JP3550296B2 - 構造物の張力および曲げ剛性の測定方法 - Google Patents

構造物の張力および曲げ剛性の測定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、橋梁ケーブル、張弦梁等の建築構造物や、生産過程の線材、板材、電線など、張力が作用する一次元はりで表される構造物における張力および曲げ剛性の測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
吊橋や斜張橋等のケーブル架設過程や架設後の維持管理においては、ケーブルにかかる張力が設計範囲内のものであるかを確認することが不可欠である。また、線材や板材等の生産過程においては、これらにかかる張力を確認することによって品質管理等を行っている場合がある。
【0003】
このような構造物の張力を測定する方法としては、ロードセルや油圧ジャッキを用いて直接に測定する方法のほか、構造物にハンマーや加振機等によって衝撃を与え、構造物の振動を検出して周波数分析を行うことにより構造物の固有振動数を得て、この固有振動数から張力を推定する方法等が提案されている。
【0004】
このような方法は、構造物の固有振動数と張力との間に成り立つ関係から構造物にかかる張力を算出している。この関係から張力を算出するためには、構造物の長さ、断面積、密度等が必要であるが、特に構造物の曲げ剛性は張力に大きな影響を及ぼし、また張力によってその値が変化するため、張力とともにこの曲げ剛性の値も同時に推定することによってより高い精度を得る方法(特開平09−101289号)等も提案されている。
【0005】
また一方、この関係を具体的に解くためには、構造物の支持形態を表す境界条件が必要となるが、従来、この境界条件としては、計算が容易な単純支持(ピン支持)あるいは固定支持を表す境界条件が用いられていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、実際の構造物の支持形態は完全な単純支持や固定支持ではあり得ず、実際の構造物の支持形態を考慮することなく、上述のように単純支持や固定支持の境界条件を用いることは、計算が容易となる点で有効ではあるが、このような境界条件のもとで算定される構造物の張力等には誤差が含まれることとなり、高い精度が望めないという問題があった。
【0007】
特に、構造物にかかる張力が弱い場合や曲げ剛性が大きい場合、あるいは構造物の長さが短い場合には、構造物の支持形態、すなわち上述の境界条件の設定が算定結果に大きな影響を与えることとなる。したがって、このような場合には、算定される構造物の張力等に含まれる誤差が大きく、実際の値とかけ離れた結果しか得られないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、境界条件の設定が算定結果に大きな影響を与える場合においても、構造物の張力および曲げ剛性を同時に精度よく測定する方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明にかかる構造物の張力および曲げ剛性の測定方法は、張力の作用している構造物に衝撃を与え、この構造物上の任意の点における振動を検出して周波数分析を行うことにより複数の固有振動数を得て、こうして得られた複数の固有振動数およびその次数と、この構造物に作用する張力および曲げ剛性との間に成り立つ関係から、この構造物の張力および曲げ剛性を算出する方法であって、この算出過程において、この構造物が回転バネ支持されていることを表現する境界条件を用い、構造物の張力および曲げ剛性とともに、境界条件となる前記回転バネのバネ定数の値を算出することを特徴とするものである。
【0010】
この方法によれば、構造物の支持条件として回転バネ支持を表現する境界条件を用いるため、この回転バネのバネ定数が適切に設定されることによって実際の支持形態を十分に近似する支持条件を表現することができ、したがって、構造物の張力および曲げ剛性が精度よく測定される。
【0011】
さらに、この回転バネ支持を表現する境界条件に未知数のバネ定数を含め、構造物の張力および曲げ剛性とともに、このバネ定数をも算出することにより、実際の構造物の支持条件を十分に近似する適切なバネ定数の値が算出され、このバネ定数のもとで構造物の張力および曲げ剛性が算出されるため、さらに精度よく構造物の張力および曲げ剛性を測定することができる。
【0012】
また、このようにして構造物の張力、曲げ剛性およびバネ定数が算出されれば、逆に、この算出結果である構造物の張力、曲げ剛性およびバネ定数からこの構造物の複数の固有振動数を計算し、こうして算出結果から逆算して得られた複数の固有振動数と、実際に振動を検出して周波数分析を行うことにより得られた複数の固有振動数とを比較することによって、前記算出結果の妥当性の判定を行うことが望ましい。このような判定を行えば、妥当であると判定された算出結果については高い信頼性が得られるとともに、算出結果が妥当でないと判定されれば、計算の条件を改めるなどした上で繰り返し計算を行うことにより、最終的に信頼性の高い算出結果を得ることができる。
【0013】
この算出結果の妥当性の判定のための具体的な条件としては、算出結果から逆算された複数の固有振動数と、実際に測定された複数の固有振動数とを、各固有振動数の次数ごとに差をとり、これらの差のうち最大のものの値が所定値以下となっているかを判定する条件や、あるいは、算出結果から逆算された複数の固有振動数と、実際に測定された複数の固有振動数との、各固有振動数の次数ごとの差の二乗を平均した値が所定値以下となっているかを判定する条件等を挙げることができる。
【0014】
上記算出過程の具体的な手順としては、まず、回転バネのバネ定数の値を仮定しておき、この仮定のもとで構造物の張力および曲げ剛性を算出し、こうして算出された構造物の張力および曲げ剛性、ならびに、仮定したバネ定数からこの構造物の複数の固有振動数を逆算し、この逆算して得られた複数の固有振動数と、実際に振動を検出して周波数分析を行うことにより得られた複数の固有振動数とを比較することにより、バネ定数の仮定の妥当性を判定するという一連の手順を、この判定においてバネ定数の仮定の妥当性が得られるまで繰り返し行う方法を挙げることができる。
