JP3544939B2 - 成膜方法及び積層複合体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成膜方法及び積層複合体に係り、特には、ガラス基板上に薄膜を形成する成膜方法及びそのような方法で製造され得る積層複合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
チタン酸ジルコン酸鉛のようなペロブスカイト型構造の酸化物の中には、常温で強誘電性を示すものや、歪を導入されることにより常温で強誘電性を発現するものがある。このような強誘電性の酸化物薄膜は、強誘電体キャパシタなどの強誘電体素子や圧電素子等で利用されており、この強誘電体薄膜の特性はそれら素子の性能に大きな影響を与える。
【0003】
これら素子では、上記強誘電体薄膜の強誘電性を向上させるために、酸化物の組成などを最適化することに加え、その強誘電体薄膜の下地に対しても様々な技術が適用されている。例えば、下部電極材料として強誘電体薄膜との格子整合性が高い導電性材料を用いる場合や、下部電極と基板との間に緩やかな格子遷移を実現するためのバッファ層を装入する場合がある。また、基板自体に強誘電体薄膜との格子整合性が高いものを使用することもある。さらに、常温で強誘電性を示さないペロブスカイト型構造の酸化物を不揮発性の強誘電体キャパシタで使用する場合、下部電極をシリコン基板上に成膜し、この下部電極上に上記酸化物をエピタキシャル成長させることにより生じる不整合歪を利用して強誘電性を発現させている。
【0004】
このような技術によると、優れた強誘電体特性を実現することができる。しかしながらその反面で、上記技術は、基板、下部電極、及び強誘電体薄膜などに利用可能な材料や構造が制限される。例えば、ディスプレイデバイス等に広く用いられている無アルカリガラス基板などの非晶質基板を用いる場合には、基板の結晶格子を利用することや、非晶質基板と強誘電体薄膜との間に格子整合性を実現することや不整合歪を導入することが困難である。そのため、非晶質基板を用いた場合に優れた強誘電性を発現させるためには、シリコン基板のような単結晶基板を用いた場合とは異なる強誘電体特性の向上方法が必要となる。このように、従来技術によると、素子設計の自由度が低い、応用範囲が狭い、及び素子の製造コストが比較的高くなるという問題を生ずることがあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高い自由度で素子を製造することを可能とする成膜方法及び積層複合体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、立方晶系と正方晶系との間で相転移を生じる薄膜材料を前記薄膜材料が立方晶系となる温度でガラス基板の一方の主面上に堆積させて薄膜を成膜する工程と、前記ガラス基板及び前記薄膜を冷却して前記薄膜材料を立方晶系から正方晶系へと相転移させる工程とを含み、前記ガラス基板の形状を前記薄膜の成膜時と前記薄膜材料の相転移時との間で異ならしめることにより前記薄膜材料が相転移する際に前記薄膜に応力を加えて、前記冷却された薄膜における正方晶系のc軸方向を制御することを特徴とする成膜方法を提供する。
【0008】
さらに、本発明は、ガラス基板と、前記ガラス基板の一方の主面上に形成された拡散防止層と、前記拡散防止層上に形成され立方晶系と正方晶系との間で相転移を生じる薄膜材料を含む薄膜と、前記ガラス基板の他方の主面上に形成された応力制御層とを具備し、前記拡散防止層の線膨張係数Δlと前記応力制御層の線膨張係数Δlと前記拡散防止層の膜厚xと前記応力制御層の膜厚xとは不等式Δl>Δl且つx>xに示す関係を満足するか或いは不等式Δl<Δl且つx<xに示す関係を満足することを特徴とする積層複合体を提供する。
【0011】
上述のように、本発明では、まず、薄膜材料をガラス基板の一方の主面上に堆積させて薄膜を成膜し、次に、ガラス基板及び薄膜を冷却して薄膜材料を相転移させる。本発明では、結晶軸の長さが全て等しい立方晶系からc軸の長さが他の2つの結晶軸の長さとは異なる正方晶系へとその薄膜が相転移する際に外部から応力を加えることによりc軸の配向方向を制御しており、そのような応力を加えるために、成膜時と相転移時との間でガラス基板の形状を異ならしめている。すなわち、本発明では、上記薄膜とその下地との間の格子定数の違いを利用する従来技術とは異なり、基板の変形を利用して上記薄膜に応力を加えている。このような原理を利用した場合、下部電極等に様々な材料を使用することができる。そのため、本発明によると、高い自由度で素子を設計することが可能となる。
【0012】
また、そのような原理を利用した場合、基板としてガラス基板を使用することができる。ガラス基板は透明であるため、光学的な用途への応用も可能である。換言すれば、本発明の技術は、強誘電体メモリだけでなく表示装置などの製造においても利用することも可能である。すなわち、本発明の技術は、極めて応用範囲が広いと言える。
【0013】
さらに、ガラス基板は、シリコン基板などに比べれば遥かに安価である。加えて、ガラス基板の変形は、複雑な機構を必要とすることなく実施可能である。したがって、本発明によると、比較的低いコストで素子を製造することが可能となる。
【0014】
