JP3556402B2 - 微量元素量および同位体比測定方法とその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザー法による微量元素量および同位体比の測定方法とその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザー光照射により測定対象物内に存在するppmオーダ(10のマイナス6乗分の1オーダ)あるいはそれ以下の微量元素を分析する方法として、例えば特開平3-245043号公報および特開平4-274743号公報に記載されている技術が知られている。
【0003】
特開平3-245043号公報に開示されている分析方法は、励起光を集光して測定対象物に照射し、その焦点において測定対象物をブレイクダウンさせてプラズマ化し、このプラズマより放射される原子蛍光を測定する際に、特定元素を再励起させる波長を有する再励起用レーザー光を照射し、原子蛍光の蛍光強度を増加させる分析方法である。
【0004】
一方、特開平4-274743号公報に開示されている分析方法は、金属にレーザー光を照射して被測定元素を原子化させ、原子化した被測定元素に、被測定元素の発光スペクトルを励起するために必要な周波数と同一、あるいは半分の周波数の第2のレーザー光を照射してこれを励起し、スペクトル光を光ファイバにより、分光装置まで伝送して、この分光装置により分析する方法である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来のレーザー光による元素の分析方法は、主として多元素からなる試料に対する方法であり、微量元素および複数の同位体を有する元素を測定するための配慮が十分でなかった。
【0006】
従来の方法は、主として測定対象物が含有する元素および同位体の励起レベルに合致した波長のレーザー光を照射する方法である。しかしながら、例えば励起用レーザー光として1波長照射し、基底および励起レベル間の2準位からの蛍光測定により測定対象物が含有する元素量および同位体比を検出する場合には、レーザー光強度をいくら強くしても発生する蛍光はレーザー照射された原子の1/2 の蛍光量にしか相当しない。
【0007】
また、被測定元素および同位体が奇数核である場合にはその励起レベルはいわゆる超微細構造を呈し、複数の吸収線に分裂する。したがって、測定対象物に含まれる奇数核の元素量および同位体比を効率良く検出するためには分裂した吸収線に対して効率良くレーザー光照射を行う必要がある。
【0008】
さらに、被測定元素の同位体シフト量が小さい場合には、複数同位体の吸収線が近接し、従来のレーザー光の吸収波長の差を用いた方法だけでは同位体間の分離が難しい場合がある。また、光ファイバを用いた測定装置が提案されているが、発生する蛍光のみを光ファイバで伝送することを目的としている。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、微量元素量および同位体比の測定を行うにあたり、より高い検出感度を得ることができる微量元素量および同位体比測定方法と、励起用レーザー光を導光する照射用光ファイバを使用して励起用レーザー光をチャーピングさせることができる微量元素量および同位体比測定装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、レーザー光照射により測定対象物から放出される原子をさらに多段階にレーザー光励起し、その際発生する蛍光ないしはイオン量から前記測定対象物が含有する微量元素量および同位体比測定方法において、前記測定対象物中に含まれる微量元素および同位体の励起レベルの全角運動量の組み合わせと励起用レーザー光の偏光状態の組み合わせを調整することを特徴とする。
【0011】
この発明では、測定対象物中に含まれる被測定微量元素および同位体の吸収波長が近接する場合には、エネルギーレベルの全角運動量Jが小さくなるような、または大きくなるような組み合わせの励起用レーザー光を照射する。
【0012】
