JP3550804B2 - オレフィン重合体製造用触媒およびオレフィン重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、オレフィン重合体製造用触媒および該オレフィン重合体製造用触媒を使用したオレフィン重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オレフィンの重合用触媒として、特開平3−197513号公報にはメタロセン化合物と有機アルミニウム化合物を触媒に用いてエチレンの重合が行えることが開示されており、特開平3−290408号公報にはジルコノセン化合物と有機アルミニウム化合物および有機マグネシウム化合物を用いてポリエチレンあるいはエチレン共重合体が得られることが開示されている。また、カミンスキーらはメタロセンとメチルアルミノキサンを用いた触媒が、プロピレンを含むオレフィン重合体を製造する際に、高い活性を示すことを特開昭58−19309号公報などに開示している。また、メタロセンおよびメチルアルミノキサンのいずれか一方または両方の触媒成分をシリカなどの無機酸化物担体に担持した触媒を用いて、懸濁重合または気相重合において、オレフィンの重合を行う試みが特開昭63−51407号公報等において公知である。しかし、上記公報で開示されている触媒系において、工業的に有用な物性を示すポリマーを製造するためには、従来のチーグラー・ナッタ触媒で用いられる有機アルミニウム化合物に比べて高価なメチルアルミノキサンを大量に用いる必要がある。このため、コストの問題やポリマー中に大量のアルミニウムが残存する問題等があった。近年、イオン性メタロセン触媒に有機アルミニウム化合物を添加することでプロピレンを含めたオレフィンの重合に高活性を示す触媒が特開平3−124706号公報、特開平3−207704号公報に開示された。上記明細書において、主触媒であるイオン性メタロセン触媒は、メタロセン化合物の塩化物をメチルリチウムあるいはメチルマグネシウムクロライドなどのメチル化試薬を用いてメタロセン化合物のメチル誘導体にし、さらに、このメチル誘導体とイオン化イオン性化合物との反応により製造しなければならないことが開示されている。上記明細書に示されるメタロセン化合物のメチル誘導体やイオン性メタロセン触媒は不安定である場合が多く、技術的に高度で複雑な多段階の工程を経なければ合成することができない。このため、触媒の純度、調製に関する再現性、保管、重合容器への移送の際の失活など多くの問題があった。また、上記イオン性メタロセン化合物をシリカなどの無機酸化物担体に担持した触媒を用いて、懸濁重合または気相重合において、オレフィンの重合を行う試みが特開平3−234709号公報により知られている。しかし、上記明細書に記載されている触媒系は、活性が十分でなく、メタロセン化合物のメチル誘導体やイオン性メタロセン触媒等の不安定な化合物を製造する工程を含むため、技術的に高度で複雑な多段階の工程を経なければ合成することができない。一方、ハロゲン化メタロセン化合物を有機金属化合物で処理せしめた反応物とハロゲン化メタロセン化合物と有機金属化合物の反応物と反応して安定アニオンとなる化合物と接触せしめてなる触媒を用いてプロピレンの重合を行う試みがWO92/01723号公報において公知である。上記明細書に記載されている触媒系では、ハロゲン化メタロセンと有機アルミニウムとの反応物を使用することを特徴としているため、前記のイオン性メタロセン触媒に比べて安定性が向上している。また、触媒成分を担体へ担持することによって、担持触媒として使用する方法についても記載されている。しかし、これらの触媒系は気相重合を行った際に安定的に重合体が得られなかったり、溶媒存在下の重合においてポリマー形状が悪化する等の問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、気相重合あるいは懸濁重合において、オレフィン重合体を良好な形状で生産性よく製造するための触媒を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、遷移金属化合物、イオン化イオン性化合物が担持されてなる固体触媒成分において、イオン化イオン性化合物のカチオン成分が固体上に化学結合を介して固定化されていることを特徴とする固体触媒成分および有機金属化合物からなる触媒成分にオレフィンを予備重合することにより形成された予備重合触媒を使用することにより、上記課題を解決し得ることを見いだした。
【0005】
すなわち、本発明は、(a)周期表4族の遷移金属を含む遷移金属化合物、(b)遷移金属化合物と有機金属化合物との反応物と反応して安定アニオンとなるイオン化イオン性化合物が担持されてなる固体触媒成分において、イオン化イオン性化合物のカチオン成分が固体上に化学結合を介して固定化されていることを特徴とする固体触媒成分および(c)有機金属化合物からなる触媒成分に、(d)オレフィンを予備重合することにより形成されるオレフィン重合用固体触媒、および該触媒を使用したオレフィン重合体の製造方法に関する。
【0006】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0007】
本発明において用いられる(a)周期表4族の遷移金属を含む遷移金属化合物としては、下記一般式(2)
【0009】
【化12】
【0010】
