JP3544377B2 - ヒートエンジンとしての内燃機関 - Google Patents

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Description

本発明はヒートエンジンとしての内燃機関に関するものであり、特に、家庭での使用、サービス業、商業及び製造業に動力又は熱を供給することにおいて適するものである。
高い熱効率を達成することが、発電の分野においては常に重要なものとなるが、それは燃料のコストが電力を生み出すときのコストの約3分の2を占めるからである。コストに加えて、環境問題のことも考えると、二酸化炭素の発生やその他の有害なものをばらまくことを最小限におさえるためにも、効率をより向上させるためにさらなる努力が必要となる。
一般的には、小さな発電設備よりもおおきな発電設備のほうが、より高い効率とより少ない有害物質の散布を達成することができる。これは、一部には熱損失、摩擦及び流体の漏れの問題が小さな設備よりも大きな設備においての方があまり重要性を有しなくなることがあるからである。また、スケールが大きくなると経済的にも有利になるから、大きな設備においては、より優れた装備をすることが可能となる。小さな設備では、このような優れた設備はコストの面から言って非常に難しいものである。
このような事実にもかかわらず、小さな設備が必要となることがあり、しかも可能なかぎり効率が良く、環境に優しいものでなければならないということが重要である。こういった状況は電気設備をもたない、世界の多くの地方で起こっている。電気を供給する発電所の建設が、その地方の人口の経済的能力を越えていることもあろうし、また、その建設を行うにはあまりにも電力の需要が少ない場合もあろう。前者の状況は多くの発展途上国にあてはまり、後者は多くの人里離れた、あるいは人口の少ない地域や離れ小島などにあてはまる。
小型の効率の良いエンジンの別の用途は、熱及び動力の複合装置(OHP)と関連して生ずる。熱と動力を同時に使用すると、電気設備からの動力を主に使用することよりも全体としてより高いエネルギ効率を得ることになる。熱を十分離れたところに経済的に送ることはできないから、CHP装置を各地域の熱負荷に適するサイズにする必要がある。大抵これは、発電装置がほどよいサイズであるべきことを意味している。
本発明はヒートエンジンとして使用可能でもあり、改変を加えればヒートポンプとしても使用できる。ヒートポンプは低温の熱源の熱を吸収して高温のヒートシンクに移すものである。例えば、気温が低いときにヒートポンプは、建物内を暖房するために大気から熱を吸収し、それを高温の環境に移すものである。これとは逆に、気温の高いときにヒートポンプは空気調整器として作用し、たとえ外部の温度のほうが内部よりも高いときでも、建物内部の空気から熱を吸収し、外部環境に捨てることができる。ヒートポンプはまた、空気を冷却し、その中の水蒸気を凝縮させる目的で使用可能である。ヒートポンプから廃棄される熱は、空気中に熱を貯えるために使用することができる。この場合には、ヒートポンプは空気を除湿するために使用可能である。CHP装置の場合と同様に、ヒートポンプは、各場所の熱負荷に応じてサイズを決定しなければならない。その結果、大抵のヒートポンプは大型の装置としてではなく、小型の装置として能力を発揮することを要求される。
殆どの型のヒートポンプ、空調装置、あるいは冷凍装置は、蒸発/凝縮流体を使用するが、この流体はフロンガス(CFC's)と同様に適当な温度で沸騰する。この物質は、有害な紫外線から人間や動物を守ってくれる地球のオゾン層を破壊することで知られている。CFC'sの代替品が幾つか知られているが、この中にも、程度は比較的小さいが、オゾン層を破壊するものがある。この他の代替品には、燃えやすい、毒性がある、コストが高い、熱力学的性質が良くない、地球温暖化をまねく傾向がある、などの欠点がある。
スターリングサイクルに基づくエンジン及びヒートポンプはよく知られている。スターリングエンジンは、作業気体を含むガス空間を形成する圧縮室及び膨張室を含んでおり、これら圧縮室及び膨張室は再生器を備えた熱交換器を介して接続されている。理想的なスターリングサイクルによると、圧縮室の作業気体はピストンにより圧縮され、等温圧縮を受ける。このときの圧縮熱は低温のヒートシンクに廃棄される。この行程の後、低温作業気体は再生器を通され、ここで予熱を受け、それから膨張室に入る。膨張室において、ピストンは膨張室の外部に向かって動かされ、これにより高温圧縮作業気体は膨張する。膨張中、熱が作業気体に加えられ、作業気体は等温的に膨張することとなる。この高温膨張ガスは、その後、返送されて再生器を通り、ここで熱を与えてから圧縮室に入って次のサイクルが始まる。
米国特許第4148195号は、熱駆動型ヒートポンプを開示している。このポンプは、燃料の燃焼などを高温熱源とし、大気など低温側の別の熱源としている。熱の出力としては、中程度の温度である。ヒートポンプの目的は、ある量の高温の熱エネルギを、より多量の中間温度の熱エネルギに変換することである。これは、低温熱源から熱エネルギを抽出することにより可能である。米国特許第4148195号に記載の熱駆動型ヒートポンプは、バルブのない密閉系装置であり、スターリングサイクルに類似のものである。一連の4つの内部導通したU字管に含まれ、閉回路内で接続された液体ピストンは、U字管のアーム部に形成された隣接する膨張室及び圧縮室の間で作業気体を変位される。液体ピストンは、膨張室の膨張ガスによる閉回路内の直接の動力を、隣接する圧縮室の圧縮ガスに伝達する。膨張室及び圧縮室は、同じU字管の対向するアーム部に形成されている。4つのU字管は、ガス空間を介して再生器と接続されている。4つの再生器のうちの2つと、それに関連するガスは、高温と中間温度の間の範囲で作動する。あとの2つの再生器とそれに関連するガスは、低温と中間温度の間の範囲で作動する。このサイクルにおいては、高温側の範囲で作動するガスから低温側の範囲で作動するガスへと液体ピストンを介して動力が伝達される。
21世紀インターソサエティ・エネルギ変換工学会議・第1巻(1986)の377〜382ページに、米国特許第4148195号に記載のものと類似のスターリング型熱駆動ヒートポンプが記載されている。そこでは、液体ピストンから液体を採取することで作業気体を加熱したり冷却したりしている。この液体の加熱及び冷却は外部で行い、エアゾールとして膨張室や圧縮室に再噴射される。
これら公知のヒートポンプの欠点の1つは、現代の高度な動力発生技術、例えば複合サイクルガスタービンなどと比較して、高温熱源の最大作業温度が非常に低いことである。例えば、これらヒートポンプに加えられる熱の温度は400℃が普通であるが、一方、現代の動力発生ガスタービンの吸入温度は最高1300℃である。その結果、熱駆動ヒートポンプにおける高温熱の内部仕事への変換効率もまた低いが、これはカルノーの定理から予想されるとおりである。したがって、全体的な動作係数は非常に小さい。
米国特許第4148195号に記載の熱駆動ヒートポンプのまた別の欠点は、ゆっくりとした自然な振動を達成するためには、液体ピストンが非常に長くなければならないということにある。振動の周波数が小さくなければならない訳は、液体小滴と作業ガスとの間の熱伝導に十分な時間が必要とされるからである。液体ピストンを要求される長さにすることは、高圧力下で小型の装置を作動する場合、特に困難となる。また、小型の装置においては、液体ピストンを長くすることによる摩擦損失が許容不可能なほどになる。さらには、各液体ピストンの1つの端の熱が別の端に伝わることに起因する、いわゆるシャトル損失(shuttle loss)を避けるために、ピストン長さ対ストロークの比を大きくすることが要求される。このシャトル損失は、各液体ピストンの2つの端が異なる温度にあることで、液体が混ざり合い、熱の伝導が起こることによって発生する。
米国特許第3608311号は、カルノーサイクルに基づき作動するエンジンを開示しており、このエンジンにおいては、単一のシリンダ内で液体ディスプレーサ(displacer)により、ガスが圧縮、膨張を連続的に繰り返す。液体ディスプレーサの高温及び低温の液体は、交互にシリンダ内に噴射されて、膨張行程においてはガスを加熱し、圧縮行程においてはガスを冷却する。
この公知のヒートエンジンの1つの欠点は、サイクル当たりの出力が比較的小さいことであるが、この原因は、断熱圧縮中に作業気体の温度を適切な値まで上げるためには、極端に高い圧縮比が必要とされ、しかもこのような圧縮比は実際には不可能なものだからである。このエンジンのまた別の欠点は、全行程にわたって、単一のシリンダ内に留まったまま、作業気体が高温と低温の間を連続的に循環させられることである。それゆえに、シリンダの壁もまた、低温から高温へと繰り返し変化することになるが、これはエントロピが大きく変化すること及び熱力学的な効率が低下することを意味するものである。
本発明にしたがって与えられるヒートエンジンとしての内燃機関は、圧縮されるガスを含む圧縮室と、この圧縮室における移動により前記ガスを圧縮するための第1ピストンと、前記第1ピストンを前記圧縮室内に駆動して前記ガスを圧縮するための駆動手段と、膨張室と、この膨張室の外部に向かう移動によりガスを膨張させる第2ピストンと、前記圧縮室を出た圧縮ガスを前記膨張室に供給するための手段と、前記圧縮室を出た前記圧縮ガスを加熱するための加熱手段と、エンジンの出力を取り出すために前記第2ピストンに操作可能に接続された伝達手段と、圧縮時に前記ガスを冷却するため前記圧縮室において液体噴霧を形成する手段と、を備えている。
このような設計の1つの利点は、ヒートエンジンサイクルにおける最低温度で熱を効率良く液体噴霧の液体に捨てることができるということである。さらに、膨張を別体の膨張室で行うために、各室の温度、ひいてはその各部分やピストンの様々な部分の温度が高温と低温の間を上下することがなく、その結果、効率の低下を避けることができる。
好適な実施例においては、前記エンジンは、膨張時に、膨張室のガスを加熱するための手段を有している。したがって、膨張行程は、ほぼ等温的である。