本発明においては、例えば、成膜時に基板をその成膜面側が凸または凹となるように変形させておき、ガラス基板及び薄膜の冷却時に基板の変形量を減少させることにより、薄膜材料が相転移する際に薄膜に応力を加えることができる。この場合、成膜時に基板をその成膜面が凸となるように変形させておけば、相転移の際に薄膜に面内圧縮応力が導入される。そのため、立方晶系から正方晶系への相転移に伴ってc軸が伸びる材料を用いて成膜した薄膜についてはc軸方向を基板面にほぼ垂直な方向に揃えることができ、立方晶系から正方晶系への相転移に伴ってc軸が縮む材料を用いて成膜した薄膜についてはc軸方向を基板面にほぼ平行な方向に揃えることができる。また、成膜時に基板をその成膜面が凹となるように変形させておき、ガラス基板及び薄膜の冷却時に基板の変形量を減少させれば、相転移の際に薄膜には面内引張応力が導入される。そのため、立方晶系から正方晶系への相転移に伴ってc軸が伸びる材料を用いて成膜した薄膜についてはc軸方向を基板面にほぼ平行な方向に揃えることができ、立方晶系から正方晶系への相転移に伴ってc軸が縮む材料を用いて成膜した薄膜についてはc軸方向を基板面にほぼ垂直な方向に揃えることができる。
【0015】
本発明においては、成膜時に対して冷却時における基板の変形量をより大きくしてもよい。この場合、相転移時に基板をその成膜面が凹となるように変形させれば、相転移の際に薄膜に面内圧縮応力が導入される。そのため、立方晶系から正方晶系への相転移に伴ってc軸が伸びる材料を用いて成膜した薄膜についてはc軸方向を基板面にほぼ垂直な方向に揃えることができ、立方晶系から正方晶系への相転移に伴ってc軸が縮む材料を用いて成膜した薄膜についてはc軸方向を基板面にほぼ平行な方向に揃えることができる。また、成膜時に対して冷却時において基板がより大きく凸となるように変形させた場合、相転移の際に薄膜に面内引張応力が導入されるため、立方晶系から正方晶系への相転移に伴ってc軸が伸びる材料を用いて成膜した薄膜についてはc軸方向を基板面にほぼ平行な方向に揃えることができ、立方晶系から正方晶系への相転移に伴ってc軸が縮む材料を用いて成膜した薄膜についてはc軸方向を基板面にほぼ垂直な方向に揃えることができる。
【0016】
さらに、本発明においては、薄膜により大きな応力を導入するために、成膜時に基板をその成膜面が凸となるように変形させておき相転移時に基板をその成膜面が凹となるように変形させるか、或いは、成膜時に基板をその成膜面が凹となるように変形させておき相転移時に基板をその成膜面が凸となるように変形させてもよい。前者の場合、相転移の際に薄膜に面内圧縮応力が導入されるので、立方晶系から正方晶系への相転移に伴ってc軸が伸びる材料を用いて成膜した薄膜についてはc軸方向を基板面にほぼ垂直な方向に揃えることができ、立方晶系から正方晶系への相転移に伴ってc軸が縮む材料を用いて成膜した薄膜についてはc軸方向を基板面にほぼ平行な方向に揃えることができる。また、後者の場合、相転移の際に薄膜に面内引張応力が導入されるため、立方晶系から正方晶系への相転移に伴ってc軸が伸びる材料を用いて成膜した薄膜についてはc軸方向を基板面にほぼ平行な方向に揃えることができ、立方晶系から正方晶系への相転移に伴ってc軸が縮む材料を用いて成膜した薄膜についてはc軸方向を基板面にほぼ垂直な方向に揃えることができる。
【0017】
本発明においては、通常、ガラス基板と上記薄膜との間に拡散防止層が設けられる。また、ガラス基板と上記薄膜との間或いは拡散防止層と上記薄膜との間には、金属等からなる電極層などが設けられてもよい。
【0018】
本発明において、ガラス基板の形状を薄膜の成膜時と薄膜材料の相転移時との間で異ならしめるために、例えば、ガラス基板の成膜面の裏面側に上記応力制御層を設けてもよい。また、ガラス基板の成膜面側とその裏面側とで線膨張係数を異ならしめてもよい。さらに、ガラス基板の成膜面とその裏面との間で表面積を異ならしめてもよい。
【0019】
また、本発明において、ガラス基板の形状を薄膜の成膜時と薄膜材料の相転移時との間で異ならしめるために、成膜装置に基板ホルダに保持されたガラス基板を変形させる変形機構を設けてもよい。この変形機構は、基板ホルダに保持されたガラス基板に可動部材を押し当ててガラス基板を変形させるものであってもよく、或いは、基板の成膜面側とその裏面側との間に気圧差を形成してガラス基板を変形させるものであってもよい。
【0020】
本発明において、ガラス基板に使用するガラスに特に制限はないが、例えば、石英ガラス(5.5);96%石英ガラス(8);窓ガラス用、板ガラス用、瓶ガラス用、或いは電球用などのソーダ石灰ガラス(85〜92);電気、工学用、或いは工芸用などの鉛ガラス(91);アルミノホウケイ酸ガラス(49);低膨張、低損失、或いはタングステン封着ホウケイ酸ガラス(32または46);及びアルミノ酸塩ガラス(42)などを挙げることができる。なお、これらガラスに関して括弧内に示す数値は0〜300℃における線膨張係数(×10−7−1)である。
【0021】
本発明において、上記薄膜を構成する薄膜材料としては、例えば複合酸化物などを挙げることができ、中でも、一般式ABOに示す組成を有し且つペロブスカイト構造をとる複合酸化物を用いることが好ましく、Pb(Zr,Ti)Oに示す組成のチタン酸ジルコン酸鉛(以下、PZTという)やPZTに数%のLaを添加した複合酸化物であるPLZTなどを用いることがより好ましい。
【0022】
また、本発明においては、上記複合酸化物として、PbTiOに示す組成のチタン酸鉛やBaTiOに示す組成のチタン酸バリウムのように室温下で正方晶ペロブスカイト構造を有するものや、BiTi12に示す組成のチタン酸ビスマスのように一般式ABOで示されないが室温下で層状ペロブスカイト構造(単位格子数個分の厚さの正方晶ペロブスカイト構造を他の層間構造を介在させて積層したもの)を有するものなども用いることができる。さらに、本発明においては、以下の表に示す複合酸化物を用いることも可能である。
【0023】
【表1】
Figure 0003544939
【0024】