[式中、M1はチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、Yは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜24のアルキル基、または炭素数6〜24のアリール基、アリールアルキル基若しくはアルキルアリール基であり、R3,R4は各々独立して下記一般式(7)、(8)、(9)または(10)
【0013】
【化14】
【0014】
(式中、R7は各々独立して水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、または炭素数6〜24のアリール基、アリールアルキル基若しくはアルキルアリール基である。)
で表される配位子であり、該配位子はM1と一緒にサンドイッチ構造を形成し、R5は下記一般式(11)
【0015】
【化7】
【0016】
(式中、R8は各々独立して水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、または炭素数6〜24のアリール基、アリールアルキル基若しくはアルキルアリール基である。)
で表され、R3およびR4を架橋するように作用しており、mは1〜5の整数である。]で表される周期表4族の遷移金属化合物が例示される。
【0025】
前記一般式(2)で表される化合物としては、具体的に、メチレンビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、メチレンビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロライド、メチレンビス(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、メチレンビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、メチレンビス(メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロライド、メチレンビス(ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、メチレンビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、メチレンビス(ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロライド、メチレンビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、メチレンビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、メチレンビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロライド、エチレンビス(インデニル)チタニウムジクロライド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビス(インデニル)ハフニウムジクロライド、エチレンビス(テトラヒドロインデニル)チタニウムジクロライド、エチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビス(テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロライド、エチレンビス(2−メチル−1−インデニル)チタニウムジクロライド、エチレンビス(2−メチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビス(2−メチル−1−インデニル)ハフニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ハフニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−2,7−ジメチル−9−フルオレニル)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ハフニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−2,7−ジメチル−9−フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ハフニウムジクロライド等のジクロル体および上記4族遷移金属化合物のジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体等を例示することができる。
【0027】
次に、本発明において(b)遷移金属化合物と有機金属化合物との反応物と反応して安定アニオンとなるイオン化イオン性化合物が担持されてなる固体触媒成分において、イオン化イオン性化合物のカチオン成分が固体上に化学結合して固定化されていることを特徴とする固体触媒成分について説明する。イオン化イオン性化合物は、一般式(28)
[C+][A−] (28)
