JP3556722B2 - 超臨界水中でのヘテロ原子減少条件下でのヘテロ原子減少方法 - Google Patents

超臨界水中でのヘテロ原子減少条件下でのヘテロ原子減少方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ある種の芳香環構造体の水性のヘテロ原子除去向上水素化方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
遷移金属触媒のようなある種の反応誘起ファクターの不存在下に、石炭及び類似の有機原料中に典型的に見いだされるような難分解性ヘテロ原子含有芳香環構造体の、ヘテロ原子除去指向性/向上性水性CO水素化に関して少数の文献がある。Stenberg, et al. J. Am. Chem. Soc.43, 2991 (1978)は、任意にNaCOの存在下に超臨界水及びCOを用いて425℃でキノリンを水素化できることを教えているが、Stenbergの生成物の分析は、明らかに窒素が除かれていないことを示している。Appell, et al. Prepr.−Pap. ACS Div. Fuel Chem. 12, 220(1968)及びAppell, et al. Prepr.−Pap. ACS Div. Fuel Chem. 13, 39(1969)は、約425℃未満の温度での変換プロセスにおいて、CO及び水で石炭を処理することにより生成物の複雑な混合物が生じることを教えている。Bull et al.の英国特許No.1461280は、芳香族溶剤の存在下で水性CO条件下に硫黄を除けることを示唆している。ヘテロ原子含有ビアリール結合の安定なことが公知であることから、当業者は生成物の混合物はビアリール結合を含む構造体の脱芳香化及び開裂の結果であるとは予期しないであろう。
【0003】
今日まで、唯一の刊行物、Siskin, Tetrahedron Letters 34, 4739(1993)は水性CO反応条件下にヘテロ原子を除去することに加えて水素化することを開示している。この文献はモノ芳香族ヘテロ原子含有環(即ち、ピリジン)が反応性であったことだけを示している。ビアリール結合を有する化合物は試験されておらず、この文献はそれらが反応性であることを示唆していない。
【0004】
液体水及び超臨界水を基礎とする系において、石炭中に典型的に見いだされるある種の結合、例えばエーテル、硫化物及びアミンを含む分子を反応させる事はある程度成功した例がある。例えば、SiskinのScience Vol.254 p.231−237, (1) Oct. 1991)参照のこと。これは液体の水がある種の条件下に使用できることを教えている。M.T. Klein, Fuel 64, 635(1985);Industrial Eng. Chem. Products Res. & Devel. 24, 300 (1985);Fuel Science and Technol. 6, 633(1988)は、エーテル、アミン及び硫化物は超臨界水中で開裂しうることを教えている。水素化及びヘテロ芳香環からの窒素及び硫黄の除去は教えられていなく、示唆もされていない。加えて、Siskin及びKleinによって開示された分子の含む結合は、本発明者の方法が適用される結合よりも、より反応性であることが公知である。従って、当業者はこれらの開示は関連のある教示であるとは考えないであろう。
【0005】
ある種の文献は石炭のような有機原料に適用可能な方法を述べている。例えば、McCollumの米国特許No.3988238には、超臨界水を用いて石炭から窒素及び硫黄を開裂させ除去しうることが記載されている。しかしながら、McCollumは、硫黄抵抗性の遷移金属触媒の存在を必要とし、系中にCOのような還元剤が不存在のため原料を水素化することを教えていなかった。McCollumの米国特許No.4005005は、タールサンドは開裂でき、極度の流体抽出を用いて脱硫できることを示唆している。しかしながら、この特許は特に、還元性の環境はこの方法の要素ではないことを教えている。Baksisの米国特許No.5269947は2つの帯域の水ベースの、石炭のような加工物質の熱解重合方法で幾らかの硫黄を除去しているが、これは別個の接触脱硫プロセス装置を包含することのみによっている。同様に、Delbiancoの米国特許No.4968414はCO及び炭酸アルカリ又は水酸化アルカリの存在下に石炭の液化のための2段階法を開示している。しかしながら、本発明者の方法はDelbiancoに必要とされる温度の段階付けなしに作動する。
