JP3561470B2 - 光波長板評価装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光波長板評価装置に関し、特にアレイ導波路格子(以下、AWGと略す)の偏波無依存化に用いられる薄膜1/2波長板の光波長板評価装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、通信容量の拡大のために複数の光波長を用いた光波長多重通信システム(WDMシステム)の開発が盛んである。この光波長多重通信システムにおいて、送信側で複数の波長の光信号を合波したり、受信側で1本の光ファイバ中の複数の光信号を異なるポートに分波する光波長合分波器として、AWG(アレイ導波路格子)が広く使用されている。
【0003】
一般に、平面光導波路は複屈折を有するため、AWGは偏波依存性を持つ。この偏波依存性を解消するため、AWGの中央部に偏波モード変換器として主軸が基板に対して45°傾いた薄膜1/2波長板を挿入して偏波無依存化がなされている。
【0004】
図5に1/2波長板を挿入した従来のAWGの外観図を示す。このAWGは、シリコン基板501上に、入力導波路502、入力側スラブ導波路503、アレイ導波路504、出力側スラブ導波路505、出力導波路506、およびアレイ導波路504を交差する1/2波長板挿入用溝507を形成し、この溝504に主軸が基板501に対して45°傾いた薄膜1/2波長板508を挿入して、偏波無依存化がなされている。現在、この1/2波長板508として、面内複屈折が大きなポリイミドが用いられている(Y.Inoue et al., ”Polarization mode converter with polyimide half waveplate in silica−based planar lightwave circuits,” IEEE Photon.Technol.Lett.,vol.6,pp.626−628,1994.参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようなポリイミド1/2波長板は、面内方向に延伸して作製されるため、場所に依存する揺らぎを持っている。このポリイミド1/2波長板をAWGに挿入する場合、100本ものアレイ導波路がこのポリイミド1/2波長板に交差するため、ポリイミド1/2波長板の空間的な分布はAWGの偏波特性に大きな影響を与える。このため、作製されたポリイミド1/2波長板の場所に依存する揺らぎを評価する必要があった。
【0006】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、その目的は、ポリイミド1/2波長板の面内分布特性を評価することができる光波長板評価装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、光源と、該光源の出力光を入力する複数の光導波路と、該光導波路の出力光を検出する光検出器とを備えた波長板評価装置であって、前記複数の光導波路の入力部および出力部に挿入され互いに主軸の等しい1組の薄膜偏光子と、前記1組の薄膜偏光子間に設けられ前記複数の光導波路と交差して波長板の厚さよりも幅の広い溝とを有し、前記溝に被測定対象物である前記波長板を挿入し、前記1組の薄膜偏光子と前記波長板を透過した光の透過スペクトルを求めることで該波長板のリターデーション誤差と光学軸誤差とを個別に評価することを特徴とする。
また、上記目的を達成するため、請求項2の発明は、光源と、該光源の出力光を入力する複数の光導波路と、該光導波路の出力光を検出する光検出器とを備えた波長板評価装置であって、前記複数の光導波路の入力部および出力部に挿入され互いに主軸の等しい1組の薄膜偏光子と、前記1組の薄膜偏光子間に設けられ前記複数の光導波路と交差して波長板の厚さよりも幅の広い溝とを有し、前記溝に被測定対象物である前記波長板を挿入し、
前記1組の薄膜偏光子と前記波長板を透過した光の透過スペクトルを求めることで該波長板のリターデーション誤差と光学軸誤差とを個別に評価することを特徴とする。
また、請求項1の発明において、前記1組の薄膜偏光子と前記波長板を透過した光の透過スペクトルを求めることで該波長板のリターデーション誤差と光学軸誤差とを個別に評価することを特徴とすることができる。
【0008】
