JP3533067B2 - ガス吸蔵物質の製造方法 - Google Patents

ガス吸蔵物質の製造方法

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  • Hydrogen, Water And Hydrids (AREA)
  • Carbon And Carbon Compounds (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【技術分野】本発明は,水素ガス等のガスを吸蔵・放出
可能な呼吸機能を有し,C60フラーレンよりなるガス吸
蔵物質の製造方法に関する。 【0002】 【従来技術】ガス吸蔵物質とはガスを固形化して貯蔵す
ることが可能な物質で,ガスを体積的に非常にコンパク
トに蓄える事ができるという特徴を有する。このような
ガス吸蔵物質の中でも,吸蔵機能が高く(ガスを多量に
吸蔵可能である),ガスの吸蔵・放出(呼吸)を効率的
に行うことが可能な物質については以下に示すごとき幅
広い応用例が考えられている。 【0003】(1)ガスをガス吸蔵物質内に固体化する
貯蔵機能の利用 (2)ガスの吸蔵・放出に伴う反応熱のエネルギー的利
用 (3)容器内のガス吸蔵物質におけるガスの吸蔵・放出
に伴う機械的エネルギーの利用 (4)混合ガス中からの特定ガスの選択的吸蔵を行い,
該ガスを更にガス吸蔵物質より分離して選択的反応・ガ
スの高純度化に利用 【0004】ところで,上記ガス吸蔵物質としては水素
ガスを吸蔵可能な物質についての関心が高い。水素は資
源としてほぼ無限に存在すると考えられる水が原料とな
り,酸素との燃焼反応での生成物は水であるため,クリ
ーンなエネルギー源である。このため,水素吸蔵物質を
介するエネルギー媒体としての用途が近年注目されてい
る。これは水素吸蔵物質が質量当りのエネルギー密度が
ガソリンの数倍となる水素燃料を,水素ガスの形ではな
く水素化物として固体化して安全な形で多量に貯蔵,運
搬できるからである。 【0005】このような水素吸蔵物質としてより軽量な
物質を得ることができれば,移動用のエネルギー源とし
て移動効率の点からも有利である。また,水素は化学工
業での有用な原料で,反応媒体であることから,混合ガ
ス中から選択的吸蔵を行い,分離して選択的反応に使う
ことができる。 【0006】ここに上記水素吸蔵物質としては,従来ミ
ッシュメタルなどの水素吸蔵合金がよく知られている。
これらの水素吸蔵合金をはじめとする金属結合性水素化
物以外に水素を吸蔵できる可能性の高い物質としては,
イオン結合性水素化物や共有結合性水素化物がある。上
記イオン結合性水素化物の代表例としては,塩に似た性
質をもち,強い還元能力をもつLiH,NaH,CaH
2 等が挙げられる。 【0007】 【解決しようとする課題】しかしながら,上記金属結合
性水素化物,共有結合性水素化物,イオン結合性水素化
物を水素吸蔵物質として利用するにはそれぞれ以下に示
す問題がある。即ち,上記金属結合性水素化物はいわゆ
る合金様の物質であり,重量が重く,運搬・移動効率の
面で不利となるおそれがある。また,上記共有結合性水
素化物は揮発性の物質が多いため,安定性の面で問題が
生じるおそれがある。 【0008】また,上記イオン結合性水素化物,例えば
NaH等は強力な還元剤であり,発火し易く,空気中で
の取扱が極めて危険な物質である。なお,上記水素ガス
以外のガス吸蔵物質においても,水素ガスの場合と同様
の問題が生じるおそれがある。 【0009】本発明は,かかる問題点に鑑み,軽量かつ
安定で,資源的に豊富な元素により構成された,ガス吸
蔵物質の製造方法を提供しようとするものである。 【0010】 【課題の解決手段】請求項1の発明は,Na−J−Cの
複数元素よりなるNa x y 60 の組成を有し(ここにJ
は水素,重水素,ヘリウムのいずれか一種以上),かつ
水素,重水素,ヘリウムのいずれか一種以上を吸蔵・放
出可能なガス吸蔵物質を製造するに当たり,NaHとC
60 とを混合し,混合物となし,該混合物を加熱し,更に
水素または重水素,ヘリウムのいずれか一種以上を吸蔵
させるガス吸蔵処理を行うことを特徴とするガス吸蔵物
質の製造方法にある。 【0011】上記C60は新炭素物質フラーレンの一つで
ある。ここにフラーレンとは内部に空洞を持つ炭素分子
であり,炭素原子60個でできたサッカーボール状のC
60は,1970年に日本人により存在が理論的に指摘さ
れ,1985年,米国ライス大学の研究グループのH.
