JP3551304B2 - 非接触給電装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、搬送車を自由に移動させる搬送システム等に利用される非接触給電装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体、液晶等の製造工場においては高度なクリーン環境が要求されることから、物品等を搬送車に乗せて各工程のステーションに順次搬送させるに当たり、リニアモータ等を用いた搬送システムが採用されることが多い。図4に示す非接触給電装置A’はこの搬送システムの搬送車1に備えられている。
【0003】
図中2は商用電圧から10kHz近傍の交流電圧に変換するインバータ電源、3は電源1の出力端子に接続されたループ線であり搬送車1の走行経路に沿って配設された給電線路、4は同調用コンデンサ、αは搬送車1に備えられたモータその他の電気機器に相当する負荷である。
【0004】
非接触給電装置A’は、給電線路3で発生した磁界を電磁誘導により電圧に変換し負荷αに非接触給電を行う装置である。具体的には、給電線路3に電磁結合されたピックアップコイル10と、ピックアップコイル10に並列接続された共振コンデンサ20、可飽和リアクトル30とを有し、ピックアップコイル10と共振コンデンサ20との両端電圧を給電電圧VR として負荷αに出力する基本構成となっている。
【0005】
なお、非接触給電装置A’の後段には半導体変換回路70が接続されている。即ち、非接触給電装置A’にて生成された10kHz近傍の給電電圧は、半導体変換回路70により直流又は交流に適宜変換された後、負荷αに通電されるようになっている。
【0006】
ピックアップコイル10については、例えば並列接続されたピックアップコイル10a、10bから構成されている。ピックアップコイル10aは、図5に示すように給電線路3を上から覆うような形で配置されたE字状鉄心11aと、E字状鉄心11の中央部分に巻回された電線12aとを備えた構造となっている。ピックアップコイル10bについても全く同一の構造となっている。なお、ピックアップコイル10はピックアップコイル10a又は10bの単独で構成される場合もある。
【0007】
ここで給電線路3とピックアップコイル10との間の相互インダクタンスをM、ピックアップコイル10の自己インダクタンス、純抵抗をL2 , R2 であるとすると、非接触給電装置A’の回路は図6に示すように表現される。但し、半導体変換回路70は図中省略されている。
【0008】
非接触給電装置A’において単に給電電圧VR を生成するだけであるならば、構成上、ピックアップコイル10と共振コンデンサ20との並列共振回路だけでも十分である。ところが、搬送車Aが停止し、無負荷に近い形となると、負荷電流IR が小さくなる一方、給電電圧VR が非常に大きくなり(図7参照)、負荷αも含めて高耐圧を考慮した設計をしない限り、定電圧化回路等を付加することが必要となる。このような方法ではコスト高を招来することから、無負荷又は軽負荷時の給電電圧VR の上昇を抑制するために可飽和リアクトル30が設けられている。
【0009】
可飽和リアクトル30は給電電圧に応じて自己インダクタンスが非線形に変化する鉄心入りリアクトルであって、磁気飽和の前後で自己インダクタンスが大きく低下することを利用して上記並列共振回路の共振条件を大きくずらし、結果として無負荷又は軽負荷時の給電電圧VR の上昇を抑制するようになっている(図7参照)。給電電圧VR は図6で明らかなようにピックアップコイル10、共振コンデンサ20、可飽和リアクトル30並びに負荷αの各々の端子電圧に等しくなっている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
しかしながら、上記従来例による場合、たとえ無負荷又は軽負荷時であっても、ピックアップコイル10や共振コンデンサ20等には給電電圧VR に応じた電流が流れ、この電流により発生する電力損失が大きいという問題が指摘されている。しかも可飽和リアクトル30が磁気飽和が生じた状態においては、自己インダクタンスが給電電圧VR に無関係に略一定であることから、無負荷又は軽負荷時の給電電圧VR を現状以上に下げることはできない。もっとも、定電圧化回路等を付加すると、給電電圧VR を下げることは可能であるものの、コスト高となる。要するに、低コスト化と高効率化との双方を図ることは非常に困難であった。
【0011】