本発明において、ガラス基板の成膜面に形成する拡散防止層はガラス基板に含まれるアルカリ金属などの拡散を防止するものであり、その材料としては、例えば、フォームグラス(8.3);アスベスト;トバモライト(−2.0%:920K)やゾノライト(−2.0%:1270K)のようなケイ酸カルシウム;パーライト;バーミキュライト;シリカ;69%Al+27%SiO(5.0:300〜1250K)のようなアルミナ・シリカ;アルミナ(8.0:300〜1250K);マグネシア(13.0:300〜1250K);ジルコニア(11.5:300〜1250K);及びカーボンなどを挙げることができる。なお、これら材料に関して括弧内に示す数値は熱膨張率(収縮:×10−6−1)である。
本発明において、電極層の材料としては、Pt、Ir、Ru、Mo、及びWなどの金属材料等を用いることができる。
【0025】
本発明において、加熱時にガラス基板をその成膜面が凸となるように変形させるのに応力制御層を利用する場合、拡散防止層の線膨張係数Δl、応力制御層の線膨張係数Δl、拡散防止層の膜厚x、及び応力制御層の膜厚xは、通常、不等式Δl×x>Δl×xに示す関係を満足していればよいが、不等式Δl>Δl且つx>xに示す関係を満足していることがより好ましい。この場合、応力制御層の材料は、それら不等式に示す関係を満足するものであれば特に制限はないが、中でも、低膨張或いは無膨張金属酸化物が好ましい。低膨張或いは無膨張金属酸化物としては、例えば、酸化チタンまたは酸化ジルコニウムを含有するシリカ−アルミナ−酸化リチウム系ガラスなどのようなアルミナ−シリカ系ガラスを挙げることができる。
【0026】
また、本発明において、加熱時にガラス基板をその成膜面が凹となるように変形させるのに応力制御層を利用する場合、拡散防止層の線膨張係数Δl、応力制御層の線膨張係数Δl、拡散防止層の膜厚x、及び応力制御層の膜厚xは、通常、不等式Δl×x<Δl×xに示す関係を満足していればよいが、不等式Δl<Δl且つx<xに示す関係を満足していることがより好ましい。
【0027】
この応力制御層の機能は、拡散防止層に付与することも可能である。すなわち、拡散防止層に応力制御層としての機能を与えることにより、応力制御層を省略することができる。加熱時にガラス基板をその成膜面が凸となるように変形させ場合、拡散防止層の材料は、ガラス基板に比べて線膨張係数がより大きいものであればよく、中でも、マグネシアやチタニアのようにガラス基板よりも大きな線膨張係数を有する金属酸化物が好ましい。
【0028】
なお、電極層の材料として例示した金属の多くは、線膨張係数が大きいものの応力制御層の材料として使用することはできない。これは、金属層の界面または金属層内でのスベリ現象によって応力が緩和されること、素子構造を形成する際に金属層は素子形状へと加工されるため応力制御ができない、及び金属自体の結晶成長などによって応力が緩和されることなどを理由としている。
【0029】
本発明において、成膜時と相転移時との間でガラス基板の形状を異ならしめるために、ガラス基板の一方の主面側と他方の主面側とで線膨張係数を異ならしめる場合、そのガラス基板として、互いに線膨張係数が異なる複数のガラス基板を貼り合わせた積層基板を使用することができる。例えば、2枚のガラス基板を貼り合わせた積層基板を使用する場合、一方のガラス基板の線膨張係数Δl31と他方のガラス基板の線膨張係数Δl32とが不等式Δl31<Δl32に示す関係を満足していれば、温度変化に応じて積層基板の変形量を変化させることができる。すなわち、c軸の配向方向を制御することが可能となる。また、ガラス基板の一方の主面側と他方の主面側とで線膨張係数を異ならしめるために、ガラス基板の組成を成膜面側とその裏面側との間で異ならしめてもよい。これは、例えば、ガラス基板の厚さ方向の少なくとも一部について、構成元素の濃度勾配を形成することなどにより実現可能である。
【0030】
本発明において、成膜時と相転移時との間でガラス基板の形状を異ならしめるために、ガラス基板の成膜面とその裏面との間で表面積を異ならしめる場合、ガラス基板の成膜面の表面積Sがその裏面の表面積Sよりも小さければよい。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について図面を参照しながらより詳細に説明する。なお、各図において、同一または類似の構成要素に対しては同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0032】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態では、室温近傍において正方晶ペロブスカイト構造を有するチタン酸ジルコン酸鉛[Pb(Zr,Ti)O](以下、PZTという)からなる薄膜をガラス基板上に成膜し、それが立方晶系から正方晶系へと相転移する際に可動部材を用いてガラス基板を機械的に変形させることにより、PZT薄膜の分極軸の方向を基板面に垂直な方向に揃えた場合について示す。本発明の第1の実施形態について詳述するのに先立ち、まずは、ペロブスカイト構造のチタン酸ジルコン酸鉛の相転移について説明する。
【0033】
図1は、相転移前後のPZTの単位格子を概略的に示す斜視図である。図1において破線1で示すように、成膜直後の高温状態にある薄膜において、PZTの結晶系は立方晶系である。この立方晶系のPZTは室温近傍にまで冷却する過程で、実線2で示すように正方晶系へと相転移する。この相転移には、立方晶系の3つの結晶軸のうちの2つが縮み、残りの1つであるc軸が延びるという構造変化が伴う。
【0034】