これにより、偶数核の同位体は上位エネルギーレベルにいくほど励起され難くなるが、奇数核の同位体は照射する励起用レーザー光の偏光方向を揃えることによって上位エネルギーレベルへの遷移が多くなるため、多くの原子を励起することが可能となる。
【0013】
逆に、被測定微量元素および同位体の吸収波長が近接していて、同位体毎の分離が波長の差だけでは困難である場合に、被測定微量元素および同位体の励起レベルの全角運動量Jが励起に伴って徐々に減少するような組み合わせを採用し、偏光方向がすべて揃った直線偏光のレーザー光を照射する。
【0014】
これにより、奇数核同位体の方が偶数核同位体よりも励起されやすいため、両者を区別しやすくなることから、測定対象物が含有する微量元素量および同位体比の検出感度を高めることができる。
【0015】
請求項2の発明は、試料照射セルと、この試料照射セル内に配置した測定用試料に原子化用レーザーを照射する原子化用レーザー装置と、前記原子化用レーザー光の照射により前記測定用試料から放出されるプラズマ化した被測定元素および同位体の原子をさらに多段階に励起するレーザー光を発生する第1段励起用レーザー装置および第2段励起用レーザー装置と、前記第1段励起用レーザー装置に接続した波長変更装置と、前記第2段励起用レーザー装置に接続した偏光特性変更装置と、この偏光特性変更装置からのレーザー光と前記波長特性変更装置からのレーザー光を合成する光合成ミラーと、前記原子化用レーザー光の蛍光またはイオンを信号レンズを介して入射する信号検出器と、この信号検出器に接続した信号処理装置または蛍光分析装置とを具備したことを特徴とする。
【0016】
この発明では、チャーピングを光伝送のための光ファイバで行うことにより、一般に用いられる非線形光学結晶を用いたチャーピング装置が不要となり、システムを簡素化することができる。
【0017】
請求項3の発明は、前記測定用試料を配置した前記試料照射セル内に原子化用レーザー光と励起用レーザー光を導光する照射用光ファイバと、前記測定用試料から発生する蛍光を蛍光分析装置へ導光する蛍光測定用光ファイバとを備えることを特徴とする。
【0018】
この発明では、原子化用のレーザー光と励起用レーザー光を導光する光ファイバと発生する蛍光を蛍光分析装置へ導光する光ファイバを備えている。このため、従来は測定対象物をレーザー装置や蛍光ないしはイオン信号計測器のある場所へ運び、そこで測定する必要があったが、光伝送を全て光ファイバで行うことにより、測定対象試料の採取が難しい場所での測定が可能となる。
【0019】
請求項4の発明は、前記試料照射セルが複数設けられ、前記試料照射セル内に配置されたそれぞれの測定用試料に原子化用レーザー光と励起用レーザー光を導光する照射用光ファイバと前記試料照射試料から発生する蛍光を蛍光分析装置へ導光する複数の蛍光測定用光ファイバとを有し、これら複数の蛍光測定用光ファイバを結束してなることを特徴とする。
【0020】
この発明では、複数の測定点がある場合に、原子化用レーザー光と励起用レーザー光を導光する光ファイバと、発生する蛍光を蛍光分析装置へ導光する光ファイバとを全て1つにまとめることにより、1セットの原子化用レーザー装置と励起用レーザー装置と蛍光分析装置で、複数の測定点における測定対象物が含有する微量元素量および同位体比を測定でき、コンパクトな装置を提供することができる。
【0021】
請求項5の発明は、前記試料照射セルに光学窓を取り付け、この光学窓を通して前記測定用試料に前記励起用レーザー光を照射する照射用光ファイバと前記測定用試料からの蛍光を導出する蛍光測定用光ファイバを設けてなることを特徴とする。
【0022】
この発明では、光学窓をバウンダリーとして、測定対象物を内蔵する装置に接合できるようにすることにより、インサイチュ(in−situ その場で)かつ遠隔的に、測定対象物が含有する微量元素量および同位体比を測定できる。
【0023】
【発明の実施の形態】
まず本発明に係るレーザーによる微量元素量および同位体比測定方法において使用する装置の全体構成を図1に基づき説明する。