本発明は上記した背景の下で創作されたものであり、その目的とするところは、僅かな改良を加えるだけで無負荷又は軽負荷時の給電電圧を下げることが可能な非接触給電装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の非接触給電装置は、給電用コイルに発生する磁界を電磁誘導により電圧に変換し当該電圧を給電電圧として負荷に給電するピックアップコイルと、ピックアップコイルと並列接続された共振コンデンサと、磁気飽和が生じる前後で自己インダクタンスが大きく変化することを利用して無負荷又は軽負荷時の給電電圧の上昇を抑制する可飽和リアクトルと、可飽和リアクトルに直列接続された容量性回路とを備えており、可飽和リアクトルと容量性回路との直列回路が前記ピックアップコイルに並列接続され、実負荷時に前記容量性回路を短絡する構成となっている。
【0013】
このような構成による場合、ピックアップコイルと共振コンデンサとの共振回路に並列接続されるブランチのリアクタンスは、可飽和リアクトルの誘導リアクタンスから容量性回路の容量リアクタンスを引いた値に等しく、可飽和リアクトルが単独である従来装置に比べると小さくなる。それ故、無負荷又は軽負荷時の給電電圧が従来装置に比べて低くなり、ピックアップコイルに流れる電流が小さくなる。また、ピックアップコイルと共振コンデンサとの共振回路に並列接続されるブランチの実負荷時のリアクタンスは、可飽和リアクトルが単独である従来装置の場合と実質的には同じとなり、容量性回路を追加したことに伴う回路上の影響が極めて小さい。
【0014】
より好ましくは、前記容量性回路が前記可飽和リアクトルに直列に接続されて追加されたことに伴う実負荷時の給電電圧の変化が同回路の追加前後で生じないように、容量性回路は、可飽和リアクトルの磁気飽和が生じない電圧に対する誘電リアクタンスに比べて十分に小さい容量リアクタンスを有するように設定することが望ましい。
【0015】
例えば、本発明の非接触給電装置を搬送システムの搬送車に備えるようにする場合、給電用コイルは搬送車の走行路に沿って配設された給電線路に相当し、負荷は搬送車に備えられたモータその他の電気機器に相当することになる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の非接触給電装置の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は同装置の回路図、図2は同装置における負荷電流と給電電圧との関係を示すグラフ、図3は同装置の変形例を説明するための回路図である。
【0017】
ここに掲げる非接触給電装置Aは、図4に示すような搬送システムの搬送車1に備えられているものであり、給電線路3で発生した磁界を電磁誘導により電圧に変換し、負荷αに非接触給電を行う基本構成となっている。負荷αには搬送車1を駆動するためのモータだけでなく、搬送車1の全体を制御するためのマイコン等の電気機器が含められている。なお、従来装置と同じ構成部等については同一の番号を用いて説明を行うことにする。
【0018】
非接触給電装置Aは、図1に示すように給電線路3に流れる電流I1 が作る磁界を電磁誘導により電圧に変換し、給電電圧VR として負荷αに給電するピックアップコイル10と、ピックアップコイル10と並列接続された共振コンデンサ20と、磁気飽和が生じる前後で自己インダクタンスが大きく変化することを利用して無負荷又は軽負荷時の給電電圧VR の上昇を抑制する可飽和リアクトル30と、可飽和リアクトル30に直列接続されたコンデンサ40(容量性回路に相当する)とを備えており、可飽和リアクトル30とコンデンサ40との直列回路がピックアップコイル10に並列接続された構成となっている。
【0019】
なお、非接触給電装置Aの後段には図4に示すような半導体変換回路70が備えられているが、図1中省略されている。なお、この点は図3についても同様である。
【0020】
図1においては、給電線路3とピックアップコイル10との回路が等価回路で示されている。Mは給電線路3とピックアップコイル10との間の相互インダクタンス、L2 はピックアップコイル10の自己インダクタンス、R2 はピックアップコイル10の純抵抗である。なお、この点は図3についても同様である。
【0021】
ピックアップコイル10は、例えば並列接続されたピックアップコイル10a、10bから構成されている。ピックアップコイル10aは、図5に示すように給電線路3を上から覆うような形で配置されたE字状鉄心11aと、E字状鉄心11の中央部分に巻回された電線12aとを備えた構造となっている。ピックアップコイル10bについても全く同一の構造となっている。なお、ピックアップコイル10はピックアップコイル10a又は10bの単独で構成される場合もある。