で表され、[A−]はイオン化イオン性化合物のアニオン部分で、遷移金属化合物と有機金属化合物との反応物と反応して安定アニオンとなる成分であり、有機ホウ素化合物アニオン、有機アルミニウム化合物アニオンが挙げられる。具体的にはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、テトラキスフェニルホウ素、テトラキス(p−トリル)ホウ素、テトラキス(m−トリル)ホウ素、テトラキス(2,4−ジメチルフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−ジメチルフェニル)ホウ素、テトラフルオロホウ素、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル)ホウ素、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム、テトラキスフェニルアルミニウム、テトラキス(p−トリル)アルミニウム、テトラキス(m−トリル)アルミニウム、テトラキス(2,4−ジメチルフェニル)アルミニウム、テトラキス(3,5−ジメチルフェニル)アルミニウム、テトラフルオロアルミニウム、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)アルミニウム、テトラキス(3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)アルミニウム、テトラキス(3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル)アルミニウム等が挙げられる。
【0028】
また、[C+]はイオン化イオン性化合物のカチオン成分であり、表面がカチオン性を有する固体より構成されることを特徴としている。表面がカチオン性を有する固体としては、例えばアンモニウムカチオンを有する基を持つ化合物の一部または全部が固体表面に化学的に結合しているような固体成分が挙げられる。カチオン性を有する固体を構成するカチオン性基の具体的な例としては、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−2,4,5−ペンタメチルアニリニウム、ピリジニウム等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらのカチオン性基は担体を構成する成分の一部であってもよいし、化学変性により固体表面に固定化したものでもよい。
【0029】
これらの固体表面がカチオン性を有する固体触媒成分(b)の調製において用いられる担体化合物としては無機化合物担体、有機高分子化合物担体のいずれを用いてもよい。無機化合物担体としてはアルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア等の無機酸化物、粘土鉱物あるいは無機ハロゲン化物が用いられる。この無機酸化物には、通常不純物としてK2CO3、BaSO4等のアルカリ金属やアルカリ土金属の炭酸塩や硫酸塩などの塩類が含まれている。上記の無機酸化物は、これらの不純物を含んだ状態で使用してもよいが、予めこれらの不純物を除去する操作を施して使用するのが好ましい。また、これらの無機化合物担体は、その種類および製造方法により性質を異にするが、本発明においては比表面積が10〜1000m2/g、特に50〜800m2/g、細孔容積が0.1〜3cc/gのものがイオン化イオン性化合物を多く固定化することができるので好ましい。また、無機化合物担体の粒径は生成するポリマーの粒径に影響を与えるため、重合時の微粉末や異常に成長した粒子となることを避けるために、平均粒径が1〜300μmであることが好ましい。特に10〜200μmであると生成するポリマー粒子に与える影響がさらに改良されるため好ましい。これらの無機酸化物、粘土鉱物または無機ハロゲン化物は、必要に応じて水分等の揮発性の不純物を除去するために100〜1200℃で減圧下または気体流通下で熱処理して用いられる。
【0030】
また、有機高分子化合物担体としては4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、フェニルビニルスルフィド等のカチオン性基を構成し得る官能基を持つモノマーを用いて単独あるいは共重合させて得られた微粒子状の高分子化合物をそのまま用いてもよいし、エチレン重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチルやセルロース等の各種天然高分子等を化学変性することにより官能基を固体表面に導入したものを用いてもよい。これらの有機高分子化合物担体は、その種類あるいは製法により性状が異なるが、その粒径は5〜2000μm、特に10〜1000μmの範囲にあるものが望ましく、その分子量は触媒調製および重合反応時に固体物質として存在できる程度の分子量であれば任意である。
【0031】
