JP3532397B2 - 熱分解窒化ホウ素製円錐筒およびその製造方法 - Google Patents
熱分解窒化ホウ素製円錐筒およびその製造方法Info
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、分子線エピタキシ
ー(Molecular Beam Epitaxy,
以下MBEと略称する。)法において分子線源を収容す
る容器(分子線源容器)の分子線放出口に設置される底
の開いた逆円錐形の熱分解窒化ホウ素製円錐筒に関する
ものである。
ー(Molecular Beam Epitaxy,
以下MBEと略称する。)法において分子線源を収容す
る容器(分子線源容器)の分子線放出口に設置される底
の開いた逆円錐形の熱分解窒化ホウ素製円錐筒に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】MBE法は、薄膜成長室を10−6〜1
0−11 Torr(1.33×10 −4 〜1.33×
10 −9 Pa)という超高真空とし、分子線源となる
原料を充填した容器を例えば500℃〜1500℃に加
熱して、溶融原料から発生する分子線を加熱された基板
上に当てることにより、数原子層レベルの制御が可能な
薄膜の製造方法である。特に、GaAs等の化合物半導
体のエピタキシャル膜の製造には広く用いられており、
分子線源容器の材質としては純度、耐熱性、強度等の点
から化学気相蒸着(以下、CVDと略称する。)反応に
よる熱分解窒化ホウ素(PBN)が広く用いられてい
る。
0−11 Torr(1.33×10 −4 〜1.33×
10 −9 Pa)という超高真空とし、分子線源となる
原料を充填した容器を例えば500℃〜1500℃に加
熱して、溶融原料から発生する分子線を加熱された基板
上に当てることにより、数原子層レベルの制御が可能な
薄膜の製造方法である。特に、GaAs等の化合物半導
体のエピタキシャル膜の製造には広く用いられており、
分子線源容器の材質としては純度、耐熱性、強度等の点
から化学気相蒸着(以下、CVDと略称する。)反応に
よる熱分解窒化ホウ素(PBN)が広く用いられてい
る。
【0003】従来、このようなMBE法においては、長
時間にわたり操業すると、原料金属が毛細管現象等によ
って容器内壁面を伝わって這い上がり、容器外に漏出し
てヒーターその他の加熱部材、炉内部材に付着して、こ
れらを腐食、変質せしめたり、破損やヒーターの短絡を
生じたりすると言うトラブルを起こしていた。特に、蒸
発、飛散した原料金属が、低温の容器内壁面の上部に付
着し易く、このような容器上部に付着したものは、時間
の経過と共に容器内壁を伝わって這い上がり、直接容器
外に漏出したり、あるいは原料融液に落下して原料の液
滴をまき散らすこともある。
時間にわたり操業すると、原料金属が毛細管現象等によ
って容器内壁面を伝わって這い上がり、容器外に漏出し
てヒーターその他の加熱部材、炉内部材に付着して、こ
れらを腐食、変質せしめたり、破損やヒーターの短絡を
生じたりすると言うトラブルを起こしていた。特に、蒸
発、飛散した原料金属が、低温の容器内壁面の上部に付
着し易く、このような容器上部に付着したものは、時間
の経過と共に容器内壁を伝わって這い上がり、直接容器
外に漏出したり、あるいは原料融液に落下して原料の液
滴をまき散らすこともある。
【0004】また、従来、このようなMBE法におい
て、長時間にわたって操業すると、円錐形の分子線源容
器では、原料仕込み量が少なく、頻繁に原料をチャージ
する必要があるし、円筒形の容器でも原料の液面レベル
が変わり、発生する分子ビームの状況が変化してしま
う。このようなことが起こると、長時間操業する内に生
成エピタキシャル膜質が変化したり、欠陥が形成される
等、長時間の安定運転ができないと言った不都合も生じ
るようになる。
て、長時間にわたって操業すると、円錐形の分子線源容
器では、原料仕込み量が少なく、頻繁に原料をチャージ
する必要があるし、円筒形の容器でも原料の液面レベル
が変わり、発生する分子ビームの状況が変化してしま
う。このようなことが起こると、長時間操業する内に生
成エピタキシャル膜質が変化したり、欠陥が形成される
等、長時間の安定運転ができないと言った不都合も生じ
るようになる。
【0005】このような問題点を解決するために、分子
線源を収容する容器の分子線放出口に底の開いた逆円錐
形の熱分解窒化ホウ素(PBN)製円錐筒を設置して、
分子線ビーム形状を常に一定に保ち、さらに、PBNの
上にPG(熱分解グラファイト)を複合し、電流を流し
てヒータとして加熱し、分子線原料がドロップとして付
着することを防止するといった提案がなされている(特
開平5−85888号公報参照)。しかし、このような
方法では、高温下に電力を供給するため構造が複雑にな
り、ショート、断線等故障の原因になり易い。また、異
質な材料であるPBNとPGとを複合化するため、複合
膜がヒートサイクルで使用中に剥離が発生し破損すると
か、製造工程が長くコストが嵩むといった不具合があっ
た。
線源を収容する容器の分子線放出口に底の開いた逆円錐
形の熱分解窒化ホウ素(PBN)製円錐筒を設置して、
分子線ビーム形状を常に一定に保ち、さらに、PBNの
上にPG(熱分解グラファイト)を複合し、電流を流し
てヒータとして加熱し、分子線原料がドロップとして付
着することを防止するといった提案がなされている(特
開平5−85888号公報参照)。しかし、このような
方法では、高温下に電力を供給するため構造が複雑にな
り、ショート、断線等故障の原因になり易い。また、異
質な材料であるPBNとPGとを複合化するため、複合
膜がヒートサイクルで使用中に剥離が発生し破損すると
か、製造工程が長くコストが嵩むといった不具合があっ
た。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
問題点に鑑みなされたもので、長時間操業をしても分子
線が安定して発生し、しかも安定使用が可能な熱分解窒
化ホウ素製円錐筒を、簡単かつ低コストで提供し、分子