W.クロトー教授(現在,英国サセックス大学)と米国
ライス大学のR.E.スモーリー教授らによって実験室
的に合成された。この成果により,クロトー教授らは1
996年度ノーベル化学賞受賞の栄誉に輝いた。 【0012】C60を代表とする中空構造の炭素物質・フ
ラーレンは,微量の添加物や少しの操作で性質が変わ
り,直接的には電子素子,光学素子,触媒,医薬など
へ,また高分子中へ添加して新しい機能を有するプラス
チックの合成を行うなど幅広い応用が期待されている。
本発明はフラーレンの新規な応用方法であるガス吸蔵物
質の製造方法である。 【0013】また,上記Nax y 60におけるJは,
水素,重水素,ヘリウムの二種以上の元素が混在した状
態であってもよい。例えば,Nax y1Hey260とい
う状態をとることもできる。また,上記ガス吸蔵物質に
おいてのy値がxの値より大きくなる場合もある。 【0014】本発明の作用につき,以下に説明する。
発明の製造方法により得られるガス吸蔵物質は,Na−
J−Cの複数元素よりなるNaxy60の組成を有す
る。上記ガス吸蔵物質はNa,水素,重水素,ヘリウ
ム,炭素といった軽い元素より構成されており,また,
これらの元素(特にNa)はC60にドーピングされるこ
とで安定化することができる。このため,上記ガス吸蔵
物質は軽量かつ安定である。また,資源豊富な元素より
構成されており,原料供給にかかるコストを安価とする
ことができる。 【0015】また,上記ガス吸蔵物質は後述する実施形
態例1に示すごとく,吸蔵させたいガスの雰囲気下に置
くことでガスの吸蔵を行うことができる。また,昇温に
より吸蔵したガスを放出させることができる。即ち,
ガス吸蔵物質は,ガスを容易に吸蔵・放出させること
ができる。 【0016】以上のように,本発明によれば,軽量かつ
安定で,資源的に豊富な元素により構成された,ガス吸
蔵物質を製造することができる。 【0017】 【0018】上記ガス吸蔵物質は,原料であるNa
60とを混合し,その後これらを加熱した後,ガス吸蔵
処理を施すことにより製造することができる。これらの
処理は特に高度な技術を使用しないため,容易かつ安価
に行うことができる 【0019】なお,上記ガス吸蔵処理としては,後述の
実施形態例1に示すごとく,ガス吸蔵物質を所望のガス
の雰囲気に曝すことにより行うことができる。 【0020】 【発明の実施の形態】実施形態例1 本発明の実施形態例にかかるガス吸蔵物質の製造方法
つき,図1〜図6を用いて説明する。本例のガス吸蔵物
質は,Na−H−Cの複数元素よりなるNaxy60
組成を有し,かつ水素,重水素,ヘリウムのいずれか一
種以上を吸蔵・放出可能なガス吸蔵物質である。 【0021】また,上記ガス吸蔵物質は,NaHとC60
とを混合し,混合物となし,該混合物を加熱し,更に水
素または重水素,ヘリウムのいずれか一種以上を吸蔵さ
せるガス吸蔵処理を行うことにより作製する。 【0022】以下,詳細に説明する。まず,ヘキスト
(Hoechst)社製C60(>99.9%)とアルド
リッチ(Aldrich)社製NaH(ドライ)をそれ
ぞれ秤量した。この際の両者の仕込み組成は(NaH)
3.9 60である。両者をよく混合した混合物を直径約5
mmの石英反応管に封管した。なお,これら一連の作業