【0022】
可飽和リアクトル30は給電電圧VR に応じて自己インダクタンスが非線形に変化する鉄心入りリアクトルである。ここではフェライト、パーマロイ等の強誘磁性体の環状鉄心にコイルが巻回されたトロイダルコイルを用いている。
【0023】
コンデンサ40は、磁気飽和が生じていない状態の可飽和リアクトル30の誘導リアクタンスに比べて十分に小さい容量リアクタンスを有するように選定されている。
【0024】
ピックアップコイル10と共振コンデンサ20とで並列共振回路が構成されている。この両端に現われる電圧が給電電圧VR となっている。インバータ電源2(図4参照)により生成された10kHz近傍の交流を高効率で受電するために、その共振周波数は10kHz近傍に設定されている。しかも磁気飽和が生じていない状態の可飽和リアクトル30の自己インダクタンスでもって上記並列共振回路が共振しないように回路定数が設定されている。
【0025】
次に、上記のように構成された非接触給電装置Aの動作について説明する。まず、搬送車1が駆動し、負荷電流IR が定格負荷電流よりも大きくなる場合には、給電電圧VR が低いことから、可飽和リアクトル30は磁気飽和が生じていない。そのため、上記並列共振回路が共振状態又はこれに近い状態にあり、負荷αが多少変動すると、給電電圧VR が負荷電流IR に応じて変化する(図2中▲1▼参照)。
【0026】
このときの給電電圧VR は図6に示す従来装置の場合と大きな差異は見られない。その理由は、磁気飽和が生じていない状態の可飽和リアクトル30の誘導リアクタンスがコンデンサ40の容量リアクタンスに比べて非常に大きいことから、ピックアップコイル10と共振コンデンサ20との共振回路に並列接続される可飽和リアクトル30とコンデンサ40との直列回路であるブランチのリアクタンスは、可飽和リアクトル30単独である場合と殆ど同じになるからである。
【0027】
一方、搬送車1が停止し、無負荷又は軽負荷になると、負荷電流IR が小さくなり、給電電圧VR が上昇する(図2中▲2▼参照)。給電電圧VR の上昇により可飽和リアクトル30が磁気飽和を生じる状態となり、その自己リアクタンスが小さくなることから、ピックアップコイル10と共振コンデンサ20との共振回路の共振条件が崩れ、給電電圧VR の上昇が抑制される結果となる(図2中▲3▼参照)。
【0028】
このときの給電電圧VR は図6に示す従来装置の場合である図7と比較すると小さくなっている。その理由は、可飽和リアクトル30とコンデンサ40との直列回路のリアクタンスは、可飽和リアクトル30の誘導リアクタンスからコンデンサ40の容量リアクタンスを引いた値となり、従来装置の場合の可飽和リアクトル30のみのリアクタンスよりも小さくなるからである。
【0029】
その結果として、従来装置の場合、図7に示すように無負荷又は軽負荷時には給電電圧VR が負荷電流IR とは無関係に一定であるが、非接触給電装置Aの場合、図2に示すように給電電圧VR が負荷電流IR が小さくなるに従って低下する。
【0030】
以上のように構成された非接触給電装置Aによる場合、無負荷又は軽負荷時の給電電圧VR を従来装置に比べて小さくすることができるので、ピックアップコイル10に流れる電流が小さくなり、電力損失の低下を図ることができる。しかもコンデンサ40を追加するという僅かな設計変更のみで実現可能である。それ故、装置の低コスト化と高効率化を図る上で大きな意義がある。
【0031】
次に、非接触給電装置Aの変形例について図3を参照して説明する。図1に示す装置と大きく異なる点は、実負荷時にコンデンサ40を短絡するスイッチ回路60が追加されている点である。ここではスイッチ回路60としてリレー等を用いている。
【0032】
負荷αには搬送車1を駆動するモータだけでなく、搬送車1の全体を制御するためのマイコンが含まれていることは上記したが、このマイコンが搬送車1の駆動/停止を上記モータに対して命令したとき、スイッチ回路60の接点を次のように切り換えるための信号を出力するようにしている。
【0033】
即ち、搬送車1が停止し、負荷10が無負荷又は軽負荷時であるときには、スイッチ回路60の接点をコンデンサ40の方に切り換える。この状態では、非接触給電装置Aの実回路としては図1に示す通りとなる。一方、搬送車1が駆動中、即ち、負荷10が実負荷時であるときは、スイッチ回路60の接点を切り換えてコンデンサ40を短絡させる。この状態では、非接触給電装置Aの実回路としては図6に示す通りとなる。
