JP3558033B2 - 廃棄物のガス化溶融炉およびガス化溶融方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般廃棄物および産業廃棄物(以下、これらを区別せず、単に廃棄物ともいう)に含まれる有機物をガス化して燃料として使用できるガス(以下、エネルギーガスという)を回収し、または、さらに、これら廃棄物に含まれる低沸点重金属類をダストとして回収するとともに、これら廃棄物に含まれる灰分と有価金属類(以下、単に金属類ともいう)をそれぞれ溶融スラグと溶融金属として回収する廃棄物のガス化溶融炉およびガス化溶融方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
都市ごみを主体とする一般廃棄物、および廃棄された自動車や家電製品のシュレッダーダストを主体とする産業廃棄物の処理方法として、埋立て処分ないしは焼却後埋立て処分する方法が採られている。しかし、最近の埋立て処分地の確保が極めて困難であるという逼迫した状況の下にあって、これまで一般的に採用されている焼却方式が見直されてきている。
【0003】
また、廃棄物をそのまま埋立て処分ないしは焼却後埋立て処分するのではなく、一旦減容固形化した廃棄物、すなわち、一般的にRDF(Refuse Derived Fuel :廃棄物に由来する燃料を意味する)と呼ばれる固形燃料にした後、焼却する方法も開発され、一部では実用化されている。この方式による廃棄物処理システムとしては、例えば、(株)日本リサイクルマネジメントによるTC−システム、(株)荏原製作所によるJ−カトレルシステム、あるいは三重県におけるリサイクルエネルギーセンター構想等があげられる(第6回「ごみ固形燃料化技術に関するセミナー」講演要旨集、平成8年6月28日(環境計画センター))。
【0004】
一方、有限資源愛護の見地からみると、これら廃棄物あるいはRDFを単に焼却するのではなく、再生利用可能なものは資源(有用物質)あるいはエネルギー(熱エネルギー)として回収することが望ましい。現在、実用化されている例として次のようなものがあげられる。
1.物質回収
▲1▼金属(アルミ缶、スチール缶など)の分別回収
▲2▼プラスチック(PETボトルなど)の分別回収
▲3▼古紙(新聞紙など)の分別回収
2.物質転換回収
▲1▼プラスチックの熱分解油化による燃料油としての回収
▲2▼プラスチックの熱分解ガス化による燃料ガスとしての回収
3.熱エネルギー回収
▲1▼廃棄物焼却時の蒸気回収
上記の1は廃棄物に至る手前の事前処理方法であるため、分別後の廃棄物からの有用物質の回収は上記の2あるいは3の手段に頼らざるをえない。特に最近は、生活様式の変化(多様化)によって、一般廃棄物および産業廃棄物には様々な物質が含まれるため、各種の廃棄物に柔軟に対応することができ、かつ経済性のよいガス化方式が脚光を浴びてきている。
【0005】
このガス化方式としては、次のようなものがあげられる。
A.新日鐵のコークスベッド方式直接溶融システム
(「鉄鋼界報」No.1674,1996.3.21(日本鉄鋼連盟)、「燃料及燃焼」第61巻,第8号(1994)572〜578頁、および特公平7−35889号公報参照)
溶融炉本体は単段羽口の竪型シャフト炉であり、炉中央部から廃棄物とともにコークスと石灰石が投入される。炉内は上部から予熱・乾燥帯(約300℃)、熱分解帯(300〜1000℃)および燃焼・溶融帯(1700〜1800℃)に区分される。予熱・乾燥帯では廃棄物が加熱され水分が蒸発する。乾燥された廃棄物は次第に降下し、熱分解帯に移行して有機物はガス化する。この発生ガスは、炉上部から排出され、後段の燃焼室で完全に燃焼し、廃熱ボイラー等の熱回収システムにより熱エネルギーの回収が図られる。
【0006】
一方、ガス化された残りの灰分と無機物はコークスとともに燃焼・溶融帯に降下する。コークスは羽口から供給される空気により燃焼し、その熱によって灰分と無機物が完全に溶融する。溶融物は投入された石灰石によって適度な粘度および塩基度に調整され、出湯口から炉外へ排出される。
【0007】
なお、コークスを節減するために、コークスと廃棄物の装入系統を別個にして排ガスの顕熱を廃棄物の乾燥および予熱に利用し、炉の熱効率を上げる方法が開示されている(前記特公平7−35889号公報)。
B.NKKの高温ガス化直接溶融システム
(「鉄鋼界報」No.1674,1996.3.21(日本鉄鋼連盟))
溶融炉本体は、高さ方向に3段階に区分された羽口を有する竪型炉であり、1000℃程度の高温に維持された廃棄物の乾留物で形成される流動層に、コークス等の補助燃料とともに廃棄物が直接投入される。中段の羽口(2段羽口)から流動層内に送風することにより、生成ガスの一部が燃焼して温度が維持される。
【0008】
不燃物を含む乾留物は、補助燃料とともに炉下部の移動層に降下し、下段の羽口(主羽口)からの酸素富化空気により高温燃焼・ガス化し、不燃物および灰分が溶融、滴下して比重差によりメタルと分離される。一方、フリーボード下部に設置した羽口(3段羽口)からの送風によりフリーボード温度が常に1000℃以上に保たれ、タール分の発生、ダイオキシン類およびその前駆体の生成が防止される。
C.Thermoselect方式
(Thermoselect(1995.5.26),PART1”Foundation for the continuos conversions of solid waste”)
この方式で用いられる炉は、廃棄物中の水分の蒸発と有機物の熱分解を行うプレス加圧式管型熱分解器と、酸素による熱分解残渣(チャー)の燃焼、灰の溶融およびガスの改質を行う燃焼溶融炉とが一体に連結された熱分解溶融炉である。燃焼溶融炉の内部では、まず、熱分解器からの有機物の分解ガスが炉の中間部に導かれ、一方、チャーは炉底部に降下し、酸素によって高温で燃焼して灰が溶融するとともに、炉上部の高温雰囲気下で有機物分解ガスのCOおよびH2 への転換(ガスの改質)が進行する。
しかしながら、上記従来の方式には次のような問題がある。
すなわち、上記の方式Aのシステムの竪型シャフト炉は高価なコークスを必須とし、生成ガスを完全燃焼させるのでその顕熱しか回収できない。また、この方式では、炉上部の予熱・乾燥帯温度が約300℃程度であるので、充分分解しきれないタール等の炭化水素やダイオキシン類が多量に炉外に排出される。さらに、低沸点の重金属類が十分にガス化されずに溶融スラグ中に残留するので、このスラグを還元するためにコークスが必須となる。
方式Bのシステムの竪型炉も、方式Aの場合と同様に高価なコークスを必須としている。これは、低沸点の重金属類が十分にガス化されずに溶融スラグ中に残留するので、このスラグを還元するためである。さらに、フリーボードを常に1000℃以上に保つために、大きなフリーボードを必要とし、炉の大型化が避けられない。
方式Cで用いられる炉は、2つの反応器(炉)が一体に連結されているとはいいながら、実際上は明らかに熱分解炉と燃焼溶融炉の2炉に分離されている。したがって、構造的に複雑であり、設備コストが高くなる。また、熱分解炉は燃焼溶融炉とは分離された間接加熱型の炉であるため、燃焼溶融炉の排ガス顕熱が充分利用されない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、埋立て処分地の問題に関連して、廃棄物中の可燃分、灰分および鉄分などを有効利用し、埋立てに係わる費用の低減を図るとともに、生成する副生ガスを発電用燃料等に活用するためになされたものである。
すなわち、本発明の課題は、一般廃棄物および産業廃棄物を単に焼却するのではなく、廃棄物中に含まれる有機物をガス化してエネルギーガスとして回収するとともに、廃棄物中に含まれる灰分と鉄(Fe)および銅(Cu)等の有価金属類を、それぞれ溶融スラグと溶融金属として回収し、または、さらに廃棄物中に含まれる水銀(Hg)、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)等の有害な低沸点重金属類をダストとして回収する方法、およびそのための炉を提供することにある。具体的には、上記の従来技術における問題を解決し、高価なコークスを使用せずに、廃棄物のガス化溶融、脱水・熱分解およびガスの改質の一連の工程を1炉で実施し、かつタールやダイオキシン等が含まれない清浄な排ガスとすることができるガス化溶融炉およびガス化溶融方法を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記(1)の廃棄物のガス化溶融炉、ならびに(2)のガス化溶融方法にある。
(1)廃棄物を燃焼させ、廃棄物中の有機物をガス化してエネルギーガスとして回収し、かつ廃棄物中の低沸点重金属類をガス化してエネルギーガスに随伴されるダストとして回収するとともに、廃棄物中の灰分と金属類を溶融物として回収する竪型の廃棄物のガス化溶融炉であって、上部に前記廃棄物を装入する廃棄物装入口と、生成するガスおよびダストを排出するガス排出口ならびにこのガス排出口にガス排出ダクトを介して接続されたダスト回収手段を有し、下部に溶融スラグおよび溶融金属の排出口を有し、前記ガス排出口と溶融スラグおよび溶融金属の排出口との間に、それぞれ独立して支燃性ガスおよび補助燃料を吹き込むことができる羽口であって、廃棄物の脱水・熱分解により生成する炭化物を燃焼、ガス化するための羽口を含む高さ方向に少なくとも1段の羽口を有し、かつ炉の上部に炉内に向けて昇降可能な支燃性ガスおよび補助燃料を吹き込むことができる上吹ランスを有し、さらに、前記装入された廃棄物のレベルを計測する手段、中段の羽口近傍の温度を計測する手段、および炉の上方部の雰囲気ガスの温度を計測する手段を有することを特徴とする廃棄物のガス化溶融炉。
(2)上記(1)に記載の廃棄物のガス化溶融炉を用いて行う廃棄物のガス化溶融方法であって、廃棄物装入口から炉内へ装入した廃棄物を、下記の各ゾーンでの反応により、COとH2 を主成分とするエネルギーガスおよび低沸点重金属類を含むダストと、溶融スラグおよび溶融金属とし、前者を炉上部に設けられたガス排出口から回収してエネルギーガスとダストに分離し、後者を炉下部に設けられた溶融スラグおよび溶融金属の排出口から回収することを特徴とする廃棄物のガス化溶融方法。
〔第1ゾーン〕
支燃性ガスと必要に応じて補助燃料を下段の羽口から吹き込み、第2ゾーンで生成した炭化物を燃焼、ガス化して還元性ガスを発生させるとともに炭化物に含まれる灰分と金属類を溶融し、溶融スラグおよび溶融金属とする。
〔第2ゾーン〕
支燃性ガスと必要に応じて補助燃料を中段の羽口および/または上吹ランスから吹き込み、第1ゾーンで発生した還元性ガスを二次燃焼させ、廃棄物装入口から装入された廃棄物を脱水加熱して炭化物と炭化水素ガスに熱分解するとともに、低沸点重金属類をガス化する。
なお、前記(1)の「複数段に分かれた羽口」の「複数段」とは、実用的には3段であるが、必ずしも3段に限定されず、補助的に設けられた羽口を含め、4段以上であってもよい。
【0011】
前記(2)の「ゾーン」とは、後述するが、炉内における領域であって、そこで生じる反応に応じて第1ゾーン、第2ゾーンおよび第3ゾーンと称する。
【0012】
前記(1)の「低沸点重金属類」とは、水銀(Hg)、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)の他、1200℃以下あるいはその近辺の温度において高い蒸気圧を有する砒素(As)、亜鉛(Zn)等の金属、ならびにそれら金属の塩化物、すなわちHgCl2 、CdCl2 、PbCl2 、ZnCl2 等、あるいはそれら金属の酸化物、すなわちHgO、CdO、PbO、ZnO等、あるいはそれら金属の硫化物、すなわちHgS、CdS、PbS、ZnS等の環境上有害と指定されている元素ならびにその化合物を指す。
【0013】
また、前記(1)の「金属類」とは、前記のように有価金属類を指し、例えば、鉄(Fe)、銅(Cu)の他、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)等の金属、およびその酸化物であって、回収すれば一般的に価値有るものとして評価されるものをいう。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、図に基づいて本発明(上記(1)〜(2)の発明)を詳細に説明する。