なお、イオン化イオン性化合物が固定化されてなる固体触媒成分(b)の調製は、(1)固体表面がカチオン性を有する固体と上記のアニオン性基を有するイオン性化合物を反応させる方法、(2)上記のカチオン成分およびアニオン成分からなるイオン性化合物を調製した後、カチオン性基のカチオン部分以外の反応性基を利用して担体表面に結合させる方法等が挙げられる。方法(1)において、固体表面がカチオン性を有する固体の調製法として、無機化合物担体あるいは有機高分子化合物担体の担体表面を化学変性することで、カチオン性基を構成し得るような官能基を導入する場合、その方法については特に制限はないが、例えば、「R&DレポートNo17、高分子触媒の工業化、シーエムシー(株)(1981)」、「実験化学講座28高分子合成、丸善(1992)」、「高分子を用いる合成化学、講談社(1976)」等に例示された方法が挙げられる。具体的には、シリカのような表面水酸基を有する無機酸化物に対する化学変成の方法としては、カチオン性基を構成し得るような官能基を有するシリルエーテルやハロゲン化シランのようなシラン化合物と表面水酸基とのカップリングにより固定化する方法や、表面水酸基を塩化チオニルや四塩化ケイ素のような塩素化剤により塩素化した後に官能基を有する有機金属との反応により直接固定化したりする方法が挙げられる。あるいは、カチオン性基を構成し得るような官能基を有するシリルエーテルやシリルハロゲン化物等を用い、水および適当な触媒、必要に応じて無機あるいは有機担体の存在下ゾルゲル反応を行うことにより、カチオン性基が固体表面に固定化されている固体成分を得ることもできる。また、ポリスチレンのような有機高分子担体に対しては側鎖のフェニル基に対して通常の芳香族置換反応により、アミノ基のようなカチオン性基を生成しうる官能基を導入することができるし、ハロゲン化あるいはクロロメチル化した後にアミノ基、スルフィド、エーテル、フェロセン等のカチオン性基を生成しうる官能基を導入することもできる。
【0032】
次に、本発明の構成成分として用いられる有機金属化合物(c),(e),(g)としては、下記一般式(27)
【0033】
【化20】
【0034】
[式中、M5はアルミニウムである。R16は各々独立して、水素原子、炭素数1〜24のアルキル基若しくはアルコキシ基、または炭素数6〜24のアリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アルキルアリール基若しくはアルキルアリールオキシ基であり、少なくとも1つのR16は水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、または炭素数6〜24のアリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基である。sはM5の酸化数に等しい。]で表される有機金属化合物である。
【0035】
前記一般式(27)で表される化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリアミルアルミニウム、ジメチルアルミニウムエトキサイド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、ジイソプロピルアルミニウムエトキサイド、ジ−n−プロピルアルミニウムエトキサイド、ジイソブチルアルミニウムエトキサイド、ジ−n−ブチルアルミニウムエトキサイド、ジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジ−n−プロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジ−n−ブチルアルミニウムハイドライド等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本発明の構成成分として用いられるオレフィン(d),(f)は特に制限はないが、炭素数2〜16のα−オレフィンまたは環状オレフィンが好ましく、具体的にはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の環状オレフィンが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上の混合成分として用いてもよい。2種以上のオレフィンを用いて予備重合を行う場合には、逐次あるいは同時に反応系内に添加し、予備重合することができる。
【0037】
本発明のオレフィン重合体製造用触媒において、周期表4族の遷移金属を含む遷移金属化合物(a)、遷移金属化合物と有機金属化合物との反応物と反応して安定アニオンとなるイオン化イオン性化合物が担持されてなる固体触媒成分において、イオン化イオン性化合物のカチオン成分が固体上に化学結合を介して固定化されていることを特徴とする固体触媒成分(b)、有機金属化合物(c)からなる触媒成分によるオレフィン(d)の予備重合の方法は、固体触媒成分(b)と遷移金属化合物(a)が反応し、オレフィン(d)が重合し得る条件で有れば特に限定されない。一般的に、この接触処理は−50〜100℃、好ましくは−20〜60℃、より好ましくは−10〜40℃の温度範囲で、常圧下または加圧下にて実施することができ、気相中で処理する場合には流動状況下で、液相中で処理する場合には攪拌状況下で十分接触させることが好ましい。
【0038】
本発明に用いる遷移金属化合物(a)およびイオン化イオン性化合物が担持されてなる固体触媒成分において、イオン化イオン性化合物のカチオン成分が固体上に化学結合を介して固定化されていることを特徴とする固体触媒成分(b)とのmol比は特に限定はないが、固体触媒成分(b)中のアニオン成分に対する遷移金属化合物(a)のmol比は0.01〜500である。上記範囲内にあるときにオレフィン重合体製造用触媒として高活性である。さらに好ましくは0.2〜100であり、特に好ましくは0.5〜50であり、これによりオレフィン重合体の生産性が高くなるとともに、製造したオレフィン重合体中の灰分を低く抑えることが可能となる。また、ここで用いられる有機金属化合物(c)の量は特に限定はないが、遷移金属化合物(a)に対する有機金属化合物(c)のmol比は0.1〜1000が好ましい。さらに好ましくは0.2〜800であり、特に好ましくは0.5〜500の範囲であり、これにより過剰な灰分を生ずることなくオレフィン重合体を製造することが可能となる。予備重合において得られるオレフィン重合体は、固体触媒成分を構成する担体1gに対して0.1〜100gの量で予備重合されることが好ましい。