線エピタキシー操業の安定化とエピタキシャル膜の品質
向上をはかることを主目的とする。
問題点に鑑みなされたもので、長時間操業をしても分子
線が安定して発生し、しかも安定使用が可能な熱分解窒
化ホウ素製円錐筒を、簡単かつ低コストで提供し、分子
線エピタキシー操業の安定化とエピタキシャル膜の品質
向上をはかることを主目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】このような課題を解決す
るため、本発明は、分子線エピタキシー用分子線源容器
の開口部に配置される熱分解窒化ホウ素製円錐筒におい
て、該熱分解窒化ホウ素製円錐筒の波数が2600cm
−1〜6500cm−1の光の透過率が、20%以下で
あることを特徴とする熱分解窒化ホウ素製円錐筒であ
る。
るため、本発明は、分子線エピタキシー用分子線源容器
の開口部に配置される熱分解窒化ホウ素製円錐筒におい
て、該熱分解窒化ホウ素製円錐筒の波数が2600cm
−1〜6500cm−1の光の透過率が、20%以下で
あることを特徴とする熱分解窒化ホウ素製円錐筒であ
る。
【0008】このように、分子線エピタキシー用分子線
源容器の開口部に配置される熱分解窒化ホウ素製円錐筒
のIR透過率を20%以下にすることにより、外部ヒー
タからの放射熱を吸収して、該円錐筒の温度を従来より
高くすることができる。こうして、該円錐筒における飛
散した原料の付着を効果的に抑制し、長期にわたって安
定的に分子線を発生させると共に、生成したエピタキシ
ャル膜の表面欠陥を極めて少ないものとすることができ
る。
源容器の開口部に配置される熱分解窒化ホウ素製円錐筒
のIR透過率を20%以下にすることにより、外部ヒー
タからの放射熱を吸収して、該円錐筒の温度を従来より
高くすることができる。こうして、該円錐筒における飛
散した原料の付着を効果的に抑制し、長期にわたって安
定的に分子線を発生させると共に、生成したエピタキシ
ャル膜の表面欠陥を極めて少ないものとすることができ
る。
【0009】この円錐筒のIR透過率が20%を超える
と放射光が吸収されずに透過してしまい、円錐筒の温度
を十分高くすることができなくなってしまう。そして、
円錐筒の温度が低くなると原料の付着が激しくなり、こ
れが原料融液に滴下して、いわゆるドロップ現象を起こ
し、エピタキシャル膜質低下の原因となる。通常のPB
NのIR透過率は、20%を越えているので放射光を吸
収せず低温化してしまう。そうすると原料の付着やドロ
ップ現象が激しくなるので、円錐筒の透過率を20%以
下に設定して吸収率を上げ、温度低下を防止することが
できる。
と放射光が吸収されずに透過してしまい、円錐筒の温度
を十分高くすることができなくなってしまう。そして、
円錐筒の温度が低くなると原料の付着が激しくなり、こ
れが原料融液に滴下して、いわゆるドロップ現象を起こ
し、エピタキシャル膜質低下の原因となる。通常のPB
NのIR透過率は、20%を越えているので放射光を吸
収せず低温化してしまう。そうすると原料の付着やドロ
ップ現象が激しくなるので、円錐筒の透過率を20%以
下に設定して吸収率を上げ、温度低下を防止することが
できる。
【0010】そして、本発明では、熱分解窒化ホウ素製
円錐筒の波数が2600cm−1〜6500cm−1の
光の透過率を20%以下にするのに、熱分解窒化ホウ素
製円錐筒の外表面の粗さを粗し、前記光の透過率を20
%以下とすることができる。また、本発明は、CVD反
応によって得られた熱分解窒化ホウ素製円錐筒の成形体
の外表面を粗し、外表面における光の散乱量を調整する
ことによって、該円錐筒の2600cm−1〜6500
cm−1の光の透過率を20%以下にする、ことを特徴
とする熱分解窒化ホウ素製円錐筒の製造方法である。
円錐筒の波数が2600cm−1〜6500cm−1の
光の透過率を20%以下にするのに、熱分解窒化ホウ素
製円錐筒の外表面の粗さを粗し、前記光の透過率を20
%以下とすることができる。また、本発明は、CVD反
応によって得られた熱分解窒化ホウ素製円錐筒の成形体
の外表面を粗し、外表面における光の散乱量を調整する
ことによって、該円錐筒の2600cm−1〜6500
cm−1の光の透過率を20%以下にする、ことを特徴
とする熱分解窒化ホウ素製円錐筒の製造方法である。
【0011】このように、IR透過率が20%以下の熱
分解窒化ホウ素製円錐筒は、円錐筒の外表面の粗さを粗
くして、外表面で輻射光を散乱させることによって、製
造することができる。そしてこの場合、熱分解窒化ホウ
素製円錐筒自体が20%以下のIR透過率を有すること
になるので、前記PGと複合する場合のように、不純物
による汚染や複合膜の剥離といった問題を解決できると
ともに、製造工程も簡単かつ低コストで良質の熱分解窒
化ホウ素製円錐筒を作製することができる。
分解窒化ホウ素製円錐筒は、円錐筒の外表面の粗さを粗
くして、外表面で輻射光を散乱させることによって、製
造することができる。そしてこの場合、熱分解窒化ホウ
素製円錐筒自体が20%以下のIR透過率を有すること
になるので、前記PGと複合する場合のように、不純物
による汚染や複合膜の剥離といった問題を解決できると
ともに、製造工程も簡単かつ低コストで良質の熱分解窒
化ホウ素製円錐筒を作製することができる。
【0012】次に、本発明は、前記した熱分解窒化ホウ
素製円錐筒であって、熱分解窒化ホウ素にN、B以外の
元素をドープし、そのドープ層の厚さ、面積、ドープ濃
度を調整して、前記光の透過率を20%以下としたこと
を特徴とするものである。また、本発明は、CVD反応
による生成物をグラファイト製の心金上に蒸着させ、そ
の後心金と分離することによって成形体を得る熱分解窒
化ホウ素製円錐筒の製造方法において、少なくともCV
D反応時に炉内にドープガスを導入することによって、
熱分解窒化ホウ素中にドープ層を形成する工程を有し、
このドープ層の厚さ、面積、ドープ濃度を調整すること
によって、該円錐筒の2600cm−1〜6500cm
−1の光の透過率を20%以下にすることを特徴とする
熱分解窒化ホウ素製円錐筒の製造方法である。
素製円錐筒であって、熱分解窒化ホウ素にN、B以外の