ここで、前記溝は、前記複数の光導波路の垂直面から3°〜10°傾けられていることを特徴とすることができる。
【0009】
また、前記複数の光導波路は、前記入力部および出力部での光導波路の間隔と、前記溝と交差する部分での光導波路の間隔とが互いに異なることを特徴とすることができる。
【0010】
また、前記光源としての偏光依存性のない光源と、前記複数の光導波路と、前記光検出器としての光スペクトラムアナライザと、該偏光依存性のない光源と該複数の光導波路とを結ぶ第1の光スイッチと、該複数の光導波路と該光スペクトラムアナライザとを結ぶ第2の光スイッチとを有することを特徴とすることができる。
【0011】
また、前記波長板は、アレイ導波路格子の偏波無依存化に用いられるポリイミドを材料とする薄膜1/2波長板であることを特徴とすることができる。
【0012】
また、前記光スペクトラムアナライザは偏波変換クロストークの波長依存性を求めることで前記薄膜1/2波長板の面内光学特性を評価することを特徴とすることができる。
【0013】
(作用)
本発明の波長板評価装置は、上記のような構成であるので、本発明の波長板評価装置を用いることにより、ポリイミド1/2波長板の面内光学特性を評価することが可能となる。また、その評価結果を製作工程にフィードバックしてポリイミド1/2波長板の特性を改善することで、ひいてはAWGの特性を改善することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
(装置構成)
図1に本発明の一実施形態における光波長板評価装置の構成を示す。本実施形態では、光源101として偏光依存性のないErドープファイバアンプの自然放出光光源(ASE光源)を用いている。また、1×64スイッチ103、シリコン基板105上の64本の石英系光導波路106、64×1スイッチ107を用いて、時間的に光路を切り替えることで、波長板特性の場所依存性を評価する。
【0016】
光導波路106には、その入力部と出力部にラミポールと呼ばれる、互いに主軸の等しい薄膜偏光子108、109を1つずつ挿入して、シリコン基板105と垂直方向に電界成分を持つTMモードのみが伝搬するようにしている(ラミポールについては、例えば、K. Baba et al. ”Optical properties of very thin metal films for laminated polarizers.” Applied Optics,vol.27,no.12,pp.2554−2560.1988.参照)。
【0017】
1対の薄膜偏光子108、109間の光導波路106に被測定対象物である波長板挿入用の溝110を加工している。1.55ミクロン用ポリイミド1/2波長板111の厚みは15ミクロンであるため、溝110としては幅30ミクロン、深さ200ミクロンとしている。
【0018】
また、現在AWGに波長板を挿入する場合、反射戻り光を抑制するために波長板の溝を5°程度傾けている。よって、波長板111の光学特性もこの傾きと同じ角度傾けて評価する必要がある。このため、図1の波長板挿入用溝部110の光導波路は5°傾けて設計している。
【0019】
更に、入出力導波路106−1、106−2は光ファイバテープの形状に依存して250ミクロン間隔で設計しているが、本実施形態では波長板111のより細かい空間分布を評価するために、溝部110の近傍での導波路間隔を100ミクロンとして、入出力導波路106−1、106−2と溝部近傍の導波路106−3とをS字カーブで接続している。このような導波路ピッチ変換は、平面導波路の最も得意とするものである。溝部110の近傍での導波路間隔は、必要に応じて、20ミクロン程度まで縮めることも、あるいは1000ミクロンまで広げることも可能である。
【0020】
(評価原理)
次に、本実施形態の光波長板評価装置による波長板の評価原理を説明する。
【0021】
ポリイミド1/2波長板111はAWGの中で偏波モード変換器として機能するため、その偏波モード変換クロストークを評価する必要がある。この偏波モード変換クロストークとは、例えばTMモードの光が入射したとき、TEモードに変換されずにTMモードのまま透過してしまう光の割合で定義される。
【0022】
図1の装置において、偏光依存性のない入力光が初段の薄膜偏光子108を通過すると、TMモードのみが透過する。一般に、平面光導波路は複屈折を有するために、TMモードの光は偏光状態を保持したまま伝搬する。よって、このTMモードの光は直線偏光のまま波長板111に入射する。そして、この入射した光は主軸が基板105に対して45°傾いたポリイミド1/2波長板111によりTEモードに変換される。