図2は、正方晶系のPZTの単位格子を概略的に示す斜視図である。図2において、参照番号3は酸素原子(またはイオン)を示し、参照番号4は鉛原子(またはイオン)を示し、参照番号5はチタンまたはジルコニウム原子(またはイオン)を示している。また、図2において、両矢印6は強誘電体特性の発現方向(分極軸方向)を示している。このように、正方晶系のPZTにおいては、c軸方向と分極軸方向とは一致している。
【0035】
ところで、強誘電体キャパシタにおいては、分極軸方向は強誘電体薄膜の膜面に垂直であることが望まれる。したがって、このような場合、c軸方向は強誘電体薄膜の全体にわたって膜面に垂直な方向に揃えられていることが理想的である。これについては、図3を参照しながら説明する。
【0036】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る成膜方法を用いることにより製造される強誘電体キャパシタを概略的に示す断面図である。図3に示す強誘電体キャパシタ10は、ガラス基板11の一方の主面上に、下部電極層12、PZTからなる強誘電体薄膜13、及び上部電極層14が順次積層された構造を有している。この強誘電体キャパシタ10では、強誘電体薄膜13の分極方向を、図中、上向きと下向きとの間で変化させることにより、データの記憶や消去が行われる。そのため、この強誘電体キャパシタ10において強誘電体薄膜13の強誘電性を有効利用するためには、強誘電体薄膜13の分極軸の方向,すなわちc軸の方向,が基板面に垂直な方向に揃えられていることが望まれる。
【0037】
図4は、c軸方向が膜面に垂直な方向に揃えられた強誘電体薄膜13を概略的に示す側面図である。成膜直後の立方晶系の結晶構造1を正方晶系の結晶構造2へと相転移させるに当たり、この図に示すように、c軸方向を膜面に垂直な方向に揃えることができれば、正方晶系のPZTが潜在的に持つ強誘電性を最大限に利用することができる。しかしながら、PZTが相転移する際に基板11などから薄膜13に対して何等拘束力が働かないとすると、c軸方向を膜面に垂直な方向に揃えることは不可能である。
【0038】
図5は、拘束力を作用させない場合に得られる強誘電体薄膜13を概略的に示す側面図である。PZTが相転移する際に薄膜13に拘束力を作用させない場合、図5に示すように、強誘電体薄膜13の分極軸方向は一方向に制御されず、概略的には、膜面に垂直な方向に分極する割合を1とすると、膜面に平行な方向に分極する割合が2となる。すなわち、図5に示す強誘電体薄膜13では、PZTが本来有している強誘電体特性を十分に発揮することができない。
【0039】
そこで、本実施形態では、成膜時に可動部材を用いてガラス基板11をその成膜面が凸となるように機械的に湾曲させておき、相転移温度近傍でガラス基板11を平坦またはそれに近い状態へと戻すことにより、c軸方向を膜面に垂直な方向に揃える。これについては、図6を参照しながら説明する。
【0040】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る成膜方法を概略的に示す側面図である。図1を参照しながら説明したように、立方晶系の結晶構造1から正方晶系の結晶構造2への相転移は、2つの結晶軸の収縮と1つの結晶軸の伸長とを伴う。したがって、図4に示す結晶構造2のように、正方晶系のc軸方向を膜面に垂直な方向に揃えるには、図6に示すように、ガラス基板11をその成膜面が凸となるように湾曲させて薄膜13を成膜し、相転移温度近傍でガラス基板11を平坦またはそれに近い状態へと戻すことにより、薄膜13に対してその膜面に平行な方向に圧縮応力を加えればよい。
【0041】
なお、湾曲させたガラス基板11は、成膜完了後から相転移が生じる前のいずれの段階で平坦またはそれに近い状態へと戻してもよいが、ガラス基板11を湾曲させている応力を薄膜13へ加える圧縮応力として有効利用するためには、相転移が生じる直前に平坦またはそれに近い状態へと戻すことが最も効果的である。すなわち、例えば、基板内での温度分布を考慮して相転移温度よりも5℃程度高い温度にまで冷却されたときにガラス基板11を平坦またはそれに近い状態へと戻すことにより、c軸の方向を効果的に制御することができる。
【0042】
以上説明した成膜プロセスは、図7に示す成膜装置を用いて実施することができる。
図7は、本発明の第1の実施形態で使用する成膜装置を概略的に示す図である。図7に示す成膜装置20は、マグネトロンRFスパッタ装置である。この成膜装置20は反応容器21を有しており、反応容器21には給気口22及び排気口23が設けられている。なお、給気口22にはスパッタガス供給源が接続されており、排気口23には排気系が接続されている(いずれも図示せず)。反応容器21内には、ガラス基板11を保持する基板ホルダ24とスパッタターゲット25とが対向するように配置されている。この装置20は、さらに、ターゲット25に電力を供給するRF電源26及びターゲット25の表面への電子トラップを可能とする磁場形成用磁石27を有している。
【0043】
図8は、図7に示す成膜装置20の基板ホルダ24を拡大して示す断面図である。図8に示す基板ホルダ24は、ガラス基板11が載置されるサセプタ31と、ガラス基板11の周縁部を支持してガラス基板11をサセプタ31上に固定する押え部材32とを有している。サセプタ31の中央部には貫通した穴が設けられており、この穴の中には、可動部材として、モータのような駆動機構33に接続された応力印加カム34が上下に移動可能に配置されている。
【0044】
以上説明した装置20を用いた成膜は、例えば、以下の方法により行うことができる。