【0015】
このように回転バネのバネ定数の値を仮定すれば未知数が減るため、構造物の張力および曲げ剛性の算出が容易となり、また、このバネ定数の値の仮定については、算出結果から逆算した固有振動数を用いて、その妥当性が判断されるため、繰り返し計算の結果、最終的には、実際の構造物の支持条件を十分に近似する適切なバネ定数が得られ、ひいては、高い信頼性を有する構造物の張力および曲げ剛性を得ることができる。
【0016】
なお、この測定方法においては、構造物上の複数の点における振動を検出してそれぞれ周波数分析を行い、これらの分析結果を統合して構造物の固有振動数を得ることが望ましい。このように、複数点の振動を検出することとすれば、ある1つの振動検出点が振動モードの節に位置することによって、その振動モードの振動が検出されない場合であっても、他の振動検出点において振動が検出されることから、上述の算出過程においてその計算の基礎となる構造物の固有振動数を高い精度で得ることができる。
【0017】
また、構造物全体を加振することが困難な長大な構造物の張力および曲げ剛性を測定する場合等においては、以下の測定方法が推奨される。
【0018】
すなわち、本発明にかかる第2の構造物の張力および曲げ剛性の測定方法は、張力の作用している構造物に衝撃を与え、この構造物上の異なる2点における振動を検出して、これら2点における振動の比からこの構造物の振動伝達関数を求める周波数分析を行うことにより、この振動伝達関数の極大値または極小値を示す複数の周波数を得て、こうして得られた振動伝達関数の極大値または極小値を示す複数の周波数およびその次数と、この構造物の張力および曲げ剛性との間に成り立つ関係から、この構造物の張力および曲げ剛性を算出する方法であって、この算出過程において、この構造物が回転バネ支持されていることを表現する境界条件を用い、構造物の張力および曲げ剛性とともに、境界条件となる前記回転バネのバネ定数の値を算出することを特徴とするものである。
【0019】
この方法によれば、構造物の支持条件として回転バネ支持を表現する境界条件を用いるため、この回転バネのバネ定数が適切に設定されることによって実際の支持形態を十分に近似する支持条件を表現することができ、したがって、構造物の張力および曲げ剛性が精度よく測定されるとともに、振動伝達関数が得られればよいことから、後述するように、小さな加振力により、短時間で測定が行われる。
【0020】
さらに、この回転バネ支持を表現する境界条件に未知数のバネ定数を含め、構造物の張力および曲げ剛性とともに、このバネ定数をも算出することにより、実際の構造物の支持条件を十分に近似する適切なバネ定数の値が算出され、このバネ定数のもとで構造物の張力および曲げ剛性が算出されるため、さらに精度よく構造物の張力および曲げ剛性を測定することができる。
【0021】
また、このようにして構造物の張力、曲げ剛性およびバネ定数が算出されれば、逆に、この算出結果である構造物の張力、曲げ剛性およびバネ定数から振動の検出を行う前記2点間の振動伝達関数の極大値または極小値を示す複数の周波数を逆算し、こうして算出結果から逆算して得られた振動伝達関数の極大値または極小値を示す複数の周波数と、実際に振動を検出して周波数分析を行うことにより得られた振動伝達関数の極大値または極小値を示す複数の周波数とを比較することによって、前記算出結果の妥当性の判定を行うことが望ましい。このような判定を行えば、妥当であると判定された算出結果については高い信頼性が得られるとともに、算出結果が妥当でないと判定されれば、計算の条件を改めるなどした上で繰り返し計算を行うことにより、最終的に信頼性の高い算出結果を得ることができる。
【0022】
この算出結果の妥当性の判定のための具体的な条件としては、算出結果から逆算された振動伝達関数の極大値または極小値を示す複数の周波数と、実際に測定された振動伝達関数の極大値または極小値を示す複数の周波数とを、各周波数の次数ごとに差をとり、これらの差の最大のものの差の値が所定値以下となっているかを判定する条件や、あるいは、算出結果から逆算された振動伝達関数の極大値または極小値を示す複数の周波数と、実際に測定された振動伝達関数の極大値または極小値を示す複数の周波数との、各周波数の次数ごとの差の二乗を平均した値が所定値以下となっているかを判定する条件等を挙げることができる。
【0023】
上記算出過程の具体的な手順としては、まず、回転バネのバネ定数の値を仮定しておき、この仮定のもとで構造物の張力および曲げ剛性を算出し、こうして算出された構造物の張力および曲げ剛性、ならびに、仮定したバネ定数から振動の検出を行う前記2点間の振動伝達関数の極大値または極小値を示す複数の周波数を逆算し、この逆算して得られた振動伝達関数の極大値または極小値を示す複数の周波数と、実際に振動を検出して周波数分析を行うことにより得られた振動伝達関数の極大値または極小値を示す複数の周波数とを比較することにより、バネ定数の仮定の妥当性を判定するという一連の手順を、この判定においてバネ定数の仮定の妥当性が得られるまで繰り返し行う方法を挙げることができる。
【0024】
このように回転バネのバネ定数の値を仮定すれば未知数が減るため、構造物の張力および曲げ剛性の算出が容易となり、また、このバネ定数の値の仮定については、算出結果から逆算した振動伝達関数の極大値または極小値を示す周波数を用いて、その妥当性が判断されるため、繰り返し計算の結果、最終的には、実際の構造物の支持条件を十分に近似する適切なバネ定数が得られ、ひいては、高い信頼性を有する構造物の張力および曲げ剛性を得ることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
上述のように、本発明にかかる測定方法は、構造物の固有振動数を用いる測定方法と、振動伝達関数を用いる測定方法の2つの方法がある。
【0026】
まず、固有振動数を用いる測定方法について説明する。
【0027】
この固有振動数を用いる測定方法は、測定対象となる構造物の複数の固有振動数を実測する過程と、実測された固有振動数から構造物の張力および曲げ剛性を算出する過程の、大きく2つの過程に分けることができる。