上記の加熱手段は、膨張室で膨張したガスの熱により圧縮室を出た圧縮ガスを予熱する熱交換手段を備えていることが望ましい。したがって、膨張室でガスを等温膨張させることにより、熱交換器において熱をいくらか回収することが可能となる。この際、熱交換器は、圧縮室を出た圧縮ガスを、膨張の前に予熱することに使用される。熱交換器としては、例えば再生器を備えた熱交換器が考えられるが、これは、圧縮室を出た圧縮ガスが流れ込むときに辿る通路と同じ通路を、膨張室を出た圧縮ガスが流れる場合に適している。またこの2つのガスが異なる通路を流れる場合には、復熱装置を備えた熱交換器が適している。ガスの混合を避ける必要があり、且つ/又は、2つのガスが実質的に異なる圧力状態にある場合に、この2つのガスの間で熱交換を行なうときには、特に、復熱装置を備えた熱交換器を使用することが有利である。
1つの具体例は、膨張室を出た膨張ガスを再圧縮のために圧縮室に返送する返送手段を含んでいる。この返送手段は、圧縮ガスを膨張室に供給するための手段とは別体である。そうでないと、作業気体が圧縮室と膨張室との間を同じ通路を通って行き来してしまう。単一の作業気体が連続的に圧縮室と膨張室との間を循環する場合、このような具体例は密閉系エンジンと呼ばれる。作業気体はエンジン内部に密閉されているので、この気体を予圧をかけておき、そうすることでサイクル中にガスが達成する最低圧力を、大気圧よりも相当高くすることが可能となる。
本発明のエンジンのまた別の具体例においては、膨張室のガスを加熱するための手段が、膨張室において高温液体噴霧を形成する手段を備えている。この噴霧に使用する液体は外部熱交換器により加熱されるものであるが、この熱源としては、産業廃棄熱などの廃棄熱や太陽エネルギ、あるいは、燃焼室冷却装置の出す熱などを利用すればよい。熱を膨張室に移すための高温液体噴霧の使用は、密閉系エンジンの場合に特に有利であるが、それは、このエンジンが比較的低温の熱源を有しているからである。液体噴霧は非常に高い温度での使用には適さない。
また別の具体例は、空気又は他の酸化ガスを圧縮室に流入させる第1バルブ手段と、圧縮ガスを膨張室に供給するための上述の供給手段を介して、膨張室のガスが圧縮室に還流することを防止する第2バルブ手段とを有している。さらにこの具体例は、前記加熱手段が膨張室に燃料を供給する手段を備えることを特徴とするものである。この具体例においては、燃料と高温圧縮ガスの混合物が燃焼室で発火し、膨張後、燃焼物は熱交換手段を介してエンジン外に放出される。したがって、各サイクルの始めには、新たな作業気体の供給が必要となる。作業気体が各サイクル毎に新しく供給される場合、そのエンジンは開放系エンジンと呼ばれる。このような1つの実施例は、膨張室に流れ込む燃料の割合を制御する手段を含むもので、これにより実質的な等温膨張を実現している。
一般的に、第1ピストンと第2ピストンは作業気体を確実に密閉することが望ましく、このことは特に、密閉系エンジンにおいて重要である。第1ピストン及び/又は第2ピストンは液体を含むことが望ましいが、それは、これにより密閉状態を実現することが困難でなくなるからである。もしピストンが固体であれば、この困難が生じてしまう。好適な実施例は、一対の略U字型導管で、その各々がピストンとしての液体を含むものと、この1つの導管の各アーム部に形成された圧縮室及び別の導管の各アーム部に形成された膨張室と、前記圧縮室の1つを出た圧縮ガスを前記膨張室の1つへ供給する手段と、他方の圧縮室から出た圧縮ガスを他方の膨張室へ供給する別体の供給手段と、を備えるものである。この実施例においては、1サイクルあたり2回の膨張及び圧縮が行われる。そして、液体ピストンのタイミングは、1つの膨張室の膨張行程が1つの圧縮室の圧縮行程を駆動するように調節することが望ましい。これは、駆動手段と伝達手段との間を適切に接続することにより可能である。また別の好適な実施例は、もう一対の略U字型導管備えており、稼働時には、膨張室を含んでいる1つのU字型導管の液体ピストンと、別の膨張室を含んでいる対応するU字型導管の液体ピストンとの位相角差が実質的に90゜となっている。このようにすることで、エンジンの1サイクル中の各段階において正味の出力を得ることができ、フライホイールや他の手段を用いてエンジンの作動を維持する必要がなくなる。
圧縮ガスが、第2ピストンの膨張室内部への移動により膨張室から排除されるとき、ガスの圧力は上昇する。また別のエンジンの実施例においては、圧縮室での液体噴霧に使用する、少なくとも2つの異なる温度の液体を供給するための手段と、ガスの圧縮時に、膨張室においてガスの温度を制御するための液体噴霧の形成手段と、が備わっている。液体噴霧の温度は、圧縮中のガスの温度を一定に保てるような温度であることが望ましい。もし第2ピストンが液体を含むならば、液体供給手段は、この液体ピストンの液体を直接に噴霧形成手段に供給するように設計されていることが望ましい。圧縮室でのガスの圧縮後は、ピストンがそれぞれの圧縮室から出ていく方向に動くので、ガスは圧力が減少し、膨張する。また別の好適な実施例は、圧縮室での液体噴霧に使用する、少なくとも2つの異なる温度の液体を供給するための手段と、ガスの膨張時に、圧縮室においてガスの温度を制御するための液体噴霧の形成手段と、を備えている。液体噴霧の温度は、膨張中のガスの温度を一定に保てるような温度であることが望ましい。もし第1ピストンが液体を含むならば、液体供給手段は、第1ピストンの液体を直接に噴霧形成手段に供給するように設計されていることが望ましい。
第1ピストンが液体を含んでいる場合は、駆動手段が、第1ピストンと協働する部材を含み、この部材の動きが、少なくとも1方向の動きを第1ピストンに伝えるようにすることができる。上記部材は固体ピストンを含み、液体ピストンに浸けられているか、又はその表面に浮かんでいる。液体ピストンを含んでいる前記導管の壁を貫通する軸に、固体ピストンは接続される。
同様に、各第2ピストンが液体を含む場合、伝達手段は第2ピストンと協働する部材を含み、少なくとも1方向への液体ピストンの動きが、前記部材につたえられる。この部材は、固体ピストンを含み、これが液体ピストンに浸けられているか、又はその表面に浮かんでいる。軸が固体ピストンに接続され、第2ピストンを含む導管の壁を貫通して延びている。
逆に、第1及び第2ピストンは固体ピストンを含んでもよい。また別の実施例は、一対の圧縮室及び一対の膨張室を含んでおり、稼働時に圧縮室のピストンが実質的に互いに逆位相で動き、且つ、膨張室のピストンも実質的に互いに逆位相で動く。また別の実施例は、圧縮室の第2の一対と、膨張室の第2の一対とを含んでおり、稼働時に、圧縮室の第1の対におけるピストンは圧縮室の第2の対におけるピストンと実質的に90゜の位相角差で作動し、且つ、膨張室の第1の対におけるピストンは膨張室の第2の対におけるピストンと実質的に90゜の位相角差で作動する。
密閉系エンジンにおいては、熱交換手段は、再生器を備えることが望ましい。再生器の目的は、作業気体に対して効率良く熱を出し入れすることにある。
また別の実施例においては、各圧縮室を出たガスから液体を分離するために、分離器が設けられる。密閉系で作動させる場合、各膨張室を出たガスから液体を分離するためにも、分離手段が設けられる。
第1及び/又は第2ピストンが液体を含む場合、この液体ピストンの液体で噴霧を形成する手段を供給する手段を設けることが望ましい。また、この供給手段が、各ピストンにより駆動されるポンプを含んでいてもよい。
また別の実施例においては、駆動手段が、伝達手段に接続される接続手段を備えており、これによって、稼働時に第1及び第2ピストンが設定された位相角関係で動くようになっている。例えばクランク軸のような機械的手段で、第1及び第2ピストンを接続することは、効果的な手段であって、大きな圧縮比を達成できるし、同時にピストンの位相角差の関係も保つことができる。第1及び第2ピストンの位相角差は、少なくとも90゜にし、第2ピストンが第1ピストンを駆動するようにしておく。また、各ピストンが独立に動くようにしておき、接続手段を用いて、これらを同じ1つの外部駆動源に接続し、各室においてピストンに作用する圧力に対して十分な力を出せるようにしておいてもよい。
また別の実施例において、本発明のエンジンは、さらに燃料燃焼用の燃焼室を備えており、このエンジンの燃焼室を規定している表面の少なくとも1つを通して導かれる熱により、圧縮室を出た圧縮ガスを加熱する手段を、加熱手段が備えることを特徴とする。したがって、本発明を改変し、従来の燃焼エンジン(例えばガソリン、ディーゼル、ガス等)に対する冷却装置を供給することが、容易である。この冷却装置は、従来の冷却装置により普通は廃棄されていた熱を回収し、この熱を有効な動力に変換するものである。圧縮室においてガスが圧縮され低温となり、燃焼室の壁に吸収された熱がこの圧縮ガスに伝わって、エンジンを冷却する。同じ方法を使用することにで、従来の燃焼エンジンの排気ガスの熱を回収することが可能であるが、そのためには、例えば排気マニフォルドに圧縮ガス冷却溝を設けたり、あるいは熱交換器を備えて、この中を排気ガスが通過するようにしておけばよい。予熱された圧縮ガスは、次に膨張室に噴射され、そこで膨張してピストンを押し出す。このようにして有効な機械的動力が生まれる。また別の実施例においては、膨張室のピストンは、エンジンの外部出力駆動装置に接続する。このようにしておくと、従来の燃焼エンジンの効率が良くなるという点で有利である。
本発明の実施例を図面に基づき、以下で説明する。
図1は、本発明を説明するために役立つ参考例を示し、液体ピストンを含み、密閉系で作動する構成のヒートエンジンを示す概略図である。
図2は、液体ピストンを含み、開放系で作動する本発明の第1実施例を示す概略図である。
図3は、固体ピストンを含み、開放系で作動する本発明の第2実施例を示す概略図である。
図4は、固体ピストンを含み、開放系で作動する本発明の第3実施例を示す概略図である。
図1において、一対のU字型導管1及び2の各々は、液体5及び7を含んでいる。圧縮室9、11はU字型導管1のアーム部13及び15にそれぞれ形成されており、膨張室17、19はもう一方のU字型導管3のアーム部21及び23にそれぞれ形成されている。圧縮室9は再生器25を介して膨張室19と接続されており、圧縮室11は別の再生器27を介して膨張室17と接続されている。図1に示す双方のU字型導管は、実際にはそれぞれが90度回転して相互に対向するように配置された状態にあり、再生器は共に同じ長さを有している。2つのU字型導管及び2つの再生器は、このように馬の鞍型をしているので“サドルループ”と呼ばれることがある。単一の相互導通する気体部分を有し、1つの再生器と、1つの圧縮室及び1つの膨張室を備え、各々が液体又は固体ピストンと、熱の供給又は除去手段と、を備えたヒートエンジンは、“半サドルループ”と呼ばれる。
