JP3534083B2 - マルテンサイト系ステンレス鋼板とその製造方法 - Google Patents

マルテンサイト系ステンレス鋼板とその製造方法

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JP3534083B2
JP3534083B2 JP2001111546A JP2001111546A JP3534083B2 JP 3534083 B2 JP3534083 B2 JP 3534083B2 JP 2001111546 A JP2001111546 A JP 2001111546A JP 2001111546 A JP2001111546 A JP 2001111546A JP 3534083 B2 JP3534083 B2 JP 3534083B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、300 ℃〜600 ℃の
中温域で使用あるいは加工される際に、優れた強度を示
し、かつ、打ち抜き加工される場合の端面割れ感受性が
小さいマルテンサイト系ステンレス鋼板とその安価な製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、マルテンサイト系ステンレス
鋼板は、その優れた耐食性、焼き入れ性、耐摩耗性等の
観点から、器物、洋食器、刃物、船舶等のタービン、ス
クリュー等の部材として広く使用されている。
【0003】しかしながら、近年は使用材料のコストダ
ウンおよび機能性の観点から、従来フェライト系ステン
レス鋼板やオーステナイト系ステンレス鋼板あるいはア
ルミキルド鋼板が使用されるような用途においても、マ
ルテンサイト系ステンレス鋼板が使用される事例が増え
てきている。
【0004】例えば、エキゾーストマニホールドやマフ
ラーのような自動車排気ガス系統の材料は、800 ℃を越
えるような高温環境、また、結露等による湿式環境で使
用されるために優れた耐酸化性、耐高温腐食性、耐腐食
性が要求され、従来はおもにフェライト系ステンレス鋼
板やオーステナイト系ステンレス鋼板が使用されてい
る。
【0005】エキゾーストマニホールド、コンバータケ
ースおよびマフラーのような自動車排気ガス系の部材
は、各パーツごとに板状のステンレス材料をプレス成型
あるいはロールフォーミング等で加工し、つなぎ部をカ
シメや溶接で接合しパイプ状に成形されるのが一般的で
ある。このようなパイプ状部材の一端には、いわゆるフ
ランジと呼ばれる板状の金具が溶接等で接合される。フ
ランジにはパイプ状部材を接合するために、パイプの外
径に相当する穴が打ち抜きあるいは切削等により作成さ
れており、それ以外に、ボルトを通すための穴が通常2
箇所以上作成されている。エキゾーストマニホールドと
フロントパイプ、あるいはコンバータとセンターパイプ
等のパイプ状のパーツは、各フランジ同士を重ね合わせ
ることにより、ボルト等で機械的に接合することが可能
となる。
【0006】このようなフランジに使用される金属材料
は、使用温度域が300 〜600 ℃と排気ガス材本体に比べ
ると低温で、また、結露等の影響も少なく、腐食環境も
排気ガス材本体に比べ緩いため、フェライト系ステンレ
ス鋼板やオーステナイト系ステンレス鋼板よりも安価な
マルテンサイト系ステンレス鋼板が使用され、材料コス
トの低減が図られている。
【0007】このように、フランジ部はパイプ状に成形
された自動車排気ガス部材を機械的に接合するためのも
のであるが、その接合は必ずしも直線的な接合形態 (フ
ランジとパイプの各軸心が直線的に一列になる配列) で
はなく、常温でもフランジ部に曲げ応力や各部材の自重
等、何らかの応力が加わった状態となっている。これが
自動車に組み込まれると、フランジ部には先に述べた応
力以外に、自動車が走行、停止する度に繰り返しの熱応
力が加わり、さらに、エンジンの振動等による応力が加
わることになる。従って、このようなフランジ材は、30
0 〜600 ℃の温度域で様々な応力が加わっても、それに
十分耐え得るための材質でなくてはならない。
【0008】すなわち、フランジ材料に求められる最も
重要な性能は、使用される温度域での強度、すなわち30
0 〜600 ℃のいわゆる中温域での材料強度である。この
温度域での材料強度が弱いと、走行中にフランジ部が座
屈あるいは変形し、部分的に排気ガスが漏れ、局部的な
温度上昇によるフランジ材料の酸化、および隙間腐食に
よるフランジ材料の腐食等の不具合が発生する恐れがあ
る。そのために、構造面からの対策として、接合部の強
度を確保するためにフランジ材料の板厚は4mm〜8mm、
通常は6mm以上の厚肉材が用いられている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、最近に
なり、このような自動車排気ガスのフランジ材料に対