元素をドープし、そのドープ層の厚さ、面積、ドープ濃
度を調整して、前記光の透過率を20%以下としたこと
を特徴とするものである。また、本発明は、CVD反応
による生成物をグラファイト製の心金上に蒸着させ、そ
の後心金と分離することによって成形体を得る熱分解窒
化ホウ素製円錐筒の製造方法において、少なくともCV
D反応時に炉内にドープガスを導入することによって、
熱分解窒化ホウ素中にドープ層を形成する工程を有し、
このドープ層の厚さ、面積、ドープ濃度を調整すること
によって、該円錐筒の2600cm−1〜6500cm
−1の光の透過率を20%以下にすることを特徴とする
熱分解窒化ホウ素製円錐筒の製造方法である。
【0013】このように、IR透過率が20%以下であ
る熱分解窒化ホウ素製円錐筒は、熱分解窒化ホウ素をC
VD反応生成する際に、ドープガスを導入することによ
ってドープ層を形成し、このドープ層の厚さ、面積、ド
ープ濃度を調整することによっても作製することができ
る。そしてこの場合も、熱分解窒化ホウ素の物性を変化
させることによってIR透過率を20%以下にすること
になるので、前記PGのような他の材料と複合する場合
のように、不純物による汚染や複合膜の剥離といった問
題を解決できると共に、製造工程も簡単かつ低コストで
良質の熱分解窒化ホウ素製円錐筒を作製することができ
る。
る熱分解窒化ホウ素製円錐筒は、熱分解窒化ホウ素をC
VD反応生成する際に、ドープガスを導入することによ
ってドープ層を形成し、このドープ層の厚さ、面積、ド
ープ濃度を調整することによっても作製することができ
る。そしてこの場合も、熱分解窒化ホウ素の物性を変化
させることによってIR透過率を20%以下にすること
になるので、前記PGのような他の材料と複合する場合
のように、不純物による汚染や複合膜の剥離といった問
題を解決できると共に、製造工程も簡単かつ低コストで
良質の熱分解窒化ホウ素製円錐筒を作製することができ
る。
【0014】この場合、元素をドープしたドープ層を、
円錐筒の内外表面に露出しないようにすれば、原料融液
がドーパントによって汚染される危険性はない。このド
ープ層の露出を避けるにはCVD反応の中間でドープガ
スを導入すればよく、極めて簡単に行うことができる。
そして、このような熱分解窒化ホウ素にドープする元素
としては、Si,C,Alから選択される1種以上のも
のとするのが好ましい。これらは、IRの吸収率が高
く、かつ、簡単にドープ出来るからである。ただし、本
発明において使用可能なドープ元素としてはこれらに限
定されるものではない。
円錐筒の内外表面に露出しないようにすれば、原料融液
がドーパントによって汚染される危険性はない。このド
ープ層の露出を避けるにはCVD反応の中間でドープガ
スを導入すればよく、極めて簡単に行うことができる。
そして、このような熱分解窒化ホウ素にドープする元素
としては、Si,C,Alから選択される1種以上のも
のとするのが好ましい。これらは、IRの吸収率が高
く、かつ、簡単にドープ出来るからである。ただし、本
発明において使用可能なドープ元素としてはこれらに限
定されるものではない。
【0015】以下、本発明につき更に詳述するが、本発
明はこれらに限定されるものではない。本発明者らはM
BE法における大容量のルツボで分子線の発生を安定化
させるために、分子線放出部に設置される底の開いた逆
円錐形円錐筒で、原料融液の這い上がり現象、容器上部
での付着を抑制するために種々検討した結果、これには
熱分解窒化ホウ素製円錐筒自体の輻射線の透過率を20
%以下にすることが有効であることを見出し、本発明を
完成させたものである。
明はこれらに限定されるものではない。本発明者らはM
BE法における大容量のルツボで分子線の発生を安定化
させるために、分子線放出部に設置される底の開いた逆
円錐形円錐筒で、原料融液の這い上がり現象、容器上部
での付着を抑制するために種々検討した結果、これには
熱分解窒化ホウ素製円錐筒自体の輻射線の透過率を20
%以下にすることが有効であることを見出し、本発明を
完成させたものである。
【0016】ここで、本発明の円錐筒を装着した分子線
発生装置を用いるMBE成長方法を図1により説明して
おく。MBE装置7は、チャンバー8内にセットされた
ウエーハ9と分子線発生装置1とから構成され、分子線
発生装置1は本発明のPBN製円錐筒3を装着したPB
N製分子線源容器2を内蔵し、該容器2内の分子線原料
6をヒータ4で加熱して分子線を発生させている。この
分子線は該容器2から円錐筒3を通して、ウエーハ9に
向かって放出され、ウエーハ表面にエピタキシャル膜を
析出、成長させている。分子線原料6の温度は熱電対5
で測定し温度制御を行っている。
発生装置を用いるMBE成長方法を図1により説明して
おく。MBE装置7は、チャンバー8内にセットされた
ウエーハ9と分子線発生装置1とから構成され、分子線
発生装置1は本発明のPBN製円錐筒3を装着したPB
N製分子線源容器2を内蔵し、該容器2内の分子線原料
6をヒータ4で加熱して分子線を発生させている。この
分子線は該容器2から円錐筒3を通して、ウエーハ9に
向かって放出され、ウエーハ表面にエピタキシャル膜を
析出、成長させている。分子線原料6の温度は熱電対5
で測定し温度制御を行っている。
【0017】本発明の円錐筒3は、これを装着すること
で、PBN製分子線源容器2内の原料融液6が、該容器
2の内壁を這い上がったり、ドロップ状に付着し落下し
て分子線の安定均一な放出を乱しているのを防止しよう
としている。そこで、熱分解窒化ホウ素製円錐筒自体の
IR透過率を20%以下のものとすれば、前述の複合膜
を被覆してPBN・PG複合円錐筒とする場合のよう
な、不純物汚染やヒータショートあるいは複合膜の剥離
といった問題を解決することができるとともに、円錐筒
の製造工程も簡単で、低コスト化をはかることもでき
る。
で、PBN製分子線源容器2内の原料融液6が、該容器
2の内壁を這い上がったり、ドロップ状に付着し落下し
て分子線の安定均一な放出を乱しているのを防止しよう
としている。そこで、熱分解窒化ホウ素製円錐筒自体の