液体噴射器は、両圧縮室及び両膨張室に備えられている。両圧縮室の噴射器29、31に用いる液体は、U字型導管1の液体から採取されることが望ましく、膨張室17、19の噴射器に用いる液体は、対応するU字型導管3の液体から採取されることが望ましい。U字型導管1から採取した液体は、冷却器を通った後に圧縮室9、11に噴射される場合があり,U字型導管3から採取した液体は、加熱器を通った後に膨張室17、19に噴射される場合がある。作業気体は、圧縮室9、11及び、これらと対応する膨張室19、17によって形成される空間に充満する。この作業気体は、各々の再生器25及び27を介して両圧縮室及び両膨張室を循環する。分離器37、39、41、及び43は、圧縮室及び膨張室と、対応する再生器との間に設けられており、この分離器は、作業気体に含まれる水分を除去し、その後に作業気体は再生器を通る。
各U字型導管1及び3は、直線部45及び47を有しており、この直線部が隣接するアーム部を接続している。各液体ピストンに組み合わせた機械的手段を設けて、これにより、液体ピストンへの動力及びこのピストンからの動力を伝達する。この実施例においては、固体ピストン49及び51は、両U字型導管の各々の直線部に配置されており、この直線部において各固体ピストンは、その両側に形成された液体ピストンと共に、自由に直線運動を行う。駆動軸53、55は、各固体ピストン49、51に接続され、各U字型導管の壁を貫通して延び、この駆動軸が液体ピストンを駆動したり、液体ピストンからの力を伝達したりするための手段となる。
両駆動軸53及び55は、外部駆動機構によって接続されるが、その接続の仕方により、各ピストンが、時間に関してほぼ正弦曲線的に変位し、異なるU字型導管のピストン間において、設定された位相角差を保つようになっている。これは、例えば、ガソリン又はディーゼルエンジンに使用するようなクランク軸に、駆動軸53及び55を接続することで可能である。
このエンジンは、作業気体に熱力学的サイクルを行わせることにより作動するが、このサイクルには、周期的な圧縮及び膨張が含まれている。圧縮は、作業気体の大部分が圧縮室9及び11にあるときに行ない、一方膨張は、作業気体の大部分が膨張室17及び19にあるときに行なう。このことは、膨張室のピストンが圧縮室のピストンを位相角差90゜で駆動するように設計することで可能となる。両膨張室のピストン間、又は両圧縮室のピストン間の位相角差は180゜である。このようにすることにより、膨張室の膨張行程は対応する圧縮室の圧縮行程を駆動する。例えば、膨張室19の膨張行程は、圧縮室11の圧縮行程を駆動し、膨張室17の膨張行程は、圧縮室9の圧縮行程を駆動する。
エンジンにおける1サイクル全体に関し、単一の圧縮室及び単一の膨張室だけに関連させて以下に説明する。圧縮室9における圧縮から始めよう。圧縮が始まる時点では、圧縮室9の液体ピストンは、ストロークの下死点にあり、膨張室19の液体ピストンは、ストロークの中間点にあって上方に動いている。圧縮室9及び膨張室19間で共有されていた作業気体の大部分は、このとき圧縮室9にある。圧縮室9のピストンは圧縮室9の内部へと動き、膨張室19の内部へと膨張室19のピストンが動くことに起因する気体圧力に抵抗しながら、作業気体を圧縮する。この圧縮中に、低温液体が圧縮室に噴射され、作業気体を冷却する。この液体は低温液体ピストン(すなわち圧縮ピストン)の液体から採取すればよく、採取後に外部冷却器(記載せず)に通して、それから圧縮室に噴射する。圧縮室9の圧縮ピストンがストロークの中間点にあるとき、膨張室19の膨張ピストンは、そのストロークの上死点にあって、方向転換を始める。圧縮ピストンが圧縮室内を上方に動き続けるにしたがって、作業気体の圧縮が続くのであるが、同時に、膨張ピストンが下方に動き始めると、低温の圧縮気体が再生器を通り膨張室19に向かって流れ始める。圧縮室9を出た低温の圧縮気体は、前回のサイクルの最後の段階で膨張室を出た膨張気体の熱で予め加熱されている。
圧縮室9の圧縮ピストンが、ストロークの上死点に達するとき、膨張室19の膨張ピストンは、ストロークの中間点にあり、下方に、すなわち膨張室から出ていく方向に動いている。膨張ピストンが引き続き下方へ運動することにより、作業気体が膨張するときに、高温の液体が膨張室に噴射され、作業気体の温度を一定に保つ。この液体は、高温液体ピストン(すなわち膨張ピストン)の液体から採取すればよく、採取後に、外部加熱器(記載せず)に通して、それから膨張室に噴射する。同時に、圧縮ピストンは方向転換し、圧縮室9から出ていく方向に動く。膨張行程において、圧縮室の気体を冷やさないようにするためには、液体ピストンから直接に採取した液体を噴射し、外部冷却器によって前もって冷却された液体を用いて噴射を行わないようにすればよい。
膨張ピストンが膨張室19において、ストロークの下死点に達したとき、圧縮ピストンは圧縮室においてストロークの中間点にあり、下方に動いている。膨張ピストンは方向転換し、圧縮及び膨張ピストンは互いに反対の方向に動く。これにより、作業気体は膨張室から排出され、再生器を通って圧縮室へと流れる。膨張室を出た高温の膨張気体は、再生器で予め冷却され、その後圧縮室に戻る。膨張ピストンが上方に動き、膨張室に入って行くにつれて、この膨張室に残存する気体は圧縮される。残存気体が高温化するのを防ぐためには、液体をこの膨張室に噴射すればよい。この液体は、外部加熱器を通さずに、直接、高温液体ピストンから採取することが望ましい。圧縮室9の圧縮ピストンが、ストロークの下死点に達するとき、膨張室19の膨張ピストンは、ストロークの中間点にあり、上方に動いて膨張室に入って行く。そして圧縮ピストンは方向転換し、サイクルが繰り返されることになる。
上述のように、圧縮室9及び膨張室19における熱力学的サイクルは、圧縮室11及び膨張室17におけるサイクルに比べて、180゜の位相角差がある。このために、膨張室19における膨張運動は、圧縮室11の圧縮運動を駆動し、膨張室17の膨張運動は、圧縮室9の圧縮運動を駆動する。しかしながら、全サイクル中の、圧縮工程と膨張工程との間の時点において、このエンジンから正味の出力が得られないときがある。したがって、全サイクルにわたり、このエンジンが作動するようにするためには、フライホイールを使用するか、又はピストンがもし十分大きな質量を有するならば、ピストン自体の慣性を利用すればよい。しかしながら、第二のサドルループを用い、その作動サイクルが第一のサドルループの作動サイクルと90゜の位相角差を有するようにしておけば、フライホイールの必要はなくなる。このことは、適切な外部伝達機構を組み込むことによって達成される。このようにヒートエンジンを制作しておくと、全サイクルのあらゆる段階において、外部に対し正味のエネルギ出力を供給することができる。
上述のエンジンの最も重要な特徴は、1つには高温及び低温の液体噴射を利用することで、各圧縮室及び各膨張室内の作業気体の温度を設定値に保っている点にある。上述のように、液体噴射は全サイクルにわたって行われるが、液体が熱交換器を通るのは、噴射サイクルのある一部のみである。この理由を各圧縮室及び膨張室ごとに個別に説明する。
圧縮行程における液体噴射の目的は、圧縮室の作業気体の温度をできるだけ低く保つことにある。したがって、サイクルがこの行程にある間は、噴霧用液体を外部冷却器に通さねばならない。サイクルの後半部分において、作業気体が膨張するときに液体噴射をする目的は、作業気体があまりに冷たくなり過ぎるのを防ぐことにある。サイクルがこの行程にある間は、液体を液体ピストンから直接採取し、それを冷やすことなく使用することが望ましい。
上述とは逆の議論が、膨張室に対して当てはまる。膨張行程においては、作業気体はできるだけ高温でなければならず、それゆえに、液体噴射は外部加熱器を通さねばならない。圧縮行程においては、作業気体があまり高温にならないようにすることが重要である。そのためには、この段階においては、液体は直接、液体ピストンから採取しなければならない。
また別の実施例においては、噴霧に用いる液体を吸い上げることは、ピストンと駆動軸の往復運動を直接に利用することにより実現可能である。U字型導管内に設けられたポンプは、小さなピストンを備えており、このピストンは、液体ピストン、固体ピストン、又は駆動軸によって駆動され、さらに、このピストンが、逆止め弁を組み込んだシリンダ内を慴動するように形成されている。このポンプが両口、すなわち、その両端において液体のくみ上げ及び押し出しをするものであるならば、各U字型導管にポンプを1つだけ設ければよい。このポンプを用いれば、交互にどちらの端からも液体を供給し、他端ではくみ上げをおこなうようにすることができる。両口ポンプ1つで、特定のU字型導管に設置された2つの液体噴射器を作動させることができる。このポンプの各々の端は、2つの排出孔を有し、1つの排出孔は、この特定のU字型導管に設けられた圧縮室又は膨張室の噴射ノズルに通じ、他方の排出孔は、別の圧縮室又は膨張室に直截に通じている。したがって、ほとんど連続的に液体噴射が行われているが、噴射された液体の温度は、その液体が熱交換器を通ったか否かによって、サイクル中に変化する。
分離器はスプレー噴射ノズルの上方に位置し、波型の板金を備えていてるものである。この分離器は、液体スプレーと作業気体との間の熱交換過程においても重要な役割を果たすものである。その理由は、この波型の表面が、噴射された液体と接触することにより冷却、又は加熱を受けるようにしてあり、これにより作業気体と液体との接触領域が広がるからである。ある圧縮室又は膨張室における作業気体の流れが上向きの場合は、このときに噴射された液体小滴の大部分は上方に運ばれ、分離器に入っていく。しかしながら、それ以前の噴射により、なお多くの小滴が下方の気体領域に残存している。作業気体の流れが下向きの場合には、波型板金表面に分離されていた液体のほとんどが、下方に吹き飛ばされて、圧縮室又は膨張室に入っていく。このように、分離器まで運ばれた液体を、この分離器が周期的に集め、且つ廃棄するようになっている。これに加えて、あるいはこれとは別に、作業気体を渦巻かせて液体小滴の除去を容易にする一方で、作業気体の流れの圧力損失を最小化するように、分離器を形成してもよい。
再生器の目的は、熱力学的に効率良く、作業気体の温度を高温から低温に、あるいはその逆に変化させることにある。再生器は、色々な幾何学的断面形状をした、一連の細い通路を有しており、この通路は、作業気体と再生器部材との間に大きな熱交換領域が供給できるように設計される。この通路は、例えば板金や管などを利用して形成できる。再生器は作動気体の流れが逆向きになるまで、作業気体から受けた熱を蓄えて、その後はこの熱を作業気体に蓄えさせる。また、再生器は、その長さの両端での圧力降下が最小になるように設計しなければならない。
