JP3550638B2 - 新規マレイミド−スチレン系共重合体、その製造方法及び二次非線形光学材料 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、二次非線形光学特性を示す新規なマレイミド−スチレン系共重合体、その製造方法及びそれを用いた有機二次非線形光学材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
これからの高度情報化社会においては、大容量かつ精密な情報を高速、高密度、高効率で伝達処理することが必要になってくる。そして、光は、並列、空間処理性、多量操作性、高密度性などの特性を有することから電子技術と相補ってこの分野で重要な役割を果たすことが予測されている。ところで、この光を利用するために必要な材料の1つとして、最近有機非線形光学材料が注目されている。
【0003】
これまで知られている無機材料による非線形効果は格子振動吸収により発現するものであるのに対し、有機材料による非線形効果は、非局在のπ電子系が置換基によって歪むために生じる双極子モーメントによるものであって、基本的に格子振動を伴わないためより高速の応答が可能になる。
【0004】
ところで、二次の非線形効果を生じさせるためには、誘起した双極子モーメントを同一方向に配向させることが必要で、これには有機結晶によるアプローチ、LB膜や液晶によるアプローチ、電場配向すなわちポーリングによるアプローチなどが知られているが、ポーリングによるアプローチは他の方法に比べ簡単なプロセスで配向構造を得ることができ、分子設計において比較的制約がないため、いろいろな分子について配向させて二次の非線形効果を生じさせることができるという利点がある。
【0005】
しかしながら、このようにして得られる二次の非線形光学効果は、それを生じる分子中の活性基が、分子の熱運動や電気的反発により緩和するため経時的に減少するという傾向がある。
このような二次の非線形光学効果の経時的減少を抑制する方法として、これまで高分子の場合、ガラス転移温度付近で十分に熱処理しながらポーリングを行うこと、ガラス転移温度の高い材料を用いることなどが提案されているが、必ずしも満足できる結果が得られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高温における配向構造の緩和を示さない、熱安定性の良好な二次の非線形光学特性を有する新規な高分子物質を提供することを目的としてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、二次の非線形光学特性を有する高分子物質を開発するために鋭意研究を重ねた結果、高ガラス転移点の高分子を生じるマレイミドを主鎖中に導入して剛直な重合体骨格を形成させ、これに側鎖として非線形光学活性基をペンダントさせることにより、高温における配向構造の緩和が抑制された二次の非線形光学特性を有する高分子物質が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)式
【化11】
で表わされる構成単位、(B)式
【化12】
で表わされる構成単位及び(C)一般式
【化13】
(式中のRは水素原子又はメチル基である)
で表わされる構成単位からなり、数平均分子量10,000〜200,000を有するマレイミド−スチレン系共重合体及びこれからなる二次非線形光学材料を提供するものである。
【0009】
前記のマレイミド−スチレン系共重合体は、例えばN‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミドとα‐メチルスチレンとをラジカル重合開始剤の存在下で共重合させ、次いでこのようにして得た共重合体に、一般式
【化14】
(式中のRは前記と同じ意味をもつ)
で表わされる赤色染料を反応させることによって製造することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のマレイミド−スチレン系共重合体は、次の反応式に従って、N‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミドとα‐メチルスチレンとをラジカル共重合させてN‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミドとα‐メチルスチレンとの共重合体(V)を製造する第一工程と、この共重合体(V)に前記一般式(IV)の赤色染料を反応させて、前記構成単位(I)、(II)及び(III)からなる共重合体(VI)を製造する第二工程を順次行うことにより製造することができる。
【化15】
(式中のx、y及びzは1以上の整数である)
【化16】
(式中のR、x、y及びzは前記と同じ意味をもち、x1+x2=xである)
【0011】
この第一工程の共重合反応は、N‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミドとα‐メチルスチレンとの混合物を、重合溶媒中、ラジカル重合開始剤の存在下で加熱することにより行われる。
この際のN‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミドとα‐メチルスチレンとの使用割合は、モル比で2:1ないし1:2、好ましくは1.2:1ないし1:1.2の範囲内で選ばれる。これよりもα‐メチルスチレンの量が少ないと所望の物性を有する共重合体が得られないし、またこれよりもN‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミドの量が少ないと、高温における配向構造の緩和を防止することができない上、後続工程における赤色染料の導入量が低くなり、所望の二次非線形光学活性が得られない。