図1は、上記(1)の発明の廃棄物のガス化溶融炉の一例の構成を示す概略縦断面図である。
【0015】
図示するように、廃棄物ガス化溶融炉1は、上部に廃棄物を装入するための廃棄物装入口11−1と生成するエネルギーガスおよびエネルギーガスに随伴されるダストを排出するためのガス排出口3−1を有している。廃棄物装入口11−1には、ホッパー11−2およびプッシャー10が取り付けられ、また、ガス排出口3−1には、エネルギーガスおよびダスト(図では排ガス4と表示)を回収するためのホットサイクロン(ダスト回収手段)25がガス排出ダクト3−2を介してが取り付けられている。エネルギーガスおよびダストはホットサイクロン25を通過してエネルギーガス26とダスト27に分離される。なお、ダスト回収手段としては、ホットサイクロンが安価であって経済性に優れ好適であるが、他に、バグフィルター等の除塵装置を用いてもよい。
【0016】
炉下部には溶融スラグおよび溶融金属13を排出するためのスラグ排出口9が設けられている。
【0017】
ガス排出口3−1と溶融スラグおよび溶融金属の排出口9の間には、それぞれ独立して支燃性ガスおよび補助燃料を吹き込むことができる高さ方向に3段に分かれた羽口が設けられている。これは炉の下方から順に、廃棄物を脱水加熱し、熱分解させることにより生成する炭化物を主体とする充填層14に支燃性ガス7−1および補助燃料6−1を吹き込むための羽口(下段の羽口で、以下、「1次羽口5−1」という)と、装入された状態の廃棄物を主体とする充填層15に支燃性ガス7−2および補助燃料6−2を吹き込むための羽口(中段の羽口で、以下、「2次羽口5−2」という)と、フリーボード16に支燃性ガス7−3および補助燃料6−3を吹き込むための羽口(上段の羽口で、以下、「3次羽口5−3」という)である。なお、支燃性ガスとは、純酸素、または酸素を含有するガスであり、補助燃料とは、微粉炭等の固体燃料、重油等の液体燃料、天然ガス等の気体燃料である。また、廃棄物を主体とする充填層15は、溶融スラグと溶融金属の粘度を下げてスムーズに炉下部の排出口9から排出すべく廃棄物と同時に石灰石を装入するため、一部石灰石が混在したものである。
【0018】
さらに、この廃棄物ガス化溶融炉1の上部には、支燃性ガスと必要に応じて補助燃料を吹き込むことができる上吹ランス24−1と、このランス24−1を昇降させるためのランス昇降装置24−2が設けられている。
上記のガス化溶融炉では、廃棄物装入口11−1が2次羽口5−2と3次羽口5−3の間に取り付けられているが、この位置に限定されることはなく、前記の図1に示したガス化溶融炉の場合のように、3次羽口5−3の上に取り付けられていてもよい。ただ、この例のように2次羽口5−2と3次羽口5−3の間に取り付けられている方が、第3ゾーンで改質した後のクリーンなガスが落下してくる廃棄物と衝突し合うことがなく、クリーンガスの汚染や廃棄物の飛散が少ないので、望ましい。
また、この例では、ガス排出口3−1と溶融スラグおよび溶融金属の排出口9の間に3段に分かれた羽口が設けられているが、この羽口は、廃棄物が脱水加熱され熱分解して生成した炭化物を燃焼、ガス化するための羽口、すなわち、炉内の第1ゾーンに取り付けられた1次羽口を含めて少なくとも1段設けられていればよい。1段とした場合は上記の上吹ランス24−1を用いるが、これについては、後述する実施例で説明する。
【0019】
さらに、このガス化溶融炉においては、炉上部に、炉内に装入された廃棄物のレベル(原料層頂レベル)を計測するためのサウンジングデバイス17が設けられている。また、炉側壁には、中段の羽口(2次羽口5−2)近傍の温度を計測するための熱電対20と、炉の上方部の雰囲気ガスの温度(すなわち、フリーボード空間の排ガス温度)を計測するための熱電対21、ならびにそれら熱電対の信号を温度に変換する温度変換器19が取り付けられている。なお、中段の羽口(2次羽口5−2)近傍の温度とは、2次羽口5−2に対応する第2ゾーンの温度をいう。
このガス化溶融炉において、羽口を炉の高さ方向に3段に分けて設けた理由、サウンジングデバイス17を設け、さらに、炉側壁の所定の部位に熱電対を取り付けた理由については、以下に述べる前記(2)の発明の廃棄物のガス化溶融方法と併せて説明する。
【0020】
上記のように、このガス化溶融炉は、竪型の、1炉方式のガス化溶融炉で、設備の簡素化と設備費の低減を図ることができ、また、炉体からの熱損失を抑制する上からも好ましい方式である。さらに、このガス化溶融炉を用いれば、以下に述べるように、廃棄物中に含まれる水銀(Hg)、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)等の有害な低沸点重金属類をダストとして回収することができる。
(2)の発明の廃棄物のガス化溶融方法は、上記(1)の発明のガス化溶融炉を用いて行う廃棄物のガス化溶融方法である。以下、上記の図1に示したガス化溶融炉を用いる場合について説明する。
【0021】
まず、廃棄物をホッパー11−2に投入し、プッシャー10で押し込んで廃棄物装入口11−1から炉内へ装入する。次いで、以下に詳述する第1ゾーン〜第3ゾーンでの反応により、COとH2 を主成分とするエネルギーガスを回収するのであるが、このとき、低沸点重金属類を含むダストをエネルギーガスとともに炉上部に設けられたガス排出口3−1から回収する。また、得られる溶融スラグおよび溶融金属を炉下部に設けられた溶融スラグおよび溶融金属の排出口9から回収する。
炉内は、生じる反応に応じて三つの領域、すなわち、炉下部から順に炭化物のガス化、溶融が生じる領域(第1ゾーン14)、廃棄物の脱水・熱分解と低沸点重金属類のガス化が生じる領域(第2ゾーン15)およびガスの改質が進行する領域であってこのガスに随伴させて炉外に排出させる低沸点重金属類を含むダストが存在する領域(第3ゾーン16)に分割されている(図1参照)。その各々のゾーンに、反応のために必要な支燃性ガスおよび補助燃料を独立して吹き込める上記の1次羽口5−1、2次羽口5−2、3次羽口5−3がそれぞれ対応して取り付けられ、さらに、上吹ランス24−1が取り付けられている。このような構成を採ることによって、廃棄物に含まれる有機物を効率的にガス化して燃料として使用できるエネルギーガスを回収し、さらにこれら廃棄物に含まれる低沸点重金属類を効率的にダストとして回収するとともに、これら廃棄物に含まれる灰分と有価金属類を効率的にそれぞれ溶融スラグと溶融金属として回収することが可能となる。また、竪型炉に特有の棚吊りや吹き抜けの発生を回避することができる。
【0022】
第1ゾーンでは、下記の▲1▼式で示した反応が生じる。この反応は、第2ゾーンで形成され、降下してきた炭化物(充填層)が1次羽口5−1から吹き込まれた支燃性ガス7−1により燃焼する反応で、炭化物は燃焼、ガス化し、2000℃以上の高温のCOを主体とする還元性ガスとなる。また、その顕熱で炭化物に含有されている灰分(無機酸化物)と有価金属類が溶融し、溶融スラグと溶融金属となる。なお、必要により1次羽口5−1から補助燃料6−1を供給する。
【0023】
前記の還元性ガスは第2ゾーンに移行し、溶融スラグと溶融金属は炉下部の排出口9から回収される。
C+1/2O2 =CO ・・・▲1▼
ここで、C :第2ゾーンから供給される炭化物
O2 :1次羽口から吹き込まれた支燃性ガス中の酸素
なお、第2ゾーンで廃棄物を脱水・熱分解することにより炭化物の充填層とし、第1ゾーンでこの炭化物をガス化、溶融するのは、このように2段に分ける方が炭化物の加熱促進、溶融スラグおよび溶融金属からの放熱ロスの抑制を効果的に行えるからである。
【0024】
この第1ゾーンでは、生成する還元性ガスの顕熱で炭化物に含有されている灰分と有価金属類を完全に溶融することが必要であるため、ガスの温度を2000℃以上に保つのが好ましい。そのために、支燃性ガス中の酸素濃度を50%以上とし、必要であれば補助燃料を吹き込む。また、溶融スラグと溶融金属を炉下部の排出口から詰まり等を生じさせず円滑に排出させるために、廃棄物の炉内への装入時に炉上から石灰石を同時に装入するか、あるいは1次羽口から粉状の石灰石を造滓材として吹き込み、スラグの粘度を下げるのが好ましい。
第2ゾーンでは、下記の▲2▼式〜▲5▼式で示した反応が生じるが、さらに、後述するように、廃棄物中に含まれる塩素のガス化、および低沸点重金属類のガス化ないしは塩素との反応が生じる。
H2 O(liq )=H2 O(gas ) ・・・▲2▼
Cp Hq Or =r/2CO2 +q/nCm Hn+(p−r/2−qm/n)C ・・・▲3▼
Cm Hn =n/4CH4 +{m−(n/4)}C ・・・▲4▼
CO+1/2O2 =CO2 ・・・▲5▼
ここで、H2 O(liq ):廃棄物中の付着水分
Cp Hq Or :廃棄物中の有機物
Cm Hn :廃棄物中の有機物の分解で生じた炭化水素ガス
C :第1ゾーンに供給される炭化物
CO:第1ゾーンで炭化物が燃焼して生成したCO
O2 :2次羽口および/または上吹ランスから吹き込まれた支燃性ガス中の酸素
▲2▼式の反応は、廃棄物の脱水加熱で、第1ゾーンから供給された高温の還元性ガスの顕熱により行われる。また、この還元性ガスが、2次羽口5−2から吹き込まれた支燃性ガス7−2および/または上吹ランス24−1から吹き込まれた支燃性ガス22により▲5▼の反応式にしたがって二次燃焼するときに生成する顕熱によっても行われる。これにより、廃棄物中の有機物は▲3▼式および▲4▼式にしたがい炭化物(ただし、▲3▼式、▲4▼式ではCとして表示)と炭化水素ガスに熱分解する。なお、必要により2次羽口および/または上吹ランスから補助燃料を供給する。
【0025】
支燃性ガスの吹き込みは、2次羽口のみまたは上吹ランスのみを用いて行ってもよく、それによって▲2▼式の廃棄物の脱水加熱は可能である。しかし、2次羽口および上吹ランスを同時に使用すれば、支燃性ガスを第2ゾーンに万遍なく均一に吹き込めるので、廃棄物の脱水加熱を効率的に行わせることができる。
【0026】
この工程で得られる炭化物は第1ゾーンへ、炭化水素ガスは第3ゾーンへそれぞれ移行する。
【0027】
第2ゾーンでは、さらに、第1ゾーンから供給された高温の還元性ガスの顕熱により、あるいはそれに加えて、▲5▼の反応式にしたがって二次燃焼するときに生成する顕熱により下記の▲8▼−1式〜▲9▼−3式で示した反応が生じる。前述した廃棄物中に含まれる塩素のガス化および低沸点重金属のガス化ないしは塩素との反応である。すなわち、廃棄物中に含まれる塩素は、▲8▼−1および▲8▼−2式のようにガス化して、塩素ガスおよび塩化水素ガスを生成する。一方、廃棄物中の低沸点重金属は、▲9▼−1式により単体のままでガス化するか、あるいは▲9▼−2および▲9▼−3式のように低沸点重金属の塩化物を生成する。なお、塩化物になると、一般的に非常に蒸発し易くなる。
2Cl=Cl2(gas ) ・・・▲8▼−1
2Cl+H2 O(gas )=2HCl(gas ) ・・・▲8▼−2
M=M(gas ) ・・・▲9▼−1
M(gas )+Cl2(gas )=MCl2(gas ) ・・・▲9▼−2
M(gas )+2HCl(gas )=MCl2(gas )+H2 ・・・▲9▼−3
ここで、Cl:廃棄物中の塩素
M:廃棄物中の低沸点重金属(例えば、Hg、Cd、Pb等)
M(gas ):低沸点重金属のガス化生成物
MCl2(gas ):低沸点重金属の塩化物
この工程では、炉内へ装入する廃棄物に必要に応じて副原料(例えば、石灰石、生石灰等)を加えて充填層を形成させておく。つまり、廃棄物が比較的密に充填された状態としておく。このような廃棄物の充填層とすることにより、その層内を高温のガスが通過する際の固・気体間の接触時間が長くなり、熱効率が向上する。
【0028】
また、高温の還元性ガスを二次燃焼させるのは、▲5▼式の二次燃焼熱を利用して加熱を促進し、有機物の熱分解温度を800〜1400℃に制御するとともに、低沸点重金属をガス化するためである。
【0029】