作動気体の選択、及び液体ピストンにおける熱伝導液体の選択は、エンジンの用途、及びエンジンを作動させる必要のある温度領域に依存する。いま考えているエンジンは密閉系で作動し、また液体ピストンは完全な密封状態を作り出せるから、作業気体の選択は、入手の容易さやコストに必ずしも制限される必要はなく、その熱力学的特性を考慮して選べばよい。そうすると、作動気体としては、例えばヘリウムや水素などがあり、これらはすぐれた熱伝導特性を有している。また、安全性を考えると、より高価ではあるが、水素よりもヘリウムのほうがいいであろう。密閉系エンジンのまた別の利点は、作業気体の操作圧力を比較的高くでき、一般に1〜20MPa(10〜200bar)であることである。
約200℃を上限とする操作温度に対しては、水を熱伝導液体として使用することができる。しかしながら、さらに高い温度においては、液体状態を保たせるためには高い圧力を必要とするので、水は適さなくなる。約400℃を上限とする操作温度に対しては、低温でも液体のままである、市販の熱伝導流体を用いるとよい。このような高温領域においても、作業気体として、ヘリウムを選べばよい。400℃以上の操作温度に対しては、作業気体として、ナトリウム−カリウム共晶混合物(NaK)のような液体金属が、ヘリウムと共に使用される。共晶混合物NaKは、下は−12℃まで液体の状態にあり、785℃で沸騰する(大気圧)。溶解塩(Molten salts)は液体金属の代用品として、高温に対し使用可能である。しかしながら、温度が400℃以上である場合には、高温液体の使用に適するエンジンを設計することが技術的に困難である場合が多いので、高温液体は全く使用しないほうがよい。その代わりとしては、熱交換機の壁を通して熱をエンジンに移すことが可能であり、この熱交換器により、燃料の燃焼を含む、より高温の熱源によるエンジンの駆動が可能となる。燃焼により作られる物質はエンジン内に入らないので、燃料としては重油や、石炭、バイオマス、又は家庭における廃物などが考えられる。したがって、高温液体噴射を用いるヒートエンジンは、産業廃棄熱又は太陽エネルギなどの、比較的低温の熱源による発電に非常に適するものである。
密閉系ヒートエンジンを改変し、ヒートポンプとして作動させることが可能であり、このヒートポンプにおいては、機械的エネルギを使用して、低温源から高温槽に熱を吸い上げる。したがって、ヒートエンジンとは対照的に、作業気体の圧縮は、作業気体が高温のときに行ない、膨張は、作業気体が低温のときに行なう。ヒートポンプの構成例を図1に基づき説明する。この例においては、ヒートポンプを駆動するためのエネルギは、駆動軸53及び55を介し、固体ピストン49及び51に伝えられる。ヒートエンジンとは対照的に、圧縮室の液体ピストンが、関連する膨張室のピストンを、例えば90゜の、設定された位相角差をもって駆動し、この逆は起こらない。図1に関し、圧縮室9及び11の液体噴霧29及び31は、低温熱源からヒートポンプに熱を移すために使用される。作業気体の膨張中に、低温の液体が圧縮室9及び11に噴射され、作業気体は液体ピストンにより駆動される。膨張の際に、液体噴霧の熱が作業気体に移されることにより、膨張行程はほぼ等温的となる。液体噴霧小滴から熱が奪われたのち、この冷えた小滴は液体ピストンの液体と再結合し、その結果、この液体の温度は低下する。液体ピストンの低温液体は適切な熱交換器(記載せず)に送られ、ここで熱源からの熱がこの液体に移される。低温液体用の熱源としては、大気、地面、河川、小川又は他の水を貯えたものなどが考えられる。熱源としての別の可能性は、換気装置から出る古い空気を使用することである。これとはまた別に、風呂などの温かい排水を使用することが可能である。これは、ヒートエンジンにおける熱交換器とは逆の作用であり、ヒートエンジンの熱交換器は液体の熱を低温のヒートシンクに伝えるものである。
膨張室17及び19における液体噴射器33及び35は、作業気体の圧縮中に両膨張室に高温の液体を噴射する。この作業気体は液体ピストンにより駆動される。この高温の液体噴射は、作業気体に対してヒートシンクとして働き、圧縮作用により生じた熱を吸収する。圧縮後、より熱くなった噴霧中の液体小滴は、液体ピストンと再結合する。これにより、液体ピストンの温度は上がる。液体ピストンの熱い液体は適当な熱交換器(記載せず)に送られ、ここで液体の熱は使用に適する温度まで変換される。これは、ヒートエンジンにおける熱交換器の作用とは逆であって、ヒートエンジンの熱交換器は、高温源から液体に熱を伝えるものである。この熱は、例えば、多くの家庭で使用されているような温水システムに供給することもできる。また、この熱を導管式の空調(ducted air system)に供給してもよい。
低温の圧縮室9及びこれと関係する高温の膨張室19におけるヒートポンプのサイクルは以下のように進行する。まずは、高温の膨張室19の液体ピストンがストロークの上死点にあり、方向転換するところから始めよう。
高温膨張室19において、液体ピストンがストロークの上死点に達するにしたがい、低温圧縮室9の液体ピストンは、この低温圧縮室9から出ていく向きに動いて、ストロークの中間点に達する。液体ピストンが圧縮室9から外部に向かう動きを続けるにつれて、低温の作業気体は膨張し、同時に、低温液体が噴射器29を介して、低温圧縮室9に噴射される。圧縮室9の作業気体は、この液体噴射の熱を吸収し、作業気体はほぼ等温的に膨張する。低温圧縮室9の液体ピストンがストロークの下死点に達し、方向転換をするときに、高温膨張室19の液体ピストンは、膨張室19の外部に出ていく方向に動いて、ストロークの中間点に達する。圧縮室9の液体ピストンが、圧縮室9の中へ入って行くにつれて、低温の作業気体は圧縮室9から排除され、再生器を通り、ここで前回のサイクルの最後の段階で、高温膨張室19を出た作業気体の残した熱で予め加熱され、その後に高温膨張室19に入る。膨張室19の液体ピストンが、ストロークの下死点に達し、方向転換するとき、高温の液体が、噴射ノズル35を介して膨張室19に噴射される。この時点において、圧縮室9の液体ピストンは、ストロークの中間点に達しており、作業気体の大部分は、高温膨張室19にある。膨張室19の液体ピストンが上方に動いて膨張室19内部に入って行き、作業気体を圧縮する。圧縮により生ずる熱は、高温の噴霧中の液体小滴に移り、この圧縮行程はほぼ等温的である。膨張室19の液体ピストンがストロークの中間点に達すると、低温圧縮室9の液体ピストンは、ストロークの上死点に達し、方向転換する。膨張室19の内部に液体ピストンが引き続き移動すれば、作業気体は膨張室19から排除され、再生器25を通り、この再生器に自身の熱を与える。再生器を出た低温の作業気体は、低温圧縮室9に戻り、つぎのサイクルが始まる。
低温圧縮室9のピストンが、圧縮室9の内部に移動し、作業気体を排除するにつれ、作業気体の圧力は上昇し、その結果、作業気体の温度が上がる。作業気体が圧縮されるときに、液体を低温圧縮室9に噴射することで、作業気体があまり高温にならないようにして、作業気体の温度を一定に保つことが望ましい。液体ピストンを使用する場合は、噴霧用の液体は、この液体ピストンから直接、採取できるという利点がある。同じように、高温膨張室のピストンが膨張室から出て行き、それにつれて作業気体が吸入されるとき、作業気体の圧力は減少し、作業気体の温度が下がる。これを避けるために、作業気体が膨張するにつれて、高温の膨張室に液体を噴霧し、これにより作業気体の温度を一定に保つようにする。液体ピストンを使用する場合は、噴霧用の液体は、この液体ピストンから直接、採取できるという利点がある。
ヒートエンジンに関し、2つのサドルループを使用することが可能で、このときには、この2つが互いに、位相角差90゜であるようにする。作業気体は、ヒートポンプを使用するときの操作温度及び操作圧力の範囲内では相転移(すなわち凝縮や蒸発)を生じない気体であることが望ましい。例えば、ヒートエンジンのときと同様に、作業気体はヘリウムや水素が考えられる。熱伝導液体としては水でもよいが、低温源の温度によっては、不凍液が必要である。熱源として大気を使用する場合は、熱交換器の霜取りを定期的にする必要がある。
例えば、空調、冷蔵、空間の暖房又は水の加熱などを目的とする、家庭内における用途又は商業用の用途に対して、上記構成例に示したヒートポンプを使用することが可能である。ヒートポンプの効率は、一般に、動作係数(co−efficient of performance)、略してCOPによって表されるが、これは電力を熱に変えるときの変換率である。COPは、熱源の温度及び必要とされる熱の供給量にも依存する。空間の暖房及び他の家庭内の目的のために水を加熱する場合、従来のヒートポンプは、約3のCOPを達成することが可能である。上述のヒートポンプのサイクルは、熱源が氷点よりも高い場合、家庭内の用途において、約3.5のCOPを達成することが期待される。太陽電池板の使用又は家庭廃水の熱再生によってより高い熱源温度を用いることによる、達成可能なCOPは約4である。また、上述のヒートポンプにより、氷点近くの大気から熱を採取して、暖房用に温かい空気を導管で導き、そのときのCOPを約4とすることが可能である。もし、廃水や使用済みの古い換気気体、又は太陽光暖房などから熱が多少とも回収できるならば、COPを約4ぐらいに改善できるであろう。
ヒートエンジンに関する話題に戻る。また別の実施例は、作業気体に熱を加えるために燃料の燃焼を利用するものである。可燃性燃料が膨張室に噴射され、これが高温の圧縮気体と混合して発火する。燃料は大気汚染を起こさない燃料であることが望ましく、それにはガスや軽留出油などがある。この型のヒートエンジンの実施例が図2に模式的に示されている。図2の実施例の構成要件の多くが、図1の実施例のものと類似であり、同じ構成要件は、同じ番号で示す。