【0012】
この共重合反応は、溶液重合、乳化重合、懸濁重合のいずれでもよいが、第二工程を連続して行いうるという点で溶液重合が好ましい。この場合、重合溶媒を使用しないで行うこともできるが、重合溶媒を用いる場合には、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどが好適である。そのほか、ベンゼン、ニトロベンゼンなどの炭化水素類、第三ブチルアルコールのようなアルコール類も用いられる。
【0013】
また、ラジカル重合開始剤としては、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化t‐ジブチルのような過酸化物系重合開始剤や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシアノ吉草酸、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩のようなアゾ系重合開始剤が用いられる。このラジカル重合開始剤の使用量は、通常、単量体全重量に基づき0.05〜5.0重量%の範囲内で選ばれる。
【0014】
次に、この共重合反応の温度としては、50〜100℃、好ましくは60〜80℃の範囲が好ましい。これよりも低い温度では、反応速度が遅く実用的でないし、またこれよりも高い温度では、副反応を生じ、最終的に得られる共重合体の品質低下の原因になる。この温度における重合時間は通常10〜50時間である。
このようにして、数平均分子量6,000〜130,000程度のN‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミドとα‐メチルスチレンとの共重合体(V)が白色固体として得られる。このもののMw/Mn比は、通常1.5〜3.0の範囲であり、狭い分子量分布を示す。
【0015】
次に、第二工程においては、このようにして得た共重合体に、前記一般式(IV)の赤色染料を反応させる。この際、縮合剤として、トリフェニルホスフィンとアゾジカルボン酸ジエチルエステルとを用いるのが好ましい。
この赤色染料としては、一般式(IV)においてRが水素原子のもの、Rがメチル基でアゾ基に対し、オルト位に結合しているもの、及びニトロ基がアゾ基に対し、オルト位又はパラ位に結合しているものがある。
これらの赤色染料は高分子化合物の側鎖に導入して二次非線形光学材料を形成させるクロモフォアとしてよく知られているものである。
【0016】
上記の赤色染料の導入率は、生成する共重合体の二次非線形光学特性に応じて選択される。この導入率は、赤色染料の使用量、反応時間により左右されるが、通常50〜95モル%、好ましくは70〜90モル%の範囲である。例えば、共重合体中のヒドロキシル基当量よりもやや過剰に使用し、40〜50時間反応させた場合、ヒドロキシル基の約70モル%以上に、この赤色染料を導入することができる。
【0017】
この第二工程は、反応溶媒としてテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどを用いて行われる。このようにして前記一般式(VI)の構造をもつ数平均分子量10,000〜200,000のマレイミド−スチレン系共重合体が、ガラス転移温度190℃程度の赤褐色固体として得られる。
このようにして得られたマレイミド−スチレン系共重合体は、文献未載の二次非線形光学特性を示す新規化合物で、その最適ポーリング温度は155〜165℃である。
【0018】
【実施例】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0019】
実施例
N‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミド0.74g(4.23ミリモル)と、α‐メチルスチレン0.50g(4.23ミリモル)と、2,2′‐アゾビスイソブチロニトリル0.03g(0.17ミリモル)と、テトラヒドロフラン0.5ミリリットルとを1.0ミリリットル容アンプル管に入れ、液体窒素を用いて脱気したのち、溶封し、24時間、60〜70℃に維持した。
次いで、生成物を取り出し、メタノールを用いて2回再沈殿して精製した。このようにして、N‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミドとα‐メチルスチレンとの共重合体1.05gを淡黄色固体として得た。収率84%。
このものの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定したところ、数平均分子量(Mn)は25,000であった。
このものの1H−NMRチャートを図1に示す。このチャートの水酸基によるピークとベンゼン環によるピークの積分値の比が1:0.9であることから、N‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミド単位とα‐メチルスチレン単位とのモル比は、ほぼ1:1であることが分かった。
【0020】
次に、前記の共重合体0.38g(1.22ミリモル)と、トリフェニルホスフィン0.45g(1.71ミリモル)と、前記一般式(IV)におけるRが水素原子で、ニトロ基がアゾ基に対しパラ位に結合している赤色染料DR−1 0.46g(1.47ミリモル)とを、テトラヒドロフラン20ミリリットルに溶解し、アルゴン雰囲気中において、この中へアゾジカルボン酸ジエチルエステル0.30g(1.71ミリモル)を滴下した。室温において48時間反応させたのち、生成物を回収し、メタノールで2回再沈殿させて精製した。