熱分解温度を800〜1400℃とするのは、有機物の熱分解によるガス化を促進し、低沸点重金属のガス化を完全に行わせるためである。この二次燃焼熱は、前記▲1▼式の燃焼熱(一次燃焼熱)に比べて格段に大きいので、廃棄物の脱水・熱分解および低沸点重金属のガス化に必要な熱を十分に補充することができる。なお、この際、発生ガス量を少なくして顕熱ロスを抑制するとともに、発生ガスのカロリー低下を抑制するため、支燃性ガス中の酸素濃度を50%以上にするのが好ましい。また、発生ガス量を少なくすると、廃棄物の飛散を防止してダストに含まれる低沸点重金属の濃度を高めることができるので、そのためにも、支燃性ガス中の酸素濃度を50%以上にするのが好ましい。
第3ゾーンでは、下記の▲6▼式および▲7▼式で示した反応が生じる。
Cm Hn +m/2O2 =mCO+n/2H2 ・・・▲6▼
CH4 +1/2O2 =CO+2H2 ・・・▲7▼
ここで、Cm Hn :第2ゾーンで廃棄物が熱分解して生成した炭化水素ガス
CH4 :第2ゾーンでCm Hn が熱分解して生成したメタンガス
O2 :3次羽口および/または上吹ランスから吹き込まれた支燃性ガス中の酸素
これらの反応は第2ゾーンから供給される炭化水素ガスの熱分解反応(ガス改質反応)で、COとH2 を主成分とするガス(エネルギーガス)が得られる。これらの反応は3次羽口5−3から吹き込まれる支燃性ガス7−3および/または上吹ランス24−1から吹き込まれる支燃性ガス22との反応により進行する。なお、必要により3次羽口および/または上吹ランスから補助燃料を供給する。
【0030】
支燃性ガスの吹き込みは、3次羽口のみまたは上吹ランスのみを用いて行ってもよく、それによって上記の▲6▼式および▲7▼式で示した反応を生じさせることは可能である。しかし、3次羽口および上吹ランスを同時に使用すれば、支燃性ガスを第3ゾーンのフリーボードに万遍なく均一に吹き込めるので、▲6▼式および▲7▼式で示した反応を効率的に行わせることができる。
【0031】
この第3ゾーンでの反応はフリーボード16部で行われるが、このような空洞部で反応を行わせる理由は、気体間の反応であるガス改質反応を円滑に進めるためである。空洞内の雰囲気温度を800〜1400℃に制御すると、改質反応が充分に進行するので好ましい。さらに望ましくは、1000〜1200℃である。
【0032】
また、ダイオキシン類やその前駆体といわれるクロロベンゼン、クロロフェノール等の生成を抑制するという観点からは、雰囲気温度は500℃以上とするのが好ましく、さらに、ダイオキシン類やクロロベンゼン、クロロフェノール等を完全に分解するために、900℃以上とするのが一層望ましい。
【0033】
支燃性ガス中の酸素濃度は50%以上とするのが好ましい。これは、回収されるガスのカロリーを高めて次工程の発電等の用途に利用し易くするためである。上述した例では、各ゾーンに対応する3段の羽口と上吹ランスが設けられたガス化溶融炉を用いているが、前記のように、羽口は少なくとも1段設けられていればよい。第2ゾーンおよび第3ゾーンへの支燃性ガスおよび補助燃焼の供給は上吹ランスにより行えるので、第1ゾーンに対応する部位に1段の羽口が取り付けられていればよいからである。
【0034】
以上述べたように、(2)の発明の廃棄物のガス化溶融方法では、上記第1ゾーン〜第3ゾーンでの反応により、COとH2 を主成分とするエネルギーガスおよび低沸点重金属類を含むダストと、溶融スラグおよび溶融金属を回収する。そのため、少なくとも1段の羽口および上吹ランスが必要となる。
さらに、少なくとも1段の羽口および上吹ランスがそれぞれ独立して支燃性ガスおよび補助燃料を吹き込むことができるものでなければならない。その理由は、以下のとおりである。なお、羽口は各ゾーンに取り付けられているとして説明する。
【0035】
▲1▼式の反応に関与するC(炭化物)の量は、▲3▼式および▲4▼式で表される反応の進行度合いによって変化する。また、廃棄物の種類が変化すれば、自ずと▲3▼式および▲4▼式で表される反応の生成物量も変化する。したがって、1次羽口から吹き込む支燃性ガスの量は他の工程とは独立して定め得るものとしておかなければならない。必要に応じて供給する補助燃料についても同様である。
次に、2次羽口および/または上吹ランスから吹き込む支燃性ガス量は、反応式▲5▼で決まり、▲5▼式のCO量は反応式▲1▼で決まってくるので、見掛け上1次羽口から吹き込む支燃性ガス量と連動していると見なされる。しかし、実際は反応式▲1▼で生成するCOガスをすべて2次燃焼させる必要はなく、第2ゾーンでは、少なくとも廃棄物中の付着水分の脱水加熱および廃棄物中の有機物の熱分解と、低沸点重金属のガス化に必要な熱を加え、さらに第2ゾーンの雰囲気温度を800〜1400℃に保つために必要な熱を加えるだけでよい。したがって、2次羽口および/または上吹ランスからの支燃性ガス量は、廃棄物に含まれる成分によって大きく変化する。すなわち、2次羽口および/または上吹ランスから吹き込む支燃性ガスの量も独自に定め得るものとしておかなければならない。補助燃料についても同様である。
【0036】
2次羽口および上吹ランスから吹き込む支燃性ガスまたは補助燃料の比率は、それぞれ次式の範囲とするのが好ましい。この範囲から外れ、一方が少な過ぎても多過ぎても相乗効果を発揮させることができないからである。
【0037】
【数1】
3次羽口および/または上吹ランスから吹き込む支燃性ガス量は反応式▲6▼および▲7▼で決まる。この場合も廃棄物中の含有成分によってCm Hn とCH4 の生成量が変化するので、3次羽口および/または上吹ランスから吹き込む支燃性ガス量についても独自に定め得るものとしておかなければならない。なお、補助燃料についても同様である。
【0038】
3次羽口および上吹ランスから吹き込む支燃性ガスまたは補助燃料の比率は、上記の2次羽口および上吹ランスの場合と同様、それぞれ次式の範囲とするのが好ましい。この範囲から外れ、一方が少な過ぎても多過ぎても相乗効果を発揮させることができないからである。
【0039】
【数2】
支燃性ガスの吹き込み量と必要により供給する補助燃料の量は以下のようにして定める。
【0040】
処理の対象が例えば異種の廃棄物が混在した一般廃棄物のような場合、通常は炉内に装入する前に成分分析を行うことはしないので、炉内では未知の成分が燃焼し、あるいは熱分解することになり、生成ガス量およびその含有成分を予測することは実際上不可能である。
【0041】
このような条件下では、装入した廃棄物のレベル(原料層頂レベル)を逐次計測する。これによって、炉内の充填層(廃棄物の充填層および炭化物の充填層)の厚みの変化を間接的に把握することができる。すなわち、第1ゾーンで形成される炭化物の充填層は燃焼量が多いほど荷下がりが進み、原料層頂レベルが下がる。したがって、事前に経験的に所定の原料層頂レベルを決めておき、その後の原料層頂レベルの上下変動に基づいて1次羽口からの支燃性ガスと、必要により供給する補助燃料の吹き込み量を決定すればよい。なお、使用する原料層頂レベル計としては、製鉄分野の高炉内部の原料層頂レベル計として知られているサウンジングデバイスが好適であるが、RI(ラジオアイソトープ)方式等も一般的に有効な方法として知られており、この方式を適用することもできる。
ところで、第1ゾーンで形成される炭化物の充填層の上には、第2ゾーンで形成される廃棄物の充填層が存在するので、計測される原料層頂レベルは、第1ゾーンと第2ゾーンにおけるそれぞれの変化量の合計として表れる。したがって、第1ゾーンと第2ゾーンにおける変化量を区別する必要があるが、第2ゾーンにおける反応の変化は、第2ゾーンの温度変化を逐次計測することにより間接的に把握できる。すなわち、第2ゾーンでは、少なくとも廃棄物中の付着水分の脱水加熱、廃棄物中の有機物の熱分解および低沸点重金属のガス化に必要な熱を加え、さらに第2ゾーンの雰囲気温度を800〜1400℃に保つために必要な熱を加えるだけでよいので、第2ゾーンの領域内にある廃棄物の温度変化を逐次計測し、それが低下すれば熱不足と判断し、2次羽口および/または上吹ランスからの支燃性ガス量を増加して2次燃焼させるCO量(反応式▲1▼で生成するCOのうち2次燃焼させる量)を上げてやる。逆に、温度が上昇すれば熱的に余裕があると判断できるので、2次羽口および/または上吹ランスからの支燃性ガス量を減少させて2次燃焼させるCO量を下げてやればよい。なお、前記の廃棄物の温度変化は第2ゾーンの温度変化をもってそれとみなすことができ、第2ゾーンの温度変化は、例えば、第2ゾーンの内張り煉瓦表面に熱電対を設置し、その表面温度を測定することにより求めることができる。
【0042】
このように、原料層頂レベル計によるレベル値および第2ゾーンの内張り煉瓦の表面温度を逐次計測することにより、第1ゾーンおよび第2ゾーンの支燃性ガスと必要により供給する補助燃料の吹き込み量をそれぞれ独自に決定することができる。
第3ゾーンでは、第2ゾーン出口(フリーボード側)の雰囲気温度を800〜1400℃に保てば、排ガス中の炭化水素、特に配管閉塞等のトラブルの原因となるタールのような炭素数が5以上の炭化水素(Cm Hn :m ≧5)をすべて分解できる。またダイオキシン類やその前駆体といわれるクロロベンゼン、クロロフェノール等の完全分解のために必要である。したがって、第3ゾーンのフリーボード空間内に温度計を設置してその温度を逐次計測し、温度が800℃よりも低下したときは、3次羽口および/または上吹ランスから支燃性ガスと必要によっては補助燃料を吹き込めばよい。特に、廃棄物を炉内に装入した直後は、第2ゾーンの原料層頂および第3ゾーンのフリーボードにおける温度が急激に下がるので、第2ゾーンおよび第3ゾーンの温度から判断して、生成する炭化水素(Cm Hn :m ≧5)やダイオキシン類を分解するために、支燃性ガスと必要により補助燃料の吹き込みを実施するのが効果的である。
上記(4)の発明のガス化溶融方法によれば、高価なコークスを使用せずに、廃棄物のガス化溶融、脱水・熱分解およびガス改質の一連の工程を1炉で実施し、かつタールやダイオキシン類等が含まれない清浄な排ガスとすることができる。なお、排ガス中には低沸点重金属を含むダストが含まれているが、炉外に設けたホットサイクロン等の除塵装置(ダスト回収手段)によって、それらダストとエネルギーガスとを分離することができる。
【0043】
ホットサイクロンでも捕集困難な微細ダストの捕集には、水による洗浄処理が効果的である。ホットサイクロンあるいは水処理によって分離回収されたダストは低沸点重金属類を含むので、アルカリあるいは酸による処理工程を経て濃縮することが可能である。これらホットサイクロンによる処理ならびに水による洗浄処理については、公知の技術が適用できる。
【0044】
【実施例】
(実施例1)
前記の図1に示した構成を有する竪型炉(ガス化溶融炉)を用い、1次羽口〜3次羽口と上吹ランスを同時に使用し、廃棄物のガス化溶融試験を行った。なお、竪型炉の各部の寸法、羽口その他取り付け部品の数量およびそれらの配置は以下のとおりである。
寸法 炉径:0.5m(但し、煉瓦内張り後の炉内径)
炉高:2.0m(但し、煉瓦内張り後の炉底から炉頂までの高さ)
炉底から1次羽口までの高さ:0.3m
炉底から2次羽口までの高さ:0.6m
炉底から3次羽口までの高さ:1.6m
上吹ランス外径:50mmφ
上吹ランス孔:
中心孔:微粉炭+キャリアガス吹き込み用
1孔×3φ×0度(=鉛直方向)
側孔:酸素+窒素ガス吹き込み用
3孔×5φ×10度(=鉛直方向に対して10度傾斜)
但し側孔は中心孔の周囲に120度間隔に配置
炉底からランス先端までの高さ:標準1.8m(但し上下に可変)
第2ゾーンの熱電対の位置 :0.9m
(第2ゾーンの熱電対の位置とは、第2ゾーンの内張り煉瓦の
表面に取り付けられた熱電対の炉底からの高さをいう)
第3ゾーンの熱電対の位置 :1.1m
(第3ゾーンの熱電対の位置とは、フリーボード空間内に取り
付けられた熱電対の炉底からの高さをいう)
数量 1次羽口:3個
2次羽口:3個
3次羽口:3個
上吹ランス:1個
溶融スラグおよび溶融金属の排出口:1個
サウンジングデバイス(原料層頂レベル計):1個
第2ゾーンの熱電対:3個
第3ゾーンの熱電対:3個
配置 1次羽口:周方向に120度毎の等間隔
