JP3559856B2 - 廃燐酸塩含有物より乾式燐酸肥料を製造する方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、乾式法による燐酸肥料の製造において、燐原料として現在使用されている燐鉱石の代替原料として産業廃棄物である燐含有廃棄物を使用して資源の有効利用及び廃棄物の再資源化技術に関するものである。
【0002】
さらに詳しくは燐含有産業廃棄物が、金属材料を燐酸又は燐酸塩処理して塗装前処理、又は防錆処理する金属表面化成処理工程で発生した廃酸又は廃燐酸塩スラッジのリサイクル処理方法に関するものである。
【0003】
【従来の技術】
燐酸肥料の製造法には、湿式法と乾式法がある。
【0004】
前者の湿式法は原料燐鉱石を硫酸、硝酸、燐酸等の鉱酸で分解し、燐酸分の水溶化を行い、この水溶化した燐酸をアンモニアで中和し、燐酸アンモニウムを晶出させて肥料として使用するか、又はこの燐酸アンモニウムにカリウム塩等の肥料成分を加えたいわゆる窒素、燐酸、カリ含有の各種化成肥料を製造する方法である。
【0005】
一方、乾式法には、燐鉱石を燐原料として、蛇紋岩、カンラン岩等のシリカ、マグネシウム化合物を混合し、高温溶融した後、急冷水砕し熔成苦土燐肥(以下、溶燐と呼ぶ)を製造する方法と、燐鉱石と硅砂、ソーダ灰を混合し、高温焼成した後、急冷水砕して焼成燐肥を製造する方法がある。
【0006】
これらの燐酸肥料は、植物の生育に必須の成分であり、土壌に散布すると肥料中の燐分の約3〜25%が植物へ吸収されるが残りの大部分は土壌に還元されてしまうため、いわゆる燐酸分は一回の使い捨てである。
【0007】
これは肥料の性格上やむを得ないが、これら燐酸肥料の製造における燐源は全て燐鉱石であり、我国では全量海外からの輸入資源に依存している現状を考えると、燐資源の浪費であり燐原料の有効利用及び多様化を計る必要性が認められる。
【0008】
現在の肥料製造工業の重要な課題は、近年の肥料需要の減少及び海外からの安価な輸入品の増加等のため、製造コストの低減が切望されている状況にある。
【0009】
一方、近年地球環境保全及び資源保護の観点から、資源リサイクルすなわち産業廃棄物のリサイクル利用が叫ばれ、世論も著しく高揚している背景から、産業廃棄物からの肥料の製造法として以下の幾つかの方法が提案されているが、燐酸含有廃棄物の例は現時点では認められない。
【0010】
例えば、特開昭49−30144号公報には発酵廃液利用肥料の製造法、特公昭60−3039号公報には、都市ごみの溶融処理工程を利用した肥料の製造法、さらに特公昭60−45155号公報には、ビート製糖工場よりの廃液からの肥料の製造法等の提案があるが、いずれも燐含有廃棄物ではなく窒素、燐酸、カリの肥料成分は別途添加している方法である。
【0011】
産業廃棄物を燐酸肥料製造に利用している例としては、産業排水及び都市下水等の最終処理である活性汚泥法処理の乾燥汚泥の一部が肥料として利用されているにすぎない。
【0012】
また、肥料分野における廃棄物の利用例としては、燐酸肥料の中の乾式燐酸肥料の一つである熔燐の製造において、ニッケル精錬の廃スラグ(フェロニッケルスラグ)がシリカ、マグネシウム源の主要原料である蛇紋岩、カンラン岩の代替に多量に使用されている(特公昭30−4416号公報及び特公昭30−5058号公報等)。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
日本国内での燐酸源すなわち燐鉱石の消費量は最近では年間150万トンであり、そのうち肥料用に130万トン、工業用に20万トンが使用されている。
【0014】
ここで肥料用の130万トンは前記したごとく、土壌に散布された後、一部は植物に吸収されるが、大部分は土壌に還元されるため、回収、リサイクルは不可能で毎年大量に廃棄されているといわざるをえない。
【0015】
燐酸肥料の湿式と乾式の内訳は現状で、湿式80%乾式20%の比率と言われているが、湿式肥料の水溶性燐酸は肥効は早いが雨水等による流亡によりロスも多くなるのに対して、乾式法の熔燐又は焼成燐肥はク溶性であるため肥効が緩やかに作用し、コントロールしやすい為、肥効調節型肥料として最近注目されている状況にある。
【0016】
一方、工業用燐酸は年間約10万トン(85%HPO)が日本国内で消費されていて、これらの用途としては食品添加物、歯磨き用等の燐酸二次塩に約50%、金属材料の表面化成処理に約25%、その他(医薬、各種栄養剤)に約25%の内訳といわれている。
【0017】
このうち、燐酸二次塩及びその他分野の用途では直接消費されるため燐酸廃棄物は生成しないが、金属表面処理分野の用途における燐酸は、金属材料を処理した後、廃燐酸、廃燐酸スラッジが多量に発生し種々の問題を提起している。
【0018】
すなわち、金属材料の化成処理を大別すると二つあり、その一つは鉄鋼又はアルミニウムの表面処理、他の一つは自動車製造時の塗装前処理(パーカライジング処理)である。
【0019】
鉄鋼又はアルミニウムの表面処理、具体的には、鉄鋼材料又はアルミ材料の塗装又はメッキの防錆処理の為の前処理には工業用燐酸が使用されるが、使用済みの廃燐酸が多量に発生する。