このようにして目的とするN‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミド単位とα‐メチルスチレン単位と前記一般式(III)においてRが水素原子でニトロ基がアゾ基に対しパラ位に結合している構成単位からなる共重合体0.65gを赤褐色固体として得た。
紫外線吸収スペクトルによりこのものの赤色染料DR−1含有率を求めたところ、ヒドロキシル基当量に基づき76%であることが分った。また、示差走査熱量測定によるガラス転移温度は190℃であった。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定は、その排除限界を越えたため測定できなかったので、赤色染料DR−1の分子量及びその含有率に基づいて計算したところ、約50,000であった。
このものの1H−NMRチャートを図2に示す。
【0021】
参考例1
実施例で得た共重合体を、0.6重量%濃度のクロロホルム溶液とし、スライドガラス上に、500rpm、30秒間の条件下でスピンコートした。
次いで、このようにして調製した膜厚約800Åの試料4個を、それぞれ120、140、160、180℃の温度において、コロナポーリング法に従い、5kW/cm2の強さで20分間電場印加したのち、二次非線形光学定数(d33)の値を求めた。
このd33値は、回転式メーカーフリンジ法に従い、Nb:YAGレーザ(λ=1064nm)を励起光として用いた試料のSHG測定で得られるフリンジと、リファレンス(SiO2)のフリンジから求めた。この結果をグラフとして図3に示す。
このグラフより、この共重合体の最適ポーリング温度は約160℃であることが分る。
【0022】
参考例2
実施例で得た共重合体を、1重量%濃度の塩化メチレン溶液として、スライドガラス上にスピンコートし、膜厚880Åのフイルムを形成し、110℃で7時間アニーリングしてフイルム中の低分子物質を除去したのち、160℃でポーリングし、空気中、80℃において、1100時間までの経時緩和を調べた。この結果をグラフとして図4に示す。
このグラフより、本発明の共重合体は優れた経時安定性を有することが分る。
【0023】
【発明の効果】
本発明の共重合体は、二次非線形光学特性を有する新規化合物であって、しかも長時間にわたって、高温における二次非線形光学特性の緩和に対して、優れた抑制効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】N‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミドとα‐メチルスチレンとの共重合体とのNMRチャート。
【図2】本発明共重合体のNMRチャート。
【図3】本発明共重合体のポーリング温度とd33との関係を示すグラフ。
【図4】本発明共重合体の二次非線形光学特性の経時緩和を示すグラフ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、二次非線形光学特性を示す新規なマレイミド−スチレン系共重合体、その製造方法及びそれを用いた有機二次非線形光学材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
これからの高度情報化社会においては、大容量かつ精密な情報を高速、高密度、高効率で伝達処理することが必要になってくる。そして、光は、並列、空間処理性、多量操作性、高密度性などの特性を有することから電子技術と相補ってこの分野で重要な役割を果たすことが予測されている。ところで、この光を利用するために必要な材料の1つとして、最近有機非線形光学材料が注目されている。
【0003】
これまで知られている無機材料による非線形効果は格子振動吸収により発現するものであるのに対し、有機材料による非線形効果は、非局在のπ電子系が置換基によって歪むために生じる双極子モーメントによるものであって、基本的に格子振動を伴わないためより高速の応答が可能になる。
【0004】
ところで、二次の非線形効果を生じさせるためには、誘起した双極子モーメントを同一方向に配向させることが必要で、これには有機結晶によるアプローチ、LB膜や液晶によるアプローチ、電場配向すなわちポーリングによるアプローチなどが知られているが、ポーリングによるアプローチは他の方法に比べ簡単なプロセスで配向構造を得ることができ、分子設計において比較的制約がないため、いろいろな分子について配向させて二次の非線形効果を生じさせることができるという利点がある。
【0005】
しかしながら、このようにして得られる二次の非線形光学効果は、それを生じる分子中の活性基が、分子の熱運動や電気的反発により緩和するため経時的に減少するという傾向がある。
このような二次の非線形光学効果の経時的減少を抑制する方法として、これまで高分子の場合、ガラス転移温度付近で十分に熱処理しながらポーリングを行うこと、ガラス転移温度の高い材料を用いることなどが提案されているが、必ずしも満足できる結果が得られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高温における配向構造の緩和を示さない、熱安定性の良好な二次の非線形光学特性を有する新規な高分子物質を提供することを目的としてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、二次の非線形光学特性を有する高分子物質を開発するために鋭意研究を重ねた結果、高ガラス転移点の高分子を生じるマレイミドを主鎖中に導入して剛直な重合体骨格を形成させ、これに側鎖として非線形光学活性基をペンダントさせることにより、高温における配向構造の緩和が抑制された二次の非線形光学特性を有する高分子物質が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)式