図1中、符号1は測定対象物となる測定用試料で、試料照射セル17内の所定の位置に配置される。この試料照射セル17の外側には測定用試料1に原子化用レーザー光2を照射するための原子化用レーザー装置7,反射ミラー12および原子化用レーザーレンズ14が配置されている。
【0024】
また、第1段励起用レーザー光4を発生させるための第1段励起用レーザー装置8と、第2段励起用レーザー光5を発生させるための第2段励起用レーザー装置9が試料照射セル17の外側に配置されている。
【0025】
第1段励起用レーザー光4を入射する波長特性変更装置10と、第2段励起用レーザー光5を入射する偏光特性変更装置11と、波長特性変更装置10の出射側に反射ミラー12と、偏光特性変更装置11の出射側に光合成ミラー13および励起用レーザーレンズ15が配置されている。
【0026】
さらに、測定用試料1から発生した蛍光ないしイオン6を信号収束レンズ16を介して入射する信号検出器18が試料照射セル17の外側に配置され信号検出器18からの信号を入力する信号処理装置19または蛍光分析装置29が配置されている。
【0027】
原子化用レーザー7にはパルスレーザー,チタンファイアレーザーを用い、YAGレーザー,エキシマレーザー,半導体レーザー等のレーザーが適用可能である。また、第1段および第2段励起用レーザー4,5には波長可変レーザーを用い、色素レーザー,チタンサファイアレーザーなどの波長可変固体レーザーが適用可能である
波長特性変更装置10にはチャーピング装置および周波数変調装置が適用され、偏光特性変更装置11には波長板が適用される。信号検出器18には光電子増倍管,フォトダイオード,CCDのような微弱光検出器や、ファラデーカップや2次電子増倍管などの微弱イオンや検出器を用いる。信号処理装置19には、ロックインアンプやボックスカー積分器のような繰り返し信号の処理装置を用いる。
【0028】
また、レーザー光のタイミングについては、原子化用レーザー7,励起用レーザー4,5の順に照射されるよう、パルスジェネレーター等を用いて適切なタイミング制御を行い照射する。このような機器構成による計測方法により、従来よりも高感度な微量元素量および同位体比の測定が可能となる。
【0029】
つぎに図1により第1の実施の形態を説明する。
本実施の形態において使用する装置は図1に示したものと同様であるので、とくに装置の説明は省略する。本実施の形態では、偏光特性変更装置11として 1/4波長板に代表される位相差板が適用される。
【0030】
被測定元素および同位体の吸収波長(吸収周波数)が近接する場合には、特定の被測定同位体のみ励起可能となるような第1段および第2段励起用レーザー光4,5の偏光の組み合わせをとり、これを原子に照射する。
【0031】
例えば、2段階励起の場合に、レベルの全角運動量Jが励起に伴って徐々にJ=3→4→5のように増加するか、または徐々にJ=3→2→1のように減少するような組み合わせになる励起レベルを設定し、第1段階励起レーザー4および第2段励起レーザー5の偏光状態を異なる円偏光の組み合わせに選ぶ(一方を右円偏光に選び、他方を左円偏光に選ぶ)と、偶数核同位体の励起率の変動は奇数核同位体よりも大きいため、両者を区別して検出しやすくすることができる。
【0032】
つぎに図2により第2の実施の形態を説明する。装置構成は図1と同様である。
いま、図2(a)に示すように被測定元素および同位体の核子数が奇数の場合には吸収波長(吸収周波数)は超微細構造23を呈しており、これらの強度の総和がその被測定元素および同位体の存在量に比例する。
【0033】
このような場合は、図2(b)に示すように励起用レーザー光4,5の波長(周波数)モードをマルチモード(一般にレーザー光は図2(c)にしめしたようなシングルモード)とし、モード間隔を超微細構造23の間隔と同等にし、かつ超微細構造23の全体をカバーするようなモード幅を設定する。本実施の形態によれば、超微細構造23を呈する奇数核子全体を励起できるので、奇数核子を有する被測定微量元素量および同位体の検出感度を高めることが可能である。
【0034】
つぎに図3および図4により第3の実施の形態を説明する。