【0020】
この廃燐酸の年間発生量は100%HPOで約1万トンといわれており、実際の廃液量としては約10万トンから20万トンが発生している。
【0021】
これらの廃酸は液性が酸性のため石灰乳等のアルカリで中和処理され、燐酸カルシウム及び金属燐酸塩の固体を生成させた後、ろ過分離しケークは埋立処分がなされているのが現状である。
【0022】
これらの燐酸塩含有中和処理後の廃燐酸含有ケークはその殆どが埋立処分されているため、近い将来には埋め立て地不足となること及び埋立後の雨水等による再溶解のため二次公害の発生等の問題があり、さらには現状の処理法では燐酸という有効資源の活用は全くなされていないことは大きな問題といえる。
【0023】
そのため金属表面処理薬剤のメーカー及びユーザーは長年にわたり燐酸という有価資源回収のために、種々の回収リサイクル技術の検討がなされてきたが、現時点で実用化は殆どなされていないのが実状である。
【0024】
この種の従来技術としては、廃燐酸中の燐酸又は溶解金属である鉄、アルミの分別回収法が多数提案されていて、具体的には、以下の方法等である。
【0025】
▲1▼陽イオン交換樹脂による金属イオンの吸着除去法(特開昭62−39236号公報)
▲2▼有機溶媒で廃燐酸液を処理し、燐酸を回収するか又は金属イオンを回収する方法(特開昭59−29675号公報、特開昭60−58177号公報)
▲3▼廃燐酸液に薬剤を添加し、金属燐酸塩を析出させろ過分離後、燐酸液をリサイクル使用する方法(特開昭56−43313号公報)
これらの各法では、イオン交換樹脂、有機溶媒さらには化学薬剤を使用し成分分離を行うため、工程が複雑となり、かつ操作が煩雑なため設備投資が大きくなり経済性が乏しいこと、また分離回収した各製品の品質が不十分なため、いまだ実用化されていない理由といわれている。
【0026】
他方、自動車製造時の塗装前処理、防錆処理に対して、工業的に広く利用されている燐酸塩化成処理においても、その処理時に多量の燐酸塩スラッジを発生する。
【0027】
この燐酸塩スラッジは、現在殆どが産業廃棄物として中和処理後に埋立処分か又は、産業廃棄物処理業者への委託処理が行われており、その量は日本国内のみでも乾燥スラッジとして年間約5000トン、有姿では約2万トンから3万トンといわれており、今後ますます増加の傾向にあることを考えると将来埋め立て地不足及び埋め立て地周辺の土壌汚染等の種々の問題点の発生が懸念される状態にあることは前記した鉄鋼又はアルミニウムの表面処理廃燐酸の場合と同じ状況にある。
【0028】
さらには、これら廃棄物処理費用が膨大になり近い将来には、通常の生産活動を圧迫することも予想される。
【0029】
したがってこの分野においても、有価資源のリサイクル、具体的には産業廃棄物の再利用について、燐酸メーカー及びユーザーがこれら廃燐酸塩スラッジ中の有価成分をリサイクル使用するための技術開発を盛んに行ってきた。
【0030】
すなわち、燐酸塩スラッジの処理、再利用については、昭和50年代頃よりスラッジ中の燐酸、亜鉛等の有効成分を分離回収し再利用する方法が数多く提案されているが、現時点で実際にコマーシャル化された実積はない。
【0031】
その理由は先の廃燐酸の回収、リサイクルの技術開発と同様に、▲1▼分離回収工程が複雑になりケミカルス及び設備投資額が大きくなり経済性がない事、▲2▼回収した製品品質がリサイクルできない品質である事である。
【0032】
具体的に過去の燐酸塩スラッジ処理技術として開示された文献を示すと以下の通りである。
【0033】
▲1▼スラッジをアルカリ処理し燐酸アルカリを回収する方法(特開昭51−117197号公報、特開昭50−118935号公報、特開平1−100008号公報、特開昭63−103084号公報、特開平3−134181号公報)
▲2▼スラッジを酸処理し、燐酸亜鉛を回収する方法(特開昭50−116395号公報、特開昭53−109871号公報、特開昭52−12699号公報、特開昭53−71643号公報)
▲3▼スラッジをアルカリ分解、熱分解、イオン交換樹脂分解処理し生成物を有効利用する方法(特開平5−320939号公報、特開平5−320938号公報、特開平6−16403号公報)
以上のように現時点でのこれら工業用精製燐酸を使用して金属材料の表面処理時に生成した燐酸含有廃棄物は、資源として有用な燐酸の形態をそのまま保持しているにも関わらず、廃棄処分されている状況にあることは、環境保全及び資源保護の観点からと同時に経済性の観点からも大きな問題点である。
【0034】
一方、肥料製造においては将来の燐鉱石資源の枯渇、及び燐鉱石の価格上昇等が今後肥料製造分野においても迫りくる問題であることから、製造コストの低減が主要な技術課題である。
【0035】
したがって本発明者らは、上記廃燐酸塩含有物を肥料製造原料に適用し、少なくとも工業用燐酸の金属表面処理分野の燐酸廃棄物をリサイクル使用し再資源化を達成しようとすることが肥料製造工業と精製燐酸製造工業から派生した金属表面処理分野の現状の技術課題を一気に解決出来ると考えたものである。