は,全てアルゴンガス雰囲気のグローブボックス中で行
った。また,上記封管に当たっては,上記石英反応管を
更に真空ポンプで4×10-4Paの真空状態に減圧した
後,これを封じ切った。 【0023】次に,上記石英反応管をマッフル型電気炉
にセットして,0.5℃/分の速度で280℃までゆっ
くりと昇温した。その後,温度280℃で1時間保持し
た後,室温まで同様に0.2℃/分の速度でゆっくりと
徐冷した。以上により,上記石英反応管内に本例にかか
るガス吸蔵物質・Nax y 60を得た。 【0024】次に,本例にかかるガス吸蔵物質を用いた
ガスの吸蔵・放出の試験(1)〜試験(7)について説
明する。なお,これらの試験は同一のガス吸蔵物質に対
し,連続的に行うものである。 【0025】まず,試験(1)について説明する。上記
石英反応管を室温にて真空状態で開封し,上記ガス吸蔵
物質を石英製試験容器に導入し,液体窒素温度に冷却し
た。次いで,当該試験容器を超高真空に排気した。その
後,試験容器ごと上記ガス吸蔵物質を昇温し,ガス吸蔵
物質からのガスの放出について,上記試験容器内の圧力
変動を測定することにより調べた。上記結果は図1にか
かる線図に記した(線A)。同図に示されるごとく,昇
温による試験容器内の圧力変動は殆どなく,上記ガス吸
蔵物質は約320Kまでガスを殆ど放出しないことが分
かった。 【0026】次に,試験(2)について説明する。上記
試験(1)終了後,上記試験容器ごとガス吸蔵物質を室
温に戻した。その後,上記試験容器内に圧力436To
rrにて水素ガスを導入した。この水素雰囲気に上記ガ
ス吸蔵物質を20分間接触させた後,上記試験容器ごと
ガス吸蔵物質を液体窒素温度に冷却した。液体窒素温度
に30分間保持した後,上記試験容器を超高真空に排気
した。 【0027】その後,試験(1)と同様に上記試験容器
ごとガス吸蔵物質を昇温し,上記試験容器内の圧力変動
を調べた。上記結果は図1にかかる線図に記した(線
B)。同図に示されるごとく,上記ガス吸蔵物質に吸蔵
された水素ガスが試験容器内に放出されたことが分かっ
た。 【0028】次に,試験(3)について説明する。上記
試験(2)終了後,上記試験容器ごとガス吸蔵物質を室
温に戻した。その後,上記試験容器内に圧力795To
rrにて水素ガスを導入した。この水素雰囲気に上記ガ
ス吸蔵物質を接触させた後,上記試験容器を超高真空に
排気した。 【0029】その後,上記試験容器ごとガス吸蔵物質を
液体窒素温度に冷却した。次いでこれを昇温し,試験
(1)と同様にして試験容器内の圧力変動を調べた。こ
の結果は図2にかかる線図に記した。同図に示されるご
とく,上記ガス吸蔵物質に吸蔵され,液体窒素温度付近
で放出されやすい水素ガスが試験容器内に放出されたこ
とが分かった。 【0030】次に,試験(4)について説明する。上記
試験(3)終了後,上記試験容器ごとガス吸蔵物質を室
温に戻した。その後,上記試験容器内に圧力869To
rrにて水素ガスを導入した。この水素雰囲気に上記ガ
ス吸蔵物質を接触させた後,これを上記試験容器ごと液
体窒素温度に冷却した。次いで,上記試験容器を超高真
空に排気した。 【0031】その後,これを昇温し,試験(1)と同様
にして試験容器内の圧力変動を調べた。この結果は図3