まず、ガラス基板11を、その成膜面がスパッタターゲット25と対向するように基板ホルダ24に保持させた。なお、ここでは、相転移温度が380℃程度の強誘電体薄膜13が得られるように理論組成比(Zr:Tiが約1:1)を設定し、スパッタターゲット25としては、鉛含有量を理論組成比よりも多くしたPZT焼結体を用いた。次に、排気系により反応容器21内を所定の圧力にまで減圧するのとともに、スパッタガス供給源から反応容器21内にスパッタガスを供給した。
【0045】
次いで、モータ33に電力を供給して応力印加カム34を若干量上昇させた。これにより、ガラス基板11をその成膜面が凸となるように撓ませた。その後、RF電源26からターゲット25にRF電力を供給してガラス基板11上にPZTを堆積させることにより立方晶系の強誘電体薄膜13を得た。この強誘電体薄膜13の成膜時の基板温度は600℃程度とした。
【0046】
強誘電体薄膜13の成膜を完了した後、ターゲット25への電力供給等を停止し、ガラス基板11を冷却した。ガラス基板11が相転移温度の近傍,例えば385℃程度,にまで冷却された時点で、応力印加カム34を下降させて、ガラス基板11を平坦な状態へと戻した。この状態でさらに相転移温度よりも低温に冷却することにより、強誘電体薄膜13が立方晶系から正方晶系へと相転移する際に、強誘電体薄膜13に対して面内圧縮応力を印加した。すなわち、c軸方向を膜面に垂直な方向に揃えることができた。
【0047】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、応力印加カム34を押し当てることによりガラス基板11を変形させたが、他の方法でガラス基板11を変形させることも可能である。以下に説明する第2の実施形態では、ガラス基板11の成膜面側とその裏面側との間に気圧差を形成してガラス基板11を変形させる場合を示す。
【0048】
図9は、本発明の第2の実施形態で使用する成膜装置を概略的に示す図である。図9に示す成膜装置20は、基板ホルダ24の構造が異なること以外は、図7に示す成膜装置20と同様に構成されている。
【0049】
図10は、図9に示す成膜装置20の基板ホルダ24を拡大して示す断面図である。図10に示す基板ホルダ24は、ガラス基板11が載置されるサセプタ31と、ガラス基板11の周囲を支持してガラス基板11をサセプタ31上に固定する押え部材32とを有している。本実施形態において、この押え部材32は、ガラス基板11を、その周縁部においてガラス基板11とサセプタ31との間へのガスの出入りが殆ど生じないように支持する。また、本実施形態においては、サセプタ31の載置面中央は平面ではなく凹面であり、サセプタ31の中央部には複数の貫通孔が設けられている。サセプタ31の載置面の裏面には給気系36及び排気系37が取り付けられており、給気系36を駆動することによりそれら貫通孔を介してガスをガラス基板11とサセプタ31との間に形成される空間内へと供給すること、或いは、排気系37を駆動することによりその空間内のガスをそれら貫通孔を介して排気することが可能である。
【0050】
本実施形態では、ガラス基板11を変形させるための手段が異なること以外は、第1の実施形態で説明したのと同様の方法で強誘電体薄膜13の成膜を行った。したがって、本実施形態に係る成膜方法については、ガラス基板11の変形工程について主に説明する。
【0051】
図11は、図10に示す基板ホルダ24を用いてガラス基板11をその成膜面が凸となるように湾曲させた状態を概略的に示す断面図である。本実施形態では、図11に示すように、成膜時にガラス基板11をその成膜面が凸となるように変形させるために、例えば、給気系36のみを駆動して、ガラス基板11とサセプタ31との間に形成される空間内の気圧を、ガラス基板11の成膜面側の気圧に対して相対的に高圧とした。ガラス基板11は、その周縁部を押え部材32によって支持されているので、このような気圧差が形成されることにより、その成膜面が凸となるように変形した。また、変形したガラス基板11を相転移の直前に平坦な状態へと戻すためには、給気系36を停止させることや給気系36を停止させ且つ排気系37を駆動することなどにより、ガラス基板11とサセプタ31との間に形成される空間と、ガラス基板11の成膜面側の空間との間の気圧差を減少させればよい。このような方法でガラス基板11を変形させても、第1の実施形態で説明したのと同様の効果を得ることができた。
【0052】
(第3の実施形態)
図12は、本発明の第3の実施形態に係る成膜方法を概略的に示す側面図である。上述した第1及び第2の実施形態では、成膜時にガラス基板11をその成膜面が凸となるように変形させ、相転移温度近傍でガラス基板11を平坦な状態へと戻すことにより、相転移の際に薄膜13に圧縮応力を導入した。それに対し、第3の実施形態では、成膜時にはガラス基板11を平坦な状態に維持し、相転移温度近傍で図12に示すようにガラス基板11をその成膜面が凹となるように変形させることにより、相転移の際に薄膜13に圧縮応力を導入する。
【0053】
このようなガラス基板11の変形操作には、例えば、図10に示す基板ホルダ24を利用することができる。以下、図9に示す成膜装置10を用いた場合を例に説明する。
【0054】
図13は、図10に示す基板ホルダ24を用いてガラス基板11をその成膜面が凹となるように湾曲させた状態を概略的に示す断面図である。本実施形態では、図10に示すように、成膜時には、ガラス基板11が平坦な状態となるように、給気系36及び排気系37の双方を停止した状態とするか、或いは、ガラス基板11が自重で撓む場合は給気系36を駆動する。また、図13に示すように、ガラス基板11を相転移の直前にその成膜面が凹となるように変形させるためには、例えば、排気系37のみを駆動して、ガラス基板11とサセプタ31との間に形成される空間内の気圧を、ガラス基板11の成膜面側の気圧に対して相対的に低圧とする。このようにして形成される気圧差とガラス基板11の自重とによって、ガラス基板11はサセプタ31の凹面に沿って変形する。このような方法を採用した場合においても、第1及び第2の実施形態で説明したのと同様の効果を得ることができる。