【0036】
ここで肥料分野へのリサイクルを思考した一つの大きな理由は、過去の廃燐酸塩含有物の資源回収の一連の提案において、新たな設備が必要となることから膨大な投資額となり、経済性が無くなるのに対して、肥料製造分野への適用は既存設備が利用出来るため、より現実的な方法と判断したものである。これと同時に燐酸含有廃棄物の肥料原料へのリサイクルの提案は前記した有価資源の再利用及び産業廃棄物の減少さらには製造コストの低減が期待できるものである。
【0037】
以上のように本発明の目的は、前記した種々の従来技術における問題点すなわち技術課題を解決することで、現在の資源リサイクルの趨勢を的確に捉え、経済的でかつ実用化可能な燐酸資源の有効利用を計れる方法を提供することである。
【0038】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、工業用燐酸の金属表面処理分野での廃燐酸塩含有物を肥料製造工程への再資源化方法について鋭意検討を進めた結果、当該廃燐酸塩含有物を乾式燐酸肥料である熔成苦土燐肥又は焼成燐肥の原料である燐鉱石の一部代替原料として使用できることを見出し本発明の方法を完成したものである。
【0039】
まず第一の発明は、燐鉱石、シリカ、及びアルカリ金属化合物、又はアルカリ土類金属化合物を含む原料混合物を、高温溶融又は高温焼成した後急冷水砕し、乾式燐酸肥料を製造する方法において、燐源である燐鉱石の代替原料として、金属表面処理工程での廃燐酸塩含有物を用いることを特徴とする廃燐酸塩含有物より乾式燐酸肥料を製造する方法である。
【0040】
また第二の発明は、燐鉱石、シリカ、及びアルカリ金属化合物、又はアルカリ土類金属化合物を含む原料混合物を、高温溶融又は高温焼成した後急冷水砕し、乾式燐酸肥料を製造する方法において、
(1)燐源である燐鉱石の一部代替原料として、燐酸亜鉛溶液による化成処理時に生成した廃燐酸スラッジを用い、廃燐酸スラッジ中のP/原料混合物中のPを50重量%以下にし、
(2)カルシウム化合物を原料混合物に添加し、原料混合物中のCaO/Pのモル比を3〜4にすることを特徴とする廃燐酸塩含有物より乾式燐酸肥料を製造する方法である。
【0041】
以下に本発明の詳細について説明する。
【0042】
本発明での乾式燐酸肥料とは、熔成苦土燐肥又は焼成燐肥のことである。以下、熔成苦土燐肥を例にとり説明する。
【0043】
現在の熔成苦土燐肥の製造法は、燐酸源としての燐鉱石と苦土及びシリカ源としての蛇紋岩及び/又はフェロニッケルスラグを原料として、電気炉又は平炉で1400℃以上に加熱溶融した後、急冷水砕し、乾燥粉砕後製品が製造されている。
【0044】
上記原料を高温で融解し、反応して得られるが、その反応は一般的に次の様に考えられている。
【0045】
【化1】
Figure 0003559856
【0046】
すなわち、燐鉱石中の石灰部分を苦土で置換して、フッ化カルシウムを結合からはずし、肥料的に可溶性である燐酸苦土石灰と硅酸との共融物として得られるもので、可溶性共融物が得られる割合は、燐鉱石と蛇紋岩の比が約7:5といわれている。この混合比の構成元素の内訳を示すとおおよそ次の通りであり、P1モル、CaO3モル、MgO3モル、SiO3モルの比率と考えられている。
【0047】
この混合比が、高温融解時の融点の最適化すなわち低温度での操業が可能となり、かつ安定した溶融物の流動性が保持できることから好適といわれている。
【0048】
この熔燐製品の製品品質規格は肥料取締法に定められている。保証成分としてはク溶性燐酸17重量%以上、アルカリ分(CaO換算表示の合計量)40重量%以上、ク溶性苦土12重量%以上及び可溶性けい酸20重量%以上である。
【0049】
また通常の熔燐製品の品質は、ク溶性燐酸20重量%以上、ク溶率(2%クエン酸溶液への溶解率)95重量%以上、アルカリ分45重量%以上、ク溶性苦土13重量%以上及び可溶性けい酸20重量%以上であり、上記原料混合比において安定した製品品質が確保されている。
【0050】
まず、第一の発明について説明する。
【0051】
工業用精製燐酸を用いて鉄鋼及びアルミニウム等の金属材料を燐酸液又は燐酸塩溶液で化成処理する目的は、一般的には耐蝕性、塗装密着性、メッキ下地処理等のためであり、通常5〜80%の燐酸液が使用される。
【0052】
この方法は浸積処理又は電解処理が一般的であり、これらの工程で使用された燐酸液は老化すると廃燐酸液となり廃棄されるが、そのままでは廃棄できないため、石灰乳等のアルカリで中和処理し、燐酸カルシウム及び金属燐酸塩として固体化し、このスラリーをろ過分離し、炉液は河川に放流されるが、固体ケークは埋立処分されている。
【0053】
これらケークは一般的には、50〜80重量%の水分を含有したウエットケークとして排出されるがここでは、乾燥状態での主要成分の組成の代表例を表1に示す。
【0054】
【表1】
Figure 0003559856
【0055】