し、さらに高いレベルの強度を確保するような要求がな
されるようになってきた。すなわち、材料歩留まりの向
上あるいは自動車の軽量化の観点から、フランジ材料の
薄肉化が要求されるようになってきており、それに伴い
中温域の強度が現状よりさらに高い材料に対する要求が
高まってきている。
【0010】一般的に、中温域の強度は常温での材料強
度にほぼ比例する傾向があるため、対策としては単純に
常温での強度を増加させる方法が良いと考えられる。と
ころで、これまでに説明してきたようなマルテンサイト
系ステンレス鋼板の一般的な製造方法は、次のような工
程(i) 〜(iv)から成る。 (i) 所定の合金元素を添加し成分調整した溶鋼を連続鋳
造にてスラブとする。 (ii)このスラブを所定の加熱条件、圧延条件にて熱間圧
延を行い、所定板厚の熱間圧延鋼帯とする。 (iii) 得られた熱間圧延鋼帯を焼きなます目的で箱形焼
鈍炉で700 ℃以上の温度範囲で熱処理を行う。 (iv)熱処理後、酸洗により表面スケールを除去し、必要
により所定寸法までスリットを行い製品として出荷す
る。
【0011】前述のように300 ℃〜600 ℃の中間温度範
囲( 単に中温域ともいう) において、優れた材料強度を
保持する、すなわち、常温においてもある一定レベルの
材料強度を有するためには、工程(iii) の熱処理工程
は、材料の強度を決定する上で極めて重要な位置づけと
なるものである。
【0012】一般的に、マルテンサイト系ステンレス鋼
板のようにAc1 変態点を有する材料は、その熱延板の焼
鈍を高純度フェライト系ステンレス鋼板やオーステナイ
ト系ステンレス鋼板のように連続ラインにて短時間で行
うことはできない。焼きなましが不完全となるためであ
る。そのため、上述の工程(iii) に示されるような箱形
焼鈍を行うことは現在常套的に用いられる手段である。
【0013】通常、このような用途に用いられるマルテ
ンサイト系ステンレス鋼板は、製造コスト、焼鈍炉の設
備寿命あるいは焼鈍後の材料強度の観点から、700 〜85
0 ℃の温度範囲で4〜8時間の長時間焼鈍が施されるの
が一般的である。従って、常温においてある一定以上の
材料強度を有するためには箱形焼鈍における焼鈍温度あ
るいは焼鈍時間を現行より低温かつ短時間側へシフトさ
せれば良いと考えられる。
【0014】しかしながら、このような条件にて焼鈍を
行った場合、得られたマルテンサイト系ステンレス鋼板
の幅方向および長手方向での材料特性の差が非常に大き
くなり、場合によっては、一般的に許容できる範囲の強
度を超える可能性があることが判明した。
【0015】すなわち、熱間圧延により得られた熱間圧
延鋼板は、通常の工業レベルであれば8ton 〜18ton と
非常に容量の大きなものとなり、このような大容量の鋼
板を、箱形焼鈍炉にて低温短時間焼鈍を行うと、鋼板の
幅方向および長手方向で到達温度と保持時間が従来以上
に不均一となり、そのために焼鈍後の鋼板内の材料特性
差は非常に大きくなる。
【0016】特に、一般の普通鋼と比較して熱伝導性に
劣るステンレス鋼板の場合は、鋼板内の部位による温度
差が非常に大きくなる傾向にある。このような鋼板内の
特性差は箱形焼鈍炉において、焼鈍温度等を変更しても
容易に回避できるものではない。
【0017】また、焼鈍条件を変更させずに焼鈍後の材
料強度を大きくする手法として、熱間圧延条件の変更に
より熱間圧延鋼板自体の強度を上昇させるという方法も
考えられる。このためには、熱間圧延での加熱温度、仕
上げ温度あるいは巻き取り温度を現行より低温とするこ
とにより、熱間圧延鋼板の転位密度が増加し、従来と同
様の焼鈍条件でも焼鈍後の強度が上昇するという考え方
が一般的であるが、熱間圧延の加熱温度や仕上げ温度等
を低温化すると、鋼板表面にスリキズやカキキズ等の表
面欠陥が発生する確率が高くなり、そのような表面欠陥
が発生すると鋼板表面を研削する等により表面欠陥を除
去する必要があるため、材料歩留まりあるいは工程増の
観点から好ましくない。
【0018】このような問題を解決する手段として、例
えば、特開平9−249942号公報に、Ac1 点+100 ℃以上
1200℃以下のフェライト+オーステナイトの二相域温度
に加熱・保持した後100 ℃以下の温度まで冷却する方法
が開示されている。このとき得られる材料は、実質的に
フェライト相とマルテンサイト相からなり、450 〜500
℃の中温域において高い耐力を示す複相ステンレス鋼で
あり、これをアパーチャーフレーム用として用いるとい
うのである。
【0019】この公報の開示する発明は、テレビフレー
ム用の母材に関するもので、フランジ部材料と同様に中
温域での強度が要求される用途であり、箱形焼鈍炉にて
焼鈍を行っていないため、鋼板内の特性差が発生しな
い。
【0020】確かに、上記公報に示される方法であれ
ば、中温域での強度は非常に優れるものとなるが、しか
しながら、組織的に軟質なフェライト相と硬質なマルテ