図2において、このヒートエンジンは、一対のU字型導管字1及び3を有しており、この各々は部分的に液体が満たされていて、この各液体が液体ピストンとして作用する。圧縮室9及び11は、U字型導管1のアーム部13及び15に形成されており、燃焼室17及び19は、別のU字型導管3のアーム部21及び23に形成されている。圧縮室11は、熱交換器を介して燃焼室17と通じるように設計されている。この熱交換器は再生器27であることが望ましい。別の圧縮室9は、別の熱交換器を介して別の燃焼室19と通じている。この熱交換器もまた再生器であることが望ましい。圧縮室9及び11は気体吸気バルブを備えており、これらによって大気又は他の酸化ガスが圧縮室に取入れられる。これらはバルブは、逆止め弁などである。各圧縮室9及び11は液体スプレー噴射器29及び31を有しており、これまでと同様に、噴射に使用する液体は液体ピストンから採取する。別のバルブ61、63は、圧縮室9、11と再生器25、27との間に位置しており、これらによって、燃焼室19、17を出た排気ガスが、再生器25、27を介して圧縮室9、11に戻るのを防いでいる。排気バルブ69、71によって制御される排気孔65、67は、バルブ61、63と再生器25、27との間に設けられている。排気ガスを再生器25、27に通し、この再生器に熱を与えた後、排気ガスをこの排気孔から排出する。燃料吸気孔73、75は各燃焼室17、19に設けれており、これによって燃料を燃焼室内に導くことが可能となる。各排気バルブ69、71は適切な調時機構(記載せず)により操作する。
1つの圧縮室とこれに対応する燃焼室とにおけるエンジンのサイクルは以下のようなものである。内部圧力が、逆止め弁57の外側の圧力よりも小さくなるまで、圧縮室の液体の高さが下がると、吸気バルブ57が開き、酸化ガスが吸入される。このガスの供給源が大気である場合は、圧縮室の圧力が大気圧よりも小さいときに、吸気バルブが開く。圧縮室のピストンがストロークの中間点に達し、さらにこれを越えて下降するとき、燃焼室19のピストンはストロークの下死点に達し、方向転換する。排気バルブ65が開かれ、燃焼室のピストンが燃焼室に入り込むにつれて、この行程において再生器に熱を与えつつ、排気ガスがこの再生器を通過する。逆止め弁61により、排気ガスが圧縮室9に入らないようになっている。
燃焼室のピストンが、燃焼室におけるストロークの中間点に達し、さらにそれを越えるとき、圧縮室のピストンはストロークの下死点に達し、方向転換する。圧縮室のピストンが、その下死点に達し、上方に動き始めると、吸気バルブが閉じ、これにより、吸入された酸化ガスが圧縮を受ける。液体スプレーにより、このガスは周囲の温度と近い温度に保たれ、これにより、圧縮はほぼ等温的に行われる。圧縮に際し、圧縮中のピストンがストロークの下死点と中間点との間にあるときは、膨張室のピストンは膨張室19の内部へと動き、その結果、高温の燃焼ガスは、再生器25を介し、排気孔65から排出される。圧縮室の圧力が燃焼室の圧力よりも大きくなると、圧縮室と燃焼室を接続する逆止め弁61が開き、低温の圧縮ガスが熱を吸収しながら再生器を通り、その結果、このガスは高い温度を有して燃焼室に入ることになる。燃焼室のピストンは方向転換をし、燃焼室から出て行くが、その一方で、圧縮室のピストンは圧縮室において、ストロークの下死点に近づいている。圧縮室において液体ピストンがストロークの上死点に達する直前と、燃焼室において燃焼室のピストンがストロークの中間点に達する直前とにおいて、燃料が燃焼室19に噴射され、即座に発火するか、又は点火用種火又はスパーク(記載せず)の補助により発火する。燃焼室からピストンが出て行き、下方への動きが続いている間のある時点において燃料を遮断する。燃料噴射の速度は、ほぼ等温の膨張行程が生じるように調節する。圧縮室のピストンが方向転換をし、再び圧縮室にガスを吸入する。そして燃焼室のピストンが、ストロークの下死点に近づくにしたがい、排気バルブ65が開き、全サイクルが繰り返されることになる。
フライホイールの使用を避けるためには、2つのサドルループを用いて、互いに位相角差90゜で作動するよう設置すればよい。密閉系のエンジンに対する場合と同様に、機械的な駆動システムを使用することが可能である。燃焼室及び圧縮室を含むU字型導管において、液体ピストンを形成している液体は、油や水、又は他の流体でもかまわない。両U字型導管の液体は、同じものである必要はない。フロート22、24は、各燃焼室の液体ピストンの表面に浮かぶ固体の部材を備えており、これらフロートは、燃焼ガスと液体とが接触しないようにするために設けられている。燃焼室の壁を冷却する何らかの手段を設けることも可能である。
上述の密閉系及び開放系は、共に、例えば1Hzという少ない回数の、大きな往復運動力有する仕事を生み出す。もし、このエンジンを発電のために使用する場合には、この低速の機械的エネルギを、発電機を駆動するのに適した形態にまで変換するための手段が必要である。最高で1MWぐらいまでの発電性能を有する、あまり大きくない装置に対しては、低速度のクランク軸を用い、適切なギヤ装置によって発電機に接続する。また、ハイポサイクリック(hypo−cyclic)ギヤ機構又はウォームギヤ装置を用いてもよい。ハイポサイクリックギヤ機構の場合は、エンジンの駆動軸は、外周に歯をもつ遊星歯車に接続される。遊星歯車は、内周に歯を有する固定したホイールの内部に沿って回転する。遊星歯車は、アーム部に取りつけられ、固定したホイールの内部に沿って遊星歯車が回転するにしたがい、このアーム部が回転する。この回転アーム部は、変速ギヤを介して発電機を駆動する。この変速ギヤは、クランク軸と同じ様な働きをするが、クランク軸の場合に生じる大きな横スラストを避けられるという利点を有する。ハイポサイクリックギヤを従来のクランク軸よりも小型にすることが可能である。また、エンジンを改変して、水力学的流体(hydraulic fluid)を、発電機に接続したタービンにポンプで送ることが可能である。この手法は、大型及び小型の装置の双方に適するものである。
また別の実施例においては、液体ピストンを固体ピストンで置き換えることも考えられる。固体ピストンを密閉系のエンジンに使用することもできるが、このエンジンにおいては、作業気体は、膨張室と圧縮室の間を行き来するものであるから、ヘリウムや水素などの閉じ込められた高圧気体を十分に密閉することは困難である。密閉性は開放系のエンジンにおいてはそれほど重要でない。それは、この系のエンジンにおいて、各サイクルで、空気や他の酸化ガスを新たに供給するからであるが、この場合は固体ピストンを使用することがより適切である。
図3において、このエンジンの実施例全体を100で示す。これは、4つのシリンダ113、115、121、及び123を有している。ピストンは各シリンダに設けられており、各ピストンは、連接棒171によりクランク軸169に接続されている。この具体例において、エンジンはクランク軸の上方に位置している。圧縮室109及び111は、2つのシリンダ113及び115に内に形成されており、膨張室117及び119は、他のシリンダ121及び123内に形成されている。各圧縮室は気体吸気孔156、158及び気体排出孔173、175を有しており、これら吸気孔は、気体吸気バルブ157、159により制御される。気体供給ライン(gas feed line)177、179はそれぞれ、圧縮室109、111と、膨張室119、117とを、圧縮気体吸気孔181、183を介して接続しており、これら吸気孔の各々は、膨張室119、117の気体吸気バルブ185、187により制御される。各膨張室117、119は、排気ガス排出孔167、165を有しており、これら排出孔は、排気バルブ193、191により制御される。気体吸気孔及び排出孔はすべて、膨張室及び圧縮室の底付近に位置している。
噴霧ノズル129、131は、各圧縮室109、111に設けられており、圧縮中に、各圧縮室109、111へ液体スプレーを噴射する。分離器137、139は、各圧縮室109、111の内部に設けられており、圧縮気体から液体を除去し、その後、この圧縮気体が圧縮室から出ていく。したがって、分離器137、139は圧縮気体排出孔173、175の上方に位置している。いろいろな種類の分離器が使用可能であるが、分離器はできるだけ小型であり、分離器によって圧縮室に入る気体又は圧縮室を出る気体の圧力低下があまり大きくならないようにすることが、重要である。吸収気体の流れにおける圧力低下を分離器が起こさないようにするためには、気体吸気孔を分離器のピストン側に位置させればよい。圧力損失を小さくするためには、分離器は、数多くの小さな渦巻き翼(swirl vane)を備え、これらを、互いに平行に設置した短いパイプ部に設ければよい。気体に渦巻きが生ずると、これにより運ばれる液体の小滴は外側に流され、パイプの壁に集まる。渦巻き翼分離器は、例えば蒸気発電機及び加圧水型原子炉の蒸発対蒸気型(steam to steam)再加熱器などに使用される。
各分離器137、139は、ダクト201、203を介して、外部冷却器197、199に接続されている。分離器から冷却器への液体の流れは、バルブ205及び207により制御され、これらバルブは逆止め弁である。冷却器からの冷却液体は、ダクト209、211及びバルブ129、131を介して圧縮室に戻り、これらバルブは、逆止め弁である。この回路(circuit)を巡る液体流れは、圧縮室の周期的な圧力変化により駆動され、これにより液体は逆止め弁を通って所定の方向に流される。この過程が起こるようにするためには、冷却器の液体表面の上方に気体の空間を維持することが必要である。これは、例えば、冷却器にボール弁などのような、レベル調節器を使用すれば可能である。燃焼室へ流れる気体中に溶けてしまった液体を補充するために、別体の液体供給器を冷却器に接続してもよい。液体の補充もまた、レベル調節器により制御される。
上述の分離器及び冷却回路は、冷却液体の分離、再循環、及び圧縮室への微細な噴霧として冷却液体を汲み上げることを、外部ポンプを使用することなく実現している。液体ピストンを有するヒートエンジンに、これと類似の設計を施すことが可能である。用途によっては、スプレー噴射の上向きの流れを制御するのに逆止め弁を使用せず、スプレーのタイミングをより適切に制御できるカムを使用することなどで、この噴射を制御することが適当な場合もある。このタイミングは、冷却器と圧縮室との間の圧力差及び圧縮室の小滴の有限な移動時間を考慮して、最適化することが望ましい。また、内部又は外部ポンプを使用して、液体の流れを駆動し、スプレー噴射器に送ってもよい。この場合には、ポンプはピストン軸に機械的に接続してあることが望ましく、そうすることで、別体の動力源は不必要となる。スプレーポンプは、液体ピストンを有するエンジンやヒートポンプへの使用が適切であるが、これは作動速度が遅いことによる。これらの場合においては、小滴の移動時間は、エンジンが1サイクルを終了する時間に比べて、やや短い。
