JP3555642B2 - 光走査装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、レーザプリンタやレーザスキャナ、または光計測や光情報処理などに用いられる光走査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光走査装置としては、従来、回転多面鏡とf−θレンズを用いたものが、よく用いられている。
【0003】
図9は、この回転多面鏡およびf−θレンズを用いた従来の光走査装置を示し、その光走査装置は、レーザダイオードなどの光源43、この光源43からの光をコリメートするレンズ19、このレンズ19を介した光を反射させる回転多面鏡27、この回転多面鏡27で反射した光を直線90上に集光させるf−θレンズ20を備え、回転多面鏡27の回転およびf−θレンズ20によって、直線90上を集光スポットPが等速で走査する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図9に示したような回転多面鏡27およびf−θレンズ20を用いた従来の光走査装置は、光が直線90上を逐次的に走査するだけである。複数の光走査装置を組み合せることによって2次元または3次元の光走査も可能であるが、その場合でも逐次的に光走査できるだけであり、任意の位置を任意の順序で光走査することはできない。
【0005】
そこで、この発明は、光走査の自由度を有し、任意の位置を任意の順序で光走査することができるようにしたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明では、
複数のホログラムが記録されたホログラム媒体と、このホログラム媒体に再生用参照光を照射するホログラム再生手段とを設け、
前記複数のホログラムは、それぞれ、再生光が個々のホログラムごとに異なる空間位置に集光スポットを形成するための書込光と、これと対をなす参照光とによって記録されたものとし、
前記ホログラム再生手段は、前記再生用参照光によって前記複数のホログラムを、それぞれのホログラムに対応した空間位置に集光スポットを形成するように再生するものとする。
【0007】
【作用】
図1に、この発明の光走査装置の原理および作用を示すと、上記のように構成した、この発明の光走査装置においては、ホログラム媒体1には複数のホログラムが記録されている。ただし、その複数のホログラムは、ある参照光に対して特定の再生光のみが再生されるように、記録されたものである。
【0008】
すなわち、複数のホログラムのホログラム媒体1への記録は、次のように行う。まず、直線90上に集光スポットP1を形成するような1番目の書込光101−1を、1番目の参照光102−1を用いて、ホログラム媒体1に記録する。
【0009】
次に、直線90上に集光スポットP2を形成するような2番目の書込光101−2を、2番目の参照光102−2を用いて、ホログラム媒体1に記録する。以下同様にして、n番目の書込光101−nまでを順次、ホログラム媒体1に記録する。
【0010】
このようにホログラム媒体1にn個のホログラムを記録した状態で、この発明の光走査装置においては、ホログラム媒体1に書込光101を入射させずに、ホログラム媒体1に1番目の参照光102−1を入射させる。これによって、ホログラム媒体1に記録された1番目の書込光101−1の波面が1番目の再生光103−1として再生され、直線90上に集光スポットP1が形成される。
【0011】
同様に、ホログラム媒体1にn番目の参照光102−nを入射させると、ホログラム媒体1に記録されたn番目の書込光101−nの波面がn番目の再生光103−nとして再生され、直線90上に集光スポットPnが形成される。
【0012】
したがって、参照光102を1番目からn番目まで、順次切り替えることによって、直線90上をスポットP1からスポットPnまで、離散的にではあるが、光走査することができる。また、必要に応じてnを十分大きくすることによって、十分滑らかに光走査することが可能となる。
【0013】
さらに、記録する集光スポットの位置は個々のホログラムごとに任意に設定できるので、空間内に自由な軌跡を描いて走査し、またはある場所からある場所に飛び飛びに走査し、または走査の順序を変えるなど、従来では不可能だった自由な光走査が可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
