JP3543944B2 - 高炭素ビスマス硫黄複合快削鋼およびその線材並びにその鋼線 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、環境汚染の原因となる鉛を使用することなく、鉛快削鋼に匹敵する切削性を有する高炭素ビスマス硫黄複合快削鋼およびその線材並びに鋼線に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ウオッチ、自動車のABS、メーター等の精密部品の素材としては高炭素工具鋼が主として用いられてきたが、この高炭素工具鋼は高炭素であるが故に硬く、そのままでは切削性の悪いものであり、この切削性を改善するために従来は鉛を添加した鉛快削鋼が広く用いられてきた。
鉛快削鋼は、微細な鉛を起点として応力集中により切り屑が折れやすく切り屑処理性に優れており、仕上げ面が良好で、また鉛の潤滑効果により切削抵抗が低く、工具の寿命が長いといった特徴を有しており、快削鋼としては理想的なものであるが、近年地球環境保護の機運の高まりから、製造工程、切削工程においてヒュームを発生し人体に害をもたらす可能性のある鉛の使用は制限される方向にあり、その代替鋼の開発が望まれている。
また、鉛快削鋼の欠点として、鉛の鉄に対する溶解度が低いことによって発生する未溶解鉛の鋼中への混入が避けられず、これが切削面に露出すると表面疵となって油漏れの原因となったり、冷間鍛造において割れを発生させる原因となったりする。このような表面疵や割れ等の不良を有する欠陥品が一つでも見つかると数十万個あるいはそれ以上にも及ぶ膨大な数の部品を、一つ一つ人海戦術で選別せねばならずコストアップの大きな要因となっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記した従来の問題点を解決し、鉛を用いることなく、表面品質に優れ鉛快削鋼並みの切削性を有する快削鋼およびその線材並びにその鋼線を提供するためになされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた本発明の精密部品用の高炭素ビスマス硫黄複合快削鋼鋼線は、質量%で、C 0.70〜1.00%、Si 0.35 %以下、Mn 0.30 〜0.80%、S 0.040〜0.090 %、Bi 0.05 〜0.30%を含み、残部鉄および不可避不純物からなり、熱間圧延により製造した鋼線材に、減面率 10 %以上で伸線、引き抜き等の冷間加工を施して鋼線となし、この鋼線に 200 〜 400 ℃でベイキングを施して切り屑が1巻以下の長さで分断するように切り屑処理性を持たせたことを特徴とするものである。
【0005】
なお、コストを抑えつつ良好な表面品質で十分な切削性を確保するためには、S 0.050超〜0.090 %、Bi 0.10 〜0.20%とすることが望ましい。
【0006】
本発明の高炭素ビスマス硫黄複合快削鋼は、S の範囲を 0.040〜0.090 %、Biの範囲を 0.05 〜0.30%とすることによりMnS とBiの相乗効果が発揮されて、従来の鉛快削鋼に匹敵する切削性を有するものとすることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の高炭素ビスマス硫黄複合快削鋼は、質量%で、C 0.70〜1.00%、Si 0.35 %以下、Mn 0.30 〜0.80%、S 0.040〜0.090 %、Bi 0.05 〜0.30%を含むものである。
C が0.70%未満では所望の強度を有する鋼線を得るのが困難であり、C が1.00%を超えると逆に硬くなりすぎて切削性が低下する。従って、C の含有量は0.70〜1.00%とする。
【0008】
Siは脱酸剤として作用し鋼を清浄化するに重要な元素であるが、0.35%までの添加で十分目的を達することができるので、Siの含有量は0.35%以下とする。
Mnは鋼中のS と結合して非金属介在物であるMnS を形成し、靱性を向上させるとともに切削性を向上させるが、Mnが0.30%未満ではその効果が小さく、一方Mnが0.80%より高くなると鋼が硬くなって切削性が低下することになるので、Mnの含有量は0.30〜0.80%とする。
【0009】
S はMnS を形成し切削性を向上させるのに有効な元素であるが、S が0.040 %未満では切削性を十分向上させることができない。一方、0.090 %を超えると非金属介在物の量が多く靱性の低下が大きくなって機械部品には適さない。従って、S の範囲は 0.040〜0.090 %とする。なお、望ましくは0.050 超〜0.090 %の間とすることによって、良好な切削性と靱性を兼ね備えたものを得ることができる。
【0010】
Biは融点が271 ℃と鉛より約50℃低く、切削温度において容易に溶融して、切り屑処理性を改善し、その潤滑作用により切削工具の寿命を延長する。しかし、その量が0.05%未満では切削性を向上させる効果が低い。一方、Biは高価な元素であり、0.30%を超えて添加してもその効果は飽和するとともに、表面疵の発生が多くなるので、Biの範囲は、0.05〜0.30%とする。なお、望ましくはBiの範囲を0.10〜0.20%とすることによって、製造コストを低く抑えつつ良好な切削性を有する快削鋼を得ることができる。
以上の元素のほかに、鋼にはP,Cu,Ni,Cr,Sn 等の不可避不純物を含有する。
【0011】
本発明の高炭素ビスマス硫黄複合快削鋼は、転炉、電炉等の溶解炉により溶製され、連続鋳造法または造塊法により鋳片となして、必要により分塊を施した鋼片を熱間圧延によりφ5.0 〜13mmの線材として市場に提供することができる。
