JP3550042B2 - ガス除去用フィルタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主にクリーンルームで使用され、臭気、有害ガス等を吸着濾過するためのガス除去用フィルタに関し、さらに詳しくは難燃性を改良したガス除去用フィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のガス除去用フィルタとしては、基材としてポリウレタン発泡体を使用し、このフィルタ基材にウレタン系接着剤を用いて吸着剤を固着したものが提案されている。
【0003】
ところで、フィルタの難燃性を向上させるために、各々の材料の難燃性を改善させる手法が一般的である。例えば、基材としてポリウレタン発泡体を用いる場合には、ハロゲン系に代表される液状難燃剤を添加することが行われている。しかし、これらの難燃剤は、揮発、ブリードの問題があり、またフィルタの燃焼時に有害ガスが発生する可能性もある。
【0004】
また、低毒性の無機系難燃剤をポリウレタンに添加することも考えられるが、この難燃剤は、添加量が数十%以上にならないと効果的でなく、また、そのような高添加量であるとウレタン発泡体の物性が大きく低下してしまう。
【0005】
さらに、ウレタン発泡体を難燃性組成物中に含浸して、コートする技術も提案されているが、この方法も添加量が不十分であるので、難燃効果が小さい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、低毒性の難燃剤を用い、しかも容易に且つ難燃性の高いガス除去用フィルタを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のガス除去用フィルタは、フィルタ基材と、該フィルタ基材に接着剤によって固着された吸着剤と、を有するガス除去用フィルタであって、該接着剤は無機難燃剤を含有し、該フィルタ基材は6メッシュ〜20メッシュのポリウレタンフォームからなり、該吸着剤のフィルタ基材による表面被覆率が5〜10%であることを特徴とし、そのことにより上記目的が達成される。
【0008】
一つの実施態様においては、前記難燃剤が、前記接着剤100重量部に対して、10〜200重量部添加されている。
【0009】
一つの実施態様においては、前記難燃剤の粒径が0.1〜100μmである。
【0010】
一つの実施態様においては、前記難燃剤がポリリン酸アンモニウムである。
【0011】
本発明の作用は次の通りである。
【0012】
難燃剤をフィルタ基材中に含有させた場合には、多量の難燃剤を使用しないと難燃効果がなく、また多量の難燃剤の使用によってフィルタ基材の機能が低下する。例えば、フィルタ基材をフォーム形状とする場合には、多量の難燃剤を含有すると発泡性が低下するので、得られるフォームの通気性、弾性等が低下する。
【0013】
本発明によれば、比較的多量の難燃剤を接着剤に含有することにより、フィルタの機能を低下することなく難燃性を付与できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明で使用するフィルタ基材は、ポリウレタンフォームである。ポリウレタンフォームは、6メッシュ〜20メッシュのものを使用することができる。
【0017】
本発明で使用する接着剤としては、水系接着剤、非溶剤系接着剤、溶剤系接着剤があり、水系接着剤には、アクリルエマルジョン系接着剤、ウレタンエマルジョン系接着剤等がある。非溶剤系接着剤には、二液硬化型ウレタン系接着剤、一液反応性ウレタン系接着剤、ホットメルト系接着剤等がある。また、溶剤系接着剤には、ウレタン系接着剤、塩化ビニル樹脂系接着剤、酢酸ビニル系接着剤等がある。
【0018】
本発明では、特にアクリル系接着剤(特にアクリルエマルジョン系接着剤)が好ましい。
【0019】
本発明で使用する吸着剤としては、粒状活性炭、無機吸着剤、薬品添着活性炭、イオン交換樹脂、薬品添着無機吸着剤等がある。具体的には、粒状活性炭には、球状活性炭、粉砕活性炭、破砕活性炭、造粒活性炭があり、無機吸着剤には、シリカゲル、アルミナ、活性白土、ゼオライトがある。また、接着剤には、酸化チタン、酸化銅、ニッケル等の金属触媒、難燃助剤を添加してもよい。
【0020】
好ましい吸着剤は、燃焼時に有毒ガスを発生することのない粒状活性炭、活性シリカ、アルミナ、活性白土、ゼオライト等の無機吸着剤であり、その粒径は0.1〜1.5mmが好ましい。
【0021】
本発明で使用する難燃剤としては、水和金属化合物、水和シリケート化合物、リン系化合物、窒素系化合物、硼素系化合物、アンチモン系化合物等を使用することができる。
【0022】
水和金属化合物には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミン酸カルシウム等があり、リン系化合物には赤リンがあり、窒素系化合物にはリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウムがあり、硼素系化合物にはホウ酸亜鉛があり、アンチモン系化合物には酸化アンチモンがあり、その他各種金属酸化物、各種金属硝酸塩、各種金属錯体等を使用することができる。
【0023】
本発明では、特に、ポリリン酸アンモニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸化合物を使用することができる。特に、好ましく使用される難燃剤は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水和物やポリリン酸アンモニウム系のものである。難燃剤の粒径は0.1〜100μmが好ましい。
【0024】