IR透過率を20%以下のものとすれば、前述の複合膜
を被覆してPBN・PG複合円錐筒とする場合のよう
な、不純物汚染やヒータショートあるいは複合膜の剥離
といった問題を解決することができるとともに、円錐筒
の製造工程も簡単で、低コスト化をはかることもでき
る。
【0018】本発明者らはまず、MBE法の円錐筒にお
いて問題となる輻射線の波数について検討してみた。M
BE法でビーム源を発生させるのに用いられる温度領域
は約500〜1,600℃とされるが、この時の最大エ
ネルギー伝熱波長λmax は、下記の(1)式で表され
る。 λmax =2,898(μm・K)/T ・・・・(1) (ここでTは絶対温度である。) そこで、上記温度領域について、(1)式からλmax を
求め、これを波数に換算すると、2600cm-1〜65
00cm-1という値が得られる。したがって、この26
00cm-1〜6500cm-1の光の透過率を下げ、吸収
を上げることによって、円錐筒の熱吸収を上げることが
可能となる。
いて問題となる輻射線の波数について検討してみた。M
BE法でビーム源を発生させるのに用いられる温度領域
は約500〜1,600℃とされるが、この時の最大エ
ネルギー伝熱波長λmax は、下記の(1)式で表され
る。 λmax =2,898(μm・K)/T ・・・・(1) (ここでTは絶対温度である。) そこで、上記温度領域について、(1)式からλmax を
求め、これを波数に換算すると、2600cm-1〜65
00cm-1という値が得られる。したがって、この26
00cm-1〜6500cm-1の光の透過率を下げ、吸収
を上げることによって、円錐筒の熱吸収を上げることが
可能となる。
【0019】そして、例えば熱源として分子線源容器を
囲繞するように配置したタンタルヒータのような抵抗加
熱方式を用いた場合には、熱は輻射熱により円錐筒外部
より供給されることになるが、この輻射線が円錐筒であ
る熱分解窒化ホウ素に吸収されずに透過すると、原料が
存在する分子線源容器の底部側だけが加熱されることに
なり、分子線源容器上部と円錐筒は低温化してしまう。
そこで、熱分解窒化ホウ素製円錐筒の2600cm-1〜
6500cm-1の光の透過率を、20%以下にすれば、
円錐筒の温度を高く保つことができ、この部分での原料
金属の付着を抑制することができる。原料が円錐筒や分
子線源容器に付着してドロップを形成してしまうと、ビ
ームの不安定化、ひいてはヒータのショート等が起こる
可能性がある。
囲繞するように配置したタンタルヒータのような抵抗加
熱方式を用いた場合には、熱は輻射熱により円錐筒外部
より供給されることになるが、この輻射線が円錐筒であ
る熱分解窒化ホウ素に吸収されずに透過すると、原料が
存在する分子線源容器の底部側だけが加熱されることに
なり、分子線源容器上部と円錐筒は低温化してしまう。
そこで、熱分解窒化ホウ素製円錐筒の2600cm-1〜
6500cm-1の光の透過率を、20%以下にすれば、
円錐筒の温度を高く保つことができ、この部分での原料
金属の付着を抑制することができる。原料が円錐筒や分
子線源容器に付着してドロップを形成してしまうと、ビ
ームの不安定化、ひいてはヒータのショート等が起こる
可能性がある。
【0020】そして、本発明者らはこのMBE法で用い
られる熱分解窒化ホウ素製円錐筒自体に、2600cm
-1〜6500cm-1の光の透過率を20%以下にする方
法として、次の二つの方法を開発した。その(1)はP
BNの外表面の粗さを変化させ、光の散乱量を変化させ
る方法であり、その(2)はPBNに元素をドープし、
そのドープ層の厚さ、面積、ドープ濃度を変化させる方
法である。
られる熱分解窒化ホウ素製円錐筒自体に、2600cm
-1〜6500cm-1の光の透過率を20%以下にする方
法として、次の二つの方法を開発した。その(1)はP
BNの外表面の粗さを変化させ、光の散乱量を変化させ
る方法であり、その(2)はPBNに元素をドープし、
そのドープ層の厚さ、面積、ドープ濃度を変化させる方
法である。
【0021】以下、これらの方法につき一つずつ詳述す
る。 (1)PBN円錐筒の外表面を粗し、光の散乱量を変化
させる方法。 PBN円錐筒の2600cm-1〜6500cm-1の光の
透過率、吸光係数は、PBNの表面状態、すなわち表面
の粗さを調整することによって変化する。例えば、PB
Nの表面粗さと2600cm-1〜6500cm-1の光の
透過率、吸光係数との関係を調査した結果を表1に示
す。
る。 (1)PBN円錐筒の外表面を粗し、光の散乱量を変化
させる方法。 PBN円錐筒の2600cm-1〜6500cm-1の光の
透過率、吸光係数は、PBNの表面状態、すなわち表面
の粗さを調整することによって変化する。例えば、PB
Nの表面粗さと2600cm-1〜6500cm-1の光の
透過率、吸光係数との関係を調査した結果を表1に示
す。
【0022】
【表1】
【0023】これは物質としての吸光係数が1.2と
2.2であるPBNの表面を、CVD反応で析出させた
ままのもの(アズデポ)、#320の粗いAl2 O3 ペ
ーパーで磨いたもの、#1200の細かいAl2 O3 ペ
ーパーで磨いたものとで、みかけ上の光の透過率、吸光
係数がどのように変わるかを示したものである。
2.2であるPBNの表面を、CVD反応で析出させた
ままのもの(アズデポ)、#320の粗いAl2 O3 ペ
ーパーで磨いたもの、#1200の細かいAl2 O3 ペ
ーパーで磨いたものとで、みかけ上の光の透過率、吸光
係数がどのように変わるかを示したものである。
【0024】表1から明らかなように、アズデポでは物
質固有の吸光係数と、みかけの吸光係数との差が小さ
く、その表面における光の散乱は余り起こっていないも
のと思われる。一方、表面を粗い#320のペーパーで
磨いたものは、その表面が粗いために光の散乱量が多
く、みかけの吸光係数が著しく大きくなり、透過率が下
がる。また、表面を#1200のペーパーで磨いたもの
は、その表面が#320のものより細かくなるので、光
の散乱量が減少し、みかけの吸光係数が下がり、透過率