図3(a)〜(d)はチャーピングの原理をグラフで示し、図4(a)〜(c)はチャーピング装置をグラフと概略図で示している。装置構成は図1と同様であり、波長特性偏光装置10として図4のチャーピング装置が適用可能である。
【0035】
図3は、励起用レーザー光4をチャーピングすることについて説明したものである。図3(a)は、被測定元素および同位体の吸収波長(周波数ν0 )を示した図であり、励起用レーザー光4をチャーピングしない場合であれば、この吸収波長(周波数ν0 )と同一の波長(周波数ν0 )を持つ励起用レーザー光4を照射し、微量元素量や同位体比の測定を行う。
【0036】
それに対し、励起用レーザー光4をチャーピングするとは、図3(b)に示すように、励起用レーザー光4の波長(周波数)を、被測定元素および同位体の吸収波長(周波数ν0 )と同一の波長(周波数ν0 )を中心として、ある波長幅(周波数Δν)を持たせて(ν0 −Δν〜ν0 +Δν)、図3(c)に示すように、時間的に変化させる(t0 −Δt〜t0 +Δt)ということである。
【0037】
図3(d)は、励起用レーザー光4をチャーピングした場合とチャーピングしなかった場合について、被測定元素および同位体の励起量の時間変化を示したものである。
【0038】
ここで、励起用レーザー光4をチャーピングした場合には、全ての被測定原子を励起状態に励起させ励起レベルの占有率の期待値を1にすることが可能である(これがいわゆる断熱反転である)のに対して、励起用レーザー光をチャーピングしない場合には、被測定原子の励起レベルの占有率の期待値は 0.5を越えないことを示している。
【0039】
本実施の形態によれば、励起用レーザー光4にチャーピングを適用すれば、励起された被測定元素および同位体から放出される蛍光信号は励起用レーザー光4チャーピングしない場合と比較して2倍に増やすことができる。
【0040】
図4はチャーピング装置を説明した図である。図4(a)は、チャーピング装置の構成であり、高周波電圧21と非線形光学結晶20からなる。ここで、非線形光学結晶20には電気光学結晶(EO結晶)を用いる。
【0041】
チャーピング装置の原理を以下に説明する。図4(a)において、非線形光学結晶20に図4(b)に示すような特性を持った高周波電圧21を印加すると非線形光学結晶20内に屈折率に変動が生じる。このとき結晶内に励起用レーザー光4を通過させると、励起用レーザー光4の波長(周波数ν)は図4(c)に示すような印加電圧を微分した波形の変動をとる。
【0042】
所望する時間特性(t0 −Δt〜t0 +Δt)の部分を切り出せば、励起用レーザー光4に、図4(c)の周波数特性(ν0 −Δν〜ν0 +Δν)を持たせる(励起用レーザー光4をチャーピングする)ことができる。
【0043】
つぎに図5により第4の実施の形態を説明する。
装置構成は図1と同様であり、波長特性偏光装置10として、図4のチャーピング装置を用い、励起用レーザー光の中心波長(周波数)を掃引した状態でチャーピングを行うことにより対応できる。
【0044】
図5(a)に示すように、吸収波長(吸収周波数)νA ,νB ,νC を持つ複数の被測定元素および同位体A,B,Cが存在する場合、図5(b)に示すように、励起用レーザー光4の中心波長(周波数)を、被測定元素および同位体の吸収波長を含む範囲内でνSTARTからνSTOPまで掃引させ、かつ±Δνの幅でチャーピングさせる。
【0045】
この場合、中心波長の掃引範囲は被測定元素あるいは同位体の吸収波長の範囲をとり、チャーピング速度は、例えばレーザーパルス幅が30ns程度であれば、数GHzパルス幅内で高速掃引する程度でよい。
【0046】
その結果、図5(c)に示すようにチャーピングをしない状態よりも励起量の違いとして2倍感度をあげた状態で、測定することができる。1つ1つの被測定元素および同位体の吸収周波数に対し、それぞれ励起用レーザー光4の中心波長を合わせ、チャーピングを行うよりも効率的である。
【0047】
つぎに図6により第5の実施の形態を説明する。