2次羽口:周方向に120度毎の等間隔
3次羽口:周方向に120度毎の等間隔
上吹ランス:炉中心
溶融スラグおよび溶融金属の排出口:炉底端
サウンジングデバイス:上吹ランスと側壁との間
第2ゾーンの熱電対:周方向に120度毎の等間隔
第3ゾーンの熱電対:周方向に120度毎の等間隔
上記の試験に使用した廃棄物は一般的な3種類の都市ごみ(試料4、5および6とする)で、それぞれ乾燥度合いが異なるため、廃棄物1kg当たり3408kcal、2518kcalおよび1628kcalの湿量基準低位発熱量を有するものである。
表1にこれらの廃棄物の組成を示す。なお、廃棄物の寸法は10〜100mmであった。
【0045】
【表1】
使用した副原料(石灰石)および補助燃料(微粉炭)は実施例1で用いたものと同一で、それぞれ表2および表3に示した組成を有する。なお、石灰石は、10〜50mmの塊状のものであり、また、微粉炭は、事前に乾燥された1mm以下の粉状のものであった。
【0046】
【表2】
【表3】
1次羽口、2次羽口、3次羽口および上吹ランスから吹き込んだ支燃性ガスは、酸素をベースとし、これに窒素を若干混合したガスである。それらの流量(酸素および窒素それぞれの流量)を表4に示した。なお、表中で、1次とは1次羽口を意味する。2次、3次についても同様である。
【0047】
【表4】
表4はこの試験の実施条件(定常状態)を示すもので、試料4、5および6のそれぞれについて下記の(1)〜(8)の手順にしたがって定めた。なお、試験においては、最初、試料4を炉内へ装入してこの表4の試料4の欄に示した条件で処理を行い、次いで、試料5に変更して同じく試料5の欄に示した条件で処理を行い、さらに試料6に変更して試料6の欄に示した条件で処理を行った。それぞれの試料の処理時間は24時間で、その間の廃棄物の処理量は、各試料とも1トン(合計3トン)とした。
(処理条件の設定手順)
(1)最初に装入する廃棄物(ここでは、試料4を指す)の組成をあらかじめ分析することにより求めた。これはベースとなる酸素吹き込み量の概略値を決めるため、また、造滓材として投入する石灰石量を決めるためにも必要である。なお、石灰石量は、溶融スラグの流動性が最もよいと考えられるスラグ塩基度(すなわち、1.0)になるように調整した。
(2)ガス化溶融炉をあらかじめバーナー等で加熱し、羽口から吹き込む支燃性ガスが加熱していない常温のガスでも廃棄物が着火する状態にした。
(3)廃棄物を炉内に装入し、サウンジング高さ0.9〜1.1mまで積み上げた。
(4)1次羽口から徐々に酸素ガスを流した後、溶融スラグおよび溶融金属の排出口を開けた。
(5)試験中、廃棄物の燃焼に伴い原料層頂レベルが下がったので、そのレベルを0.9〜1.1mの範囲に維持するように原料(廃棄物および石灰石)を逐次投入した。定常状態では、廃棄物の投入速度は常に40kg/hに設定した。
(6)第2ゾーンの内張り煉瓦の表面に取り付けられた熱電対、および第3ゾーンのフリーボード空間に取り付けられた熱電対により測定される温度が常に800〜1400℃を維持するように、1次羽口、2次羽口、3次羽口および上吹ランスから吹き込む酸素ガス量を調整した。
【0048】
すなわち、荷下がり速度が速く、かつ第2ゾーンおよび第3ゾーンの領域の温度が1400℃を超えた場合には、1次羽口からの酸素ガスを減少させた。逆に第2ゾーンの温度が800℃より低い場合には、2次羽口および上吹ランスからの酸素ガス吹き込みを行った。また、第3ゾーンの温度が800℃より低い場合には、3次羽口および上吹ランスからの酸素ガス吹き込みを行った。
(7)溶融スラグおよび溶融金属の温度を測定し、所定の温度の1400〜1600℃より低下した場合には、1次羽口からの微粉炭吹き込みを行った。試料6がそれに該当するケースで、廃棄物自身の発熱量が小さい場合には、1次羽口からの補助燃料の供給が必要となった。またそれに伴い、2次羽口および上吹ランスからも微粉炭吹き込みを行った。
(8)上記の(5)から(7)を繰り返し行うことによって最適な支燃性ガスおよび補助燃料の吹き込み量(すなわち、表4の条件の欄に示した量)を導き出すことができた。ここで窒素は酸素の約1/10の量として吹き込んだが、酸素濃度≧50%であれば、充分に的確に対応することができた。また、試料を変更(試料4から試料5へ、および試料5から試料6へ変更)した場合においても、的確に対応することができた。
【0049】
以上の試験で得られた結果(実績)を表5に示す。単位は廃棄物トン当たりの量である。
表示したように、ダイオキシン類をほとんど含まないCOとH2 を主成分とする高カロリーのエネルギーガス(表中では、排ガスと表示)と、水銀、カドミウムおよび鉛等の低沸点重金属類が濃縮されたダストを回収することができた。なお、エネルギーガスとダストは、ガス排出口からダクトを経て炉外に排出させた後、ホットサイクロンで分離回収した。
【0050】
また、排ガス中の炭化水素、特に配管閉塞を引き起こす原因とされるCm Hn ( m≧5)のような炭化水素は全く無視できる濃度であった。さらに、排ガス中の塩化水素は、ガス化溶融炉内の各ゾーンの温度を実施例1の場合より高めてガス化を促進しているため高濃度であったが、この程度の濃度ならば、公知の技術(例えば、排ガスの水処理)で充分除去できるので、プロセス上の問題はない。
【0051】
また、鉄および銅等の有価金属類を主成分とする溶融金属と溶融スラグを回収することができた。溶融金属と溶融スラグは、スラグ排出口から炉外に排出させた後、金属分とスラグ分に分離回収した。
【0052】
第1ゾーン〜第3ゾーンの羽口と上吹ランスを同時に使用したこの実施例2では、ガス化溶融炉内の各ゾーンに支燃性ガスを万遍なく均一に吹き込むことができたので、後述する実施例2および3と比較して、下記の項目について優位性が認められた。
【0053】
▲1▼酸素消費量の低減
▲2▼補助燃料(微粉炭)消費量の低減
▲3▼ダスト量の低減
▲4▼ダスト中の低沸点重金属類の濃縮
▲5▼エネルギーガス中のダイオキシン類および炭化水素ガスの低減
【0054】
【表5】
(実施例2)
実施例1で用いた炉と同じ竪型炉(ガス化溶融炉)、および同じ3種類の廃棄物(試料4、5および6)を用い、1次羽口と上吹ランスのみを使用して廃棄物のガス化溶融試験を行った。
【0055】
試験の実施条件を表6に、試験結果(実績)を表7に示す。単位は廃棄物トン当たりの量である。
表示したように、ダイオキシン類をほとんど含まないCOとH2 を主成分とする高カロリーのエネルギーガス(表中では、排ガスと表示)と、水銀、カドミウムおよび鉛等の低沸点重金属類が濃縮されたダストを回収することができた。なお、エネルギーガスとダストは、ガス排出口から炉外に排出させた後、ホットサイクロンを経て分離回収した。
【0056】
また、排ガス中の炭化水素、特に配管閉塞を引き起こす原因とされるCm Hn ( m≧5)のような炭化水素は無視できる濃度であった。さらに、排ガス中の塩化水素は、ガス化溶融炉内の各ゾーンの温度を高めてガス化を促進しているため高濃度であったが、公知の排ガス処理技術で充分除去できるので、プロセス上の問題はない。
【0057】
また、鉄および銅等の有価金属類を主成分とする溶融金属および溶融スラグを回収することができた。溶融金属と溶融スラグは、スラグ排出口から炉外に排出させた後、金属分とスラグ分に分離回収した。
【0058】
上吹ランスを使用したこの実施例3では、ガス化溶融炉内の各ゾーンに支燃性ガスを比較的均一に吹き込むことができたので、次に述べる実施例4(上吹ランスを使用しない場合)と比較して、実施例2のランスの末尾に挙げた▲1▼〜▲5▼の項目について優位性が認められた。
【0059】
【表6】
【表7】
(実施例3)
実施例1で用いた炉と同じ竪型炉(ガス化溶融炉)、および同じ3種類の廃棄物(試料4、5および6)を用い、上吹ランスを用いず、1次羽口〜3次羽口のみを使用して廃棄物のガス化溶融試験を行った。
【0060】
試験の実施条件を表8に、試験結果(実績)を表9に示す。単位は廃棄物トン当たりの量である。
表示したように、ダイオキシン類をほとんど含まないCOとH2 を主成分とする高カロリーのエネルギーガス(表中では、排ガスと表示)と、水銀、カドミウムおよび鉛等の低沸点重金属類が濃縮されたダストを回収することができた。なお、エネルギーガスとダストは、ガス排出口から炉外に排出させた後、ホットサイクロンを経て分離回収した。
【0061】
また、排ガス中の炭化水素、特に配管閉塞を引き起こす原因とされるCm Hn ( m≧5)のような炭化水素は無視できる濃度であった。さらに、排ガス中の塩化水素は、ガス化溶融炉内の各ゾーンの温度を高めてガス化を促進しているため高濃度であったが、公知の排ガス処理技術で充分除去できるので、プロセス上の問題はない。
【0062】
また、鉄および銅等の有価金属類を主成分とする溶融金属および溶融スラグを回収することができた。溶融金属と溶融スラグは、スラグ排出口から炉外に排出させた後、金属分とスラグ分に分離回収した。
【0063】
【表8】
【表9】
【発明の効果】
本発明のガス化溶融炉を用い、本発明の方法にしたがって廃棄物の焼却を行えば、廃棄物中に含まれる有機物をガス化してエネルギーガスとして回収するとともに、廃棄物中に含まれる灰分と金属類をそれぞれ溶融スラグと溶融金属として回収することができる。これによって、現在問題となっている一般廃棄物および産業廃棄物の埋め立て費用の低減を図り、生成する副生ガスを発電用燃料等に活用することが可能である。
【0064】
また、ガス化溶融炉内の反応温度を高めると、ガス化を促進し、低沸点重金属類の回収も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の廃棄物のガス化溶融炉の他の例の構成を示す概略縦断面図である。
【符号の説明】
1:ガス化溶融炉本体
2:耐火れんが
3−1:ガス排出口
3−2:ガス排出ダクト
4:排ガス
5−1:1次羽口
5−2:2次羽口
5−3:3次羽口
6−1:1次羽口に吹き込む補助燃料
6−2:2次羽口に吹き込む補助燃料
6−3:3次羽口に吹き込む補助燃料
7−1:1次羽口に吹き込む支燃性ガス
7−2:2次羽口に吹き込む支燃性ガス
7−3:3次羽口に吹き込む支燃性ガス
8:溶融スラグおよび溶融金属の流れ
9:溶融スラグおよび溶融金属の排出口
10:プッシャー
11−1:廃棄物装入口
11−2:ホッパー
12:廃棄物
13:溶融スラグおよび溶融金属
14:炭化物を主体とする充填層
15:廃棄物を主体とする充填層
16:フリーボード
17:サウンジングデバイス(原料層頂レベル計)
19:温度変換器(熱電対の信号を温度に変換する装置)
20:第2ゾーンの内張り煉瓦表面に備えられた熱電対
21:第3ゾーンのフリーボード空間に備えられた熱電対
22:支燃性ガス
23:補助燃料
24−1:上吹ランス
24−2:ランス昇降装置
25:ホットサイクロン
26:エネルギーガス
27:ダスト
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般廃棄物および産業廃棄物(以下、これらを区別せず、単に廃棄物ともいう)に含まれる有機物をガス化して燃料として使用できるガス(以下、エネルギーガスという)を回収し、または、さらに、これら廃棄物に含まれる低沸点重金属類をダストとして回収するとともに、これら廃棄物に含まれる灰分と有価金属類(以下、単に金属類ともいう)をそれぞれ溶融スラグと溶融金属として回収する廃棄物のガス化溶融炉およびガス化溶融方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
都市ごみを主体とする一般廃棄物、および廃棄された自動車や家電製品のシュレッダーダストを主体とする産業廃棄物の処理方法として、埋立て処分ないしは焼却後埋立て処分する方法が採られている。しかし、最近の埋立て処分地の確保が極めて困難であるという逼迫した状況の下にあって、これまで一般的に採用されている焼却方式が見直されてきている。
【0003】