ンサイト相の複合組織となっているので上記のアパーチ
ャーフレームおよびフランジ材の加工工程、特に打ち抜
き加工を採用する場合において、下記に示されるような
不具合を生じる恐れがある。
【0021】すなわち、アパーチャーフレーム材と同様
に、自動車排気ガス材の接合用に使用されるフランジ材
は、通常、母材を切削あるいはレーザーカットあるいは
打ち抜きにより所定の寸法形状とされる。フランジ材
は、さらに所定のパイプ接合用、ボルト貫通用の穴を切
削あるいはレーザーカットあるいは打ち抜き等により作
成される。この製造工程において、比較的安価に設備導
入できることや、生産性の観点から、打ち抜きによる製
造が一般的であるがこのような打ち抜き加工を行う場
合、特開平9−249942号公報に示されるような、母材中
に硬質なマルテンサイト相が存在する材料であれば、打
ち抜きの金型の摩耗が早く、金型手入れや金型交換の頻
度が増え、経済性および生産性阻害の要因となる。
【0022】また、打ち抜きによる剪断加工の破断面に
おいて、材料が破断する際にフェライト相とマルテンサ
イト相の界面に応力集中し、その界面から割れが生ずる
という、いわゆる端面割れが発生する可能性が高くな
る。
【0023】実際に、従来の製造方法で製造されるマル
テンサイト系ステンレス鋼板においても打ち抜きを行う
場合、この端面割れはしばしば発生するものである。従
来、マルテンサイト系ステンレス鋼板は、特に材料強度
の確保の観点から、700 ℃〜850 ℃の温度範囲で4〜8
時間の長時間焼鈍が施されるのが一般的であることは先
に説明したとおりである。このようにして得られたマル
テンサイト系ステンレス鋼板は、鋳込み時のスラブ段階
から残存しているフェライト組織と、熱間圧延後の冷却
過程で生成したマルテンサイト相が焼鈍によりフェライ
トと炭化物に分解したフェライトと炭化物の層状組織と
なっているのが特徴である。そして、このように層状組
織となる材料は、打ち抜き加工を行う場合の端面割れ感
受性が高く、これは高温長時間熱処理することにより改
善されることが明らかになってきている。すなわち、熱
延板焼鈍を従来よりもより高温長時間側で行うことによ
り、層状組織が整粒組織に変化し、端面割れが抑制され
る傾向となるものである。
【0024】しかしながら、このような整粒化組織を有
するマルテンサイト系ステンレス鋼板の場合、焼鈍後の
常温母材特性が著しく軟質化するために、中温域での強
度も大きく劣化してしまう。
【0025】また、マルテンサイト系ステンレス鋼板の
打ち抜き時の不具合に関する知見としては特開平10−25
9458号公報に、冷間圧延母材および冷間圧延圧下率を適
宜調整することを特徴とする、打ち抜きだれの少ないマ
ルテンサイト系ステンレス鋼板が開示されているが、こ
のような方法では本発明における打ち抜き時の端面割れ
は改善されるものではなくまた、冷間圧延の実施を前提
としているため、本発明におけるマルテンサイト系ステ
ンレス鋼板に適用すると工程が増え、製造コストが増す
ために好ましくない。
【0026】従って、従来要求される以上に優れた中温
域の強度をコイル間でバラツキがなく安定して確保で
き、かつ、打ち抜き加工を行う場合に上記のような端面
割れ等の加工時の不具合が発生しないという、相反する
性能を共に満足するマルテンサイト系ステンレス鋼板は
今だ得られていないのが現状である。
【0027】ここに、本発明の目的は、300 〜600 ℃の
中温域での強度に優れかつ端面割れ感受性を緩和したマ
ルテンサイト系ステンレス鋼板とその製造方法を提供す
ることである。
【0028】さらに本発明の別の目的は、従来得るこの
とできなかった、コイル間でのバラツキが小さく安定し
た中温域強度を有し、かつ、打ち抜き割れ感受性が小さ
いマルテンサイト系ステンレス鋼板およびその製造方法
を提供することである。
【0029】
【課題を解決するための手段】先に示したとおりの相反
する性能を共に確保するために、本発明者らは中温域で
の強度を安定して確保すべくマルテンサイト系ステンレ
ス鋼板の化学組成と熱処理条件について各種検討を重ね
た結果、下記の結論を得るに至った。 (1) マルテンサイト系ステンレス鋼板の化学組成を一定
範囲内で調整することにより、従来の箱形焼鈍のような
長時間焼鈍を施さなくても、比較的短時間で焼きなまし
が可能となる。 (2) そのような短時間の焼鈍を施したマルテンサイト系
ステンレス鋼板は、従来の箱形焼鈍炉で焼鈍したものと
比較して、高い強度レベルを確保することができる。
【0030】すなわち、従来のマルテンサイト系ステン
レス鋼板はAc1 変態点を有するために連続ラインでの短
時間焼鈍は、(i) 焼きなましが不十分となり材料が使用
に耐え得るほど軟化しない恐れがあり、(ii)Ac1 変態点
を超える温度で焼鈍を行った場合、その後急冷されるの
で焼きが入った状態となり、材料強度が著しく上昇す