【0028】
そこで、固有振動数を実測する過程から説明する。
【0029】
図1は、橋梁に架けられたケーブル10を測定対象として、本発明の測定方法を採用する場合の装置システムの一実施形態を示す概念図である。このケーブル10上には、ケーブル10の互いに異なる位置における振動を検出するため、2つの振動センサ21,22が取付けられている。これらのセンサ21,22によって検出された振動は、アンプ30を介して高速フーリエ変換器(FFT)40に送られて周波数分析される。そして、この結果がパソコン50に入力されて、固有振動数fの算出、さらに後述する構造物の張力Tおよび曲げ剛性EIの算出が行われるようになっている。
【0030】
固有振動数の実測は、このケーブル10にハンマー等で衝撃を与えて振動を生じさせ、この振動を振動センサ21,22によって検出することによって行われる。なお、これら振動センサ21,22が検出する振動は、振動変位、振動速度または振動加速度等のいずれであってもよい。
【0031】
図2に、振動センサ21,22によって測定されたケーブル10の振動速度を高速フーリエ変換器40で周波数分析を行った結果の一例をグラフ化して示す。図2(a)は、振動センサ21による結果、図2(b)が振動センサ22による結果を表しており、これらのグラフの横軸は振動数を、縦軸は振動速度の対数値を表している。
【0032】
この図2において、ケーブル10の固有振動数fはこのグラフの複数のピークとして表れている。この固有振動数fは、この周波数分析の結果からパソコン50によって検出するようになっている。また、固有振動数fの次数(振動モードの次数)iは、図2において各ピークの上に付したように、振動数の小さい順に決定される。
【0033】
この図2(a)と(b)とを比較すると、振動センサ21,22で検出される周波数分析の結果は、ともに同じ系の振動を検出しているものであるため、当然に同じ固有振動数fが検出されるが、両者の間でピークの表れ方に差があることが分かる。例えば、10次、13次等のピークは、図2(b)では読み取りにくいが、図2(a)ではピークが高く読み取りやすい。これは、振動センサ22の取付位置がこれらの振動モードの節の位置近傍にあるためと考えられる。しかし、複数の次数の振動を検出する場合には、すべての振動モードの節の位置を避けて振動センサを配置することは実際上不可能である。したがって、1つの振動センサのみによれば、必然的に、このような読み取りにくいピークが生じてしまう。そこで、複数の固有振動数fおよびその次数iを確実に検出するためには、図1に示す測定方法のように、測定対象となる構造物の複数位置の振動を検出して周波数分析を行い、こうして得られる複数の周波数分析結果を用いて固有振動数fを算出することが望ましい。
【0034】
なお、このように固有振動数fの検出の確実性を向上させるためには、複数位置の振動を検出できればよく、この実施形態のように、必ずしも複数の振動センサを用いて同時的に振動の検出を行わなくともよい。
【0035】
次に、このようにして得られた複数の固有振動数fから、構造物の張力Tおよび曲げ剛性EIを算出する過程について説明する。この算出過程は、構造物の複数の固有振動数fおよびその次数iと、構造物の張力Tおよび曲げ剛性EIとの間に成り立つ関係を用いるものである。そこで、この関係を導出する過程から説明する。
【0036】
図3に示すような1次元はりで表される構造物において、張力Tが作用する場合のたわみwに関する運動方程式は、一般に次式で表される。
【0037】
【数1】
Figure 0003550296
【0038】
ただし、wは構造物のたわみ変位、EIは曲げ剛性、Tは張力、ρは密度、Aは断面積を表している。
【0039】
ここで、たわみ変位をw(x,t)=W(x)exp(jωt)と変数分離し、(1)式を解くと、たわみのモードWの一般解は次式で表される。
【0040】
【数2】
Figure 0003550296
【0041】
ただし、
【0042】
【数3】
Figure 0003550296
【0043】
【数4】
Figure 0003550296
【0044】
ここで、構造物両端における支持条件が、ピン支持にバネ定数Kの回転バネを加えた条件と考える。このとき、構造物両端(x=0,x=L)におけるたわみ変位Wは零であり、また、構造物両端における曲げモーメントは回転バネとつりあうことから、以下の境界条件が得られる。
【0045】
【数5】境界条件
Figure 0003550296
【0046】
【数6】
Figure 0003550296
【0047】
【数7】
Figure 0003550296
【0048】
【数8】
Figure 0003550296
【0049】
なお、バネ定数Kは未知数である。
【0050】
(2)式に、これらの境界条件(5)〜(8)式を用いることにより、次式に示す振動数方程式が導かれる。
【0051】
【数9】
Figure 0003550296
【0052】
なお、
【0053】
【数10】
Figure 0003550296
【0054】
振動数方程式(9)を解くと、最終的に次式が得られる。
【0055】
【数11】
Figure 0003550296
【0056】
以上のようにして、構造物の固有振動数fおよびその次数iと、構造物の張力Tおよび曲げ剛性EIとの間に成り立つ関係式(11)が導かれる。なお、この式(11)に含まれる媒介変数α,β,θは、式(3)、(4)、(10)によって消去することができることから、この式(11)は、固有振動数fおよびその次数iと、算出対象となる張力T、曲げ剛性EIおよびバネ定数Kと、さらに既知の値として扱う密度ρ、断面積Aおよび長さLと、のみからなる関係式となっている。
【0057】
この測定方法における算出過程とは、実測によって得られる構造物の固有振動数fおよびその次数iに対して、上述のように理論的に導かれた(11)式の関係に最も適合する構造物の張力T、曲げ剛性EIおよびバネ定数Kを算出するためのものである。以下、その具体的な手順について説明する。
【0058】
この算出過程では、(11)式の形に着目して最小2乗法を適用する。
【0059】