が上がっている。
質固有の吸光係数と、みかけの吸光係数との差が小さ
く、その表面における光の散乱は余り起こっていないも
のと思われる。一方、表面を粗い#320のペーパーで
磨いたものは、その表面が粗いために光の散乱量が多
く、みかけの吸光係数が著しく大きくなり、透過率が下
がる。また、表面を#1200のペーパーで磨いたもの
は、その表面が#320のものより細かくなるので、光
の散乱量が減少し、みかけの吸光係数が下がり、透過率
が上がっている。
【0025】このように表面粗さを調整することによ
り、透過率を変化させることができることから、例えば
熱分解窒化ホウ素製円錐筒の外表面を#320のぺーパ
ーで磨けば、透過率の小さいものとなる。尚、この場
合、円錐筒の外表面で光が散乱されるので、結局、円錐
筒に光が吸収される訳ではなく、円錐筒の温度を上昇さ
せることが出来ないのではないかとの疑問も生じるが、
そうはならない。すなわち、輻射光は、円錐筒の外表面
だけで散乱するので、分子線発生装置の温度分布として
は、容器底部の原料のある部分と容器上部の円錐筒配置
部が高温となる温度分布となる。
り、透過率を変化させることができることから、例えば
熱分解窒化ホウ素製円錐筒の外表面を#320のぺーパ
ーで磨けば、透過率の小さいものとなる。尚、この場
合、円錐筒の外表面で光が散乱されるので、結局、円錐
筒に光が吸収される訳ではなく、円錐筒の温度を上昇さ
せることが出来ないのではないかとの疑問も生じるが、
そうはならない。すなわち、輻射光は、円錐筒の外表面
だけで散乱するので、分子線発生装置の温度分布として
は、容器底部の原料のある部分と容器上部の円錐筒配置
部が高温となる温度分布となる。
【0026】(2)PBNに元素をドープする方法
これはCVD反応によりPBNを蒸着する場合に、ドー
プガスを導入し、PBNに所望元素をドープすることに
よって、簡単かつ確実にPBN製円錐筒の透過率を下げ
ることができる方法である。
プガスを導入し、PBNに所望元素をドープすることに
よって、簡単かつ確実にPBN製円錐筒の透過率を下げ
ることができる方法である。
【0027】この場合、ドープする元素としては、PB
NのIR透過率を変更することができるものであれば原
則としてなにを用いてもよいが、ドープガスにより簡単
にドープすることが可能である等の点から、Si,C,
Alから選択される1以上の元素とすればよい。そし
て、CVD反応により心金上にPBNを蒸着する際に、
ドープガスとして例えば、SiCl4 ,CH4 ,Al
(CH3 )3 等のドープ元素を含むガスを導入すること
によって、PBN中にこれらの元素をドープしたドープ
層を形成することができる。
NのIR透過率を変更することができるものであれば原
則としてなにを用いてもよいが、ドープガスにより簡単
にドープすることが可能である等の点から、Si,C,
Alから選択される1以上の元素とすればよい。そし
て、CVD反応により心金上にPBNを蒸着する際に、
ドープガスとして例えば、SiCl4 ,CH4 ,Al
(CH3 )3 等のドープ元素を含むガスを導入すること
によって、PBN中にこれらの元素をドープしたドープ
層を形成することができる。
【0028】このドープ層は、PBN製円錐筒全体とし
ても良いし、円錐筒の一部のどの位置に形成することも
可能であり、例えば円錐筒外表面に形成してもよいが、
外表面に形成すると分子線源容器内に収容される原料融
液を汚染する恐れがあるので、円錐筒外表面にドープ層
が露出しないようにするのが良い。一般的に、円錐筒の
内表面で形成するか、またはPBN層中で形成されるよ
うにすれば、ドープ層は内外表面に露出しないので、原
料融液がこれらのドープ元素によって汚染される心配も
なくなる。この露出を避けるには、CVD反応の中間で
ドープガスを導入してドープ層をPBN層の間に形成さ
せればよい。
ても良いし、円錐筒の一部のどの位置に形成することも
可能であり、例えば円錐筒外表面に形成してもよいが、
外表面に形成すると分子線源容器内に収容される原料融
液を汚染する恐れがあるので、円錐筒外表面にドープ層
が露出しないようにするのが良い。一般的に、円錐筒の
内表面で形成するか、またはPBN層中で形成されるよ
うにすれば、ドープ層は内外表面に露出しないので、原
料融液がこれらのドープ元素によって汚染される心配も
なくなる。この露出を避けるには、CVD反応の中間で
ドープガスを導入してドープ層をPBN層の間に形成さ
せればよい。
【0029】そして、このドープ層の厚さ、面積、ドー
プ濃度等を調整することによって、PBN製円錐筒の2
600cm-1〜6500cm-1の光の透過率を自在にコ
ントロールすることができる。
プ濃度等を調整することによって、PBN製円錐筒の2
600cm-1〜6500cm-1の光の透過率を自在にコ
ントロールすることができる。
【0030】このドープ層の厚さを制御するには、例え
ばCVD反応中にドープガスを導入する時間を調整すれ
ば良いし、ドープ濃度の制御は、導入されるガス中のド
ープガスの濃度を調整することによって簡単に行うこと
ができる。また、ドープ層の厚さや面積に分布をつける
には、ドープ反応終了後ドープ層を機械的に研磨する等
の操作によって簡単に行うことができる。
ばCVD反応中にドープガスを導入する時間を調整すれ
ば良いし、ドープ濃度の制御は、導入されるガス中のド
ープガスの濃度を調整することによって簡単に行うこと
ができる。また、ドープ層の厚さや面積に分布をつける
には、ドープ反応終了後ドープ層を機械的に研磨する等
の操作によって簡単に行うことができる。
【0031】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を実施
例と図面により説明するが、本発明はこれらに限定され
るものではない。ここで、図2はCVD反応により本発
明のPBN製円錐筒を作製するCVD反応炉の概略断面
図である。
例と図面により説明するが、本発明はこれらに限定され
るものではない。ここで、図2はCVD反応により本発
明のPBN製円錐筒を作製するCVD反応炉の概略断面
図である。
