JP3552026B2 - チューバ用消音器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、チューバに用いられる消音器に関する。
【0002】
【従来の技術】
チューバ等の金管楽器は、通常音と異なる演奏効果の1つとして演奏音の弱音化や音色変化を生じさせるために、ミュートが用いられる。また、演奏音が近隣の迷惑になる場合には、弱音器を用いて演奏音を小さくする。これらミュート及び弱音器は、主として用途を中心に区別されるものの、金管楽器のベル部に挿入して用いられるという基本構造を有しており、構造上は厳密に区別されるものではない。本明細書においては、これらミュート及び弱音器を含めて「消音器」と称することとする。
【0003】
従来チューバ用の消音器としては、図10に示すようなものがあった。これは、音色変更用のいわゆるストレートミュートであり、曲管部から先端側へ開いたベル部の後部に挿入可能な最小径部から朝顔型に径を拡大しつつ延び該最小径部端面が開いた胴部a1と、該胴部の先端面を椀状に閉じる先端部a2とを備え、胴部の後端部又はその近傍には、ベル部内面に摩擦接触により固定されるコルク製の接触片a3が設けられている。接触片a3は、図10に示すように、消音器軸線方向に延びる細長片を周方向3箇所に設けられている。この他、図11に示すような、弱音化を目的としたいわゆるプラクティスミュートがある。これは、前述同様の胴部a1と、該胴部先端側を椀状に閉じ中心部に吹気吐出口が形成された先端部a4とを備え、胴部の後端部近傍には、周方向に連続した環状の接触片a5が設けられている。いずれの場合も、図11に示すように、接触片がベル部後部(ベル部端面の後方で環径の変化が直線状又は略直線状となった部分)に挿入される。チューバは、ベル部端面の直径についてみると360mm〜500mmというように、種々の寸法のものがある。しかも、接触片が挿入されるベル部後部は、軸線方向での径の変化が小さい。したがって、図11に例示するように、中型のチューバ(b2)に適合する大きさの消音器は、小型のチューバ(b1)に使用するとベル先端側への突出量が大きくなりすぎ、大型のチューバ(b3)に使用するとベル先端部に埋もれてしまい、いずれも適切な消音効果が得られない。また消音器の前壁の位置は、演奏時の定在波の形成に影響する。前壁がベル部端面から遠い(図11のL1)と定在波が長くなり音程が低くなる。一方、前壁がベル部端面に近い(図11のL3)と定在波が短くなり音程が高くなる。したがって、安定した音程を得るためには、適切な前壁の位置(図11のL2)を得る必要があり、消音器もチューバに合わせた種々の寸法のものを用意しなければならないという問題があった。
【0004】
さらに、従来のチューバ用消音器は、図10、図11のようにチューバのベル部に応じた大きさの朝顔型に一体的に形成されているので、嵩張り運搬上不便なものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これら従来の技術問題を解消し、種々の寸法のチューバに共通して使用することができるチューバ用消音器を提供することを目的とする。
【0006】
本発明はまた、良好な消音効果が得られるチューバ用消音器を提供することを目的とする。
【0007】
本発明はさらに、装着時にも安定した音程を維持できるチューバ用消音器を提供することを目的とする。
【0008】
本発明はさらに、運搬の際にコンパクト化することができる利便性を有したチューバ用消音器を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため、曲管部から先端側へ開いたベル部に装着されるチューバ用消音器であって、ベル部の先端寄りに開口周縁部を当接させる環状の後端部と、ベル部端面よりベル部先端側へ離れて位置し、消音用吹気吐出口を有する前壁と、前記後端部及び前壁を連結する側壁とを備えた消音器本体と、該消音器本体から後方へ延びる支持部と、該支持部から後方へ向けて延びる調整筒と、を備えており、該調整筒は少なくとも後端部が閉じられ、かつ前記チューバに装着したときに、前記ベル部後部において前記ベル部内周面との間に隙間を形成することによって演奏時の音程のずれを防止する作用をなし、前記支持部は、その作用に適した位置に前記調整筒を位置させるものであることを特徴とするチューバ用消音器を提供する。