装置構成は図1と同様であり、波長特性偏光装置10として、図4のチャーピング装置を用い、励起用レーザー光のチャーピング幅を所望するチャーピング幅に固定することにより、適用できる。
【0048】
図6(a)に示すように、吸収波長(吸収周波数)がνA およびνC の被測定元素、ないしは吸収波長(周波数)がνB の被測定同位体が波長(周波数)近接状態で存在する場合、図6(b)に示すように、励起用レーザー光4の中心波長を、それぞれの吸収波長νA ,νB ,νC に掃引・固定し、波長設定後、隣接する他の被測定元素ないしは同位体の吸収波長を励起しない最大波長幅(周波数幅)で励起用レーザー光4をチャーピングさせる。
【0049】
これにより、小さいピークに隣接する大きなピークの影響を回避することができる。なお、チャーピング幅22については対象とする同位体の超微細構造幅に対応させて増減させればこの効果はより効果的である。
【0050】
つぎに図7により第6の実施の形態を説明する。
装置構成は図1と同様であり、波長特性偏光装置10として、図4のチャーピング装置を用い、励起用レーザー光4のチャーピング幅を所望するチャーピング幅にすることにより、適用できる。
【0051】
図7(a)に示すように被測定元素および同位体の核子数が奇数の場合には吸収波長(吸収周波数)は超微細構造23を呈しており、これらの強度の総和がその被測定元素あるいは同位体の存在量に比例する。
【0052】
この場合、励起用レーザー光は、超微細構造23の重心の周波数ν0 を中心とし、(ν0 −Δν〜ν0 +Δν)の幅で、超微細構造23全体をカバーするように図7(b)に示すようにチャーピングを行う。この方法により、奇数核子全体を励起できるので、奇数核子を有する被測定微量元素量あるいは同位体の検出感度を高めることができる。
【0053】
つぎに図8により第7の実施の形態を説明する。
本実施の形態は微量元素量および同位体比測定装置に関するもので、大枠の構成は図1に示す実施の形態と同様で、図1と同一部分には同一符号を付して重複する部分の説明は省略する。
すなわち、本実施の形態は図1に示す波長特性偏光装置10の代わりに図8(a)のように励起用レーザーレンズ15と光ファイバ27を使用したことにある。
【0054】
ここで、図8(a)のように励起用レーザー光4を励起用レーザーレンズ15,光ファイバ27を通すと、光ファイバ27内では非線形屈折率による自己位相変調効果が誘起され、レーザーパルス波形(図8(b))の時間微分に比例する周波数変調(図8(c))が引き起こされる。
【0055】
したがって、励起用レーザー光のパルスの中央部では時間とともに周波数が低周波から高周波側に掃引される。この周波数変調量(チャーピング幅)については励起用レーザー光強度と光ファイバ27の長さを変えることによって変化させることができる。
これにより一般に用いられる非線形光学結晶を用いたチャーピング装置が不要になり、システムを簡素化することが可能となる。
【0056】
つぎに図9により第8の実施の形態を説明する。
本実施の形態は微量元素量および同位体比測定装置に関するもので、大枠の構成は第1の実施の形態と同様で、図1と同一部分には同一符号を付して重複する部分の説明は省略する。
【0057】
すなわち、図9において、同一光軸上に導かれた原子化用レーザー光2と励起用レーザー光4,5を光ファイバ27へ通し、その他端を試料照射セル17内に挿入し、測定用試料1へレーザー光を照射する。また、測定用試料1中の被測定元素および同位体から発生した蛍光ないしはイオン6を蛍光測定用光ファイバ28へ通し、その他端を蛍光分析装置29へと導き、測定を行う。
【0058】
本実施の形態によれば、光ファイバ27,28を利用することにより、装置をコンパクト化でき、遠隔的に測定対象物が含有する微量元素量および同位体比を測定することができる。
【0059】
つぎに図10により第9の実施の形態を説明する。
本実施の形態は微量元素量および同位体比測定装置に関するもので、大枠の構成は第1の実施の形態と同様で、図1と同一部分には同一符号を付して重複する部分の説明は省略する。
【0060】