【0023】
しかし、波長板111の不完全性によって一部の光がTMモードのまま波長板111を透過する。更に、後段の薄膜偏光子109によってTEモードの光は阻止され、波長板111の不完全性により発生したTMモードの光のみが導波路から出力される。
【0024】
このときの入力光に対する出力光の強度が前述の偏波変換クロストークとなる。この出力光を光スペクトラムアナライザ114で評価することにより、偏波変換クロストークの波長依存性を求めることができる。
【0025】
(測定結果)
図2に図1の構成の光波長板評価装置によりポリイミド1/2波長板111を実測した偏波変換クロストークの波長依存性を示す。測定時には、反射を抑制するため、波長板111と溝110の側面との間に屈折率マッチング液を充填している。
【0026】
この光波長板評価装置は、AWG偏波無依存化に最も重要な偏波変換クロストークを直接的に、しかも光波長に応じて求めることができる。更に、そのスペクトルにより、波長板111の不完全性の要因であるリターデーション誤差と光学主軸誤差の2つを個別に評価することができる。ここで、リターデーションとは波長板111の2つの光学軸における、光学的な膜厚の差で定義される量である。波長板111は、図2に示すように、AWGの中心周波数(1550nm)において、偏波変換クロストークが最小となるようにリターデーションが設計されている。また、光学主軸誤差とは、基板105に対する波長板111の光学主軸が設計値の45°から何度傾いているかという値である。
【0027】
図2の例では、偏波変換クロストークが1.55ミクロン(1550nm)で最小になっていることから、測定したポリイミド1/2波長板111のリターデーションは0.775ミクロン(1.55ミクロンの1/2)であることがわかる。
【0028】
また、光学主軸誤差αと偏波変換クロストークの最小値との間に次式の関係がある。
【0029】
【数1】
偏波変換クロストークの最小値(dB)=10・log10(sin22α)…(1)
【0030】
この光学主軸誤差αと偏波変換クロストークの最小値との関係を図3に示す。図3から、例えば最小偏波変換クロストーク(偏波変換クロストークの最小値)が−35dBであるとき、光学主軸誤差は0.5°であったことがわかる。
【0031】
図4に、16カ所での評価した偏波変換クロストークの結果を重ね書きしたものを示す。16個のスペクトルがそれぞれ異なることから、リターデーション誤差の分布と光軸主軸誤差の分布を求めることができる。
【0032】
このように本発明の波長板評価装置は、導波路のパターンを任意に設計することにより、評価する場所の間隔を変えたり、あるいは波長板に入射する導波路の角度を変えたりすることができる。
【0033】
また、同一の導波路に導波路との交差角が異なる複数の溝を形成しておき、任意の溝に波長板を挿入して評価を行うこともできる。
【0034】
本発明の波長板評価装置を用いることにより、上記のようにリターデーション誤差と光学主軸誤差を個別に評価できることは、波長板製造工程の改善に非常に有効である。さらには、リターデーション誤差と光学主軸誤差が面内でどのように分布しているかを調べることにより、より高精度な波長板の製造に有効である。
【0035】
(その他の実施形態)
以上述べた本発明の一実施形態では、シリコン基板上の石英系光導波路を用いたが、光導波路としてはいかなる材料系の導波路を用いることも可能である。
【0036】
また、上述の本発明の一実施形態では、透過スペクトルを評価するのにASE光源と光スペクトラムアナライザを用いたが、この代わりに波長可変光源とパワーメータを用いることも可能である。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の光波長板評価装置を用いれば、波長板の不完全性の要因であるリターデーション誤差と光学主軸誤差とを個別に評価することができるので、波長板製造工程の改善に非常に有効であり、さらに、リターデーション誤差と光学主軸誤差が面内でどのように分布しているかを調べることにより、より高精度な波長板の製造が可能となるという効果を奏する。
【0038】