【0012】
前記前壁は、チューバへの装着時に4〜8倍音の内の1又は2以上が正しい音程又は正しい音程に対する許容誤差度内の音程となるようにベル部端面に最も近い音圧最小点から前壁までの距離kが決められており、前記調整筒は、ベル部端面より後方へ距離kの位置から前後にベル部軸線に沿って延びているのが望ましい。
【0013】
前記調整筒は、前記ベル部端面に最も近い音圧最小点より後方へ距離kの位置から前後方向へ各々100mm以上400mm以下の長さで延びているのが望ましい。
【0014】
前記消音器本体は、前記側壁の最大径部付近を分離境界線として上部及び下部に分離可能とし、分離後に該上部を上下逆にして下部内に収納できるように、該上部を下部よりも径および高さを小さくしている
【0015】
前記調整筒及び前記支持部が、テレスコーピック式の伸縮自在構造とすることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の1実施形態に係るチューバ用消音器をチューバに装着した状態を示している。図2は、これを消音器本体の縦断面と共に示しており、図3は消音器の平面図である。以下の説明では、チューバの曲管部(図1の図外下方)からベル側へ向かう側(矢印F)を前側、先端側等とし、その逆の側(矢印R)を後ろ側、後部側等として記載する。
1.全体構造
消音器は、消音器本体1、該本体をチューバに固定するための係止部材2、消音器本体1から後方へ延びる支持部3、該支持部により支持された調整筒4、及び消音器本体に取り付けられたマイクユニット5を備えている。
【0017】
消音器本体1は、環状の後端部11、ベル部端面よりベル部先端側へ離れて位置する前壁12、前記後端部及び前壁を連結する側壁13、及び側壁に固着されたハンドル14を備えている。後端部11は、ベル部の先端寄りに当接するように外径が200mm以上400mm以下の環状とされる。外形が200mm未満だと、チューバの寸法が大きい場合に、ベル部後部に後端部13が位置し、消音器がベル部の内部に入りすぎ、演奏時の音程のずれが大きくなる。また、外形が400mmを越えると、チューバの寸法が小さい場合に、ベル部の最大径部である端面を越えてしまい、装着できなくなる。この例では、後端部の外径は325mmとされている。良好な音程を得るためには消音器本体の容積を大きくする必要がある。容積を確保しつつ全体をコンパクトにするためには、吹気吐出口120を有する前壁12を平坦又はそれに近い形状とし、側壁13を中央部で膨らんだ樽型とするのが望ましい。この観点から、側壁13は、軸線方向の略中央部を最大径部Dとし、両側へ緩やかなテーパ状に延び、前壁12は、略平坦な面とされている。この例では、側壁13の最大径部が375mm、前壁の径が270mm、後端部から前壁までの距離が460mmとされている。
【0018】
前壁12には、径の小さい消音用吹気吐出口120が設けられている。この例では、前壁12には、吹気吐出口120から後方、すなわち本体内方へテーパ状に延びる截頭円錐状の筒体121が突設されている。筒体121の内方端開口121aは、径を小さくした方が、消音効果が高いが流路抵抗が大きくなり吹奏感を悪くする。吹奏感を損ねず且つ十分な消音効果を得るには、開口121aの径をチューバのマウスピースの最小内径と略等しくすればよく、通常は6〜10mmとされ、この例では12mmである。筒体121のテーパ角θは、5〜25゜とするのが望ましく、この例では16゜である。テーパ角θが5゜より小さいと、空気の流れが阻止され吹奏抵抗が大きくなる。一方、テーパ角θが25゜より大きいと、空気の流れを整えられず、音程の移動や音量不足等が生じがちな不安定な吹奏感となる。筒体121は、吹気吐出口120から本体1内方へ100mmの長さで延びている。この長さの設定については、以下の消音器の設計手法の欄で説明する。
【0019】
ハンドル14は、消音器をチューバに着脱する際の把持部であり、U字状をなし、両端部を側壁13にビスにより固定されている。消音器本体1の材質は、合成樹脂とするのが軽量性及び製造の容易性の点から望ましいが、他に金属、紙、木、又はこれらの合成材とすることができる。
【0020】