上述したように、この発明の光走査装置は、複数のホログラムが記録されたホログラム媒体と、このホログラム媒体に再生用参照光を照射するホログラム再生手段とを備えるものであり、その複数のホログラムは、それぞれ、再生光が個々のホログラムごとに異なる空間位置に集光スポットを形成するための書込光と、これと対をなす参照光とによって記録されたものであり、そのホログラム再生手段は、再生用参照光によって複数のホログラムを、それぞれのホログラムに対応した空間位置に集光スポットを形成するように再生するものである。
【0015】
そして、この発明の光走査装置において、ある参照光に対してただ1つの集光スポットを再生する方法としては、(1)複数のホログラムを、位相空間中で互いに直交する参照光を用いて、ホログラム媒体中の同じ位置に重ねて記録する方法と、(2)複数のホログラムを、ホログラム媒体中の異なる位置に記録する方法と、を利用することができる。
【0016】
(1)の場合、互いに直交する参照光として、ホログラム媒体への入射角度が異なるn個の参照光、波長が異なるn個の参照光、または空間的な直交関数パターンに沿って空間変調されたn個の参照光、などを利用することができる。(2)の場合、ホログラム媒体中の異なる位置に参照光を照射する方法として、参照光を走査させる方法や、ホログラム媒体を移動または回転させる方法などを利用することができる。また、(1)と(2)の方法を併用することもできる。
【0017】
以下、この発明の光走査装置の幾つかの具体例を、ホログラム媒体へのホログラム記録方法とともに示す。
【0018】
〔実施例1〕
図2は、この発明の光走査装置の第1の例を示す。ホログラム媒体1としては、フォトリフラクティブ材料である10mm角のLiNbO:Fe結晶を用いる。書込光101は、ホログラム媒体1から200mm離れた直線90上に集光スポットを形成する集束光とする。集光スポットは、スポットP1〜P11で示すように、直線90上に一列に5mm間隔で11点、得られるようにする。
【0019】
参照光102を得る参照光生成手段は、光源41、音響光偏向器3およびレンズ12,13によって構成する。半透鏡28および受光素子51は、後述する実施例7のために設けるもので、この実施例1では不要である。
【0020】
光源41としてAr+レーザを用いて、これからの488nmの発振線を音響光偏向器3に入射させ、音響光偏向器3で回折により偏向された光を、レンズ13および12によってホログラム媒体1に導く。レンズ13および12の焦点距離を等しくして、これをfとすると、音響光偏向器3とレンズ13との距離をf、レンズ13とレンズ12との距離を2f、レンズ12とホログラム媒体1の中心との距離をfとする。これによって、音響光偏向器3での偏向角にかかわらず、参照光102がホログラム媒体1の中心を通るようになる。
【0021】
音響光偏向器3としては、二酸化テルルからなるものを用いる。そして、その変調周波数を75MHzから125MHzまで、5MHzごとにステップ状に変化させることによって、ホログラム媒体1への入射角が0.25°ずつ異なる1番目から11番目までの11個の参照光102を得る。
【0022】
上記の書込光101および参照光102によって、次のようにホログラム媒体1に11個のホログラムを記録する。まず、直線90上に集光スポットP1を形成するような1番目の書込光101−1を、1番目の参照光102−1を用いて、ホログラム媒体1に記録する。
【0023】
次に、直線90上に集光スポットP2を形成するような2番目の書込光101−2を、2番目の参照光102−2を用いて、1番目の書込光101−1に重ねてホログラム媒体1に記録する。以下同様にして、11番目の書込光101−11までを、順次重ねてホログラム媒体1に記録する。
【0024】
このようにホログラム媒体1に11個のホログラムを記録した状態で、ホログラム媒体1に書込光101を入射させずに参照光102のみを入射させ、音響光偏向器3の変調周波数を75MHzから125MHzまで、5MHzごとにステップ状に変化させることによって、1番目の集光スポットP1から11番目の集光スポットP11までを順次再生することができ、光走査を行うことができる。
【0025】
