JP3562167B2 - 繊維機械の飛散油剤捕集装置 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
この発明は、紡糸機や撚糸機のような繊維機械において走行する糸条に油剤を付与するためのオイリング装置であって、そのオイリングの際に飛散する油剤の捕集装置を備えたものに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
合成繊維の紡糸機や撚糸機等の繊維機械においては、オイリング装置で糸条に油剤を付与することにより、糸条に柔軟性や平滑性を与えて糸の接触するガイド類との摩擦を少なくし、かつ帯電を防止して糸条の以後の処理および走行を円滑化している。このオイリング装置としては、水平軸を備えた回転ロール(オイリングロール)の下部を油剤に浸漬し、その表面に糸条を接触させるようにしたものが一般的であるが、上記の回転ロールやその糸条走行方向前方に位置するガイドローラ等の遠心力で飛散する油剤や糸条の施撚または解撚時のバルーンで飛散する油剤を、従来は室内の排気装置や繊維機械の局所排気装置によって排気したり、また繊維機械に扉式囲いを設けて強制排気または捕集を行っていた。
【0003】
しかしながら、従来の室内排気や局所排気では、飛散した油剤を効率よく排気することができず、そのため機器が汚れて機器の損傷や作動不良を引き起こしていた。また、囲いを設けて強制排気した場合も、囲いで覆われた機器の油剤による汚れは免れず、しかもこの場合は紡糸状態の監視が困難になる等の問題があった。また、捕集、排気されずに室内に残留した飛散油剤が作業環境を悪化させていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、紡糸機や撚糸機等の繊維機械において、走行糸条の周囲を囲うことなく、オイリング装置その他の飛散油剤の発生源付近に飛散油剤の捕集装置を設けて飛散油剤を効果的に捕集し、もって室内空気の汚染を防ぐものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る繊維機械の飛散油剤捕集装置は、糸条のオイリング装置を備えた繊維機械において、一面が開放された箱形容器を上記繊維機械のオイリング用油剤の飛散源に近接して箱形容器の開放部が上記飛散源を向くように設置し、この箱形容器に飛散油剤と接触して飛散油剤を捕集することができる液滴捕集材を取付けたことを特徴とする。
【0006】
この発明において、オイリング装置は、走行する糸条に油剤を付与することができれば、任意の装置を用いることができ、公知のオイリングロールやオイリングガイドが例示される。そして、オイリング用油剤の飛散源は、オイリング用油剤の飛散元となる箇所であり、オイリング装置、該オイリング装置の下流側に位置する糸条送りロールやガイドローラ、加撚装置等の遠心力で油剤を飛散させる回転機器類および走行糸条の加撚に伴うバルーン発生部分等が例示される。
【0007】
この発明では、上記の飛散源に近接して一面が開放された箱形容器を上記の開放された一面(開放部)が上記飛散源を向くように設置する。この場合、開放部は、必ずしも上に向ける必要はなく、後記するように空気の吸引力を作用させる場合は横向きまたは下向きとすることができる。すなわち、糸条が上から下向きに走行する際は、その横に設置することができ、糸条が水平に走行するときはその上または下に設置することができる。
【0008】
そして、上記の箱形容器に飛散油剤と接触して飛散油剤を捕集することができる液滴捕集材が取付けられる。この液滴捕集材は、単位体積当たりの表面積が大きく、内部に空気の通過する空隙を備えたものであればよく、混合ガスから特定の気体を液体に吸収させるために用いられる充填塔用の充填物、例えば金属、プラスチック、セラミックス等からなるラシヒリング、ベルルサドル等が例示され、これらの充填物を多数個、金網製のかごに入れて用いることもできるが、請求項2に記載のように合成樹脂または金属からなる通気性多孔質材、例えば金属や樹脂製の繊維または線材を交絡して得られた板状の交絡材、上記の繊維または線材からなる網や編物、連続気泡を有する樹脂発泡体および焼結金属等を用いることができ、この場合は、上記充填物のようにかごに入れる必要がなく、取扱いが容易で、かつ飛散油剤の捕集効果が良好な点で好ましい。
【0009】