本発明者らは、表1のような廃燐酸塩含有物ケークを主原料の燐鉱石の代替に使用するために、燐酸源として全量使用し燐酸肥料を製造したところ、肥料取締法に定められている製品品質規格に適合することを見出だし、本発明を完成した。
【0056】
ここで、原料混合物中の廃燐酸ケーク量は、前記した熔燐製品中の製造条件及び製品品質に多大な影響を与えることから、製造条件のマイルド化及び熔燐製品中の不純物成分の含有量の低減のためには、廃燐酸ケーク中のP/原料混合物中のPを50重量%以下にするのが好ましい。
【0057】
すなわち、燐鉱石の代わりに熔燐製品のPの全量に相当する量の廃燐酸ケークを用いると、通常1300℃程度で適度な粘性をもつ溶融ガラスが生成するのに対し、1450℃以上でようやく適度な粘性をもつ溶融ガラスが生成するようになるという事実を知見した。そこで、かなりな高温度で得られた製品を分析したところ、製品中のFe及びAlがそれぞれ13重量%及び7重量%となり、通常の熔燐製品に比べ不純物が増加し、品質規格成分であるク溶性燐酸、アルカリ分、苦土の各成分を希釈していた。
【0058】
この理由は明確ではないが、廃燐酸ケークを燐酸源に用いるとFe又はAl成分が多くなり、熔燐溶融物の組成としてFe/P比及びAl/P比がそれぞれ0.5以上及び0.3以上となり、肥料成分であるP、CaO、MgO、SiOの組成比は適正に保たれているにも関わらず、不純物の共存量が増加したため、溶融体の粘度が上がり、流動性が悪化し、溶融温度の上昇及び熔燐製品中の不純物成分の含有量の増加を招いたものと推察される。
【0059】
また種々の廃燐酸塩含有物の混合使用により原料混合物中のCaO/Pモル比が原料混合段階で3より極端に小さくなるような場合には、カルシウム化合物として消石灰、生石灰、石灰石等の1種又は混合物を原料混合物中に添加し、CaO/Pモル比を3〜4に調整して高温溶融する方法が好ましい。すなわち、廃燐酸ケークの中には、CaO成分が少ないものもあるため、本発明の適用範囲を拡大する観点で重要である。
【0060】
さらに、廃燐酸塩含有物の使用においては該廃燐酸ケークが通常50〜80重量%の含水率で排出されるため、これを直接使用すると、1トンの熔燐製品当たり1トン以上の水分を処理しなければならなくなるため、多大なエネルギーコストを必要とする点と共に原料である燐鉱石、蛇紋岩及び廃燐酸ケークの均一混合の操作性が著しく困難になることからも、該廃燐酸塩含有物の水分含有量はあらかじめ乾燥して好ましくは水分1〜10重量%、さらに好ましくは1〜5重量%である。最適には、現状の製造工程での水分含有量である3重量%程度が好ましい。
【0061】
現状の熔燐肥料製造の工業的な条件として、溶融温度は1350〜1500℃で実施されており、理論上の溶融温度(1250℃前後)に比べて約100〜200℃高めで操業されている。
【0062】
前記したように、本発明の種々の検討結果で廃燐酸塩含有物を混合使用すると、不純物濃度の増加のため溶融体の粘度が増加し溶融温度の上昇が起こり、その結果製品の回収率に影響を与えるため操業温度を高める必要があることに起因するものである。
【0063】
本発明の方法において、1400℃以上にすると溶融物の流動性が向上し、製品の回収率も向上するため好ましい。
【0064】
本発明の方法は、乾式燐酸肥料として熔燐肥料について述べたが焼成燐肥への適用も十分可能である。
【0065】
次に第二の発明について説明する。
【0066】
工業用精製燐酸に酸化亜鉛を溶解して得られた燐酸亜鉛溶液による化成処理、いわゆるパーカライジング処理を行う自動車車体の塗装前処理工程では、一般的に耐蝕性、塗装密着性、メッキ下地処理等の目的のために、通常10%前後の燐酸亜鉛溶液が使用され、この場合、一般的には浸積処理が採用されている。
【0067】
このパーカライジング工程においては、自動車車体表面に燐酸亜鉛の薄膜が生成し、塗装下地ができるのであるが、一部の燐酸亜鉛の固体が浴液中に析出し、車体表面から溶出した鉄分と燐酸が反応して燐酸鉄の固体が浴液中に生成し浸積槽の中に堆積してくる。
【0068】
この燐酸鉄又は燐酸亜鉛の固体を主成分とする燐酸スラッジは、化成処理槽にそのまま放置しておくと塗装下地面の不良等の製品品質の低下を招くため、常に分離除去しているが、その量は膨大であり現状は産業廃棄物となっている。
【0069】
この燐酸スラッジは、燐酸含有の固体でかつ酸性のため、そのままでは廃棄できないことから、石灰乳等のアルカリで中和処理し、燐酸カルシウム及び金属燐酸塩として燐酸分を不溶性の固体とし、このスラリーをろ過分離し炉液は河川に放流し、固体ケークは埋立処分されている。
【0070】
このパーカライジング処理工程での燐酸スラッジは一般的には、50〜80重量%の水分を含有したウエットケークとして排出されるが、ここでは乾燥状態での主要成分の組成の代表例を表2に示す。
【0071】
【表2】
Figure 0003559856
【0072】
本発明者らは、表2のような廃燐酸塩含有物スラッジを主原料の燐鉱石の代替に使用するに際して、前記の第一の発明で知見した燐酸成分以外の不純物の影響による操作条件及び製品品質の問題点の発生を考慮し検討を進めた。
【0073】