【0006】
還元性環境、特にCOが開示されているプロセスが幾つか存在する。例えば、Vaghnの米国特許No.5151173は、石炭の解重合及び水素化のためにCO圧力約800〜約4500psi(約5.5〜約31MPa)と、700°F(371℃)未満の温度で液体水とを組み合わせることを開示している。しかしながら、この方法は石炭からのヘテロ原子含量の減少は起こらないことを特に教えている(米国特許No.5151173の表6参照)。石炭が高度に芳香族性であることから、このことは当業者が予期することと一致する。加えて、以前のAppellの論文は、比較的高い温度で行っても、ヘテロ原子の除去が達成されることを教えなかった。
【0007】
Berkowitzのカナダ特許No.2000251は、タールサンドから液体を発生させるための超臨界水CO抽出品質向上プロセスを開示している。しかしながら、N又はSの除去の教示はどこにもなく、このことは、この方法が作動する資源の性質(高H/C比)が与えられれば理解できることである。この文献における品質向上は、不特定の性質の液体生成物を作ることを意味する。
【0008】
最後に、Cummins, Energy Common., 6117(1980)は、CO−スチーム法を用いてオイルシェールのケロゲンを転化し又は開裂して液体生成物にすることを報告している。しかしながら、この人はまた、300〜450℃の範囲では窒素又は硫黄は生成せず、特に継続的なCO圧力1.4MPaゲージ(200psig)が必要であることを報告している。
【0009】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
本発明はある種の難分解性ヘテロ原子含有芳香環構造体のヘテロ原子除去を向上する、又はヘテロ原子を減らす水素化方法を提供する。これらの構造体は分子及び石炭のような高分子構造体の両方の中に見いだされる。これらの難分解性化合物は、典型的には低いH:C比、典型的には約1.25まで、より典型的には約1.00まで、最も典型的には約0.65までのH:C比を有する。それらは、ヘテロアリール成分と、アリール成分及びヘテロアリール成分からなる群から選ばれる成分を結び付ける結合を有するものとして識別される。そのような結合は、この結合の両側のアリール成分の存在の故に、しばしば「ビアリール」又は「ビ芳香族」結合と呼ばれる。これらの用語は、従って、互換可能なものとして使用される。
【0010】
本発明方法において、そのような結合を有する前記物質は、水素化物イオンが有効量の水素化を行いうるような充分な濃度を有する水素化イオン種を有する水性溶液又は混合物を形成するに充分な量のCOの存在下に、好ましくは440℃以上、典型的には約440℃〜約600℃で、超臨界水と接触させ、前記ヘテロアリール成分の水素化及びビアリール結合の反応性を高めてヘテロ原子の除去又は減少を促進するに充分な時間、前記溶液又は混合物を反応させる。そのような種の例を挙げれば、蟻酸及び無機蟻酸塩がある。この反応は典型的には芳香族ヘテロ原子の激減した炭化水素及び脱芳香族環状構造体、及び最終的には、出発物質に比べて還元された又はヘテロ原子含量の減った生成物の存在によって証明される。最終生成物において、ヘテロ原子は典型的にはアンモニア、硫黄及び硫化水素として開放される。
【0011】
出発物質の反応する部分に関しては、反応生成物は、出発物質に比べて、水素含量が増大し、芳香族ヘテロ原子含量が減っている。こうして、この方法は、低価格の物質から、ヘテロ原子の激減した高価格の低分子量生成物を製造するに有用である。
【0012】
本発明は、ここに開示した要素又はステップを含み、から本質的になり、又はからなるのが適当である。
【0013】