ホログラム媒体1としては、LiNbO:Fe結晶に限らず、BaTiO,SBN,KTNなどの強誘電体、BSOなどの常誘電体、GaAsなどの半導体、PVK:DMNPAA:TNFなどの有機化合物など、他のフォトリフラクティブ材料を利用することができる。また、フォトリフラクティブ材料に限らず、銀塩写真材料やフォトポリマーなど、公知のホログラム記録材料を利用することができる。
【0026】
また、上記の例はホログラム媒体1を体積ホログラムとする場合であるが、薄いホログラムでも、この発明を実現することができる。ただし、薄いホログラムでは再生光103に書込光101の虚像が現れるとともに、薄いホログラムは体積ホログラムより回折効率が低いことから、体積ホログラムを用いる方が好ましい。
【0027】
書込光101は、集束光でなくてもよい。例えば、図3に示すように、書込光101を平行光とし、ホログラム媒体1と直線90との間にレンズ11を設けることによって、書込光101を直線90上の点Pnに集束させることができる。要するに、最終的に直線90上に集光スポットPnを形成できれば、書込光101はどのような波面を有するものでもよい。
【0028】
参照光生成手段としては、音響光偏向器に限らず、電気光学偏向器や、回転鏡、回転多面鏡、振動鏡などの機械式偏向器を利用することができる。
【0029】
しかし、図2の例のように機械的な偏向手段を用いない場合には、機械的な偏向手段を用いた場合に問題となる騒音や振動を生じない利点がある。また、音響光偏向器3単体によって可能な偏向角度は数度程度であるが、図2の例のように構成することによって偏向角度を数十度にすることも可能である。
【0030】
上述した実施例1によれば、集光スポットの間隔を一定として、参照光102を一定時間間隔で切り替えることによって、f−θレンズを用いることなく容易に等速走査が可能となる。
【0031】
また、図9に示したような回転多面鏡27およびf−θレンズ20を用いた従来の光走査装置では、偏向角度に依存して集光位置が直線90の前後にずれる、いわゆる像面歪曲を生じるが、実施例1によれば、原理的に像面歪曲を生じない。
【0032】
しかも、実施例1によれば、直線90上をP1→P2→‥‥の順に逐次的に光走査できるだけでなく、任意の集光スポットを任意の順序で再生することができ、ある集光スポットを飛ばして他の集光スポットを走査することができる。
【0033】
〔実施例2〕
図4は、この発明の光走査装置の第2の例を示す。この例では、4個の集光スポットP1〜P4が書込光101の光軸方向に一列に並ぶように、書込光101を平行光としてレンズ18に入射させ、レンズ18とホログラム媒体1との距離を変えて、1〜4番目の書込光101−1〜101−4を生成する。参照光生成手段は、図では省略したが、例えば図2に示した実施例1と同様に構成することができ、1〜4番目の参照光102−1〜102−4が得られるようにする。
【0034】
そして、まず、レンズ18を1番目の位置にして、レンズ18の光軸上に集光スポットP1を形成するような1番目の書込光101−1を、1番目の参照光102−1を用いて、ホログラム媒体1に記録する。
【0035】
次に、レンズ18を2番目の位置にして、レンズ18の光軸上に集光スポットP2を形成するような2番目の書込光101−2を、2番目の参照光102−2を用いて、1番目の書込光101−1に重ねてホログラム媒体1に記録する。以下同様にして、4番目の書込光101−4までを、順次重ねてホログラム媒体1に記録する。
【0036】
このようにホログラム媒体1に4個のホログラムを記録した状態で、ホログラム媒体1に書込光101を入射させずに参照光102のみを入射させ、参照光生成手段を構成する、例えば図2に示したような音響光偏向器3の変調周波数を変化させることによって、4個の集光スポットP1〜P4を順次、または任意の順序で再生することができ、光走査を行うことができる。
【0037】
この例の光走査装置は、可変焦点調節機構として利用することができる。また、この実施例2によれば、直線上の集光スポットの走査のみならず、任意の曲線、任意の平面もしくは曲面、または任意の3次元空間内を、任意に光走査することができる。
【0038】
〔実施例3〕
図5(A)は、この発明の光走査装置の第3の例を示す。この例は、参照光生成手段を、空間光変調器4のレンズ14によるフーリエ変換像を参照光102として用いる構成にするとともに、図2に示した実施例1と同様の直線90上に、4個の集光スポットP1〜P4を配置する場合である。