【0055】
(第4の実施形態)
以上説明した第1〜第3の実施形態では、成膜装置20に設けられた変形機構を用いてガラス基板11を変形させた。それに対し、本発明の第4の実施形態では、ガラス基板11の成膜面の裏面側に応力制御層を設けてガラス基板11を変形させる。
【0056】
図14は、本発明の第4の実施形態で使用するガラス基板11を概略的に示す断面図である。図14に示すガラス基板11の一方の主面には、ガラス基板11中に含まれるアルカリ金属等の拡散を防止する拡散防止層41が形成されている。また、ガラス基板11の拡散防止層41が形成された面の裏面には、応力制御層42が形成されている。なお、図14に示す構造において、拡散防止層41の線膨張係数Δlと応力制御層42の線膨張係数Δlとは不等式Δl>Δlに示す関係を満足し且つ拡散防止層41の膜厚xと応力制御層42の膜厚xとは不等式x>xに示す関係を満足している。
【0057】
図15(a)〜(c)は、それぞれ、図14に示すガラス基板11上への強誘電体薄膜13の成膜プロセスを概略的に示す断面図である。拡散防止層41及び応力制御層42が線膨張係数及び膜厚に関して上述した関係を満たす場合、図15(a)に示すようにガラス基板11が常温で平坦であるとすると、図15(b)に示すように加熱することによってガラス基板11は拡散防止層41側が凸となるように湾曲する。ガラス基板11の変形量は基板温度が高いほど大きいので、図15(b)に示す状態でガラス基板11の拡散防止層41上に薄膜13を成膜すれば、ガラス基板11は冷却されることにより図15(c)に示すように変形量が減少する。これにより、相転移の際に薄膜13に面内圧縮応力を導入して、c軸方向を膜面に垂直な方向に揃えることができる。
【0058】
例えば、一方の主面に厚さが100nm程度であり線膨張係数が6×10−7−1程度のSiOからなる拡散防止層41が形成されたガラス基板11を準備する。なお、ここでは、ガラス基板11の材料として線膨張係数が4×10−5−1程度のアルミノホウケイ酸塩を用いることとする。この拡散防止層41上にPZTからなる強誘電体薄膜13を600℃程度の温度で成膜する場合、ガラス基板11の拡散防止層41が設けられた面の裏面には、例えば、厚さが300nm程度であり線膨張係数がほぼゼロである低膨張ガラスからなる応力制御層42を形成することにより、相転移の際(380℃程度)に薄膜13に面内圧縮応力を導入して、c軸方向を膜面に垂直な方向に揃えることができる。
【0059】
(第5の実施形態)
上述した第4の実施形態では、ガラス基板11は、成膜時及び相転移時の双方において、その成膜面が凸となるように変形されている。そのため、相転移の際に薄膜13に十分な面内圧縮応力を導入するためには、成膜時にガラス基板11を極めて大きく変形させなければならないことがある。本発明の第5の実施形態は、そのような場合に有効である。
【0060】
図16(a)〜(e)は、それぞれ、本発明の第5の実施形態に係る成膜方法を概略的に示す断面図である。実施形態に係る成膜方法では、まず、図16(a)に示すように、常温で平坦であり、一方の主面に拡散防止層41が設けられたガラス基板11を準備する。次に、このガラス基板11を、例えば、後で成膜する強誘電体薄膜13の相転移温度(PZTの場合は380℃程度)よりも低温(例えば、200℃程度)に加熱する。通常、拡散防止層41の熱膨張係数はガラス基板11の熱膨張係数よりも小さい。そのため、ガラス基板11は、図16(b)に示すように、拡散防止層41が設けられた面が凹となるように変形する。
【0061】
本実施形態に係る方法では、図16(c)に示すように、この状態で、ガラス基板11の拡散防止層41が設けられた面の裏面に第4の実施形態で説明したのと同様の応力制御層42を成膜する。上述のように、拡散防止層41の線膨張係数Δlと応力制御層42の線膨張係数Δlとは不等式Δl>Δlに示す関係を満足し且つ拡散防止層41の膜厚xと応力制御層42の膜厚xとは不等式x>xに示す関係を満足している。そのため、基板温度を上昇させること(例えば、PZTの相転移温度である380℃程度にまで上昇させること)によりガラス基板11の変形量は図16(d)に示すように減少し、さらに温度を上昇させること(例えば、600℃程度まで)により、図16(e)に示すようにガラス基板11は拡散防止層41側が凸となるように変形する。
【0062】
したがって、例えば、相転移温度でガラス基板11が平坦となるように応力制御層42の成膜温度などを適宜設定すれば、薄膜13の成膜の際にガラス基板11を大きく変形させる必要がなく、図16(e)に示す程度の変形量で薄膜13に対して十分な面内圧縮応力を導入することができる。すなわち、本実施形態によると、c軸方向を膜面に垂直な方向に揃えることができるのに加え、ガラス基板11の変形に起因するガラス基板11や各種薄膜の劣化を防止することが可能となる。
【0063】
(第6の実施形態)
上記第4及び第5の実施形態では、ガラス基板11の拡散防止層41を設けた面の裏面に応力制御層42を形成した。それに対し、本発明の第6の実施形態では、拡散防止層に応力制御層としての機能を与えることにより、応力制御層42を省略する。
【0064】