係止部材2は、本体の側壁13の最大径部に一端を固定された伸縮性ベルト21と、該ベルトの先端に取り付けられたフック22を備えている。フック22は、チューバのベル部に係止する係止部を備え、後部はベルトを折り返して通し長さを調節し得るように、2つの扁平孔を備えている。この例では、本体側壁の3カ所に係止部材2が設けられている。
【0021】
調整筒4は、消音器装着時に、チューバのベル部後部においてベル部内周面との間に隙間をおいて延び、演奏時の音程のずれを防止する作用をする。支持部3は、その作用に適した位置に調整筒4を位置させるように、消音器本体1から延びている。調整筒4の位置及び寸法については、以下の消音器の設計手法の欄で説明する。
【0022】
マイクユニット5は、演奏音をピックアップするものであり、消音器本体1の上部1Bの下端部に取り付けられている。ユニット5は、マイクロフォン51を先端に有し、外部音響機器への接続用のジャック52が側壁13を貫通してねじ止めされている。
(作用)
消音器本体1の後端部11は、外径が200mm以上400mm以下とされているので、チューバへの装着時にベル部の先端寄りに当接することになる。ベル部の先端寄り部分は、消音器軸線方向の位置の変化に対して径を大きく変化させるように開き角が大きくなっている。したがって、チューバの寸法が異なって後端部11が当接する位置がベル部の内寄り又は外寄り等と異なっても、軸線方向にはさほど位置を異ならせなくて済む。その結果、音程に影響するベル部端面からの突出量は、チューバの大小に拘わらず、差異が小さくなる。したがって、大小様々なチューバに対して、音程の安定性を保って使用することができる。
【0023】
マイクユニット5を利用して、演奏音をアンプで増幅しヘッドホンで聴けば、自然音に近い音を聴きながら演奏することができる。また、他の電気音響機器、映像機器、MIDI変換器等に、マイク出力を接続すれば、他の楽器や映像とのとの共演、演奏音の変換や装飾、楽譜データの出力等、種々の機能を付加することができる。
2.消音器の設計手法
チューバは、管体が大きいため、楽器音の波長が長く、吹き込まれる空気量が大きい。したがって、消音器自体も巨大なものが必要となるが、扱い易さのためには小型化が求められる。
一般的に扱い易い寸法とすると、消音器装着時に低音域の音程が大きく上がる傾向を示す。これに対し、本発明者は、消音器本体の形状を適切化すると共に、或る程度の容積を有した物体をベル部後部に挿入することにより、低音域の定在波を制御してその音程の上昇を防止できることを見いだした。その場合、その物体(調整筒4)は、特定の位置と寸法に設計される必要がある。以下では、これらの設計手法を説明する。
【0024】
一般に金管楽器は、消音器を装着しない状態で演奏すると、ベル側は開管(出口端開放の管)として気柱の共鳴を生じる。したがって、ベル部の端面が音圧最小点となる。以下の説明で使用する図6〜図8では、簡単のためチューバの曲管を直線上に延ばした状態で概略的に示している。図6(a)は、2倍音についてこの状態を示している。一方、消音器を装着すると、楽器は音響的に閉管(出口端閉鎖の管)の気柱共鳴状態となる。したがって、消音器の先端面付近が音圧最大点となり、定在波はこれに影響されて音程を決定付ける。図6(b)は、消音器を取り付けたときの2倍音の定在波を示しており、消音器の先端面が音圧最大点となり、定在波はこれによって影響され、音圧最小点がベル部端面より後方へ移動している。すなわち、定在波の波長が短くなっており、音程が上がっていることを示している。消音器を装着したときの定在波においては、消音器先端面に位置する音圧最大点からその手前の音圧最小点までの範囲aにある波は、形態上は波動の腹から節に相当し、通常の波形であれば定在波の4分の1波長となる。しかし、実際には、それより後方bの定在波の4分の1波長より短くなる(図6(b)参照)。すなわち、消音器装着時には、音程生成上有効な定在波と、その先端側の余分な定在波とが存する振動モードとなる。この余分な定在波は、消音器の形状により変化する。
【0025】