【化11】
で表わされる構成単位、(B)式
【化12】
で表わされる構成単位及び(C)一般式
【化13】
(式中のRは水素原子又はメチル基である)
で表わされる構成単位からなり、数平均分子量10,000〜200,000を有するマレイミド−スチレン系共重合体及びこれからなる二次非線形光学材料を提供するものである。
【0009】
前記のマレイミド−スチレン系共重合体は、例えばN‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミドとα‐メチルスチレンとをラジカル重合開始剤の存在下で共重合させ、次いでこのようにして得た共重合体に、一般式
【化14】
(式中のRは前記と同じ意味をもつ)
で表わされる赤色染料を反応させることによって製造することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のマレイミド−スチレン系共重合体は、次の反応式に従って、N‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミドとα‐メチルスチレンとをラジカル共重合させてN‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミドとα‐メチルスチレンとの共重合体(V)を製造する第一工程と、この共重合体(V)に前記一般式(IV)の赤色染料を反応させて、前記構成単位(I)、(II)及び(III)からなる共重合体(VI)を製造する第二工程を順次行うことにより製造することができる。
【化15】
(式中のx、y及びzは1以上の整数である)
【化16】
(式中のR、x、y及びzは前記と同じ意味をもち、x1+x2=xである)
【0011】
この第一工程の共重合反応は、N‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミドとα‐メチルスチレンとの混合物を、重合溶媒中、ラジカル重合開始剤の存在下で加熱することにより行われる。
この際のN‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミドとα‐メチルスチレンとの使用割合は、モル比で2:1ないし1:2、好ましくは1.2:1ないし1:1.2の範囲内で選ばれる。これよりもα‐メチルスチレンの量が少ないと所望の物性を有する共重合体が得られないし、またこれよりもN‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミドの量が少ないと、高温における配向構造の緩和を防止することができない上、後続工程における赤色染料の導入量が低くなり、所望の二次非線形光学活性が得られない。
【0012】
この共重合反応は、溶液重合、乳化重合、懸濁重合のいずれでもよいが、第二工程を連続して行いうるという点で溶液重合が好ましい。この場合、重合溶媒を使用しないで行うこともできるが、重合溶媒を用いる場合には、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどが好適である。そのほか、ベンゼン、ニトロベンゼンなどの炭化水素類、第三ブチルアルコールのようなアルコール類も用いられる。
【0013】
また、ラジカル重合開始剤としては、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化t‐ジブチルのような過酸化物系重合開始剤や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシアノ吉草酸、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩のようなアゾ系重合開始剤が用いられる。このラジカル重合開始剤の使用量は、通常、単量体全重量に基づき0.05〜5.0重量%の範囲内で選ばれる。
【0014】
次に、この共重合反応の温度としては、50〜100℃、好ましくは60〜80℃の範囲が好ましい。これよりも低い温度では、反応速度が遅く実用的でないし、またこれよりも高い温度では、副反応を生じ、最終的に得られる共重合体の品質低下の原因になる。この温度における重合時間は通常10〜50時間である。
このようにして、数平均分子量6,000〜130,000程度のN‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミドとα‐メチルスチレンとの共重合体(V)が白色固体として得られる。このもののMw/Mn比は、通常1.5〜3.0の範囲であり、狭い分子量分布を示す。
【0015】
次に、第二工程においては、このようにして得た共重合体に、前記一般式(IV)の赤色染料を反応させる。この際、縮合剤として、トリフェニルホスフィンとアゾジカルボン酸ジエチルエステルとを用いるのが好ましい。
この赤色染料としては、一般式(IV)においてRが水素原子のもの、Rがメチル基でアゾ基に対し、オルト位に結合しているもの、及びニトロ基がアゾ基に対し、オルト位又はパラ位に結合しているものがある。
これらの赤色染料は高分子化合物の側鎖に導入して二次非線形光学材料を形成させるクロモフォアとしてよく知られているものである。
【0016】
上記の赤色染料の導入率は、生成する共重合体の二次非線形光学特性に応じて選択される。この導入率は、赤色染料の使用量、反応時間により左右されるが、通常50〜95モル%、好ましくは70〜90モル%の範囲である。例えば、共重合体中のヒドロキシル基当量よりもやや過剰に使用し、40〜50時間反応させた場合、ヒドロキシル基の約70モル%以上に、この赤色染料を導入することができる。
【0017】