その結果、本発明によれば、偏波モード変換器としての波長板の特性を改善すると共にその改善した特性を維持することも可能となり、ひいては、AWGの特性を改善し、WDMシステムの普及に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の光波長板評価装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態の光波長板評価装置における偏波変換クロストークの波長依存性を示すグラフである。
【図3】本発明の一実施形態の光波長板評価装置における光学主軸誤差と偏波変換クロストークの最小値との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態において、16カ所での評価した偏波変換クロストークの結果を重ね書きしたものを示すグラフである。
【図5】従来技術によるポリイミド1/2波長板を挿入したAWGの外観を示す模式図である。
【符号の説明】
101 ASE光源(自然放出光光源)
102、104、112、113 光ファイバ
103 1×64スイッチ
105 シリコン基板
106、106−1、106−2、106−3 石英系光導波路
107 64×1スイッチ
108、109 薄膜偏光子
110 波長板挿入用の溝
111 ポリイミド1/2波長板
114 光スペクトラムアナライザ(光検出器)
501 シリコン基板
502 入力導波路
503、505 スラブ導波路
504 アレイ導波路
506 出力導波路
507 1/2波長板挿入用溝
508 ポリイミド1/2は長板
Claims (8)
- 光源と、該光源の出力光を入力する複数の光導波路と、該光導波路の出力光を検出する光検出器とを備えた波長板評価装置であって、
前記複数の光導波路の入力部および出力部に挿入され互いに主軸の等しい1組の薄膜偏光子と、
前記1組の薄膜偏光子間に設けられ前記複数の光導波路と交差して波長板の厚さよりも幅の広い溝とを有し、
前記溝に被測定対象物である前記波長板を挿入することにより該波長板の面内分布を評価することを特徴とする波長板評価装置。 - 光源と、該光源の出力光を入力する複数の光導波路と、該光導波路の出力光を検出する光検出器とを備えた波長板評価装置であって、
前記複数の光導波路の入力部および出力部に挿入され互いに主軸の等しい1組の薄膜偏光子と、
前記1組の薄膜偏光子間に設けられ前記複数の光導波路と交差して波長板の厚さよりも幅の広い溝とを有し、
前記溝に被測定対象物である前記波長板を挿入し、
前記1組の薄膜偏光子と前記波長板を透過した光の透過スペクトルを求めることで該波長板のリターデーション誤差と光学軸誤差とを個別に評価することを特徴とする波長板評価装置。 - 前記1組の薄膜偏光子と前記波長板を透過した光の透過スペクトルを求めることで該波長板のリターデーション誤差と光学軸誤差とを個別に評価することを特徴とする請求項1に記載の波長板評価装置。
- 前記溝は、前記複数の光導波路の垂直面から3°〜10°傾けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の波長板評価装置。
- 前記複数の光導波路は、前記入力部および出力部での光導波路の間隔と、前記溝と交差する部分での光導波路の間隔とが互いに異なることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の波長板評価装置。
- 前記光源としての偏光依存性のない光源と、前記複数の光導波路と、前記光検出器としての光スペクトルアナライザと、該偏光依存性のない光源と該複数の光導波路とを結ぶ第1の光スイッチと、該複数の光導波路と該光スペクトラムアナライザとを結ぶ第2の光スイッチとを有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の波長板評価装置。
- 前記波長板は、アレイ導波路格子の偏波無依存化に用いられるポリイミドを材料とする薄膜1/2波長板であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の波長板評価装置。
- 前記光スペクトラムアナライザは偏波変換クロストークの波長依存性を求めることで前記薄膜1/2波長板の面内光学特性を評価することを特徴とする請求項7に記載の波長板評価装置。
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