(11)式中のθは、(10)式に定義されているようにα,βを含み、これらα、βは、(3)、(4)式で定義されているように固有振動数(角振動数ω)の関数となっているため、θは固有振動数の関数となっている。そこで、固有振動数の次数iに対応するθの値をθとして表すこととし、さらに、(11)式中の(i−θ/π)をXで置き換える。
【0060】
このようにすれば、固有振動数fの2乗値が、その次数iに対応する変数Xの多項式で表現されるため、複数個の固有振動数fの値と、その次数iにおけるXの値(θの値)を用いて、この(11)式に最小2乗法を適用することにより、同式の係数である構造物の張力Tおよび曲げ剛性EIを得ることができる。具体的には、(11)式に最小2乗法を適用することにより得られる次式を用いて、構造物の張力Tおよび曲げ剛性EIが得られる。
【0061】
【数12】
Figure 0003550296
【0062】
ただし、上述したように、(12)式によって張力Tおよび曲げ剛性EIを求めるためには、Xの値、すなわちθの値が必要である。しかし、このθは、(10)式に定義されているように、張力T、曲げ剛性EI、さらにバネ定数Kの関数となっているため、これら張力T等の値が決定されていなければ求めることができない。
【0063】
そこで、バネ定数Kについては適当な値を仮定しておき、このバネ定数Kの仮定のもとで、θ(正確にはX)から張力Tおよび曲げ剛性EIを算出する(12)式と、張力Tおよび曲げ剛性EIからθを算出する(10)式とを用いて繰り返し計算を行うことにより張力Tおよび曲げ剛性EIを求めることとする。
ここで、第j回目の繰り返し計算によって得られる張力T、曲げ剛性EIおよび媒介変数θは、上付き文字jを付して、T(j),EI(j),θ (j)と表すこととする。
【0064】
また、適当な値を仮定したバネ定数Kについては、その仮定した値が適当であるかを判定し、不適当な仮定であるならば、新たな値を仮定して再び上述の張力Tおよび曲げ剛性EIを求める繰り返し計算を行うこととする。
【0065】
このバネ定数Kの仮定の適不適の判定は、仮定したバネ定数Kの値、およびこのKの値のもとで上記繰り返し計算により求められた張力Tおよび曲げ剛性EIを有する系では、どのような振動が起こり、どのような固有振動数fを有するかを逆に計算し、この逆算によって得られた固有振動数fと実測によって得られる固有振動数fとを比較検討することによって行う。
【0066】
なお、この張力Tおよび曲げ剛性EIから固有振動数fiを求める計算においては、張力T、曲げ剛性EIおよびバネ定数Kは定数として扱い、θiから固有振動数fiを算出する(11)式と、固有振動数fiから(3)、(4)式を介してθiを算出する(10)式とを用いて繰り返し計算を行う。ここで、第k回目の繰り返し計算によって得られる固有振動数fiおよび媒介変数θiについては、上付き文字kを付して、fi (k) ,θi (k)と表すこととする。
【0067】
図4に、以上のような算出過程の具体的な手順をフローチャートとして示し、以下、このフローチャートに沿って、各手順を説明する。
【0068】
ステップS1:バネ定数Kを仮定する。ここでは、橋梁ケーブルでは固定と見なせる場合も多いので、仮定するバネ定数Kの初期値としては、K=∞が推奨される。以下、ステップS6までは、この仮定したバネ定数Kのもとで、最も適当な張力Tおよび曲げ剛性EIを算出する過程である。
【0069】
ステップS2:媒介変数θ (0)の初期値を設定する。この初期値とは、仮定したKのもとで、T,EIを得るための繰り返し計算に用いる初期値である。例えば、θ (0)=0のように設定すればよい。
【0070】
ステップS3:(12)式により、設定した初期値θ (0)と、実測によって得られる固有振動数fおよびその次数iとから、T(0),EI(0)を計算する。
【0071】
ステップS4:(10)式により、T(j−1)およびEI(j−1)と、実測によって得られる固有振動数fおよびその次数iとから、θ (j)を計算する。ただし、ω=2πfである。なお、jは繰り返し計算を示したもので、ここではj−1回目の繰り返し計算によって得られたT(j−1),EI(j−1)から、j回目の繰り返し計算の結果としてθ (j)を得ている。ここに、j=1,2,…である。
【0072】
ステップS5:(12)式により、θ (j)と、実測によって得られる固有振動数fおよびその次数iとから、T(j)およびEI(j)を計算する。
【0073】
ステップS6:T(j)およびEI(j)を得る繰り返し計算の収束判定を行う。ここでは、繰り返し回数j−1回目に算出されたT(j−1)と、j回目に算出されたT(j)との比を用いた次の判別式を満足するかによって収束判定を行っている。
【0074】
この判別式を満たしていない場合、ステップS4に戻り、この判別式を満たすまでステップS4〜S6を繰り返す。なお、この判別式を満たすT(j)およびEI(j)は、ステップS1において仮定したバネ定数Kのもとで、最も適当なT(j)およびEI(j)であると考えられる。
【0075】
【数13】
Figure 0003550296
【0076】
ステップS7:以下のステップは、ステップS1におけるバネ定数Kの仮定の適不適を判定する過程であり、このため、この仮定のもと、ステップS6までで得られたT(j)およびEI(j)から、繰り返し計算により逆に固有振動数fを計算する。ここでは、この繰り返し計算のための固有振動数の初期値f (0)を設定する。具体的には、実測された固有振動数の値fをこの初期値として用いることが推奨される。
【0077】
ステップS8:(10)式により、f (k−1)と、ステップS6までで得られたT(j),EI(j)とから、θ (k)を計算する。具体的には、f (k−1)からω (k−1)を算出し、これを(3)、(4)式に代入することで媒介変数α、βを得て、これを(10)式に代入することによってθ (k)が得られる。なお、k=1,2,…である。
【0078】
ステップS9:(11)式により、θ (k)と、ステップS6までで得られたT(j),EI(j)とから、f (k)を計算する。
【0079】