る、等の理由で困難であった。しかし、本発明者らは、
合金元素を一定範囲内で調整することにより、Ac1 変態
点以下の温度で焼鈍を行っても、十分焼きなましできる
ことを見出したのである。
【0031】このように成分調整されたマルテンサイト
系ステンレス鋼板は、従来の箱形焼鈍炉を用いずとも、
連続焼鈍酸洗ラインでの焼きなましが可能となるため、
従来よりもコイル間の強度バラツキが小さく、かつ、従
来よりも高い強度レベルを確保することができるもので
ある。
【0032】次に、本発明者らは打ち抜き加工時に発生
する端面割れについて、その発生メカニズムを明確にす
るために鋭意研究を行い、下記の結論を得るに至った。 (1) 熱延板焼鈍後に層状組織を有するマルテンサイト系
ステンレス鋼板の組織観察を詳細に行ったところ、組織
的に不均一な箇所が存在する。すなわち、結晶粒が大き
く炭化物の析出密度が小さい結晶粒と、結晶粒径が細か
く炭化物の析出密度が大きい結晶粒が隣接する部分が存
在することを確認した。 (2) 端面割れは、上述のような形態の異なる結晶粒界に
沿って優先的に発生する傾向がある。 (3) 組織的な不均一は母材の熱延板焼鈍より前の履歴に
起因する。すなわち、凝固の段階からフェライト組織で
あるものは熱延板焼鈍後に結晶粒が大きく炭化物の析出
密度が小さい結晶粒となり、熱間圧延中にオーステナイ
ト相で熱間圧延後の冷却中にマルテンサイト相となった
ものが熱延板焼鈍後に結晶粒径が細かく炭化物の析出密
度が大きい結晶粒となる。
【0033】つまり、従来の層状組織を有するマルテン
サイト系ステンレス鋼板の組織的な不均一は、凝固段階
からのフェライト組織と旧オーステナイト組織の差に起
因するものであり、従来行われている熱延板焼鈍条件で
は、旧オーステナイト組織が変態したマルテンサイト相
がその場で細かなフェライトと炭化物に分解するのみ
で、その後の結晶粒の成長および炭化物の拡散等の観点
からいえば、温度、時間とも不十分で、熱延板焼鈍後に
おいても凝固あるいは熱間圧延時の影響がそのまま残存
している状態なのである。
【0034】そして、このように焼鈍以前の履歴が残っ
た組織では結晶粒単位でその強度が異なり、その結果、
端面割れ感受性が非常に高くなっているのである。すな
わち、結晶粒が粗な凝固の段階からフェライト組織は強
度が低く、結晶粒が細かい旧オーステナイト組織 (冷却
過程でマルテンサイト相となり焼鈍時にフェライトと炭
化物に分解した箇所) では強度が高いため、その結晶粒
界に剪断応力が集中し、結晶粒界に沿って割れが発生
し、そのような結晶粒界に割れが伝播してマクロ的な端
面割れとなることを確認したのである。
【0035】従って、温度、時間ともに十分確保して焼
鈍を行えば組織的な不均一が解消され均一なフェライト
整粒組織となるために端面割れは抑制される。しかしな
がら、このような方法であれば中温域の強度が大きく損
なわれてしまうことは先に述べたとおりで有効な解決策
とはならない。
【0036】そこで、本発明者らはマルテンサイト系ス
テンレス鋼板の成分、熱処理条件、およびその後の組織
に加え、熱処理後の結晶粒界の結合強度という観点でさ
らに詳細な検討を行った結果、鋼中に含まれるCがある
程度鋼中に固溶された状態で存在すれば結晶粒界の結合
力が強化し、端面割れに対し非常に効果的であることを
見出した。
【0037】鋼中にCが固溶した状態とするためには熱
延板の焼鈍後の冷却速度を早めることが必要であり、通
常行われる連続焼鈍酸洗ラインでの冷却速度の程度であ
れば、十分Cを鋼中に固溶状態で残存させることができ
る。
【0038】すなわち、マルテンサイト系ステンレス鋼
板の成分を一定範囲に調整することにより、従来できな
かった連続焼鈍酸洗ラインでの焼鈍が可能となり、従来
法より高い強度レベルをコイル間でのバラツキを押さえ
安定して確保することができ、かつ、鋼中にCが固溶状
態で残存しているために結晶粒界の結合力が強化され、
打ち抜き時の端面割れ感受性も小さくなることを見出し
たのである。
【0039】本発明は、このような知見を基に得られた
ものでありその要旨は下記のマルテンサイト系ステンレ
ス鋼板とその製造方法にある。 (1)質量%で、C:0.02%以上0.10%以下、Si:1.0 %
以下、Mn:0.05%以上1.0 %以下、S:0.01%以下、
P:0.1 %以下、Cr:10.5%以上13.5%以下、N:0.05
%以下を含有し、さらにTi:0.1 %以下、Al:0.1 %以
下、およびNb:0.1 %以下の少なくとも1種以上、なら
びにMo:0.02%以上1.0 %以下を含有し、残部がFeおよ
び不可避的な不純物から成る化学組成を有し、組織的に
フェライトと炭化物からなり、下記MP値が−18 ≦MP≦
−7の範囲を満足することを特徴とする中温域の強度に
優れるマルテンサイト系ステンレス鋼板。
【0040】MP(%)=180[C(%)+N(%)]+3Mn(%)+6Ni(%)-3S
