データを記憶するメモリ、上記物体認識/位置検出部32にて検出した物体の位置情報を書き込むメモリ、その他、処理途中のワークデータを記憶するメモリ等からなる作業データ蓄積部36、上記走行制御部35からの指示によって車輌制御を行う車輌制御部37、この車輌制御部37からの出力に基づいて芝刈作業車1の各機構部を駆動するための駆動制御部38、操舵制御部39、刈刃制御部40が備えられている。
【0018】
距離/電磁波反射強度計測手段として上記距離/光反射強度計測部31では、レーザレーダ走査部6の投光器7を作動させるともに走査モータ11を高速で作動させて光走査を行い、光反射標識20や周辺障害物までの距離を計測するとともに光反射強度を計測する。
【0019】
すなわち、図6に示すように、例えば投光器7をレーザダイオードから構成するとともに受光器13をフォトダイオードから構成し、投光器7より一定時間間隔でパルス光を出射させ、外部の光反射標識20あるいは周辺障害物で反射されるパルス光を、受光器13で受光する。そして、投光器7及び受光器13の各電流Iに基づいて投光から受光までの時間tdを測定することにより、自車輌と光反射標識20あるいは周辺障害物との距離を算出し(例えば、距離は時間tdに所定の定数を乗算して得られる)、また、受光したパルス光の強度を計測して物体の反射強度を得る。
【0020】
上記物体認識/位置検出部32は、図1に示すように、上記距離/光反射強度計測部31からの距離情報及び光反射強度に基づいて投光した光を反射した物体が光反射標識20あるいは周辺障害物かを識別する識別手段32a、上記光反射標識20を識別したときには、該光反射標識20に対する距離情報と光走査位置とから自車輌に対する方角及び距離を算出し、少なくとも2個の上記光反射標識20に係わる方角及び距離の情報と予め記憶してある上記光反射標識20の位置情報とに基づいて自車輌位置を算出する自車輌位置算出手段32b、及び、上記周辺障害物を識別したときには、この周辺障害物に対する距離情報と光走査位置とから自車輌に対する周辺障害物の方角及び距離を算出する周辺障害物情報算出手段32cとしての機能を有し、上記距離/光反射強度計測部31からの距離情報及び光反射強度情報を、上記回転角センサ14からの信号に基づく走査位置毎に上記作業データ蓄積部36に記憶させ、記憶したデータから物体の位置情報を抽出して光反射標識20や図示しない周辺障害物等を認識し、自車輌位置を算出する。
【0021】
上記推測航法位置検出部33では、車輪エンコーダ4によって検出される車速を積分して走行距離を求め、この走行距離を上記地磁気センサ3により検出した走行方向の変化に対応させて累積することにより、基準地点からの走行履歴を算出して自車輌位置を測定する。
【0022】
一方、上記刈跡境界検出部34は、上記刈跡境界検出センサ5からの草・芝丈に応じた信号を処理して草・芝の境界位置を検出する。上記刈跡境界検出センサ5が、前述したように、草・芝丈に応じて上下するそり状の板と、このそり状の板を支持する部材の回動角を検出するロータリエンコーダ等から構成される場合、草・芝丈に応じたそり状の板の上下の変位が回動角に変換されてロータリエンコーダからの検出信号が入力されると、上記刈跡境界検出部34では、この検出信号から草・芝刈作業済みの領域と未作業領域とを識別して刈跡境界を検出し、その位置データを上記走行制御部35に出力する。
【0023】
上記走行制御部35では、上記物体認識/位置検出部32、上記推測航法位置検出部33、上記刈跡境界検出部34からの情報に基づいて、作業データ蓄積部36のマップ(作業内容及び草・芝刈り作業を行う作業領域の地形データ等の走行用地図)を参照して自己の現在位置と目標位置との誤差量を算出し、この誤差量分を補正すべく走行経路指示や車輌制御指示を決定し、上記車輌制御部37に出力する。
【0024】
上記車輌制御部37では、上記走行制御部35からの指示を具体的な制御指示量に変換し、この制御指示量を上記駆動制御部38、操舵制御部39、刈刃制御部40に出力する。これにより、上記駆動制御部38で油圧モータ15を駆動して芝刈作業車1の各機構部を駆動するための油圧を発生させ、上記操舵制御部39で、それぞれ、前輪操舵用油圧制御弁16、後輪操舵用油圧制御弁17を介して、図示しない前輪操舵機構、後輪操舵機構をそれぞれサーボ制御し、また、上記刈刃制御部40で、刈刃制御用油圧制御弁18を介して刈刃機構部2をサーボ制御する。