にかかる線図に記した。同図に示されるごとく,上記ガ
ス吸蔵物質に3つの状態で吸蔵された水素ガスが試験容
器内に放出されたことが分かった。 【0032】次に,試験(5)について説明する。上記
試験(4)終了後,上記試験容器ごとガス吸蔵物質を室
温に戻した。その後,上記試験容器内に圧力742To
rrにて重水素ガスを導入した。この重水素雰囲気に上
記ガス吸蔵物質を接触させた後,上記試験容器ごと液体
窒素温度に冷却した。次いで,上記試験容器を超高真空
に排気した。 【0033】その後,上記試験容器ごとガス吸蔵物質を
昇温して,試験(1)と同様にして試験容器内の圧力変
動を調べた。この結果は図4にかかる線図に記した。同
図に示されるごとく,上記ガス吸蔵物質に2つの状態で
吸蔵された重水素ガスが試験容器内に放出されたことが
分かった。 【0034】次に,試験(6)について説明する。上記
試験(5)終了後,上記試験容器ごとガス吸蔵物質を液
体窒素温度に冷却した。その後,上記試験容器内に圧力
750Torrにて水素ガスを導入した。この水素雰囲
気に上記ガス吸蔵物質を接触させた後,液体窒素温度に
保持したまま上記試験容器を超高真空に排気した。 【0035】その後,上記試験容器ごとガス吸蔵物質を
昇温して,試験(1)と同様にして試験容器内の圧力変
動を調べた。この結果は図5にかかる線図に記した。同
図に示されるごとく,上記ガス吸蔵物質に吸蔵され液体
窒素温度付近で放出されやすい水素ガスが試験容器内に
放出されたことが分かった。 【0036】次に,試験(7)について説明する。上記
試験(6)終了後,上記試験容器ごとガス吸蔵物質を室
温に戻した。その後,上記試験容器内に圧力760To
rrでヘリウムガスを導入した。このヘリウム雰囲気に
上記ガス吸蔵物質を接触させた後,上記試験容器ごと液
体窒素温度に冷却し,次いで上記試験容器を超高真空に
排気した。 【0037】その後,上記試験容器ごと上記ガス吸蔵物
質を昇温して,試験(1)と同様にして試験容器内の圧
力変動を調べた。この結果は図6にかかる線図に記し
た。同図に示されるごとく,上記ガス吸蔵物質に3つの
状態で吸蔵されたヘリウムガスが試験容器内に放出され
たことが分かった。 【0038】以上に示す一連の試験(1)〜(7)よ
り,本例にかかるガス吸蔵物質は水素ガス,重水素ガ
ス,ヘリウムガスを吸蔵・放出できることが分かった。
更に,同一のガス吸蔵物質に対し一種類のガスだけでな
く複数種類のガスによる連続的な吸蔵・放出のサイクル
を実行できることが分かった。また,この吸蔵物質は通
常では吸蔵が認められていない希ガスの吸蔵・放出をす
るという著しく特異な性質を有することが分かった。 【0039】次に,本例における作用効果につき説明す
る。本例にかかるガス吸蔵物質は,Na−H−Cの複数
元素よりなるNax y 60の組成を有する。上記ガス
吸蔵物質はNa,水素,炭素という軽い元素より構成さ
れており,また,これらの元素(特にNa)はC60に結
合され,安定化される。このため,上記ガス吸蔵物質は
軽量かつ安定である。また,資源豊富な元素より構成さ
れており,原料供給を安価とすることができる。 【0040】また,本例にかかるガス吸蔵物質は上述の
試験(1)〜(7)に示すごとく,吸蔵させたいガスの
雰囲気下に置くことでガスの吸蔵を行うことができる。