現在のところ、石炭を利用する実用的な商業的方法は燃やすことである。この又は類似の高芳香族ヘテロ原子含有物質が、芳香環のヘテロ原子除去への反応性を高められ、より価値のある物質、例えばより高いH:C比を有する物質、低分子量成分又は生成物及び炭化水素液体に転化されるような代替法が手に入れられれば望ましいことであろう。そのような方法は、一般には(1)架橋を切断して脱重合すること、及び(2)水素源を加えてH:C原子比を増し、芳香族性を減らす、2つの主要な反応を含む。本発明方法はこの両方を達成するのに用いられる。加えて、この方法は、望ましくない芳香族ヘテロ原子、特にヘテロ芳香環中に含まれた窒素及び硫黄の除去を促進するのに用いうる。アリール−ヘテロアリール及びビヘテロアリール構造体の形をした芳香族炭素−芳香族炭素型架橋結合(即ち、ビアリール結合)を含む化合物は、当技術分野において、芳香族(アリール)炭素−炭素結合の高い結合エネルギーの故に、非常に難分解性の架橋結合であることが知られている。本発明者等は、超臨界水中で、或るCO還元条件下に、これらの構造体はヘテロ芳香環のところで優先的に水素化され、続いて脱芳香化が起こり、ヘテロ原子含量が減少することを見いだした。
【0014】
本発明は、ある種のビアリールヘテロ原子含有種の活性を活性化し又は高めてアリール−ヘテロアリール及びヘテロアリール−ヘテロアリール(以下「ビヘテロアリール」ということがある)含有構造体から選ばれる窒素又は硫黄含有種の窒素及び硫黄からなる群から選ばれるヘテロ原子の減少又は除去を促進する方法を提供する。この方法において、アリール成分をヘテロアリール成分に、及びヘテロアリール成分をヘテロアリール成分に結合する少なくとも1つの(ビ−)アリール結合を含む分子構造体又は高分子構造体を、一酸化炭素、及び任意に無機塩基の存在下に、超臨界水と接触させてヘテロ原子含有芳香環成分を優先的に水素化する。これは、高度の芳香族性、従って低いH:C比を持った化合物から高い水素化ヘテロ原子除去を容易にする。これは、出発物質として用いられる化合物に依存して分子構造体又は高分子構造体の他の解重合反応を伴いうる。こうして本発明は、難分解性炭化水素含有構造体の芳香族ヘテロ原子含量を水素化により減らす方法を提供する。この方法は、小さなヘテロ原子含有ビアリール分子、例えばビピリジル類、ビチイル類、チイルピリジン類、フェニルピリジン類、フェニルチオフェン類から巨大高分子構造体、例えば石炭及びアスファルテンに至るアリール−ヘテロアリール及びビヘテロアリールを含む分子構造体又は構造体のグループのいずれについても実施できる。ここで用いているように、ヘテロ原子という用語は、芳香環中で炭素原子に結合している窒素及び硫黄を意味する。適当には、このヘテロアリール成分は5員環又は6員環炭素含有単一(即ち、単核)芳香環又は多核芳香環系でありうる。典型的には、ヘテロアリール環中の炭素原子の数は5員環では少なくとも約2、6員環では少なくとも約3である。しかしながら、芳香族性又は芳香族構造はアリール環及びヘテロアリール環の両方で維持されるべきであり、炭素原子に対するヘテロ原子の数はそれに従って変化するであろう。ヘテロアリール成分は、窒素及び硫黄を単独で又は組み合わせてその中に含みうる(即ち、複数のヘテロ原子は同じものであるか又は異なる)。
【0015】
ヘテロアリール成分又はアリール成分が多核芳香環系であるときは、置換又は非置換の5員環及び6員環の多数の組み合わせが可能であることは明らかである。多核芳香族化合物は1より大きいどんな数の5員環又は6員環を持っていてもよく、それらの環は全て縮合していてもよい。石炭においては、典型的には多核芳香族化合物は主として6までの縮合環を有する。しかしながら、比較的大きな縮合環系は本発明方法から除外されない。
【0016】
アリール成分−ヘテロアリール成分及びヘテロアリール成分−ヘテロアリール成分は、どんな利用可能なアリール炭素−炭素結合を通しても相互に結合していてもよい。しかしながら、ヘテロ原子含有環中に即ち1つの成分のアリール炭素−アリール炭素結合が存在するならば好ましいことである。好ましくは、前記アリール−ヘテロアリール及びビヘテロアリール結合は、このビアリール結合の少なくとも1側で縮合芳香環の存在によって安定化されている。従って、本発明者等が教えるようなアリール−ヘテロアリール結合及びヘテロアリール−ヘテロアリール結合を含む物質の反応性を高めることの報告はこれまでに、全くなかったのである。アリール成分又はヘテロアリール成分からぶら下がっている置換基の性質は、非置換化合物に比べて成分の結合に対して利用可能な位置の選択に影響を与え又はその選択を制限するであろう。