【0025】
尚、上記刈跡境界検出センサを用いた刈跡境界検出、前輪操舵機構及び後輪操舵機構に対するサーボ制御等については、本出願人による特開平7−147804号公報に詳述されている。
【0026】
以下、図7に示すような作業領域50に対し、無人で草・芝刈作業を行なう場合について説明する。この場合、芝刈作業車1は、作業開始に当たって、予め任意の準備位置から草・芝刈作業の開始点51に有人運転により移動させられているものとし、作業領域50における草・芝刈作業が図2及び図3のフローチャートに示すプログラムに従って自律的に行われる。そして、作業終了後、作業終了点53から待機位置に再び有人運転により移動させられる。
【0027】
尚、上記作業領域50周辺には、2つの光反射標識PA,PBが同じ側に設置されており、これらの光反射標識PA,PBは、前述した光反射標識20と同様のもので、以下、単に標識PA,PBと称する。
【0028】
まず、図3に示す主制御ルーチンでは、ステップS101で、後述する図2の自己位置検出ルーチンを実行し、標識PA,PBを認識して自己位置を計測し、草・芝刈作業の開始点51に芝刈作業車1が到達していることを確認すると、ステップS102で、刈刃制御用油圧制御弁18を開弁して刈刃機構部2に油圧を供給し、刈刃を作動させて草・芝刈り作業を開始する。
【0029】
次に、ステップS103へ進み、芝刈作業が1回目であるか否かを調べ、作業一回目の第1の行程(第1列)であればステップS104に進み、また2回目以後の第2列以後であればステップS109へ分岐する。
【0030】
ここで作業一回目であり、ステップS103からステップS104へ進むと、再び自己位置検出ルーチンを実行して標識認識により自車輌の位置を計測し、推測航法による自車輌の位置及び進行方向を設定した後、続くステップS105で作業データ蓄積部36を参照し、作業領域における1回目(第1列)の終端点位置を目標位置として現在位置との誤差量を求める。
【0031】
次にステップS106へ進むと、上記ステップS105にて求められた誤差量に応じて前後輪の各目標操舵量を決定し、続くステップS107で、前輪操舵用油圧制御弁16、後輪操舵用油圧制御弁17を介して前輪操舵機構、後輪操舵機構をそれぞれ駆動し、目標舵角を得るよう制御する。尚、上記ステップS104における自己位置検出ルーチンで周辺障害物が検出された場合には、この障害物を回避するための舵角制御を行う。
【0032】
その後、ステップS108で、芝刈作業車1が1回目(第1列)の終端点位置に達したか否かを調べ、終端点位置に達していないときには前述のステップS104へ戻って草・芝刈作業を続行し、終端点に達したとき、ステップS116へ進んで、全作業を終了したか否かを調べる。この場合、作業1回目であるため、前述のステップS103へ戻って、再び作業業1回目か否かを調べ、作業2回目以降になると、ステップS109へ分岐して刈跡境界に沿った作業経路52の倣い走行を行なう。
【0033】
すなわち、ステップS109で刈刃の幅分だけ車体を横シフトさせて次作業位置へ移動すると、ステップS110で刈跡境界検出センサ5によって前回作業による刈跡境界を検出し、ステップS111で、この刈跡境界と車輌位置とを比較して設定された芝刈りオーバラップ量を実現するための誤差量を求める。
【0034】
続くステップS112では、上記ステップS111で求めた誤差量に応じて前後輪の各目標操舵量を決定し、ステップS113において、前輪操舵用油圧制御弁16、後輪操舵用油圧制御弁17を介して前輪操舵機構、後輪操舵機構をそれぞれ駆動し、目標舵角を得るよう制御する。
【0035】
その後、ステップS114で、後述する自己位置検出ルーチンを実行して標識認識により自車輌の位置を計測し、推測航法による自車輌の位置及び進行方向を設定し、ステップS115で、芝刈作業車1が2回目以後(第2列以後)の終端点位置に達したか否かを調べ、終端点位置に達していないときには、前述のステップS110へ戻って刈跡境界に沿った倣い走行を続け、2回目以後(第2列以後)の終端点位置に達すると、ステップS115からステップS116へ進み、作業領域50の草・芝刈作業が終了したか否かを判断する。