i(%)-2Cr(%)-2Mo(%)-Nb(%) (2)前記化学組成が、さらに質量%で、Ni:0.01%以上
0.5 %以下を含有する上記(1) 記載のマルテンサイト系
ステンレス鋼板。
【0041】(3)前記化学組成が、さらに質量%で、Ca:
0.0005 〜0.005 %、Mg:0.0005 〜0.005 %、La:0.0
02 %〜0.05%、Ce:0.002 %〜0.05%、およびY :0.00
2%〜0.05%から成る群から選んだ少なくとも1種の元
素を含有する上記(1) または(2) 記載のマルテンサイト
系ステンレス鋼板。
【0042】(4)前記化学組成が、さらに質量%で、
B:0.0001%〜0.010 %、V:0.02%〜0.30%、および
W:0.02%〜1.0 %から成る群から選ばれた少なくとも
1種の元素を含有する上記(1) ないし(3) のいずれかに
記載のマルテンサイト系ステンレス鋼板。
【0043】(5)下記A1値がA1値≧20(MPa) を満足する
範囲で固溶Cを含有することを特徴とする中温域の強度
に優れかつ打ち抜き割れ感受性に優れる上記(1) ないし
(4) のいずれかに記載のマルテンサイト系ステンレス鋼
板。
【0044】A1値=YSAGE −MSRT8% YSAGE :8%引張歪み+300 ℃×30分熱処理した後の耐
力 MSRT8%:常温で8%引張歪みを付与したときの材料強度 (6)上記(1) ないし(4) のいずれかに記載の化学組成を
備えた熱延板に、600 ℃以上、Ac1 変態点を越えない温
度範囲で熱間圧延板焼鈍を施し、その後500 ℃まで5℃
/sec以上の冷却速度で冷却することを特徴とするマルテ
ンサイト系ステンレス鋼板の製造方法。
【0045】
【発明の実施の形態】本発明についてさらに詳細に説明
するが、以下の化学組成の%表示は特に規定のない限り
質量%を意味する。
【0046】(鋼板の組成)C:Cは強度および粒界の結
合力を強化させる重要な元素である。端面割れの抑制お
よび中温域での強度を確保するためには0.02%以上の添
加量が必要である。
【0047】しかしながら、0.10%を越えて含有すると
鋼の耐食性が劣化するために好ましくない。したがっ
て、Cの含有量の上限は0.10%以下に規定される。好ま
しいC含有量は0.03%以上0.08%以下である。
【0048】Si:Siは鋼の脱酸剤として有効な成分であ
り、鋼の耐酸化性を向上させる。しかし、1.0 %を越え
ると添加量の増加とともに硬くなり加工性が劣化するこ
とから、Si含有量は1.0 %以下と定めた。好ましくは、
0.8 %以下である。Mn:Mnは鋼の脱酸作用があるので0.
05%以上1.0 %以下の範囲で含有させる。含有量が0.05
%に満たないと鋼の脱酸が不十分となり、清浄性が劣化
するのでMn含有量は0.05%以上とした。また、1.0 %を
超えると発錆や孔食の起点となり耐食性が低下するだけ
でなく、鋼のコストが高くなり、経済面で不利となるの
で1.0%以下に規定される。好ましくは、その下限は0.1
%であり、上限は、0.8 %である。
【0049】S:Sは発錆や孔食の起点となり耐食性を
劣化させるためできるだけ低い方が好ましい。0.01%を
越えて含有すると耐食性が劣化するので上限を0.01%と
した。
【0050】P:鋼の耐食性、靱性を低下させるためで
きるだけ低い方が望ましい。0.1 %を越えて含有させる
と加工性が劣化するためP含有量を0.1 %以下とした。
Cr:Crは耐食性、耐酸化性を維持するための主要成分で
ある。Cr含有量の増加とともに耐食性や耐酸化性が向上
する。鋼に所望の耐食性を確保するには10.5%以上の含
有量が必要である。好ましくは、11%以上である。13.5
%を超えて含有させるとコストの上昇を招くため上限を
13.5%とした。好ましくは、13%以下である。
【0051】Ni:Niは鋼の靱性を改善させるために必要
に応じて添加させる。靱性改善効果を安定して得るため
には0.01%以上添加する。しかしながら、0.5 %を超え
て添加すると、鋼のコスト上昇を招くため上限を0.5 %
とした。好ましくは、0.4 %以下である。
【0052】N:Nは鋼の強度を上昇する効果がある
が、0.05%を越えて含有させると鋼の耐食性が劣化す
る。そのため上限を0.05%とした。好ましくは、0.03%
以下である。
【0053】Ti、Nb、Al:これらの元素は、強度改善の
ために少なくとも1種添加される。これらの元素は、C
やNと結合し、析出物として鋼中に析出する。これらの
析出物が析出することにより鋼の強度が上昇し、中温域
での強度が確保できる。
【0054】しかしながら、それぞれ単独で0.1 %を越
えて含有すると鋼のコストが上昇するだけでなく、鋼中
の固溶CやNが析出物として過剰に析出し結晶粒界の結
合力が低下し打ち抜き時の端面割れ感受性が高くなるた
めに好ましくない。従って、それぞれの元素の上限を0.