ステップS10:f (k)を得る繰り返し計算の収束判定を行う。ここでは、すべての次数iにおいて、繰り返し回数k−1回目に算出されたf (k−1)と、k回目に算出されたf (k)との比を用いた次の判別式を満足するかによって収束判定を行っている。この判別式を満たしていない場合、ステップS8に戻り、この判別式を満たすまでステップS8〜S10を繰り返す。なお、この判別式を満たすf (k)は、ステップS1で仮定したKと、ステップS6までで算出されたT(j)およびEI(j)とによる系における固有振動数である。
【0080】
【数14】
Figure 0003550296
【0081】
ステップS11:こうして得られたf (k)と、実測によって得られた固有振動数fとを比較して、バネ定数Kの仮定の適不適を判定する。ここでは、すべての次数iにおける固有振動数fについて、計算値f (k)と測定値fとの差を用いた最大値を次の判別式を満足するかによって判定を行っている。この判別式が満たされた場合は、バネ定数Kの仮定が妥当であったと判断して計算を終了する。一方、この判別式が満たされなかった場合には、バネ定数Kの仮定が妥当でなかったと判断し、ステップS1に戻り、バネ定数Kに別の値を仮定し、上記ステップS1〜S11を繰り返し行う。なお、2回目以降の繰り返し計算においては、ステップS2で設定するθ (0)の初期値には、その直前の繰り返し計算において得られている収束値θ (j)を用いることとしてもよい。
【0082】
【数15】
Figure 0003550296
【0083】
以上のようにして、実測された固有振動数fとその次数iから、構造物の張力Tと曲げ剛性EIを算定することができる。
【0084】
次に、振動伝達関数を用いる測定方法について説明する。
【0085】
上述の固有振動数を用いる測定方法では、固有振動数を測定するために構造物全体を振動させる必要がある。しかし、測定対象となる構造物が長さが数百メートルに及ぶようなケーブル等の場合には、構造物全体を振動させることは容易ではなく、さらに、低次の固有振動数が非常に小さな値(例えば1Hz以下)となることがあり、振動数の測定に長時間を要する。このため、風などの不規則な外力の影響を受けやすく、必ずしも正確なデータが得られないことがある。この点、この振動伝達関数を用いる測定方法は、構造物の全体を振動させる必要がなく、測定対象が特に大きな構造物である場合等には有効な方法である。
【0086】
この振動伝達関数を用いる測定方法も、測定対象となる構造物の振動を実測して、固有振動数を用いる方法における固有振動数に相当する、振動伝達関数の極大値または極小値を求める過程と、実測された振動伝達関数の極大値または極小値から構造物の張力および曲げ剛性を算出する過程の、大きく2つの過程に分けることができる。
【0087】
そこで、まず、実測により振動伝達関数の極大値または極小値を得る過程から説明する。
【0088】
この測定方法の測定システムとしても、図1に示した装置システム等を挙げることができる。ただし、この振動伝達関数を用いる方法においては、同時に構造物上の2点における振動を検出する必要があるため、図1の装置システムのように、2つの振動センサ21,22を配置することが必須である。
【0089】
振動伝達関数は、測定対象となっているケーブル10にハンマー等で衝撃を与えて振動を生じさせ、これら2つの振動センサ21,22によってそれぞれ検出される振動の比を周波数分析を行うことによって得られる。このハンマー等による加振点は、ケーブル10の一端からみて2つの振動センサ21,22より外側とし、この加振点からケーブル10の一端に向かう振動入射波成分と、この一端で反射して加振点に向かう振動反射波成分とをこれら2つの振動センサ21,22によって測定することが望ましい。なお、振動センサ21,22としては、振動変位、振動速度または振動加速度等のいずれを検出するものでもよい。
【0090】
図5に、振動センサ21,22により振動速度を検出し、周波数分析を行うことにより得られた振動伝達関数の一例をグラフ化して示す。この図5において、振動伝達関数の極大値はこのグラフの複数のピークとして表れており、極小値はこのグラフの複数の谷として表れている。
【0091】
図1に示した装置システムでは、この振動伝達関数から、極大値または極小値の周波数と、図5に各ピークおよび谷に付して示したこれら極大値または極小値の次数をパソコン50によって検出するようになっている。
【0092】
なお、このようにして得られる振動伝達関数の極大値または極小値の周波数は、一般に固有振動数よりも高くなるため、複数周期の振動を平均処理して周波数分析を行う場合、固有振動数を測定するよりも振動伝達関数の極大値または極小値の周波数の測定は短時間で行うことができる。したがって、測定中の風の影響等を抑え、高い精度の測定を行うことができる。
【0093】
さらに、測定する周波数域は振動センサの位置により決定できるため、センサ精度に応じてセンサを配置することにより、最適な周波数域を任意に設定することで、さらに高い測定精度を得ることができる。
【0094】
また、2つの振動センサを配置した位置の振動伝達関数を得ることができるため、構造物全体では張力等に変化がある場合であっても、任意位置の局所的な張力を得ることができる。
【0095】
特に、振動センサ位置の近傍のみを加振することで振動伝達関数が得られるため、構造物全体を加振する必要がなく、加振の困難な長大な構造物に対しても容易に適用することができる。
【0096】
次に、こうして得られた振動伝達関数の極大値または極小値から、構造物の張力および曲げ剛性を算出する過程について説明する。
【0097】
図6に、振動伝達関数による方法を適用する系を模式的に示す。振動伝達関数による方法では、上述のように2つの振動センサを必要とするが、これらの振動センサは、図6に示すように、構造物の一端(以下、左端という)をx軸の原点として、x=L,x=Lに配置されている。
【0098】
この構造物のたわみwに関する運動方程式は、上述した(1)式と同じであり、たわみ変位wを変数分離すれば、たわみモードWの一般解は(2)式が得られ、この(2)式中のαおよびβは、(3)、(4)式によって定義される。
【0099】