そして、この線材を用いて減面率10%以上の伸線、引き抜き等の冷間加工により抗張力が800 〜1300N/mm2 である鋼線として市場に提供することができる。冷間加工における減面率は10%以上でない場合には、鋼線に十分な真円度を与えることができず、また加工硬化も小さい。なお、冷間加工の手段として、伸線、引き抜きのほかに押し出し、回転鍛造等の手段も用いることができる。
また、鋼線の抗張力が800N/mm2未満の場合には製造部品に十分な耐摩耗性を付与することができず、一方、抗張力が1300 N/mm2を超えると切削、穴明け等の機械加工が困難になる。従って、鋼線の抗張力は800N〜1300 N/mm2にするのが望ましい。鋼線径が細く冷間加工による加工硬化によって鋼線の抗張力が1300N/mm2 を超えるような場合には、冷間加工の途中で必要に応じて軟化焼鈍を施し、抗張力を所望の範囲内に調整するものとする。
【0012】
さらに、鋼線には 200〜400 ℃でベイキングを施して、切削性、特に切り屑処理性を向上させた鋼線として市場に提供し、部品加工に供することができる。最近の自動盤による切削においては、機械により無人運転されるため、切り屑が長く繋がって絡まってしまうと機械の停止、人手による切り屑の除去作業の必要を生じ、生産性が低下することになる。よって送り速度が小さい等の切り屑の繋がりやすい条件下で切削を行う場合には、ベイキングを施すことが有効である。ベイキングによって冷間加工によって導入された可動転位をCやN原子によって固着し不動転位とすることによって、鋼が脆化して切り屑が折れやすくなり、切り屑処理性を改善することができる。しかしベイキングの温度が200 ℃未満では転位の固着効果が十分でなく、一方400 ℃を超えるとCやN原子が炭化物、窒化物となって成長し、転位の固着効果が弱くなって切り屑処理性が低下する。従って、ベイキングの温度は200 〜400 ℃とする。
【0013】
以下に実施例に基づき本発明を詳細に説明する。
表1に示す化学成分の鋼を電炉にて溶製し、連続鋳造後鋼を分塊圧延して150mm角の鋼片を製造した。この鋼片を1050℃に加熱して、φ7mmの線材に熱間圧延した。その後表面の酸化スケールを酸洗により除去したのち引き抜き、軟化焼鈍を繰り返してφ2.5×2000mm長さの鋼線を製造した。(総減面率87%) また、鋼線のうちの一部のものについてベイキングを施した。これらの鋼線について抗張力、表面疵、切削性を調査し、その結果を表1に併記した。表中の表面疵指数とは鋼線の表面の0.05mm以上の深さの大きな表面疵を磁気探傷装置により探傷し、表面疵の多かったNo.10 を表面疵指数100 として、他の鋼線の表面品質を示した。
また、切削性指数とは鋼線を自動盤にて切削し、工具の逃げ面摩耗が一定値に至るまでの加工量で評価し、加工量の最も少なかったNo.9を基準値1とした時の比較値で示した。
また、切り屑処理性については、切り屑が1巻以下の長さで分断しているものを◎、3巻未満を○、3巻以上に連続したものを×として評価した。
【0014】
【表1】
【0015】
表1において、No.9の比較例は、Biを含まず、S も本発明の範囲より低いものであり、このため切削性指数が低く、切り屑も3 巻き以上に繋がって切り屑処理性の劣るものであった。
No.10 の比較例は、S が本発明の範囲より高く、このため大きなMnS が多量に形成されて鋼の延性を低下し、表面疵発生の多いものであった。
また、No.11 の比較例は、Biが本発明の範囲より高く、このためやはり鋼の延性が低下し、表面疵指数は81とNo.10 よりは低いものの不良なものであった。
【0016】
これに対しNo.1〜8 の実施例においては、化学成分、鋼線の抗張力が本発明の範囲内にあり、このため深さ0.05mm以上の大きな表面疵の発生はNo.10 に比較して大幅に減少させることができ、また、切削性指数、切り屑処理性もNo.9に比較して大幅に改善することができた。
なお、No.12 は従来の鉛快削鋼の例であり、鉛含有量が比較的高いために未溶解鉛が混入して表面疵指数が110 と悪いものであった。
【0017】さらに、No.7の鋼をφ5.5mm の線材に熱間圧延し、引き抜き−焼鈍を繰り返して抗張力1000〜1100 N/mm2のφ1.05〜1.20mm鋼線を製造した。これを用いてウオッチの二番車〜五番車を自動盤切削により製造したが、切り屑が絡まることも無く、従来鉛快削鋼と同等の工具寿命で部品を製造することができた。
【0018】
本発明の高炭素ビスマス硫黄複合快削鋼は、S の範囲を 0.040〜0.090 %、Biの範囲を 0.05 〜0.30%とすることにより MnSとBiの相乗効果が発揮されて、従来の鉛快削鋼に匹敵する切削性を有するものとすることができる。
【0019】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、有害な鉛を用いることなく、表面品質および切削性ともに優れた快削鋼およびその線材並びにその鋼線を得ることができる。
Claims (2)
- 質量%で、C 0.70〜1.00%、Si 0.35 %以下、Mn 0.30 〜0.80%、S 0.040〜0.090 %、Bi 0.05 〜0.30%を含み、残部鉄および不可避不純物からなり、熱間圧延により製造した鋼線材に、減面率 10 %以上で伸線、引き抜き等の冷間加工を施して鋼線となし、この鋼線に 200 〜 400 ℃でベイキングを施して切り屑が1巻以下の長さで分断するように切り屑処理性を持たせたことを特徴とする精密部品用の高炭素ビスマス硫黄複合快削鋼鋼線。
- S 0.050超〜0.090 %、Bi 0.10 〜0.20%とした請求項1記載の精密部品用の高炭素ビスマス硫黄複合快削鋼鋼線。
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