まず燐酸源として該廃燐酸スラッジを用い、廃燐酸スラッジ中のP/原料混合物中のPを、50重量%にして肥料を製造したところ、通常の溶融温度では溶融ガラス化ができず、また溶融物の流動性が異常に悪くなり、さらには製品中のク溶性燐酸のク溶率が通常では98%以上であったものが90%以下にも低下し、熔燐製品が高品質に安定的に製造できなくなる現象を知見した。
【0074】
この現象は、廃燐酸スラッジ中のP/原料混合物中のPを30重量%にした場合も同様であり、すなわち廃燐酸スラッジ中のP/原料混合物中のPを30重量%にし、カルシウム化合物及び還元剤を添加しない場合、通常の原料では1300℃程度で適度な粘性をもつ溶融ガラスが生成し、流動性があるのに対し、1500℃以上にならないと適度な粘性をもつ溶融ガラスが生成しなくなり、また流動性も極めて悪くなり工業的装置では実施できなくなった。
【0075】
そこで、かなりな高温度で得られた製品を分析したところ、製品中の全燐酸分は20%以上であるのに、ク溶率は前記したように80%と大幅な低下を示し保証成分の一つであるク溶性燐酸17%以上の品質規格を満足出来なくなった。
【0076】
そこで本発明者らは廃燐酸スラッジ混合によるク溶率の低下について、さらに検討を進めた結果、廃燐酸スラッジ中のP/原料混合物中のPを50重量%にし、カルシウム化合物を原料混合物に添加して、原料混合物中のCaO/Pのモル比を3〜4にすれば、前記した問題点が解消できることを発見し本発明を完成させたものである。
【0077】
以下にさらに詳しく本発明を説明する。
【0078】
先に述べた問題点であるク溶率の低下に関して、廃燐酸スラッジ中のP/原料混合物中のPを30重量%にし、カルシウム化合物及び還元剤を添加しなかった溶融化合物を分析したところ、アルカリ分の一つであるCaO分は約16%であり、CaO/Pのモル比は2.5であった。そこで、カルシウム化合物として生石灰を添加し、原料混合物中ののCaO/Pのモル比を3及び4に調整して高温溶融しク溶率の変化を調べた結果、80%からそれぞれ96%及び98%とク溶率が向上できることを知見した。
【0079】
さらに、廃燐酸スラッジ中のP/原料混合物中のPを50重量%にした場合でも、原料混合物中にカルシウム化合物を加えて原料混合物中のCaO/Pのモル比を3〜4の範囲になるように調整すれば、熔燐製品のク溶性燐酸17%以上をクリアし、この問題点が解決できることを見出した。
【0080】
これは、熔燐肥料製造時に成分中のCaO源が少ないとクエン酸に未溶解となる成分が生成するためと考えられる。
【0081】
また驚くべきことに、通常の電気炉法による熔燐製造においては、原料中の亜鉛の約50%から60%が製造装置から揮発除去されていたものが、廃燐酸スラッジを混合使用したことにより除去出来なくなり製品中の亜鉛濃度が1%以上になる現象を知見した。この現象は原料混合物中のCaO/Pのモル比の調整では変化しなかった。
【0082】
熔燐製品中の亜鉛濃度は製品品質規格にはないが、公害関係の重金属成分の一つであり、健康関連成分であることを考えると、熔燐肥料として低濃度であることが好ましいと考えられる。
【0083】
そこで亜鉛の除去率の低下原因に関して検討を進めた結果、廃燐酸スラッジを混合したため溶融物の組成割合が変化したこと、廃燐酸スラッジ中の亜鉛含有量が多くなったこと等が問題であると推察されるが、溶融温度1400℃での亜鉛除去率が大きく低下した理由はよく分からない。
【0084】
しかしながら現状の通常条件での亜鉛除去率が50〜60重量%であるという理由は、本質的には溶融体内において亜鉛が金属亜鉛及び酸化亜鉛となり、昇華揮散すると考えられることより、これらの状態が変化し亜鉛除去率が低下したと理解し、本発明者らは、その促進剤として、強力な還元雰囲気を作れば亜鉛除去率が向上すると考え、まず熔燐製品中の廃燐酸スラッジ量をP換算で50重量%とし、還元剤としてコークスを、熔燐製品中のC/Znのモル比で1、10、50、及び100添加し溶融実験を行った結果、各実験の亜鉛除去率はそれぞれ10%、40%、75%、及び95%以上となり、還元剤の添加量とともに著しく亜鉛除去率が向上することを発見した。
【0085】
ここで亜鉛除去率がコークス等の還元剤の添加で大きく向上した理由は、燐鉱石、蛇紋岩、フェロニッケルスラグ及び廃燐酸スラッジの混合では、何らかの理由で亜鉛の還元が抑制されていたものが、高温炉中で炭素がCO及びCOに変化する際の還元作用で亜鉛の存在状態が変化し、除去率が向上したものと推察している。
【0086】
したがって、自動車塗装前処理工程でのパーカライジング処理時に生成する廃燐酸スラッジを乾式燐酸肥料への再資源化を達成する場合では、本願発明のような条件が必須の要件となるものである。
【0087】
すなわち本発明の構成要件の一つは、廃燐酸スラッジ中のP/原料混合物中のPを50重量%以下にすることであるが、操作温度及び流動性に着目すると熱経済性の因子があり、また製品品質に関係するク溶性燐酸や亜鉛のコンタミを考慮すると30重量%以下が好ましく、これにより安定的で経済的でかつ高品質の製品が製造可能となる。
【0088】