ここで、構造物両端における支持条件がピン支持にバネ定数Kの回転バネを加えた条件と考える。そして、まず、構造物の左端(x=0)における境界条件を考えると、この左端におけるたわみ変位Wは零であり、またこの左端における曲げモーメントは回転バネとつりあうことから、以下の境界条件が得られる。
【0100】
【数16】
Figure 0003550296
【0101】
【数17】
Figure 0003550296
【0102】
構造物の右端(x=L)についても、回転バネによる支持を表現する境界条件としては、上述した固有振動数を用いた方法と同じ境界条件が得られるが、ここでは、次のように考える。すなわち、たわみモードWの一般解を表す(2)式の右辺第4項:Cexp(βx)は、構造物右端(x=L)の近接場(ニアフィールド)の影響を示しているものである。この右端も回転バネで支持されているため、たわみ変位は零である。後述するが、極めて大きな値となるexp(βL)に対して、この条件を満たすCは極めて小さな値となる。このため、本方法ではC=0と仮定する。
【0103】
(2)式にx=0の境界条件を示す(16),(17)式を代入することにより、たわみモードWは次式のように表現できる。
【0104】
【数18】
Figure 0003550296
【0105】
なお、
【0106】
【数19】
Figure 0003550296
【0107】
次に、(18)式で正弦関数項が零になる条件と、そのときの指数関数項の大きさを考える。
【0108】
【数20】
Figure 0003550296
【0109】
【数21】
Figure 0003550296
【0110】
参考のため、i=1,2の条件における指数関数項を計算すると、exp(−π)=0.043,exp(−2π)=0.0019であり、十分に小さな値である。すなわち、exp(−βx)で表現される構造物左端(L=0)の近接場の影響は、左端近傍に限られており、x=L,L点のように左端から離れた位置で、正弦波項が最初に零となる条件では、指数関数項は無視できると考えられる。前述した構造物右端(x=L)の近接場の影響を示す指数関数項exp(βL)は、この逆で極めて大きな値を示すが、その影響は右端近傍に限られており、左端近くの振動値に影響を与えることはない。
【0111】
以上の仮定により、最終的にたわみモードWとして次式が導かれる。
【0112】
【数22】
Figure 0003550296
【0113】
この結果、図6に示した2点(x=L、x=L)間の振動伝達関数は次式として与えられる。
【0114】
【数23】
Figure 0003550296
【0115】
この式(23)では、分子および分母が零のとき、伝達関数は極値を示す。極大値に注目すると、次の条件式が得られる。
【0116】
【数24】
Figure 0003550296
【0117】
さらにこの(24)式に、αの定義式である(3)式を代入すると、最終的に極値の次数iとその周波数fとの間に次に関係式が導かれる。
【0118】
【数25】
Figure 0003550296
【0119】
以上のようにして、構造物の振動伝達関数の極大値または極小値を示す複数の周波数fおよびその次数iと、この構造物の張力Tおよび曲げ剛性EIとの間に成り立つ関係式(25)が導かれる。なお、このようにして導かれた(25)式は、f,θおよびLの定義が異なるだけで、固有振動数を用いた方法における関係式(11)と同じ形をしている。
【0120】
したがって、固有振動数fの代わりに、振動伝達関数の極大値を示す周波数fを用い、θの定義式(10)の代わりに(19)式を用い、さらに構造物の長さLの代わりに振動センサ22のケーブル左端からの距離Lを用いれば、上述した(11)式を用いた図4のフローチャートに沿った手順と同じ手順によって、張力T、曲げ剛性EI、さらにバネ定数Kを算出することができる。
【0121】
また、(23)式において、極小値に注目してもLとLが異なるだけで、(25)式に示す関係式と同様の関係式が得られるため、振動伝達関数の極小値を示す周波数fとその次数iを用いても、上述した手順によって張力T、曲げ剛性EI、さらにバネ定数Kを算出することができる。
【0122】
なお、上記実施形態においては、構造物の支持条件としてピン支持に回転バネを加えた条件を用いたが、本発明における測定方法としては、回転バネを用いた支持条件を表現する境界条件であれば、上記境界条件に限定されるものではない。例えば、移動支点を設定することや、摩擦抵抗等を生じるダンパ等を加えた境界条件を設定しても良い。
【0123】
また、上記実施形態では、構造物の張力および曲げ剛性とともにバネ定数をも算出するものとしたが、本発明にかかる測定方法としては、構造物の支持条件を回転バネを考慮した境界条件とすれば、例えば、バネ定数の値を算出することなく、所定のバネ定数の値を設定して構造物の張力および曲げ剛性のみを算出することとしても良い。
【0124】
さらに、具体的な算出過程においては、バネ定数Kの値を仮定して、この仮定のもとで構造物の張力および曲げ剛性の算出を行うものとしたが、このような仮定をせずに直接的に構造物の張力、曲げ剛性、さらにバネ定数を同時的に算出することとしても良い。
【0125】
また、上記実施形態は、構造物の張力、曲げ剛性およびバネ定数を得ることができる測定方法であるが、この測定方法は、測定が必要とされる対象が張力のみや曲げ剛性のみである場合であっても当然に適用することができ、これら張力、曲げ剛性およびバネ定数をまとめて算出することによって、高い精度で必要な測定対象の値を得ることができる。
【0126】
【実施例】
次に、本発明にかかる測定方法の精度を実験で検証する。
【0127】
[実施例1]
固有振動数を用いる測定方法についての実験として、直径6mmおよび8mmの丸棒材を用い、種々の条件のもとで、この丸棒材の張力および曲げ剛性を測定した。表1に丸棒材の直径d、曲げ剛性EI、長さL、張力Tなど数値実験で与えた緒言を示す。なお表中のξについては後述する。
【0128】
【表1】
Figure 0003550296
【0129】
図7に、測定対象とした丸棒材端部の支持形態を示す。この図に示すように、丸棒材60は、端部に孔を設け、ここにピン70を通して固定ブロック80左端面で支持することにより、柔らかい回転バネによって支持されている条件を模擬した。