また、廃棄物をそのまま埋立て処分ないしは焼却後埋立て処分するのではなく、一旦減容固形化した廃棄物、すなわち、一般的にRDF(Refuse Derived Fuel :廃棄物に由来する燃料を意味する)と呼ばれる固形燃料にした後、焼却する方法も開発され、一部では実用化されている。この方式による廃棄物処理システムとしては、例えば、(株)日本リサイクルマネジメントによるTC−システム、(株)荏原製作所によるJ−カトレルシステム、あるいは三重県におけるリサイクルエネルギーセンター構想等があげられる(第6回「ごみ固形燃料化技術に関するセミナー」講演要旨集、平成8年6月28日(環境計画センター))。
【0004】
一方、有限資源愛護の見地からみると、これら廃棄物あるいはRDFを単に焼却するのではなく、再生利用可能なものは資源(有用物質)あるいはエネルギー(熱エネルギー)として回収することが望ましい。現在、実用化されている例として次のようなものがあげられる。
1.物質回収
▲1▼金属(アルミ缶、スチール缶など)の分別回収
▲2▼プラスチック(PETボトルなど)の分別回収
▲3▼古紙(新聞紙など)の分別回収
2.物質転換回収
▲1▼プラスチックの熱分解油化による燃料油としての回収
▲2▼プラスチックの熱分解ガス化による燃料ガスとしての回収
3.熱エネルギー回収
▲1▼廃棄物焼却時の蒸気回収
上記の1は廃棄物に至る手前の事前処理方法であるため、分別後の廃棄物からの有用物質の回収は上記の2あるいは3の手段に頼らざるをえない。特に最近は、生活様式の変化(多様化)によって、一般廃棄物および産業廃棄物には様々な物質が含まれるため、各種の廃棄物に柔軟に対応することができ、かつ経済性のよいガス化方式が脚光を浴びてきている。
【0005】
このガス化方式としては、次のようなものがあげられる。
A.新日鐵のコークスベッド方式直接溶融システム
(「鉄鋼界報」No.1674,1996.3.21(日本鉄鋼連盟)、「燃料及燃焼」第61巻,第8号(1994)572〜578頁、および特公平7−35889号公報参照)
溶融炉本体は単段羽口の竪型シャフト炉であり、炉中央部から廃棄物とともにコークスと石灰石が投入される。炉内は上部から予熱・乾燥帯(約300℃)、熱分解帯(300〜1000℃)および燃焼・溶融帯(1700〜1800℃)に区分される。予熱・乾燥帯では廃棄物が加熱され水分が蒸発する。乾燥された廃棄物は次第に降下し、熱分解帯に移行して有機物はガス化する。この発生ガスは、炉上部から排出され、後段の燃焼室で完全に燃焼し、廃熱ボイラー等の熱回収システムにより熱エネルギーの回収が図られる。
【0006】
一方、ガス化された残りの灰分と無機物はコークスとともに燃焼・溶融帯に降下する。コークスは羽口から供給される空気により燃焼し、その熱によって灰分と無機物が完全に溶融する。溶融物は投入された石灰石によって適度な粘度および塩基度に調整され、出湯口から炉外へ排出される。
【0007】
なお、コークスを節減するために、コークスと廃棄物の装入系統を別個にして排ガスの顕熱を廃棄物の乾燥および予熱に利用し、炉の熱効率を上げる方法が開示されている(前記特公平7−35889号公報)。
B.NKKの高温ガス化直接溶融システム
(「鉄鋼界報」No.1674,1996.3.21(日本鉄鋼連盟))
溶融炉本体は、高さ方向に3段階に区分された羽口を有する竪型炉であり、1000℃程度の高温に維持された廃棄物の乾留物で形成される流動層に、コークス等の補助燃料とともに廃棄物が直接投入される。中段の羽口(2段羽口)から流動層内に送風することにより、生成ガスの一部が燃焼して温度が維持される。
【0008】
不燃物を含む乾留物は、補助燃料とともに炉下部の移動層に降下し、下段の羽口(主羽口)からの酸素富化空気により高温燃焼・ガス化し、不燃物および灰分が溶融、滴下して比重差によりメタルと分離される。一方、フリーボード下部に設置した羽口(3段羽口)からの送風によりフリーボード温度が常に1000℃以上に保たれ、タール分の発生、ダイオキシン類およびその前駆体の生成が防止される。
C.Thermoselect方式
(Thermoselect(1995.5.26),PART1”Foundation for the continuos conversions of solid waste”)
この方式で用いられる炉は、廃棄物中の水分の蒸発と有機物の熱分解を行うプレス加圧式管型熱分解器と、酸素による熱分解残渣(チャー)の燃焼、灰の溶融およびガスの改質を行う燃焼溶融炉とが一体に連結された熱分解溶融炉である。燃焼溶融炉の内部では、まず、熱分解器からの有機物の分解ガスが炉の中間部に導かれ、一方、チャーは炉底部に降下し、酸素によって高温で燃焼して灰が溶融するとともに、炉上部の高温雰囲気下で有機物分解ガスのCOおよびH2 への転換(ガスの改質)が進行する。
しかしながら、上記従来の方式には次のような問題がある。
すなわち、上記の方式Aのシステムの竪型シャフト炉は高価なコークスを必須とし、生成ガスを完全燃焼させるのでその顕熱しか回収できない。また、この方式では、炉上部の予熱・乾燥帯温度が約300℃程度であるので、充分分解しきれないタール等の炭化水素やダイオキシン類が多量に炉外に排出される。さらに、低沸点の重金属類が十分にガス化されずに溶融スラグ中に残留するので、このスラグを還元するためにコークスが必須となる。
方式Bのシステムの竪型炉も、方式Aの場合と同様に高価なコークスを必須としている。これは、低沸点の重金属類が十分にガス化されずに溶融スラグ中に残留するので、このスラグを還元するためである。さらに、フリーボードを常に1000℃以上に保つために、大きなフリーボードを必要とし、炉の大型化が避けられない。
方式Cで用いられる炉は、2つの反応器(炉)が一体に連結されているとはいいながら、実際上は明らかに熱分解炉と燃焼溶融炉の2炉に分離されている。したがって、構造的に複雑であり、設備コストが高くなる。また、熱分解炉は燃焼溶融炉とは分離された間接加熱型の炉であるため、燃焼溶融炉の排ガス顕熱が充分利用されない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、埋立て処分地の問題に関連して、廃棄物中の可燃分、灰分および鉄分などを有効利用し、埋立てに係わる費用の低減を図るとともに、生成する副生ガスを発電用燃料等に活用するためになされたものである。
すなわち、本発明の課題は、一般廃棄物および産業廃棄物を単に焼却するのではなく、廃棄物中に含まれる有機物をガス化してエネルギーガスとして回収するとともに、廃棄物中に含まれる灰分と鉄(Fe)および銅(Cu)等の有価金属類を、それぞれ溶融スラグと溶融金属として回収し、または、さらに廃棄物中に含まれる水銀(Hg)、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)等の有害な低沸点重金属類をダストとして回収する方法、およびそのための炉を提供することにある。具体的には、上記の従来技術における問題を解決し、高価なコークスを使用せずに、廃棄物のガス化溶融、脱水・熱分解およびガスの改質の一連の工程を1炉で実施し、かつタールやダイオキシン等が含まれない清浄な排ガスとすることができるガス化溶融炉およびガス化溶融方法を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記(1)の廃棄物のガス化溶融炉、ならびに(2)のガス化溶融方法にある。
(1)廃棄物を燃焼させ、廃棄物中の有機物をガス化してエネルギーガスとして回収し、かつ廃棄物中の低沸点重金属類をガス化してエネルギーガスに随伴されるダストとして回収するとともに、廃棄物中の灰分と金属類を溶融物として回収する竪型の廃棄物のガス化溶融炉であって、上部に前記廃棄物を装入する廃棄物装入口と、生成するガスおよびダストを排出するガス排出口ならびにこのガス排出口にガス排出ダクトを介して接続されたダスト回収手段を有し、下部に溶融スラグおよび溶融金属の排出口を有し、前記ガス排出口と溶融スラグおよび溶融金属の排出口との間に、それぞれ独立して支燃性ガスおよび補助燃料を吹き込むことができる羽口であって、廃棄物の脱水・熱分解により生成する炭化物を燃焼、ガス化するための羽口を含む高さ方向に少なくとも1段の羽口を有し、かつ炉の上部に炉内に向けて昇降可能な支燃性ガスおよび補助燃料を吹き込むことができる上吹ランスを有し、さらに、前記装入された廃棄物のレベルを計測する手段、中段の羽口近傍の温度を計測する手段、および炉の上方部の雰囲気ガスの温度を計測する手段を有することを特徴とする廃棄物のガス化溶融炉。
(2)上記(1)に記載の廃棄物のガス化溶融炉を用いて行う廃棄物のガス化溶融方法であって、廃棄物装入口から炉内へ装入した廃棄物を、下記の各ゾーンでの反応により、COとH2 を主成分とするエネルギーガスおよび低沸点重金属類を含むダストと、溶融スラグおよび溶融金属とし、前者を炉上部に設けられたガス排出口から回収してエネルギーガスとダストに分離し、後者を炉下部に設けられた溶融スラグおよび溶融金属の排出口から回収することを特徴とする廃棄物のガス化溶融方法。
〔第1ゾーン〕
支燃性ガスと必要に応じて補助燃料を下段の羽口から吹き込み、第2ゾーンで生成した炭化物を燃焼、ガス化して還元性ガスを発生させるとともに炭化物に含まれる灰分と金属類を溶融し、溶融スラグおよび溶融金属とする。
〔第2ゾーン〕
支燃性ガスと必要に応じて補助燃料を中段の羽口および/または上吹ランスから吹き込み、第1ゾーンで発生した還元性ガスを二次燃焼させ、廃棄物装入口から装入された廃棄物を脱水加熱して炭化物と炭化水素ガスに熱分解するとともに、低沸点重金属類をガス化する。
なお、前記(1)の「複数段に分かれた羽口」の「複数段」とは、実用的には3段であるが、必ずしも3段に限定されず、補助的に設けられた羽口を含め、4段以上であってもよい。
【0011】
前記(2)の「ゾーン」とは、後述するが、炉内における領域であって、そこで生じる反応に応じて第1ゾーン、第2ゾーンおよび第3ゾーンと称する。
【0012】
前記(1)の「低沸点重金属類」とは、水銀(Hg)、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)の他、1200℃以下あるいはその近辺の温度において高い蒸気圧を有する砒素(As)、亜鉛(Zn)等の金属、ならびにそれら金属の塩化物、すなわちHgCl2 、CdCl2 、PbCl2 、ZnCl2 等、あるいはそれら金属の酸化物、すなわちHgO、CdO、PbO、ZnO等、あるいはそれら金属の硫化物、すなわちHgS、CdS、PbS、ZnS等の環境上有害と指定されている元素ならびにその化合物を指す。
【0013】
また、前記(1)の「金属類」とは、前記のように有価金属類を指し、例えば、鉄(Fe)、銅(Cu)の他、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)等の金属、およびその酸化物であって、回収すれば一般的に価値有るものとして評価されるものをいう。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、図に基づいて本発明(上記(1)〜(2)の発明)を詳細に説明する。
図1は、上記(1)の発明の廃棄物のガス化溶融炉の一例の構成を示す概略縦断面図である。
【0015】
図示するように、廃棄物ガス化溶融炉1は、上部に廃棄物を装入するための廃棄物装入口11−1と生成するエネルギーガスおよびエネルギーガスに随伴されるダストを排出するためのガス排出口3−1を有している。廃棄物装入口11−1には、ホッパー11−2およびプッシャー10が取り付けられ、また、ガス排出口3−1には、エネルギーガスおよびダスト(図では排ガス4と表示)を回収するためのホットサイクロン(ダスト回収手段)25がガス排出ダクト3−2を介してが取り付けられている。エネルギーガスおよびダストはホットサイクロン25を通過してエネルギーガス26とダスト27に分離される。なお、ダスト回収手段としては、ホットサイクロンが安価であって経済性に優れ好適であるが、他に、バグフィルター等の除塵装置を用いてもよい。
【0016】
炉下部には溶融スラグおよび溶融金属13を排出するためのスラグ排出口9が設けられている。
【0017】