消音器を設計する際には、消音器装着時の上記現象を前提に、消音器本体及び調整筒の形状等を決めて行く。先ず、マウスピースからの音圧駆動によりチューバの管内の空気を振動させる。音圧駆動は、目的とする倍音を含む範囲の低音域から高音域を走査するように周波数を変化させて行なう。このとき、基音(1倍音)から12倍音等の音程を測定しながら、音程のずれが小さく且つバランスよくなるように、消音器本体の形状を決める。特に重要なのは、ベル部に対する前面12の位置は、4〜8倍音の内の1又は2以上が正しい音程又は正しい音程に対する許容誤差内の音程となるように、ベル部端面に最も近い音圧最小点から前壁12までの距離を決めることである。そのようにして前壁12の位置を決めたとき、前記倍音の定在波(音程生成上有効な定在波)におけるベル部端面に最も近い音圧最小点の位置から前面12までの距離をkとする。音圧最小点の位置は、測定した音程から音程生成上有効な定在波の波長を算出して求めることができるし、小型マイクロフォンをベル部内で軸先方向に移動させながら音圧を測定して求めることもできる。4〜8倍音の場合は、消音器装着による音程のずれが比較的小さいので、消音器本体の形状を種々変えることにより、音程生成上有効な定在波のベル部端面に最も近い音圧最小点をベル部端面に略一致させることができる。
【0026】
図示の例では、ヤマハ製チューバYBB641を用い、4、5、6、8倍音がバランスよく正しい音程に近づくように、すなわち4、5、6、8倍音について正しい音程から25cent以内のずれとなるように、消音器本体の寸法及び形状を決めた。このときのベル部端面に最も近い音圧最小点の位置から前面12までの距離kは、400mmであった。図7及び図8は、各々4倍音及び8倍音について、音程生成上有効な定在波の最先の音圧最小点Sがベル部端面Eに略一致した状態を示している。すなわち、図7(a)及び図8(a)に示すように消音器装着前の4倍音及び8倍音の音圧最小点Sはベル部端面に一致している。これに対して、上記のようにして形状を決定した消音器本体1を使用すると、図7(b)及び図8(b)に示すようにこの消音器装着後も、音圧最小点Sはベル部端面に一致する(或いは、ずれが極めて小さくなる)。ところが、このようにしても、2倍音は、依然として音程のずれが大きい。図6(b)は、2倍音の音程のずれ、すなわち音程生成上有効な定在波の位置のずれcを示している。
【0027】
次に、先程決定した距離kを、音程生成上有効な定在波のベル部端面に最も近い音圧最小点から、逆方向に、すなわちベル部後方にとる。以下、この位置を「−kの位置」と称する。この−kの位置を中心に調整筒4を配置する。調整筒4は、ベル部後部との間に間隙を形成する径の側壁41を有し、少なくとも後端部42を閉じた状態とされる。調整筒は、−kの位置から前後方向へ各々100mm以上400mm以下の長さで延びているのが望ましい。この長さが100mmより短いと2倍音の音程上昇防止効果が十分得られない。また、この長さが400mmを越えても、音程上昇防止効果は増大しない反面、流路抵抗の増大、重量の増大という不利を生じる。
【0028】
調整筒4の外径は、−kの位置で、50mm以上、135mm以下とするのが望ましい。外径が50mmより小さいと2倍音の音程上昇防止効果が十分得られない。また、外径が135mmを越えると流路抵抗が大きくなり吹奏感が悪化する。調整筒4は、前端から後端へ僅かにテーパ状とするのが望ましく、そのテーパは、滑らかに変化するものであっても、図示のように段状に変化するものであってもよい。テーパ角は、一般のチューバのベル部後部のテーパに合わせたものとされ、通常は5〜15゜である。図示の例では、調整筒4は、−kの位置から前後方向へ各々200mm延びており、その外径は−kの位置で85mmである。
【0029】
なお、前述のベル部端面に最も近い音圧最小点(最先の音圧最小点)は、チューバの4〜8倍音に関しては、消音器本体の形状を選択することにより、ほとんどベル部端面と同じ位置とすることもできる。この場合は、上記説明における「ベル部端面に最も近い音圧最小点」は「ベル部端面」と置き換えて設計することもできる。
【0030】
支持部3は、調整筒4をこのように消音器本体の後方へ位置決めする。図示の例では、支持部3は、消音器本体の前壁12から延びる棒状部材によって骨組み状に構成されている。重量を軽減する点からはこのような構造が望ましいが、吹気の流路面積を十分に残して面状部材によって構成してもよい。この場合は、面部材の部分は調整筒として機能する場合がある。但し、後述するように、調整筒は必要以上に長くしても低音域の音程改善効果はさほど高くならない。
【0031】