図17(a)〜(c)は、それぞれ、本発明の第6の実施形態に係る成膜方法を概略的に示す断面図である。実施形態に係る成膜方法では、まず、図17(a)に示すように、常温で平坦であり、一方の主面に拡散防止層41が設けられたガラス基板11を準備する。なお、本実施形態で使用する拡散防止層41は、第4及び第5の実施形態で使用した拡散防止層41とは異なっている。すなわち、この拡散防止層41は、ガラス基板11よりも大きな線膨張係数を有している。本実施形態では、拡散防止層41として、膜厚100nm程度のマグネシア(線膨張係数:1×10-5-1)を使用した。
【0065】
このような構成によると、応力制御層42を別途設けることなく、加熱することによりガラス基板11をその拡散防止層41が設けられた面が凸となるように変形させることができる。したがって、図17(b)に示す状態でガラス基板11の拡散防止層41上に薄膜13を成膜すれば、ガラス基板11は冷却されることにより図17(c)に示すように変形量が減少するため、相転移の際に薄膜13に面内圧縮応力を導入すること、すなわち、c軸方向を膜面に垂直な方向に揃えることができる。
【0066】
(第7の実施形態)
上述した第4〜6の実施形態では、応力制御層42や拡散防止層41などを利用して薄膜13に面内圧縮応力を導入した。これに対し、本発明の第7の実施形態では、薄膜13の膜面に平行な一方向にc軸を配向させるために、応力制御層を用いて薄膜13に面内引張応力を導入する。
【0067】
図18(a)〜(c)は、それぞれ、本発明の第7の実施形態に係る成膜方法を概略的に示す断面図である。実施形態に係る成膜方法では、まず、図18(a)に示すように、常温で平坦であり、一方の主面に拡散防止層41が設けられ、他方の主面に応力制御層46が形成されたガラス基板11を準備する。なお、本実施形態で使用する応力制御層46は、第4及び第5の実施形態で使用した応力制御層42とは異なっている。すなわち、本実施形態において、拡散防止層41の線膨張係数Δlと応力制御層46の線膨張係数Δlとは不等式Δl<Δlに示す関係を満足し且つ拡散防止層41の膜厚xと応力制御層46の膜厚xとは不等式x<xに示す関係を満足している。また、本実施形態において、応力制御層46は、ストライプパターンを形成している。
【0068】
このような応力制御層46を形成した場合、基板温度を上昇させると、ガラス基板11は、図18(b)に示すように、x方向に関しては拡散防止層41側が凹となるように変形するが、y方向に関しては殆ど変形を生じない。これは、図18において、y方向には、基板の変形を緩和できるように応力制御層46が存在しない領域が導入されるためである。したがって、この状態で薄膜13の成膜を行えば、図18(c)に示すように、相転移の際に薄膜13に対してx方向の面内引張応力のみを選択的に導入することができる。すなわち、c軸の方向を両矢印6に示す方向に揃えることが可能となる。
【0069】
(第8の実施形態)
上記第4〜第7の実施形態では、応力制御層42,46や拡散防止層41を利用してガラス基板11を変形させた。以下に説明する第8の実施形態では、応力制御層42,46や拡散防止層41がなくとも温度変化により変形するガラス基板を使用する。
【0070】
図19は、本発明の第8の実施形態で使用するガラス基板11を概略的に示す断面図である。図19に示すガラス基板11は、ガラス基板11aとガラス基板11aに比べて線熱膨張係数がより大きいガラス基板11bとを貼り合わせた構造を有している。ガラス基板11bのガラス基板11aが貼り合わされた面の裏面には、拡散防止層41が形成されている。
【0071】
このような構成によると、ガラス基板11自体が温度変化により変形する性質を有しているので、応力制御層42等を別途設ける必要がない。そのため、加熱することによりガラス基板11をその拡散防止層41が設けられた面が凸となるように変形させることができる。したがって、拡散防止層41が設けられた面が凸状に大きく変形した状態でガラス基板11の拡散防止層41上に薄膜13を成膜すれば、ガラス基板11は冷却されることにより変形量が減少するため、相転移の際に薄膜13に面内圧縮応力を導入すること、すなわち、c軸方向を膜面に垂直な方向に揃えることができる。
【0072】
なお、ガラス基板11の厚さ方向で組成を不均一とすることによって、ガラス基板11自体に温度変化により変形する性質を与えることもできる。例えば、ガラス基板11の材料としてアルミノホウケイ酸塩ガラスを用いる場合、成膜面に比べてその裏面側においてAl濃度がより高くなるように組成を傾斜させることにより、成膜面及びその裏面の双方において上記線膨張係数を実現することができる。
【0073】
(第9の実施形態)
第8の実施形態では、ガラス基板11の成膜面とその裏面との間で線膨張係数を異ならしめることにより、ガラス基板11自体に温度変化により変形する性質を与えた。ガラス基板11にそのような性質を与えるために、他の方法を利用することも可能である。以下に説明する第9の実施形態では、ガラス基板11の成膜面とその裏面との間で表面積を異ならしめることにより、ガラス基板11にそのような性質を与える。
【0074】
図20は、本発明の第9の実施形態で使用するガラス基板11を概略的に示す断面図である。図20に示すガラス基板11の薄膜13が形成される面は平坦であるが、その裏面は凹凸加工されている。すなわち、ガラス基板11の成膜面に比べてその裏面はより大きな表面積を有している。
【0075】
このようなガラス基板11を周囲温度よりも高温に加熱した場合、成膜面に比べてその裏面においてより多くの熱放射が生じるため、ガラス基板11の成膜面とその裏面との間に温度差が形成される。このような温度差は加熱温度と周囲温度との差に応じて大きくなる。したがって、本実施形態によると、そのような温度差を利用して、相転移の際に薄膜13に面内圧縮応力を導入すること、すなわち、c軸方向を膜面に垂直な方向に揃えることができる。