1 %とした。
【0055】Mo:Moは中温域での強度を上げるために添
加される。また、MoはP化物を生成し強度を高める性質
も持つ。その効果を安定して発揮するには0.02%以上添
加する。好ましくは、0.1 %以上である。ただし、Moは
高価な合金元素であり、コスト上昇を抑える観点からそ
の上限を1.0 %とした。好ましくは、0.8 %以下であ
る。
【0056】その他の成分元素については本発明におい
て特に規定されるものではないが、熱間加工性を高める
ためには、Ca、Mg、La 、Ce、Y の元素の1種または2
種以上を添加しても良く、また、強度改善のためには、
B、V、Wの元素の1種または2種以上を添加しても良
い。特に、Bは結晶粒界の強度を上昇させるため端面割
れ抑制に有効であるし、V、Wは中温域での強度をより
安定に確保するために有効である。
【0057】それぞれの好適な含有量は、Ca、Mgそれぞ
れ:0.0005〜0.005 %、La、Ce、Y それぞれ:0.002
%〜0.05%であり、またB:0.0001%〜0.010 %、V:
0.02%〜0.30%、W:0.02%〜1.0 %である。
【0058】(MP値)MP 値はマルテンサイト系ステンレ
ス鋼板の組織的な安定度を示す指標であり次式で表さ
れ、本発明においては−18≦MP≦−7 の範囲を満足する
ように鋼組成が調整される。
【0059】MP(%)=180[C(%)+N(%)]+3Mn(%)+6Ni(%)-3S
i(%)-2Cr(%)-2Mo(%)-Nb(%) MP値が−18より小さいと材料が軟化する傾向にあり十分
な中温域強度を確保することが困難になる。また、MP値
が−7より大きくなると、材料の強度が著しく上昇する
ために好ましくない。従って、MP値は−18以上−7以下
の範囲に規定した。好ましいMP値は−16以上−8以下で
ある。
【0060】(A1値)A1 値は鋼中の固溶C量を簡易的に
表す指標であり、本発明においては、鋼に常温で8%の
引張歪みを付与したときの材料強度 (MSRT8%) と、その
後、時効熱処理を施した後の引張耐力 (YSAGE ) の差
(YSAGE −MSRT8%) で表される。時効熱処理の条件は、
本発明において特に規定されるものではないが、200 ℃
〜400 ℃の温度範囲で10分〜1時間程度の保持時間で実
施するのが一般的である。
【0061】すなわち、時効温度は8%の引張りにより
付与された転位に確実に固溶Cを固着させるため200 ℃
以上が適当であり、転位の回復を抑制するために400 ℃
以下の温度域で行われ、この温度範囲において、転位に
確実に固溶Cを固着させるために10分〜1時間、好まし
くは20分〜1時間の保持時間となるものである。
【0062】この条件を外れると固溶C量の測定値とし
ての精度が劣化することが知られているために、本発明
においては、時効熱処理条件は300 ℃×30分の条件とし
た。このような条件を用いて測定されたA1値=YSAGE
MSRT8%の値が大きくなれば鋼中の固溶C量が多く、端面
割れ抑制や中温域での強度上昇に有効であるといえる。
【0063】本発明においてさらに改善された効果を得
るにはA1値を20Mpa 以上とする。好ましくは30Mpa 以上
である。このように優れた効果を奏する本発明にかかる
マルテンサイト系ステンレス鋼板を製造するには、例え
ば、すでに述べたように連続鋳造、熱間圧延という慣用
手段によってスラブ、熱延板を製造してから次のような
熱延板焼鈍および冷却を行えばよい。
【0064】(熱延板焼鈍)熱延板焼鈍は、600 ℃以上Ac
1 変態点を超えない温度範囲で行う。600 ℃に満たない
温度域で焼鈍を行うと、鋼の再結晶が行われず焼鈍後の
鋼の強度が著しく高いため加工性が劣化する。また、Ac
1 変態点以上の温度範囲で焼鈍すると、その後の冷却工
程でマルテンサイト相が生成し、打ち抜き時に端面割れ
が発生する。好ましい温度範囲は700 ℃以上Ac1 変態点
−30℃以下である。
【0065】また、本発明において、鋼の熱延板焼鈍の
時間はとくに規定されるものではないが、実際の生産レ
ベルでは通常、在炉10分以下と、従来に比べて極めて短
時間の焼鈍温度となる。
【0066】(冷却速度)熱延板焼鈍が終了してから500
℃まで5℃/sec以上の冷却速度で冷却する。冷却速度は
5℃/sec以上に規定される。5℃/secに満たない緩冷却
であれば鋼中に固溶したCが炭化物として析出してしま
うため、端面割れ抑制に効果がなく、中温域での強度も
低下してしまう。好ましい冷却速度は10℃/sec以上であ
る。本発明において冷却速度の上限は特に制限されない
が、実用上の観点からは、30℃/sec程度に制限される。
【0067】このようにして500 ℃まで冷却してからは