この発明では、上記の液滴捕集材を取付けた箱形容器がオイリング用油剤の飛散源に近接して箱形容器の開放部が上記飛散源を向くように設置されるので、飛散した油剤の微粒子が液滴捕集材に付着し、液滴化されて液滴捕集材の内外の表面を伝って下方に流下し、効率よく捕集される。したがって、室内に広がる飛散油剤が大幅に減少し、油剤の飛散に伴う機器の汚れ、該汚れに起因する機器の故障が減少し、作業環境の悪化が抑止され、かつ飛散油剤の回収が可能になる。
【0010】
そして、請求項3に記載のように液滴捕集材に飛散油剤を空気で吸引させた場合、すなわち上記液滴捕集材の背面側(箱形容器の開放面に対して反対側)にブロア、空気圧縮機、真空ポンプ、エゼクタ等の空気吸引装置の吸引力を作用させた場合は、飛散油剤の捕集効率を更に高めることができる。また、箱形容器と上記空気吸引装置との間または該空気吸引装置の後方に前記の充填物または通気性多孔質材を内包したエリミネータを組み込むことができ、この場合は、飛散油剤の回収効率が一層向上し、系外への油剤漏れを防ぐことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1、2において、1は合成繊維糸条であり、上方で横一列の等間隔に並ぶ多数のノズル(図示されていない)から吐出されて下向きに走行する。各ノズルの下方には、水平軸の回りを回転するオイリングロール2および油剤槽3が上下に設けられ、油剤槽3を満たす油剤にオイリングロール2の下部が浸漬され、この油剤がオイリングロール2の回転に伴ってその表面に引き上げられ、この油剤がオイリングロール2の表面に接する上記の糸条1に付与される。なお、上記油剤槽3の下方には糸条1の随伴流を遮断するための傾斜遮蔽板4が設けられる。そして、上記のオイリングロール2、油剤槽3および傾斜遮蔽板4の周囲に箱形のロールカバー5が設けられ、オイリングロール2の糸条1に接する側のみを開放し、残りの各面を囲い、糸条1のオイリングロール2側に飛散する油剤を捕集し、下部の樋部6に油剤7を貯めるようになっている。
【0012】
上記糸条1の列を挟んでオイリングロール2の反対側に糸条1の列に沿って延びる横長な長方形の箱形容器10が開放面を糸条1に向けて設置される。この箱形容器10の端面には、上下に長い支持板11が固定され、この支持板11の外面に設けた上下2本の水平方向のアリ溝11aがフレーム(図示されていない)に固定された上下の案内レール12に摺動自在に嵌合し、上記の箱形容器10を糸条1に対して進退できるようになっている。
【0013】
上記箱形容器10の開放面下部にその全幅にまたがる樋板13が固定されて箱形容器10の下板10a上に油剤7aを貯める樋部が形成され、この樋板13の上に箱形容器10の背面板10b側(開放面の反対側)に延びる水平な受け板14が接続され、この受け板14の後縁上に箱形容器10の上板10cに達する多孔板15が垂直に固定される。そして、この多孔板15の前面に金網等からなる通気性多孔質材(液滴捕集材)16が嵌め込まれ、この通気性多孔質材16の前面上部に押さえ板17が固定され、前面下部に通気性多孔質材の前面下部の押さえ板を兼ねる傾斜遮蔽板18がオイリングロール2下方の傾斜遮蔽板4と対称形に固定される。
【0014】
上記箱形容器10の背面板10bの前面(通気性多孔質材16の背面側)に上下2本の吸引パイプ19が水平に固定され、その上面に吸引口19aが横に長いスリット状に設けられ、この吸引パイプ19の一端が吸引チューブ20およびエリミネータ21を介して空気吸引装置(図示されていない)の吸引側に接続され、箱形容器10の背面板10bと多孔板15との間の空間を所定の圧力に減圧している。
【0015】
上記の構造において、箱形容器10の端部に固定された支持板11を手動または機械力で案内レール12に沿って前後に移動させ、糸条1に箱形容器10の一部が接触しない程度に箱形容器10を近接させて固定する。次いで、糸条1を走行させ、オイリングロール2を回転させると、糸条1がオイリングロール2に接したとき、この糸条1にオイリングロール2の表面の油剤が付着して運ばれるが、オイリングロール2の遠心力により、オイリングロール2の表面の油剤の一部が飛散する。また、オイリングロール2の下方に施撚部が存在して糸条に撚を加えている場合は、オイリングロール2の下方で糸条1にバルーンが発生し、糸条1にオイリングロール2からいったん付与された油剤が上記のバルーンによって飛散する。
【0016】