【0036】
そして、作業領域50の草・芝刈作業が終了していなければステップS116からステップS103に戻って作業を継続し、作業領域50の草・芝刈作業が終了したとき、この主制御ルーチンによる草・芝刈作業を終了して車輌を停止させる。
【0037】
次に、図2の標識認識による自己位置検出ルーチンについて説明する。
【0038】
この自己位置検出ルーチンでは、まず、ステップS201で、レーザレーダ走査部6の投光器7から一定周期のパルス光を出射するとともに、走査モータ11を作動させ、この走査モータ11に取り付けられている回転角センサ14からの角度信号を入力し、ステップS202で、この角度信号から平面上の走査点座標(H)を算出する。
【0039】
次いで、ステップS203へ進み、外部の物体で反射されたパルス光を受光器13で受光して得られる距離情報と光反射強度とを入力すると、ステップS204で、計測された距離情報と光反射強度とから物体の反射率を、標識PA,PBと障害物とを識別する際の指標として算出し、ステップS205で、走査点座標(H)に対応するメモリに、距離情報、光反射強度、及び、反射率の情報を書込む。
【0040】
その後、ステップS206へ進み、回転角センサ14からの角度信号が1周して走査モータ11による1回転の走査(1面の走査)が完了した否かを調べ、1回転の走査が完了していないときには、上記ステップS201へ戻って走査を続け、1回転の走査が完了すると、ステップS207へ進む。
【0041】
ステップS207では、メモリに記憶されたデータから反射率が設定値以上の点を抽出し、ステップS208で、走査点座標上の小領域毎に、反射率が設定値以上の抽出点数を度数とするヒストグラム処理を行い、度数が設定値以上の小領域を抽出して2箇所の標識PA,PBを識別・認識する。そして、ステップS209へ進んで、各標識PA,PBに対応する各小領域の中心を求めて自車輌に対する方角とし、また、各小領域の平均距離を算出し、各標識PA,PBと自車輌との距離を算出する。
【0042】
すなわち、走査点座標上で反射率の高い点が設定個数以上かたまっている場合、それを標識PA,PBによる情報と判断し、それらの点の中心を求めて自車輌に対する標識の方角とし、また、かたまった点に書かれた距離情報の平均値を求め、自車輌と標識との距離とするのである。
【0043】
次に、ステップS210へ進み、メモリに予め記憶してある各標識PA,PBの位置と、上記ステップS209で算出した方角及び距離とから現在の自車輌位置(X,Y)を算出する。この場合、2個の標識PA,PBからの距離で決定される地点は、図6に示すように、平面上では2箇所存在するが、標識PA,PBは作業領域50の一方の側に片寄るように配置されていることから、2個の標識PA,PBに対応する走査線上の2個の中心点の概略の角度関係から作業領域内では常に1箇所の点として求めることができる。
【0044】
そして、自車輌の位置(X,Y)を算出した後、ステップS211へ進み、距離情報、光反射強度、及び、反射率の情報を走査点座標(H)に対応して書込んだメモリ中から、反射率が設定値以下、且つ、距離が設定値以下の点を抽出し、ステップS212で、距離情報と走査点座標とで形成される小領域毎に、抽出点のヒストグラム処理を行う。そして、度数が設定値以上の小領域を抽出して周辺障害物と判断し、自車輌に対する方角及び距離を算出してメモリに書込み、ルーチンを抜ける。
【0045】
これにより、リアルタイムで自車輌の位置と方角を検出することができ、且つ、各光反射標識間の角度誤差に影響されずに精度良く自己位置を計測することができる。この場合、最低2個の光反射標識を用いれば良く、しかも、光反射標識と障害物とを同時に検出することができるため、トータルコストを低減することができる。
【0046】
図8〜図10は本発明の第2の実施の形態に係わり、図8は制御系のブロック図、図9は自己位置検出ルーチンのフローチャート、図10は上下角度及び水平角度に対する光走査軌跡を示す説明図である。
【0047】