また、本発明の構成要件のもう一つは、原料混合物中のCaO/Pのモル比であり、廃燐酸スラッジの混合時点での組成変動は必ずあることよりCaO/Pのモル比を3〜4に保持するために、カルシウム化合物を原料混合物に添加することも必須の要件である。
【0089】
ここでCaO/Pのモル比を3〜4としたのは、この範囲外では前記したように熔燐製造時の溶融温度の上昇及び溶融物の流動性に異常をもたらし、さらには製品品質の保証成分であるク溶性燐酸のク溶率に異常を来すためであるが、本願発明の条件にすると廃燐酸スラッジを混合しない現状の運転操作条件の再現と高純度の製品が安定的に製造できるものである。
【0090】
この理由も明確では無いが、熔燐の主原料である燐鉱石がアパタイトであり一般的にはCaO/Pのモル比が3〜4の範囲であることに関連するものと考えている。
【0091】
ここで添加するカルシウム化合物としては、生石灰、消石灰、又は石灰石の一種以上の化合物を添加すればよく、またその混合方法もとくに制限はないが、原料の混合時にブレンドするのが最も好ましい。
【0092】
さらに還元剤については、コークス、石炭及び活性炭等の炭素質が好ましいが、経済性の観点では特にコークスの使用が実用的で好ましい。
【0093】
この理由は上記炭素系の還元剤であれば、熔燐製造条件が1400℃以上のような高温のため、最終的にはCOガスで揮発し製品品質への影響が無視できるため特に好ましい。
【0094】
還元剤の添加量については、本発明者らの検討では主として亜鉛について検討したが、亜鉛以外の成分としてカドミウム、鉛、砒素等も亜鉛と同様に挙動し、肥料原料中のこれらも同時に除去可能な事から、廃燐酸スラッジ混合原料中の重金属成分の合計モル数に対して、還元剤中の炭素含有モル数の比、すなわち、還元剤中のC/原料混合物中の(Zn+Cd+Pb+As)のモル比が100以上であれば、実質的に亜鉛、カドミウム、鉛、砒素等をほとんど含有しない肥料製品を製造することができる。
【0095】
ここで還元剤添加量はC/(Zn+Cd+Pb+As)のモル比で100程度で良く、100よりも余りに過剰に添加しても製品品質は変化無く、単に炭素源の浪費となるばかりであり無意味である。
【0096】
また、還元剤の添加方法は、これらの還元剤が固体である事より、原料混合時にブレンドするのが最も容易であるが、特に制限はない。
【0097】
さらに、廃燐酸塩含有物の使用においては該廃燐酸スラッジが通常50〜80重量%の含水率で排出されるため、これを直接使用すると、多大なエネルギーコストを必要とする点と共に原料である燐鉱石、蛇紋岩及び廃燐酸ケークの均一混合の操作性が著しく困難になるため、前記本願発明の第一の発明と同様に該廃燐酸塩含有物の水分含有量はあらかじめ乾燥して好ましくは水分1〜10重量%、さらに好ましくは1〜5重量%であるが、最適には、現状の製造工程での水分含有量である3重量%程度が好ましい。
【0098】
現状の熔燐肥料製造の工業的な条件として、溶融温度は1350〜1500℃で実施されており、理論上の溶融温度(1250℃前後)に比べて約100〜200℃高めで操業されている。
【0099】
前記したように、本発明の種々の検討結果で廃燐酸塩含有物を混合使用すると、不純物濃度が増加するため、溶融物の粘度が増加し溶融温度の上昇が起こり、その結果製品の回収率に影響を与えるため操業温度を高める必要があることに起因するものである。
【0100】
本発明の方法において、1400℃以上にすると溶融物の流動性が向上し、製品の回収率も向上するため好ましい。
【0101】
以上のように本発明の方法は、乾式燐酸肥料として熔燐肥料について述べたが焼成燐肥への適用も十分可能である。
【0102】
【実施例】
以下に実施例及び比較例で本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また例中の組成に係わる「%」は、重量基準による。なお本実施例で使用した廃燐酸塩含有物以外の燐鉱石、蛇紋岩、フェロニッケルスラグの主要成分の組成は、表3の通りである。
【0103】
【表3】
Figure 0003559856
【0104】
実施例1
工業用精製燐酸(85%HPO)を希釈して鉄鋼製品の表面処理を行い、老化した廃燐酸を廃液処理工程で石灰乳により中和凝集沈澱処理を行い、得られたスラリーを分離機で濾別し、ろ過後のケークを乾燥機で乾燥した組成は下記の通りであった。
【0105】
42.5%
CaO 35.0%
Fe 12.5%
Others 1.0%
水分 1.0%
この鉄鋼処理廃酸の中和乾燥ケーキを燐鉱石の一部代替原料に混合使用して以下の条件で熔燐肥料を製造した。
【0106】
即ち、燐鉱石(中国雲南省産)10.7g、中和処理乾燥ケーキ8.6g、蛇紋岩3.7g、及びフェロニッケルスラグ10.7gを白金−金合金製ルツボ(白金95%、金5%)に秤りとり良く混合した。このとき、中和処理乾燥ケーキ中のP/原料混合物中のPは、50重量%であった。
【0107】
このルツボをあらかじめ加熱して1450℃とした電気マッフル炉(1700℃max.、2KVA)で30分間加熱溶融した。