【0032】
【実施例】以下、本発明の実施例および比較例を示す。
(実施例1)図2において、先ず、黒鉛製円筒型CVD
反応炉20内に、上部開口部に鍔のある円錐筒の形状を
したグラファイト製の心金21を反応ガスの流れ方向に
対して直角の位置にセットし、これを回転させながら所
望の厚さになるまでCVD反応によりPBNの析出を行
う。
反応炉20内に、上部開口部に鍔のある円錐筒の形状を
したグラファイト製の心金21を反応ガスの流れ方向に
対して直角の位置にセットし、これを回転させながら所
望の厚さになるまでCVD反応によりPBNの析出を行
う。
【0033】CVD反応は、CVD反応炉20に三塩化
ホウ素2L/min,アンモニア5L/minを供給
し、炉の中心における平均圧力4Torr(533.2
Pa)、1850℃の条件で反応させて、厚さが0.8
〜1.3mmで上部開口部の直径20mm、高さ40m
mの上部開口部に鍔を有するMBE法用PBN製円錐筒
を作製した。反応終了後、PBNと心金を分離し、その
後中間部で機械的に切断し、仕上げ加工を施し、底に穴
の開いた最終形状のPBN製円錐筒を製造した。
ホウ素2L/min,アンモニア5L/minを供給
し、炉の中心における平均圧力4Torr(533.2
Pa)、1850℃の条件で反応させて、厚さが0.8
〜1.3mmで上部開口部の直径20mm、高さ40m
mの上部開口部に鍔を有するMBE法用PBN製円錐筒
を作製した。反応終了後、PBNと心金を分離し、その
後中間部で機械的に切断し、仕上げ加工を施し、底に穴
の開いた最終形状のPBN製円錐筒を製造した。
【0034】こうして得られたPBN製円錐筒の260
0cm-1〜6500cm-1における吸光量AをIRスペ
クトルメータ(FTIR−710 NICOLET社
製)で測定し、下記の(2)、(3)、(4)式から、
それぞれ4800cm-1の吸光係数Bを求めた。 吸光量(A)=Log10(Io /I) ・・・(2) (ここで、Io は入射光、Iは透過光である。) 吸光係数(B)=A/t ・・・・(3) (ここで、tは厚さである。) 透過率(T)=I/Io ・・・・(4)
0cm-1〜6500cm-1における吸光量AをIRスペ
クトルメータ(FTIR−710 NICOLET社
製)で測定し、下記の(2)、(3)、(4)式から、
それぞれ4800cm-1の吸光係数Bを求めた。 吸光量(A)=Log10(Io /I) ・・・(2) (ここで、Io は入射光、Iは透過光である。) 吸光係数(B)=A/t ・・・・(3) (ここで、tは厚さである。) 透過率(T)=I/Io ・・・・(4)
【0035】次に、このPBN製円錐筒の外表面を#3
20のアルミナサンドペーパーで表面処理を行い、こう
して外表面を粗くしたPBN容器の4800cm-1の光
の透過率を測定し、これらの結果を表2に示した。
20のアルミナサンドペーパーで表面処理を行い、こう
して外表面を粗くしたPBN容器の4800cm-1の光
の透過率を測定し、これらの結果を表2に示した。
【0036】(比較例1)次に、上記実施例1の製造工
程の内、後半のサンドペーパーによる表面処理を施さな
い円錐筒全体の吸光係数、透過率の均一なPBN製円錐
筒を作製し、4800cm-1の光の透過率を測定し、表
2に併記した。このように、CVD反応で作製しPBN
の透過率は、通常20%を超えている。
程の内、後半のサンドペーパーによる表面処理を施さな
い円錐筒全体の吸光係数、透過率の均一なPBN製円錐
筒を作製し、4800cm-1の光の透過率を測定し、表
2に併記した。このように、CVD反応で作製しPBN
の透過率は、通常20%を超えている。
【0037】
【表2】
【0038】表2の結果を見れば明らかなように、表面
処理を施した実施例1の円錐筒では、表面が粗いために
光がその表面で散乱し透過率が小さくなるのに対し、比
較例1ではアズデポのままであるために光の透過率が高
い。実施例1の円錐筒をMBE法に用いれば、原料の付
着を有効に防止しながら、分子ビームを安定化させるこ
とが期待される。
処理を施した実施例1の円錐筒では、表面が粗いために
光がその表面で散乱し透過率が小さくなるのに対し、比
較例1ではアズデポのままであるために光の透過率が高
い。実施例1の円錐筒をMBE法に用いれば、原料の付
着を有効に防止しながら、分子ビームを安定化させるこ
とが期待される。
【0039】(実施例2)
次に、上記実施例1と同様な条件、方法でCVD反応さ
せ、心金上に円錐筒を形成して原料供給を停止した。続
いて1Torr(133.3Pa)の減圧下、1600
℃に降温し、これにメタンガスを5SLM、三塩化ホウ
素2L/min、アンモニア5L/minで供給し、P
BNにカーボンをドープしたドープ層を形成し、これを
冷却後取り出した。こうしてカーボンドープ層を形成し
たPBN製円錐筒の4800cm−1の光の透過率を測
定し、これらの結果を表2に合せて示した。
せ、心金上に円錐筒を形成して原料供給を停止した。続
いて1Torr(133.3Pa)の減圧下、1600
℃に降温し、これにメタンガスを5SLM、三塩化ホウ
素2L/min、アンモニア5L/minで供給し、P
BNにカーボンをドープしたドープ層を形成し、これを
冷却後取り出した。こうしてカーボンドープ層を形成し
たPBN製円錐筒の4800cm−1の光の透過率を測
定し、これらの結果を表2に合せて示した。
【0040】表2の結果を見れば明らかなように、カー
ボンをドープした実施例2の円錐筒では、カーボン元素
が光を吸収するためにその透過率が非常に小さくなる。
したがって、この円錐筒をMBE法に用いれば、より輻
射光が吸収されるために、円錐筒の温度が低下せず、こ
の部分での原料の付着、あるいは原料の這い上がり現象
を効果的に抑制し、分子ビームを安定化させることが期
待される。
ボンをドープした実施例2の円錐筒では、カーボン元素
が光を吸収するためにその透過率が非常に小さくなる。
したがって、この円錐筒をMBE法に用いれば、より輻
射光が吸収されるために、円錐筒の温度が低下せず、こ
の部分での原料の付着、あるいは原料の這い上がり現象