各膨張室119、117は、再生器を備えた熱交換器125、127を備えており、気体はまず熱交換器を通ってから、吸気孔及び排出孔をそれぞれ介して、膨張室に入ったり、出たりする様になっている。各膨張室は、燃料噴射バルブ174、176を有しており、これらバルブは、適切な調時機構により制御する。さらに、各膨張室は燃料/気体の混合物に点火するためのスパークプラグ178を有しており、これによってエンジンを始動したり、あるいは始動及び連続駆動の双方を実現したりするために使用する。
再生器を備えた熱交換器は、例えばハニカム状に形成された、直径が小さく、長さの短い、多くの通路を有するものである。熱交換器は、燃焼室の内部に設けられ、これにより設計が簡素化され、流されずに残る気体の量を最小化しているが、用途によっては、再生器を別体としたほうが望ましい場合がある。
圧縮室及び膨張室は、対になって配置されており、各対は、低温の圧縮気体を膨張室に供給する圧縮室を有している。この対の作動の位相角差は180゜である。これを実現するには、この実施例のクランク軸169の設計を適切にすればよい。各対において、膨張室の膨張行程は、圧縮室の圧縮行程を駆動し、予め設定された位相角差は、この実施例においては90゜である。ここにおいても、位相角差は、クランク軸169の適切に設計することで固定される。このように、圧縮は、気体の大部分が圧縮室にあるときに起こり、膨張は、気体の大部分が膨張室にあるときに起こる。また、圧縮室及び膨張室の一対の膨張室で生じる膨張行程は、別の対の圧縮室で生じる圧縮行程を、直接に駆動する。
圧縮室及び膨張室の一対の操作サイクルは、以下のように進行する。まずは圧縮室に気体を誘導するところから始めよう。圧縮ピストンが、圧縮室におけるストロークの下死点(すなわちクランク軸169から最も離れた点)に達するにしたがい、気体吸気孔157が開き、ピストンが圧縮室109から出ていくにつれて、気体は圧縮室に吸入される。同時に、膨張ピストンがストロークの中間点に達し、膨張室から出ていくにつれて、膨張室の圧縮気体吸気孔181が閉じられて燃料が膨張室119に噴射される。膨張室の燃料及び気体の混合物が発火し、燃焼ガスが膨張して、膨張ピストンをストロークの上死点(すなわちクランク軸169に対して最も近い点)まで駆動する。
膨張ピストンは方向転換し、排気バルブ193が開いて排気ガスが再生器125を通り、排気孔189から排除される。気体は、引き続き圧縮室に吸入され、圧縮ピストンがストロークの上死点に達すると、この吸入は終了して、気体吸気バルブ157が閉じる。圧縮ピストンは方向転換し、圧縮室内へ動いて、低温液体が圧縮室に噴射され、圧縮中に気体を冷却する点まで進む。
圧縮ピストンがストロークの中間点に達するにつれて、圧縮ピストンは、圧縮室において、ストロークの下死点に達し、方向転換する。この時点で、排気バルブ191が閉じ、圧縮気体吸気バルブ185が開いて、これにより低温の圧縮気体が圧縮室から膨張室に流れ出す。圧縮気体は、再生器125を通り、ここで、排気ガスの熱により予め加熱される。
圧縮室の圧縮ピストンがストロークの下死点に達するにつれて、膨張室119の圧縮気体吸気バルブ181が閉じ、燃料が、膨張室に噴射され、予め加熱された圧縮気体と混合して、発火する。この燃焼ガスが膨張して、膨張ピストンをストロークの上死点まで押しやり、全サイクルが繰り返される。圧縮室から出ていく前に、圧縮気体から取り除かれた液体は、バルブ205から圧縮室の外部に排除される。この液体は冷却器197で冷却され、その後に戻ってきて、圧縮室に噴射される。
圧縮室及び膨張室の別の一対は、同様のサイクルを行うが、上述のように、各対の作動サイクルは180゜の位相角差を有する。このようなエンジンは、大きなフライホイールにより全サイクルにおいて運動が維持されるようにしておくことで、満足のいく動きさせることができる。しかしながら、4つのシリンダの各組の作動状態が90゜の位相角差を有していれば、このエンジンは、単一のクランク軸に接続された4つのシリンダからなる2つの組を有するものとすることが可能である。こうすることで、サイクルのあらゆる段階において、エンジンを駆動することができ、しかもフライホイールを必要とせずに連続的な操作を達成することが可能となる。
さらに、1つの圧縮室と1つの膨張室を有するエンジンを設計することも可能であるが、そのためには、膨張行程又は燃焼行程の間のサイクルにおいてエンジンの差動を維持するための手段を設けなければならない。
固体ピストンを有するエンジンの配置は、図3に示されており、クランク軸はシリンダの上方にある。これにより、シリンダからの液体小滴の分離及び除去が重力よって補助される点が有利である。他方、クランク軸に潤滑剤を供給することは容易ではなく、またこの他にも、この設置の仕方に対する実際上の不利益があろう。また別の設置方法としては、クランク軸をシリンダの下方に配置し、かつ、ピストンが使用済みの噴霧液をバルブから押し出し、膨張室シリンダに送るように設置することが挙げられる。したがって、液体の分離手段は、膨張室に通じるパイプに設けることになる。クランク軸をシリンダの下方に配置した場合における、また別の分離手段としては、シリンダの頂部で、ピストンが、液体を内部堰を越えて押しやることが考えられる。そうして液体は、重力により排出される。これにより、大型の接続パイプ及び外部分離器の必要がなくなる。
液体ピストンの代わりに固体ピストンを使用する際の魅力は、エンジンをより高速で稼働できるという点にある。このことは、ある部品寸法に対する出力が高くなることを意味しており、このようなエンジンは、ボートや車などの動きを有する用途に適しており、さらに動きの伴わない発電などにも適している。ピストンの密閉性は、一般に、液体ピストン使用の場合ほど良くはないが、開放系エンジンの密閉性は、密閉系のエンジンの場合ほど重要ではない。液体ピストンと固体ピストンを共に有するエンジンを工夫することも可能であり、このときは、例えば、液体ピストンを圧縮室に、固体ピストンを燃焼室に設ければよい。
図4は、ヒートエンジンの別の具体例を示しており、これは図3のものと似ているが、多くの面で改変されている。それにより、効率が良くなり、仕事率という面からみてより大きな出力が得られるなどの、性能の向上がみられる。
図4に示すヒートエンジンは、一対の圧縮シリンダ113、115を有しており、各シリンダは、それに関連する噴霧液冷却器及び再循環器を備えている。また、このヒートエンジンは、一対の膨張あるいは燃焼シリンダ121、123を有している。これらの構成要素に対して図3の具体例において述べた記述は、図4に示される、対応する構成要素に関しても適合し、同様の構成要素は同じ参照番号によって示される。図4に示す具体例の性能向上に貢献するヒートエンジンの改変について、以下に述べる。
湿気分離器137及び139は、圧縮室109及び111の内部から除かれ、代わりに圧縮室の外部に置かれている。この湿気分離器は、圧縮空気供給ライン177、179に接続されていて、圧縮室の圧縮ガス排出孔173、175と、膨張室119及び117の高温圧縮ガス吸気孔165、167との間にある。圧縮室の外部に湿気分離器を設置することにより、圧縮室内の死容積を取り除くことができる。圧縮室の外部に湿気分離器を設置しなければ、この死容積が圧縮行程中常に存在し、圧縮率が小さくなる。圧縮ガス排出バルブ204及び206が付け加えられ、これにより外部輸送管に閉じ込められた気体から圧縮室109及び111を密閉する。外部輸送管は、圧縮室の圧縮ガス排出孔173、175から膨張室の吸気孔まで通じている。さらに、圧縮ガス排出バルブは、各圧縮室の圧縮ガスの最終圧力を制御しており、その後にガスがそれぞれの膨張室に送られる。このバルブは、膨張室に流れる圧縮ガスの調時制御も行っている。排出バルブ204及び206を加えたこと及び、湿気分離器を圧縮室内部から除去したことの双方により、より大きな圧縮率を達成することが可能となる。
図3に示される実施例の膨張室内に設けられた再生器を備えた熱交換器125及び127は、図4に示される実施例の膨張室の外部に設置された復熱器を備えた熱交換器244及び246と交換されている。再び、これにより膨張室内の死容積を減ずることができ、高温圧縮ガスの膨張エネルギは、再生器を備えた熱交換器に閉じ込められた前回のサイクルの排気ガスの死容積に最初に膨張することで浪費され、そのためにガスの温度が下がるということがなくなる。よって、膨張室においてより高い温度を達成できる。
各復熱器を備えた熱交換器244及び246は、それぞれの圧縮ガス供給ライン177、179にあって、それぞれの湿気分離器137、139と、各膨張室の高温圧縮ガス吸気孔181、183との間に接続されており、圧縮室の低温の圧縮ガスを、排気孔165、167から膨張室を出ていく排気ガスで予熱するように配置されている。図4に示すエンジンから向上した圧縮率が得られるということは、膨張前後の絶対温度の比もまた大きくなることを意味する。膨張後の温度は、図3及び図4に示す両エンジンに対して同じになることが多いが、これは、この温度が熱交換器の材質によって決定されるからである。それゆえに、図4のエンジンの最高温度はより高くなり、膨張行程において加えられる熱の平均温度も高くなり、熱は、サイクルにおいて最低温度で捨てられ、最高温度で加えられ、これが出力の増大につながる。
図4の実施例をさらに改変して、サイクルのいろいろの部分における廃棄熱又は過剰熱を回収し、この熱を有効な動力に変換し、エンジンの効率を向上することが可能である。特に、各燃焼シリンダ123、121は、冷却ジャケット212、214に覆われており、これにより燃焼室の壁を通して導かれる熱を回収する。バイパスライン208、210は、圧縮ガス供給ライン177、179の、湿気分離器137、139と、復熱器を備えた熱交換器244及び246との間に接続されていて、圧縮室109、111の低温圧縮空気を冷却ジャケット212、214に供給する。バイパスライン208、21は、冷却ジャケットの底付近に接続されており、この部分で、燃焼室の壁の温度は最低となる。一対の膨張シリンダ220、222には、関連するピストン224、226が備わっており、これらもまた、連接棒171を介してクランク軸169に接続されている。各膨張室は、吸気バルブ232、234により制御されるガス吸気孔216、218と、排出バルブ240、242により制御されるガス排出孔236、238と、を有している。吸気孔216、218は冷却ジャケット212、214の頂部付近に接続されており、この冷却ジャケットの最上部は排出孔を取り囲み、復熱器を備えた熱交換器244、246の高温側に延びており、この部分において温度が最高となる。