【0034】
このような構成による場合、無負荷又は軽負荷時の給電電圧VR を十分に下げ、ピックアップコイル10に流れる電流を十分に低減できるようにコンデンサ40のキャパシタンスを設定することができる。上記マイコンの電源をバッテリーとすることにより、給電電圧VR をマイコンの駆動電圧よりも小さくすることができる。
【0035】
もっとも、搬送車1において上記したようなマイコン等を搭載していない場合には、実負荷時であるか否かを判定するために、負荷電流IR 又は給電電圧VR を検出し、この検出結果と基準値とを大小比較して、この比較結果に基づいてスイッチ回路60を上記の通りに切り換えるような構成にすると良い。
【0036】
なお、本発明の非接触給電装置は搬送システムだけの適用に止まらず、例えばICカードに電力を非接触給電するシステム等にも適用可能である。また、ピックアップコイル及び可飽和リアクトルの種類については問われないことは勿論のこと、容量性回路についても容量リアクタンスを有する回路であればどのような回路であってもかまわない。
【0037】
【発明の効果】
以上、本発明の請求項1、2に係る非接触給電装置による場合、可飽和リアクトルに直列に容量性回路が接続された構成となっているので、無負荷又は軽負荷時の給電電圧を従来装置に比べて小さくすることができ、これに伴ってピックアップコイルに流れる電流が小さくなり、電力損失の低下を図ることができる。しかも容量性回路を追加するという僅かな設計変更のみで実現可能である。それ故、装置の低コスト化と高効率化を図る上で大きな意義がある。また、実負荷時に容量性回路を短絡する等の構成となっているので、容量性回路を追加したことに伴う回路上の影響が極めて小さく、この点でメリットがある。
【0038】
本発明の請求項3に係る非接触給電装置による場合、搬送システムの搬送車に備えられた構成となっているので、この種のシステムの低コスト化及び高効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための図であって、給電線路とピックアップコイルとの回路が等価回路で示された非接触給電装置の回路図である。
【図2】同装置における負荷電流と給電電圧との関係を示すグラフである。
【図3】同装置の変形例を説明するための図1に対応する回路図である。
【図4】従来の非接触給電装置を搬送システムとともに説明するための回路図である。
【図5】搬送システムの給電線路とピックアップコイルとの回路が等価回路で示された同装置の回路図である。
【図6】同ピックアップコイルの断面図である。
【図7】同装置における負荷電流と給電電圧との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
A 非接触給電装置
10 ピックアップコイル
20 共振コンデンサ
30 可飽和リアクトル
40 コンデンサ(容量性回路)
60 スイッチ回路
α 負荷
1 搬送車
3 給電線路
Claims (3)
- 給電用コイルに発生する磁界を電磁誘導により電圧に変換し当該電圧を給電電圧として負荷に給電するピックアップコイルと、ピックアップコイルと並列接続された共振コンデンサと、磁気飽和が生じる前後で自己インダクタンスが大きく変化することを利用して無負荷又は軽負荷時の給電電圧の上昇を抑制する可飽和リアクトルと、前記可飽和リアクトルに直列接続された容量性回路とを備えており、前記可飽和リアクトルと容量性回路との直列回路が前記ピックアップコイルに並列接続されており、実負荷時に前記容量性回路を短絡する構成となっていることを特徴とする非接触給電装置。
- 請求項1記載の非接触給電装置において、前記容量性回路が前記可飽和リアクトルに直列に接続されて追加されたことに伴う実負荷時の給電電圧の変化が同回路の追加前後で生じないように、前記容量性回路は、磁気飽和が生じていない状態の前記可飽和リアクトルの誘導リアクタンスに比べて十分に小さい容量リアクタンスを有していることを特徴とする非接触給電装置。
- 搬送システムの搬送車に備えられた請求項1、2又は3記載の非接触給電装置において、前記給電用コイルは前記搬送車の走行路に沿って配設された給電線路であり、前記負荷は前記搬送車に備えられたモータその他の電気機器であることを特徴とする非接触給電装置。
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