特に制限されず、例えば空冷により室温にまで冷却すれ
ばよい。このようにすることでフェライトと炭化物とか
ら成る金属組織が得られる。
【0068】
【実施例】次に、実施例により本発明をその作用効果に
関連させてさらに詳細に説明する。
【0069】(実施例1)実際の生産工程にて表1に示す
各成分組成の鋼を溶製し、連続鋳造法にて厚さ200mm の
スラブとし、1200℃×1.5 時間の加熱を行い熱間圧延に
より厚さ5.0mmの熱延鋼板とした。
【0070】その後、各熱延鋼板から厚さ5.0mm ×幅30
0mm ×長さ100mm の熱延板サンプルを数枚ずつ採取し、
実験室用の箱形電気炉にて800 ℃×10分の熱延板焼鈍を
行い、その後、500 ℃まで15℃/secの冷却速度で冷却し
た。その後は空冷とした。
【0071】このようにして得た各熱処理材から圧延90
°方向からJIS Z2201に規定される13B号試験片を各2
本採取し、1本でJIS Z2241に規定される方法で常温の
引張試験を行い、常温強度の測定を行った。
【0072】残りの1本でA1値を測定するために、8%
の引張歪みを付与した時の材料強度(MSRT8%) を測定
し、その後、実験室用の箱形電気炉で300 ℃×30分の時
効熱処理を施しその後、先と同様に引張試験を行い、時
効後耐力 (YSAGE ) を測定し、A1値=YSAGE −MSRT8%
求めた。
【0073】鋼の中温域での強度を測定するために、同
じく圧延90°方向からJIS Z2201に規定される板状高温
引張試験片を採取し、フランジ等の加工製品に作用する
応力および熱履歴を簡易的に再現するために7.5 %に引
張歪みを付与し、550 ℃で30分の熱処理を施した後、空
冷した試験片を450 ℃の温度でJIS G0567に規定される
方法で引張試験を行い450 ℃強度を求めた。450 ℃強度
が大きい方が中温域での強度が良好である。
【0074】打ち抜き時の端面割れの評価として、クラ
ンクプレスにて直径10mmのパンチを用いて打ち抜き試験
を行った。ダイスは直径10.8mmのものを用い (クリアラ
ンス8%) 、無潤滑の条件で3枚連続の打ち抜きを行
い、打ち抜いた後の打ち抜かれた側の母材破面を目視で
観察し、端面割れの評価を行った。端面割れの発生して
いるものについては割れ部を切り出し、割れ部断面を光
学顕微鏡にて観察し割れ深さを測定した。
【0075】一般的に添加される元素の影響を確認する
ために、一部供試材において曲げ半径=0.4 ×板厚の条
件 (板厚=5.0tにつき曲げ半径=2.0mm)で90°曲げ加工
を行い端部および母材の割れ有無を観察し、加工性の評
価とした。また、JIS G0577に示される方法で母材の孔
食電位を測定し、耐食性の比較とした。結果を併せて表
2に示す。
【0076】これから明らかなように、本発明例におけ
るマルテンサイト系ステンレス鋼板は、A1値が20Mpa 以
上となり、450 ℃の強度が従来法 (比較例) に比べ高
く、安定して420Mpa以上の強度を確保することができ
る。また、打ち抜き時の端面割れが軽度であり、No.2お
よび11で軽度の端面割れが発生しているのみで、端面割
れは全く発生しない。
【0077】それに対し、MP値が−18より小さいNo.15
およびNo.17 は、450 ℃の強度が400Mpaに満たさず好ま
しくない。MP値が−7 より大きいNo.16 および19は、材
料強度が著しく上昇し、時効歪みを付与する時点で破断
が発生し、打ち抜き時にも母材割れが発生した。そし
て、C量の少ないNo.14 は、450 ℃の強度が低く、か
つ、A1値も低いため、端面割れが発生する。Moの少ない
No.18 やTi、Al、Nbが多量に添加されているNo.20 〜22
は450 ℃の強度が低下している。
【0078】C、Si、Mn、P、S、Cr、Nが本発明適用
範囲外となるNo.23 〜29は、曲げ性(加工性) や耐食性
を同時に満足することができない。 (実施例2)実際の生産工程にて表1−No.1に示す成分組
成の鋼を溶製し、連続鋳造法にて厚さ200mm のスラブと
し、1200℃×1.5 時間の加熱を行い熱間圧延により厚さ
5.0 mmの熱延鋼板とした。
【0079】その後、この熱延鋼板から厚さ5.0 ×幅30
0 ×長さ100mm の熱延板サンプルを数枚採取し、実験室
用の箱形電気炉にて表3に示す条件で熱延板焼鈍および
500まで冷却を行った。
【0080】その後、実施例1と同様の内容で各熱処理
条件における特性を調査した。結果を表3に併せて示
す。これから明らかなように、本発明例における熱処理
を施したマルテンサイト系ステンレス鋼板は、A1値が20
MPa 以上となり、450 ℃の強度が安定して420MPa以上を