また,昇温により吸蔵したガスを放出させることができ
る。即ち,本発明にかかるガス吸蔵物質は,ガスを容易
に吸蔵・放出させることができる。 【0041】また,本例にかかるガス吸蔵物質は原料と
なるC60とNaHとを混合,加熱し,水素ガスを吸蔵さ
せることにより製造することができる。よって,本例に
かかるガス吸蔵物質は製造容易である。 【0042】従って,本例によれば,軽量かつ安定で,
そして資源的に豊富な元素により構成された,ガス吸蔵
物質の製造方法を提供することができる。 【0043】実施形態例2 本例は,図7に示すごとく,実施形態例1にかかるガス
吸蔵物質の組成について調べたものである。上記ガス吸
蔵物質・Nax y 60を425℃まで加熱して,該ガ
ス吸蔵物質よりH(水素)を部分的に除去した。これに
より得られたガス吸蔵物質・Naxy'60を試験容器
に封入し,該試験容器に720〜735Torr(約1
気圧)の水素ガスを導入した。この水素雰囲気にガス吸
蔵物質を接触させながら,試験容器内の温度を200℃
に昇温した。そして,この温度に60〜100時間保持
することにより,上記ガス吸蔵物質を水素ガスと接触さ
せた。 【0044】次いで,吸蔵・平衡に至らないうちに上記
試験容器ごとガス吸蔵物質を室温に戻した。再び,上記
試験容器ごとガス吸蔵物質を昇温し,該昇温の際の試験
容器内の圧力変化を測定した。なお,この圧力変化につ
いては,図7の線図に記した。以上によりガス吸蔵物質
に対する水素ガスの吸蔵量を計算して求めた。 【0045】その結果,本例にかかるガス吸蔵物質の組
成は,Nax y 60にて,x=3.8,y=0.7以
上であることが分かった。以上により,本例にかかるガ
ス吸蔵物質はNa3.8 y 60においてy=0.7以上
の吸蔵量を持ち得ることが分かった。 【0046】実施形態例3 本例は,実施形態例1にかかるガス吸蔵物質と,他のガ
ス吸蔵物質とを比較説明したものである。本例において
比較対照に使用した物質は,表1に示すごとく,アルカ
リグラファイト層間化合物である,C8 2/3 H,C24
KH0.5 ,イオン結合性水素化物であるNaHである。 【0047】まず,各ガス吸蔵物質をそれぞれ試験容器
に導入し,温度425℃に加熱した。これにより,上記
ガス吸蔵物質に含まれる余分のガスを除去した。次い
で,上記試験容器ごとガス吸蔵物質を室温に戻した。 【0048】次に,室温に保持したまま上記試験容器に
720〜735Torr(約1気圧)の水素ガスを導入
した。次いで,上記試験容器ごとガス吸蔵物質を温度3
00℃に昇温し,そのまま60〜100時間保持した。
これにより,上記ガス吸蔵物質を水素雰囲気に接触させ
た。次いで,上記試験容器ごとガス吸蔵物質を室温に戻
した。この場合の試験容器内の圧力変化を測定し,これ
よりガス吸蔵物質における水素ガスの吸蔵量を計算して
求めた。 【0049】更に,上記吸蔵量の測定後,in−sit
uで(即ち,ガス吸蔵物質を空気に接触させることな
く),質量分析昇温脱離スペクトルを測定し,水素ガス
の脱離量を求めた。以上のガス吸蔵物質の吸蔵量及び脱
離量から組成式を決定した。 【0050】以上の測定により本例のガス吸蔵物質は,
組成式Nax y 60において,xは3.8,yは5.