そして、通気性多孔質材16の方向に飛散した油剤の微粒子は、この通気性多孔質材16の表面に接触して液滴化されるが、エリミネータ21に接続されている空気吸引装置が駆動されると、箱形容器10の背面板10bと多孔板15との間の空間が所定の圧力に減圧され、通気性多孔質材16の表面側から背面側に向かう空気流が発生するため、通気性多孔質材16の方向に向かう飛散油剤が多くなり、飛散油剤が通気性多孔質材16によって効率的に捕集される。通気性多孔質材16に捕集された飛散油剤は、液滴化されて通気性多孔質材16の内部または外部を伝って流下し、樋板13の内側の樋部に貯められ、下板10aに空けた排液口10dから適宜に取出される。
【0017】
また、通気性多孔質材16を前面から背面側に貫通した飛散油剤の微粒子は、吸引パイプ19内にその吸引口19aから入り、吸引チューブ20を介してエリミネータ21に運ばれ、このエリミネータ21において空気から分離され、液化されて貯められる。したがって、飛散油剤が効率よく回収される。
【0018】
【実施例】
実施形態において、紡糸された繊度20〜150デニールのポリエステルマルチフィラメント糸を1500〜3000m/分の速度で上から下向きに走行させながら、下方で5〜20回/mの撚を加え、回転速度5〜15RPMで回転するオイリングロール2の表面に接触させて糸条重量の1〜2%の油剤を付着させた。一方、上記のオイリングロール2に近接して高さ(上下方向の寸法)100mmの箱形容器10を設置し、この箱形容器10に液滴捕集材として、線径1mmのプラスチック交絡線からなる厚み15mmの通気性多孔質材16を、その表面から糸条1までの距離が5〜10mmとなるように取付け、通気性多孔質材16の背面側圧力を−0.05 kgf/cm2 に設定して飛散油剤を回収した。
【0019】
糸条に対する油剤供給量Qから糸条に付与された油剤付着量Fを差引いて飛散油剤量Sとし、この飛散油剤量Sに対する箱形容器10の下部の樋部における油剤回収量およびエリミネータ21における油剤回収量を測定したところ、箱形容器10の下部の樋部における油剤回収量が飛散油剤量Sの79〜88%、エリミネータ21における油剤回収量が飛散油剤量Sの6〜10%であり、系外の飛散油剤量は飛散油剤量Sの6〜11%であった。
【0020】
【発明の効果】
以上に説明したように、請求項1記載の発明によれば、飛散した油剤の微粒子が液滴捕集材に付着し、液滴化されて効率よく捕集、回収され、そのため油剤の飛散に伴う機器の汚れや故障が減少し、作業環境の悪化が抑止される。
【0021】
そして、請求項2に記載の発明は、液滴捕集材として合成樹脂または金属からなる通気性多孔質材を用いるものであるから、その取扱いが容易になると共に、飛散油剤の捕集効果が向上する。また、請求項3記載の発明によれば、飛散油剤の回収効率が更に向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の横断面図である。
【図2】実施形態の一部破砕正面図である。
【符号の説明】
1:糸条 2:オイリングロール(オイリング装置)
5:ロールカバー 7、7a:油剤
10:箱形容器 10a:下板
10b:背面板 10c:上板
13:樋板 14:受け板
15:多孔板 16:通気性多孔質材(液滴捕集材)
17:押さえ板 18:傾斜遮蔽板
19:吸引パイプ 20:吸引チューブ
21:エリミネータ
Claims (3)
- 糸条のオイリング装置を備えた繊維機械において、一面が開放された箱形容器を上記繊維機械のオイリング用油剤の飛散源に近接して箱形容器の開放部が上記飛散源を向くように設置し、この箱形容器に飛散油剤と接触して飛散油剤を捕集することができる液滴捕集材を取付けたことを特徴とする繊維機械の飛散油剤捕集装置。
- 液滴捕集材が合成樹脂または金属からなる通気性多孔質材である請求項1に記載された繊維機械の飛散油剤捕集装置。
- 液滴捕集材に飛散油剤を空気で吸引させるようにした請求項2に記載された繊維機械の飛散油剤捕集装置。
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JP25375596A JP3562167B2 (ja) | 1996-09-04 | 1996-09-04 | 繊維機械の飛散油剤捕集装置 |
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