【0017】
本発明方法の追加の利点として、この方法は、ビアリール結合よりも難分解性が低いが、非反応性過ぎて熱開裂しないと広く考えられているジアリールサルファイド及びジアリールエーテルに見いだされるC−S及びC−O結合のような他の結合を開裂するのに適用できる。
【0018】
比較的高級な石炭(higher rank coals)及び重油のアスファルテン留分のような有機原料は、これらの比較的難分解性の架橋結合を比較的高い割合で含むことは知られている。石炭のような原料はヘテロ原子含有ビアリールに加えて、種々の複雑な構造体を含んでいる。これらの原料を出発物質として用いる反応は、多数の最終生成物を生ずることが知られており、従って原料又は液体生成物の分析から、どの結合が実際に開裂したかを決定することは不可能でないとしても困難である。分析を容易にするために、原料中の重要な構造及び結合を代表するモデル化合物が一般に用いられる。このために、本発明者等は、意義のある説明を助けるために、石炭の中にあるような、ありそうな組成、低H:C比、ヘテロ原子を含む高度に芳香族性の炭化水素物質を反映するあるモデル化合物を選択した。そうしないと、複雑で殆どの場合不完全な生成物の分析によって、反応結果は覆い隠される。
【0019】
ここに開示された全ての物質は商業的にうることができるか、又は公知の方法で製造できる。
【0020】
本発明方法は、少なくとも第1のヘテロアリール成分を持ち、この第1のヘテロアリール成分がアリール又は第2のヘテロアリール成分に結合している分子又は高分子のどんな化合物を用いても実施できる。第1のヘテロアリール成分はアリール基又は第2のヘテロアリール基と、芳香族炭素−芳香族炭素結合(即ち、アリール結合)によって結合している。従って、この方法はヘテロアリール成分をアリール又は第2のヘテロアリール成分に結合するアリール結合を有するどんな化合物についても実施できる。アリール−ヘテロアリール結合は、芳香族(即ち、アリール)炭素−炭素結合の1つの側にある成分が芳香族炭化水素成分であり、他の側の成分がヘテロアリール成分(即ち、2−フェニルピリジン、2−フェニルインドール、2−ナフチルベンゾチオフェン)であるものである。ビヘテロアリール結合は、炭素−炭素芳香族(即ち、アリール)結合のいずれの側の成分も芳香族複素環であるもの(例えば、2−(2−キノリル)ベンゾ〔b〕チオフェン、2−(2−チイル)ベンゾ〔b〕チオフェン、2−2’−ビキノリル)ものである。そのような結合は次式で示される:
【0021】
【化1】
Figure 0003556722
【0022】
Arは、少なくとも1つの5員炭素環又は6員炭素環を有する芳香族又は置換芳香族炭化水素(即ち、アリール又は置換アリール)成分であり、ここに、この成分が1より大きな環を有するときは、この環は縮合環(即ち、多核芳香族)を形成し、そしてここにX及びX’はそれぞれN及びSからなる群から選ばれるヘテロ原子であってこれらは同じであっても異なってもよい。上記式及びこの明細書において、前記2つの半円形は、前記アリール環に位置するヘテロ原子を表す。例えば、前記炭化水素成分が5員環であるときは、前記ヘテロ原子はNH又はSであり、前記炭化水素成分が6員環であるときは、前記ヘテロ原子はN、S又はSであり得る。
【0023】
【化2】
Figure 0003556722
【0024】
即ち、ヘテロ原子含有環において、X及びX’は5員芳香族炭化水素成分又は6員芳香族炭化水素成分において炭化水素原子の1つと置き代わっている。但し、更に置換することを妨げるものではない。
【0025】
ここで、本発明方法は他の結合において機能しうるが、第1のヘテロアリール成分、
【化3】
Figure 0003556722
を芳香族炭化水素成分、Ar、又は第2のヘテロアリール成分、
【化4】
Figure 0003556722
に結び付ける結合はビアルール結合であることが必要である。少なくとも1つのヘテロ原子含有環がビアリール結合として同じ環上に位置していることが好ましい。