【0039】
本発明は、さらに前記方法で調製したオレフィン重合用予備重合触媒の存在下、オレフィンを懸濁状態または気相で、−30〜150℃の温度、0.5〜2000barの圧力の下で、重合または共重合することによるオレフィン重合体の製造方法に関する。
【0040】
本発明のオレフィン重合体の製造に用られるオレフィンはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン等の共役および非共役ジエン等であり、これら2種以上の混合成分を重合することもできる。
【0041】
本発明におけるオレフィンの重合は液相でも気相でも行えるが、特に気相において用いた場合に、粒子性状の整ったオレフィン重合体を効率よく安定的に生産することができる。また、重合を液相で行う場合の溶媒としては、一般に用いられる有機溶剤であればいずれでもよく、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、炭素数7以上の高沸点炭化水素溶媒、塩化メチレン等およびこれらの混合物であり、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0042】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0043】
合成したシラン化合物の同定は、重クロロホルムを溶媒にし、内部標準をクロロホルムとした400MHz、1H−NMRスペクトル(日本電子(株)製 JNMGX400)測定により行った。
【0044】
実施例中に記載の溶融指数(MI)および低荷重MI(2.16kg荷重)と高荷重MI(21.6kg荷重)との比(N値)は、ASTM D1238条件Eに準ずる方法にて測定を行った。
【0045】
重合操作、反応および溶媒精製は、すべて不活性ガス雰囲気下で行った。また、反応に用いた溶媒等は、すべて予め公知の方法で精製、乾燥および/または脱酸素を行ったものを用いた。反応に用いた化合物は、公知の方法により合成、同定したものを用いた。
【0046】
合成例1
[(p−N,N−ジメチルアミノフェニル)トリメトキシシランの合成]
滴下ロートを取り付けた200mlの2ツ口フラスコに、窒素気流下、マグネシウム1.01g(41.5mmol)、THF(50ml)および少量のヨウ素を加え、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン 8.32g(41.6mmol)のTHF(50ml)溶液を室温で撹拌下40分かけて滴下した。滴下後、室温で75分撹拌した。これにテトラメトキシシラン6.40g(42.0mmol)のTHF(60ml)溶液を添加した後、室温で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去して得られた残さをトルエン(100ml)に懸濁させ、ろ過を行った。得られたろ液を減圧濃縮し、目的物を75%の収率で得た。
【0047】
得られたシラン化合物の1H−NMRは、δ=7.52(d,2H,aromatic H),6.74(d,2H,aromatic H),3.61(s,9H,Si(O−CH3)),2.99(s,6H,N(CH3)2)のピークを示した。
【0048】
実施例1
[固体触媒成分の合成]
200mlのシュレンクに、シリカ(ダビソン948、200℃、5時間減圧焼成)5.30g、トルエン100mlおよび合成例1にて合成した(p−N,N−ジメチルアミノフェニル)トリメトキシシラン 2.0g(9.1mmol)を加え、110℃で16時間撹拌した。反応終了後、トルエンで4回洗浄した。得られたシラン化合物で修飾したシリカ中の炭素含量は4.3wt%であった。
【0049】
このシラン化合物で修飾したシリカ1.87gをエーテル(50ml)に懸濁させ、塩化水素ガスを室温で30分間吹き込んだ後ヘキサンにて洗浄し、減圧乾燥させた。これをさらに塩化メチレン(60ml)に懸濁させた後、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.6g(0.87mmol)の塩化メチレン(40ml)溶液を加え、室温で3時間撹拌した。塩化メチレンで3回洗浄した後、真空乾燥し、固体触媒成分Aを得た。得られた固体触媒成分Aの炭素含量は11.1wt%であった。
【0050】
[予備重合触媒の調製]
窒素置換した50mlのシュレンクに、上記で調製した固体触媒成分A 1.1g、ヘキサン40mlおよびトリメチルアルミニウム(2.4mol/l、トルエン溶液)2.3mlを加え、室温で一晩攪拌した後、ヘキサンで4回洗浄し、真空乾燥した。こうして得たトリメチルアルミニウム処理した固体触媒成分0.73gをヘキサン100mlに懸濁させて、窒素置換した1lガラス製オートクレーブに加えた。次いで、室温で攪拌下、エチレンビスインデニルジルコニウムジクロライド(0.072mmol)のトルエン(50ml)溶液を加えた後、エチレンを導入し、1.0kg/cm2Gとなるように連続的にエチレンガスを加えながら30℃で2時間予備重合を行った。上澄み液を除去し、固体成分をヘキサン200mlで3回洗浄した。さらにヘキサン150mlを加え、トリイソブチルアルミニウム(0.71mol/l、ヘキサン溶液)3.0mlを加え、再度エチレンを導入し、1.0kg/cm2Gとなるように連続的にエチレンガスを加えながら30℃で2時間予備重合を行い、その後ヘキサン200mlで4回洗浄した。この結果、シリカ1gあたりジルコニウム0.102mmol、ポリエチレン13.1gを含有する予備重合触媒が得られた。