【0039】
空間光変調器4としては、電気的に位相を0またはπの間で変化させることのできる液晶空間光変調器を用いる。すなわち、図5(B)の1〜4番目に示す4つの位相パターンを用いて、それぞれ集光スポットP1〜P4を形成するような4つの書込光101−1〜101−4を、順次重ねてホログラム媒体1に記録する。図5(B)の位相パターンは、アダマール関数であって、互いに直交しているものである。
【0040】
2n次(nは整数)のアダマール関数は、次の式(1)(2)で表され、図5(B)の位相0,πが、式(1)(2)の行列要素1,−1,Hn,−Hnに対応する。
【0041】
【数1】
Figure 0003555642
【0042】
ただし、空間的な直交関数パターンとしては、アダマール関数に限らず、例えば、離散コサイン関数や離散サイン関数など、公知の直交関数パターンを利用することができる。また、空間的な直交関数パターンは、図5(B)のような空間的に離散化したパターンである必要はなく、連続的に位相が変化する関数であってもよい。
【0043】
このようにホログラム媒体1に4個のホログラムを記録した状態で、ホログラム媒体1に書込光101を入射させずに参照光102のみを入射させ、空間光変調器4の位相パターンを図5(B)の1〜4番目に示すパターンとすることによって、4個の集光スポットP1〜P4を順次、または任意の順序で再生することができ、光走査を行うことができる。
【0044】
〔実施例4〕
図6は、この発明の光走査装置の第4の例を示す。この例は、参照光102として波長の異なるレーザ光を用いる場合である。具体的に、この例では、参照光生成手段は、光源42、それぞれ半透鏡である反射鏡25,26間に色素セル31を配した共振器、圧電素子5、およびレンズ15,16からなるビームエキスパンダによって構成する。
【0045】
光源42としてNレーザを用いて、これからの337nmの発振線を共振器に入射させる。共振器内の色素セル31は、レーザ色素溶液が入ったもので、共振器は、いわゆる色素レーザを構成し、反射鏡25側の圧電素子5によって共振器長が電気的に変えられる。
【0046】
共振器からの出射光の一部は、レンズ15,16からなるビームエキスパンダによってビーム径が拡大されて、参照光102としてホログラム媒体1に入射する。共振器からの出射光の残りは、レンズ17に導かれて、書込光101としてホログラム媒体1に入射する。
【0047】
そして、圧電素子5に印加する電圧をステップ状に変化させることによって、それにより波長が変えられた参照光102によって、それぞれ直線90上に集光スポットP1〜P4を形成するような4個の書込光101−1〜101−4を、順次重ねてホログラム媒体1に記録する。
【0048】
このようにホログラム媒体1に4個のホログラムを記録した状態で、ホログラム媒体1に書込光101を入射させずに参照光102のみを入射させ、記録時と同様に圧電素子5に印加する電圧をステップ状に変化させることによって、4個の集光スポットP1〜P4を順次、または任意の順序で再生することができ、光走査を行うことができる。
【0049】
〔実施例5〕
図7は、この発明の光走査装置の第5の例を示す。図2または図3に示した実施例1、図4に示した実施例2、図5に示した実施例3、および図6に示した実施例4は、いずれもホログラム媒体1の同一箇所に複数のホログラムを重ねて記録する場合であるが、この例は、ホログラム媒体1の空間的に異なる場所に複数のホログラムを記録する場合である。
【0050】
この例では、ホログラム媒体1として、厚さ100μmのフォトポリマーからなるホログラム乾板を用いる。参照光生成手段は、図では省略した光源と音響光偏向器3とによって構成して、光源からの平行光を音響光偏向器3に入射させ、音響光偏向器3で回折により偏向された光が、参照光102としてホログラム媒体1上を走査するようにする。参照光102の偏向角は、音響光偏向器3の変調周波数を変化させることによって、変えることができる。
【0051】
記録にあたっては、まず、参照光102がホログラム媒体1上の位置Q1を照射するように参照光102の偏向角を決め、その1番目の参照光102−1を用いて、位置Q1を通って直線90上の集光スポットP1に集束するような1番目の書込光101−1を、ホログラム媒体1の位置Q1に記録する。