本実施の形態は、前述の第1の実施の形態に対し、レーザレーダの走査機能を若干変更したものであり、走査ミラー10の1軸回転による第1の実施の形態の平面走査を、走査ミラー10の2軸回転による立体走査として走査領域を拡大するものである。
【0048】
このため、図8に示すように、本実施の形態のレーザレーダ走査部6Aにおいては、投光器7、受光器13、収束レンズ8,12、ハーフミラー9、走査ミラー10は前述の第1の実施の形態と同様であるが、走査ミラー10を回転させる第1の走査モータ11aがサブフレーム19aに取り付けられ、このサブフレーム19aが信号の継手であるスリップリング19bを介して第2の走査モータ11bに連結されている。
【0049】
上記第1の走査モータ11aには、サブフレーム19aに対する走査ミラー10の回転角度を検出する第1の回転角センサ14aが取り付けられ、上記第2の走査モータ11bには、車輌に対する光走査面角度を検出する第2の回転角センサ14bが取り付けられている。
【0050】
また、上記レーザレーダ走査部6Aの機能に対応して、本実施の形態の制御装置30Aには、前述の第1の実施の形態の距離/光反射強度計測部31、物体認識/位置検出部32を若干変更した距離/光反射強度計測部31A、物体認識/位置検出部32Aが備えられ、距離/光反射強度計測部31Aによって投光器7及び第1、第2の走査モータ11a,11bが作動させられるとともに受光器13からの信号が処理され、また、物体認識/位置検出部32Aにより、回転角センサ14a,14bからの信号及び距離/光反射強度計測部31Aからの情報が処理されるようになっている。他の機能は、第1の実施の形態と同様である。
【0051】
そして、第2の走査モータ14bを低速で回転させて光走査の上下角を変化させながら、第1の走査モータ14aを高速で回転させて光走査の水平角を変化させることにより、例えば、図10に示すように、上下角+30〜−30deg、水平角0〜360degの範囲の走査が可能となっている。
【0052】
本実施の形態では、前述の第1の実施の形態の主制御ルーチン(図3参照)に対し、図9の自己位置検出ルーチンが実行されて光反射標識あるいは障害物が認識される。
【0053】
図9の自己位置検出ルーチンでは、ステップS301で、レーザレーダ走査部6Aの投光器7から一定周期のパルス光を出射するとともに、第1、第2の走査モータ11a,11bを作動させ、各走査モータ11a,11bに取り付けられている第1、第2の回転角センサ14a,14bからの角度信号θA,θBを入力し、ステップS302で、これらの角度信号θA,θBから、水平方向の座標Hと上下方向の座標Vとからなる走査点座標(H,V)を算出する。
【0054】
次いで、ステップS303へ進み、外部の物体で反射されたパルス光を受光器13で受光して得られる距離情報と光反射強度とを入力し、ステップS304で、計測された距離情報と光反射強度とから物体の反射率を算出すると、ステップS305で、走査点座標(H,V)に対応するメモリに、距離情報、光反射強度、及び、反射率の情報を書込む。
【0055】
その後、ステップS306へ進み、第2の回転角センサ14bからの角度信号θBが1周して第2の走査モータ11bによる1回転の走査(1面の走査)が完了した否かを調べ、1回転の走査が完了していないときには、上記ステップS301へ戻って走査を続け、1回転の走査が完了すると、ステップS307へ進む。
【0056】
そして、前述の第1の実施の形態におけるステップS207〜S212と同様のステップS307〜S312で、メモリに記憶されたデータから反射率が設定値以上の点を抽出してヒストグラム処理を行って標識PA,PBを認識し、現在の自車輌位置(X,Y)を算出した後、上記メモリ中から、反射率が設定値以下、且つ、距離が設定値以下の点を抽出してヒストグラム処理を行い、障害物を判断する。
【0057】
本実施の形態は、前述の第1の実施の形態と同様の効果を有するばかりでなく、水平全周囲方向及び上下方向を光走査するため、地面の凹凸等により車輌が傾いた場合であっても、光反射標識を見失うことなく自己位置を正確に計測することができるという利点を有する。
【0058】