したがって、圧縮室の低温圧縮ガスの一部を燃焼室の壁に向けることにより、燃焼室の頂部の壁に吸収された熱は回収され、有効な動力に変換される。冷却媒体としては、圧縮気体の方が、大気圧の空気よりも有効である。低温の圧縮空気は底付近で冷却ジャケットに入り、まず燃焼室の壁を冷却するが、それは、燃焼室の壁が、潤滑油によって決定される温度よりも低い温度に保たれなければならないからである。圧縮ガスは、冷却ジャケットの中を上向きに、燃焼室の頂部に向けて押し上げられ、熱を吸収して徐々に温度が上昇する。この冷却過程において熱を幾らか吸収すると、圧縮空気は、シリンダヘッドやバルブなど、この装置の高温部分を冷却するために使われる.最後に、高温圧縮空気は、冷却装置から断続的に抽出され、吸気バルブを開くことにより膨張室に導かれ、そこで膨張し、関連するピストンを膨張室から押し出す。これにより、より多くの機械的仕事が生み出される。
実際は、一般的に、燃焼室を出る排気ガスの熱容量は、圧縮室の圧縮ガスの熱容量よりも大きいので、復熱器を備えた熱交換器の低温圧縮ガスを予熱するのに必要とされる以上の熱が、排気ガスの中に利用可能な状態で存在する。この過剰熱は、燃焼に必要とする以上のガスを圧縮し、このガスを復熱器を備えた熱交換器に通すことにより回収できる。この熱交換器において、排気ガスの利用可能な過剰熱によって、圧縮ガスを予熱し、その後、この予熱された圧縮ガスを1つ又は複数の膨張室に送る。
このように改変することの利点は、排気ガスの最終温度を下げられることと、エンジンの燃料効率を上げられることにある。
エンジンのいろいろな部分から廃棄熱又は過剰熱を回収するため、1つ又は複数の膨張室が、この中で述べる他の具体例においても使用可能である。
図4のヒートエンジンの実施例は、垂直な中央線Aに関して本質的に対称であり、エンジンの右半分は左半分の鏡像である。この実施例においては、中央線Aの左の3つのピストンは、この線よりも右の3つのピストンと、位相角差180゜のずれを有している。その理由は、こうすることによりクランク軸169に最も均一のトルクを与えることができるからである。また、エンジンの各半分の燃焼室のピストンは、クランク軸を介し、対応する圧縮室のピストンを位相角差約90゜で駆動するように配列されている。これにより、圧縮室において高圧状態を達成することが必要なときに、クランク軸に大きなトルクを供給することが可能となる。この配列には次の様な利点がある。それは、圧縮空気が、供給ラインと熱交換器から燃焼室に引き込まれ、それから排出バルブを開くことにより圧縮室からこのガスを補充する点である。
図4のヒートエンジンの全操作サイクルについて、中央線の左側の3つのシリンダのみに基づき述べることにするが、それは、エンジンの右半分の差動状況は、本質的に同じであり、ただ180゜の位相角差があるだけである。この例においては、空気を燃焼のための酸化ガスとして使用するが、このことは必ずしも必要ではない。
圧縮室109のピストン112がストロークの上死点に達し、方向転換を始めると、圧縮ガス排出バルブ204が閉じ、吸気バルブ157が開く。そして大気が空気吸気孔156から圧縮室に吸入される。同時に、圧縮ピストン112がストロークの上死点に達するにつれて、燃焼室のピストン122及び膨張室のピストン224はストロークの中間点にあって、下方に動いている。この時点において、燃焼室は圧縮された高温燃焼ガスを含んでおり、このガスが膨張してピストンを燃焼室から外に駆動する。同様に、膨張室228は高温の圧縮空気を含んでおり、この空気もまた膨張して膨張ピストンを膨張室から外に駆動する。燃焼室及び膨張室の双方の排出バルブは閉じられ、吸気バルブもまた閉じられている。圧縮ピストン112がストロークの中間点に達するにつれて、燃焼ピストン及び膨張ピストンはストロークの下死点に達し、方向転換する。この時点において、燃焼室の排気ガス排出バルブ191及び膨張室のガス排出バルブ240は、ともに開く。ピストンがそれぞれ燃焼室又は膨張室の中へ動くにつれて、排気ガスは排出孔165を通って燃焼室から排出され、熱交換器244を通って大気中に出ていく。同様に、膨張ガスは、ガス排出孔236から膨張室の外へ押し出される。
排気ガス中の窒素酸化物の還元は、アンモニアの上昇気流を熱交換器に直接に噴射すること、及び/又は熱交換器自身に触媒表面組み込むことにより達成可能である。
燃焼室のピストン122及び膨張室のピストン224が上向きのストロークの中間点に達するとき、圧縮ピストン112はストロークの下死点に達し、方向転換する。この時点において、空気吸気バルブ157が閉じ、低温液体のスプレーが、スプレー噴射バルブ129を通って圧縮室109に噴射され、これにより圧縮室の空気は、ほぼ等温的に圧縮される。
燃焼ピストン及び膨張ピストンがストロークの上死点に達すると、排出バルブ191、240が共に閉じ、空気吸気バルブ185、232が開く。これにより、予熱された圧縮空気が空気吸気穴181、216から燃焼室又は膨張室に入っていく。予熱された圧縮空気を燃焼室に供給するこの吸気バルブは、設定されたある時点において閉じており、燃料が、燃料噴射バルブ174を介して燃焼室に噴射される。点火プラグなどの点火源178を利用して燃料を点火することもあるが、燃料が予熱された圧縮空気と混合するその瞬間に、点火が起こるようにすることも可能である。高温の燃焼ガスの圧力によりピストン122は、燃焼室119から外に駆動され、ピストンに対して仕事をする結果、この燃焼ガスはある程度冷たくなる。
膨張室228のガス吸気バルブ232もまた、ある設定時点で閉じて、空気が断熱的に膨張し、ピストン224を下方に、膨張室の外へと駆動する。
圧縮室109のピストン112がストロークの上死点に達するにつれて、圧縮ガス排出バルブ204が開き、空気とスプレー液の混合物は圧縮室から排除され、湿気分離器137に入る。ここで空気と液体が分離される。湿気分離器137の寸法は、空気/液体混合物の分離を達成させるだけでなく、液体の貯蔵所及び圧縮空気の蓄圧器としても働くように決定されている。
液体は、湿気分離器137から冷却器197へ流れ、ここで、圧縮行程において吸収された熱が大気中か、又は他のヒートシンクに放出される。冷却器197の液体はそのあと、圧縮行程における液体噴射を制御する液体スプレー噴射バルブ129の所に還流する。スプレーの噴射は、圧縮室の圧力が、その最大値よりも低いときに起こるのが普通であるから、この間に十分な噴射を行うことが可能である。圧力が噴射圧力まで上昇し、噴射の流れを切るまでに、十分な液体小滴が既に圧縮室に存在している。よって、圧縮室ピストン112により、液体に冷却循環路を巡らせ、これをスプレー墳射ノズルから噴出させるための手段を、効果的に与えることが可能となる。
低温の圧縮空気は湿気分離器137から復熱器を備えた熱交換器224に流れ、そこで燃焼室119から出た排気ガスにより予熱される。
圧縮室109のピストン112がストロークの上死点に達すると、圧縮ガス排出バルブ204が閉じ、空気吸気バルブ157が開いて、全サイクルが繰り返される。
エンジンが、運動を持続するための大きなフライホイールを有する場合などは特に、圧縮室、燃焼室、及び膨張室におけるピストンの位相角差は、それほど重要ではない。しかしながら、一般に、クランク軸へのトルクを安定させて、これにより作動応力の最小化、なめらかな動きの維持、及び振動の最小化を図ることは望ましいことである。ピストンの位相角差はまた、“ブリージング(breathing)”すなわち、圧縮室から燃焼室への空気の流れや、湿気分離器と熱交換器の圧力のばらつきにも影響を与える。燃焼室のピストンと、圧縮室のピストンとの間の位相角差は、図4の実施例においては約90゜であるが、位相角差は他の具体例において異なっていてもよい。しかし、位相角差の選択は、実際上の経験と種々の測定値に照らし合わせて注意深く最適化を図るべき問題である。
図4の具体例は2つの湿気分離器と2つの熱交換器を有しているが、ヒートエンジンは、これよりも少ない分離器及び/又は熱交換器しか備えておらず、このために、単一の分離器及び/又は単一の熱交換器が、2つ又はそれ以上のシリンダ間で共有される。このようにすれば、これらの構成要素の寸法が小さくなるという利点があり、空気の流れが均等化できて、そのうえコストを減じることが可能となる。
上述した任意の開放系エンジンの別の具体例は、サイクルにターボチャージャを組み込むものであって、石油及びディーゼルエンジンに対して、使用されることが多い。ターボチャージャは、同一のシャフトにロータリコンプレッサとロータリエキスパンダを有している。コンプレッサは、大気圧下の空気の圧力を上げて、それから等温の圧縮室に送る。コンプレッサは、エキスパンダにより駆動することが望ましく、このエキスパンダは、燃焼室の排気ガス排出孔と熱交換器への排気ガス吸入孔との間に設けられている。ターボチャージャの総合的な効果は、圧縮室及び燃焼室の双方におけるガスの平均圧力を上昇させることであり、これにより、同一の寸法のエンジンのなかでは、より大きな動力を有するものである。ターボチャージャを使うとエンジンの効率が少しばかり悪くなる傾向があるが、これは、ロータリコンプレッサとロータリエキスパンダの効率が低いことと、ターボコンプレッサは圧縮を等温的でなく、断熱的に行うということが原因である。しかしながら、効率が悪くなっても、それは、エンジンのサイズを同じにしたままで、大きな出力増加が得られるという事実には勝てないので、ターボチャージャを組み込むことには、魅力があることである。
図4の具体例においては、発電機247を駆動するクランク軸が描かれているが、この他に、エンジンを道路用又は鉄道用の車輪の駆動や、船のプロペラの駆動に使用することも可能である。
また別の具体例においては、ピストンを、クランク軸ではない別の回転機械装置、例えばハイポサイクリックギヤにより連結し、駆動してもよい。