ガス排出口3−1と溶融スラグおよび溶融金属の排出口9の間には、それぞれ独立して支燃性ガスおよび補助燃料を吹き込むことができる高さ方向に3段に分かれた羽口が設けられている。これは炉の下方から順に、廃棄物を脱水加熱し、熱分解させることにより生成する炭化物を主体とする充填層14に支燃性ガス7−1および補助燃料6−1を吹き込むための羽口(下段の羽口で、以下、「1次羽口5−1」という)と、装入された状態の廃棄物を主体とする充填層15に支燃性ガス7−2および補助燃料6−2を吹き込むための羽口(中段の羽口で、以下、「2次羽口5−2」という)と、フリーボード16に支燃性ガス7−3および補助燃料6−3を吹き込むための羽口(上段の羽口で、以下、「3次羽口5−3」という)である。なお、支燃性ガスとは、純酸素、または酸素を含有するガスであり、補助燃料とは、微粉炭等の固体燃料、重油等の液体燃料、天然ガス等の気体燃料である。また、廃棄物を主体とする充填層15は、溶融スラグと溶融金属の粘度を下げてスムーズに炉下部の排出口9から排出すべく廃棄物と同時に石灰石を装入するため、一部石灰石が混在したものである。
【0018】
さらに、この廃棄物ガス化溶融炉1の上部には、支燃性ガスと必要に応じて補助燃料を吹き込むことができる上吹ランス24−1と、このランス24−1を昇降させるためのランス昇降装置24−2が設けられている。
上記のガス化溶融炉では、廃棄物装入口11−1が2次羽口5−2と3次羽口5−3の間に取り付けられているが、この位置に限定されることはなく、前記の図1に示したガス化溶融炉の場合のように、3次羽口5−3の上に取り付けられていてもよい。ただ、この例のように2次羽口5−2と3次羽口5−3の間に取り付けられている方が、第3ゾーンで改質した後のクリーンなガスが落下してくる廃棄物と衝突し合うことがなく、クリーンガスの汚染や廃棄物の飛散が少ないので、望ましい。
また、この例では、ガス排出口3−1と溶融スラグおよび溶融金属の排出口9の間に3段に分かれた羽口が設けられているが、この羽口は、廃棄物が脱水加熱され熱分解して生成した炭化物を燃焼、ガス化するための羽口、すなわち、炉内の第1ゾーンに取り付けられた1次羽口を含めて少なくとも1段設けられていればよい。1段とした場合は上記の上吹ランス24−1を用いるが、これについては、後述する実施例で説明する。
【0019】
さらに、このガス化溶融炉においては、炉上部に、炉内に装入された廃棄物のレベル(原料層頂レベル)を計測するためのサウンジングデバイス17が設けられている。また、炉側壁には、中段の羽口(2次羽口5−2)近傍の温度を計測するための熱電対20と、炉の上方部の雰囲気ガスの温度(すなわち、フリーボード空間の排ガス温度)を計測するための熱電対21、ならびにそれら熱電対の信号を温度に変換する温度変換器19が取り付けられている。なお、中段の羽口(2次羽口5−2)近傍の温度とは、2次羽口5−2に対応する第2ゾーンの温度をいう。
このガス化溶融炉において、羽口を炉の高さ方向に3段に分けて設けた理由、サウンジングデバイス17を設け、さらに、炉側壁の所定の部位に熱電対を取り付けた理由については、以下に述べる前記(2)の発明の廃棄物のガス化溶融方法と併せて説明する。
【0020】
上記のように、このガス化溶融炉は、竪型の、1炉方式のガス化溶融炉で、設備の簡素化と設備費の低減を図ることができ、また、炉体からの熱損失を抑制する上からも好ましい方式である。さらに、このガス化溶融炉を用いれば、以下に述べるように、廃棄物中に含まれる水銀(Hg)、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)等の有害な低沸点重金属類をダストとして回収することができる。
(2)の発明の廃棄物のガス化溶融方法は、上記(1)の発明のガス化溶融炉を用いて行う廃棄物のガス化溶融方法である。以下、上記の図1に示したガス化溶融炉を用いる場合について説明する。
【0021】
まず、廃棄物をホッパー11−2に投入し、プッシャー10で押し込んで廃棄物装入口11−1から炉内へ装入する。次いで、以下に詳述する第1ゾーン〜第3ゾーンでの反応により、COとH2 を主成分とするエネルギーガスを回収するのであるが、このとき、低沸点重金属類を含むダストをエネルギーガスとともに炉上部に設けられたガス排出口3−1から回収する。また、得られる溶融スラグおよび溶融金属を炉下部に設けられた溶融スラグおよび溶融金属の排出口9から回収する。
炉内は、生じる反応に応じて三つの領域、すなわち、炉下部から順に炭化物のガス化、溶融が生じる領域(第1ゾーン14)、廃棄物の脱水・熱分解と低沸点重金属類のガス化が生じる領域(第2ゾーン15)およびガスの改質が進行する領域であってこのガスに随伴させて炉外に排出させる低沸点重金属類を含むダストが存在する領域(第3ゾーン16)に分割されている(図1参照)。その各々のゾーンに、反応のために必要な支燃性ガスおよび補助燃料を独立して吹き込める上記の1次羽口5−1、2次羽口5−2、3次羽口5−3がそれぞれ対応して取り付けられ、さらに、上吹ランス24−1が取り付けられている。このような構成を採ることによって、廃棄物に含まれる有機物を効率的にガス化して燃料として使用できるエネルギーガスを回収し、さらにこれら廃棄物に含まれる低沸点重金属類を効率的にダストとして回収するとともに、これら廃棄物に含まれる灰分と有価金属類を効率的にそれぞれ溶融スラグと溶融金属として回収することが可能となる。また、竪型炉に特有の棚吊りや吹き抜けの発生を回避することができる。
【0022】
第1ゾーンでは、下記の▲1▼式で示した反応が生じる。この反応は、第2ゾーンで形成され、降下してきた炭化物(充填層)が1次羽口5−1から吹き込まれた支燃性ガス7−1により燃焼する反応で、炭化物は燃焼、ガス化し、2000℃以上の高温のCOを主体とする還元性ガスとなる。また、その顕熱で炭化物に含有されている灰分(無機酸化物)と有価金属類が溶融し、溶融スラグと溶融金属となる。なお、必要により1次羽口5−1から補助燃料6−1を供給する。
【0023】
前記の還元性ガスは第2ゾーンに移行し、溶融スラグと溶融金属は炉下部の排出口9から回収される。
C+1/2O2 =CO ・・・▲1▼
ここで、C :第2ゾーンから供給される炭化物
O2 :1次羽口から吹き込まれた支燃性ガス中の酸素
なお、第2ゾーンで廃棄物を脱水・熱分解することにより炭化物の充填層とし、第1ゾーンでこの炭化物をガス化、溶融するのは、このように2段に分ける方が炭化物の加熱促進、溶融スラグおよび溶融金属からの放熱ロスの抑制を効果的に行えるからである。
【0024】
この第1ゾーンでは、生成する還元性ガスの顕熱で炭化物に含有されている灰分と有価金属類を完全に溶融することが必要であるため、ガスの温度を2000℃以上に保つのが好ましい。そのために、支燃性ガス中の酸素濃度を50%以上とし、必要であれば補助燃料を吹き込む。また、溶融スラグと溶融金属を炉下部の排出口から詰まり等を生じさせず円滑に排出させるために、廃棄物の炉内への装入時に炉上から石灰石を同時に装入するか、あるいは1次羽口から粉状の石灰石を造滓材として吹き込み、スラグの粘度を下げるのが好ましい。
第2ゾーンでは、下記の▲2▼式〜▲5▼式で示した反応が生じるが、さらに、後述するように、廃棄物中に含まれる塩素のガス化、および低沸点重金属類のガス化ないしは塩素との反応が生じる。
H2 O(liq )=H2 O(gas ) ・・・▲2▼
Cp Hq Or =r/2CO2 +q/nCm Hn+(p−r/2−qm/n)C ・・・▲3▼
Cm Hn =n/4CH4 +{m−(n/4)}C ・・・▲4▼
CO+1/2O2 =CO2 ・・・▲5▼
ここで、H2 O(liq ):廃棄物中の付着水分
Cp Hq Or :廃棄物中の有機物
Cm Hn :廃棄物中の有機物の分解で生じた炭化水素ガス
C :第1ゾーンに供給される炭化物
CO:第1ゾーンで炭化物が燃焼して生成したCO
O2 :2次羽口および/または上吹ランスから吹き込まれた支燃性ガス中の酸素
▲2▼式の反応は、廃棄物の脱水加熱で、第1ゾーンから供給された高温の還元性ガスの顕熱により行われる。また、この還元性ガスが、2次羽口5−2から吹き込まれた支燃性ガス7−2および/または上吹ランス24−1から吹き込まれた支燃性ガス22により▲5▼の反応式にしたがって二次燃焼するときに生成する顕熱によっても行われる。これにより、廃棄物中の有機物は▲3▼式および▲4▼式にしたがい炭化物(ただし、▲3▼式、▲4▼式ではCとして表示)と炭化水素ガスに熱分解する。なお、必要により2次羽口および/または上吹ランスから補助燃料を供給する。
【0025】
支燃性ガスの吹き込みは、2次羽口のみまたは上吹ランスのみを用いて行ってもよく、それによって▲2▼式の廃棄物の脱水加熱は可能である。しかし、2次羽口および上吹ランスを同時に使用すれば、支燃性ガスを第2ゾーンに万遍なく均一に吹き込めるので、廃棄物の脱水加熱を効率的に行わせることができる。
【0026】
この工程で得られる炭化物は第1ゾーンへ、炭化水素ガスは第3ゾーンへそれぞれ移行する。
【0027】
第2ゾーンでは、さらに、第1ゾーンから供給された高温の還元性ガスの顕熱により、あるいはそれに加えて、▲5▼の反応式にしたがって二次燃焼するときに生成する顕熱により下記の▲8▼−1式〜▲9▼−3式で示した反応が生じる。前述した廃棄物中に含まれる塩素のガス化および低沸点重金属のガス化ないしは塩素との反応である。すなわち、廃棄物中に含まれる塩素は、▲8▼−1および▲8▼−2式のようにガス化して、塩素ガスおよび塩化水素ガスを生成する。一方、廃棄物中の低沸点重金属は、▲9▼−1式により単体のままでガス化するか、あるいは▲9▼−2および▲9▼−3式のように低沸点重金属の塩化物を生成する。なお、塩化物になると、一般的に非常に蒸発し易くなる。
2Cl=Cl2(gas ) ・・・▲8▼−1
2Cl+H2 O(gas )=2HCl(gas ) ・・・▲8▼−2
M=M(gas ) ・・・▲9▼−1
M(gas )+Cl2(gas )=MCl2(gas ) ・・・▲9▼−2
M(gas )+2HCl(gas )=MCl2(gas )+H2 ・・・▲9▼−3
ここで、Cl:廃棄物中の塩素
M:廃棄物中の低沸点重金属(例えば、Hg、Cd、Pb等)
M(gas ):低沸点重金属のガス化生成物
MCl2(gas ):低沸点重金属の塩化物
この工程では、炉内へ装入する廃棄物に必要に応じて副原料(例えば、石灰石、生石灰等)を加えて充填層を形成させておく。つまり、廃棄物が比較的密に充填された状態としておく。このような廃棄物の充填層とすることにより、その層内を高温のガスが通過する際の固・気体間の接触時間が長くなり、熱効率が向上する。
【0028】
また、高温の還元性ガスを二次燃焼させるのは、▲5▼式の二次燃焼熱を利用して加熱を促進し、有機物の熱分解温度を800〜1400℃に制御するとともに、低沸点重金属をガス化するためである。
【0029】
熱分解温度を800〜1400℃とするのは、有機物の熱分解によるガス化を促進し、低沸点重金属のガス化を完全に行わせるためである。この二次燃焼熱は、前記▲1▼式の燃焼熱(一次燃焼熱)に比べて格段に大きいので、廃棄物の脱水・熱分解および低沸点重金属のガス化に必要な熱を十分に補充することができる。なお、この際、発生ガス量を少なくして顕熱ロスを抑制するとともに、発生ガスのカロリー低下を抑制するため、支燃性ガス中の酸素濃度を50%以上にするのが好ましい。また、発生ガス量を少なくすると、廃棄物の飛散を防止してダストに含まれる低沸点重金属の濃度を高めることができるので、そのためにも、支燃性ガス中の酸素濃度を50%以上にするのが好ましい。
第3ゾーンでは、下記の▲6▼式および▲7▼式で示した反応が生じる。
Cm Hn +m/2O2 =mCO+n/2H2 ・・・▲6▼
CH4 +1/2O2 =CO+2H2 ・・・▲7▼
ここで、Cm Hn :第2ゾーンで廃棄物が熱分解して生成した炭化水素ガス
CH4 :第2ゾーンでCm Hn が熱分解して生成したメタンガス
O2 :3次羽口および/または上吹ランスから吹き込まれた支燃性ガス中の酸素
これらの反応は第2ゾーンから供給される炭化水素ガスの熱分解反応(ガス改質反応)で、COとH2 を主成分とするガス(エネルギーガス)が得られる。これらの反応は3次羽口5−3から吹き込まれる支燃性ガス7−3および/または上吹ランス24−1から吹き込まれる支燃性ガス22との反応により進行する。なお、必要により3次羽口および/または上吹ランスから補助燃料を供給する。