尚、各実施の形態では、自車輌位置および周辺障害物情報を得るため、電磁波の一例として光を用いた場合について説明したが、電磁波として電波を用いても良いことは勿論である。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、電磁波を外部に投射してから外部の物体で反射された電磁波を検知するまでの時間に基づく距離情報と、検知した電磁波の反射強度とに基づいて、投射した電磁波を反射した物体が反射標識あるいは周辺障害物であると識別し、識別した物体が反射標識であるときには、反射標識に対する距離情報と電磁波走査位置とから自車輌に対する方角及び距離を算出し、少なくとも2個の上記反射標識に係わる方角及び距離の情報と予め記憶してある上記反射標識の位置情報とに基づいて自車輌位置を算出する一方、識別した物体が周辺障害物であるときには、この周辺障害物に対する距離情報と電磁波走査位置とから自車輌に対する周辺障害物の方角及び距離を算出するため、作業領域周辺に設置する反射標識の数を最小限に抑えつつ正確に自己位置を検出できるとともに、反射標識と障害物とを同時に検出することができ、障害物を検出するための別の装置を備える必要がなく、トータルコストを低減することができる。
【0060】
また、投射した電磁波を反射した物体が反射標識であるか周辺障害物であるかを識別する際、電磁波を外部に投射してから外部の物体で反射された電磁波を検知するまでの時間に基づく距離情報と、検知した電磁波の反射強度とから物体の反射率を算出し、この反射率を指標として用いるため、反射標識の誤認識を防止して正確に自己位置を検出することができる等優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本構成図
【図2】本発明の第1の実施の形態に係わり、自己位置検出ルーチンのフローチャート
【図3】同上、主制御ルーチンのフローチャート
【図4】同上、芝刈作業車及び光反射標識を示す説明図
【図5】同上、制御系のブロック図
【図6】同上、距離及び光反射強度計測の説明図
【図7】同上、作業領域における自己位置検出の説明図
【図8】本発明の第2の実施の形態に係わり、制御系のブロック図
【図9】同上、自己位置検出ルーチンのフローチャート
【図10】同上、上下角度及び水平角度に対する光走査軌跡を示す説明図
【符号の説明】
1 … 芝刈作業車(自律走行作業車)
6,6A … レーザレーダ走査部(走査手段)
20,PA,PB … 光反射標識
30,30A … 制御装置
31,31A … 距離/光反射強度計測部(距離/電磁波反射強度計測
手段)
32,32A …物体認識/位置検出部
32a …識別手段
32b …自転輌位置算出手段
32c …周辺障害物情報算出手段

Claims (2)

  1. 作業領域周辺に設置した複数の反射標識を電磁波走査によって検出し、自己位置を測定する自律走行作業車の自己位置検出装置において、
    走査手段を作動させて電磁波を外部に投射してから外部の物体で反射された電磁波を検知するまでの時間に基づく距離情報を得ると共に、検知した電磁波の反射強度を計測する距離/電磁波反射強度計測手段と、
    上記距離情報および電磁波反射強度に基づいて投射した電磁波を反射した物体が上記反射標識あるいは周辺障害物かを識別する識別手段と、
    上記反射標識を識別したときには、上記反射標識に対する距離情報と電磁波走査位置とから自車輌に対する方角及び距離を算出し、少なくとも2個の上記反射標識に係わる方角及び距離の情報と予め記憶してある上記反射標識の位置情報とに基づいて自車輌位置を算出する自車輌位置算出手段と、
    上記周辺障害物を識別したときには、この周辺障害物に対する距離情報と電磁波走査位置とから自車輌に対する周辺障害物の方角及び距離を算出する周辺障害物情報算出手段とを備えたことを特徴とする自律走行作業車の自己位置検出装置。
  2. 上記識別手段は、投射した電磁波を反射した物体が上記反射標識あるいは周辺障害物であると識別する際、上記距離情報と上記電磁波反射強度とから物体の反射率を算出し、この反射率を識別の指標として用いることを特徴とする請求項1記載の自律走行作業車の自己位置検出装置。
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