【0026】
本発明方法において、温度は水の臨界温度(374.4℃)よりも高いことが必要である。600℃より高い温度は、この方法を不経済にする。それはスチームのガス化という競合反応があり、特に塩基があるときはそうであるからである。従って、一般的な温度として、約440℃〜約600℃が用いられる。より好ましくは約440℃〜約550℃、最も好ましくは約460℃〜約550℃を用いるとよい。水素化物イオンに転化できるに充分な濃度の種を系中に形成し、維持するために一酸化炭素を導入すべきである。この系において、反応温度に加熱する前に、CO圧力は約500psi(3.4MPa)〜約2700psi(18.6MPa)、好ましくは700psi(4.8MPa)〜約1800psi(12.4MPa)であるべきである。熱分解してCO及び水になる、等濃度の蟻酸を、便宜上用いることができる。無機蟻酸塩、水酸化物イオンドナーを形成するために、無機の水酸化物又は炭酸塩塩基、好ましくは第IA及びIIA族の金属並びに鉄、ニッケル及びアルミニウム、より好ましくはナトリウムを化学量論的量又は過剰量(即ち、定量的量又は化学量論的量は存在するCOの量に基づく)加えてもよい。この方法を実施するための経済的方法は、無機水酸化物又は炭酸塩塩基を化学量論的濃度で又は過剰濃度で蟻酸に加えることも含むであろう。この方法は芳香族N及びSの両方の濃度を減らし又はこれらを除去するのに用いうるが、一般には塩基の存在下にSを除くのにより効果的である。従って、Sの除去を高めるために、先に述べたように、無機塩基を水性CO及び原料混合物に加えるのが好ましい。混合N及びS含有原料において、任意の無機塩基を添加するか否かは原料の性質及びプロセスの経済に大きく依存している。従って、この技術分野で公知の方法に比べて、本発明は上述のCO圧力(濃度)において、アリール−ヘテロアリール及びビヘテロアリール含有構造体の転化率を高めるために用いうる。有機塩基をCOと組み合わせて用い対応する蟻酸塩を生成してもよい。これによって系の圧力を低くでき、経済的により好ましいルートとなるであろう。加えて、石炭に関しては、酸化された石炭は比較的低い液化収率を与え、それ故に酸素化した水を用いるのは比較的望ましくない。この方法において、H:C比は、出発物質又は反応体が高度に芳香族性であり、先に述べた種類の多数のアリール結合を含むようなものであるべきである。約1.25まで、好ましくは約1.0まで、より好ましくは0.65までの比が適当である。望ましい反応は、種々の反応条件下にて、一般に約1時間という速さで高収率でうることができる。反応時間が定量的な反応を生ずるに充分な期間でないときでも、生成物は芳香族ヘテロ原子の激減した生成物及び水素化した種を含む。
【0027】
ここで用いているように、転化は、アリール−ヘテロアリールの各成分及びビヘテロアリールの各成分の水素化及び有効な開裂に、少なくとも一部の芳香族ヘテロ原子の分離(最終的にはアンモニア及び硫化水素として)を伴うものを意味し、プロセス条件下にヘテロ原子を除去する能力を高める水素化を包含する。それは低分子量液体生成物及びガス、典型的には芳香族炭化水素の形成によって証明される。この場合、ヘテロ原子は減るか又は無くなり、ヘテロアリール成分が脱芳香化される。これらの液体生成物は他の用途に使用するのに適しているので、一般に高付加価値物質である。検討した非置換分子に基づいて、主要な液体炭化水素生成物はベンゼン及びナフタレン及びそれらの炭素原子数1〜5のアルキル化誘導体を含む。ベンゼン類、アルキルベンゼン類、ナフタレン類、アルキルナフタレン類及び類似の芳香族炭化水素類は、ヘテロアリール成分が、生成した液体生成物の成分として1より多い芳香環を含む場合に、生じた液体生成物の成分となる。ヘテロアリール成分が唯一つの芳香環を含み、アリール成分にビアリール結合を通して結合しているときは、芳香族炭化水素生成物が生成されうる。ビヘテロアリール単環系は、ヘテロアリール出発物質に比べて減少した芳香族ヘテロ原子含量の、より多くの脂肪族炭化水素生成物を生成するであろう。例えば、出発物質がアリールヘテロアリール結合又はビヘテロアリール結合を含むならば、液体最終生成物は、上述のアルキル芳香族化合物を含むであろう。従って、例えばベンゾチオフェン基は大いにエチルベンゼンを生ずるであろう。ヘテロアリール硫黄は一般に大いにHSとして除去される。