【0052】
次に、参照光102がホログラム媒体1上の位置Q2を照射するように参照光102の偏向角を決め、その2番目の参照光102−2を用いて、位置Q2を通って直線90上の集光スポットP2に集束するような2番目の書込光101−2を、ホログラム媒体1の位置Q2に記録する。以下同様にして、ホログラム媒体1の異なる位置に複数の書込光を記録する。
【0053】
このようにホログラム媒体1に複数のホログラムを記録した状態で、ホログラム媒体1に書込光101を入射させずに参照光102のみを入射させ、音響光偏向器3の変調周波数を変化させることによって、複数の集光スポットP1,P2‥‥を順次、または任意の順序で再生することができ、光走査を行うことができる。
【0054】
一般に、ホログラム媒体の同一箇所にn個のホログラムを多重記録した場合には、nの増加に伴って、回折効率は1/nに比例して低下する。しかしながら、この実施例5によれば、ホログラム媒体1の同一箇所に複数のホログラムを多重記録しないで、ホログラム媒体1の空間的に異なる場所に複数のホログラムを記録するので、高い回折効率を得ることができる。
【0055】
〔実施例6〕
図8は、この発明の光走査装置の第6の例を示す。上記の実施例5は、ホログラム媒体1の空間的に異なる位置Q1,Q2‥‥に参照光102を走査させて、集光スポットP1,P2‥‥に対応したホログラムを記録するとともに、集光スポットP1,P2‥‥を再生する場合である。
【0056】
これに対して、この例では、ホログラム媒体1を円盤状に形成して、これに一定方向から参照光102を照射するとともに、ホログラム媒体1を回転させることによって、参照光102をホログラム媒体1の円周に沿う位置Q1,Q2‥‥上に走査させる。したがって、この例の参照光生成手段は、図示していないが、光源と、ホログラム媒体1を回転させる回転機構とによって構成することができる。
【0057】
図では省略したが、書込光も一定方向からホログラム媒体1に照射し、ホログラム媒体1を回転させることによって、位置Q1,Q2‥‥上に直線90上の集光スポットP1,P2‥‥に対応したホログラムを記録する。
【0058】
このようにホログラム媒体1に複数のホログラムを記録した状態で、ホログラム媒体1に書込光を入射させずに参照光102のみを入射させ、ホログラム媒体1を回転させることによって、複数の集光スポットP1,P2‥‥を順次、または任意の順序で再生することができ、光走査を行うことができる。
【0059】
この例は一見、円盤上に複数のホログラムを配置した従来のホログラムスキャナに類似している。しかし、従来のホログラムスキャナでは、個々のホログラムがレンズの作用を示し、円盤の回転に伴って参照光のレンズへの入射瞳の位置が変化することによって光走査を行うのに対して、この例では、円盤状のホログラム媒体1上の1つ1つのホログラムが、空間中に固定された1つ1つの集光スポットに、1対1で対応づけられる点で、両者は技術的に全く異なる。
【0060】
図7に示した実施例5では、ホログラム記録時、書込光101および参照光102をホログラム媒体1上に走査させる必要がある。これに対して、この実施例6によれば、書込光および参照光102を固定して、代わりに円盤状のホログラム媒体1を回転させるので、実施例5のように書込光101と参照光102がホログラム媒体1上の同一の点を通るように制御する場合と比較すると、はるかに簡単な制御で済む利点がある。ホログラム媒体1の空間的に異なる場所に複数のホログラムを記録するので高い回折効率が得られる点は、実施例5と同じである。
【0061】
なお、ホログラム媒体1は、ある円の中心で回転させ、その円の周上に沿って複数のホログラムを記録すれば、その外形は必ずしも円盤状である必要はない。
【0062】
〔実施例7〕
上記の実施例1〜6のような、この発明の光走査装置は、例えば、書込光を画像データなどにより変調することによって、レーザプリンタなどの光書込装置として利用することができる。これに対して、この発明の光走査装置は、画像などを読み取る読取スキャナ(イメージスキャナ)として利用することもできる。実施例7は、この場合である。
【0063】