3〜6.2であることが分かった。従って,このガス吸
蔵物質におけるH/Na比は1.4〜1.6となる。こ
の値はこれまでに知られた,NaH,C1.8-4.5 Na
H,C24KH0.5 ,C8 KH0.67-0.83 と比べて大きな
値である。よって,本例にかかるガス吸蔵物質は多量の
水素ガスを吸蔵できることが分かった. 【0051】また,上記ガス吸蔵物質について,H(水
素)を除く水素吸蔵物質1g当りの水素ガスの体積吸蔵
量(ただし,上記測定結果より得られた数値を標準状態
[0℃,1気圧]に換算した値)を表1に記した。ま
た,他のこれまでに知られたガス吸蔵物質にかかる体積
吸蔵量も表1に記した。同表より知れるごとく,体積吸
蔵量はNaHが最も高く,本発明の製造方法によって得
られるガス吸蔵物質がこれに続く。他の物質は本発明の
製造方法によって得られるガス吸蔵物質よりも低かっ
た。 【0052】そしてNaHが還元能力が強く危険性の高
い物質であることを考えると,特殊な用途を除く一般的
用途に於いては,安定性等の面からもNax y 60
水素ガスのガス吸蔵物質として特に優れた能力を有する
ものと考えられる。以上のように,Nax y 60は金
属に対する水素の結合比(H/Na),及び1g当りの
水素ガスの吸蔵量において優れており,新しいガス吸蔵
物質として期待される物質である。 【0053】 【表1】 【0054】実施形態例4 本例は図8〜図10に示すごとく,本発明の製造方法に
よって得られるガス吸蔵物質の組成について調べたもの
である。まず本例にかかる測定にて使用するガス吸蔵物
質を実施形態例1に示す方法にて製造した。このガス吸
蔵物質に対して質量分析−昇温脱離スペクトルを測定
し,結果を図8に記した。これにより,合成直後のガス
吸蔵物質の組成は,Naxy60にてx=3.8,y=
0.95であることが分かった。 【0055】次に,上記ガス吸蔵物質・Nax y 60
を425℃まで加熱した。このガス吸蔵物質を温度30
0℃,圧力660Torrの水素ガスを導入した試験容
器に封入した。その後,上記ガス吸蔵物質の温度425
℃までの昇温脱離スペクトルを測定,結果を図9に記し
た。これにより,上述の水素雰囲気に曝されたガス吸蔵
物質は,Nax y 60にてx=3.8,y=4.69
という組成を示すことが分かった。 【0056】また,同様に実施形態例1に示す方法にて
製造したガス吸蔵物質を425℃まで加熱した。このガ
ス吸蔵物質を温度300℃,圧力730Torrの水素
ガスを導入した試験容器に封入した。その後,上記ガス
吸蔵物質の温度800℃までの昇温脱離スペクトルを測
定,結果を図10に記した。これにより,上述の水素雰
囲気に曝されたガス吸蔵物質は,Nax y 60にてx
=3.8,y=6.20という組成を示すことが分かっ
た。 【0057】以上の測定より,上記ガス吸蔵物質のNa
3.8 y 60は温度,圧力,時間を変えることによりy
=6.2以上の水素を吸蔵し得ることが分かった。 【0058】 【発明の効果】上記のごとく,本発明によれば,軽量か
つ安定で,資源的に豊富な元素により構成された,ガス
吸蔵物質の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】 【図1】実施形態例1にかかる,試験(1)及び試験
(2)の昇温に伴う試験容器内の圧力変化を示す線図。 【図2】実施形態例1にかかる,試験(3)の昇温に伴
う試験容器内の圧力変化を示す線図。 【図3】実施形態例1にかかる,試験(4)の昇温に伴
う試験容器内の圧力変化を示す線図。 【図4】実施形態例1にかかる,試験(5)の昇温に伴
う試験容器内の圧力変化を示す線図。 【図5】実施形態例1にかかる,試験(6)の昇温に伴
う試験容器内の圧力変化を示す線図。 【図6】実施形態例1にかかる,試験(7)の昇温に伴
う試験容器内の圧力変化を示す線図。 【図7】実施形態例2にかかる,試験容器内の圧力変化
を示す線図。 【図8】実施形態例4にかかる,合成直後のガス吸蔵物
質の昇温脱離スペクトルを示す線図。 【図9】実施形態例4にかかる,ガス吸蔵物質の温度4
25℃までの昇温脱離スペクトルを示す線図。 【図10】実施形態例4にかかる,ガス吸蔵物質の温度
800℃までの昇温脱離スペクトルを示す線図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01J 20/00 - 20/34

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 Na−J−Cの複数元素よりなるNax
    y60の組成を有し(ここにJは水素,重水素,ヘリ
    ウムのいずれか一種以上),かつ水素,重水素,ヘリウ
    ムのいずれか一種以上を吸蔵・放出可能なガス吸蔵物質
    を製造するに当たり,NaH とC60とを混合し,混合物となし,該混合物を加
    熱し,更に水素または重水素,ヘリウムのいずれか一種
    以上を吸蔵させるガス吸蔵処理を行うことを特徴とする
    ガス吸蔵物質の製造方法。
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