このようにして設計された消音器本体1、支持部3及び調整筒4を備えた消音器を使用すると、図6(c)に示すようにこの消音器装着後も、音程生成上有効な定在波の最先の音圧最小点Sはベル部端面に一致した状態に維持される。そして、この場合、図7(c)及び図8(c)に示すように、4倍音及び8倍音は、調整筒に影響されることなく音圧最小点Sがベル部端面に一致した状態(或いは、ずれが極めて小さい状態)を維持している。図には示していないが他の高次倍音についても同様である。
【0032】
前述の通り、図示の例では、前壁に筒体121が突設されている。この筒体121は、消音器装着時の音圧最大点よりやや内側であって、音程生成上有効な定在波の最先の音圧最小点よりやや前方に位置している。こうすることにより、音圧最小点の位置が倍音によって少々ずれても、音圧の小さい箇所で吹気の流路を絞って消音することができ、優れた消音効果を得ることができる。この観点から、筒体121の消音器本体内の内方端は、前壁12から50〜200mmとするのが望ましい。
【0033】
消音器1は、このような構造を有しているので、演奏時にチューバの曲管部からベル部に到達した空気は、図4に斜線を施した部分で示すように、消音器内に滞留した後、筒体121を通って前壁12の吹気吐出口120から放出される。図4において、調整筒4内の空気は斜線の傾斜方向を他の部分と変えて示している。
【0034】
以上のようにして設計した消音器を装着してチューバを演奏した場合の音程のずれの測定結果を図9に示す。測定は以下のようにして行なった。測定対象は以下の通りである。
G:消音器を装着しないチューバ
A:消音器として消音器本体1のみからなるものを装着したチューバ
B:消音器として消音器本体1に支持部3及び調整筒4を合体させたものを装着したチューバ(図1のもの)
C:消音器として、吹気の流路面積を十分に残して支持部3の後部約30%を面部材で筒状に構成し、これを消音器本体1及び調整筒4と合体させたものを装着したチューバ(支持部3の面部材部分及び調整筒4が実質的な調整筒となる)
これらをマウスピースから目的とする倍音を含む範囲の低音域から高音域を走査するように周波数を変化させて音圧駆動し、前記倍音の音程(共振特性)を測定する。消音器を装着しないチューバ(G)について測定した音程を基準(0セント)とし、基音(1倍音)から8倍音までについて、測定した音程と正しい音程とのずれを求め、そのずれをセントで表した。図9の横軸は、測定した倍音の倍音次数(数字部分)及び音名(アルファベット部分)を示している。また、縦軸は音程のずれを示すセント数目盛りを表わしている。
【0035】
図9から次のことが明らかである。消音器本体1は、4倍音から8倍音の音程が正しい音程に近づくように設計されている。したがって、消音器本体のみからなる消音器(A)を装着した場合は、4倍音から8倍音は測定結果もそのようになっているが、2倍音は125セント(半音以上)と、大きく音程が上昇している。これに対し、消音器本体1に支持部3及び調整筒4を合体させた消音器(B)を装着した場合は、2倍音の音程上昇が防止され、8倍に至る全ての倍音が正しい音程に近くなっている。一方、支持部3を面部材で構成し消音器本体1及び調整筒4と合体させた消音器(C)を装着した場合は、前記消音器(B)の場合とさほど大きな変化はない。すなわち、調整筒は、必要長さを越えて長くしても、音程調整効果はさほど変わらないことが明らかである。
【0036】
消音器の装着時に上記のような音圧分布が形成されるので、マイクユニット5は、消音器本体内の最小音圧点付近から少しずれた箇所、すなわちベル部端面から外側又は内側に少しずれた箇所に取り付けると、各倍音の音量バランスが良いので、最も望ましい。図示の例では、後述する分解・折り畳み構造のために、マイクユニットの収容空間を得やすい上部側壁13Bの下端部付近に取り付けられている。
(作用)
消音器本体1は、側壁13が消音器軸線方向の略中央部が最大径をなし両端側へテーパ状をなすように延びているので、全体の寸法をできるだけ小さくしつつ消音に必要な内容積を有することができ、優れた消音効果を得ることができる。また、前壁12は吹気吐出口から後方へテーパ状に延びる截頭円錐状の筒体121が突設されているので、音圧最大点となる前壁12の位置ではなく、音圧の小さい箇所で吹気の流路を絞って消音することができ、この点からも優れた消音効果を得ることができる。
【0037】