【0130】
図8に、張力Tの算定結果を示す。○は回転バネ支持を考慮した境界条件を設定して算出を行った場合の結果であり、▲および■は、回転バネを考慮した場合との比較のため、それぞれ単純支持(ピン支持)および固定支持の境界条件を設定して算出を行った場合の結果を示している。これら単純支持および固定支持を設定した場合とは、図4のフローチャートにおいて、ステップS1でバネ定数Kの仮定をK=0またはK=∞とし、さらに、ステップS7〜S11のバネ定数Kの仮定について妥当性判断を行わず、K=0またはK=∞のままステップS6で終了した場合であり、従来の測定方法を表現したものである。
【0131】
この図において、横軸に構造物の支持条件の算出結果への影響を表す、次式に示す無次元数ξをとっている。
【0132】
【数26】
Figure 0003550296
【0133】
すなわち、このξは、張力T、曲げ剛性EIおよび構造物長さLによって決定される値であり、グラフ左側のξが小さな値をとる領域ほど構造物の支持条件が大きな影響を持つ領域となっている。
【0134】
また、縦軸は算出された張力Tの値を、実際に実験において与えた張力の値Tによって除した値、すなわち、張力Tの算定精度を表している。したがって、縦軸の値が1で正解値が得られていることになる。
【0135】
この図から分かるように、構造物支持条件がバネ支持で近似できる場合において、この支持条件を誤って▲で示す単純支持の境界条件や■で示す固定支持の境界条件として、張力Tおよび曲げ剛性EIの算出を行った場合には、張力Tの算定結果に誤差を生じ、特にξの値が小さい場合にはさらに大きな誤差を生じてしまうことが分かる。これに対して、本発明の測定方法(固有振動数を用いる方法)によれば、ξの値の小さな境界条件の影響が大きくなる領域であっても誤差が小さく、精度の高い算定結果が得られることが分かる。
【0136】
[実施例2]
振動伝達関数を用いる測定方法の実験として、直径6mmの丸棒材を用い、表2に示す種々の条件を組み合わせて、この丸棒材の張力Tおよび曲げ剛性EIの測定を行った。この丸棒材の支持形態は図7と同様である。
【0137】
【表2】
Figure 0003550296
【0138】
図9および図10に、張力Tおよび曲げ剛性EIの算定結果を示す。●は回転バネ支持を考慮した境界条件を設定して算出を行った場合の結果であり、○は固定支持の境界条件を設定して算出を行った場合の結果である。
【0139】
これらの図から分かるように、構造物の支持条件がバネ支持で近似できる場合において、この支持条件を誤って○で示す固定支持とみなす境界条件を設定すると、張力Tおよび曲げ剛性EIともに大きな誤差を生じることが分かる。特にξの値が小さい場合には大きな誤差が生じることが分かる。これに対して、本発明の測定方法(振動伝達関数を用いる方法)によれば、このような境界条件の影響の大きくなる領域においても誤差が小さく、精度の高い算定結果が得られることが分かる。
【0140】
なお、図11に、条件ξ/π=4.58のときの、最終的に算出された張力T、曲げ剛性EI、バネ定数Kから逆算して得た振動伝達関数と、実測によって得られた振動伝達関数とを示す。この図から分かるように、逆算して得られた振動伝達関数と、実測によって得られた振動伝達関数とはほぼ一致しており、算出された張力T、曲げ剛性EI、バネ定数Kは実際の系とほぼ一致する精度の高い結果が得られていることが確認できる。
【0141】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、張力の作用している構造物に衝撃を与えて振動を検出し、周波数分析を行って得られた複数の固有振動数から、構造物の張力および曲げ剛性を算出する過程において、この構造物が回転バネ支持されていることを表現する境界条件を用い、構造物の張力および曲げ剛性とともに、境界条件となる前記回転バネのバネ定数の値を算出しているので、実際の構造物の支持形態を十分に近似する支持条件を表現することができるとともに、適切なバネ定数の値が算出されるため、特に高い精度で構造物の張力および曲げ剛性を算出することができる。したがって、構造物にかかる張力が弱い場合や曲げ剛性が大きい場合、あるいは構造物の長さが短い場合など、構造物の支持形態を表す境界条件の設定が算定結果に大きな影響を与える場合であっても、構造物の張力および曲げ剛性を高い精度で測定することができる。
【0142】
また、構造物の張力のみを得たい場合であっても、この算出過程に必要となる曲げ剛性も同時に算出されるため、曲げ剛性を事前に測定する必要がなく、容易に測定を行うことができる。あるいはまた、構造物の曲げ剛性のみを得たい場合であっても、曲げ剛性が、張力と同時に算出されるため、張力を別途測定する必要がなく、容易に測定を行うことができる。
【0144】
さらにまた、構造物の張力、曲げ剛性およびバネ定数の算出結果から固有振動数を逆算し、実際に測定された固有振動数と比較することによって、前記算出結果の妥当性を判定することとすれば、算出結果に高い信頼性を得ることができる。
【0145】
また、回転バネのバネ定数の値を仮定しながら構造物の張力および曲げ剛性の算出を行うこととすれば、未知数を減らして張力および曲げ剛性の算出を容易なものとすることができる。
【0146】
さらに、構造物上の2点の振動を検出して振動伝達関数を求める周波数分析を行い、この振動伝達関数の極大値または極小値を示す複数の周波数から、構造物の張力および曲げ剛性を算出することとすれば、この振動伝達関数の極大値または極小値を示す周波数は一般に固有振動数より高いため、測定を短時間で行うことができ、測定中の風等の影響を抑えて高い精度の測定を行うことができる。また、振動センサの精度等に応じて振動検出位置を選定することにより測定周波数域を任意に設定することができるため、さらに高い測定精度を得ることができる。さらに、振動センサの位置近傍の振動伝達関数が得られるため、構造物の局所的な張力等を得ることができる。また、振動センサ位置の近傍のみを加振することで振動伝達関数が得られるため、構造物全体を加振する必要がなく、加振の困難な長大な構造物に対しても容易に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる測定方法を採用する装置システムの一実施形態を示す概略図である。