【0030】
支燃性ガスの吹き込みは、3次羽口のみまたは上吹ランスのみを用いて行ってもよく、それによって上記の▲6▼式および▲7▼式で示した反応を生じさせることは可能である。しかし、3次羽口および上吹ランスを同時に使用すれば、支燃性ガスを第3ゾーンのフリーボードに万遍なく均一に吹き込めるので、▲6▼式および▲7▼式で示した反応を効率的に行わせることができる。
【0031】
この第3ゾーンでの反応はフリーボード16部で行われるが、このような空洞部で反応を行わせる理由は、気体間の反応であるガス改質反応を円滑に進めるためである。空洞内の雰囲気温度を800〜1400℃に制御すると、改質反応が充分に進行するので好ましい。さらに望ましくは、1000〜1200℃である。
【0032】
また、ダイオキシン類やその前駆体といわれるクロロベンゼン、クロロフェノール等の生成を抑制するという観点からは、雰囲気温度は500℃以上とするのが好ましく、さらに、ダイオキシン類やクロロベンゼン、クロロフェノール等を完全に分解するために、900℃以上とするのが一層望ましい。
【0033】
支燃性ガス中の酸素濃度は50%以上とするのが好ましい。これは、回収されるガスのカロリーを高めて次工程の発電等の用途に利用し易くするためである。上述した例では、各ゾーンに対応する3段の羽口と上吹ランスが設けられたガス化溶融炉を用いているが、前記のように、羽口は少なくとも1段設けられていればよい。第2ゾーンおよび第3ゾーンへの支燃性ガスおよび補助燃焼の供給は上吹ランスにより行えるので、第1ゾーンに対応する部位に1段の羽口が取り付けられていればよいからである。
【0034】
以上述べたように、(2)の発明の廃棄物のガス化溶融方法では、上記第1ゾーン〜第3ゾーンでの反応により、COとH2 を主成分とするエネルギーガスおよび低沸点重金属類を含むダストと、溶融スラグおよび溶融金属を回収する。そのため、少なくとも1段の羽口および上吹ランスが必要となる。
さらに、少なくとも1段の羽口および上吹ランスがそれぞれ独立して支燃性ガスおよび補助燃料を吹き込むことができるものでなければならない。その理由は、以下のとおりである。なお、羽口は各ゾーンに取り付けられているとして説明する。
【0035】
▲1▼式の反応に関与するC(炭化物)の量は、▲3▼式および▲4▼式で表される反応の進行度合いによって変化する。また、廃棄物の種類が変化すれば、自ずと▲3▼式および▲4▼式で表される反応の生成物量も変化する。したがって、1次羽口から吹き込む支燃性ガスの量は他の工程とは独立して定め得るものとしておかなければならない。必要に応じて供給する補助燃料についても同様である。
次に、2次羽口および/または上吹ランスから吹き込む支燃性ガス量は、反応式▲5▼で決まり、▲5▼式のCO量は反応式▲1▼で決まってくるので、見掛け上1次羽口から吹き込む支燃性ガス量と連動していると見なされる。しかし、実際は反応式▲1▼で生成するCOガスをすべて2次燃焼させる必要はなく、第2ゾーンでは、少なくとも廃棄物中の付着水分の脱水加熱および廃棄物中の有機物の熱分解と、低沸点重金属のガス化に必要な熱を加え、さらに第2ゾーンの雰囲気温度を800〜1400℃に保つために必要な熱を加えるだけでよい。したがって、2次羽口および/または上吹ランスからの支燃性ガス量は、廃棄物に含まれる成分によって大きく変化する。すなわち、2次羽口および/または上吹ランスから吹き込む支燃性ガスの量も独自に定め得るものとしておかなければならない。補助燃料についても同様である。
【0036】
2次羽口および上吹ランスから吹き込む支燃性ガスまたは補助燃料の比率は、それぞれ次式の範囲とするのが好ましい。この範囲から外れ、一方が少な過ぎても多過ぎても相乗効果を発揮させることができないからである。
【0037】
【数1】
3次羽口および/または上吹ランスから吹き込む支燃性ガス量は反応式▲6▼および▲7▼で決まる。この場合も廃棄物中の含有成分によってCm Hn とCH4 の生成量が変化するので、3次羽口および/または上吹ランスから吹き込む支燃性ガス量についても独自に定め得るものとしておかなければならない。なお、補助燃料についても同様である。
【0038】
3次羽口および上吹ランスから吹き込む支燃性ガスまたは補助燃料の比率は、上記の2次羽口および上吹ランスの場合と同様、それぞれ次式の範囲とするのが好ましい。この範囲から外れ、一方が少な過ぎても多過ぎても相乗効果を発揮させることができないからである。
【0039】
【数2】
支燃性ガスの吹き込み量と必要により供給する補助燃料の量は以下のようにして定める。
【0040】
処理の対象が例えば異種の廃棄物が混在した一般廃棄物のような場合、通常は炉内に装入する前に成分分析を行うことはしないので、炉内では未知の成分が燃焼し、あるいは熱分解することになり、生成ガス量およびその含有成分を予測することは実際上不可能である。
【0041】
このような条件下では、装入した廃棄物のレベル(原料層頂レベル)を逐次計測する。これによって、炉内の充填層(廃棄物の充填層および炭化物の充填層)の厚みの変化を間接的に把握することができる。すなわち、第1ゾーンで形成される炭化物の充填層は燃焼量が多いほど荷下がりが進み、原料層頂レベルが下がる。したがって、事前に経験的に所定の原料層頂レベルを決めておき、その後の原料層頂レベルの上下変動に基づいて1次羽口からの支燃性ガスと、必要により供給する補助燃料の吹き込み量を決定すればよい。なお、使用する原料層頂レベル計としては、製鉄分野の高炉内部の原料層頂レベル計として知られているサウンジングデバイスが好適であるが、RI(ラジオアイソトープ)方式等も一般的に有効な方法として知られており、この方式を適用することもできる。
ところで、第1ゾーンで形成される炭化物の充填層の上には、第2ゾーンで形成される廃棄物の充填層が存在するので、計測される原料層頂レベルは、第1ゾーンと第2ゾーンにおけるそれぞれの変化量の合計として表れる。したがって、第1ゾーンと第2ゾーンにおける変化量を区別する必要があるが、第2ゾーンにおける反応の変化は、第2ゾーンの温度変化を逐次計測することにより間接的に把握できる。すなわち、第2ゾーンでは、少なくとも廃棄物中の付着水分の脱水加熱、廃棄物中の有機物の熱分解および低沸点重金属のガス化に必要な熱を加え、さらに第2ゾーンの雰囲気温度を800〜1400℃に保つために必要な熱を加えるだけでよいので、第2ゾーンの領域内にある廃棄物の温度変化を逐次計測し、それが低下すれば熱不足と判断し、2次羽口および/または上吹ランスからの支燃性ガス量を増加して2次燃焼させるCO量(反応式▲1▼で生成するCOのうち2次燃焼させる量)を上げてやる。逆に、温度が上昇すれば熱的に余裕があると判断できるので、2次羽口および/または上吹ランスからの支燃性ガス量を減少させて2次燃焼させるCO量を下げてやればよい。なお、前記の廃棄物の温度変化は第2ゾーンの温度変化をもってそれとみなすことができ、第2ゾーンの温度変化は、例えば、第2ゾーンの内張り煉瓦表面に熱電対を設置し、その表面温度を測定することにより求めることができる。
【0042】
このように、原料層頂レベル計によるレベル値および第2ゾーンの内張り煉瓦の表面温度を逐次計測することにより、第1ゾーンおよび第2ゾーンの支燃性ガスと必要により供給する補助燃料の吹き込み量をそれぞれ独自に決定することができる。
第3ゾーンでは、第2ゾーン出口(フリーボード側)の雰囲気温度を800〜1400℃に保てば、排ガス中の炭化水素、特に配管閉塞等のトラブルの原因となるタールのような炭素数が5以上の炭化水素(Cm Hn :m ≧5)をすべて分解できる。またダイオキシン類やその前駆体といわれるクロロベンゼン、クロロフェノール等の完全分解のために必要である。したがって、第3ゾーンのフリーボード空間内に温度計を設置してその温度を逐次計測し、温度が800℃よりも低下したときは、3次羽口および/または上吹ランスから支燃性ガスと必要によっては補助燃料を吹き込めばよい。特に、廃棄物を炉内に装入した直後は、第2ゾーンの原料層頂および第3ゾーンのフリーボードにおける温度が急激に下がるので、第2ゾーンおよび第3ゾーンの温度から判断して、生成する炭化水素(Cm Hn :m ≧5)やダイオキシン類を分解するために、支燃性ガスと必要により補助燃料の吹き込みを実施するのが効果的である。
上記(4)の発明のガス化溶融方法によれば、高価なコークスを使用せずに、廃棄物のガス化溶融、脱水・熱分解およびガス改質の一連の工程を1炉で実施し、かつタールやダイオキシン類等が含まれない清浄な排ガスとすることができる。なお、排ガス中には低沸点重金属を含むダストが含まれているが、炉外に設けたホットサイクロン等の除塵装置(ダスト回収手段)によって、それらダストとエネルギーガスとを分離することができる。
【0043】
ホットサイクロンでも捕集困難な微細ダストの捕集には、水による洗浄処理が効果的である。ホットサイクロンあるいは水処理によって分離回収されたダストは低沸点重金属類を含むので、アルカリあるいは酸による処理工程を経て濃縮することが可能である。これらホットサイクロンによる処理ならびに水による洗浄処理については、公知の技術が適用できる。
【0044】
【実施例】
(実施例1)
前記の図1に示した構成を有する竪型炉(ガス化溶融炉)を用い、1次羽口〜3次羽口と上吹ランスを同時に使用し、廃棄物のガス化溶融試験を行った。なお、竪型炉の各部の寸法、羽口その他取り付け部品の数量およびそれらの配置は以下のとおりである。
寸法 炉径:0.5m(但し、煉瓦内張り後の炉内径)
炉高:2.0m(但し、煉瓦内張り後の炉底から炉頂までの高さ)
炉底から1次羽口までの高さ:0.3m
炉底から2次羽口までの高さ:0.6m
炉底から3次羽口までの高さ:1.6m
上吹ランス外径:50mmφ
上吹ランス孔:
中心孔:微粉炭+キャリアガス吹き込み用
1孔×3φ×0度(=鉛直方向)
側孔:酸素+窒素ガス吹き込み用
3孔×5φ×10度(=鉛直方向に対して10度傾斜)
但し側孔は中心孔の周囲に120度間隔に配置
炉底からランス先端までの高さ:標準1.8m(但し上下に可変)
第2ゾーンの熱電対の位置 :0.9m
(第2ゾーンの熱電対の位置とは、第2ゾーンの内張り煉瓦の
表面に取り付けられた熱電対の炉底からの高さをいう)
第3ゾーンの熱電対の位置 :1.1m
(第3ゾーンの熱電対の位置とは、フリーボード空間内に取り
付けられた熱電対の炉底からの高さをいう)
数量 1次羽口:3個
2次羽口:3個
3次羽口:3個
上吹ランス:1個
溶融スラグおよび溶融金属の排出口:1個
サウンジングデバイス(原料層頂レベル計):1個
第2ゾーンの熱電対:3個
第3ゾーンの熱電対:3個
配置 1次羽口:周方向に120度毎の等間隔
2次羽口:周方向に120度毎の等間隔
3次羽口:周方向に120度毎の等間隔
上吹ランス:炉中心
溶融スラグおよび溶融金属の排出口:炉底端
サウンジングデバイス:上吹ランスと側壁との間
第2ゾーンの熱電対:周方向に120度毎の等間隔
第3ゾーンの熱電対:周方向に120度毎の等間隔
上記の試験に使用した廃棄物は一般的な3種類の都市ごみ(試料4、5および6とする)で、それぞれ乾燥度合いが異なるため、廃棄物1kg当たり3408kcal、2518kcalおよび1628kcalの湿量基準低位発熱量を有するものである。
表1にこれらの廃棄物の組成を示す。なお、廃棄物の寸法は10〜100mmであった。
【0045】
【表1】
使用した副原料(石灰石)および補助燃料(微粉炭)は実施例1で用いたものと同一で、それぞれ表2および表3に示した組成を有する。なお、石灰石は、10〜50mmの塊状のものであり、また、微粉炭は、事前に乾燥された1mm以下の粉状のものであった。
【0046】
【表2】
【表3】
1次羽口、2次羽口、3次羽口および上吹ランスから吹き込んだ支燃性ガスは、酸素をベースとし、これに窒素を若干混合したガスである。それらの流量(酸素および窒素それぞれの流量)を表4に示した。なお、表中で、1次とは1次羽口を意味する。2次、3次についても同様である。