消音器が備える調整筒4は、本体から後方へ向けて支持されベル部後部においてベル部内周面との間に隙間をおいて延びるように位置し、これにより、2倍音等の低次倍音が消音器を取り付けることにより上昇するのを防止する。
【0038】
消音器本体1は、前壁12が、チューバへの装着時に基音の4〜8倍音の内の1又は2以上が正しい音程又は正しい音程に対する許容誤差内の音程となるようにベル部端面に最も近い音圧最小点から前壁12までの距離kが決められ、調整筒4は、ベル部端面に最も近い音圧最小点より後方へ距離kの位置から前後にベル部軸線に沿って延びるように設けられる。これにより、2倍音等の低次倍音が消音器により上昇するのが確実に防止される。
【0039】
調整筒4は、ベル部端面より後方へ距離kの位置から前後方向へ各々100mm以上400mm以下の長さで延びたものとすることにより、2倍音等の低次倍音が消音器により上昇するのがより確実に防止される。
3.分解・折り畳み構造
チューバ用消音器は、大型とならざるを得ないので、分解・折り畳み構造とし、不使用時にはコンパクトにできるのが望ましい。図示の消音器は、以下に説明するように分解及び折り畳みが可能となっている。
【0040】
先ず、消音器本体1は、側壁13の最大径部D付近を分離境界線として、ベル部に近い側の下部1Aと、ベル部から遠い側の上部1Bとに分離できる構造となっている。組立状態において、下部側壁13Aと上部側壁13Bとは、周縁部で接し、固定具13Cにより相互に固定されている。固定具は、この例では、下部側壁13Aの周縁部3か所に設けられたトグルクランプとされ、そのフック部が上部側壁13Bの突縁に係止するようになっている。固定具はこの他、締め付けねじを用いたもの等、適宜のものとすることができる。消音器本体の上部1Aは、側壁周縁部を除いて下部1Aより径及び高さが小さくなっており、分離後は、上下逆にして下部1A内に収納できる。図5は、その収納状態を示している。
【0041】
また、支持部3及び調整筒4は、テレスコーピック式の伸縮自在構造とされている。すなわち、支持部3は、前端を本体1の前壁12の背面に固定されており、そこから後方へ3段に分割されて、各段(31、32、33)がテーパ状に延びている。格段の接触部は摩擦嵌合するように前段の内径及び後段の外径が決められている。調整筒4は、2段に分割されて、各段(41a、41b)がテーパ状に延びている。格段の接触部は、摩擦嵌合するように前段の内径及び後段の外径が決められている。支持部3の最後段33及び調整筒4の前段も同様の摩擦嵌合構造となっている。支持部3及び調整筒4は、圧縮するように押すことにより、格段の摩擦嵌合が解かれ、同心状に並列状態となるように折り畳まれる。格段の長さは、本体の下部1Aの高さより短くされているので、折り畳み後はこれら全てが下部1Aの中に収納される。図5は、支持部3及び調整筒4を折り畳んだ状態を示している。この状態から支持部3及び調整筒4を使用状態にするには、消音器本体の上部1Bを一方の手で固定して、他方の手で調整筒の後段41を引っ張るようにすればよい。これにより、支持部3及び調整筒4の全ての段が引き延ばされ、各段の端部が摩擦嵌合して引き延ばし形状を維持する。尤も、各段の固定はバヨネットジョイント構造等、他の係脱可能な構造を採用することもできる。
【0042】
【発明の効果】
以上から明らかなように、本発明によれば、以下の効果を奏するチューバ用消音器を提供することができる。
【0043】
消音器本体は、ベル部の先端寄りに開口周縁部を当接させるように後端部の外径を200mm以上400mm以下とすることにより、チューバへの装着時に、開き角が大きいベル部の先端寄りに当接させることになるので、チューバの寸法が異なっても軸線方向にはさほど位置を異ならせなくて済み、大小様々なチューバに対して、音程の安定性を保って使用することができる。
【0044】
消音器本体は、消音器軸線方向の略中央部が最大径をなし両端側へテーパ状をなすような側壁とすることにより、全体の寸法をできるだけ小さくしつつ消音に必要な内容積を有することができ、優れた消音効果を得ることができる。また、前壁は、吹気吐出口から後方へテーパ状に延びる截頭円錐状の筒体を突設することにより、音圧の小さい箇所で吹気の流路を絞って消音することができ、この点からも優れた消音効果を得ることができる。
【0045】