を効果的に抑制し、分子ビームを安定化させることが期
待される。
【0041】(比較例2)
上記比較例1と同様にしてCVD反応によりPBN製円
錐筒を作製した後、再びCVD炉にセットし、1Tor
r(133.3Pa)の減圧下、1750℃に昇温し、
これにメタンガスを5SLMで供給し、PBNの表面に
50μm厚のカーボン層を形成した。これを冷却後取り
出し、円錐筒の内表面はすべて機械的研磨によりカーボ
ン層を除去した。さらにこの表面処理を行ったPBN製
円錐筒を再びCVD炉にセットし、その最表面に約10
0μmのPBN層を析出させ、前記カーボン層を埋め込
んだ複合円錐筒を作製した。ところが、このものは冷却
後複合した各層がはがれて破損してしまい、使用不能な
ものとなった。
錐筒を作製した後、再びCVD炉にセットし、1Tor
r(133.3Pa)の減圧下、1750℃に昇温し、
これにメタンガスを5SLMで供給し、PBNの表面に
50μm厚のカーボン層を形成した。これを冷却後取り
出し、円錐筒の内表面はすべて機械的研磨によりカーボ
ン層を除去した。さらにこの表面処理を行ったPBN製
円錐筒を再びCVD炉にセットし、その最表面に約10
0μmのPBN層を析出させ、前記カーボン層を埋め込
んだ複合円錐筒を作製した。ところが、このものは冷却
後複合した各層がはがれて破損してしまい、使用不能な
ものとなった。
【0042】次に、上記実施例1、実施例2、比較例1
で得られたPBN製円錐筒を使用し、実際にMBE法で
GaAlAsのエピタキシャル膜を育成した。エピタキ
シャル膜の成長は、雰囲気圧力を10−10 Torr
(1.33×10 −8 Pa)、加熱温度は1000℃と
し、各例ともPBN製分子線源容器をGa充填用容器と
して用いた。育成されたエピタキシャル膜の表面を光学
顕微鏡により観察し、その表面欠陥密度を測定した。そ
の結果を表2に示した。
で得られたPBN製円錐筒を使用し、実際にMBE法で
GaAlAsのエピタキシャル膜を育成した。エピタキ
シャル膜の成長は、雰囲気圧力を10−10 Torr
(1.33×10 −8 Pa)、加熱温度は1000℃と
し、各例ともPBN製分子線源容器をGa充填用容器と
して用いた。育成されたエピタキシャル膜の表面を光学
顕微鏡により観察し、その表面欠陥密度を測定した。そ
の結果を表2に示した。
【0043】表2からわかるように、実施例のPBN製
円錐筒を用いた場合には、育成されるエピタキシャル膜
の表面欠陥密度が少なく、円錐筒での原料付着が少ない
ために、付着原料が滴下して液滴が飛散するような問題
が抑制されていることがわかる。一方、比較例1のPB
N製円錐筒を用いた場合は、円錐筒の温度が低く、この
部分での原料付着が激しいために、分子線が安定せず、
育成されるエピタキシャル膜の表面欠陥が多いものとな
っている。
円錐筒を用いた場合には、育成されるエピタキシャル膜
の表面欠陥密度が少なく、円錐筒での原料付着が少ない
ために、付着原料が滴下して液滴が飛散するような問題
が抑制されていることがわかる。一方、比較例1のPB
N製円錐筒を用いた場合は、円錐筒の温度が低く、この
部分での原料付着が激しいために、分子線が安定せず、
育成されるエピタキシャル膜の表面欠陥が多いものとな
っている。
【0044】なお、本発明は、上記実施形態に限定され
るものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明
の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同
一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いか
なるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
るものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明
の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同
一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いか
なるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0045】例えば、上記説明では円錐筒の透過率を下
げる方法として、二つの方法を挙げ、それぞれ個別に説
明したが、これらの方法は同時に実施してもよく、より
高精度に透過率を制御した円錐筒を形成することも可能
である。
げる方法として、二つの方法を挙げ、それぞれ個別に説
明したが、これらの方法は同時に実施してもよく、より
高精度に透過率を制御した円錐筒を形成することも可能
である。
【0046】
【発明の効果】本発明によれば、分子線エピタキシャル
法で用いられる熱分解窒化ホウ素製分子線源容器の、分
子線放出口に設置される底の開いた逆円錐形のPBN製
円錐筒の、2600〜6500cm-1の光の透過率を2
0%以下としたもので、円錐筒への原料の付着現象を有
効に防止でき、かつ、分子線を長期に安定化できる熱分
解窒化ホウ素製円錐筒を、簡単かつ低コストで提供する
ことができる。従って、この円錐筒を用いてMBE法に
よって、エピタキシャル膜の製造を行えば、表面欠陥の
少ない良質のエピタキシャル膜を長期に渡って育成する
ことができる。
法で用いられる熱分解窒化ホウ素製分子線源容器の、分
子線放出口に設置される底の開いた逆円錐形のPBN製
円錐筒の、2600〜6500cm-1の光の透過率を2
0%以下としたもので、円錐筒への原料の付着現象を有
効に防止でき、かつ、分子線を長期に安定化できる熱分
解窒化ホウ素製円錐筒を、簡単かつ低コストで提供する
ことができる。従って、この円錐筒を用いてMBE法に
よって、エピタキシャル膜の製造を行えば、表面欠陥の
少ない良質のエピタキシャル膜を長期に渡って育成する
ことができる。
【図1】本発明の円錐筒を装着した分子線発生装置を用
いてMBE成長を行う方法の説明図である。
いてMBE成長を行う方法の説明図である。