すなわち、図10において複数の試料照射セルに内包された測定試料1がある場合には、原子化用レーザー光2と励起用レーザー光4,5を光ファイバ27へ通し、光ファイバ27の他端を光路切り替え器30により切り替えてそれぞれの試料照射セル17へ導光する。また、それぞれの測定用試料1から発生した蛍光を光ファイバ28へ通し光ファイバ28の他端を束ねて蛍光分析装置29へと導き測定を行う。
【0061】
本実施の形態によれば、光ファイバ27,28を利用することにより、1セットの原子化用レーザー2と励起用レーザー4,5と蛍光分析装置29で、複数の測定用試料1の測定ができ、装置もコンパクトにすることができる。
【0062】
つぎに図11により第10の実施の形態を説明する。
本実施の形態は微量元素量および同位体比測定装置に関するもので、大枠の構成は第1の実施の形態と同様で、図1と同一部分には同一符号を付して重複する部分の説明は省略する。
【0063】
すなわち、図10において、例えば光学窓31をバウンダリーとできる測定用試料内蔵装置32への適用としては、測定用試料1を光学窓31の内側まで移送が行えるようにすれば、この光学窓31を通じて、原子化用レーザー光2,励起用レーザー光4,5および発生する蛍光ないしはイオン6を透過させ、測定用試料1が含有する微量元素量および同位体比の測定が可能で、悪環境下においてもインサイチュかつ遠隔的な測定が可能となる。
【0064】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明では、被測定元素および同位体の励起波長が近接する場合には、被測定元素および同位体に励起レベルの全角運動量の組み合わせと励起用レーザー光の偏光の組み合わせを選択照射することにより、測定用試料が含有する微量元素量および同位体比の検出感度を高めることができる効果がある。
【0065】
請求項2に記載の発明では、励起用レーザー光のチャーピングを光伝送のための光ファイバで行うもので、これにより一般に用いられる非線形光学結晶を用いたチャーピング装置が不要になり、システムを簡素化することができるという効果を奏する。
【0066】
請求項3に記載の発明では、光ファイバによる導光を行うことにより、装置をコンパクト化でき、遠隔的に被測定微量元素量および同位体比の測定をすることができるという効果を奏する。
【0067】
請求項4に記載の発明では、複数の測定点がある場合には、各測定点における光ファイバを全て1つにまとめることにより、1セットの原子化用レーザー装置と励起用レーザー装置と蛍光分析装置で、同時に複数の測定点における被測定元素量および同位体比を測定することができ、コンパクトな装置を提供することができるという効果を奏する。
【0068】
請求項5の発明では、光学窓をバウンダリーとできる測定対象物を内蔵する装置に対して、当該装置に光学窓を介して接合できるようにすることで、in−situかつ遠隔的に被測定元素量および同位体比を測定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る微量元素量および同位体比測定方法の第1の実施の形態を説明するための装置全体をブロックで示す構成図。
【図2】本発明の第2の実施の形態を説明するためのもので、(a)は吸収量と周波数の関係を示す波形図、(b)はレーザー強度と周波数の関係をマルチモードの例で示す波形図、(c)は(b)においてシングルモードの例で示す波形図。
【図3】本発明の第3の実施の形態を説明するためのもので、(a)は吸収量と周波数の関係を示す特性図、(b)はレーザー強度と周波数との関係を示す特性図、(c)はレーザー周波数と時間との関係を示す特性図、(d)は励起量と時間の関係を示す特性図。
【図4】(a)は図3におけるチャーピング装置を概略的に示す模式図、(b)は印加電圧と時間との関係を示す特性図、(c)は同じく周波数と時間との関係を示す特性図。
【図5】本発明の第4の実施の形態を説明するためのもので、(a)は吸収量と周波数の関係を示す特性図、(b)はレーザー周波数と時間との関係を示す特性図、(c)は信号強度と時間および波長との関係を示す波形図。