この第二工程は、反応溶媒としてテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどを用いて行われる。このようにして前記一般式(VI)の構造をもつ数平均分子量10,000〜200,000のマレイミド−スチレン系共重合体が、ガラス転移温度190℃程度の赤褐色固体として得られる。
このようにして得られたマレイミド−スチレン系共重合体は、文献未載の二次非線形光学特性を示す新規化合物で、その最適ポーリング温度は155〜165℃である。
【0018】
【実施例】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0019】
実施例
N‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミド0.74g(4.23ミリモル)と、α‐メチルスチレン0.50g(4.23ミリモル)と、2,2′‐アゾビスイソブチロニトリル0.03g(0.17ミリモル)と、テトラヒドロフラン0.5ミリリットルとを1.0ミリリットル容アンプル管に入れ、液体窒素を用いて脱気したのち、溶封し、24時間、60〜70℃に維持した。
次いで、生成物を取り出し、メタノールを用いて2回再沈殿して精製した。このようにして、N‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミドとα‐メチルスチレンとの共重合体1.05gを淡黄色固体として得た。収率84%。
このものの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定したところ、数平均分子量(Mn)は25,000であった。
このものの1H−NMRチャートを図1に示す。このチャートの水酸基によるピークとベンゼン環によるピークの積分値の比が1:0.9であることから、N‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミド単位とα‐メチルスチレン単位とのモル比は、ほぼ1:1であることが分かった。
【0020】
次に、前記の共重合体0.38g(1.22ミリモル)と、トリフェニルホスフィン0.45g(1.71ミリモル)と、前記一般式(IV)におけるRが水素原子で、ニトロ基がアゾ基に対しパラ位に結合している赤色染料DR−1 0.46g(1.47ミリモル)とを、テトラヒドロフラン20ミリリットルに溶解し、アルゴン雰囲気中において、この中へアゾジカルボン酸ジエチルエステル0.30g(1.71ミリモル)を滴下した。室温において48時間反応させたのち、生成物を回収し、メタノールで2回再沈殿させて精製した。
このようにして目的とするN‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミド単位とα‐メチルスチレン単位と前記一般式(III)においてRが水素原子でニトロ基がアゾ基に対しパラ位に結合している構成単位からなる共重合体0.65gを赤褐色固体として得た。
紫外線吸収スペクトルによりこのものの赤色染料DR−1含有率を求めたところ、ヒドロキシル基当量に基づき76%であることが分った。また、示差走査熱量測定によるガラス転移温度は190℃であった。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定は、その排除限界を越えたため測定できなかったので、赤色染料DR−1の分子量及びその含有率に基づいて計算したところ、約50,000であった。
このものの1H−NMRチャートを図2に示す。
【0021】
参考例1
実施例で得た共重合体を、0.6重量%濃度のクロロホルム溶液とし、スライドガラス上に、500rpm、30秒間の条件下でスピンコートした。
次いで、このようにして調製した膜厚約800Åの試料4個を、それぞれ120、140、160、180℃の温度において、コロナポーリング法に従い、5kW/cm2の強さで20分間電場印加したのち、二次非線形光学定数(d33)の値を求めた。
このd33値は、回転式メーカーフリンジ法に従い、Nb:YAGレーザ(λ=1064nm)を励起光として用いた試料のSHG測定で得られるフリンジと、リファレンス(SiO2)のフリンジから求めた。この結果をグラフとして図3に示す。
このグラフより、この共重合体の最適ポーリング温度は約160℃であることが分る。
【0022】
参考例2
実施例で得た共重合体を、1重量%濃度の塩化メチレン溶液として、スライドガラス上にスピンコートし、膜厚880Åのフイルムを形成し、110℃で7時間アニーリングしてフイルム中の低分子物質を除去したのち、160℃でポーリングし、空気中、80℃において、1100時間までの経時緩和を調べた。この結果をグラフとして図4に示す。
このグラフより、本発明の共重合体は優れた経時安定性を有することが分る。
【0023】
【発明の効果】
本発明の共重合体は、二次非線形光学特性を有する新規化合物であって、しかも長時間にわたって、高温における二次非線形光学特性の緩和に対して、優れた抑制効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】N‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミドとα‐メチルスチレンとの共重合体とのNMRチャート。
【図2】本発明共重合体のNMRチャート。
【図3】本発明共重合体のポーリング温度とd33との関係を示すグラフ。
【図4】本発明共重合体の二次非線形光学特性の経時緩和を示すグラフ。
Claims (3)
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