【図2】CVD反応によりMBE法のPBN製円錐筒を
作製するCVD反応炉の概略断面図である。
作製するCVD反応炉の概略断面図である。
1…分子線発生装置、
2…分子線源容器、
3…PBN製円錐筒、
4…ヒータ、
5…熱電対、
6…分子線原料、
7…MBE装置、
8…チャンバー、
9…ウエーハ、
20…CVD炉、
21…グラファイト製心金。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 伊藤 賢治
群馬県安中市磯部2丁目13番1号 信越
化学工業株式会社 精密機能材料研究所
内
(72)発明者 新井 延男
群馬県安中市磯部2丁目13番1号 信越
化学工業株式会社 精密機能材料研究所
内
(56)参考文献 特開 平5−85888(JP,A)
特開 平2−204391(JP,A)
特開 平6−135793(JP,A)
特開 平9−95785(JP,A)
実開 平3−22067(JP,U)
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
C30B 1/00 - 35/00
Claims (7)
- 【請求項1】 分子線エピタキシー用分子線源容器の開
口部に配置される熱分解窒化ホウ素製円錐筒において、
熱分解窒化ホウ素製円錐筒の外表面の表面粗さを粗し、
該熱分解窒化ホウ素製円錐筒の波数が2600cm−1
〜6500cm−1の光の透過率を20%以下としたこ
とを特徴とする熱分解窒化ホウ素製円錐筒。 - 【請求項2】 分子線エピタキシー用分子線源容器の開
口部に配置される熱分解窒化ホウ素製円錐筒において、
熱分解窒化ホウ素製円錐筒に、窒素、ホウ素以外の元素
をドープし、そのドープ層の厚さ、面積、ドープ濃度を
調整して、該熱分解窒化ホウ素製円錐筒の波数が260
0cm−1〜6500cm−1の光の透過率を20%以
下としたことを特徴とする熱分解窒化ホウ素製円錐筒。 - 【請求項3】 前記熱分解窒化ホウ素製円錐筒に、窒
素、ホウ素以外の元素をドープし、そのドープ層の厚
さ、面積、ドープ濃度を調整して、前記光の透過率を2
0%以下としたことを特徴とする請求項1に記載した熱
分解窒化ホウ素製円錐筒。 - 【請求項4】 前記元素をドープしたドープ層を、熱分
解窒化ホウ素製円錐筒の内外全表面に露出しないように
したことを特徴とする請求項2または請求項3に記載し
た熱分解窒化ホウ素製円錐筒。 - 【請求項5】 前記熱分解窒化ホウ素にドープする元素
は、Si、C、Alから選択される1種以上の元素であ
る、ことを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか
1項に記載した熱分解窒化ホウ素製円錐筒。 - 【請求項6】 分子線エピタキシー用分子線源容器の開
口部に配置される熱分解窒化ホウ素製円錐筒の製造方法
において、CVD反応によって得られた熱分解窒化ホウ
素製円錐筒の成形体の外表面を粗し、外表面における光
の散乱量を調整することによって、該円錐筒の2600
cm−1〜6500cm−1の光の透過率を20%以下
とすることを特徴とする熱分解窒化ホウ素製円錐筒の製
造方法。 - 【請求項7】 CVD反応による生成物をグラファイト
製の心金上に蒸着させ、その後心金と分離することによ
って成形体を得る、分子線エピタキシー用分子線源容器
の開口部に配置される熱分解窒化ホウ素製円錐筒の製造
方法において、少なくともCVD反応時に、ドープガス
を導入することによって、熱分解窒化ホウ素中にドープ
層を形成する工程を有し、このドープ層の厚さ、面積、
ドープ濃度を調整することによって、該円錐筒の260
0cm−1〜6500cm−1の光の透過率を20%以
下とする、ことを特徴とする熱分解窒化ホウ素製円錐筒
の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP29948397A JP3532397B2 (ja) | 1997-10-16 | 1997-10-16 | 熱分解窒化ホウ素製円錐筒およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP29948397A JP3532397B2 (ja) | 1997-10-16 | 1997-10-16 | 熱分解窒化ホウ素製円錐筒およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11116381A JPH11116381A (ja) | 1999-04-27 |
JP3532397B2 true JP3532397B2 (ja) | 2004-05-31 |
Family
ID=17873164
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP29948397A Expired - Fee Related JP3532397B2 (ja) | 1997-10-16 | 1997-10-16 | 熱分解窒化ホウ素製円錐筒およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3532397B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN110234793B (zh) | 2017-02-08 | 2020-10-02 | 皮考逊公司 | 具有可移动结构的沉积或清洁装置和操作方法 |
-
1997
- 1997-10-16 JP JP29948397A patent/JP3532397B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH11116381A (ja) | 1999-04-27 |
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Date | Code | Title | Description |
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