【図2】固有振動数を用いる測定方法において、振動センサに検出された振動を周波数分析した結果の一例を示すグラフである。
【図3】固有振動数を用いる測定方法の説明図である。
【図4】固有振動数を用いる測定方法の算出過程の具体的手順を示すフローチャートである。
【図5】振動伝達関数を用いる測定方法において、周波数分析により得られた振動伝達関数の一例を示すグラフである。
【図6】振動伝達関数を用いる測定方法の説明図である。
【図7】実施例における丸棒材端部の支持形態の説明図である。
【図8】固有振動数を用いる測定方法による、張力Tの算定結果である。
【図9】振動伝達関数を用いる測定方法による、張力Tの算定結果である。
【図10】振動伝達関数を用いる測定方法による、曲げ剛性EIの算定結果である。
【図11】振動伝達関数を用いる測定方法による、算出結果から逆算した振動伝達関数と、実測による振動伝達関数を示すグラフである。
【符号の説明】
10 ケーブル
21,22 振動センサ
30 アンプ
40 高速フーリエ変換器(FFT)
50 パソコン

Claims (6)

  1. 張力の作用している構造物に衝撃を与え、この構造物上の任意の点における振動を検出して周波数分析を行うことにより複数の固有振動数を得て、
    こうして得られた複数の固有振動数およびその次数と、この構造物に作用する張力および曲げ剛性との間に成り立つ関係から、この構造物の張力および曲げ剛性を算出する方法であって、
    この算出過程において、この構造物が回転バネ支持されていることを表現する境界条件を用い、構造物の張力および曲げ剛性とともに、境界条件となる前記回転バネのバネ定数の値を算出することを特徴とする構造物の張力および曲げ剛性の測定方法。
  2. 算出結果として得られる構造物の張力、曲げ剛性およびバネ定数からこの構造物の複数の固有振動数を逆算し、
    こうして算出結果から逆算して得られた複数の固有振動数と、実際に振動を検出して周波数分析を行うことにより得られた複数の固有振動数とを比較することによって、前記算出結果の妥当性の判定を行う請求項記載の構造物の張力および曲げ剛性の測定方法。
  3. 張力の作用している構造物に衝撃を与え、この構造物上の任意の点における振動を検出して周波数分析を行うことにより複数の固有振動数を得て、
    こうして得られた複数の固有振動数およびその次数と、この構造物に作用する張力および曲げ剛性との間に成り立つ関係から、この構造物の張力および曲げ剛性を算出する方法であって、
    この算出過程において、この構造物が回転バネ支持されていることを表現する境界条件を用い、境界条件となる前記回転バネのバネ定数の値を仮定して、この仮定のもとで構造物の張力および曲げ剛性を算出し、
    こうして算出された構造物の張力および曲げ剛性、ならびに、仮定したバネ定数からこの構造物の複数の固有振動数を逆算し、
    この逆算して得られた複数の固有振動数と、実際に振動を検出して周波数分析を行うことにより得られた複数の固有振動数とを比較することにより、バネ定数の仮定の妥当性を判定するという一連の手順を、
    この判定においてバネ定数の仮定の妥当性が得られるまで繰り返し行うことを特徴とする構造物の張力および曲げ剛性の測定方法。
  4. 張力の作用している構造物に衝撃を与え、この構造物上の異なる2点における振動を検出して、これら2点における振動の比からこの2点間の振動伝達関数を求める周波数分析を行うことにより、この振動伝達関数の極大値または極小値を示す複数の周波数を得て、
    こうして得られた振動伝達関数の極大値または極小値を示す複数の周波数およびその次数と、この構造物の張力および曲げ剛性との間に成り立つ関係から、この構造物の張力および曲げ剛性を算出する方法であって、
    この算出過程において、この構造物が回転バネ支持されていることを表現する境界条件を用い、構造物の張力および曲げ剛性とともに、境界条件となる前記回転バネのバネ定数の値を算出することを特徴とする構造物の張力および曲げ剛性の測定方法。
  5. 算出結果として得られる構造物の張力、曲げ剛性およびバネ定数から振動の検出を行う前記2点間の振動伝達関数の極大値または極小値を示す複数の周波数を逆算し、
    こうして算出結果から逆算して得られた振動伝達関数の極大値または極小値を示す複数の周波数と、実際に振動を検出して周波数分析を行うことにより得られた振動伝達関数の極大値または極小値を示す複数の周波数とを比較することによって、前記算出結果の妥当性の判定を行う請求項記載の構造物の張力および曲げ剛性の測定方法。
  6. 張力の作用している構造物に衝撃を与え、この構造物上の異なる2点における振動を検出して、これら2点における振動の比からこの2点間の振動伝達関数を求める周波数分析を行うことにより、この振動伝達関数の極大値または極小値を示す複数の周波数を得て、
    こうして得られた振動伝達関数の極大値または極小値を示す複数の周波数およびその次数と、この構造物の張力および曲げ剛性との間に成り立つ関係から、この構造物の張力および曲げ剛性を算出する方法であって、
    この算出過程において、この構造物が回転バネ支持されていることを表現する境界条件を用い、境界条件となる前記回転バネのバネ定数の値を仮定して、この仮定のもとで構造物の張力および曲げ剛性を算出し、
    こうして算出された構造物の張力および曲げ剛性、ならびに、仮定したバネ定数から振動の検出を行う前記2点間の振動伝達関数の極大値または極小値を示す複数の周波数を逆算し、
    この逆算して得られた振動伝達関数の極大値または極小値を示す複数の周波数と、実際に振動を検出して周波数分析を行うことにより得られた振動伝達関数の極大値または極小値を示す複数の周波数とを比較することにより、バネ定数の仮定の妥当性を判定するという一連の手順を、
    この判定においてバネ定数の仮定の妥当性が得られるまで繰り返し行うことを特徴とする構造物の張力および曲げ剛性の測定方法。
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