【0076】
なお、上述した第1〜第9の実施形態では、PZTからなる薄膜13を成膜することについて説明したが、立方晶系から正方晶系へと相転移するのに伴ってc軸の長さが延びる他の材料を用いた場合についても上述したのと同様の方法によりc軸の方向を揃えることができる。また、立方晶系から正方晶系へと相転移するのに伴ってc軸の長さが縮む材料を用いた場合については、薄膜13に面内圧縮応力を導入した場合にはc軸は膜面に平行な方向に配向し、薄膜13に面内引張応力を導入した場合にはc軸は膜面に垂直な方向に配向すること以外は上述したのと同様の方法によりc軸の方向を揃えることができる。
【0077】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、基板の変形を利用して上記薄膜に応力を加えているため、基板、下部電極、及び強誘電体薄膜などの組成を広く選択することが可能となる。また、本発明を用いることにより、ガラス基板に代表される非晶質基板上においても配向制御が可能となる。このため、光学的な用途への応用範囲が広がるだけでなく、安価な基板を用いた素子作製が可能となる。したがって、本発明によると、比較的低いコストで素子を製造することが可能となる。
以上から、本発明によると、高い自由度で素子を製造することを可能とし、応用範囲が広く、素子の製造コストを低減可能な成膜方法及び積層複合体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】相転移前後のPZTの単位格子を概略的に示す斜視図。
【図2】正方晶系のPZTの単位格子を概略的に示す斜視図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る成膜方法を用いることにより製造される強誘電体キャパシタを概略的に示す断面図。
【図4】c軸方向が膜面に垂直な方向に揃えられた強誘電体薄膜を概略的に示す側面図。
【図5】拘束力を作用させない場合に得られる強誘電体薄膜を概略的に示す側面図。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る成膜方法を概略的に示す側面図。
【図7】本発明の第1の実施形態で使用する成膜装置を概略的に示す図。
【図8】図7に示す成膜装置の基板ホルダを拡大して示す断面図。
【図9】本発明の第2の実施形態で使用する成膜装置を概略的に示す図。
【図10】図9に示す成膜装置の基板ホルダを拡大して示す断面図。
【図11】図10に示す基板ホルダを用いてガラス基板をその成膜面が凸となるように湾曲させた状態を概略的に示す断面図。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る成膜方法を概略的に示す側面図。
【図13】図10に示す基板ホルダを用いてガラス基板をその成膜面が凹となるように湾曲させた状態を概略的に示す断面図。
【図14】本発明の第4の実施形態で使用するガラス基板を概略的に示す断面図。
【図15】(a)〜(c)は、それぞれ、図14に示すガラス基板上への強誘電体薄膜の成膜プロセスを概略的に示す断面図。
【図16】(a)〜(e)は、それぞれ、本発明の第5の実施形態に係る成膜方法を概略的に示す断面図。
【図17】(a)〜(c)は、それぞれ、本発明の第7の実施形態に係る成膜方法を概略的に示す断面図。
【図18】(a)〜(c)は、それぞれ、本発明の第7の実施形態に係る成膜方法を概略的に示す断面図。
【図19】本発明の第8の実施形態で使用するガラス基板を概略的に示す断面図。
【図20】本発明の第9の実施形態で使用するガラス基板を概略的に示す断面図。
【符号の説明】
1…破線、2…実線、3…酸素原子、4…鉛原子、5…チタンまたはジルコニウム原子、6…両矢印、10…強誘電体キャパシタ、11,11a,11b…ガラス基板、12…下部電極層、13…強誘電体薄膜、14…上部電極層、20…成膜装置、21…反応容器、22…給気口、23…排気口、24…基板ホルダ、25…スパッタターゲット、26…RF電源26、27…磁場形成用磁石、31…サセプタ、32…押え部材、33…駆動機構、34…応力印加カム、36…給気系、37…排気系、41…拡散防止層、42,46…応力制御層。

Claims (2)

  1. 立方晶系と正方晶系との間で相転移を生じる薄膜材料を前記薄膜材料が立方晶系となる温度でガラス基板の一方の主面上に堆積させて薄膜を成膜する工程と、前記ガラス基板及び前記薄膜を冷却して前記薄膜材料を立方晶系から正方晶系へと相転移させる工程とを含み、前記ガラス基板の形状を前記薄膜の成膜時と前記薄膜材料の相転移時との間で異ならしめることにより前記薄膜材料が相転移する際に前記薄膜に応力を加えて、前記冷却された薄膜における正方晶系のc軸方向を制御することを特徴とする成膜方法。
  2. ガラス基板と、前記ガラス基板の一方の主面上に形成された拡散防止層と、前記拡散防止層上に形成され立方晶系と正方晶系との間で相転移を生じる薄膜材料を含む薄膜と、前記ガラス基板の他方の主面上に形成された応力制御層とを具備し、前記拡散防止層の線膨張係数Δl 1 と前記応力制御層の線膨張係数Δl 2 と前記拡散防止層の膜厚x 1 と前記応力制御層の膜厚x 2 とは不等式Δl 1 >Δl 2 且つx 1 >x 2 に示す関係を満足するか或いは不等式Δl 1 <Δl 2 且つx 1 <x 2 に示す関係を満足することを特徴とする積層複合体。
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