【0028】
出発物質が低H:C比の原料、例えば石炭であるときはこの物質は押しつぶすか又は粒度を小さくすべきである。石炭は、好ましくは約1.27cm未満、より好ましくは約0.64cm未満又はより小さいものを用いるとよい。
【0029】
固体物質にとっては、比較的小さい粒度のほうがより好ましい。水対出発物質比約10:1〜1:1、好ましくは5:1〜1:1、より好ましくは約2:1〜1:1が非常に好ましい。温度、圧力、滞留時間又は反応時間及び連続系における流速等の操作パラメーターは、望みの結果を達成するためには、開示された範囲内でバランスされるべきである。
【0030】
【実施例】
反応の一般的な方法:
ガス状生成物を集めるようにも分析するようにも装備されていない、容量1.7mLの小さな(1.27cm)ステンレススチールのスウェージロック(Swagelok)(プラグ及びキャップ)中で全ての実験を行った。蒸留水、15%の蟻酸水溶液、15%又は30%の蟻酸ナトリウム及びシクロヘキサンを、使用の丁度1時間前アルゴンで脱酸素化した。ビヘテロアリール又はアリール−ヘテロアリール化合物(0.16g)及び脱酸素化したシクロヘキサン、蒸留水、15%の蟻酸水溶液又は15%もしくは30%の蟻酸ナトリウム(1.14mL)を、窒素でガスシールしたステンレススチールボンベに装填し、次いでこれをシールした。次いで、この反応器を攪拌せずに、テクネ(Techne)温度調節器(TC−8D)を用いて460℃に設定したテクネ(Techne)流動砂浴(モデル SBS−4)に、7分間、1時間又は2時間(460℃への上昇時間2分)入れた。この反応時間の後、この反応を冷たい空気及びドライアイスを順に用いてこのボンベを直ぐに急冷し、一酸化炭素を排出するために内容物が未だ固化している(−78℃)間にこのボンベを注意深く開いた。蒸留水及びシクロヘキサンを、CO条件を用いるプロセスから純粋な水性反応及び熱反応をそれぞれ区別するための対照として用いた。
【0031】
次いで、全体の混合物をテフロン攪拌棒を含むジャーに移した。反応器の壁を四塩化炭素又はジエチルエーテルでリンスした。これをジャー中の反応混合物に加えた。このジャーを窒素でガスシールし、テフロンでライニングしたキャップでシールし、全体の混合物を周囲温度で一夜攪拌した。その後、攪拌機を止め、生成してきた相を分離させた。有機相を水相からピペットでとり、ガスクロマトグラフィー及び質量分析法で分析した。
【0032】
分析:
スプリットインジェクションモード(split injection mode)(30:1)中で運転され、水素炎イオン化検出器(FID)を備えたヒューレットパッカード5890ガスクロマトグラフで、全ての分析を実施した。長さ15mの細管カラム(SPB−1)を用い、炉温を50〜250℃でプログラムし、ここに最初の時間を1分にセットし、続いて10℃/分の昇温速度とした。全ての化合物のGC/MS分析はVarian 3400ガスクロマトグラフ及びFinnigan MAT 700イオントラップ検出器上で行った。
【0033】
表1は出発物質の生成物への転化率%として、この方法の結果を示す。主要な成分である炭化水素生成物は表中の分離した列中に示す。15%HCOOH、15%HCOONa及び30%HCOONa中、460℃で、種々のアリール−ヘテロアリール含有出発物質を用いて説明する。
【0034】
【表1】
Figure 0003556722

Claims (1)

  1. 難分解性芳香環構造体のヘテロ原子除去向上性水素化方法であって、第一のヘテロアリール成分と、アリール成分及び第二のヘテロアリール成分から選ばれる1つの成分とを結ぶ少なくとも1つのアリール結合を有するビアリール含有構造体を、440℃〜600℃の温度を有する超臨界水及び3.4MPa〜18.6MPaのCOと接触させて芳香族ヘテロ原子含量の減ったより低分子量の生成物を生成する前記方法。
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