【0108】
得られた溶融物を取り出し、冷水中に流し込み急冷水砕後、固体物を回収し80℃で乾燥し乳鉢で粉砕した時の重量は32.8gで熔燐肥料の回収率は98%であった。
【0109】
得られた製品の組成分析をした結果は以下の通りであり、十分製品品質の規格を満足するものであった。
【0110】
ク溶性燐酸 (P) 21.5% (ク溶率 98.5%)
ク溶性苦土 (MgO) 15.6%
アルカリ (CaO) 46.8%
可溶性ケイ酸(SiO) 23.3%
この実施例の溶融時の溶融物の流動性は、非常にスムースで何等問題を認めなかった。
【0111】
実施例2
実施例1において、鉄鋼中和乾燥ケーキを17.3gを使用し、燐鉱石の添加をやめた以外全て実施例1と同一の方法及び条件で熔燐を製造した(中和処理乾燥ケーキ中のP/原料混合物中のPは100重量%)。その結果、製品の回収率は72%であり、得られた製品は以下の通り品質規格を満足するものであった。
【0112】
ク溶性燐酸 (P) 19.5% (ク溶率 95.2%)
ク溶性苦土 (MgO) 13.0%
アルカリ (CaO) 42.3%
可溶性ケイ酸(SiO) 20.1%
実施例3
工業用精製燐酸(85%HPO)を希釈してアルミ製品の表面処理を行い、老化した廃燐酸を廃液処理工程で石灰乳により中和凝集沈澱処理を行い、得られたスラリーを分離機で濾別し、ろ過後のケークを乾燥機で乾燥した組成は以下の通りであった。
【0113】
41.2%
CaO 40.0%
Al 5.7%
Others 0.5%
水分 1.0%
このアルミ処理廃酸の中和乾燥ケーキを燐鉱石の一部代替原料に使用して実施例1と同一の方法及び条件で熔燐肥料を製造した(中和処理乾燥ケーキ中のP/原料混合物中のPは50重量%)。
【0114】
その結果、得られた熔燐製品の回収率は97%であり、製品品質は以下の通りで、熔燐肥料として十分なものであった。
【0115】
ク溶性燐酸 (P) 21.5% (ク溶率 98.8%)
ク溶性苦土 (MgO) 15.6%
アルカリ (CaO) 48.0%
可溶性ケイ酸(SiO) 23.4%
この実施例の溶融時の溶融物の流動性は、非常にスムースで何等問題を認めなかった。
【0116】
実施例4
実施例3において、アルミ処理中和乾燥ケーキを17.4gを使用し、燐鉱石の添加をやめた以外全て実施例3と同一の方法及び条件で熔燐を製造した(中和処理乾燥ケーキ中のP/原料混合物中のPは100重量%)。その結果、製品の回収率は80%であり、得られた製品は以下の通り、品質規格を満足するものであった。
【0117】
ク溶性燐酸 (P) 17.5% (ク溶率 86.1%)
ク溶性苦土 (MgO) 13.0%
アルカリ (CaO) 42.3%
可溶性ケイ酸(SiO) 20.0%
実施例5
自動車塗装前処理であるパーカライジング化成処理工程で発生した産業廃棄物である廃燐酸スラッジを分離し乾燥した主要成分の組成は以下の通りである。
【0118】
35.3%
CaO 0.3%
Fe 24.9%
Al 0.9%
ZnO 7.6%
CdO 0.01%
PbO 0.001%
As 0.001%
MgO 0.09%
SiO 0.36%
NiO 0.1%
Others 0.3%
水分 1.0%
前記各原料及び上記廃燐酸スラッジの乾燥物を用いて、実施例1と同様の実験方法で熔燐製造を行った。
【0119】
原料の混合条件及び溶融条件は、燐鉱石15.1g,廃燐酸スラッジ6.2g、及び生石灰(和光純薬試薬特級品)2.3g、コークス8.4gとした以外実施例1と同一添加量及び方法で行った(廃燐酸スラッジ中のP/原料混合物中のPは30重量%)。なお、溶融時のルツボは高アルミナルツボを使用した。
【0120】
ここで生石灰の添加は、原料混合物中のCaO/Pのモル比を2.5から3.5に調整するためのものである。またコークスの添加は、亜鉛除去率の向上のためのものであり、原料混合物中のC/(Zn+Cd+Pd+As)のモル比で100になるよう添加した。
【0121】
その結果、得られた熔燐製品の回収率は98%であり、製品品質は以下の通りで、熔燐肥料として十分なものであった。
【0122】
ク溶性燐酸(P) 20.1% (ク溶率 99.2%)
ク溶性苦土(MgO) 14.7%
アルカリ (CaO) 47.1%
可溶性ケイ酸(SiO) 22.0%
亜鉛(Zn) 0.02%
この実施例の溶融時の溶融物の流動性は、非常にスムースで何等問題を認めなかった。
【0123】
実施例6
実施例5において、廃燐酸スラッジを10.6g、燐鉱石を10.1g使用し、生石灰4.2g、コークス14.0gを添加した以外全て実施例5と同一の方法及び条件で熔燐を製造した(廃燐酸スラッジ中のP/原料混合物中のPは50重量%、原料混合物中のC/(Zn+Cd+Pd+As)のモル比は100)。その結果、製品の回収率は78%であり、得られた製品の品質は以下の通りで、品質規格を満足するものであった。
【0124】
ク溶性燐酸(P) 17.6% (ク溶率 96.2%)
ク溶性苦土 (MgO) 13.3%
アルカリ (CaO) 43.9%
可溶性ケイ酸(SiO) 20.0%