さらに別の実施例においては、燃焼室の燃焼よりも圧縮室の圧縮行程がより遅い速度で起きるようにエンジンを調整することが有利である。換言すれば、単位時間当たり、圧縮サイクルよりも燃焼サイクルのほうが多くなるようにエンジンを調整するのである。これは、圧縮室のクランク軸と、燃焼室のクランク軸との間に適切なギヤ装置を設ければ可能である。もし、エンジンが空気膨張室を有し、サイクルのいろいろな部分において、廃棄熱や過剰熱を回収するならば、空気膨張サイクルの方が、等温圧縮サイクルよりも速いように、エンジンを調節することが可能である。このように調節することの利点は、圧縮行程が常にほどよい速度に保たれ、ガスと液体小滴との間の熱の伝達のために十分な時間を与えるようんする点にある。そうすると、圧縮行程は常にほぼ等温であり、1サイクル当たりの燃焼室からの熱損失が減少して効率が良くなり、エンジンの出力が高くなる。また別の実施例においては、本発明を適用することで、従来の石油、ディーゼル、又はガスエンジンに対して冷却手段を与え、これにより熱を回収し、この熱を有用な仕事に変換することが可能である。その基本的な形態において、この具体例は、圧縮中に液体スプレーを噴射することで等温的にガスを圧縮するための圧縮室と、関連するピストンと、膨張室と、エンジンの出力伝達装置か、別体の動力により駆動される他の伝達装置のいずれかに接続された、ピストンと、等温圧縮室からの低温圧縮ガスをエンジンの熱(さもなくば廃棄される)で予熱するための熱交換器と、予熱された圧縮ガスを膨張室に供給するための手段と、を備えている。熱交換器は、エンジンの燃焼室の壁に形成された通路からなる簡単な構成をしており、この通路によって圧縮気体を循環させ、それから膨張室に送る。この実施例の等温の圧縮室及び膨張室は図4に示されたものと同様あるが、主な違いは、等温的に圧縮された空気はすべて熱の回収のために使用され、その一部だけを使用するのではないという点である。
以上に述べたエンジンのいずれも、容易に、熱と動力装置を組合せた使用のために改変することができる。作業気体として非凝縮ガスを使用すると、凝縮蒸気サイクルよりも、操作温度に関してより広い柔軟性を与えることが可能である。この装置を改変して、発電にだけ使用するときよりも高い温度で熱を放出するようにすることが可能である。
乾燥や暖房、あるいは水の加熱のための低温熱の最大量を生み出すために使用する別のオプションはヒートエンジンにヒートポンプを駆動させることである。エンジンの廃棄熱は、ある程度の低温熱を供給する。さらに、エンジンの機械的な出力によりヒートポンプを駆動し、それによりさらに熱を供給することができる。計算によると、開放系の燃焼駆動型エンジンを使えば、燃料のカロリーという観点から見た場合に消費される熱の2倍の低温熱を生み出すことができる。付加的な熱は、大気、地面、大きな水源などから汲み上げればよい。
高温及び低温の液体スプレー噴射を有するヒートエンジンは、家庭の空間又は商業用の空間と、水の加熱とに非常に適している。しかしながら、より高温で作動するヒートエンジンを設計することも可能である。この型のヒートエンジンの利点は、液体の蒸発と蒸気の凝縮に依存するヒートポンプの場合ほど厳密に特定の温度領域に縛られないという点である。
この分野の当業者にとっては、ピストンの直線運動を駆動軸の回転運動に変換するために機械的方法が他に多く存在することは周知である。液体ピストンが使用され、かつ、機械的伝達装置の一部が、図1及び2に示すようにU字型導管の壁を貫通して延びる駆動軸又は動力伝達軸を有するときは、この壁と往復運動をする駆動軸との間を密閉しなければならない。しかしながら、この場合の欠点は、密閉した部分と駆動軸との間にかなりの摩擦が生じうることである。この摩擦を解消しうる別の例はラックピニオン機構をU字型導管の水平部内に装備するものである。ピニオンは回転可能に、その軸心がピストンの運動方向に垂直となるように取付けられており、ラックは、固体ピストンに適切に組み合わさるか、又は接続されている。ピニオンは回転可能な軸を駆動するように設計され、回転軸は、密閉部を介してU字型導管の壁を貫通して延びており、ピストンの動力を外部に伝達する。液体ピストンの動きに連結されている固体ピストンはU字型導管のアーム部を往復運動するようになっており、複数のこのような固体ピストンが1つのU字型導管で使用する。
また、U字型導管の壁を貫通して延びている駆動軸に回転可能に取りつけられた流体スクリュー、倒えばプロペラやタービンブレードなどをU字型導管に取り付けることにより、ピストンの直線運動を、駆動軸の回転運動に変換することが可能である。この場合は、駆動軸はピストンの運動方向とは平行である。往復運動する駆動軸を2つのサドルループに使用する場合には、1つの圧縮ループの駆動軸を別の膨張ループの駆動軸に連結すればよい。水力学的駆動装置を機械的装置の代わりに使用することも可能である。したがって、上述の場合においては、、サドルループの各結合駆動軸は、外部往復運動ピストンを外部水力学的シリンダ内で駆動し、水力学的液体をポンプで駆動する。2つの結合駆動軸間の位相角差の設定値(例えば90゜)は、水力学的シリンダのバルブの開閉のタイミングをはかることにより達成され、それにより、サイクルのある段階において、どちらの軸も要求される位置からあまり離れ過ぎないようにしている。
液体ピストンを使用するエンジンにおいては、固体フロートを液体ピストンの表面に浮かべるようにする。
以上に述べた具体例を改変することは、当業者にとって容易なことである。

Claims (19)

  1. 圧縮されるガスを含む圧縮室(9,11,109,111)と、この圧縮室における移動により前記ガスを圧縮するための第1ピストン(5,112,114)と、前記第1ピストンを前記圧縮室内に駆動して前記ガスを圧縮するための駆動手段(49,53,169,171)と、ガスが燃焼及び膨張させられる膨張室(17,19,117,119,228,230)と、この膨張室の外部に向かう移動によりガスを膨張させる第2ピストン(7,120,122,224,226)と、前記圧縮室を出た圧縮ガスを前記膨張室に供給する手段(25,27,173,175,177,179)と、前記圧縮室を出た前記圧縮ガスを加熱するための加熱手段(25,27,125,127,174,176,244,246)と、エンジン出力を取り出すために前記第2ピストンに機能的に接続された固体部材を有する伝達手段(51,55,168,169,171)と、圧縮時に前記ガスを冷却するため前記圧縮室(9,11,109,111)において液体噴霧を形成する手段(29,31,129,131)と、前記圧縮室を出る前記圧縮ガスから液体を分離する分離手段(37,39,137,139)と、を備えた内燃機関。
  2. 前記加熱手段が、前記膨張室で膨張したガスの熱により前記圧縮室を出た圧縮ガスを予熱するための熱交換手段(25,27,125,127,244,246)である、請求項1に記載の内燃機関。
  3. 燃焼用のガスが前記圧縮室に入ることを許容する第1バルブ手段(57,59,157,159)と、前記供給手段を介して前記膨張室のガスが前記圧縮室に還流するのを防止する第2バルブ手段(61,63,183,185,204,206)と、を備え、前記熱を付与する手段は、前記膨張室に燃料を供給するための手段(73,75,174,176)を備えている、請求項2に記載の内燃機関。
  4. 前記膨張室に前記燃料を供給する速度を制御する手段を含む、請求項3に記載の内燃機関。
  5. 前記圧縮室から前記膨張室へ流れるガスを制御するバルブ手段(61,63,185,187,204,206)をさらに備える、請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関。
  6. 前記バルブ手段が、圧縮後に前記圧縮室からガスを抜くための出口バルブ手段(204,206)を備える、請求項5に記載の内燃機関。
  7. 前記バルブ手段は、前記加熱手段を出た高温圧縮ガスを前記膨張室へ取り込むための入口バルブ手段(185,187)を備える、請求項5又は6に記載の内燃機関。
  8. 前記駆動手段は、稼働時に前記第1及び第2ピストンが所定の位相角関係で動くようにすべく、前記伝達手段に接続された接続手段(169,171)を備える、請求項1〜7のいずれかに記載の内燃機関。
  9. 前記駆動手段(49,53,169,171)が前記伝達手段(51,55,169,171)に機能的に接続されることにより、前記膨張室のガスの膨張により駆動される前記第2ピストンが前記第1ピストンを前記圧縮室の内部へと駆動できるようになっている、請求項1〜8のいずれかに記載の内燃機関。
  10. 前記駆動手段又は前記伝達手段に機能的に接続されたクランク軸(169)を備えた、請求項8又は9に記載の内燃機関。
  11. 前記第1及び第2ピストン(112,114,120,122,224,226)が固体材料を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の内燃機関。
  12. 前記熱交換手段が復熱型熱交換器(244,246)である、請求項1〜11のいずれかに記載の内燃機関。
  13. 前記分離手段(37,39,41,43,137,139)は前記圧縮室(9,11)の外部に配されている、請求項1〜12のいずれかに記載の内燃機関。
  14. 前記第1ピストン(112,114)に連結された第1クランク軸、及び、前記第2ピストン(120,122,224,226)に連結された第2クランク軸を備える、請求項1〜13のいずれかに記載の内燃機関。
  15. 前記膨張室(117,119)における前記膨張行程を終了するのに要する時間よりも前記圧縮室(109,111)における前記圧縮工程を終了するのに要する時間の方が長くなるように、前記第1クランク軸と前記第2クランク軸との間に連結された伝達装置をさらに備える、請求項14に記載の内燃機関。
  16. 前記第1クランク軸に連結する前記圧縮ピストン(112,114)をそれぞれ有する複数の前記圧縮室(109,111)と、前記第2クランク軸に連結する前記膨張ピストン(120,122,224,226)をそれぞれ有する複数の前記膨張室(117,119,228,230)と、を備える、請求項15に記載の内燃機関。
  17. ガスが前記圧縮室(109,111)へ入ることを許容する第1バルブ手段(157,159)と、前記膨張室(117,119)内のガスが前記供給手段(177,179)を介して前記圧縮室(109,111)へ還流しないようにする第2バルブ手段(185,187)と、前記圧縮室(109,111)へ入る前にガスの圧力を増加させるターボチャージャと、を備えている、請求項1〜16のいずれかに記載の内燃機関。
  18. 前記ターボチャージャは、同一の回転軸に搭載されたロータリコンプレッサおよびロータリエキスパンダを含んでいる、請求項17に記載の内燃機関。
  19. 前記第2ピストン(120,122,224,226)と発電機とを連結する駆動軸(169)をさらに備える、請求項1〜18のいずれかに記載の内燃機関。
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