【図6】本発明の第5の実施の形態を説明するためのもので、(a)は吸収量と周波数の関係を示す特性図、(b)はレーザー周波数と時間の関係を示す特性図。
【図7】本発明の第6の実施の形態を説明するためのもので、(a)は吸収量と周波数の関係を示す特性図、(b)はレーザー周波数と時間の関係を示す特性図。
【図8】(a)は本発明の第7の実施の形態を概略的に示す模式図、(b)は(a)に対応する非線形屈折率による自己位相変調効果を示す特性図、(c)は時間微分に比例する周波数変調を示す特性図。
【図9】本発明の第8の実施の形態を要部のみをブロックで示す構成図。
【図10】本発明の第9の実施の形態を要部のみをブロックで示す構成図。
【図11】本発明の第10の実施の形態を要部のみをブロックで示す構成図。
【符号の説明】
1…測定用試料(測定対象物)、2…原子化用レーザー光、3…プラズマ化した被測定元素および同位体、4…第1段励起用レーザー光、5…第2段励起用レーザー光、6…蛍光ないしはイオン、7…原子化用レーザー装置、8…第1段励起用レーザー光、9…第2段励起用レーザー光、10…波長特性変更装置、11…偏光特性変更装置、12…反射ミラー、13…光合成ミラー、14…原子化用レーザーレンズ、15…励起用レーザーレンズ、16…信号収束レンズ、17…試料照射セル、18…信号検出器、19…信号処理装置、20…非線形光学結晶、21…高周波電圧、22…チャーピング幅、23…超微細構造、24…励起レベル、25…許容される遷移、26…偏光変更素子、27…照射用光ファイバ、28…蛍光測定用光ファイバ、29…蛍光分析装置、30…光路切り替え器、31…光学窓、32…測定用試料内蔵セル。
Claims (5)
- レーザー光照射により測定対象物から放出される原子をさらに多段階にレーザー光励起し、その際発生する蛍光ないしはイオン量から前記測定対象物が含有する微量元素量および同位体比測定方法において、前記測定対象物中に含まれる微量元素および同位体の励起レベルの全角運動量の組み合わせと励起用レーザー光の偏光状態の組み合わせを調整することを特徴とする微量元素量および同位体比測定方法。
- 試料照射セルと、この試料照射セル内に配置した測定用試料に原子化用レーザーを照射する原子化用レーザー装置と、前記原子化用レーザー光の照射により前記測定用試料から放出されるプラズマ化した元素および同位体の原子をさらに多段階に励起するレーザー光を発生する第1段励起用レーザー装置および第2段励起用レーザー装置と、前記第1段励起用レーザー装置に接続した波長変更装置と、前記第2段励起用レーザー装置に接続した偏光特性変更装置と、この偏光特性変更装置からのレーザー光と前記波長特性変更装置からのレーザー光を合成する光合成ミラーと、前記原子化用レーザー光の蛍光またはイオンを信号レンズを介して入射する信号検出器と、この信号検出器に接続した信号処理装置または蛍光分析装置とを具備したことを特徴とする微量元素量および同位体比測定装置。
- 前記測定用試料を配置した前記試料照射セル内に原子化用レーザー光と励起用レーザー光を導光する照射用光ファイバと、前記測定用試料から発生する蛍光を蛍光分析装置へ導光する蛍光測定用光ファイバとを備えることを特徴とする請求項2記載の微量元素量および同位体比測定装置。
- 前記試料照射セルが複数設けられ、前記試料照射セル内に配置されたそれぞれの測定用試料に原子化用レーザー光と励起用レーザー光を導光する照射用光ファイバと前記試料照射試料から発生する蛍光を蛍光分析装置へ導光する複数の蛍光測定用光ファイバとを有し、これら複数の蛍光測定用光ファイバを結束してなることを特徴とする請求項2記載の微量元素量および同位体比測定装置。
- 前記試料照射セルに光学窓を取り付け、この光学窓を通して前記測定用試料に前記励起用レーザー光を照射する照射用光ファイバと前記測定用試料からの蛍光を導出する蛍光測定用光ファイバを設けてなることを特徴とする請求項2記載の微量元素量および同位体比測定装置。
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