【0047】
【表4】
表4はこの試験の実施条件(定常状態)を示すもので、試料4、5および6のそれぞれについて下記の(1)〜(8)の手順にしたがって定めた。なお、試験においては、最初、試料4を炉内へ装入してこの表4の試料4の欄に示した条件で処理を行い、次いで、試料5に変更して同じく試料5の欄に示した条件で処理を行い、さらに試料6に変更して試料6の欄に示した条件で処理を行った。それぞれの試料の処理時間は24時間で、その間の廃棄物の処理量は、各試料とも1トン(合計3トン)とした。
(処理条件の設定手順)
(1)最初に装入する廃棄物(ここでは、試料4を指す)の組成をあらかじめ分析することにより求めた。これはベースとなる酸素吹き込み量の概略値を決めるため、また、造滓材として投入する石灰石量を決めるためにも必要である。なお、石灰石量は、溶融スラグの流動性が最もよいと考えられるスラグ塩基度(すなわち、1.0)になるように調整した。
(2)ガス化溶融炉をあらかじめバーナー等で加熱し、羽口から吹き込む支燃性ガスが加熱していない常温のガスでも廃棄物が着火する状態にした。
(3)廃棄物を炉内に装入し、サウンジング高さ0.9〜1.1mまで積み上げた。
(4)1次羽口から徐々に酸素ガスを流した後、溶融スラグおよび溶融金属の排出口を開けた。
(5)試験中、廃棄物の燃焼に伴い原料層頂レベルが下がったので、そのレベルを0.9〜1.1mの範囲に維持するように原料(廃棄物および石灰石)を逐次投入した。定常状態では、廃棄物の投入速度は常に40kg/hに設定した。
(6)第2ゾーンの内張り煉瓦の表面に取り付けられた熱電対、および第3ゾーンのフリーボード空間に取り付けられた熱電対により測定される温度が常に800〜1400℃を維持するように、1次羽口、2次羽口、3次羽口および上吹ランスから吹き込む酸素ガス量を調整した。
【0048】
すなわち、荷下がり速度が速く、かつ第2ゾーンおよび第3ゾーンの領域の温度が1400℃を超えた場合には、1次羽口からの酸素ガスを減少させた。逆に第2ゾーンの温度が800℃より低い場合には、2次羽口および上吹ランスからの酸素ガス吹き込みを行った。また、第3ゾーンの温度が800℃より低い場合には、3次羽口および上吹ランスからの酸素ガス吹き込みを行った。
(7)溶融スラグおよび溶融金属の温度を測定し、所定の温度の1400〜1600℃より低下した場合には、1次羽口からの微粉炭吹き込みを行った。試料6がそれに該当するケースで、廃棄物自身の発熱量が小さい場合には、1次羽口からの補助燃料の供給が必要となった。またそれに伴い、2次羽口および上吹ランスからも微粉炭吹き込みを行った。
(8)上記の(5)から(7)を繰り返し行うことによって最適な支燃性ガスおよび補助燃料の吹き込み量(すなわち、表4の条件の欄に示した量)を導き出すことができた。ここで窒素は酸素の約1/10の量として吹き込んだが、酸素濃度≧50%であれば、充分に的確に対応することができた。また、試料を変更(試料4から試料5へ、および試料5から試料6へ変更)した場合においても、的確に対応することができた。
【0049】
以上の試験で得られた結果(実績)を表5に示す。単位は廃棄物トン当たりの量である。
表示したように、ダイオキシン類をほとんど含まないCOとH2 を主成分とする高カロリーのエネルギーガス(表中では、排ガスと表示)と、水銀、カドミウムおよび鉛等の低沸点重金属類が濃縮されたダストを回収することができた。なお、エネルギーガスとダストは、ガス排出口からダクトを経て炉外に排出させた後、ホットサイクロンで分離回収した。
【0050】
また、排ガス中の炭化水素、特に配管閉塞を引き起こす原因とされるCm Hn ( m≧5)のような炭化水素は全く無視できる濃度であった。さらに、排ガス中の塩化水素は、ガス化溶融炉内の各ゾーンの温度を実施例1の場合より高めてガス化を促進しているため高濃度であったが、この程度の濃度ならば、公知の技術(例えば、排ガスの水処理)で充分除去できるので、プロセス上の問題はない。
【0051】
また、鉄および銅等の有価金属類を主成分とする溶融金属と溶融スラグを回収することができた。溶融金属と溶融スラグは、スラグ排出口から炉外に排出させた後、金属分とスラグ分に分離回収した。
【0052】
第1ゾーン〜第3ゾーンの羽口と上吹ランスを同時に使用したこの実施例2では、ガス化溶融炉内の各ゾーンに支燃性ガスを万遍なく均一に吹き込むことができたので、後述する実施例2および3と比較して、下記の項目について優位性が認められた。
【0053】
▲1▼酸素消費量の低減
▲2▼補助燃料(微粉炭)消費量の低減
▲3▼ダスト量の低減
▲4▼ダスト中の低沸点重金属類の濃縮
▲5▼エネルギーガス中のダイオキシン類および炭化水素ガスの低減
【0054】
【表5】
(実施例2)
実施例1で用いた炉と同じ竪型炉(ガス化溶融炉)、および同じ3種類の廃棄物(試料4、5および6)を用い、1次羽口と上吹ランスのみを使用して廃棄物のガス化溶融試験を行った。
【0055】
試験の実施条件を表6に、試験結果(実績)を表7に示す。単位は廃棄物トン当たりの量である。
表示したように、ダイオキシン類をほとんど含まないCOとH2 を主成分とする高カロリーのエネルギーガス(表中では、排ガスと表示)と、水銀、カドミウムおよび鉛等の低沸点重金属類が濃縮されたダストを回収することができた。なお、エネルギーガスとダストは、ガス排出口から炉外に排出させた後、ホットサイクロンを経て分離回収した。
【0056】
また、排ガス中の炭化水素、特に配管閉塞を引き起こす原因とされるCm Hn ( m≧5)のような炭化水素は無視できる濃度であった。さらに、排ガス中の塩化水素は、ガス化溶融炉内の各ゾーンの温度を高めてガス化を促進しているため高濃度であったが、公知の排ガス処理技術で充分除去できるので、プロセス上の問題はない。
【0057】
また、鉄および銅等の有価金属類を主成分とする溶融金属および溶融スラグを回収することができた。溶融金属と溶融スラグは、スラグ排出口から炉外に排出させた後、金属分とスラグ分に分離回収した。
【0058】
上吹ランスを使用したこの実施例3では、ガス化溶融炉内の各ゾーンに支燃性ガスを比較的均一に吹き込むことができたので、次に述べる実施例4(上吹ランスを使用しない場合)と比較して、実施例2のランスの末尾に挙げた▲1▼〜▲5▼の項目について優位性が認められた。
【0059】
【表6】
【表7】
(実施例3)
実施例1で用いた炉と同じ竪型炉(ガス化溶融炉)、および同じ3種類の廃棄物(試料4、5および6)を用い、上吹ランスを用いず、1次羽口〜3次羽口のみを使用して廃棄物のガス化溶融試験を行った。
【0060】
試験の実施条件を表8に、試験結果(実績)を表9に示す。単位は廃棄物トン当たりの量である。
表示したように、ダイオキシン類をほとんど含まないCOとH2 を主成分とする高カロリーのエネルギーガス(表中では、排ガスと表示)と、水銀、カドミウムおよび鉛等の低沸点重金属類が濃縮されたダストを回収することができた。なお、エネルギーガスとダストは、ガス排出口から炉外に排出させた後、ホットサイクロンを経て分離回収した。
【0061】
また、排ガス中の炭化水素、特に配管閉塞を引き起こす原因とされるCm Hn ( m≧5)のような炭化水素は無視できる濃度であった。さらに、排ガス中の塩化水素は、ガス化溶融炉内の各ゾーンの温度を高めてガス化を促進しているため高濃度であったが、公知の排ガス処理技術で充分除去できるので、プロセス上の問題はない。
【0062】
また、鉄および銅等の有価金属類を主成分とする溶融金属および溶融スラグを回収することができた。溶融金属と溶融スラグは、スラグ排出口から炉外に排出させた後、金属分とスラグ分に分離回収した。
【0063】
【表8】
【表9】
【発明の効果】
本発明のガス化溶融炉を用い、本発明の方法にしたがって廃棄物の焼却を行えば、廃棄物中に含まれる有機物をガス化してエネルギーガスとして回収するとともに、廃棄物中に含まれる灰分と金属類をそれぞれ溶融スラグと溶融金属として回収することができる。これによって、現在問題となっている一般廃棄物および産業廃棄物の埋め立て費用の低減を図り、生成する副生ガスを発電用燃料等に活用することが可能である。
【0064】
また、ガス化溶融炉内の反応温度を高めると、ガス化を促進し、低沸点重金属類の回収も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の廃棄物のガス化溶融炉の他の例の構成を示す概略縦断面図である。
【符号の説明】
1:ガス化溶融炉本体
2:耐火れんが
3−1:ガス排出口
3−2:ガス排出ダクト
4:排ガス
5−1:1次羽口
5−2:2次羽口
5−3:3次羽口
6−1:1次羽口に吹き込む補助燃料
6−2:2次羽口に吹き込む補助燃料
6−3:3次羽口に吹き込む補助燃料
7−1:1次羽口に吹き込む支燃性ガス
7−2:2次羽口に吹き込む支燃性ガス
7−3:3次羽口に吹き込む支燃性ガス
8:溶融スラグおよび溶融金属の流れ
9:溶融スラグおよび溶融金属の排出口
10:プッシャー
11−1:廃棄物装入口
11−2:ホッパー
12:廃棄物
13:溶融スラグおよび溶融金属
14:炭化物を主体とする充填層
15:廃棄物を主体とする充填層
16:フリーボード
17:サウンジングデバイス(原料層頂レベル計)
19:温度変換器(熱電対の信号を温度に変換する装置)
20:第2ゾーンの内張り煉瓦表面に備えられた熱電対
21:第3ゾーンのフリーボード空間に備えられた熱電対
22:支燃性ガス
23:補助燃料
24−1:上吹ランス
24−2:ランス昇降装置
25:ホットサイクロン
26:エネルギーガス
27:ダスト
Claims (2)
- 廃棄物を燃焼させ、廃棄物中の有機物をガス化してエネルギーガスとして回収し、かつ廃棄物中の低沸点重金属類をガス化してエネルギーガスに随伴されるダストとして回収するとともに、廃棄物中の灰分と金属類を溶融物として回収する竪型の廃棄物のガス化溶融炉であって、上部に前記廃棄物を装入する廃棄物装入口と、生成するガスおよびダストを排出するガス排出口ならびにこのガス排出口にガス排出ダクトを介して接続されたダスト回収手段を有し、下部に溶融スラグおよび溶融金属の排出口を有し、前記ガス排出口と溶融スラグおよび溶融金属の排出口との間に、それぞれ独立して支燃性ガスおよび補助燃料を吹き込むことができる羽口であって、廃棄物の脱水・熱分解により生成する炭化物を燃焼、ガス化するための羽口を含む高さ方向に少なくとも1段の羽口を有し、かつ炉の上部に炉内に向けて昇降可能な支燃性ガスおよび補助燃料を吹き込むことができる上吹ランスを有し、さらに、前記装入された廃棄物のレベルを計測する手段、中段の羽口近傍の温度を計測する手段、および炉の上方部の雰囲気ガスの温度を計測する手段を有することを特徴とする廃棄物のガス化溶融炉。
- 請求項1に記載の廃棄物のガス化溶融炉を用いて行う廃棄物のガス化溶融方法であって、廃棄物装入口から炉内へ装入した廃棄物を、下記の各ゾーンでの反応により、COとH2 を主成分とするエネルギーガスおよび低沸点重金属類を含むダストと、溶融スラグおよび溶融金属とし、前者を炉上部に設けられたガス排出口から回収してエネルギーガスとダストに分離し、後者を炉下部に設けられた溶融スラグおよび溶融金属の排出口から回収することを特徴とする廃棄物のガス化溶融方法。
〔第1ゾーン〕
支燃性ガスと必要に応じて補助燃料を下段の羽口から吹き込み、第2ゾーンで生成した炭化物を燃焼、ガス化して還元性ガスを発生させるとともに炭化物に含まれる灰分と金属類を溶融し、溶融スラグおよび溶融金属とする。
〔第2ゾーン〕
支燃性ガスと必要に応じて補助燃料を中段の羽口および/または上吹ランスから吹き込み、第1ゾーンで発生した還元性ガスを二次燃焼させ、廃棄物装入口から装入された廃棄物を脱水加熱して炭化物と炭化水素ガスに熱分解するとともに、低沸点重金属類をガス化する。
〔第3ゾーン〕
支燃性ガスと必要に応じて補助燃料を上段の羽口および/または上吹ランスから吹き込み、第2ゾーンで発生した炭化水素ガスを熱分解してCOとH2 を主成分とするエネルギーガスとし、ガス状の低沸点重金属類をダストとする。
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