実施例7では、図2に示した実施例1において、音響光偏向器3と光源41との間に半透鏡28を配置するとともに、半透鏡28で反射した光を受光する受光素子51を設け、直線90上の集光スポットP1〜P11からの反射光を受光素子51で受光できるようにする。
【0064】
この場合、直線90上に印刷物を置き、実施例1において上述したように、ホログラム媒体1に11個のホログラムが記録されている状態で、ホログラム媒体1に書込光101を入射させずに参照光102のみを入射させ、音響光偏向器3の変調周波数を変化させることによって、印刷物上の集光スポットP1〜P11の位置からの反射光を順次、受光素子51で受光することができるとともに、受光素子51の出力値は、印刷物上のそれぞれの集光スポットP1〜P11の位置における印刷濃度に応じて変化したものとなる。
【0065】
したがって、直線90上に置かれた印刷物を読み取ることができ、読取スキャナとして利用することができる。
【0066】
【発明の効果】
上述したように、この発明によれば、空間内に自由な軌跡を描いて走査し、またはある場所からある場所に飛び飛びに走査し、または走査の順序を変えるなど、従来では不可能だった自由な光走査が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の光走査装置の原理および作用を説明するための図である。
【図2】実施例1および7の光走査装置を示す図である。
【図3】実施例1および7の光走査装置の書込光に係る別の例を示す図である。
【図4】実施例2の光走査装置を示す図である。
【図5】実施例3の光走査装置を示す図である。
【図6】実施例4の光走査装置を示す図である。
【図7】実施例5の光走査装置を示す図である。
【図8】実施例6の光走査装置を示す図である。
【図9】従来の光走査装置の例を示す図である。
【符号の説明】
1 ホログラム媒体
3 音響光偏向器
4 空間光変調器
5 圧電素子
11〜18 レンズ
25,26 反射鏡
28 半透鏡
31 色素セル
41,42 光源
51 受光素子
90 直線
101 書込光
102 参照光
103 再生光
P1,P2‥‥Pn 集光スポット

Claims (8)

  1. 複数のホログラムが記録されたホログラム媒体と、このホログラム媒体に再生用参照光を照射するホログラム再生手段とを備え、
    前記複数のホログラムは、それぞれ、再生光が個々のホログラムごとに異なる空間位置に集光スポットを形成するための書込光と、これと対をなす参照光とによって記録されたものであり、
    前記ホログラム再生手段は、前記再生用参照光によって前記複数のホログラムを、それぞれのホログラムに対応した空間位置に集光スポットを形成するように再生するものである、
    ことを特徴とする光走査装置。
  2. 請求項1の光走査装置において、
    前記複数のホログラムは、前記ホログラム媒体中の同じ位置に重ねて記録されたものであり、前記ホログラム再生手段は、位相空間中で互いに直交する再生用参照光を切り替えることによって前記複数のホログラムを再生する、ことを特徴とする光走査装置。
  3. 請求項2の光走査装置において、
    前記再生用参照光として、前記ホログラム媒体への入射角度が異なる参照光を用いることを特徴とする光走査装置。
  4. 請求項2の光走査装置において、
    前記再生用参照光として、波長が異なる参照光を用いることを特徴とする光走査装置。
  5. 請求項2の光走査装置において、
    前記再生用参照光として、空間的な直交関数パターンに沿って空間変調された参照光を用いることを特徴とする光走査装置。
  6. 請求項1の光走査装置において、
    前記複数のホログラムは、前記ホログラム媒体中の異なる位置に記録されたものであることを特徴とする光走査装置。
  7. 請求項6の光走査装置において、
    前記複数のホログラムは、円周上に沿って記録されたものであり、前記ホログラム再生手段は、前記ホログラム媒体を回転させることによって、前記再生用参照光が照射されるホログラムを切り替えることを特徴とする光走査装置。
  8. 請求項1〜7のいずれかの光走査装置において、
    前記再生光が前記集光スポット位置で反射して得られる光を受光する受光素子を設けたことを特徴とする光走査装置。
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