【0051】
[固体触媒を用いたエチレンの気相重合]
内容積2lのステンレススチール製電磁撹拌式オートクレーブ内を充分窒素で置換し、分散媒として食塩150gを入れ、内温を75℃とした。上記で調製した予備重合触媒(ジルコニウム0.0029mmolに相当)とトリイソブチルアルミニウム1.5mmolを混合したものをオートクレーブに挿入した。その後直ちにエチレンガスを導入し、内圧が8kg/cm2Gとなるように連続的にエチレンガスを加えながら80℃で30分間重合を行った。重合後冷却し、未反応ガスを追い出して生成ポリマーと食塩の混合物を取り出した。この混合物を純水で洗浄し、食塩を除去した後乾燥し、101.5gのポリマーを得た。このポリマーの嵩密度は0.30g/cm3であり、MIは0.004g/10分、N値は413であった。
【0052】
実施例2
[固体触媒を用いた気相重合]
内容積2lのステンレススチール製電磁撹拌式オートクレーブ内を充分窒素で置換し、分散媒として食塩150gを入れ、内温を75℃とした。実施例1において調製した予備重合触媒(ジルコニウム0.0027mmolに相当)とトリイソブチルアルミニウム1.5mmolを混合したものをオートクレーブに挿入した。その後直ちにエチレン/1−ブテンの混合ガス(1−ブテン含量10mol%)を導入し、内圧が9kg/cm2Gとなるように連続的に混合ガスを加えながら80℃で30分間重合を行った。重合後冷却し、未反応ガスを追い出して生成ポリマーと食塩の混合物を取り出した。この混合物を純水で洗浄し、食塩を除去した後乾燥し、31.7gのポリマーを得た。このポリマーの嵩密度は0.34g/cm3であり、MIは0.066g/10分、N値は105であり、DSC測定において116℃に融点ピークが見られた。
【0053】
比較例1
[固体触媒の調製]
50mlのシュレンクに、実施例1における固体触媒成分の合成中間体である(p−N,N−ジメチルアミノフェニル)トリメトキシシラン修飾シリカ(244.5mg)をヘキサン(7.5ml)に懸濁させた後、予めエチレンビスインデニルジルコニウムジクロライド(0.0025mmol)、トリイソブチルアルミニウム(2.5mmol)およびN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(0.0072mmol)を接触させたトルエン溶液(7.5ml)を加え、5分間反応させた後、減圧乾燥し、固体触媒を得た。
【0054】
[固体触媒を用いたエチレンの気相重合]
上述のような処方にて調製した固体触媒を用いて、実施例1と同様の処方によりエチレンの気相重合を実施した。その結果、ポリマーはほとんど得られなかった。
【0055】
【発明の効果】
本発明において、合成したイオン化イオン性化合物が担持されてなる固体触媒成分において、イオン化イオン性化合物のカチオン成分が固体上に化学結合を介して固定化されていることを特徴とする固体触媒成分と遷移金属化合物および有機金属化合物からなる触媒でオレフィンを予備重合した触媒を使用することにより、粒子性状の優れたオレフィン重合体を生産性よく、重合反応器を汚すことなく製造することができる。
Claims (5)
- (a)下記一般式(2)
で表される配位子であり、該配位子はM1と一緒にサンドイッチ構造を形成し、R5は下記一般式(11)
で表され、R3およびR4を架橋するように作用しており、mは1〜5の整数である。]で表される周期表4族の遷移金属化合物、(b)遷移金属化合物と有機金属化合物との反応物と反応して安定アニオンとなる下記一般式(28)
[C + ][A − ] (28)
[式中、[A − ]はイオン化イオン性化合物のアニオン部分で、遷移金属化合物と有機金属化合物との反応物と反応して安定アニオンとなる有機ホウ素化合物アニオンまたは有機アルミニウム化合物アニオンであり、[C + ]はイオン化イオン性化合物のカチオン成分であり、表面がカチオン性を有するアンモニウムカチオンである。]
で表されるイオン化イオン性化合物が担持されてなる固体触媒成分において、イオン化イオン性化合物のカチオン成分が固体上に化学結合を介して固定化されていることを特徴とする固体触媒成分、及び(c)下記一般式(27)
で表される有機金属化合物からなる触媒成分に、
(d)オレフィン
を予備重合させることにより形成されるオレフィン重合用固体触媒。 - 請求項2に記載の触媒に、さらに
(f)オレフィン
を予備重合させることにより形成されるオレフィン重合用固体触媒。 - 請求項1〜4に記載のオレフィン重合用固体触媒の存在下で、オレフィンを重合または共重合させることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
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