図1及び図2に示すように、本発明のガス除去用フィルタ3は、上記フィルタ基材1に、該フィルタ基材1に接着された接着剤層によって吸着剤2が固着されている。接着剤層を形成する接着剤に、上記難燃剤が添加されている。接着剤に対する難燃剤の添加量は、接着剤100重量部に対して10〜200重量部が好ましく、さらに好ましくは40〜100重量部である。難燃剤の添加量が接着剤100重量部に対して10重量部未満であると難燃効果が小さく、200重量部を越えると吸着剤の接着性が低下する。
【0025】
次に、上記構成のフィルタの製造法の一例を以下に示す。
【0026】
接着剤に難燃剤を添加して混合し、この接着剤をフィルタ基材に塗布する。接着剤が溶剤、水等の揮発成分を含んでいる場合には、この接着剤の粘度がおおよそ50,000cpsになるまで予備乾燥させる。また、乾燥条件は通常40〜100℃で1〜10分が好ましい。次に、接着剤が塗布乾燥されたフィルタ基材に吸着剤を散布する(上方から振りかける)。粒子状の吸着剤は接着剤によって基材に接着することになる。
【0027】
このようにして、本発明のガス除去用フィルタが得られる。得られたフィルタにおいて、吸着剤の基材による表面被覆率は25%以下が好ましい。特に好ましくは5〜10%である。この表面被覆率が25%を越えるときは、吸着剤の露出面積が小さいために、フィルタのガス除去効率が悪い。
【0028】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
なお、実施例で用いた各材料の詳細は次の通りである。
【0030】
フィルタ基材…幅12.7mm、長さ127mm、高さ10.0mmのイノアックコーポレーション製発泡体(商品名モルトフィルター、イノアック社製)
接着剤… (商品名ボンコート、大日本インキ化学工業社製)
難燃剤…AP422、ポリリン酸アンモニウム(クラリアントジャパン社製)
AP462、ポリリン酸アンモニウム(クラリアントジャパン社製)
キスマ、水酸化マグネシウム(協和化学工業社製)
C3005、水酸化アルミニウム(住友化学工業社製)
FB−ZB、ホウ酸亜鉛(ボラックスジャパン社製)
FB−500、リン酸エステル(旭電化工業(株)社製)
PHN−140、ホウ酸化合物(コーミックス社製)
吸着剤…BAC(呉羽化学工業社製)
【0031】
(実施例1)
接着剤(商品名ボンコート、大日本インキ化学工業社製)100重量部と難燃剤(商品名AP422、クラリアントジャパン社製)40重量部とを混合し、この混合物を、フィルタ基材(商品名モルトフィルター、イノアックコーポレーション製)に塗布し乾燥した。その後、基材に吸着剤粒子として活性炭を上方よりふりかけて基材に接着させた。
【0032】
このようにして得られたフィルタの難燃性を、UL94耐火試験規格に準拠して測定した。結果を表1に示す。
【0033】
(実施例2〜実施例5、比較例1)
表1に示すように、難燃剤の種類を変え、また接着剤に対する難燃剤の添加量を変えたこと以外は、実施例1と同様にしてフィルタを得た。得られたフィルタの難燃性をUL94耐火試験規格に準拠して測定した結果を表1にまとめて示す。
【0034】
(比較例2)
表1に示すように、難燃剤(PHN−140、コーミックス社製)20重量部を、フィルタ基材の樹脂100重量部に含浸、乾燥させ、接着剤を塗布し、その後実施例1と同様にしてフィルタを得た。得られたフィルタの難燃性をUL94耐火試験規格に準拠して測定した結果を表1にまとめて示す。
【0035】
【表1】
【0036】
(実施例6〜11、比較例3)
表1に示すように、接着剤(商品名ボンコート、大日本インキ化学工業社製)100重量部に対し、難燃剤(商品名AP422、クラリアントジャパン社製)及び難燃剤(キスマ、協和化学工業社製)の量を変えて配合し、この混合物を、フィルタ基材(商品名モルトフィルター、イノアックコーポレーション製)に塗布し乾燥した、その後、基材に吸着剤粒子として活性炭(商品名BAC、呉羽化学工業製)を上方よりふりかけて基材に接着させた。
【0037】
このようにして得られたフィルタの難燃性を、UL94耐火試験規格に準拠して測定した結果を表1に示す。
【0038】
表1の結果から、以下のことがわかる。
【0039】
接着剤に無機難燃剤を添加することにより、フィルタの難燃性を向上することができる。難燃剤の添加量は接着剤100重量部に対して10重量部以上で効果がある。難燃剤の併用はさらに好ましい難燃効果を与える。難燃剤を多量に接着剤に配合してもフィルタの機能を損なうことがない。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、吸着剤をフィルタ基材に固着するための接着剤に難燃剤を配合したので、多量の難燃剤を接着剤に配合してフィルタに難燃性を付与でき、しかもフィルタの弾性、通気性、物性等の機能を損なうことがない。また、接着剤に難燃剤を配合するだけで難燃性フィルタが得られるので製造も容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガス除去用フィルタで使用するフィルタ基材の斜視図である。
【図2】本発明のガス除去用フィルタの要部の拡大斜視図である。
【符号の説明】
1 フィルタ基材
2 吸着剤
3 ガス除去用フィルタ
Claims (4)
- フィルタ基材と、該フィルタ基材に接着剤によって固着された吸着剤と、を有するガス除去用フィルタであって、該接着剤は無機難燃剤を含有し、該フィルタ基材は6メッシュ〜20メッシュのポリウレタンフォームからなり、該吸着剤のフィルタ基材による表面被覆率が5〜10%であることを特徴とするガス除去用フィルタ。
- 前記難燃剤が、前記接着剤100重量部に対して、10〜200重量部添加されている請求項1に記載のガス除去用フィルタ。
- 前記難燃剤の粒径が0.1〜100μmである請求項1に記載のガス除去用フィルタ。
- 前記難燃剤がポリリン酸アンモニウム系である請求項1に記載のガス除去用フィルタ。
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