亜鉛(Zn) 0.03%
比較例1
実施例5において、生石灰及びコークスの添加を省いた以外全て実施例5と同じ条件、方法で熔燐製造テストを行った(廃燐酸スラッジ中のP/原料混合物中のPは30重量%)。
【0125】
その結果、加熱溶融物の流動性が悪くなり、製品回収率は65%で、得られた製品の品質も下表のように製品規格を完全に満足しなかった。また、製品中の亜鉛濃度も1.5%と非常に高かった。
【0126】
ク溶性燐酸(P) 16.5% (ク溶率 81.5%)
ク溶性苦土 (MgO) 13.0%
アルカリ (CaO) 34.6%
可溶性ケイ酸(SiO) 19.7%
比較例2
実施例5において、廃燐酸スラッジを12.2g、燐鉱石を8.4g使用し、生石灰5.2g、コークス16.8gを添加した以外全て実施例5と同一の方法及び条件で熔燐を製造した(廃燐酸スラッジ中のP/原料混合物中のPは60重量%)。その結果、加熱溶融物の流動性が悪くなり、製品の回収率が73%と低下した。また得られた製品の品質も品質規格を十分に満足することができなくなった。
【0127】
ク溶性燐酸(P) 16.6% (ク溶率 94.1%)
ク溶性苦土 (MgO) 13.0%
アルカリ (CaO) 42.7%
可溶性ケイ酸(SiO) 18.9%
亜鉛(Zn) 0.03%
参考例1〜4
実施例5の条件及び方法において、還元剤のコークスの添加量を下表のように変化させた以外すべて実施例5と同一として熔燐製造テストを行い、亜鉛の除去率の変化を調べた。
【0128】
その結果を表4にまとめて示す。
【0129】
【表4】
Figure 0003559856
【0130】
【発明の効果】
以上の説明から明かなように、本発明によれば、
▲1▼金属表面処理分野で使用されていた大部分の燐酸成分の再資源化が可能となり、資源の浪費が解消できる。(資源リサイクルの達成)
▲2▼金属表面処理分野の産業廃棄物が大幅に低減できる。(環境保全の達成)
▲3▼肥料製造工業での資源確保と同時に製造コストの低減が可能となる。
▲4▼廃棄物処理コストの低減が可能となり、競争力が備わる。
▲5▼新規な設備投資が不要で経済的な方法である。
等の効果が期待できる。

Claims (12)

  1. 燐鉱石、シリカ、及びアルカリ金属化合物、又はアルカリ土類金属化合物を含む原料混合物を、高温溶融又は高温焼成した後急冷水砕し、乾式燐酸肥料を製造する方法において、燐源である燐鉱石の代替原料として金属表面処理工程での廃燐酸塩含有物を用いることを特徴とする廃燐酸塩含有物より乾式燐酸肥料を製造する方法。
  2. 廃燐酸塩含有物が鉄鋼又はアルミニウムの金属化成処理工程で老化した廃燐酸又は廃燐酸塩溶液をアルカリで中和処理し、ろ過分離された燐酸塩含有ケークであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 廃燐酸塩含有物中のP/原料混合物中のPを50重量%以下にすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
  4. 乾式燐酸肥料が熔成苦土燐肥又は焼成燐肥であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の方法。
  5. 乾式燐酸肥料を製造する際の反応温度が1400℃以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれかに記載の方法。
  6. 燐鉱石、シリカ、及びアルカリ金属化合物、又はアルカリ土類金属化合物を含む原料混合物を高温溶融又は高温焼成した後、急冷水砕し、乾式燐酸肥料を製造する方法において、
    (1)燐源である燐鉱石の代替原料として燐酸亜鉛溶液による化成処理時に生成した廃燐酸スラッジを用い、廃燐酸スラッジ中のP/原料混合物中のPを50重量%以下にし、
    (2)カルシウム化合物を原料混合物に添加し、原料混合物中のCaO/Pのモル比を3〜4にすることを特徴とする廃燐酸塩含有物より乾式燐酸肥料を製造する方法。
  7. カルシウム化合物が生石灰、消石灰、又は石灰石の1種以上からなることを特徴とする請求項6に記載の方法。
  8. 還元剤を原料混合物に添加することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の方法。
  9. 還元剤がコークス、石炭、又は活性炭の1種以上からなることを特徴とする請求項8に記載の方法。
  10. 還元剤中のC/原料混合物中の(Zn+Cd+Pb+As)のモル比が、100以上であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
  11. 乾式燐酸肥料が熔成苦土燐肥又は焼成燐肥であることを特徴とする請求項6乃至10のいずれかに記載の方法。
  12. 乾式燐酸肥料を製造する際の反応温度が1400℃以上であることを特徴とする請求項6乃至請求項11のいずれかに記載の方法。
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