確保できる。また、打ち抜き時の端面割れが軽度であ
り、特にNo.2および5以外は端面割れが全く発生してい
ない。
【0081】それに対し、焼鈍温度が600 ℃に満たない
No.11 は、A1値は48MPa と高い値を示すが、常温強度が
高く打ち抜き性が劣化している。また、焼鈍温度がAc1
点以上となるNo.13 は常温強度が極めて高く、7.5 %引
張りでも破断するためA1値および450 ℃の強度測定が困
難となる。また、打ち抜き時には母材割れが発生してい
る。
【0082】また、No.12 では冷却速度が遅いためA1
が下がり端面割れが発生する。No.15 については、焼鈍
温度が高く冷却速度が遅いため、整粒組織となり打ち抜
き時の端面割れは抑制されるが、450 ℃の強度が低下す
る。
【0083】No.16は、450 ℃強度および打ち抜き性と
もに良好であるが、長時間箱形焼鈍となるために焼鈍の
コストが従来と変わらないため、本発明においては好ま
しいものではない。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
【発明の効果】本発明によるマルテンサイト系ステンレ
ス鋼板は、打ち抜き時の端面割れが発生せず、かつ、 3
00〜 600℃の中温域の強度に優れるため、自動車排ガス
材のフランジあるいはフラット画面テレビのフレーム母
材等の中温域で加工を受けるような用途においても適用
される。また、従来は箱形焼鈍を用いて長時間焼鈍し
て、その後酸洗処理を行っていたものが、連続ラインで
焼鈍と酸洗を同時に行うことが可能となり、箱形焼鈍の
省略が可能となるために、従来より極めて優れた性能を
有する材料を、従来より極めて安価に提供されるもので
あり産業上における効果が大きいものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 C:0.02%以上0.10%以下、Si:1.0 %以下、Mn:0.05
    %以上1.0 %以下、 S:0.01%以下、P:0.1 %以下、Cr:10.5%以上13.5
    %以下、 N:0.05%以下を含有し、さらにTi:0.1 %以下、Al:
    0.1 %以下、およびNb:0.1 %以下の少なくとも1種以
    上、ならびにMo:0.02%以上1.0 %以下を含有し、 残部がFeおよび不可避的な不純物から成る化学組成を有
    し、組織的にフェライトと炭化物からなり、下記MP値が
    −18 ≦MP≦−7の範囲を満足することを特徴とする中
    温域の強度に優れるマルテンサイト系ステンレス鋼板。 MP(%)=180[C(%)+N(%)]+3Mn(%)+6Ni(%)-3Si(%)-2Cr(%)-
    2Mo(%)-Nb(%)
  2. 【請求項2】前記化学組成が、さらに質量%で、Ni:0.0
    1 〜0.5 %を含有する請求項1記載のマルテンサイト系
    ステンレス鋼板。
  3. 【請求項3】前記化学組成が、さらに質量%で、 Ca:0.0005 〜0.005 %、Mg:0.0005 〜0.005 %、La:
    0.002 %〜0.05%、 Ce:0.002 %〜0.05%、およびY :0.002%〜0.05%から
    成る群から選んだ少なくとも1種の元素を含有する請求
    項1または2記載のマルテンサイト系ステンレス鋼板。
  4. 【請求項4】前記化学組成が、さらに質量%で、 B:0.0001%〜0.010 %、V:0.02%〜0.30%、および
    W:0.02%〜1.0 %から成る群から選ばれた少なくとも
    1種の元素を含有する請求項1ないし3のいずれかに記
    載のマルテンサイト系ステンレス鋼板。
  5. 【請求項5】 下記Al値がA1値≧20(MPa) を満足する範
    囲で固溶Cを含有することを特徴とする中温域の強度に
    優れかつ打ち抜き割れ感受性に優れる請求項1ないし4
    のいずれかに記載のマルテンサイト系ステンレス鋼板。 Al値=YSAGE −MSRT8% YSAGE :8%引張歪み+300 ℃×30分熱処理した後の耐
    力 MSRT8%:常温で8%引張歪みを付与したときの材料強度
  6. 【請求項6】 請求項1ないし請求項4のいずれかに記
    載の化学組成を有する熱延板に、600 ℃以上、Ac1 変態
    点を越えない温度範囲で熱間圧延板焼鈍を施し、その後
    500 ℃まで5℃/sec以上の冷却速度で冷却することを特
    徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼板の製造方法。
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