消音器が、消音器本体から後方へ向けて支持されベル部後部においてベル部内周面との間に隙間をおいて延びるように位置する調整筒を備えることにより、2倍音等の低次倍音が上昇するのが防止される。
【0046】
消音器本体は、チューバへの装着時に基音の4〜8倍音の内の1又は2以上が正しい音程又は正しい音程に対する許容誤差内の音程となるようにベル部端面に最も近い音圧最小点から前壁までの距離kが決められ、調整筒は、ベル部端面に最も近い音圧最小点より後方へ距離kの位置から前後にベル部軸線に沿って延びるように設けられることにより、2倍音等の低次倍音が消音器により上昇するのを確実に防止することができる。
【0047】
調整筒は、ベル部端面に最も近い音圧最小点より後方へ距離kの位置から前後方向へ各々100mm以上400mm以下の長さで延びたものとすることにより、2倍音等の低次倍音が消音器により上昇するのをより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態に係るチューバ用消音器をチューバのベル部に装着した状態を示す正面図である。
【図2】図1に示す消音器を消音器本体の縦断面と共に示す正面図である。
【図3】図2の状態の平面図である。
【図4】図1の消音器における空気の滞留位置の説明図である。
【図5】図1の消音器の分解・折り畳み状態を示す縦断面図である。
【図6】チューバの吹奏時の2倍音の音圧分布を示す説明図である。
【図7】チューバの吹奏時の4倍音の音圧分布を示す説明図である。
【図8】チューバの吹奏時の8倍音の音圧分布を示す説明図である。
【図9】図1の消音器を装着したチューバの音程の測定結果を示すグラフである。
【図10】従来のチューバ用消音器の一例を示す正面図である。
【図11】従来のチューバ用消音器の他の例をチューバのベル部に装着した状態を示す正面図である。
【符号の説明】
1…消音器本体、2…固定部材、3…支持部、4…調整筒、11…後端部、12…前壁、13…側壁、B,B1,B2,B3…ベル部、D…消音器本体の最大径部、S…ベル部端面に最も近い音圧最小点、E…ベル部端面、k…ベル部端面に最も近い音圧最小点から消音器本体前壁までの距離、S…ベル部端面に最も近い音圧最小点

Claims (5)

  1. 曲管部から先端側へ開いたベル部に装着されるチューバ用消音器であって、ベル部の先端寄りに開口周縁部を当接させる環状の後端部と、ベル部端面よりベル部先端側へ離れて位置し、消音用吹気吐出口を有する前壁と、前記後端部及び前壁を連結する側壁とを備えた消音器本体と、該消音器本体から後方へ延びる支持部と、該支持部から後方へ向けて延びる調整筒と、を備えており、
    該調整筒は少なくとも後端部が閉じられ、かつ前記チューバに装着したときに、前記ベル部後部において前記ベル部内周面との間に隙間を形成することによって演奏時の音程のずれを防止する作用をなし、前記支持部は、その作用に適した位置に前記調整筒を位置させるものであることを特徴とするチューバ用消音器。
  2. 前記前壁は、チューバへの装着時に4〜8倍音の内の1又は2以上が正しい音程又は正しい音程に対する許容誤差内の音程となるように、ベル部端面に最も近い音圧最小点から前壁までの距離kが決められており、前記調整筒は、前記音圧最小点より後方へ距離kの位置から前後にベル部軸線に沿って延びていることを特徴とする請求項に記載のチューバ用消音器。
  3. 前記調整筒が、前記ベル部端面に最も近い音圧最小点より後方へ距離kの位置から前後方向へ各々100mm以上400mm以下の長さで延びていることを特徴とする請求項に記載のチューバ用消音器。
  4. 前記消音器本体が、前記側壁の最大径部付近を分離境界線として上部及び下部に分離可能とし、分離後に該上部を上下逆にして下部内に収納できるように、該上部を下部よりも径および高さを小さくしていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のチューバ用消音器。
  5. 前記調整筒及び前記支持部が、テレスコーピック式の伸縮自在構造となっていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のチューバ用消音器。
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